(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
前述のように、貫通孔加工後のガラス基板に対して熱処理を実施した場合、熱処理の影響によって、貫通孔の位置が所定の位置から僅かながらずれる場合がある。また、この問題を抑制するため、ダミーのガラス基板を用いて、熱処理による貫通孔の位置ずれの影響を把握し、この影響を「補正」した状態で、実際のガラス基板に貫通孔加工および熱処理を実施する方法が提案されている。
【0017】
しかしながら、本願発明者らは、特許文献1に記載されたような「補正」を行った場合でも、依然として、ガラス基板の熱処理後に、孔(例えば貫通孔)の位置が所定の位置からずれる場合があることを見出した。
【0018】
このことは、ガラス基板の熱処理による孔の位置ずれの影響を把握しこれを補正するのみでは、孔の位置ずれを十分に抑制することは難しいことを示唆するものである。換言すれば、孔を有するガラス基板を製造する工程の全体にわたって、孔の位置ずれが生じ得る原因を特定し、この原因を考慮した補正を行わなければ、ガラス基板の熱処理後に、十分に高い精度で所定の位置に孔を配置することは難しいと言える。
【0019】
本願発明者らは、このような観点から、特に、レーザ光照射による孔加工工程から熱処理工程までの過程において、孔の位置ずれが生じ得る原因について検討を行ってきた。その結果、孔の位置ずれは、熱処理工程に加えて、レーザ光照射による孔加工の最中にも生じ得ることを見出し、本発明に至った。なお、レーザ光照射による孔加工中に孔の位置ずれが生じるのは、熱影響によってガラス基板に僅かながら収縮が生じるためであると考えられる。
【0020】
従って、本発明では、孔を有するガラス基板の製造方法であって、
(a)ダミーガラス基板の複数の孔形成目標位置に向かって、第1の条件でレーザ光を照射し、前記ダミーガラス基板に複数の孔を形成し、
(b)前記ダミーガラス基板を熱処理し、
(c)各孔に対して、前記孔形成目標位置と、前記(b)の熱処理後の孔の位置との間のずれ量を把握し、
(d)前記ダミーガラス基板と形状、寸法および組成が実質的に等しいガラス基板に、前記第1の条件でレーザ光を照射して複数の孔を形成し、この際に、前記ガラス基板における前記レーザ光の照射位置は、前記(c)において把握された前記ずれ量を考慮して、決定され、
(e)前記(b)において適用した熱処理条件で、前記ガラス基板を熱処理する、
製造方法が提供される。
【0021】
本発明では、孔加工中のガラス基板の収縮、および熱処理によるガラス基板の収縮の両方を考慮した状態で、ガラス基板に対して孔加工処理が実施される。また、これを実現するため、本発明では、ガラス基板と同じ仕様のダミーガラス基板が使用される。
【0022】
より具体的には、本発明では、本来の被加工対象となるガラス基板に孔加工処理を実施する前に、ダミーガラス基板に対して、孔加工処理および熱処理が実施される。また、ダミーガラス基板において、孔加工中の孔の位置のずれと、熱処理による孔位置のずれとの両方の影響を加味した「ずれ量」が把握される。また、本処理、すなわちガラス基板に対する孔加工処理は、このダミーガラス基板により把握された各孔のずれ量を考慮して実施される。
【0023】
この場合、ガラス基板に対して、ダミーガラス基板と同じ条件で孔加工を実施し、孔加工後のガラス基板に対して、ダミーガラス基板と同じ条件で熱処理を実施すると、各孔の位置は、ダミーガラス基板で予め把握されたずれ量だけずれるようになる。その結果、熱処理後には、ガラス基板の目標とする位置に、各孔が配置される。
【0024】
従って、本発明による方法では、熱処理後に、目標とする位置に高精度で各孔を配置することができる。
【0025】
(本発明の一実施形態による、孔を有するガラス基板の製造方法)
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態による、孔を有するガラス基板の製造方法について説明する。
【0026】
図1には、本発明の一実施形態による、孔を有するガラス基板の製造方法(以下、単に「第1の方法」と称する)のフローの一例を概略的に示す。
【0027】
図1に示すように、第1の方法は、
(a)レーザ光を用いた第1の条件で、ダミーガラス基板の複数の孔形成目標位置に向かってレーザ光を照射し、前記ダミーガラス基板に複数の孔を形成する、第1の孔加工ステップ(ステップS110)と、
(b)前記ダミーガラス基板を熱処理する、第1の熱処理ステップ(ステップS120)と、
(c)各孔に対して、前記孔形成目標位置と、前記(b)のステップの後の位置の間のずれ量を把握する、位置ずれ把握ステップ(ステップS130)と、
(d)前記ダミーガラス基板と寸法および組成が実質的に等しいガラス基板に、前記レーザ光を用いた前記第1の条件により、複数の孔を形成するステップであって、前記ガラス基板における前記レーザ光の照射位置は、前記(c)のステップで把握された前記ずれ量を考慮して決定される、第2の孔加工ステップ(ステップS140)と、
(e)前記(b)のステップに適用した熱処理条件で、前記ガラス基板を熱処理する、第2の熱処理ステップ(ステップS150)と、
を有する。
【0028】
以下、各ステップについて詳しく説明する。
【0029】
(ステップS110)
まず、ダミーガラス基板が準備される。
【0030】
図2には、ダミーガラス基板の形態の一例を概略的に示す。
【0031】
図2に示すように、ダミーガラス基板110は、相互に対向する第1の表面112および第2の表面114(
図2からは視認されない)を有する。ダミーガラス基板110の第1の表面112は、レーザ光照射により、複数の孔が形成される表面に相当する。
【0032】
ダミーガラス基板110は、後のステップS140において使用されるガラス基板(以下、「本処理用ガラス基板」と称する)と少なくとも形状、寸法および組成が実質的に同じ基板である。ダミーガラス基板110は、本処理用ガラス基板と実質的に同じガラス基板であってもよい。なお、実質的に同じとは、全く同じ、または製造上不可避的に生じる形状、寸法、および組成の違いを有していてもよいことを意味する。
【0033】
なお、ダミーガラス基板110(および本処理用ガラス基板)の主表面の形状は、特に限られず、
図2に示したウェハ形状(円形状)の他、矩形状または正方形状等であってもよい。
【0034】
ダミーガラス基板110の厚さは、例えば、0.05mm〜0.70mmの範囲であってもよい。
【0035】
次に、ダミーガラス基板110の第1の表面112のそれぞれの「孔形成目標位置」120に向かって、レーザ光が照射される。また、これにより、第1の表面112に、複数の孔が形成される。
【0036】
ここで、本願において、本来、「孔形成目標位置」とは、本処理用ガラス基板の第1の表面において、第2の熱処理ステップ(ステップS150)後に各孔が配置されるべき目標位置を意味する。ただし、前述のように、ダミーガラス基板110は、本処理用ガラス基板と形状および寸法が等しい。このため、ダミーガラス基板110においても、本処理用ガラス基板の孔形成目標位置と同様の位置に、孔形成目標位置120を定めることができる。換言すれば、ダミーガラス基板110の孔形成目標位置120は、本処理用ガラス基板の孔形成目標位置と対応(一致)する。
【0037】
例えば、
図2に示した例では、ダミーガラス基板110の第1の表面112に、5行×5列の合計25個の孔形成目標位置120が示されている。これらの孔形成目標位置120は、ステップS150後に、本処理用ガラス基板の第1の表面に配置される各孔の孔形成目標位置と対応(一致)する。
【0038】
本工程に利用されるレーザ加工技術は、レーザ光を利用する技術である限り、特に限られない。
【0039】
ここで、
図3を参照して、レーザ加工方法の一例について簡単に説明する。
【0040】
図3には、レーザ光を照射して、ダミーガラス基板110に複数の孔を形成する際に使用され得るレーザ加工装置の一例を概略的に示す。
【0041】
図3に示すように、このレーザ加工装置200は、レーザ光源210および試料台245を有する。
【0042】
レーザ光源210の種類は、特に限られず、レーザ光源210は、例えば、CO
2レーザであってもよく、UVレーザであってもよい。また、試料台245には、ダミーガラス基板110が載置される。
【0043】
このようなレーザ加工装置200を用いて、ダミーガラス基板110に孔を形成する際には、まず、ダミーガラス基板110が試料台245の上に配置される。さらに、試料台245を水平方向に移動させることにより、ダミーガラス基板110が所定の位置に配置される。
【0044】
次に、レーザ光源210からダミーガラス基板110に向かって、レーザ光213が照射される。これにより、ダミーガラス基板110のレーザ光213の照射位置116の温度が局部的に上昇して絶縁材料が昇華し、ここに孔130が形成される。
【0045】
なお、
図3に示した例では、孔130は貫通孔である。しかしながら、これは単なる一例であって、孔130は、非貫通孔であってもよい。
【0046】
次に、試料台245を水平方向に移動させ、ダミーガラス基板110を所定の場所に配置する。その後、同様の工程により、第2の孔が形成される。
【0047】
このような工程を繰り返すことにより、ダミーガラス基板110に複数の孔130を形成することができる。
【0048】
ここで、本願では、簡略化のため、この工程、すなわちレーザ光の照射によりダミーガラス基板110に孔130を形成する工程の条件を、まとめて「第1の条件」と称することにする。「第1の条件」には、レーザ光の種類、レーザ光パワー、照射距離、照射時間およびレーザ光のスポット径などが含まれる。
【0049】
図4には、ダミーガラス基板110の第1の表面112に、複数の孔130が形成された様子を模式的に示す。
【0050】
図4に示すように、ダミーガラス基板110の第1の表面112には、5行×5列の合計25個の孔130が形成されている。以降、各孔130が配置された位置を、「孔加工位置(131)」と称する。
【0051】
各孔130の開口寸法は、特に限られず、例えば、開口の直径は、20μm〜300μmの範囲であってもよい。ただし、各孔130の開口寸法は、必ずしも同一である必要はなく、各孔130は、それぞれ異なる開口寸法を有してもよい。
【0052】
ここで、前述のように、第1の表面112に実際に形成された各孔130の孔加工位置131は、
図2に示した孔形成目標位置120から僅かながらずれる場合があることに留意する必要がある。ただし、
図4では、図が複雑になることを避けるため、各孔130の孔加工位置131は、
図2に示した孔形成目標位置120と一致するように示されている。
【0053】
(ステップS120)
次に、孔130を有するダミーガラス基板110が熱処理される。
【0054】
熱処理の条件は、使用するダミーガラス基板110の種類、ダミーガラス基板110の残留応力および/または反りの程度によって定められる。例えば、熱処理は、ダミーガラス基板110の徐冷点をT
a(℃)としたとき、最高温度T
maxがT
a±10℃の範囲となるように実施されてもよい。最高温度T
maxは、T
a±5℃の範囲であることが好ましい。また、熱処理は、最高温度T
maxでの保持時間が、約1分〜2時間の範囲となるように実施されてもよい。この保持時間は、1時間〜2時間の範囲であることが好ましい。
【0055】
図5には、熱処理後のダミーガラス基板110の第1の表面112を模式的に示す。
【0056】
図5に示すように、熱処理後のダミーガラス基板110の第1の表面112には、5行×5列の合計25個の孔140が形成されている。以降、各孔140が配置された位置を、「熱処理後位置(141)」と称する。
【0057】
ここで、前述のように、第1の表面112における各孔140の熱処理後位置141は、
図2に示した孔形成目標位置120からずれる場合があることに留意する必要がある。ただし、
図5では、図が複雑になることを避けるため、各孔140の熱処理後位置141は、
図2に示した孔形成目標位置120と一致するように示されている。
【0058】
(ステップS130)
前述のように、通常の場合、第1の孔加工ステップ(ステップS110)および第1の熱処理ステップ(ステップS120)により、ダミーガラス基板110の各孔140の熱処理後位置141は、孔形成目標位置120からずれる。
【0059】
そこで、このステップS130では、各孔140の孔形成目標位置120からの位置ずれ挙動が把握される。
【0060】
以下、一例を挙げてこの工程について詳しく説明する。
【0061】
図6には、第1の熱処理ステップ(S120)後に得られる各孔140の、孔形成目標位置120からのずれの影響の一例を模式的に示す。
図6には、矢印によって、熱処理後位置141にある各孔140(矢印の先端)における、孔形成目標位置120(矢印の始点)からのずれが模式的に示されている。
【0062】
ここで、各孔140における熱処理後位置141の孔形成目標位置120からのずれ量を評価するため、第1の表面112上の基準点として、「基準孔140C」を設定する。基準孔140Cは、第1の熱処理ステップ(S120)後に得られる熱処理後位置141にある孔のうち、孔形成目標位置120に対するずれ量が実質的に0(ゼロ)となる孔として定義される。
【0063】
例えば、
図6に示した例では、熱処理後位置141の配列を構成する各孔140は、配列の中心にある孔140を基準孔140Cとし、この基準孔140Cを原点O(0,0)とするXY平面上の座標(x,y)で表示されている。例えば、原点O(0,0)は、ダミーガラス基板110の中心であってもよい。
【0064】
ここで、基準孔140C、すなわち座標O(0,0)は、定義により、ステップS120の実施後における各孔の相対位置を表す際の基準として使用することができる。
【0065】
例えば、ダミーガラス基板110の第1の孔加工ステップ(S110)〜第1の熱処理ステップ(S120)によって、各孔140の熱処理後位置141は、
図6の矢印に示すように変化する。すなわち、熱処理後位置141にある各孔140は、孔形成目標位置120から、原点O(0,0)の基準孔140Cに向かって、座標のx値および/またはy値の絶対値が小さくなる方向に移動する。
【0066】
ここで、各矢印の長さは、熱処理後位置141にある各孔140の、孔形成目標位置120からの相対的な変化量(以下、「ずれ量ΔP」と称する)に対応する。従って、
図6は、矢印が大きな孔140ほど、ずれ量ΔPが大きくなることを示している。ただし、
図6において、各孔140の孔形成目標位置120からのずれ量ΔPは、誇張して示されていることに留意する必要がある。
【0067】
具体的に説明すると、原点O(0,0)から孔形成目標位置120までの距離dに応じて、孔140のずれ量ΔPは変化し、距離dが大きな孔形成目標位置120に対応する孔140ほど、ずれ量ΔPが大きくなる。例えば、熱処理後位置141が座標(1,1)、(−1、1)、(−1,−1)および(1、−1)にある各孔140のずれ量ΔPは、ほぼ同等であり、これらのずれ量ΔPは、熱処理後位置141が座標(1,0)、(0,1)、(−1、0)および(0、−1)にある各孔140のずれ量ΔPよりも大きくなる。同様に、熱処理後位置141が座標(2,2)、(−2、2)、(−2,−2)および(2、−2)にある各孔140のずれ量ΔPは、ほぼ同等であり、これらのずれ量ΔPは、熱処理後位置141が座標(2,1)、(1,2)、(−1、2)、(−2、1)、(−2、−1)、(−1、−2)、(1、−2)、および(2、−1)にある各孔140のずれ量ΔPよりも大きくなる。
距離dとずれ量ΔPとの間には、近似的に直線関係(比例関係)が成り立つ。この直線の傾きをmとすると、m=ΔP/dである。
【0068】
このようなXY座標を用いることにより、ダミーガラス基板110において、孔形成目標位置120からの孔140の位置ずれ状態を把握することができる。
【0069】
なお、
図6に示した孔140の配列の位置ずれ挙動は、単なる一例であって、熱処理後の孔140の配列は、別の態様で位置がずれてもよい。また、例えば、XY座標の原点Oは、必ずしも配列の中心にある孔140である必要はなく、任意の孔140をXY座標の原点Oとしてもよい。
【0070】
(ステップS140)
次に、被加工対象(例えば製品)となるガラス基板、すなわち本処理用ガラス基板が準備される。前述のように、この本処理用ガラス基板は、ダミーガラス基板110と少なくとも形状、寸法および組成が実質的に等しい基板である。本処理用ガラス基板は、ダミーガラス基板110と実質的に同じガラス基板であってもよい。
【0071】
次に、前述のステップS110において、ダミーガラス基板110に孔130を形成する際に適用した「第1の条件」により、本処理用ガラス基板に複数の孔が形成される。これにより、ダミーガラス基板110に形成された孔130とほぼ等しい態様で、本処理用ガラス基板に孔を形成することができる。
【0072】
ただし、このステップS140では、本処理用ガラス基板におけるレーザ光の照射位置は、前述のダミーガラス基板110の場合とは異なることに留意する必要がある。すなわち、本処理用ガラス基板のレーザ光の照射位置は、ステップS130で把握された、各孔140の孔形成目標位置120からのずれ量ΔPを考慮して、決定される。
【0073】
以下、一例として、本処理用ガラス基板の「孔形成目標位置」に、5×5のマトリクス状に孔の配列を配置する場合を考える。ここで、本処理用ガラス基板の「孔形成目標位置」は、前述のように、以降の第2の熱処理ステップ(ステップS150)後に各孔が配置されるべき目標位置を意味する。
【0074】
この場合、本処理用ガラス基板におけるレーザ光の照射位置の配列は、
図7のように表される。
【0075】
図7には、本処理用ガラス基板の第1の表面におけるレーザ光の照射位置の配列を模式的に示す。
【0076】
図7に示すように、本処理用ガラス基板310の第1の表面312における各レーザ光の照射位置485(485−1〜485−25)は、XY平面上に、5×5のマトリクス状に配置される。なお、照射位置485−13は、基準孔であり、孔形成目標位置320の中心Cに配置される。この位置は、本処理用ガラス基板310の第1の表面312の中心であってもよい。また、
図7には、孔形成目標位置320が破線状丸印で示されている。
【0077】
図7からわかるように、各レーザ光の照射位置485(485−1〜485−25)は、前述の
図6で示したずれ量ΔPを補正した位置に配置される。
レーザ光の照射位置485は、以下のようにして得られる。本処理用ガラス基板310における基準孔を原点(0、0)として、照射位置485の座標を(a、b)、孔形成目標位置320の座標を(x、y)とする。補正係数をαとして、a=α×x、b=α×yとする。また、補正係数α=d/(d−ΔP)である。この式の右辺の分母、分子それぞれをdで除すると、α=1/(1−ΔP/d)となる。さらに前記の距離dとずれ量ΔPとの比例関係における傾きm=ΔP/dを当てはめると、α=1/(1−m)と表され、傾きmから補正係数αが得られる。得られたαの値と孔形成目標位置320の座標(x、y)の値と、前記の式a=α×x、b=α×yにより、照射位置485の座標(a、b)が得られる。
【0078】
例えば、レーザ光の照射位置485−8、485−12、485−14および485−18は、それぞれの孔形成目標位置320と中心Cを結んだ直線に沿って、それぞれの孔形成目標位置320から第1の距離だけ外側に遠ざかるように配置される。また、照射位置485−7、485−9、485−17および485−19は、それぞれの孔形成目標位置320と中心Cを結んだ直線に沿って、それぞれの孔形成目標位置320から第2の距離だけ外側に遠ざかるように配置される。この第2の距離は、第1の距離よりも大きい。
【0079】
なお、中心Cに配置された照射位置485−13は、定義上、以降の第2の熱処理ステップ(ステップS150)を実施しても孔の位置が変化しないため、この段階において、既に孔形成目標位置320に配置されている。
【0080】
次に、このような照射位置485を目標として、本処理用ガラス基板310の第1の表面312にレーザ光が照射され、複数の孔が加工される。
【0081】
このような方法で孔が形成された場合、以降のステップS150において本処理用ガラス基板310を熱処理した際に、熱処理後の各孔を、それぞれの孔形成目標位置320に配置することが可能となる。
【0082】
(ステップS150)
次に、前述のように孔が形成された本処理用ガラス基板310に対して、熱処理が実施される。
【0083】
ここでの熱処理条件は、前述のステップS120において実施された、ダミーガラス基板110に対する熱処理条件と実質的に等しい。
【0084】
本処理用ガラス基板310を熱処理した際に、熱処理後の各孔は、本処理用ガラス基板310の所望の位置、すなわち孔形成目標位置320に配置されるようになる。例えば、
図7に示した照射位置485の配列に従って、レーザ光を照射し、孔を形成した場合、本処理用ガラス基板310の熱処理後に、各孔は、破線の丸印に示した孔形成目標位置320に配置されるようになる。
【0085】
以上の工程により、第1の方法では、熱処理後の本処理用ガラス基板310において、孔形成目標位置320に、高い精度で各孔を配置することが可能となる。
【0086】
(本発明の他の実施形態による、孔を有するガラス基板の製造方法)
本発明の他の実施形態による、孔を有するガラス基板の製造方法を説明する。具体的には、ステップS110においてダミーガラス基板110の第1の表面112の「孔形成目標位置」120のレーザ光を照射する前、および、ステップS140において本処理用ガラス基板の第1の表面にレーザ光を照射する前に、熱処理(以下、プレアニールとも称する)を行ってもよい。その他の工程は、前述の
図1等を用いて説明した工程と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
プレアニールをすることで、レーザ光照射による孔加工した後の熱処理でガラス基板が収縮することを抑制できる。プレアニールにより、孔形成後の熱処理の影響による孔の位置が所定の位置からずれることは防ぐことができるが、レーザ光照射による孔加工中の位置ずれは抑えることができない。したがって、前述のとおり、ダミーガラス基板により位置ずれを把握し、本処理用ガラス基板には位置ずれ量を考慮してレーザ光照射による孔加工を形成し、熱処理することで、孔加工の位置ずれを抑制することができる。
【0088】
プレアニールの条件は、前述のステップS120で説明した熱処理の条件を用いればよい。
【0089】
(本発明の一実施形態によるインターポーザの製造方法)
次に、
図8を参照して、本発明の一実施形態によるインターポーザの製造方法について説明する。
【0090】
図8には、本発明の一実施形態によるインターポーザ(貫通電極を有するガラス基板)の製造方法(以下、単に「第2の方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0091】
図8に示すように、第2の方法は、
(a)レーザ光を用いた第1の条件で、ダミーガラス基板の複数の貫通孔形成目標位置に向かってレーザ光を照射し、前記ダミーガラス基板に複数の貫通孔を形成する、第1の貫通孔加工ステップ(ステップS210)と、
(b)前記ダミーガラス基板を熱処理する、第1の熱処理ステップ(ステップS220)と、
(c)各貫通孔に対して、前記貫通孔形成目標位置と、前記(b)のステップの後の位置の間のずれ量を把握する、位置ずれ把握ステップ(ステップS230)と、
(d)前記ダミーガラス基板と形状、寸法および組成が実質的に等しいガラス基板に、前記レーザ光を用いた前記第1の条件により、複数の貫通孔を形成するステップであって、前記ガラス基板における前記レーザ光の照射位置は、前記(c)のステップで把握された前記ずれ量を考慮して決定される、第2の孔加工ステップ(ステップS240)と、
(e)前記(b)のステップに適用した熱処理条件で、前記ガラス基板を熱処理する、第2の熱処理ステップ(ステップS250)と、
(f)前記ガラス基板の前記貫通孔に導電性物質を充填する、導電性物質充填ステップ(ステップS260)と、
を有する。
【0092】
このうち、ステップS210〜ステップS250は、それぞれ、前述の第1の方法におけるステップS110〜ステップS150と実質的に同じである。(ただし、第2の方法において、ステップS110〜ステップS150を参照する際には、「孔」および「孔〜」と言う用語を、「貫通孔」および「貫通孔〜」と読み替える必要がある。例えば、「孔形成目標位置」は、「貫通孔形成目標位置」となり、「孔加工位置」は、「貫通孔加工位置」となる。)
そこで、ここでは、ステップS260について、詳しく説明する。
【0093】
(ステップS260)
ステップS210〜ステップS250を経て、各貫通孔が孔形成目標位置に配置されたガラス基板を得ることができる。
【0094】
次のステップS260では、各貫通孔内に導電性物質が充填される。
【0095】
導電性物質は、特に限られず、例えば、銅、銀、および金のような金属またはその合金であってもよい。
【0096】
導電性物質の貫通孔内への充填方法は、特に限られない。導電性物質は、例えば、電解めっき法、または無電解めっき法等のめっき法により、貫通孔内に充填されてもよい。そのような導電性物質の充填技術は、当業者には明らかである。
【0097】
以上のステップにより、貫通孔内に導電性物質が充填されたインターポーザを製造することができる。
【0098】
前述のように、各貫通孔は、高い精度でガラス基板の所定の位置に配置されている。
【0099】
従って、この第2の方法では、高い精度で所定の位置に導電性ビアを有するインターポーザを製造することができる。
【0100】
以上、第1の方法および第2の方法を例に、本発明の一実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、その他の態様で実施されてもよい。
【0101】
例えば、本発明の別の実施形態では、第1の方法と同様の工程を有する、ガラス基板に孔を形成する方法が提供されてもよい。そのような方法では、前述のような特徴により、高い精度で、ガラス基板に孔を形成することができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0103】
前述の第1の方法を用いて、以下の手順で孔を有するガラス基板を製造した。
【0104】
本処理用ガラス基板には、150mm×150mm×厚さ0.3mmの矩形形状の無アルカリガラスを使用した。本処理用ガラス基板の徐冷点T
aは、710℃である。ダミーガラス基板には、本処理用ガラス基板と同じものを使用した。
【0105】
まず、前述のようなレーザ加工装置を用いて、ダミーガラス基板の孔形成目標位置に、レーザ光を照射した。孔形成目標位置は、等間隔に配置された5行×5列の合計25個の孔の配列とした。
【0106】
レーザ光には、CO
2レーザを使用し、レーザ光パワーは、50Wとした。レーザ光のスポット径は、70μmφとした。
【0107】
レーザ光の照射により、ダミーガラス基板に、前述の
図4に示したような孔の配列パターンが形成された。なお、孔の配列パターンは、パターンの中心にある孔を基準孔とし、この基準孔がダミーガラス基板の中心に配置されるように配置した。孔同士の間のピッチは、X方向およびY方向ともに、20mm(20000μm)を目標とした。
【0108】
次に、このダミーガラス基板の熱処理を行った。熱処理は、ダミーガラス基板を710℃で2時間保持することにより実施した。
【0109】
熱処理後に、基準孔を基準として、ダミーガラス基板に配置された各孔の位置を確認したところ、各孔の位置が孔形成目標位置からずれていることが確認された。
【0110】
より具体的には、熱処理後の各孔の位置は、それぞれの孔形成目標位置と基準孔の中心Cとを結ぶ直線に沿って、中心Cの方に向かって移動した。また、この移動量は、中心Cからの距離が大きな位置にある孔ほど、大きくなった。
【0111】
図9には、熱処理後のダミーガラス基板におけるそれぞれの孔において得られた、孔形成目標位置からのずれ量ΔP(μm)を示す。
【0112】
なお
図9において、横軸は、基準孔の中心Cから、それぞれの孔の孔形成目標位置までの距離d(μm)を表し、縦軸は、熱処理後位置にある孔の、孔形成目標位置からの変化量、すなわちずれ量ΔP(μm)を表している。
【0113】
図9から、距離dとずれ量ΔPとの間には、近似的に直線関係が成り立つことがわかる。この直線の傾きm(=ΔP/d)は、0.00095であった。
【0114】
次に、前述のダミーガラス基板に適用したレーザ光の照射条件と同じ条件により、本処理用ガラス基板に対してレーザ光を照射し、5×5のマトリクス状の孔のパターンを形成した。なお、パターンの中心にある孔は、基準孔とし、本処理用ガラス基板の中心位置に形成した。
【0115】
ここで、レーザ光は、
図9で得られた距離dとずれ量ΔPとの間の関係(m=0.00095)を考慮した位置に照射した。
【0116】
以下、
図10を参照して、本処理用ガラス基板におけるレーザ光の照射位置の具体的な決定操作について説明する。
【0117】
図10には、本処理用ガラス基板910における、レーザ光の照射位置985の配列990の第1の部分990Aを示す。配列990の第1の部分990Aは、レーザ光の照射位置985−1〜985−9で構成される。
【0118】
図10では、配列990の中心にある照射位置985−7がXY平面の原点O(0,0)となるようにして、各照射位置985−1〜985−9が表されている。
【0119】
また、
図10には、各孔の孔形成目標位置が破線の丸印で示されている。例えば、照射位置985−1に対応する孔の孔形成目標位置は、座標(0,40000)で表され、照射位置985−5に対応する孔の孔形成目標位置は、座標(20000,20000)で表され、照射位置985−9に対応する孔の孔形成目標位置は、座標(40000,0)で表される。
【0120】
なお、
図10には示されていないが、配列990は、照射位置985−7を中心として、5×5のマトリクス状に配置された25箇所の照射位置で構成される。例えば、配列990を構成する照射位置の一部(例えば配列の第2の部分)は、
図10に示された照射位置985−1〜985−9とY軸に対称な位置に配置され、配列990を構成する照射位置の別の一部(例えば配列の第3の部分)は、
図10に示された照射位置985−1〜985−9とX軸に対称な位置に配置される。また、配列990を構成する照射位置の別の一部(例えば配列の第4の部分)は、
図10に示された照射位置985−1〜985−9を、原点Oを中心として、180°回転した位置に配置される。
【0121】
このような表記において、レーザ光照射前の本処理用ガラス基板910内の配列990の第1の部分990Aを構成する一つの照射位置985、すなわちXY座標(a,b)は、孔形成目標位置の座標を(x,y)としたとき、補正係数をαとして、a=αx、b=αyで表される。ここで、前述の結果から、補正係数α=d/(d−ΔP)=1/(1−m)=1.00095である。
【0122】
例えば、照射位置985−1は、孔形成目標位置の座標(x,y)が(0,40000)であるため、a=α×0=0、およびb=α×40000=40038と計算され、その結果、座標(a,b)=(0,40038)となる。同様に、照射位置985−2は、孔形成目標位置の座標(x,y)が(20000,40000)であるため、a=α×20000=20019、およびb=α×40000=40038と計算され、その結果、座標(a,b)=(20019,40038)となる。また、照射位置985−5は、孔形成目標位置の座標(x,y)が(20000,20000)であるため、a=α×20000=20019、およびb=α×20000=20019と計算され、その結果、座標(a,b)=(20019,20019)となる。さらに、照射位置985−9は、孔形成目標位置の座標(x,y)が(40000,0)であるため、a=α×40000=40038、およびb=α×0=0と計算され、その結果、座標(a,b)=(40038、0)となる。
【0123】
以上、レーザ光の照射位置の配列990を構成する第1の部分990Aに存在する各照射位置985−1〜985−9を例に、これらの位置の決定操作について説明した。しかしながら、レーザ光の照射位置の配列990を構成する第1の部分990A以外の部分においても同様の操作により、各照射位置を決定することができる。
【0124】
例えば、上記操作では、照射位置985−7を原点とするXY平面において、第1象限に含まれる各照射位置を決定することができた。照射位置985−7を原点とするXY平面において、第2象限、第3象限、または第4象限に含まれる各照射位置についても、同様の操作で位置を決定することができる。
【0125】
このように定めた照射位置985にレーザ光を照射し、本処理用ガラス基板に25個の孔を形成した。
【0126】
次に、この本処理用ガラス基板に対して、前述の条件(710℃で2時間保持する条件)で熱処理を行った。また、熱処理後の本処理用ガラス基板において、各孔の位置(熱処理後位置)を測定した。
【0127】
図11には、本処理用ガラス基板における熱処理後の各孔の孔形成目標位置からのずれ量ΔP(μm)を示す。
【0128】
なお、
図11において、横軸は、基準孔の中心Cから孔形成目標位置までの距離d(μm)を表し、縦軸は、各孔の熱処理後位置と孔形成目標位置との間の距離、すなわちずれ量ΔP(μm)を表している。
【0129】
図11に示すように、熱処理後の本処理用ガラス基板において、各孔の熱処理後位置は、それぞれの孔形成目標位置とほぼ一致していることがわかる。例えば、最もずれ量ΔPが大きな、中心Cからの距離dが約45000μmの位置にある孔においても、そのずれ量ΔPは、わずか1.5μm程度に抑制されている。
【0130】
この結果は、使用したレーザ加工装置の位置決め精度が±5μm程度であることを考慮すると、熱処理後の本処理用ガラス基板に、極めて良好な精度で孔を配置することができることを示唆するものである。
【0131】
このように、本発明の一実施形態による方法を使用することにより、熱処理後に、本処理用ガラス基板の孔形成目標位置に、高い精度で各孔を配置することができることが確認された。