【実施例】
【0056】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0057】
実施例1
水素化工程
オートクレーブに、オレイン酸カリウム2部、イオン交換水180部、アクリロニトリル34部、メタクリル酸4部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を順次仕込んだ。反応器内部を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン62部を封入した。反応器を10℃に冷却して、クメンハイドロパーオキサイド0.01部、硫酸第一鉄0.01部を添加した。次に反応器を10℃に保ったまま16時間攪拌し、内容物をよく混合した。その後、反応器内へ10%のハイドロキノン水溶液を添加して重合停止させた。重合転化率は90%であった。その重合反応液から未反応単量体を除去し、水素化反応に供するアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体ラテックスを得た。
【0058】
塩化パラジウム(塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比で2700重量ppm)に対して、塩化パラジウム中のPd金属の2倍モル当量の塩化ナトリウムを含有する水溶液を添加してパラジウム水溶液を得た。そして、得られたパラジウム水溶液300部に、重量平均分子量5,000のポリビニルピロリドンを、塩化パラジウム中のPd金属に対して重量比で5倍となる量を添加し、さらに水酸化カリウム水溶液を添加することで、pH12.0の触媒水溶液を調製した。
【0059】
次いで、上記にて得られたアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体ラテックスを全固形分濃度を25重量%に調整し、全固形分濃度を調整したアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体ラテックス400部(固形分換算で100部)と、上記にて調製した触媒水溶液300部とを、攪拌機付オートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流してラテックス中の溶存酸素を除去した。系内を2回水素ガスで置換後、3MPaの水素を加圧した。内容物を50℃に加温して6時間反応させ、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得た。
【0060】
不溶性錯体形成工程
次いで、上記にて得られたラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物に塩基性化合物を添加し、水素化反応に使用した塩化パラジウム中に含まれるPd金属の5倍モル当量に相当するジメチルグリオキシムおよびジメチルグリオキシムの2倍モル当量に相当する水酸化カリウムの混合水溶液を添加し、さらに、Pd金属の30倍モル当量に相当する過酸化水素水を添加した。そして80℃に加温し5時間攪拌したところ、ラテックス中に不溶性錯体が析出した。
【0061】
不溶性錯体除去工程
そして、上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、
図1に示すデカンタ型遠心分離装置(製品名「PTM300型 スクリューデカンタ」、巴工業社製)を用いて、遠心分離操作による不溶性錯体の除去を行った。具体的には、不溶性錯体を含有するラテックスを、
図1に示すデカンタ型遠心分離装置中に、フィードチューブ3を介して供給口9から連続的に供給し、外側回転筒1およびスクリューコンベア2の回転により連続的に遠心分離させることで、不溶性錯体を分離し、不溶性錯体が除去されたラテックスをダムプレート5からオーバーフローさせることで、デカンタ型遠心分離装置外へと排出させた。また、遠心分離操作においては、分離された不溶性錯体を固形物排出口4からデカンタ型遠心分離装置外に連続的に排出させながら行った。そして、デカンタ型遠心分離装置外に排出された、不溶性錯体が除去されたラテックスに対して、300メッシュのろ過装置によるろ過を行うことで、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0062】
なお、デカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作は、以下の条件にて行った。
デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度:6.0m
3/hr
遠心力:1,000G
外側回転筒1とスクリューコンベア2との回転速度差:4rpm
【0063】
そして、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりや、各ろ過装置における不溶性錯体の詰まりは発生せず、1度も操業を停止することなく、遠心分離操作を行うことができた。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.62kg/m
3であった。なお、不溶性錯体の排出速度は、たとえば、「ラテックス1m
3当たりの不溶性錯体の量(kg/m
3)×触媒回収率(%)/100」にしたがって求めることもできる。
【0064】
遠心分離操作の結果、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は32.9重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率(パラジウム金属の回収率(%)=回収されたパラジウム金属量/水素化に使用した塩化パラジウム中のパラジウム金属量×100)は90.5%であった。
【0065】
実施例2
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比で700重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0066】
不溶性錯体除去工程
上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度を8.0m
3/hrに、遠心力を2,100Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、連続的に遠心分離操作を行い、実施例1と同様にして、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0067】
実施例2においても、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりや、各ろ過装置における不溶性錯体の詰まりは発生せず、1度も操業を停止することなく、遠心分離操作を行うことができた。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.12kg/m
3であった。
【0068】
遠心分離操作の結果、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は36.8重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は93.2%であった。
【0069】
実施例3
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比で1300重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0070】
不溶性錯体除去工程
上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度を10.0m
3/hrに、遠心力を6,000Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、連続的に遠心分離操作を行い、実施例1と同様にして、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0071】
実施例3においても、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりや、各ろ過装置における不溶性錯体の詰まりは発生せず、1度も操業を停止することなく、遠心分離操作を行うことができた。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.31kg/m
3であった。
【0072】
遠心分離操作の結果、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は35.2重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は94.1%であった。
【0073】
実施例4
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比で2400重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0074】
不溶性錯体除去工程
上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度を4.5m
3/hrに、遠心力を600Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、連続的に遠心分離操作を行い、実施例1と同様にして、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0075】
実施例4においても、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりや、各ろ過装置における不溶性錯体の詰まりは発生せず、1度も操業を停止することなく、遠心分離操作を行うことができた。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.58kg/m
3であった。
【0076】
遠心分離操作の結果、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は31.5重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は91.8%であった。
【0077】
実施例5
水素化工程
オートクレーブに、オレイン酸カリウム2部、イオン交換水180部、アクリロニトリル25部、アクリル酸2−メトキシエチル30部、マレイン酸モノn−ブチル5部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を順次仕込んだ。反応器内部を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン40部を封入した。反応器を10℃に冷却して、クメンハイドロパーオキサイド0.01部、硫酸第一鉄0.01部を添加した。次に反応器を10℃に保ったまま16時間攪拌し、内容物をよく混合した。その後、反応器内へ10%のハイドロキノン水溶液を添加して重合停止させた。重合転化率は90%であった。その重合反応液から未反応単量体を除去し、水素化反応に供するアクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸2−メトキシエチル−マレイン酸モノn−ブチル共重合体ラテックスを得た。
【0078】
塩化パラジウム(塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸2−メトキシエチル−マレイン酸モノn−ブチル共重合体の重量比で2000重量ppm)に対して、塩化パラジウム中のPd金属の2倍モル当量の塩化ナトリウムを含有する水溶液を添加してパラジウム水溶液を得た。そして、得られたパラジウム水溶液300部に、重量平均分子量5,000のポリビニルピロリドンを、塩化パラジウム中のPd金属に対して重量比で5倍となる量を添加し、さらに水酸化カリウム水溶液を添加することで、pH12.0の触媒水溶液を調製した。
【0079】
次いで、上記にて得られたアクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸2−メトキシエチル−マレイン酸モノn−ブチル共重合体ラテックスを全固形分濃度を25重量%に調整し、全固形分濃度を調整したアクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸2−メトキシエチル−マレイン酸モノn−ブチル共重合体ラテックス400部(固形分換算で100部)と、上記にて調製した触媒水溶液300部とを、攪拌機付オートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流してラテックス中の溶存酸素を除去した。系内を2回水素ガスで置換後、3MPaの水素を加圧した。内容物を50℃に加温して6時間反応させ、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸2−メトキシエチル−マレイン酸モノn−ブチル共重合体反応混合物を得た。
【0080】
不溶性錯体形成工程
次いで、上記にて得られたラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸2−メトキシエチル−マレイン酸モノn−ブチル共重合体反応混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0081】
不溶性錯体除去工程
上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度を6.5m
3/hrに、遠心力を1,300Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、連続的に遠心分離操作を行い、実施例1と同様にして、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0082】
実施例5においても、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりや、各ろ過装置における不溶性錯体の詰まりは発生せず、1度も操業を停止することなく、遠心分離操作を行うことができた。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.46kg/m
3であった。
【0083】
遠心分離操作の結果、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は35.5重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は95.1%であった。
【0084】
比較例1
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比で2600重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0085】
不溶性錯体除去工程
上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度を1.5m
3/hrに、遠心力を120Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、連続的に遠心分離操作を行い、実施例1と同様にして、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0086】
比較例1においても、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりが頻繁に発生し、メンテナンスを行うための、デカンタ型遠心分離装置の運転の停止を3回行う必要があった。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.52kg/m
3であった。
【0087】
遠心分離操作の結果、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は58.2重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は78.0%であった。
【0088】
比較例2
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比で3000重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0089】
不溶性錯体除去工程
上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度を8.0m
3/hrに、遠心力を12000Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、連続的に遠心分離操作を行い、実施例1と同様にして、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0090】
比較例2においても、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりが頻繁に発生し、メンテナンスを行うための、デカンタ型遠心分離装置の運転の停止を12回行う必要があった。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.62kg/m
3であった。
【0091】
また、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は38.0重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は83.0%であった。
【0092】
比較例3
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比で900重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0093】
不溶性錯体除去工程
上記にて調製した不溶性錯体を含有するラテックスについて、デカンタ型遠心分離装置へのラテックスの供給速度を18.0m
3/hrに、遠心力を3000Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、連続的に遠心分離操作を行い、実施例1と同様にして、水素化共役ジエン系重合体ラテックスを連続的に製造した。
【0094】
比較例3においても、上記したデカンタ型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、デカンタ型遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりや、各ろ過装置における不溶性錯体の詰まりは発生せず、1度も操業を停止することなく、遠心分離操作を行うことができた。また、遠心分離処理中における、デカンタ型遠心分離装置外への不溶性錯体の排出速度は、デカンタ型遠心分離装置に供給されたラテックス1m
3当たりの、不溶性錯体の排出量(塩化パラジウム換算での排出量)で、0.22kg/m
3であった。
【0095】
遠心分離操作の結果、デカンタ型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は55.3重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は72.0%であった。
【0096】
比較例4
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比1800重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0097】
不溶性錯体除去工程
遠心分離装置として、
図1に示すデカンタ型遠心分離装置に代えて、ディスクセパレーター型遠心分離装置(製品名「ディスクセパレーター SJ180F」、三菱化工機社製)を使用して、遠心分離操作を行った。なお、比較例4で用いたディスクセパレーター型遠心分離装置は、ディスクの回転により連続的に遠心分離を行う装置であり、また、その機構上、遠心分離により分離した固形分(すなわち、不溶性錯体)については、連続的に排出可能となっておらず、装置内に滞留させておく構成となっている。そのため、比較例4においては、不溶性錯体を含有するラテックスを、ディスクセパレーター型遠心分離装置に連続的に行い、連続的に遠心分離操作を行う一方で、分離された不溶性錯体については、ディスクセパレーター型遠心分離装置内に貯めておくという方法とした。また、ディスクセパレーター型遠心分離装置へのラテックスの供給速度は9.0m
3/hrとし、遠心力は18,000Gとした。
【0098】
そして、比較例4においても、上記したディスクセパレーター型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して、連続的に行った。その結果、ラテックス10m
3の遠心分離操作中、分離された不溶性錯体を除去するために、ディスクセパレーター型遠心分離装置の運転の停止を5回行う必要があった。
【0099】
また、ディスクセパレーター型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は62.0重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は93.0%であった。
【0100】
比較例5
水素化工程、不溶性錯体形成工程
塩化パラジウムの使用量を、塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体の重量比1200重量ppmとなる量とした以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行い、ラテックス状態の水素化アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体反応混合物を得て、実施例1と同様にして、ラテックス中に不溶性錯体を析出させた。
【0101】
不溶性錯体除去工程
遠心分離装置として、
図1に示すデカンタ型遠心分離装置に代えて、バスケット型遠心分離装置(製品名「ACE−300」、タナベウィルテック社製)を使用して、遠心分離操作を行った。なお、比較例5で用いたバスケット型遠心分離装置は、バッチ式の遠心分離装置であり、また、その機構上、遠心分離により分離した固形分(すなわち、不溶性錯体)については、連続的に排出可能となっていない。そのため、比較例5においては、不溶性錯体を含有するラテックスを、バスケット型遠心分離装置に逐次供給し、遠心力800Gにて遠心分離操作を行い、遠心分離後のラテックスおよび分離された不溶性錯体を逐次排出させるという操作が必要であった。
【0102】
そして、比較例5においては、上記したバスケット型遠心分離装置を用いた遠心分離操作を、不溶性錯体を含有するラテックス10m
3に対して行うために、ラテックスの供給、遠心分離、および排出という動作を合計で20回行う必要があった。
【0103】
また、バスケット型遠心分離装置外へ排出された不溶性錯体の含水率は64.0重量%であり、不溶性錯体として回収されたパラジウム金属の回収率は84.4%であった。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に、実施例1〜5、比較例1〜5の結果をまとめて示す。
表1に示すように、不溶性錯体を含むラテックスについて、0.5〜15m
3/hrの供給速度にて遠心分離装置に連続的に供給して、200〜10,000Gの遠心力により遠心分離操作を連続的に行うとともに、分離された不溶性錯体を遠心分離装置の外部に連続的に排出した実施例1〜5においては、遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりや、各ろ過装置における不溶性錯体の詰まりは発生せず、1度も操業を停止することなく、遠心分離操作を行うことができ、操業性に優れるものであった。また、パラジウム金属の回収率についても80%以上と高く、また、分離・排出された不溶性錯体の含水率も50重量%以下と低く抑えられており、パラジウム金属の回収効率に優れたものであった。
【0106】
一方、遠心分離操作における遠心力が低すぎる比較例1や、不溶性錯体を含むラテックスの遠心分離装置への供給速度が速すぎる比較例3においては、パラジウム金属の回収率が80%未満と低く、また、分離・排出された不溶性錯体の含水率も50重量%超と高くなる結果となった。さらには、比較例1においては、遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりが頻繁に発生してしまい、メンテナンスを頻繁に行う必要があり、操業性にも劣るものであった。
また、遠心分離操作における遠心力が高すぎる比較例2は、遠心分離装置内における不溶性錯体の詰まりが頻繁に発生してしまい、メンテナンスを頻繁に行う必要があり、操業性に劣るものであった。
さらに、連続式の遠心分離装置であっても、分離・排出された不溶性錯体の排出を連続的に行うことができない比較例4や、バッチ式の遠心分離装置を用いた比較例5においては、遠心分離操作を頻繁に停止する必要があり、操業性に劣るものであった。また、比較例4,5においては、分離・排出された不溶性錯体の含水率が高く、そのため、パラジウム金属の回収効率にも劣るものであった。