(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記板状の物体を保持している前記保持部が下方へ移動を開始した後に、前記板状の物体の形状が所定の形状となるように制御する請求項1または2に記載の搬送システム。
前記制御部は、前記板状の物体を支持している前記支持部が下方へ移動を開始した後に、前記板状の物体の形状が所定の形状となるように制御する請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態について、
図1〜
図9に基づいて、説明する。
【0021】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の構成が概略的に示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0022】
露光装置100は、
図1に示されるように、ベース盤12上の+Y側端部近傍に配置された露光ステーションに配置された露光部200と、露光部200から−Y側に所定距離離れて計測ステーションに配置された計測部300と、ベース盤12上で独立してXY平面内で2次元移動するウエハステージWST及び計測ステージMSTを含むステージ装置50と、不図示の搬出ユニット及び後述するウエハ支持部材125とともにウエハWを搬送する搬送システム120(
図6参照)を構成する搬入ユニット121と、これらの制御系等とを備えている。ここで、ベース盤12は、床面上に防振装置(図示省略)によってほぼ水平に(XY平面に平行に)支持されている。ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成る。また、ベース盤12の内部には、平面モータ(後述)の固定子を構成する、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル17を含むコイルユニットが、収容されている。なお、
図1において、露光ステーションには、ウエハステージWSTが位置しており、ウエハステージWST(より詳細には後述するウエハテーブルWTB)上にウエハWが保持されている。また、露光ステーションの近傍に計測ステージMSTが位置している。
【0023】
露光部200は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU及び局所液浸装置8等を備えている。
【0024】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0025】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(
図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ又は平面モータ等を含むレチクルステージ駆動系11(
図1では不図示、
図6参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(
図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0026】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、例えばレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(
図1では不図示、
図6参照)に送られる。主制御装置20は、レチクルステージRSTの位置情報に基づいて、レチクルステージ駆動系11(
図6参照)を介してレチクルステージRSTを駆動する。なお、本実施形態では、上述したレチクル干渉計に代えてエンコーダを用いてレチクルステージRSTのXY平面内の位置情報が検出されても良い。
【0027】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの
図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、ベース盤12の上方に水平に配置されたメインフレームBDによってその外周部に設けられたフランジ部FLGを介して支持されている。メインフレームBDは
図1及び
図3に示されるようにY軸方向の寸法がX軸方向の寸法より大きな平面視六角形状(矩形の2つの角を切り落としたような形状)の板部材から成り、不図示の防振装置を一部に含む不図示の支持部材によって床面上で支持されている。
図1及び
図3に示されるように、メインフレームBDを取り囲むように平面視矩形枠状のフレームFLが配置されている。フレームFLは、メインフレームBDを支持する支持部材とは、別の支持部材によって、床面上で、メインフレームBDと同じ高さの位置に支持されている。フレームFLのX軸方向に離れた一対の長辺部の−Y側の端部近傍(後述するローディングポジションLPとほぼ同じY位置)からは、それぞれXZ断面L字状の一対(左右対称)の延設部159が下方に突設されている(
図4参照)。
【0028】
投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWST(より正しくは、ウエハWを保持する後述する微動ステージWFS)との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0029】
局所液浸装置8は、露光装置100が、液浸方式の露光を行うことに対応して設けられている。局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも
図1では不図示、
図6参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、
図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。ノズルユニット32は、液体Lqの供給口及び回収口と、ウエハWが対向して配置され、かつ回収口が設けられる下面と、液体供給管31A及び液体回収管31B(いずれも
図1では不図示、
図3参照)とそれぞれ接続される供給流路及び回収流路とを備えている。液体供給管31Aには、その一端が液体供給装置5(
図1では不図示、
図6参照)に接続された不図示の供給管の他端が接続されており、液体回収管31Bには、その一端が液体回収装置6(
図1では不図示、
図6参照)に接続された不図示の回収管の他端が接続されている。本実施形態では、主制御装置20が液体供給装置5(
図6参照)を制御して、液体供給管31A及びノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(
図6参照)を制御して、ノズルユニット32及び液体回収管31Bを介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6とを制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(
図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体Lqとして、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。なお、ArFエキシマレーザ光に対する純水の屈折率nは、ほぼ1.44であり、純水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。なお、
図3では、液体Lqで形成される液浸領域が符号36で示されている。
【0030】
また、投影ユニットPU下方に計測ステージMSTが位置する場合にも、上記と同様に後述する計測テーブルMTBと先端レンズ191との間に液体Lqを満たすことが可能である。
【0031】
ここで、説明は前後するが、ステージ装置50について説明する。ステージ装置50は、
図1に示されるように、ベース盤12上に配置されたウエハステージWST及び計測ステージMST、これらのステージWST,MSTの位置情報を計測する、Y干渉計16,19等を含む干渉計システム70(
図6参照)などを備えている。
【0032】
ウエハステージWSTは、
図1及び
図2(B)等からわかるように、粗動ステージWCSと、粗動ステージWCSに非接触状態で支持され、粗動ステージWCSに対して相対移動可能な微動ステージWFSとを有している。ここで、ウエハステージWST(粗動ステージWCS)は、粗動ステージ駆動系51A(
図6参照)により、X軸及びY軸方向に所定ストロークで駆動されるとともにθz方向に微小駆動される。また、微動ステージWFSは、微動ステージ駆動系52A(
図6参照)によって粗動ステージWCSに対して6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy及びθzの各方向)に駆動される。
【0033】
粗動ステージWCSは、
図2(B)に示されるように、平面視で(+Z方向から見て)X軸方向の長さがY軸方向の長さより幾分長い長方形板状の粗動スライダ部91と、粗動スライダ部91の長手方向の一端部と他端部の上面にYZ平面に平行な状態でそれぞれ固定され、かつY軸方向を長手方向とする長方形板状の一対の側壁部92a,92bと、側壁部92a,92bそれぞれの上面のY軸方向の中央部に内側に向けて固定された一対の固定子部93a、93bと、を備えている。なお、側壁部92a,92bは、固定子部93a、93bとY軸方向の長さをほぼ同じにしても良い。すなわち、側壁部92a,92bは、粗動スライダ部91の長手方向の一端部と他端部の上面のY軸方向の中央部のみに設けても良い。
【0034】
粗動ステージWCSの底面、すなわち粗動スライダ部91の底面には、ベース盤12の内部に配置されたコイルユニットに対応して、
図2(B)に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数の永久磁石18から成る磁石ユニットが設けられている。磁石ユニットは、ベース盤12のコイルユニットと共に、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示される電磁力(ローレンツ力)駆動方式の平面モータから成る粗動ステージ駆動系51A(
図6参照)を構成している。コイルユニットを構成する各コイル17(
図1参照)に供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。
【0035】
粗動スライダ部91の底面には、上記磁石ユニットの周囲に複数のエアベアリング94が固定されている。粗動ステージWCSは、複数のエアベアリング94によって、ベース盤12の上方に所定の隙間(クリアランス、ギャップ)、例えば数μm程度の隙間を介して浮上支持され、粗動ステージ駆動系51Aによって、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。
【0036】
なお、粗動ステージ駆動系51Aとしては、電磁力(ローレンツ力)駆動方式の平面モータに限らず、例えば可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。この他、粗動ステージ駆動系51Aを、磁気浮上型の平面モータによって構成し、該平面モータによって粗動ステージWCSを6自由度方向に駆動できるようにしても良い。この場合、粗動スライダ部91の底面にエアベアリングを設けなくても良くなる。
【0037】
一対の固定子部93a、93bのそれぞれは、例えば外形が矩形板状の部材から成り、それぞれの内部には、複数のコイルから成るコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。
【0038】
微動ステージWFSは、
図2(B)に示されるように、例えば平面視で八角形の高さの低い柱状部材から成る本体部81と、本体部81のX軸方向の一端部と他端部とにそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、本体部81の上面に一体的に固定された平面視矩形の板状部材から成るウエハテーブルWTBと、を備えている。
【0039】
本体部81は、ウエハテーブルWTBと熱膨張率が同じ又は同程度の素材で形成されることが望ましく、その素材は低熱膨張率であることが望ましい。
【0040】
ここで、
図2(B)では、図示は省略されているが、本体部81には、ウエハテーブルWTB(及び不図示のウエハホルダ)に形成された不図示の貫通孔に挿入され、上下動可能な複数(例えば3本)の上下動ピン140(
図4参照)が設けられている。3本の上下動ピン140それぞれの上面には、真空排気用の排気口(不図示)が形成されている。また、3本の上下動ピン140は、それぞれの下端面が台座部材141の上面に固定されている。3本の上下動ピン140は、それぞれ台座部材141の上面の平面視でほぼ正三角形の頂点の位置に配置されている。3本の上下動ピン140それぞれに形成された排気口は、上下動ピン140(及び台座部材141)の内部に形成された排気管路及び不図示の真空排気管を介して真空ポンプ(不図示)に連通されている。台座部材141は、下面の中央部に固定された軸143を介して駆動装置142に接続されている。すなわち、3本の上下動ピン140は、台座部材141と一体で駆動装置142によって上下方向に駆動される。本実施形態では、台座部材141と3本の上下動ピン140と軸143とによって、ウエハ下面の中央部領域の一部を下方から支持可能なウエハセンター支持部材(以下、センター支持部材と略記する)150が構成されている。ここで、3本の上下動ピン140(センター支持部材150)の基準位置からのZ軸方向の変位は、例えば駆動装置142に設けられたエンコーダシステム等の変位センサ145(
図4では不図示、
図6参照)によって検出されている。主制御装置20は、変位センサ145の計測値に基づいて、駆動装置142を介して3本の上下動ピン140(センター支持部材150)を上下方向に駆動する。
【0041】
図2(B)に戻り、一対の可動子部82a、82bは、本体部81のX軸方向の一端面と他端面にそれぞれ固定されたYZ断面が矩形枠状の筐体を有する。以下では、便宜上、これらの筐体を可動子部82a、82bと同一の符号を用いて、筐体82a、82bと表記する。
【0042】
筐体82aは、Y軸方向寸法(長さ)及びZ軸方向寸法(高さ)が、共に固定子部93aよりも幾分長いY軸方向に細長いYZ断面が矩形の開口部が形成されている。筐体82aの開口部内には粗動ステージWCSの固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。筐体82aの上壁部82a
1及び底壁部82a
2の内部には、磁石ユニットMUa
1、MUa
2が、設けられている。
【0043】
可動子部82bは、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。筐体(可動子部)82bの中空部内に粗動ステージWCSの固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。筐体82bの上壁部82b
1及び底壁部82b
2の内部には、磁石ユニットMUa
1、MUa
2と同様に構成された磁石ユニットMUb
1、MUb
2が、設けられている。
【0044】
上述のコイルユニットCUa、CUbは、磁石ユニットMUa
1、MUa
2及びMUb
1、MUb
2にそれぞれ対向するように固定子部93a及び93bの内部にそれぞれ収容されている。
【0045】
磁石ユニットMUa
1、MUa
2及びMUb
1、MUb
2、並びにコイルユニットCUa、CUbの構成は、例えば米国特許出願公開第2010/0073652号明細書及び米国特許出願公開第2010/0073653号明細書等に詳細に開示されている。
【0046】
本実施形態では、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa
1、MUa
2及び固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb
1、MUb
2及び固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含んで、上記米国特許出願公開第2010/0073652号明細書及び米国特許出願公開第2010/0073653号明細書と同様に、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して非接触状態で浮上支持するとともに、非接触で6自由度方向へ駆動する微動ステージ駆動系52A(
図6参照)が構成されている。
【0047】
なお、粗動ステージ駆動系51A(
図6参照)として、磁気浮上型の平面モータを用いる場合、該平面モータによって粗動ステージWCSと一体で微動ステージWFSを、Z軸、θx及びθyの各方向に微小駆動可能となるので、微動ステージ駆動系52Aは、X軸、Y軸及びθzの各方向、すなわちXY平面内の3自由度方向に微動ステージWFSを駆動可能な構成にしても良い。この他、例えば粗動ステージWCSの一対の側壁部92a,92bのそれぞれに、各一対の電磁石を、微動ステージWFSの八角形の斜辺部に対向して設け、各電磁石に対向して微動ステージWFSに磁性体部材を設けても良い。このようにすると、電磁石の磁力により、微動ステージWFSをXY平面内で駆動できるので、可動子部82a,82bと、固定子部93a,93bとによって一対のY軸リニアモータを構成しても良い。
【0048】
ウエハテーブルWTBの上面の中央には、不図示のピンチャックなどのウエハの保持部に備えたウエハホルダを介して、ウエハWが真空吸着等によって固定されている。ウエハホルダはウエハテーブルWTBと一体に形成しても良いが、本実施形態ではウエハホルダとウエハテーブルWTBとを別々に構成し、例えば真空吸着などによってウエハホルダをウエハテーブルWTBの凹部内に固定している。また、ウエハテーブルWTBの上面には、
図2(A)に示されるように、ウエハホルダ上に載置されるウエハの表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面(撥液面)を有し、かつ外形(輪郭)が矩形でその中央部にウエハホルダ(ウエハの載置領域)よりも一回り大きな円形の開口が形成されたプレート(撥液板)28が設けられている。プレート28は、低熱膨張率の材料、例えばガラス又はセラミックス(例えばショット社のゼロデュア(商品名)、Al
2O
3あるいはTiCなど)から成り、その表面には、液体Lqに対する撥液化処理が施されている。具体的には、例えばフッ素樹脂材料、ポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))等のフッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料あるいはシリコン系樹脂材料などにより撥液膜が形成されている。なお、プレート28は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるようにウエハテーブルWTBの上面に固定されている。
【0049】
プレート28の+Y側の端部近傍には、計測プレート30が設けられている。この計測プレート30には、ウエハテーブルWTBのセンターラインCL上に位置する中央に第1基準マークFMが設けられ、該第1基準マークFMを挟むように一対のレチクルアライメント用の第2基準マークRMが、設けられている。
【0050】
ウエハテーブルWTB上には、
図2(A)に示されるように、ウエハホルダに近接して複数(例えば3つ)の反射鏡86が設けられている。3つの反射鏡86は、ウエハホルダの−Y側に近接する位置(センターラインCL上に一致してウエハWのノッチが対向する位置、すなわち平面視においてウエハWの中心に対して6時の方向の位置)に1つ、センターラインCLに関して対称に、平面視においてウエハWの中心に対して5時、7時の方向に各1つ配置されている。なお、
図2(A)では、図示の便宜上から反射鏡86はウエハプレートの円形開口の外側に図示されているが、実際には、ウエハホルダとプレート28の円形開口の境目の部分、プレート28とウエハWとの隙間内に配置されている。これらの反射鏡86の下方には、多孔体が設けられ、液体回収装置6によって回収しきれなかったウエハテーブルWTB上の残留した液体Lqが該多孔体を介して回収される。
【0051】
ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、それぞれ鏡面加工が施され、
図2(A)に示される反射面17a,反射面17bが形成されている。
【0052】
計測ステージMSTは、
図3に示されるように、ステージ本体60と、ステージ本体60上に搭載された計測テーブルMTBとを備えている。
【0053】
ステージ本体60の底面には、不図示ではあるが、ベース盤12のコイルユニット(コイル17)と共に、電磁力(ローレンツ力)駆動方式の平面モータから成る計測ステージ駆動系51B(
図6参照)を構成する、複数の永久磁石から成る磁石ユニットが設けられている。ステージ本体60の底面には、上記磁石ユニットの周囲に複数のエアベアリング(不図示)が固定されている。計測ステージMSTは、前述のエアベアリングによって、ベース盤12の上方に所定の隙間(ギャップ、クリアランス)、例えば数μm程度の隙間を介して浮上支持され、計測ステージ駆動系51Bによって、X軸方向及びY軸方向に駆動される。なお、計測ステージMSTを、XY平面内の3自由度方向に駆動される粗動ステージと該粗動ステージに対して残りの3自由度(又は6自由度)で駆動される微動ステージとを有する構造にしても良い。なお、計測ステージ駆動系51Bを、磁気浮上型の平面モータで構成する場合には、例えば計測ステージを6自由度方向に可動な単体のステージにしても良い。
【0054】
計測テーブルMTBは、平面視矩形の部材から成る。計測テーブルMTBには、各種計測用部材が設けられている。この計測用部材としては、例えば、投影光学系PLの像面上で照明光ILを受光するピンホール状の受光部を有する照度むらセンサ88、投影光学系PLにより投影されるパターンの空間像(投影像)の光強度を計測する空間像計測器96、及び波面収差計測器89が採用されている。照度むらセンサとしては、例えば米国特許第4,465,368号明細書などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。また、空間像計測器としては、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。また、波面収差計測器としては、例えば国際公開第03/065428号(対応米国特許第7,230,682号明細書)明細書などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。なお、上記各センサに加え、例えば米国特許出願公開第2002/0061469号明細書などに開示される、投影光学系PLの像面上で照明光ILを受光する所定面積の受光部を有する照度モニタを採用しても良い。
【0055】
なお、本実施形態では計測テーブルMTB(前述の計測用部材を含んでも良い)の表面も撥液膜(撥水膜)で覆われている。
【0056】
計測テーブルMTBは、+Y側面及び−X側面にそれぞれ鏡面加工が施され、上述したウエハテーブルWTBと同様の反射面95a,95bが形成されている。
【0057】
次に、ウエハステージWST及び計測ステージMSTの位置情報を計測する干渉計システム70について説明する。
【0058】
干渉計システム70(
図6参照)は、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)又は計測ステージMST(計測テーブルMTB)の位置情報を計測する複数の干渉計、具体的には、2つのY干渉計16、19、及び4つのX干渉計136、137、138、139等を含む。本実施形態では、上記各干渉計としては、一部を除いて、測長軸を複数有する多軸干渉計が用いられている。
【0059】
Y干渉計16は、
図1及び
図3に示されるように、投影光学系PLの投影中心(光軸AX、
図1参照)を通るY軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LV(
図3参照)から同一距離−X側,+X側に離れたY軸方向の測長軸に沿って測長ビームB4
1,B4
2をウエハテーブルWTBの反射面17aに照射し、それぞれの反射光を受光する。また、Y干渉計16は、測長ビームB4
1,B4
2との間にZ軸方向に所定間隔をあけてY軸に平行な測長軸(例えば基準軸LV上の測長軸)に沿って測長ビームB3を反射面17aに向けて照射し、反射面17aで反射した測長ビームB3を受光する。
【0060】
Y干渉計19は、計測テーブルMTBの反射面95aに対して、例えば基準軸LVから同一距離−X側,+X側に離れたY軸方向の測長軸に沿って2本の測長ビームB2
1,B2
2を照射し、それぞれの反射光を受光する。
【0061】
X干渉計136は、
図3に示されるように、投影光学系PLの光軸を通るX軸方向の直線(基準軸)LHに関して同一距離離れた2軸の測長軸に沿って測長ビームB5
1,B5
2をウエハテーブルWTBの反射面17bに照射し、それぞれの反射光を受光する。
【0062】
X干渉計137は、
図3に示されるように、後述するプライマリアライメント系AL1の検出中心を通るX軸に平行な直線LAに沿って測長ビームB6をウエハテーブルWTBの反射面17bに照射し、反射光を受光する。
【0063】
X干渉計138は、ウエハのロードが行われるローディングポジションLPを通るX軸に平行な直線LULに沿って測長ビームB7をウエハテーブルWTBの反射面17bに照射し、反射光を受光する。
【0064】
X干渉計139は、反射面95bに対してX軸に平行な測長ビームを照射し、その反射光を受光する。
【0065】
干渉計システム70の各干渉計の計測値(位置情報の計測結果)は、主制御装置20に供給されている(
図6参照)。主制御装置20は、Y干渉計16の計測値に基づいて、ウエハテーブルWTBのY軸方向、θx方向及びθz方向に関する位置情報を求める。また、主制御装置20は、X干渉計136、137及び138のいずれかの出力に基づいてウエハテーブルWTBのX軸方向に関する位置情報を求める。なお、主制御装置20は、X干渉計136の計測値に基づいてウエハテーブルWTBのθz方向に関する位置情報を求めることとしても良い。
【0066】
また、主制御装置20は、Y干渉計19及びX干渉計139の計測値に基づいて、計測テーブルMTB(計測ステージMST)のX軸、Y軸、及びθz方向に関する位置情報を求める。
【0067】
この他、干渉計システム70は、Z軸方向に離間した一対のY軸に平行な測長ビームを、粗動ステージWCSの−Y側の側面に固定された移動鏡の上下一対の反射面をそれぞれ介して一対の固定鏡に照射し、その一対の固定鏡からの上記反射面を介した戻り光を受光するZ干渉計が、一対、基準軸LVから同一距離−X側,+X側に離れて配置されたZ干渉計システムを備えている。このZ干渉計システムの計測値に基づいて、主制御装置20は、Z軸、θy、θzの各方向を含む少なくとも3自由度方向に関するウエハステージWSTの位置情報求める。
【0068】
なお、干渉計システム70の詳細な構成、及び計測方法の詳細の一例については、例えば米国特許出願公開第2008/0106722号明細書などに詳細に開示されている。
【0069】
ウエハステージWSTや計測ステージMSTの位置に関する情報を計測するために本実施形態では干渉計システムを用いたが、別の手段を用いても良い。例えば、米国特許出願公開第2010/0297562号明細書に記載されているようなエンコーダシステムを使用することも可能である。
【0070】
図1に戻り、計測部300は、メインフレームBDの下面に取り付けられたアライメント装置99、及びその他の計測系を備えている。
【0071】
アライメント装置99は、
図3に示される5つのアライメント系AL1、AL2
1〜AL2
4を含む。詳述すると、投影ユニットPUの中心(投影光学系PLの光軸AX、本実施形態では前述の露光領域IAの中心とも一致)を通りかつ基準軸LV上で、光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に、検出中心が位置する状態でプライマリアライメント系AL1が配置されている。プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL2
1,AL2
2と、AL2
3,AL2
4とがそれぞれ設けられている。すなわち、5つのアライメント系AL1,AL2
1〜AL2
4は、その検出中心がX軸方向に沿って配置されている。なお、
図1では、5つのアライメント系AL1,AL2
1〜AL2
4及びこれらを保持する保持装置を含んでアライメント装置99として示されている。
【0072】
5つのアライメント系AL1、AL2
1〜AL2
4のそれぞれとしては、例えば、ウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(各アライメント系内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。5つのアライメント系AL1、AL2
1〜AL2
4からの撮像信号は、主制御装置20に供給されるようになっている(
図6参照)。なお、アライメント装置99の詳細構成は、例えば米国特許出願公開第2009/0233234号明細書に開示されている。
【0073】
搬送システム120の一部を構成する、搬入ユニット121(
図1参照)は、露光前のウエハを、ウエハテーブルWTB上にロードするのに先立ってローディングポジションLPの上方で保持し、ウエハテーブルWTB上にロードするためのものである。また、不図示の搬出ユニットは、露光後のウエハを、ウエハテーブルWTBからアンロードするためのものである。
【0074】
搬入ユニット121は、
図3及び
図4に示されるように、平面視(上方から見て)円形の板状の部材からなり、ウエハWを上方から非接触で吸引するチャックユニット153、チャックユニット153を上下方向に駆動する複数、例えば一対のZボイスコイルモータ144、チャックユニット153の自重を支持する複数、例えば一対の重量キャンセル装置131、チャックユニット153に吸引されたウエハWを下方から支持する一対のウエハ支持部材125等を有している。
【0075】
チャックユニット153は、
図4に示されるように、例えば平面視円形の所定厚さの板部材(プレート)44と、板部材44の下面に所定の配置で埋めこまれた複数のチャック部材124とを備えている。ここで、板部材44は、その内部に配管等が設けられ、その配管内に所定温度に温調された液体が流れることでウエハを所定温度に温調するためのクールプレートを兼ねているものとする。ただし、板部材44は、必ずしもクールプレートを兼ねている必要はない。
【0076】
本実施形態では、−Z方向から見たチャックユニット153の平面図である
図5に示されるように、板部材44は、円盤状の第1部材44Aと、その外側に配置された同心の円環状の第2部材44Bとの2つの部材が一体化されて構成されている。ただし、2つの部材を必ずしも同心で配置する必要はない。また、板部材を必ずしも2つの部材で構成する必要もない。
【0077】
第1部材44Aの下面には、その中央の点(中心点)、及びこれを中心とする仮想の2重の同心円上にそれぞれ等間隔の複数(例えば19個)の点にチャック部材124が配置されている。詳述すると、内側の仮想円上には、中心角60度の間隔の6点のそれぞれにチャック部材124が配置され、外側の仮想円上には、中央の点と上記6点のそれぞれとを結んだ直線上の6点を含む中心角30度の間隔の12点のそれぞれにチャック部材124が配置されている。複数、合計19個のチャック部材124それぞれの下面は、板部材44の下面と同一面となる状態で、板部材44の下面に埋め込まれている(
図4参照)。なお、チャック部材の配置はこれに限定されるものではなく、必ずしも等間隔で配置する必要もない。
【0078】
各チャック部材124は、いわゆるベルヌーイ・チャックから成る。ベルヌーイ・チャックは、周知の如く、ベルヌーイ効果を利用し、噴き出される流体(例えば空気)の流速を局所的に大きくし、対象物を吸引(非接触で保持))するチャックである。ここで、ベルヌーイ効果とは、流体の圧力は流速が増すにつれ減少するというもので、ベルヌーイ・チャックでは、吸引(保持、固定)対象物の重さ、及びチャックから噴き出される流体の流速で吸引状態(保持/浮遊状態)が決まる。すなわち、対象物の大きさが既知の場合、チャックから噴き出される流体の流速に応じて、吸引の際のチャックと保持対象物との隙間の寸法が定まる。本実施形態では、チャック部材124は、その気体流通孔(例えばノズルあるいは噴き出し口)などから気体を噴出してウエハWの周辺に気体の流れ(気体流)を発生させてウエハWを吸引するのに用いられる。吸引の力(すなわち噴出される気体の流速等)の度合いは適宜調整可能で、ウエハWを、チャック部材124で吸引して吸着保持することで、Z軸方向,θx及びθy方向の移動を制限することができる。
【0079】
複数(19個)のチャック部材124は、主制御装置20により、調整装置115(
図6参照)を介して、それぞれから噴き出される気体の流速、流量及び噴き出しの向き(気体の噴出方向)等の少なくとも1つが制御される。これにより、各チャック部材124の吸引力が個別に任意の値に設定される。なお、複数(19個)のチャック部材124を、予め定めたグループ毎に、吸引力を設定可能に構成しても良い。なお、主制御装置20は、気体の温度を制御するようにしても良い。
【0080】
第1部材44Aには、
図5に示されるように、複数のチャック部材124それぞれを取り囲む、幅の狭い(細長い)貫通孔152が複数形成されている。具体的には、複数の貫通孔152の一部は、外周部に位置する12個のチャック部材124を除く7つのチャック部材124のそれぞれを取り囲む六角形の各辺を構成する配置とされている。残りの一部の貫通孔152は、前記一部の貫通孔152のうちの一部とともに外周部に位置する12個のチャック部材124の中心部側半部を、取り囲むような配置とされている。ウエハWを、後述するように、チャック部材124で吸引する際にチャック部材124からウエハWに向けて噴き出された流体(例えば空気)は、貫通孔152を介して外部(チャックユニット153の上方)に放出される。
【0081】
第2部材44Bの内周部近傍には、複数(例えば12個)の貫通孔154が、第1部材44Aの外周部に位置する12個のチャック部材124それぞれの外側に形成されている。各貫通孔154内にセラミックの多孔体から成るポーラスベアリング156が設けられている。複数(例えば12個)のポーラスベアリング156のそれぞれは、配管(不図示)を介して例えばコンプレッサ等から成る気体供給装置48(
図6参照)に接続されている。チャックユニット153による、後述するウエハWの吸引時に、気体供給装置48から供給された気体(例えば加圧空気)が、各ポーラスベアリング156から、下方に(ウエハWに向かって)噴き出され、ウエハWがチャックユニット153に接触するのが防止されるようになっている。各ポーラスベアリング156に供給される気体の圧力、流量等は、主制御装置20(
図6参照)によって制御される。なお、ウエハWとの接触のおそれがない場合には、チャックユニット153にポーラスベアリング156を設けなくても良い。
【0082】
ここで、チャック部材124に供給される気体は、少なくとも温度が一定に調節され、塵埃、パーティクルなどが取り除かれたクリーンエア(例えば圧縮空気)が供給される。すなわち、チャック部材124に吸引されたウエハWは、温調された圧縮空気により、所定の温度に保たれる。また、ウエハステージWST等が配置された空間の温度、清浄度等を設定範囲に保つことができる。
【0083】
チャックユニット153の上面のX軸方向の両端部には、
図4に示されるように、水平面(XY平面)内でX軸方向に延びる一対の支持プレート151それぞれの一端が接続されている。
【0084】
前述したフレームFLの一対の延設部159それぞれの上面には、
図4に示されるように、Zボイスコイルモータ144と重量キャンセル装置131とが、X軸方向に並んで固定されている。この場合、Zボイスコイルモータ144の内側に重量キャンセル装置131が配置されているが、これに限定される必要はない。
【0085】
そして、一対の支持プレート151それぞれの他端部が、一対の延設部159それぞれの上面に固定された重量キャンセル装置131とZボイスコイルモータ144とによって下方から支持されている。
【0086】
一対のZボイスコイルモータ144のそれぞれは、チャックユニット153を上下方向に所定のストローク(チャックユニット153がウエハWの吸引を開始する第1位置と、チャックユニット153に吸引されたウエハWがウエハホルダ(ウエハテーブルWTB)上に載置される第2位置とを含む範囲)で駆動する。一対のZボイスコイルモータ144のそれぞれは、主制御装置20によって制御される(
図6参照)。
【0087】
一対の重量キャンセル装置131のそれぞれは、ピストン部材133aと、ピストン部材133aがスライド自在に設けられたシリンダ133bとを備えている。ピストン部材133aのピストンとシリンダ133bとで区画されるシリンダ133b内部の空間の圧力は、チャックユニット153の自重に応じた値に設定されている。ピストン部材133aのロッド部の上端は、支持プレート151の下面に接続されている。一対の重量キャンセル装置131のそれぞれは、一種の空気ばね装置であり、ピストン部材133aを介して支持プレート151に対して上向き(+Z方向)の力を与え、これにより、一対の重量キャンセル装置131によって、チャックユニット153(及び支持プレート151)の自重の全部又は一部が支持されている。重量キャンセル装置131のシリンダ133b内部に供給される加圧気体の圧力及び量等は、主制御装置20(
図6参照)によって制御されている。ここで、重量キャンセル装置131は、シリンダ133bに沿って、上下方向に移動するピストン部材133aを備えているので、チャックユニット153の上下動の際のガイドを兼ねている。
【0088】
一対のウエハ支持部材125のそれぞれは、フレームFLの一対の延設部159のそれぞれに不図示の接続部材を介して一体的に取り付けられた上下動回転駆動部127と、上下動回転駆動部127によってZ軸方向(上下方向)及びθz方向に駆動される駆動軸126と、駆動軸126の下端面にその上面の長手方向の一端が固定され、XY平面内の一軸方向に延びる支持板128とを備えている。支持板128は、上下動回転駆動部127によって、長手方向の他端部が、チャックユニット153の外周部の一部に対向する第1支持板位置とチャックユニット153に対向しない第2支持板位置との間で、駆動軸126を回転中心としてθz方向に回転駆動されるとともに、所定ストロークで上下方向にも駆動される。支持板128の上面には、他端部近傍に吸着パッド128bが固定されている。吸着パッド128bは、不図示の配管部材を介してバキューム装置に接続されている(バキューム装置、及び配管部材は、それぞれ図示省略)。ウエハWは、支持板128(吸着パッド128b)に下方から支持されると、吸着パッド128bによって真空吸着され、保持される。すなわち、ウエハWは、吸着パッド128bとの間の摩擦力により、X軸方向,Y軸方向及びθz方向の移動が制限される。なお、吸着パッド128bを設けずに、ウエハWとウエハ支持部材125との摩擦力を用いるようにしても良い。
【0089】
一方のウエハ支持部材125の支持板128は、第1支持板位置にあるとき、チャックユニット153の板部材44の中心から見て5時の方向の外周縁に対向し、他方のウエハ支持部材125の支持板128は、第1支持板位置にあるとき、チャックユニット153の板部材44の中心から見て7時の方向の外周縁に対向する(
図3参照)ように、それぞれの第1支持板位置が設定されている。それぞれの支持板128の上面には、吸着パッド128bの駆動軸126側に反射鏡128aが固定されている。
【0090】
一対の支持板128がそれぞれ第1支持板位置にあるとき、それぞれの支持板128上の反射鏡128aのそれぞれに対して、上方から照明光を照射可能な落射照明方式の一対の計測系123a、123bが、一対のウエハ支持部材125の近傍に設けられている。一対の計測系123a、123bは、それぞれ不図示の支持部材を介してメインフレームBDに接続されている。
【0091】
一対の計測系123a、123bのそれぞれは、ウエハWのエッジ部の位置情報を検出する画像処理方式のエッジ位置検出系であり、照明光源、複数の反射鏡等の光路折り曲げ部材、レンズ等、及びCCD等の撮像素子などを含む。
【0092】
搬入ユニット121は、チャックユニット153の板部材44の中心から見て6時の方向の外周縁に対向する所定高さの位置(チャックユニット153にウエハWが吸引されたときに、そのウエハのノッチに対向し得る位置)に、別の反射鏡34が更に設けられている(
図3参照)。反射鏡34に対して、上方から照明光を照射可能な落射照明方式の計測系123c(
図6参照)が、設けられている。計測系123cは、計測系123a、123bと同様に構成されている。
【0093】
3つの計測系123a〜123cにより、それぞれウエハWのエッジ検出が行われたとき、それらの撮像信号は、信号処理系116(
図6参照)に送られるようになっている。
【0094】
搬入ユニット121は、さらに、ウエハ平坦度検出系147(
図6参照)と、複数のチャックユニット位置検出系148(
図4、
図6参照)とを備えている。
【0095】
ウエハ平坦度検出系147は、メインフレームBDの複数箇所、例えばウエハWの外周部近傍の上方3箇所、中心部近傍の上方1箇所にそれぞれ配置された複数、ここでは4つのウエハW表面のZ軸方向の位置(Z位置)を検出するZ位置検出系146(
図4参照)によって構成されている。本実施形態では、Z位置検出系146として、対象物に照射した計測ビームの反射光を受光し対象物の位置(本実施形態では、Z位置)を検出する、いわゆる光学式変位計の一種である三角測量方式の位置検出系が用いられている。本実施形態では、各Z位置検出系146では、前述した貫通孔152(
図5参照)を介して、ウエハW上面に計測ビームを照射し、その反射光を別の貫通孔152を介して受光する。
【0096】
ウエハ平坦度検出系147を構成する複数のZ位置検出系146の計測値は、主制御装置20(
図6参照)に送られる。主制御装置20は、複数のZ位置検出系146の計測値に基づいて、ウエハW上面の複数箇所のZ位置を検出し、その検出結果からウエハWの平坦度を求める。
【0097】
チャックユニット位置検出系148は、メインフレームBDに複数(例えば、3つ)固定されている。チャックユニット位置検出系148のそれぞれとしては、Z位置検出系146と同様の三角測量方式の位置検出系が用いられている。3つのチャックユニット位置検出系148によって、チャックユニット153上面の複数箇所のZ位置が検出され、その検出結果は、主制御装置20(
図6参照)に送られる。
【0098】
図1では不図示であるが、レチクルRの上方に、レチクルR上の一対のレチクルアライメントマークと、これに対応するウエハテーブルWTB上の計測プレート30上の一対の第2基準マークRMの投影光学系PLを介した像とを同時に観察するための露光波長を用いたTTR(Through The Reticle)方式の一対のレチクルアライメント検出系14(
図6参照)が配置されている。この一対のレチクルアライメント検出系14の検出信号は、主制御装置20に供給されるようになっている。
【0099】
この他、露光装置100では、投影光学系PLの近傍に、液浸領域36の液体Lqを介してウエハWの表面に複数の計測ビームを照射する照射系と、それぞれの反射ビームを液体Lqを介して受光する受光系とから成る多点焦点位置検出系54(
図6参照)(以下、多点AF系と称する)が設けられている。かかる多点AF系54としては、例えば米国特許出願公開第2007-0064212号明細書に開示される、照射系及び受光系が、それぞれプリズムを含み、ともに投影光学系PLの先端レンズをその構成要素とする構成の、多点焦点位置検出系を用いることができる。
【0100】
図6には、露光装置100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置20の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0101】
上述のようにして構成された本実施形態に係る露光装置100では、主制御装置20の管理の下、例えば米国特許第8,0544,472号明細書などに開示される露光装置と同様に、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとを用いた並行処理動作が行われる。本実施形態の露光装置100では、後述するようにしてウエハステージWST上にロード(搬入)され、ウエハテーブルWTBによって保持されたウエハW上に、局所液浸装置8を用いて液浸領域36を形成し、投影光学系PL及び液浸領域36の液体Lqを介して照明光ILでウエハの露光動作が行われる。この露光動作は、主制御装置により、事前に行われたアライメント装置99のアライメント系AL1、AL2
1〜AL2
4によるウエハアライメント(EGA)の結果及びアライメント系AL1,AL2
1〜AL2
4の最新のベースライン等に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へウエハステージWSTを移動させるショット間移動動作と、各ショット領域に対しレチクルRのパターンを走査露光方式で転写する走査露光動作とを繰り返すことで行われる。また、上記の並行処理動作に際して、ウエハ交換中は計測ステージMST上に液浸領域を保持しておき、計測ステージとの交換でウエハステージWSTが投影ユニットPUの直下に配置されるとき、計測ステージMST上の液浸領域がウエハステージWST上に移動される。
【0102】
ただし、本実施形態では、上記米国特許第8,054,472号明細書に開示される露光装置とは異なり、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとを用いた並行処理動作中、ウエハステージWSTの位置情報及び計測ステージMSTの位置情報は、干渉計システム70の各干渉計を用いて計測される。また、一対のレチクルアライメント検出系14(
図6参照)及びウエハステージWST上の計測プレート30(
図2(A)参照)等を用いて、レチクルアライメントが行われる。さらに、露光中のウエハテーブルWTBのZ軸方向に関する制御は、前述の多点AF系54を用いてリアルタイムで行われる。
【0103】
なお、上記米国特許第8,054,472号明細書に開示される露光装置と同様に、多点AF系54に代えて、アライメント装置99と投影ユニットPUとの間に、照射系及び受光系から成る多点AF系を配置することとしても良い。そして、ウエハアライメント時においてウエハステージWSTが移動している間に、その多点AF系を用いて、ウエハWの表面全面のZ位置を取得しておき、アライメント中に取得されたウエハWの表面全面のZ位置に基づいて、露光中のウエハステージWSTのZ軸方向に関する位置制御を行なうようにしても良い。この場合、ウエハアライメント時及び露光時において、ウエハテーブルWTB上面のZ位置を計測する別の計測装置を設ける必要がある。
【0104】
次に、ウエハWのロードの手順について、
図7(A)〜
図9(B)に基づいて、説明する。なお、
図7(A)〜
図9(B)では、図面の簡略化及び図面の錯綜を防止するため、メインフレームBD、上下動ピン140等を除くウエハステージWST、ウエハ平坦度検出系147及びチャックユニット位置検出系148などは、省略されている。
【0105】
前提として、例えば、チャックユニット153は、
図7(A)に示されるように、一対のZボイスコイルモータ144により、ストローク範囲内の移動上限位置(+Z側の移動限界位置)近傍、すなわち前述した第1位置に移動され、その位置に維持されているものとする。また、このとき、一対のウエハ支持部材125は、それぞれの支持板128が、主制御装置20によって第2支持板位置に設定されているものとする。
【0106】
この状態で、まず、ウエハWが搬送アーム149によって、下方から支持された状態で、チャックユニット153の下方に搬入される。ここで、ウエハWの搬送アーム149によるローディングポジションLPへの搬入は、1つ前の露光対象のウエハ(以下、前ウエハと称する)に対する露光処理が、ウエハステージWST上で行われているときに行われても良いし、アライメント処理等が行われているときに行われても良い。
【0107】
次に、
図7(B)に示されるように、主制御装置20は、複数のチャック部材124に対する流体(空気)の供給を開始し、その後、搬送アーム149を僅かに上昇(あるいはチャックユニット153を僅かに下降)させることで、ウエハWが所定の距離(ギャップ)を保って非接触でチャックユニット153(チャック部材124)に吸引される。なお、
図7(B)において、説明を容易にするために、図中にドットの塗りつぶしで示される噴き出された空気の流れによって(より正確には、その流れによって生ずる負圧によって)、ウエハWが、チャックユニット153に吸引されているものとする。
図7(C)〜
図9(A)の各図においても同様である。ただし、実際に噴き出された空気の状態は、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0108】
次いで、主制御装置20は、一対のウエハ支持部材125の支持板128を、それぞれの第1支持板位置に位置するように、上下動回転駆動部127を介して駆動(回転)する。このとき、
図7(C)に示されるように、一対のウエハ支持部材125の上下動回転駆動部127により、それぞれの支持板128上面の吸着パッド128bが、ウエハWの下面(裏面)に対向する位置に移動される。また、一対のウエハ支持部材125の支持板128がそれぞれの第1支持板位置に位置した状態では、反射鏡128aがそれぞれウエハW裏面の外周縁の所定の位置に対向している。また、ウエハW裏面のノッチ位置には、チャックユニット153にウエハWが吸引された段階で、別の反射鏡34が対向している。
【0109】
それぞれの支持板128上面の吸着パッド128bとウエハWとが対向すると、主制御装置20は、
図7(D)に示されるように、支持板128を上昇させるように上下動回転駆動部127を制御する。それぞれの支持板128上面の吸着パッド128bとウエハWの下面とが接触すると、主制御装置20は、一対の吸着パッド128bによる真空吸引を開始して、ウエハWの下面をそれぞれの吸着パッド128bによって吸着支持する。このとき、ウエハWは、チャックユニット153による上方からの吸引によって、Z、θx、θyの3自由度方向の移動が制限されると共に、一対の支持板128による下方からの吸着支持によって、X、Y、θzの3自由度方向の移動が制限され、これにより、6自由度方向の移動が制限されている。
【0110】
ウエハWは、この状態、すなわちチャックユニット153及び一対のウエハ支持部材125による吸引保持(支持)が行われた状態で、ローディングポジションLP上で待機されるように、露光装置100の処理シーケンスは、定められている。露光装置100では、ウエハWがローディングポジションLPで待機されている間に、ウエハテーブルWTB上に保持された前ウエハに対する露光処理(及びそれに先立つアライメント処理)などが行われている。また、このとき搬送アーム149によるウエハWの真空吸着を停止した状態にしておいても良い。
【0111】
そして、ローディングポジションLP上でのウエハWの待機中に、
図8(A)に示されるように、3つの計測系123a〜123c(計測系123cは不図示。
図6参照)により、それぞれウエハWのエッジ検出を行う。3つの計測系123a〜123cの有する撮像素子の撮像信号は、信号処理系116(
図6参照)に送られる。信号処理系116は、例えば米国特許第6,624,433号明細書などに開示されている手法により、ウエハのノッチを含む周縁部の3箇所の位置情報を検出して、ウエハWのX軸方向、Y軸方向の位置ずれと回転(θz回転)誤差とを求める。そして、それらの位置ずれと回転誤差との情報は、主制御装置20に供給される(
図6参照)。
【0112】
上述のウエハWのエッジ検出の開始と前後して、主制御装置20は、搬送アーム149を下方に駆動し、搬送アーム149とウエハWとを離間させた後、搬送アーム149をローディングポジションLPから退避させる。
【0113】
前ウエハの露光処理が完了し、不図示の搬出装置により前ウエハがウエハテーブルWTB上からアンロードされると、主制御装置20により、粗動ステージ駆動系51Aを介してウエハステージWSTがチャックユニット153の下方(ローディングポジションLP)に移動される。そして、
図8(B)に示されるように、主制御装置20は、3本の上下動ピン140を有するセンター支持部材150を、駆動装置142を介して上方に駆動する。この時点でも、3つの計測系123a〜123cによるウエハWのエッジ検出は続行されており、主制御装置20は、ウエハWがウエハステージWSTの所定位置に搭載されるよう、ウエハWの位置ずれ及び回転誤差情報に基づいて、ウエハステージWSTをウエハWのずれ量(誤差)と同じ量だけ同じ方向に微小駆動する。
【0114】
そして、3本の上下動ピン140の上面がチャックユニット153に吸引されたウエハWの下面に当接すると、主制御装置20は、センター支持部材150の上昇を停止する。これにより、ウエハWは、位置ずれ及び回転誤差が補正された状態で、3本の上下動ピン140によって吸着保持される。
【0115】
ここで、待機位置にあるチャックユニット153に吸引されたウエハWのZ位置は、ある程度正確にわかる。従って、主制御装置20は、変位センサ145の計測結果に基づいて、センター支持部材150を基準位置から所定量駆動することで、3本の上下動ピン140をチャックユニット153に吸引されたウエハWの下面に当接させることができる。しかし、これに限らず、センター支持部材150(3本の上下動ピン140)の上限移動位置で、3本の上下動ピン140がチャックユニット153に吸引されたウエハWの下面に当接するように、予め、設定しておいても良い。
【0116】
その後、主制御装置20は、不図示のバキュームポンプを作動し、3本の上下動ピン140によるウエハW下面に対する真空吸着を開始する。なお、チャック部材124によるウエハWの吸引は、この状態でも続行されている。チャック部材124による吸引と、3本の上下動ピン140の下方からの支持による摩擦力によりウエハWは、6自由度方向の移動が制限されている。従って、この状態では、ウエハ支持部材125の支持板128によるウエハWの吸着保持を解除しても何ら問題は生じない。
【0117】
そこで、ウエハWが3本の上下動ピン140に支持(吸着保持)されると、主制御装置20は、
図8(C)に示されるように、一対の吸着パッド128bによる真空吸引を終了させた後、一対のウエハ支持部材125の支持板128を下方に駆動してウエハWから離間させる。その後、上下動回転駆動部127を介してそれぞれの支持板128を、第2支持板位置に設定する。
【0118】
次に、主制御装置20は、
図8(D)に示されるように、ウエハWを吸引及び支持しているチャックユニット153及び3本の上下動ピン140(センター支持部材150)を、それぞれ一対のZボイスコイルモータ144及び駆動装置142を介して、下方へ駆動する。これにより、ウエハWに対するチャックユニット153(チャック部材124)による吸引状態と3本の上下動ピン140による支持状態とを維持して、チャックユニット153と3本の上下動ピン140(センター支持部材150)とが下方へ駆動開始される。ここで、チャックユニット153の駆動は、主制御装置20が、複数のチャックユニット位置検出系148の検出結果に基づいて、一対のZボイスコイルモータ144を駆動することで行われる。
【0119】
上述のチャックユニット153と3本の上下動ピン140(センター支持部材150)との駆動は、ウエハWの下面(裏面)がウエハテーブルWTBの平面状のウエハ載置面41に当接するまで行われる(
図9(A)参照)。ここで、ウエハ載置面41は、実際には、ウエハテーブルWTB上に設けられたピンチャックが備える多数のピンの上端面によって形成される仮想的な平坦な面(領域)であるが、
図9(A)等では、ウエハテーブルWTBの上面がそのウエハ載置面41であるものとしている。
【0120】
上述のチャックユニット153と3本の上下動ピン140(センター支持部材150)との下方への駆動開始前及び駆動中に、主制御装置20は、ウエハ平坦度検出系147(複数のZ位置検出系146(
図4参照))を介してウエハW上面の平坦度を計測する。そして、主制御装置20は、ウエハWの平坦度が所望範囲内に収まるように、ウエハ平坦度検出系147の計測結果に基づいて、チャックユニット153及びセンター支持部材150のうち、応答性に優れる方の一方の部材(ここではセンター支持部材150であるものとする)の下降速度を、他方の部材(ここではチャックユニット153であるものとする)の下降速度に対して、制御する。
【0121】
すなわち、例えば、ウエハWが下に凸の形状(外周部に比べ内周部が凹んだ形状)に変形していることが、ウエハ平坦度検出系147によって検出された場合、主制御装置20は、駆動装置142を介してセンター支持部材150の下降速度をチャックユニット153の駆動速度よりも遅くする。センター支持部材150の下降速度をチャックユニット153の駆動速度よりも遅くすると、ウエハWは、実質的に下面の中央部を下方から3本の上下動ピン140により押される。そして、ウエハWの平坦度が所定の値になると、主制御装置20は、センター支持部材150及びチャックユニット153を同じ速度で(同期して)更に下方に駆動する。ここで、ウエハWの平坦度が「所定の値になる」とは、一例としてウエハWが完全な平面ではなく、外周部に比べ内周部が凹んではいるが、その凹みの程度が予め定めた程度以下となる形状に変形することを意味する。
【0122】
また、例えば、ウエハWが上に凸の形状(外周部に比べ内周部が上に突出した形状)に変形していることが、ウエハ平坦度検出系147によって検出された場合、主制御装置20は、駆動装置142を介してセンター支持部材150の下降速度をチャックユニット153の駆動速度よりも速くする。センター支持部材150の下降速度をチャックユニット153の駆動速度よりも速くすると、ウエハWは、3本の上下動ピン140に吸着保持されているため実質的に下面の中心部が下方に引っ張られる。そして、ウエハWの平坦度が上記所定の値になると、主制御装置20は、センター支持部材150及びチャックユニット153を同じ速度で(同期して)更に下方に駆動する。
【0123】
なお、本実施形態においては、ウエハWの複数点でこのウエハWのZ方向の位置を検出し、これらの位置に関する情報からウエハWの形状(平坦度)に関する情報を求めているが、それ以外の方法を用いても良い。例えば、カメラ等によってウエハWの画像を撮影し、得られた画像情報からウエハWの形状(平坦度)に関する情報を求めても良い。
【0124】
本実施形態では、ウエハWを上方向からチャックユニット153で吸引し、かつ下方から上下動ピン140で支持した状態から、ウエハWを不図示のウエハホルダ上に吸着保持させるまで、主制御装置20により、ウエハ平坦度検出系147を用いてウエハWの変形状態(平坦度)が、常に計測される。このため、例えば、チャックユニット153と3本の上下動ピン140との間にあるウエハWが、下に凸の形状を有しているため、その平坦度を調整するためにチャックユニット153の降下速度に対して、上下動ピン140の降下速度を遅くした結果、ウエハWが上に凸の形状となる等、過度の平坦度修正を行った場合であっても、チャックユニット153の降下速度に対して上下動ピン140の降下速度を早くすることでウエハWの平坦度を再度所定の値に調節することができる。ただし、ウエハWを上方向からチャックユニット153で吸引し、かつ下方向から上下動ピン140で支持した状態から、ウエハWを不図示のウエハホルダ上に吸着保持させるまでの一部の時間的区間(例えば、ウエハ載置面41に接する直前)でのみ、ウエハWの変形状態(平坦度)を計測することとしても良い。
【0125】
そして、
図9(A)に示されるように、ウエハWの下面がウエハテーブルWTB上面(ウエハ載置面41)に当接すると、主制御装置20は、調整装置115を介して全てのチャック部材124からの高圧空気流の流出を停止して、全てのチャックユニット153によるウエハWの吸引を解除し、ウエハテーブルWTB上の不図示のウエハホルダによるウエハWの吸着(吸引)を開始する。
【0126】
次いで、主制御装置20は、
図9(B)に示されるように、一対のZボイスコイルモータ144を介してチャックユニット153を所定の待機位置(第1位置又はその近傍の位置)まで上昇させる。これにより、ウエハWのウエハテーブルWTB上へのロード(搬入)が終了する。
【0127】
ここで、チャックユニット153が上方に駆動され、停止されると(又は上昇中に)、主制御装置20は、前述した3つの計測系123a〜123cを用いて、ウエハWのエッジ位置の検出を行う。この場合、ウエハWのエッジ検出は、ウエハテーブルWTB上の3つの反射鏡86に、計測系123a、123b、123cからの計測ビームが照射され、その反射鏡86からの反射ビームを計測系123a、123b、123cの撮像素子が受光することで行われる。3つの計測系123a〜123cの有する撮像素子の撮像信号は、信号処理系116(
図6参照)に送られ、ウエハWの位置ずれと回転誤差との情報が、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、その位置ずれと回転誤差との情報とをオフセット量としてメモリに記憶しておき、後の、ウエハアライメント時、又は、露光の際などに、上記オフセット量を考慮してウエハテーブルWTBの位置を制御する。なお、前述の待機中にウエハWのエッジ検出が行われ、その結果得られた位置ずれと回転誤差が補正された状態で、ウエハWは、3本の上下動ピン140に支持された後、ウエハテーブルWTB上に搭載されているので、ウエハWのウエハテーブルWTB上へのロード後のウエハWのエッジ検出は必ずしも行わなくても良い。
【0128】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送システム120及びこれを備えた露光装置100によると、主制御装置20は、ウエハWをウエハテーブルWTB上にロードする際に、ウエハWを上方から吸引しているチャックユニット153とウエハWを下方から支持している上下動ピン140(センター支持部材150)とを独立して上下動させることができる。すなわち、撓み又は歪み等の変形が生じたウエハWをウエハステージWSTに吸着保持するために降下させる際に、センター支持部材150(3本の上下動ピン140)の降下速度を制御することで、ウエハWの平坦度を所望の範囲内の値に維持した状態でウエハステージWST上にロードすることができる。
【0129】
また、本実施形態では上下動ピン140(センター支持部材150)を3本で構成し、それら3本が一体で上下動するように構成したが、それに限定されることはない。例えば、センター支持部材150を、3本の上下動ピンが互いに独立に上下動できるように構成し、ウエハの平坦度の計測結果に基づいて、それら3本の上下動ピンを個別に上下動させることでウエハWの平坦度が所望の範囲内に収まるようにしてもよい。なお、上下動ピンの数は3本に限らす、それ以下またはそれ以上としてもよい。
【0130】
また、本実施形態に係る搬送システム120の一部を構成する搬入ユニット121では、チャックユニット153の自重を一対の重量キャンセル装置131によって支持しているので、チャックユニット153を上下方向に駆動する際の力を小さくすることができ、一対のZボイスコイルモータ144のサイズを小さくすることができる。
【0131】
また、本実施形態に係る搬送システム120では、ウエハWをウエハステージWST上にロードする途中に、主制御装置20が、計測系123a〜123cを介してウエハWの位置ずれ及び回転ずれを計測し、その計測結果に基づいて、ウエハWの位置ずれ及び回転ずれが補正されるように、ウエハステージWSTを駆動する。従って、ウエハWを位置再現性良く、ウエハテーブルWTB上にロードすることができる。
【0132】
また、本実施形態に係る露光装置100によると、ウエハテーブルWTB上に平坦度が高い状態で、かつ位置再現性良くロードされたウエハWに対して、ステッピング・アンド・スキャン方式で露光が行われるので、ウエハW上の複数のショット領域のそれぞれに対し、重ね合わせ精度が良好で、かつデフォーカスのない露光が可能となり、複数のショット領域に対してレチクルRのパターンを良好に転写することができる。
【0133】
なお、上記実施形態では、3本の上下動ピン140(センター支持部材150)の方が、チャックユニット153より駆動時の応答性が優れている点に鑑みて、ウエハWをウエハステージWST上にロードする際に、3本の上下動ピン140(センター支持部材150)の降下速度を調節し、ウエハWの平坦度が所望の範囲内の値になるよう駆動装置142を駆動した。しかし、反対に、チャックユニット153の方が、3本の上下動ピン140(センター支持部材150)より駆動時の応答性が優れている場合には、チャックユニット153の降下速度を調節することが望ましい。3本の上下動ピン140(センター支持部材150)とチャックユニット153との駆動時の応答性が同程度である場合には、センター支持部材150及びチャックユニット153のいずれか一方、又は両方の降下速度を調節するようにしても良い。また、ウエハの平坦度を所定レベルに維持できれば良いので、応答性の優劣にかかわらず、センター支持部材150及びチャックユニット153のいずれか一方、又は両方の降下速度を調節するようにしても良い。
【0134】
また、上記実施形態では、ウエハ平坦度検出系147を、複数のZ位置検出系146により、構成する場合について説明したが、これに限らず、ウエハ上面全面に対して光を照射し、その面形状を検出可能な検出装置によってウエハ平坦度検出系を構成しても良い。また、上記実施形態と同様に、複数のZ位置検出系によりウエハ平坦度検出系を構成する場合にも、そのZ位置検出系として、三角測量方式の位置検出系を用いる必要はない。すなわち、ウエハ平坦度検出系は、ウエハWの平坦度(複数箇所のZ位置)を検出することができれば良いので、例えば
図10に示されるように、前述のZ位置検出系146に代えて、チャックユニット153の下面に静電容量センサ84を複数配置しても良い。静電容量センサ84は、Z位置検出系146より小型なものを用いることができるので、複数のZ位置検出系146の計測点が配置された、例えば、外周部に3箇所、中央部に1箇所の計4箇所より多くの箇所に配置することができる。
【0135】
また、チャックユニット位置検出系は、チャックユニット153のZ位置が計測できれば良いので、三角測量方式の位置検出系に限らず、例えば
図10に示されるように、エンコーダヘッド97とスケール98とからなるエンコーダシステムを用いてチャックユニット位置検出系を構成しても良い。あるいは、例えば一対のZボイスコイルモータ144の少なくとも一方に、その固定子に対する可動子の基準点からのZ軸方向の変位量を計測するエンコーダを設け、該エンコーダによってチャックユニット位置検出系を構成しても良い。また、チャックユニット位置検出系148を、静電容量センサを用いて構成しても良い。
【0136】
なお、上記実施形態において、ウエハWがウエハテーブルWTBにロードされる直前に、チャック部材124からウエハWに向かって、ウエハWをそれまで吸引していたときの噴出速度よりも速い噴出速度で気体を噴出しても良い。このようにすることで、
図11に示されるように、ウエハWとチャック部材124との間の圧力が上昇し、ウエハWは、外周部が振動する(いわゆるニューマチックハンマー現象が起こる)。この振動が発生している状態で、更にウエハWを降下させると、ウエハWは、下面の外周部と不図示のウエハホルダ上面との接触面積が小さい状態でウエハテーブルWTB上に載置される。すなわち、ウエハW下面と不図示のウエハホルダとの間の摩擦力が低減されるので、ウエハWは、不図示のウエハホルダに吸着保持される際に、吸着歪みの発生が抑制された状態でウエハテーブルWTBに載置される。
【0137】
なお、上記実施形態では、チャックユニット153がウエハWを上方から吸引し、3本の上下動ピン140がウエハWを裏面で真空吸着した状態でチャックユニット153と3本の上下動ピン140とを下方へ駆動することで、ウエハテーブルWTBのウエハ載置面41上にウエハWを載置させているが、これに限定されるものではない。例えば、3本の上下動ピン140の代わりに、搬送アーム149を用いる構成としても良い。この場合、搬送アーム149は水平方向に加えて、上下方向にも所定範囲内で駆動可能な構成とする。そして、ウエハWの裏面を搬送アーム149で真空吸着した状態で、チャックユニット153でウエハW表面を吸引し、ウエハ平坦度検出系147の検出結果を用いて主制御装置20によりチャックユニット153と搬送アーム149の下降速度をそれぞれ所定の値に設定すれば良い。
【0138】
なお、ウエハWがウエハ載置面41に載置される際に搬送アーム149が妨げとならないように、ウエハ載置面41に搬送アーム149が入り込むような溝を形成しておき、ウエハWとウエハ載置面41とが精度良く接することができるようにしておくと良い。そして、この溝の内部で搬送アーム149を水平方向に移動させて、ウエハ載置面41から退避させれば良い。
【0139】
また、その他の構成として、搬送アーム149からチャックユニット153にウエハWが受け渡された後、3本の上下動ピン140を使わずにウエハテーブルWTBのウエハ載置面41上にウエハWを載置させても良い。この場合は、例えば、ウエハ平坦度検出系147の検出結果を用いて主制御装置20によりチャックユニット153の下降速度やチャック部材124から噴き出される流体の流速(流量)や流体の流れる方向を制御してチャックユニット153の吸引力をそれぞれ所定の値に設定すれば良い。その際、ウエハ支持部材125の吸着パッド125bを用いてウエハWの裏面を吸着支持する場合は、前述の搬送アーム149の場合と同様、ウエハ載置面41にウエハ支持部材125が入り込むような切欠きを形成しておき、ウエハWと載置面41とが精度良く接することができるようにしておくと良い。また、ウエハWの横方向(載置面と平行な方向)の移動を拘束する必要が無い場合は、ウエハ支持部材125を設けずに、チャック部材124のみでウエハWを吸引により保持してウエハテーブルWTBのウエハ載置面41上にウエハWを載置する構成としても良い。その際も、例えば、ウエハ平坦度検出系147の検出結果を用いて主制御装置20によりチャックユニット153の下降速度やチャック部材124から噴き出される流体の流速(流量)や流体の流れる方向を制御してチャックユニット153の吸引力をそれぞれ所定の値に設定すれば良い。
【0140】
なお、上記実施形態では、一例として投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する液浸露光装置について説明したが、これに限らず、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも、上記実施形態を適用することができる。
【0141】
また、上記実施形態及びその変形例(以下、上記実施形態等と称する)では、露光装置が、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置である場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に上記実施形態等を適用しても良い。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも上記実施形態等は適用することができる。さらに、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも上記実施形態等は適用できる。
【0142】
また、上記実施形態等の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
【0143】
また、上記実施形態等に係る露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F
2レーザ(出力波長157nm)、Ar
2レーザ(出力波長126nm)、Kr
2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0144】
また、上記実施形態等では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に上記実施形態等を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態等を適用できる。
【0145】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態等を適用することができる。
【0146】
また、上記実施形態等でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)は、ウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0147】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態等を適用できる。
【0148】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、上記実施形態等の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態等の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【0149】
なお、これまでの説明で引用した露光装置などに関する全ての公報、国際公開、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。