特許第6981511号(P6981511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6981511
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】カバー材及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20211202BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20211202BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20211202BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20211202BHJP
   C03B 23/023 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B60K35/00 Z
   C03C3/083
   C03C3/085
   C03C3/087
   C03B23/023
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-164154(P2020-164154)
(22)【出願日】2020年9月29日
【審査請求日】2020年9月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金杉 諭
(72)【発明者】
【氏名】柳原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】小松 寛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼屋敷 駿
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/158623(WO,A1)
【文献】 特開2018−095553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/023
B60K 35/00
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の曲げと第2方向の曲げとが形成される透明なカバー材であって、
前記カバー材は、ガラス板であり、厚みが0.8mm以上2.0mm以下であり、幅が300mm以上1500mm以下であり、高さが50mm以上500mm以下であり、
前記第1方向の曲げと前記第2方向の曲げとが前記カバー材の面内で交差しており、
前記第1方向の曲げの曲率半径が60mm以上300mm以下であり、
前記第2方向の曲げの曲率半径が1500mm以上8000mm以下であり、
前記第1方向の曲げは、前記カバー材のうちで曲率半径が最小となる曲げであり、前記第2方向の曲げは、前記第1方向の曲げに交差する曲げである、
カバー材。
【請求項2】
厚みが0.8mm以上2.0mm以下であり、
一方の表面の表面積が15000mm以上750000mm以下である、請求項1に記載のカバー材。
【請求項3】
一方の表面側に前記第1方向の曲げの凸面が形成され、他方の表面側に前記第2方向の曲げの凸面が形成される、請求項1又は請求項2に記載のカバー材。
【請求項4】
前記カバー材がガラスであり、かつ
酸化物基準のモル%表示で、
SiO:50%以上80%以下、
Al23:0.1%以上25%以下、
Li2O+Na2O+K2O:3%以上30%以下、
MgO:0%以上25%以下
CaO:0%以上25%以下
ZrO2:0%以上5%以下
を含有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカバー材。
【請求項5】
一方の表面に、防眩膜、反射防止膜、防汚膜、及び抗菌膜の少なくとも1つが形成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカバー材。
【請求項6】
前記第1方向の曲げの曲率半径が100mm以上250mm以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のカバー材。
【請求項7】
前記第2方向の曲げの曲率半径が2000mm以上6000mm以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のカバー材。
【請求項8】
前記第1方向は前記高さに沿った方向であり、前記第2方向は前記幅に沿った方向であり、前記幅が前記高さより長い、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のカバー材。
【請求項9】
前記第1方向曲げの曲率半径と、前記第2方向の曲げの曲率半径とは、それぞれ一定である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のカバー材。
【請求項10】
車載用ディスプレイに設けられる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のカバー材。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のカバー材を有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー材及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車に搭載されるメータ表示部などのデザインの設計が複雑化しており、そのため表示部の表面をカバーする樹脂製のカバー材やカバーガラスの設計も複雑化している(特許文献1)。特に透明な板を単曲に曲げたカバー材や平坦部を含む大きく曲げたカバー材の需要が高まっているが、一方、車内で使用されるカバー材(特にガラス板)は安全性の要求が非常に高い。また、曲げを有するカバー材は、このような車内用途に限られず、任意の用途で需要がある。
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018−168387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、曲げを有するカバー材は、剛性が低くなり、そのため振動への影響が大きくなったり、面に圧力がかかった時の形状変化が大きくなるおそれがある。よって、曲げを有するカバー材において、剛性の低下を抑制することが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、剛性の低下を抑制するカバー材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るカバー材は、第1方向の曲げと第2方向の曲げとが形成されるカバー材であって、前記第1方向の曲げと前記第2方向の曲げとが前記カバー材の面内で交差しており、前記第1方向の曲げの曲率半径が60mm以上300mm以下であり、前記第2方向の曲げの曲率半径が1000mm以上14000mm以下である。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る表示装置は、前記カバー材を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剛性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る車載用ディスプレイを示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係るカバー材の模式図である。
図3図3は、本実施形態に係るカバー材の模式的な断面図である。
図4図4は、本実施形態に係るカバー材の模式的な断面図である。
図5図5は、カバー材と機能膜との模式的な断面図である。
図6図6は、本実施形態に係るカバー材の形状の他の例を示す模式図である。
図7図7は、本実施形態に係るカバー材の形状の他の例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態に係るカバー材の形状の他の例を示す模式図である。
図9図9は、本実施形態に係るカバー材の形状の他の例を示す模式図である。
図10図10は、本実施形態に係るカバー材の形状の他の例を示す模式図である。
図11図11は、剛性の評価を説明するための模式図である。
図12図12は、剛性の評価を説明するための模式図である。
図13図13は、面圧負荷時の形状変化の評価を説明するための模式図である。
図14図14は、面圧負荷時の形状変化の評価を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0011】
(車載用ディスプレイ)
図1は、本実施形態に係る車載用ディスプレイを示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係るカバー材10は、車載用ディスプレイ2に設けられ、車載用ディスプレイの表面のカバー材として用いられる。車載用ディスプレイ2は、車両に設けられる表示装置であり、例えば、車内においてステアリングシャフト1の前側に設けられる。車載用ディスプレイ2には、例えばカーナビゲーション画面やスピードメータなどの各種メータ等及びスタートボタンなどが表示される。ただし、図2の構成は一例であり、カバー材10が適用される車載用ディスプレイ2は、任意の構成であってよい。また、カバー材10は、車載用ディスプレイ表面のカバー材として用いられることに限られず、任意の用途に用いるものであってよい。
【0012】
(カバー材)
図2は、本実施形態に係るカバー材の模式図であり、図3及び図4は、本実施形態に係るカバー材の模式的な断面図である。図2に示すように、カバー材10は、透明な板状部材である。なお、ここでの透明とは、可視光に対して透過することを指す。以下、カバー材10の一方の主面を表面10Aとし、表面10Aの反対側の主面を表面10Bとする。また、カバー材10は、湾曲した形状となっており、図2の例では、長方形の平板状の透明な板が湾曲した形状となっている。以下、カバー材10の1つの側面(端面)を側面10C1とし、側面10C1に対向する側面を側面10C2とし、カバー材10の他の1つの側面を側面10C3とし、側面10C3に対向する側面を側面10C4とする。図2の例では、側面10C1、10C2が長方形の短辺であり、側面10C3、10C4が長方形の長辺となっている。なお、カバー材10は、長方形の平板状の透明な板が湾曲した形状であることに限られない。例えば、カバー材10は、多角形、円形、又は楕円形の平板状のカバー材が湾曲した形状になっていてもよい。カバー材10の湾曲度合いについては、後述する。
【0013】
本実施形態においては、カバー材10は、表面10Aが車載用ディスプレイ2の外部側(外部に露出する側)となり、表面10Bが車載用ディスプレイ2の内部側(外部に露出しない側)となるように、車載用ディスプレイ2に取り付けられる。また、カバー材10は、側面10C3が鉛直方向上側となり、側面10C4が鉛直方向下側となるように、車載用ディスプレイ2に取り付けられる。すなわち、カバー材10は、鉛直方向よりも水平方向に長くなるように、車載用ディスプレイ2に取り付けられる。ただし、カバー材10の取り付け方はこれに限られない。例えば、カバー材10は、表面10Bが車載用ディスプレイ2の表面側となり、表面10Aが車載用ディスプレイ2の内部側となるように取り付けられてもよい。また例えば、カバー材10は、側面10C1が鉛直方向上側となり、側面10C2が鉛直方向下側となるように、車載用ディスプレイ2に取り付けられてもよい。
【0014】
以下、カバー材10が矩形の部材を曲げた場合を基準に説明するが、カバー材10が矩形ではない形状を有する場合は、最大投影方向から見た場合に、そのカバー材10が外接する最小となる大きさの矩形を対象として、後述するカバー材10の幅W0、幅W0方向、高さL0、高さL0方向を決定する。最大投影方向とは、カバー材10を2次元平面に投影した際に、2次元平面に投影されるカバー材10の投影面積が最大となる際の、投影方向を指す。また、カバー材10が外接する最小となる大きさの矩形とは、最大投影方向に2次元平面上に投影されたカバー材10に、少なくとも1辺が外接し、かつ、各辺が、投影されたカバー材10の外周よりも径方向内側に位置しない矩形のうちで、面積が最小となるものを指す。
【0015】
(カバー材の幅)
カバー材10の幅W0は、300mm以上1500mm以下であることが好ましく、400mm以上1200mm以下であることがより好ましく、500mm以上1000mm以下であることが更に好ましい。幅W0は、長方形であるカバー材10の長い辺における両端の2点間の直線距離を指す(尚、辺の長さがすべて等しい場合は、どちらの辺でもよい)。カバー材10が矩形でない場合には、幅W0は、最大投影方向から見た場合のカバー材10に外接する最小の矩形についての、長い辺における両端の2点間の直線距離となる。本実施形態では、カバー材10は長方形が湾曲した形状となっているため、幅W0は、カバー材10の側面10C1から、側面10C1に対向する側面10C2までの直線長さを指す。幅W0がこの範囲となるカバー材10は、後述するように湾曲することで、剛性を適切に向上できる。なお、以下、幅W0に沿った方向を、幅W0方向と記載する。
【0016】
(カバー材の高さ)
カバー材10の高さL0は、50mm以上500mm以下であることが好ましく、100mm以上400mm以下であることがより好ましく、150mm以上300mm以下であることが更に好ましい。高さL0は、幅W0方向に直交する方向における、カバー材10の長さを指し、W0方向に直交する方向における、カバー材10においては長方形の短い辺における両端の2点間の直線距離を指すともいえる。本実施形態では、カバー材10は矩形が湾曲した形状となっているため、高さL0は、カバー材10の側面10C3から、側面10C3に対向する側面10C4までの直線長さを指す。高さL0がこの範囲となるカバー材10は、後述するように第1方向X及び第2方向Yに湾曲することで、剛性を適切に向上できる。なお、以下、高さL0に沿った方向を、高さL0方向と記載する。
【0017】
なお、本実施形態においては、高さL0は、幅W0よりも短い。すなわち、本実施形態においては、カバー材10は、高さL0方向よりも幅W0方向に長い形状になっているといえる。ただし、高さL0は、幅W0よりも短いことに限られず、例えば、幅W0と同じ長さでもよい。
【0018】
(カバー材の表面積)
カバー材10の表面積は、15000mm以上750000mm以下であることが好ましく、40000mm以上480000mm以下であることがより好ましく、75000mm以上300000mm以下であることが更に好ましい。ここでのカバー材10の表面積とは、カバー材10の表面(主面)の面積を指し、表面10Aの面積であってもよいし、表面10Bの面積であってもよい。表面積がこの範囲となるカバー材10は、後述するように第1方向X及び第2方向Yに湾曲することで、剛性を適切に向上できる。
【0019】
(カバー材の厚み)
カバー材10の厚みD(図3参照)は、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。カバー材10の厚みDとは、表面10Aから表面10Bまでの長さを指す。厚みDがこの範囲となるカバー材10は、後述するように第1方向X及び第2方向Yに湾曲することで、剛性を適切に向上できる。
【0020】
(カバー材の曲げ)
カバー材10は、第1方向Xの曲げと、第2方向Yの曲げとが形成されている。すなわち、カバー材10は、第1方向X及び第2方向Yに湾曲しているといえる。第1方向Xは、本実施形態では高さL0方向に沿った方向であるが、それに限られず任意の方向であってよい。また、第2方向Yは、本実施形態では、第2方向Yは、第1方向Xに直交する方向であり、幅W0方向に沿った方向であるが、それに限られず、第1方向Xに交差する任意の方向であってよい。例えば、第2方向Yは、第1方向Xに対して、10度以上170度以下傾斜していることが好ましく、45度以上135度以下傾斜していることがより好ましく、70度以上100度以下傾斜していることが更に好ましい。
【0021】
(第1方向の曲げ)
図3は、カバー材10の第1方向Xに沿った断面S1を示している。断面S1は、第1方向Xと、カバー材10の表面上の任意の点の法線方向F1とに沿った断面を指す。カバー材10の第1方向Xの曲げとは、第1方向Xに沿った断面S1からカバー材10を見た場合の曲げを指す。言い換えれば、カバー材10の第1方向Xの曲げとは、断面S1と表面10Aとが交差して形成される曲線C1の、第1方向Xに対する曲がりを指す。
【0022】
本実施形態においては、カバー材10は、第1方向Xの曲げによって形成される凹面が表面10A側となり、第1方向Xの曲げによって形成される凸面が表面10B側となるように、第1方向Xの曲げが形成されている。すなわち、曲線C1は、表面10B側に凸の曲線となっている。ただし、それに限られず、例えば、第1方向Xの曲げによって形成される凹面が表面10B側となり、第1方向Xの曲げによって形成される凸面が表面10A側となるように、第1方向Xの曲げが形成されていてもよい。
【0023】
カバー材10の第1方向Xの曲げは、曲率半径が60mm以上300mm以下となっている。カバー材10の第1方向Xの曲げの曲率半径とは、曲線C1の曲率半径であるともいえる。カバー材10の第1方向Xの曲げの曲率半径は、100mm以上250mm以下であることが好ましく、150mm以上220mm以下であることがより好ましい。カバー材10の第1方向Xの曲げの曲率半径がこの範囲となることで、カバー材10のデザイン性と剛性とを両立できる。なお、カバー材10は、第1方向Xの曲げの曲率半径が、どの位置においても、すなわちカバー材10の表面上のどの点においても、一定であることが好ましい。ただし、カバー材10は、第1方向Xの曲げの曲率半径が、位置によって異なった部分を有してもよい。更に、部分的に上記範囲を有さない曲率半径を有してもよい。
【0024】
また、図2に示すように、本実施形態では、カバー材10の第1方向Xの曲げは、側面10C4から側面10C3までにわたって形成されている。すなわち、本実施形態では、カバー材10は、表面10A、10Bの全域において、第1方向Xの曲げが形成されている。ただし、それに限られず、例えば後述の図8に示すように、表面10A、10Bの一部の領域のみにおいて、第1方向Xの曲げが形成されていてもよい。
【0025】
ここで、図2に示すように、カバー材10の第1方向Xの曲げの、表面10A上での変曲点を、変曲点P1とする。すなわち、変曲点P1は、曲線C1の変曲点といえる。変曲点P1は、断面S1と表面10Aとが交差する曲線C1上の点であるため、断面S1毎に、すなわち第1方向Xに直交する方向毎に、存在する。それらの変曲点P1同士を結んだ線を、線分E1とし、線分E1を幅W0方向に沿った平面に投影して形成される直線を、直線E1aとする。この場合、本実施形態においては、直線E1aは、カバー材10の幅W0方向に沿っている。ただし、直線E1aは、カバー材10の幅W0方向に沿っていることに限られず、幅W0方向に対して傾斜していてもよい。直線E1aは、カバー材10の幅W0方向に対して、−20度以上20度以下傾斜していることが好ましく、−10度以上10度以下傾斜していることがより好ましく、−5度以上5度以下傾斜していることが更に好ましい。直線E1aの傾斜度合いがこの範囲となることで、第1方向Xの曲げの進行方向(線分E1に沿う方向)がカバー材10の幅W0方向から大きくずれることが抑制されて、剛性を適切に向上できる。
【0026】
また、図2に示すように、線分E1の中点を、中点P1Aとする。この場合、カバー材10の高さL0方向における端部(ここでは側面10C4)から、中点P1Aまでの、高さL0方向における長さLは、カバー材10の高さL0に対して、20%以上80%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましく、45%以上55%以下であることが更に好ましい。長さLの高さL0に対する比率がこの範囲となることで、第1方向Xの曲げの位置がカバー材10の中心から離れすぎることが抑制されて、剛性を適切に向上できる。
【0027】
(第2方向の曲げ)
図4は、カバー材10の第2方向Yに沿った断面S2を示している。より詳しくは、第2方向Yと、カバー材10の表面上の任意の点の法線方向F2とに沿った断面を指す。カバー材10の第2方向Yの曲げとは、第2方向Yに沿った断面S2からカバー材10を見た場合の曲げを指す。断面S2は、言い換えれば、カバー材10の第2方向Yの曲げとは、断面S2と表面10Aとが交差して形成される曲線C2の、第2方向Yに対する曲がりを指す。
【0028】
本実施形態においては、カバー材10は、第2方向Yの曲げによって形成される凹面が表面10A側となり、第2方向Yの曲げによって形成される凸面が表面10B側となるように、第2方向Yの曲げが形成されている。すなわち、曲線C2は、表面10B側に凸の曲線となっている。ただし、それに限られず、例えば、第2方向Yの曲げによって形成される凹面が表面10B側となり、第2方向Yの曲げによって形成される凸面が表面10A側となるように、第2方向Yの曲げが形成されていてもよい。
【0029】
カバー材10の第2方向Yの曲げは、曲率半径が1000mm以上14000mm以下となっている。カバー材10の第2方向Yの曲げの曲率半径とは、曲線C2の曲率半径であるともいえる。カバー材10の第2方向Yの曲げの曲率半径は、1500mm以上8000mm以下であることが好ましく、2000mm以上6000mm以下であることがより好ましい。カバー材10の第2方向Yの曲げの曲率半径がこの範囲となることで、カバー材10のデザイン性と剛性とを両立できる。なお、カバー材10は、第2方向Yの曲げの曲率半径が、どの位置においても、すなわちカバー材10の表面上のどの点においても、一定であることが好ましい。ただし、カバー材10は、第2方向Yの曲げの曲率半径が、位置によって異なってもよい。
【0030】
また、図2に示すように、本実施形態では、カバー材10の第2方向Yの曲げは、側面10C1から側面10C2までにわたって形成されている。すなわち、本実施形態では、カバー材10は、表面10A、10Bの全域において、第2方向Yの曲げが形成されている。ただし、それに限られず、例えば後述の図7に示すように、表面10A、10Bの一部の領域のみにおいて、第2方向Yの曲げが形成されていてもよい。
【0031】
ここで、図2に示すように、カバー材10の第2方向Yの曲げの、表面10A上での変曲点を、変曲点P2とする。すなわち、変曲点P2は、曲線C2の変曲点といえる。変曲点P2は、断面S2と表面10Aとが交差する曲線C2上の点であるため、断面S2毎に、すなわち第2方向Yに直交する方向毎に、存在する。それらの変曲点P2同士を結んだ線を、線分E2とし、線分E2を高さL0方向に沿った平面に投影して形成される直線を、直線E2aとする。この場合、本実施形態においては、直線E2aは、カバー材10の高さL0方向に沿っている。ただし、直線E2aは、カバー材10の高さL0方向に沿っていることに限られず、高さL0方向に対して傾斜していてもよい。直線E2aは、カバー材10の高さL0方向に対して、−20度以上20度以下傾斜していることが好ましく、−10度以上10度以下傾斜していることがより好ましく、−5度以上5度以下傾斜していることが更に好ましい。直線E2aの傾斜度合いがこの範囲となることで、第2方向Yの曲げの進行方向(線分E2に沿う方向)がカバー材10の高さL0方向から大きくずれることが抑制されて、剛性を適切に向上できる。
【0032】
また、図2に示すように、線分E2の中点を、中点P2Aとする。この場合、カバー材10の幅W0方向における端部(ここでは側面10C1)から、中点P2Aまでの、幅W0方向における長さWは、カバー材10の幅W0に対して、20%以上80%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましく、45%以上55%以下であることが更に好ましい。長さWの幅W0に対する比率がこの範囲となることで、第2方向Yの曲げの位置がカバー材10の中心から離れすぎることが抑制されて、剛性を適切に向上できる。
【0033】
(第1方向の曲げと第2方向の曲げの関係)
カバー材10は、以上説明したように、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げが形成されて、表面10A、10Bの全域が連続な曲面となっている。すなわち、カバー材10の表面10A、10Bは、非連続な面を含まないことが好ましいといえる。また、カバー材10は、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとが、カバー材10の面内において交差している。言い換えれば、カバー材10は、第1方向X及び第2方向Yに湾曲する領域を含んでいるといえ、線分E1と線分E2とが、表面10A上で交差しているともいえる。
尚、第1方向の曲げと第2方向の曲げは、少なくとも一部において、第1方向の曲げの曲率半径が60mm以上300mm以下であり、第2方向の曲げの曲率半径が1000mm以上14000mm以下である条件を満たしつつ交差している。
【0034】
本実施形態においては、カバー材10は、第1方向Xの曲げによって形成される凹面と第2方向Yの曲げによって形成される凹面との両方が、表面10A側に位置しており、第1方向Xの曲げによって形成される凸面と第2方向Yの曲げによって形成される凸面との両方が、表面10B側に位置している。すなわち、カバー材10は、第1方向Xの曲げによる凹面となる表面と、第2方向Yの曲げによる凹面となる表面とが同じとなっている。ただし、それに限られず、例えば後述の図6に示すように、第1方向Xの曲げによる凹面となる表面と、第2方向Yの曲げによる凹面となる表面とが、互いに反対側の表面であってもよい。
【0035】
また、カバー材10は、第1方向Xの曲げの曲率半径が、第2方向Yの曲げの曲率半径より小さく、第2方向Yよりも第1方向Xに大きく曲がっている。すなわち、本実施形態では、短軸方向である高さL0方向における曲げ(第1方向の曲げ)が、長軸方向である幅W0方向における曲げ(第2方向の曲げ)よりも、大きくなっているともいえる。なお、第1方向Xの曲げの曲率半径は、第2方向Yの曲げの曲率半径に対して、0.00214以上0.075以下であることが好ましく、0.0313以上0.067以下であることがより好ましく、0.0367以上0.0以下であることが更に好ましい。曲率半径の比率がこの範囲となることで、カバー材10のデザイン性と剛性とを両立できる。
【0036】
(カバー材の材料)
カバー材10としては、透明であり剛性を有する材料から公知の材質を使用することができ、ポリカーボネート、ポリアクリルなどの樹脂材料を用いてもよいし、ガラスに代表される無機材料を用いてもよい。
尚、剛性が高く、高級感のあるガラスが好ましい。
カバー材10用のガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラスなどを使用できる。また、カバー材10としては、厚さが薄くても強化処理によって大きな応力が入りやすく薄くても高強度なガラスが得られるアルミノシリケートガラスやリチウムアルミノシリケートガラスが好ましい。なお、化学強化処理は、通常、アルカリ金属を含む溶融塩中にガラスを浸漬させることにより行われる。
【0037】
(ガラスの組成)
カバー材10としてガラスを採用する場合は、酸化物基準のモル%で、以下の化合物を含有することが好ましい。カバー材10を以下の組成とすることで、カバー材10を湾曲させた場合にも剛性を適切に保つことができる。SiO2を50〜80%、Al23を0.1〜25%、Li2O+Na2O+K2Oを3〜30%、MgOを0〜25%、CaOを0〜25%およびZrO2を0〜5%含むガラスが挙げられるが、特に限定されない。なお、ここでの50%〜80%とは、カバー材10の全量のモル%を100%とした場合に、50%以上80%以下であることを指し、他の数値範囲も同様である。また、Li2O+Na2O+K2Oとは、Li2OとNa2OとK2Oとの合計含有量を指す。
【0038】
より具体的には、カバー材10用のガラスのより好ましい組成として、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0〜25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。(i)のガラスはソーダライムシリケートガラスに含まれ、(ii)および(iii)のガラスはアルミノシリケートガラスに含まれ、(iv)および(v)のガラスはリチウムアルミノシリケートガラスに含まれる。
(i)モル%で表示した組成で、SiO2を63〜73%、Al23を0.1〜5.2%、Na2Oを10〜16%、K2Oを0〜1.5%、Li2Oを0〜5.0%、MgOを5〜13%及びCaOを4〜10%を含むガラス
(ii)モル%で表示した組成が、SiO2を50〜74%、Al23を1〜10%、Na2Oを6〜14%、K2Oを3〜11%、Li2Oを0〜5.0%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrO2を0〜5%含有し、SiO2およびAl23の含有量の合計が75%以下、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス
(iii)モル%で表示した組成が、SiO2を68〜80%、Al23を4〜10%、Na2Oを5〜15%、K2Oを0〜1%、Li2Oを0〜5.0%、MgOを4〜15%およびZrO2を0〜1%含有するガラス
(iv)モル%で表示した組成が、SiO2を67〜75%、Al23を0〜4%、Na2Oを7〜15%、K2Oを1〜9%、Li2Oを0〜5.0%、MgOを6〜14%およびZrO2を0〜1.5%含有し、SiO2およびAl23の含有量の合計が71〜75%、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス
(v)モル%で表示した組成が、SiO2を56〜73%、Al23を10〜24%、B23を0〜6%、P25を0〜6%、Li2Oを2〜7%、Na2Oを3〜11%、K2Oを0〜5%、MgOを0〜8%、CaOを0〜2%、SrOを0〜5%、BaOを0〜5%、ZnOを0〜5%、TiO2を0〜2%、ZrO2を0〜4%含有するガラス
【0039】
(機能膜)
図5は、カバー材と機能膜との模式的な断面図である。図5に示すように、カバー材10は、表面上に、機能膜12が形成されていてもよい。図5の例では、カバー材10の表面10A上に、機能膜12が形成されている。機能膜12としては、例えば、防眩膜、反射防止膜、防汚膜、抗菌膜等が挙げられる。すなわち、カバー材10は、機能膜12として、防眩膜、反射防止膜、防汚膜、及び抗菌膜の少なくとも1つが形成されている。言い換えれば、カバー材10は、機能膜12として、防眩膜、反射防止膜、防汚膜、及び抗菌膜の全てが積層されていてもよいし、防眩膜、反射防止膜、防汚膜、及び抗菌膜のうちの一部が積層されていてもよい。カバー材10に機能膜12を形成することで、車載用ディスプレイとして適切に機能できる。
【0040】
(カバー材の形状の他の例)
カバー材10は、図2に示した形状に限られない。以下、カバー材10の形状の他の例について説明する。図6から図10は、本実施形態に係るカバー材の形状の他の例を示す模式図である。尚、各実施例に記載の特長は合わせて実施することも可能であり、好適である。
【0041】
例えば図6に示すように、カバー材10は、表面10A側に第1方向Xの曲げの凸面が形成され、表面10B側に第2方向Yの曲げの凸面が形成されていてもよい。すなわち、カバー材10は、第1方向Xの曲げによる凹面となる表面と、第2方向Yの曲げによる凹面となる表面とが、互いに反対側の表面となっていてもよい。このように、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとの、凹面となる表面を反対方向とすることで、カバー材10の剛性を適切に向上できる。
【0042】
また例えば、図7に示すように、カバー材10は、第2方向Yの曲げが、表面10A、10Bの全域にわたって形成されずに、表面10A、10Bの一部の領域AR1のみにおいて、第2方向Yの曲げが形成されていてもよい。すなわち、図7の例では、カバー材10は、領域AR1においては、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとの両方が形成されており、領域AR1以外の領域AR2においては、第2方向Yの曲げが形成されておらず、第1方向Xの曲げのみが形成されている。
【0043】
また例えば、図8に示すように、カバー材10は、第1方向Xの曲げが、表面10A、10Bの全域にわたって形成されずに、表面10A、10Bの一部の領域AR1aのみにおいて、第1方向Xの曲げが形成されていてもよい。すなわち、図8の例では、カバー材10は、領域AR1aにおいては、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとの両方が形成されており、領域AR1a以外の領域AR2aにおいては、第1方向Xの曲げが形成されておらず、第2方向Yの曲げのみが形成されている。
【0044】
以上のように、カバー材10は、少なくとも一部の領域において、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとの両方が形成されていてよい。この場合、カバー材10は、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとの両方が形成されていない領域においては、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとの少なくとも一方が形成されていることが好ましい。すなわち、カバー材10は、表面10A、10Bにおいて、曲げが形成されていない平面状の領域を含まず、表面10A、10Bの全域が曲面状であることが好ましい。ただし、カバー材10は、表面10A、10Bの一部の領域において、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げのいずれも形成されない、平面状の領域を含んでもよい。
【0045】
また例えば、図9に示すように、カバー材10は、第1方向Xの曲げが、第1方向Xにおいて複数の変曲点を有するような曲げであってもよい。すなわち、図2においては、第1方向の曲げとなる曲線C1が1つの変曲点のみを有していたが、図9に示すように、複数の変曲点を有していてもよい。図9の例では、曲線C1は、表面10A側が凸となる曲線と、表面10B側が凸となる曲線とが連続するように接続された曲線となっており、表面10A側と表面10B側とに変曲点を有している。ただし、変曲点の数は2つに限られず、3つ以上となっていてもよい。
【0046】
また例えば、図10に示すように、カバー材10は、第2方向Yの曲げが、第2方向Yにおいて複数の変曲点を有するような曲げであってもよい。すなわち、図2においては、第2方向の曲げとなる曲線C2が1つの変曲点のみを有していたが、図10に示すように、複数の変曲点を有していてもよい。図10の例では、曲線C2は、表面10A側が凸となる曲線と、表面10B側が凸となる曲線とが連続するように接続された曲線となっており、表面10A側と表面10B側とに変曲点を有している。ただし、変曲点の数は2つに限られず、3つ以上となっていてもよい。
【0047】
図9及び図10では、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとのいずれか一方のみが複数の変曲点を有していたが、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとの両方が、複数の変曲点を有していてもよい。すなわち、カバー材10は、第1方向Xの曲げが、第1方向Xにおいて複数の変曲点を有するものであってもよいし、第2方向Yの曲げが、第2方向Yにおいて複数の変曲点を有するものであってもよい。
【0048】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係るカバー材10は、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げが形成された複数の曲げを有する形状となっており、かつ第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとがカバー材10の面内で交差している。また、第1方向Xの曲げの曲率半径は、60mm以上300mm以下であり、第2方向Yの曲げの曲率半径は、1000mm以上14000mm以下である。ここで、曲げを有するカバー材は、剛性が低くなる傾向があるため、剛性の低下を抑制することが求められている。それに対し、本実施形態に係るカバー材10は、曲げが大きい第1方向Xの曲げと、第1方向Xの曲げと交差する曲げの小さい第2方向Yの曲げとが形成されることで、剛性の低下を抑制することができる。また、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとを上記の数値範囲とすることで、剛性を適切に向上させつつ、両方の曲げが大きいことによるデザイン性を損なうことを抑制できて、剛性とデザイン性とを両立させることができる。さらに、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとを上記の数値範囲とすることで、応力がかかった時の形状変更量を低減することもできる。また、本実施形態のカバー材10は、このような形状となることで、車載用ディスプレイ用として適したものとなる。
【0049】
(実施例)
次に、実施例について説明する。なお、発明の効果を奏する限りにおいて実施態様を変更しても構わない。実施例においては、平板状のガラス板に対して曲げ度合いを異ならせた各種サンプルに対して、シミュレーションで評価を行った。平板状のガラス板としては、縦の長さが50mm〜300mm、横の長さが1000mm、厚みが1.1mmの、AGC製Dragontrail(登録商標)を用いた。
【0050】
(剛性の評価)
実施例の評価として、曲率半径が最小となる曲げに平行な方向と垂直な方向の2方向における断面二次モーメントをシミュレーションで算出して、剛性の評価を行った。図11及び図12は、剛性の評価を説明するための模式図である。図11及び図12では、本実施形態のカバー材10を用いた場合の剛性の評価方法を示している。
図11に示すように、カバー材10の面内の任意の点Aにおいて、曲率半径が最小となる曲げの平行方向d1と、カバー材10の表面の法線方向FAとで決まる任意の平面を、平面PL1とする。なお、本実施形態においては、第1方向Xの曲げの曲率半径が最小となるため、第1方向Xが平行方向d1となる。また、平面PL1は、平行方向d1と法線方向FAに沿った平面といえる。
そして、平面PL1で切り取られるカバー材10の断面を断面SL1としたとき、断面SL1のうち断面2次モーメントが最大となる断面SL1MAXをシミュレーションにより見つけ出し、その最大の2次モーメントを、主断面2次モーメントM1と定義した。
また、図12に示すように、カバー材10の面内の任意の点Aにおいて、平行方向d1に直交する垂直方向d2と、カバー材10の表面の法線方向FAとで決まる任意の平面を、平面PL2する。なお、本実施形態においては、第2方向Yが垂直方向d2となる。また、平面PL2は、垂直方向d2と法線方向FAに沿った平面といえる。
そして、平面PL2で切り取られるカバー材10の断面を断面SL2としたとき、断面SL2のうち断面2次モーメントが最大となる断面SL2MAXをシミュレーションにより見つけ出し、その最大の2次モーメントを、副断面2次モーメントM2と定義した。
なお、断面2次モーメントの算出の際には、測定装置(ソフトウェア)として、ダッソー社製 Solid Worksを用いた。
【0051】
(面圧負荷時の形状変化の評価)
実施例の評価として、面圧負荷時の形状変化の評価を行った。図13及び図14は、面圧負荷時の形状変化の評価を説明するための模式図である。図13及び図14では、本実施形態のカバー材10を用いた場合の面圧負荷時の形状変化の評価方法を示している。図13に示すように、平行方向d1と垂直方向d2とに平行な仮想の平面と直交する方向を、方向d3とする。そして、本評価では、サンプルとするカバー材の外周縁を方向d3に拘束し、カバー材の表面に対して面直方向に±0.004MPaの力を加えた際の、ガラスの面直方向の最大変形量の大きさを、シミュレーションによって算出した。
そして、算出したガラスの面直方向の最大変形量の大きさを、カバー材の代表長さLmaxで除して、評価値Zを算出し、評価値Zによって、面圧負荷時の形状変化の評価を行った。
カバー材の代表長さLmaxとは、図14に示すように、曲げを形成した後のカバー材を、投影面積Sが最大となるように2次元平面に投影した際に、投影されたエッジ上の任意の2点の距離のうちの最大長さを指す。
なお、カバー材の面直方向の最大変形量の算出においては、測定装置(ソフトウェア)として、汎用構造解析ソフトABAQUSを用いて、測定条件として、面直方向に0.004MPaの面圧を付与した。また、Dragontrailの材料係数として、ヤング率:7.4×1010N/m2、ポアソン比:0.22を用いた。
【0052】
次に、各例のサンプルの形状について説明する。表1は、各例のサンプルの形状を示している。なお、表1の「形状」の欄の記載、「凹凸」の欄の記載は、以下の意味を指す。
単曲:1つの方向にのみ曲がった形状
複曲:少なくとも2つの方向の曲げが交わっている形状
鞍型:1つ目の方向の曲げが凸である場合、2つ目の方向の曲げが凹である形状
局所:少なくとも1つの方向では局所的に曲がっており、その方向に限り局所曲げ部分以外は直線である形状
S字:少なくとも1つの方向の曲げに凸と凹が混在している形状
捩れ:1つ目の方向の曲げに対して2つ目の方向の曲げが直交しない形状
凸:ガラス組付け時に外部側となる方向に凸となる曲げ形状
凹:ガラス組付け時に内部側となる方向に凸となる曲げ形状
【0053】
【表1】
【0054】
(例1)
例1においては、横方向の長さ(幅)が1000mm、縦方向の長さ(高さ)が200mm、厚みが1.1mmの平板状のガラスの板のサンプルを準備した。そして、例1においては、平板状のサンプルに対して、平行方向d1の曲げと垂直方向d2の曲げとを形成した。
平行方向d1の曲げにおいては、平行方向d1(曲率半径が最小の曲げの方向)をガラス板の縦方向とし、平行方向d1の曲げの位置を1/2Lとし、平行方向d1の曲げにより形成される凸面をガラス板の一方の表面とし、平行方向d1の曲げの曲率半径R1を200mmとした。1/2Lとは、平行方向d1の曲げの変曲点が、ガラス板の縦方向の長さの中央位置にあることを指し、言い換えれば、本実施形態のガラス板を例にした場合での、ガラス板の高さL0に対する長さLの比率が50%であることを指す。
垂直方向d2の曲げにおいては、垂直方向d2(曲率半径が最小の曲げの方向に直交する曲げの方向)をガラス板の横方向とし、垂直方向d2の曲げの位置を1/2Wとし、垂直方向d2の曲げにより形成される凸面をガラス板の一方の表面とし、垂直方向d2の曲げの曲率半径R2を2000mmとした。1/2Wとは、垂直方向d2の曲げの変曲点が、ガラス板の横方向の長さの中央位置にあることを指し、言い換えれば、本実施形態のガラス板を例にした場合での、ガラス板の幅W0に対する長さWの比率が50%であることを指す。
【0055】
(例2)
例2においては、平行方向d1の曲げにより形成される凹面を、ガラス板の一方の表面とした以外は、すなわち平行方向d1の曲げにより形成される凹面と垂直方向d2の曲げにより形成される凹面を反対側とした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。例2のサンプルは、図6のような形状となる。
【0056】
(例3)
例3においては、平行方向d1の曲げの曲率半径R1を100mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0057】
(例4)
例4においては、平行方向d1の曲げの曲率半径R1を300mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0058】
(例5)
例5においては、垂直方向d2の曲げの曲率半径R2を1000mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0059】
(例6)
例6においては、垂直方向d2の曲げの曲率半径R2を10000mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0060】
(例7)
例7においては、平行方向d1の曲げの位置を3/4Lとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0061】
(例8)
例8においては、垂直方向d2の曲げの位置を1/3Wとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0062】
(例9)
例9においては、平行方向d1の曲げの変曲点を2つとし、1つの変曲点の位置を1/3Lとし、もう1つの変曲点の位置を2/3Lとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。例9のサンプルは、図9のような形状となる。
【0063】
(例10)
例10においては、垂直方向d2の曲げの変曲点を2つとし、1つの変曲点の位置を1/3Wとし、もう1つの変曲点の位置を2/3Wとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。例10のサンプルは、図10のような形状となる。
【0064】
(例11)
例11においては、垂直方向d2の曲げの方向を、ガラス板の横方向から傾斜させた以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0065】
(例12)
例12においては、ガラス板の横方向の長さを300mmとし、垂直方向d2の曲げの曲率半径を20000000mmとして、平行方向d1のみの略単曲形状とした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0066】
(例13)
例13においては、ガラス板の横方向の長さを100mmとし、縦方向の長さを1000mmとし、平行方向d1の曲げの曲率半径を50mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0067】
(例14)
例14においては、ガラス板の横方向の長さを300mmとし、縦方向の長さを1000mmとし、平行方向d1の曲げの曲率半径を500mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0068】
(例15)
例15においては、ガラス板の横方向の長さを300mmとし、縦方向の長さを1000mmとし、垂直方向d2の曲げの曲率半径を500mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0069】
(例16)
例16においては、ガラス板の横方向の長さを300mmとし、縦方向の長さを1000mmとし、垂直方向d2の曲げの曲率半径を15000mmとした以外は、例1と同様の方法でサンプルを準備した。
【0070】
(評価結果)
例1から例16のサンプルに対し、上記で説明した剛性の評価と、面圧負荷時の形状変化の評価とを行った。
主断面2次モーメントM1の剛性の評価においては、
100000(1/mm)≦主断面2次モーメントM1<1000000(1/mm
を、「1」とし、
10000(1/mm)≦主断面2次モーメントM1<100000(1/mm)、又は、1000000(1/mm)≦主断面2次モーメントM1<10000000(1/mm
を、「2」とし、
主断面2次モーメントM1<10000(1/mm)、又は、10000000(1/mm)≦主断面2次モーメントM1
を、「NG」とした。
副断面2次モーメントM2の剛性の評価においては、
100000(1/mm)≦副断面2次モーメントM2<1000000(1/mm
を、「1」とし、
10000(1/mm)≦副断面2次モーメントM2<100000(1/mm)、又は、1000000(1/mm)≦副断面2次モーメントM2<10000000(1/mm
を、「2」とし、
副断面2次モーメントM2<10000(1/mm)、又は、10000000(1/mm)≦副断面2次モーメントM2
を、「NG」とした。
面圧負荷時の形状変化の評価においては、
0.0004≦評価値Z<0.0008
を、「1」とし、
0.0008≦評価値Z<0.00104、又は、0.00001≦評価値Z<0.0004
を、「2」とし、
評価値Z<0.00001、又は、0.00104<評価値Z
を、「NG」とした。
主断面2次モーメントM1の剛性の評価と、副断面2次モーメントM2の剛性の評価と、面圧負荷時の形状変化の評価との、全てが「1」又は「2」の場合を合格とし、少なくとも1つが「NG」である場合を不合格とした。
【0071】
実施例である例1から例11においては、主断面2次モーメントM1の剛性の評価と、副断面2次モーメントM2の剛性の評価と、面圧負荷時の形状変化の評価との全てが「1」又は「2」となり、比較例である例12から例16においては、少なくとも1つが「NG」となることが分かる。主断面2次モーメントM1や副断面2次モーメントM2が「1」や「2」となることで、剛性が弱くなり過ぎず、かつ、例えば組付け時における柔軟性を保って、もしガラスに形状ばらつきがあった場合にも、適切に組付けることが可能となる。また、面圧負荷時の形状変化の評価が「1」や「2」となることで、ガラスの変形が大きくなりすぎることを抑制しつつ、ガラス板の組付けの際の遊びが少なくなりすぎることを抑制できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
10 カバー材
10A、10B 表面
X 第1方向
Y 第2方向
【要約】      (修正有)
【課題】剛性の低下を抑制するカバー材を提供する。
【解決手段】カバー材10は、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとが形成され、第1方向Xの曲げと第2方向Yの曲げとがカバー材10の面内で交差しており、第1方向Xの曲げの曲率半径が60mm以上300mm以下であり、第2方向Yの曲げの曲率半径が1000mm以上14000mm以下である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14