特許第6981576号(P6981576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981576
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】繊維基材、及び、人工皮革
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/564 20060101AFI20211202BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   D06M15/564
   D06N3/14 101
   C08G18/00 B
   C08G18/00 G
   C08G18/10
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2021-529433(P2021-529433)
(86)(22)【出願日】2020年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2020035178
(87)【国際公開番号】WO2021084954
(87)【国際公開日】20210506
【審査請求日】2021年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2019-195227(P2019-195227)
(32)【優先日】2019年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 智博
(72)【発明者】
【氏名】上口 美和
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−217006(JP,A)
【文献】 特開2009−096998(JP,A)
【文献】 特開2008−231638(JP,A)
【文献】 特開2010−215803(JP,A)
【文献】 特開2005−273083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
D06N1/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(X)の水分散体により形成された、ウレタン樹脂(X)が充填された繊維基材であって、
前記ウレタン樹脂(X)が、ノニオン性基(オキシエチレン構造)を有するものであり、
記ウレタン樹脂(X)が、オキシエチレン構造を有する化合物(a4)を原料とするものであり、前記化合物(a4)の使用割合が、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中0.25〜5質量%であり、
前記水分散体中のウレタン樹脂(X)の含有率が、50〜80質量%であり、かつ、前記水分散体が、有機溶剤を含まないものであることを特徴とする繊維基材の製造方法
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(X)が、鎖伸長剤(a1)を原料とするものである請求項1記載の繊維基材の製造方法
【請求項3】
前記鎖伸長剤(a1)が、アミノ基を有するものである請求項2記載の繊維基材の製造方法
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(X)の平均粒子径が、0.01〜1μmの範囲である請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維基材の製造方法
【請求項5】
請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維基材を有することを特徴とする人工皮革の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂が充填された繊維基材、及び、人工皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂は、その機械的強度や風合いの良さから、合成皮革、人工皮革、コーティング剤、接着剤、手袋、衣料等の製造に広く利用されている。例えば、前記人工皮革の分野では、不織布基材に溶剤系ウレタン樹脂組成物を含浸し、湿式凝固させることで、不織布繊維内の空隙にウレタン多孔体が充填された、均一かつ柔軟な基材を形成することが一般的である。
【0003】
前記溶剤系ウレタン樹脂組成物は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶剤として用いられているが、前記DMFは、生体や環境への悪影響が懸念され、法的規制が年々厳しくなっているため、弱溶剤化、水系化、無溶剤化等による環境調査策が求められている。
【0004】
その中でも、近年、ウレタン樹脂を水に分散させたポリウレタンディスパージョン(PUD)が人口皮革用途で利用され始めている。しかしながら、前記PUDは、従来の溶剤系ウレタン樹脂組成物と異なり、繊維基材内部への充填状態が多孔ではないこと、及び、水の乾燥工程でウレタン樹脂が繊維基材表面に偏析することにより、風合いが硬い欠点がある。
【0005】
このような環境下、係る問題を解決する方法として、ウレタン樹脂水分散体にマイクロカプセルを配合する方法や、気体を分散させる機械発泡法等が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、前者の方法では風合いへの改善が薄く、またマイクロカプセルの膨張による平滑性不良が問題となり、また後者の方法では、ウレタン樹脂水分散体の乾燥時に配合液中の気泡が合一・消失するため、泡のサイズや量の制御が極めて困難であるとの指摘があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−119688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン樹脂の充填状態に優れ、優れた風合いを有する繊維基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ウレタン樹脂(X)の水分散体により形成された、ウレタン樹脂(X)が充填された繊維基材であって、前記水分散体中のウレタン樹脂(X)の含有率が、50〜80質量%であり、かつ、前記水分散体が、有機溶剤を含まないものであることを特徴とする繊維基材を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記繊維基材を有することを特徴とする人工皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維基材は、ウレタン樹脂の充填状態に優れ、優れた風合いを有するものである。よって、本発明の繊維基材は、人工皮革として特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の繊維基材は、ウレタン樹脂(X)の水分散体により形成された、ウレタン樹脂(X)が充填されたものである。
【0012】
前記ウレタン樹脂(X)の水分散体は、ウレタン樹脂(X)の含有率が、50〜80質量%であり、かつ、有機溶剤を含まないものである。
【0013】
本発明においては、前記ウレタン樹脂(X)の含有率が、50〜80質量%の範囲であることが必須である。このように、水分散体中のいわゆるウレタン樹脂(X)固形分が高いことにより、機械発泡や気体導入により形成した泡の保持性に優れ、かつウレタン樹脂水分散体の乾燥性が向上するため、ウレタン樹脂(X)が繊維基材内部への充填状態が良好となり、また乾燥時及び/又は乾燥後にウレタン樹脂(X)硬化物にヒビ等が入らず、優れた風合い、繊維基材への付着、及び、機械的強度を得ることができる。前記ウレタン樹脂(X)の含有率としては、より一層優れた充填状態、風合い、及び、機械的強度が得られる点から、53〜70質量%の範囲が好ましく、55〜70質量%の範囲がより好ましく、57〜65質量%の範囲が更に好ましい。
【0014】
前記ウレタン樹脂(X)は、水に分散し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性および水分散安定性の点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、アニオン性基、及び/又は、ノニオン性基を有するウレタン樹脂がより好ましい。
【0015】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有するグリコール化合物、及び、スルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0016】
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸、N−2−アミノエタン−2−アミノスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン;これらの塩を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0019】
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より簡便に親水性を制御できる点から、ポリエチレングリコール、及び/又は、ポリエチレングリコールジメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0020】
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得るために用いる原料の数平均分子量としては、より一層優れた乳化性、及び、水分散安定性が得られる点から、200〜10,000の範囲であることが好ましく、300〜3,000の範囲がより好ましく、300〜2,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得るために用いる原料の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0021】
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0022】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記強制的に水中に分散するウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記ウレタン樹脂(X)としては、具体的には、例えば、鎖伸長剤(a1)、ポリオール(a2)、ポリイソシアネート(a3)、及び、必要に応じて、親水性基を有する化合物(a4)(前記前記アニオン性基を有するウレタン樹脂、カチオン性基を有するウレタン樹脂、及び、ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得るために用いる原料)の反応物を用いることができる。
【0025】
前記鎖伸長剤(a1)としては、分子量が500未満(好ましくは50〜450の範囲)のものを用いることができ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記鎖伸長剤(a1)の分子量は、化学式から算出される値を示す。
【0026】
前記鎖伸長剤(a1)としては、30℃以下の比較的低い温度下でも容易に鎖伸長でき、反応時のエネルギー消費を抑制できる点、及び、ウレア基導入によるより一層優れた機械的強度、風合い、及び、剥離強度が得られる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤(以下「アミン系鎖伸長剤」と略記する。)を用いることが好ましく、ウレタン樹脂(X)を高固形分化しても、より一層優れた泡保持性、乳化性、充填状態、及び、水分散安定性が得られる点から、分子量が30〜250の範囲のアミン系鎖伸長剤を用いることがより好ましい。なお、前記鎖伸長剤として2種類以上を併用する場合には、前記分子量はその平均値を示し、平均値が前記好ましい分子量の範囲に包含されればよい。
【0027】
前記鎖伸長剤(a1)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度、風合い、剥離強度、泡保持性、充填状態、乳化性、及び、水分散安定性が得られる点、ウレタン樹脂(X)の高固形分化がより一層容易となる点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中0.1〜30質量%の範囲が更に好ましく、0.5〜10質量%の範囲が特に好ましい。
【0028】
前記ポリオール(a2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記ウレタン樹脂(X)として、前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を用いる場合には、前記ポリオール(a2)としては、前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得るために用いる原料以外のものを用いる。
【0029】
前記ポリオール(a2)の数平均分子量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、500〜100,000の範囲であることが好ましく、800〜10,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0030】
前記ポリオール(a2)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度が得られる点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中40〜90質量%の範囲が更に好ましく、50〜80質量%の範囲が特に好ましい。
【0031】
前記ポリイソシアネート(a3)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記ポリイソシアネート(a3)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度が得られる点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中5〜40質量%の範囲が更に好ましく、10〜35質量%の範囲が特に好ましい。
【0033】
前記親水性基を有する化合物(a4)の使用割合としては、より一層優れた泡保持性、乳化性、水分散安定性、充填状態、及び、風合いが得られる点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下がより好ましく、0.25〜2質量%の範囲が更に好ましく、0.5〜1.8質量%の範囲が特に好ましい。
【0034】
前記ウレタン樹脂(X)の平均粒子径としては、より一層優れた泡保持性、表面平滑性、風合い、及び、充填状態が得られる点から、0.01〜1μmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.9μmの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(X)の平均粒子径の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0035】
本発明で用いる水としては、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。これらの水は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明で用いるウレタン樹脂水分散体は、前記ウレタン樹脂(X)、及び、水を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0037】
前記その他の添加剤としては、例えば、乳化剤、架橋剤、中和剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、顔料、染料、難燃剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、成膜助剤、発泡剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの添加剤は発泡シートが使用される目的に応じて適宜決定される。なお、本発明で用いるウレタン樹脂水分散体は、その製造工程において、有機溶剤を含まないものであるが、前記添加剤として、有機溶剤が含まれることは許容される。
【0038】
次に、本発明で用いるウレタン樹脂水分散体の製造方法について説明する。
【0039】
本発明で用いるウレタン樹脂水分散体の製造方法としては、前記ポリオール(a2)、前記ポリイソシアネート(a3)、及び、前記親水性基を有する化合物(a4)を無溶媒下で反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を得(以下、「プレポリマー工程」と略記する。)、次いで、ウレタンプレポリマー(i)を前記水に分散させ(以下、「乳化工程」と略記する。)、その後、前記鎖伸長剤(a1)を反応させてウレタン樹脂(X)を得る工程(以下、「鎖伸長工程」と略記する。)を有するものである。
【0040】
前記プレポリマー工程は、無溶媒下で行うことが重要である。従来技術では、プレポリマー工程の際に、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶媒中で行うことが一般的であったが、乳化工程後に前記有機溶剤を留去する脱溶剤工程が必要であり、実生産現場では数日の生産日数を要していた。また、前記脱溶剤工程で完全に有機溶剤を留去することも困難であり、若干の有機溶剤を残存しているケースが多く、環境対応に完全に対応することは困難であった。一方、本発明に係る製造方法では、前記プレポリマー工程を無溶媒下で行うことにより、有機溶剤を完全に含まないウレタン樹脂水分散体が得られ、かつ、その生産工程も省力化することが可能である。
【0041】
また、プレポリマー工程を、有機溶剤を使用した従来法で行った場合には、そもそもウレタン樹脂を乳化できない場合や、乳化できても得られるウレタン樹脂の粒子径が大きくなる場合があり、良好なウレタン樹脂水分散体が得られる領域は非常に限られていた。この理由は詳細には解明されていないが、乳化の際に、有機溶剤や(アニオン性基を有するウレタン樹脂の酸価を調整するための)中和剤等が、ウレタン樹脂が有する親水性基の能力を阻害することが一因として考えられる。
【0042】
これに対し、本発明においては、前記プレポリマー工程を無溶媒下で行うことにより、特に従来法では困難であった領域である、親水性基の導入量が少なく、かつ、鎖伸長剤を反応させた、従来法と同等の平均粒子径を有するウレタン樹脂の水分散体を安定的に得ることができる。
【0043】
前記プレポリマー工程における、前記ポリオール(a2)が有する水酸基、及び、前記親水性基を有する化合物(a4)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(a3)が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基/(水酸基及びアミノ基)]としては、より一層優れた泡保持性、表面平滑性、充填状態、風合い、剥離強度、及び、機械的強度が得られる点から、1.1〜3の範囲であることが好ましく、1.2〜2の範囲がより好ましい。
【0044】
前記プレポリマー工程の反応は、例えば、50〜120℃で1〜10時間行うことが挙げられる。
【0045】
前記プレポリマー工程は、撹拌翼を備えた反応釜;ニーダー、コンテイニアスニーダー、テーパーロール、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、万能混合機、プラストミル、ボデーダ型混練機等の混練機;TKホモミキサー、フィルミックス、エバラマイルダー、クレアミックス、ウルトラターラックス、キャビトロン、バイオミキサー等の回転式分散混合機;超音波式分散装置;インラインミキサー等の可動部がなく、流体自身の流れによって混合できる装置などを使用することにより行うことができる。
【0046】
前記乳化工程は、水が蒸発しない温度下で行うことが好ましく、例えば、10〜90℃の範囲が挙げられる、前記乳化工程は、前記プレポリマー工程と同様の設備を使用して行うことができる。その中でも、ウレタン樹脂の含有率が高いウレタン樹脂水分散体が簡便に得られる点から、混練機を使用することが好ましく、二軸押出機がより好ましい。
【0047】
前記鎖伸長工程は、前記ウレタンプレポリマー(i)が有するイソシアネート基と、前記鎖伸長剤(a1)との反応により、ウレタンプレポリマー(i)を高分子量化させ、ウレタン樹脂(X)を得る工程である。前記鎖伸長工程の際の温度としては、生産性の点から、50℃以下で行うことが好ましい。
【0048】
前記鎖伸長工程における、前記ウレタンプレポリマー(i)が有するイソシアネート基と、前記鎖伸長剤(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計とのモル比[(水酸基及びアミノ基)/イソシアネート基]としては、より一層優れた充填状態、風合い、及び、機械的強度が得られる点から、0.8〜1.1の範囲であることが好ましく、0.9〜1の範囲がより好ましい。
【0049】
前記鎖伸長工程は、前記プレポリマー工程と同様の設備を使用して行うことができる。
【0050】
次に、本発明の繊維基材について説明する。
【0051】
前記繊維基材は、前記ウレタン樹脂(X)の水分散体から泡液を得、この泡液を繊維基材に含浸し、乾燥させることにより製造することができる。
【0052】
前記繊維基材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物等の繊維基材などを用いることができる。
【0053】
前記ウレタン樹脂(X)の水分散体から泡液を得る方法としては、例えば、手による撹拌、メカニカルミキサー等のミキサーを使用する方法、空気や不活性気体を導入する方法などが挙げられる。これにより、繊維基材内部でウレタン樹脂(X)の多孔体が繊維に絡み付いたものが製造される。ミキサーを使用する場合には、例えば、500〜3,000rpmにて10秒〜3分間撹拌させる方法が挙げられる。この際、発泡ウレタンシートの密度を好ましい範囲に調整しやすい点から、起泡させる前後にて、1.3〜7倍の体積にすることが好ましく、1.3〜5倍の体積にすることがより好ましく、1.3〜3倍の体積にすることが更に好ましい。
【0054】
得られた泡液を繊維基材に含浸する方法としては、例えば、前記泡液を前記繊維基材に塗工し、次いで、泡液を機械的に繊維内部に押し込む方法;泡液を貯留した槽に前記繊維基材を浸漬し、マングル等で余分なものを絞る方法などが挙げられる。
【0055】
前記泡液を前記繊維基材に塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。また、前記泡液を繊維内部に押し込む方法としては、例えば、ロール、スクレーバーなどを使用して繊維上側、及び/又は、下側から泡液を押し込む方法が挙げられる。
【0056】
前記含浸物の乾燥方法としては、例えば、60〜130℃の温度で30秒〜10分間乾燥させる方法が挙げられる。
【0057】
次に、本発明の人工皮革について説明する。
【0058】
本発明の人工皮革は、少なくとも、前記繊維基材を有するものであり、必要に応じて、その上に、表皮層、表面処理層等を設けてもよい。前記表皮層、及び、表面処理層を形成する材料としては、公知の材料を用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0060】
[合成例1]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエーテルポリオール(三菱化学株式会社製「PTMG2000」、数平均分子量;2,000、以下「PTMG2000」と略記する。)1,000質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と略記する。)24質量部と、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「HMDI」と略記する。)262質量部とをNCO%が2.1質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA1を得た。
70℃に加熱したA1とトリエチルアミン、乳化剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量%水溶液(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS−20F」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。供給液それぞれの流量はA1:10kg/時、トリエチルアミン:0.2kg/時、乳化剤水溶液:2.0kg/時、水:5.1kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のイソホロンジアミン(以下、「IPDA」と略記する。)の水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン(X−1)を得た。
【0061】
[合成例2]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、DMPA24質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が2.1質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA2を得た。
70℃に加熱したA2とトリエチルアミン、乳化剤としてポリプロピレンポリエチレン共重合体(株式会社ADEKA製「プルロニックL−64」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。供給液それぞれの流量はA2:10kg/時、トリエチルアミン:0.2kg/時、L−64:0.5kg/時、水:7.1kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン(X−2)を得た。
【0062】
[合成例3]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、DMPA24質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が2.1質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA3を得た。
70℃に加熱したA3とトリエチルアミン、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。供給液それぞれの流量はA3:10kg/時、トリエチルアミン:0.2kg/時、水:6.6kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン(X−3)を得た。
【0063】
[合成例4]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、ポリエチレングリコール(日油株式会社製「PEG600」、数平均分子量;600、以下「PEG」と略記する。)37.5質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が2.8質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA4を得た。
70℃に加熱したA4と乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量%水溶液(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS−20F」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。供給液それぞれの流量はA4:10kg/時、乳化剤水溶液:2.0kg/時、水:1.2kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が58質量%のポリウレタンエマルジョン(X−4)を得た。
【0064】
[合成例5]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、PEGを18質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が3.1質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA5を得た。
70℃に加熱したA5と乳化剤として、ポリプロピレンポリエチレン共重合体(株式会社ADEKA製「プルロニックL−64」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。供給液それぞれの流量はA5:10kg/時、乳化剤:0.5kg/時、水:5.8kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン(X−5)を得た。
【0065】
[合成例6]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(日油株式会社製「M550」、数平均分子量;550、以下「MPEG」と略記する。)18質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が3.3質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA6を得た。
70℃に加熱したA6と、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。供給液それぞれの流量はA6:10kg/時、水:4.9kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン(X−6)を得た。
【0066】
[合成例7]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、PEG18質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が3.1質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA7を得た。
70℃に加熱したA7と乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量%水溶液(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS−20F」)、ポリプロピレンポリエチレン共重合体(株式会社ADEKA製「プルロニックL−64」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。供給液それぞれの流量はA7:10kg/時、乳化剤水溶液S−20F:1.3kg/時、乳化剤L−64:0.3kg/時、水:1.1kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のエチレンジアミン(以下「EA」と略記する。)の水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が60質量%のポリウレタンエマルジョン(X−7)を得た。
【0067】
[比較合成例1]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、DMPA34質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が1.6質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA’1を得た。
70℃に加熱したA’1とトリエチルアミン、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量%水溶液(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS−20F」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。
なお、供給液、二軸押出機運転条件を実施例1と同じくして固形分濃度50%のポリウレタンエマルジョン製造を試み、得られた乳化液に直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させたがゲル化するためエマルジョンを得ることができなかった。
そのため、水量を増やし固形分を下げてポリウレタンエマルジョンを製造した。供給液それぞれの流量はA’1:10kg/時、トリエチルアミン:0.2kg/時、乳化剤水溶液:2.5kg/時、水:19.6kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が30質量%のポリウレタンエマルジョン(XR−1)を得た。
【0068】
[比較合成例2]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、DMPA34質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が1.6質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA’2を得た。
70℃に加熱したA’2とトリエチルアミン、乳化剤としてポリプロピレンポリエチレン共重合体(株式会社ADEKA製「プルロニックL−64」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。
なお、供給液、二軸押出機運転条件を実施例2と同じくしてウレタン樹脂の含有率50質量%のポリウレタンエマルジョン製造を試み、得られた乳化液に直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させたがゲル化するためエマルジョンを得ることができなかった。
そのため、水量を増やし固形分を下げてポリウレタンエマルジョンを製造した。供給液それぞれの流量はA’2:10kg/時、トリエチルアミン:0.2kg/時、乳化剤水溶液:0.5kg/時、水:21.6kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が30質量%のポリウレタンエマルジョン(XR−2)を得た。
【0069】
[比較合成例3]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、DMPA34質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が1.6質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA’3を得た。
70℃に加熱したA’3とトリエチルアミン、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。
なお、供給液、二軸押出機運転条件を実施例3と同じくしてウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン製造を試み、得られた乳化液に直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させたがゲル化するためエマルジョンを得ることができなかった。
そのため、水量を増やし固形分を下げてポリウレタンエマルジョンを製造した。供給液それぞれの流量はA’3:10kg/時、トリエチルアミン:0.2kg/時、乳化剤水溶液:0.5kg/時、水:20.4kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が30質量%のポリウレタンエマルジョン(XR−3)を得た。
【0070】
[比較合成例4]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、PEG75質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が2.4質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA’4を得た。
70℃に加熱したA’4と乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量%水溶液(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS−20F」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。
なお、供給液、二軸押出機運転条件を実施例4と同じくしてウレタン樹脂の含有率が60質量%のポリウレタンエマルジョン製造を試み、得られた乳化液に直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させたがゲル化するためエマルジョンを得ることができなかった。
そのため、水量を増やし固形分を下げてポリウレタンエマルジョンを製造した。供給液それぞれの流量はA’4:10kg/時、乳化剤水溶液:2.5kg/時、水:9.3kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が、40質量%のポリウレタンエマルジョン(XR−4)を得た。
【0071】
[比較合成例5]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、PEG75質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が2.4質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA’5を得た。
70℃に加熱したA’5と乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量%水溶液(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS−20F」)、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。
なお、供給液、二軸押出機運転条件を実施例5と同じくしてウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン製造を試み、得られた乳化液に直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させたがゲル化するためエマルジョンを得ることができなかった。
そのため、水量を増やし固形分を下げてポリウレタンエマルジョンを製造した。供給液それぞれの流量はA’5:10kg/時、乳化剤水溶液:0.5kg/時、水:11.3kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が40質量%のポリウレタンエマルジョン(XR−5)を得た。
【0072】
[比較合成例6]
オクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、PTMG2000を1,000質量部と、MPEG69質量部と、HMDI262質量部とをNCO%が2.8質量%に達するまで100℃で反応させてウレタンプレポリマーA’6を得た。
70℃に加熱したA’6と、水を二軸押出機(TEM−18SS:東芝機械製)に同時に供給、混合することで乳化液を得た。
なお、供給液、二軸押出機運転条件を実施例6と同じくしてウレタン樹脂の含有率が50質量%のポリウレタンエマルジョン製造を試み、得られた乳化液に直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させたがゲル化するためエマルジョンを得ることができなかった。
そのため、水量を増やし固形分を下げてポリウレタンエマルジョンを製造した。供給液それぞれの流量はA’6:10kg/時、水:10.3kg/時、二軸押出機運転条件は50℃、260rpmであった。
その後、直ちにNCO基の95%に相当するアミノ基含量のIPDAの水希釈液を添加して鎖伸長させ、最終的にウレタン樹脂の含有率が40質量%のポリウレタンエマルジョン(XR−6)を得た。
【0073】
[実施例1]
合成例1で得られたポリウレタンエマルジョン(X−1)1,000質量部、増粘剤(Borchers社製「Borchi Gel ALA」)2質量部をメカニカルミキサーで2,000rpmにて攪拌した配合液を作成した。次に、ローター・ステーター型の連続式混合器(IKA社製「MagicLab」)に上記配合液と空気とを連続供給し、混合して泡液を得た。この際、配合液の体積・重量を測定して密度を算出し、泡液の密度が2/3となるように空気の供給量を調整した。
ポリエステル不織布を得られた泡液中に浸し、次いで、ポリエステル不織布厚みと同じクリアランスに調整したマングルロールを使用して、泡液の含浸量を調整した後、熱風乾燥機にて、70℃で2分間、更に120℃で2分間乾燥することで、ウレタン樹脂が充填された繊維基材を得た。
【0074】
[実施例2〜7、比較例1〜6]
用いるポリウレタンエマルジョン(X−1)の種類を表1〜2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして繊維基材を得た。なお、実施例1〜3は参考例である。


【0075】
[数平均分子量等の測定方法]
合成例及び比較合成例で用いたポリオール等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0076】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0077】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0078】
[ウレタン樹脂(X)の平均粒子径の測定方法]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂水分散体をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−910」)を使用して、分散液として水を使用し、相対屈折率=1.10、粒子径基準が面積の時の平均粒子径を測定した。
【0079】
[泡保持性の外観評価方法]
不織布を泡液に浸しマングルロールにて泡液量を調整した後の不織布表面を目視観察により以下のように評価した。
「A」;泡を維持し、不織布表面に泡液の膜を形成している。
「B」;マングルロール使用後に泡がはじけて消失する様子がわずかに確認できる。
「C」;マングルロール使用後に泡がはじけて消失する様子が多く確認できる。
「D」;マングルロール使用後に泡が消失し、不織布の繊維が剥き出しになっている。
【0080】
[泡保持性の顕微鏡評価方法]
実施例及び比較例で得られた繊維基材の断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー株式会社製「SU3500」、倍率200倍)を使用して観察し、以下のように評価した。
「T」;繊維基材内部で、ウレタン樹脂が多孔を形成している。
「F」;繊維基材内部で、ウレタン樹脂が多孔を形成していない。
【0081】
[風合いの評価方法]
得られた加工布を触感により以下のように評価した。
「A」;柔軟性に富む。
「B」;やや柔軟性がある。
「C」;柔軟性に劣る。
「D」;硬い。
【0082】
[屈曲状態の評価方法]
得られた加工布を手で90°屈曲させた際の外観状態を目視観察により以下のように評価した。
「A」;曲線を描いて曲がり、シワを形成しない。
「B」;曲線を描いて曲がり、小さなシワを形成する。
「C」;鋭角に折れて、小さなシワを形成する。
「D」;鋭角に折れて大きなシワを形成する。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
本発明の繊維基材は、実施例1〜7の通り、ウレタン樹脂の充填状態に優れ、優れた風合いを有することが分かった。
【0086】
一方、比較例1〜6は、ウレタン樹脂(X)の含有率が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、泡保持性が悪く不織布内部の多孔形成が不良で、風合いが不良であった。