特許第6981596号(P6981596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6981596-ガラス基板の製造方法および製造装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981596
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 25/04 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   C03B25/04
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-514703(P2020-514703)
(86)(22)【出願日】2018年9月20日
(65)【公表番号】特表2020-533263(P2020-533263A)
(43)【公表日】2020年11月19日
(86)【国際出願番号】KR2018011091
(87)【国際公開番号】WO2019059658
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2020年3月13日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0120911
(32)【優先日】2017年9月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リ、チャン ソン
(72)【発明者】
【氏名】リ、キュー ファン
(72)【発明者】
【氏名】リ、キュー ジョン
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−053230(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2017−0003096(KR,A)
【文献】 特開昭63−017227(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0199594(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0099284(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00−35/26
40/00−40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の速度で回転する複数個のロールにより移送されるガラス基板を冷却する段階と、
移送過程で、ガラス基板のクラック(crack)不良に関連した複数個の予測因子およびそれぞれのロールの回転速度情報によるガラス基板のクラック不良率を予測する段階と、
前記ガラス基板の前記クラック不良率が低くなるようにそれぞれの前記ロールの回転速度を調節する段階と、を含み、
前記複数個の予測因子は、ガラス成形工程の運転条件、およびガラスの幅を含み、
前記予測する段階は、前記複数個の予測因子および前記複数個のロールの前記回転速度情報の部分最小二乗回帰分析を通じてクラック不良率を推定することによって行われる、
ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記複数個の予測因子は、原料投入量、ガラスの厚さ、成形バス(bath)電力、成形バス温度、および外気温度を含む、請求項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記ロールの前記回転速度情報は、前記ガラス基板の移送速度に対するそれぞれの前記ロールの前記回転速度のオフセット(offset)である、請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記予測する段階および前記調節する段階は、リアルタイムで行われる、請求項1からのいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
所定の速度で回転する複数個のロールにより移送されるガラス基板を冷却する移送部と、
移送過程で、ガラス基板のクラック(crack)不良に関連した複数個の予測因子およびそれぞれのロールの回転速度情報の部分最小二乗回帰分析を通じてガラス基板のクラック不良率を予測する予測部と、
前記ガラス基板の前記クラック不良率が低くなるようにそれぞれの前記ロールの回転速度を調節する制御部と、を含み、
前記複数個の予測因子は、ガラス成形工程の運転条件、およびガラスの幅を含む、
ガラス基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法および装置に関し、特に、ガラス製造工程のうち、ガラス基板の徐冷工程時に、ガラス基板のクラック不良を最小化するためのガラス基板の製造方法および装置に関する。
【0002】
本出願は、2017年9月20日付けの韓国特許出願第10−2017−0120911号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
図1および図2は、ガラス基板の製造装置を示す概略図である。
【0004】
図1および図2を参照すると、ガラス基板の製造装置は、約0.5mmの薄板ガラスを製造するガラス基板の製造工程に使用され、製造されたガラス基板は、テレビおよびノートパソコンなどの光学パネルの材料として使用されるので、工程時に光学特性、および物理的強度などの制御が非常に重要である。
【0005】
ガラス基板の製造工程時に、品質の問題点になることは、ガラス基板内のクラック(crack)不良である。基板内のクラックに起因してガラス破損および光学物性の低下がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガラス基板の製造工程内に測定されているデータを活用して、クラック不良発生の原因因子を導き出し、クラック不良率を予測および減少させることができるガラス基板の製造方法および装置を提供することを解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の一態様によれば、所定の速度で回転する複数個のロールにより移送されるガラス基板を冷却する段階と、移送過程で、ガラス基板のクラック不良に関連した複数個の予測因子およびそれぞれのロールの回転速度情報によるガラス基板のクラック不良率を予測する段階と、ガラス基板のクラック不良率が低くなるようにそれぞれのロールの回転速度を調節する段階とを含むガラス基板の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、所定の速度で回転する複数個のロールにより移送されるガラス基板を冷却する移送部と、移送過程で、ガラス基板のクラック不良に関連した複数個の予測因子およびそれぞれのロールの回転速度情報の部分最小二乗回帰分析を通じてガラス基板のクラック不良率を予測する予測部と、ガラス基板のクラック不良率が低くなるようにそれぞれのロールの回転速度を調節する制御部とを含むガラス基板の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るガラス基板の製造方法および製造装置は、次のような効果を有する。
【0010】
ガラス基板の製造工程内に測定されているデータを活用して、クラック不良の発生原因因子を導き出し、クラック不良率を予測できるモデルの開発が可能である。
【0011】
また、このようなモデルを基礎として、ドロスボックスの各ロールの回転速度を調節してクラック不良率を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガラス基板の製造装置を示す概略図である。
図2】ガラス基板の製造装置を示す概略図である。
図3】クラック不良率のモデル化のための予測因子を示す構成図である。
図4】クラック不良率の予測モデルを通じて予測されたクラック不良率と実際測定されたクラック不良率を示すグラフである。
図5】各ロールの回転速度オフセットとクラック不良率の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態によるガラス基板の製造方法および製造装置を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
また、図面符号に関係なく同一または対応の構成要素は、同一または類似の参照番号を付与し、これに関する重複説明は省略することとし、説明の便宜のために図示された各構成部材のサイズおよび形状は、誇張されたり縮小されたりし得る。
【0015】
図3は、クラック不良率のモデル化のための予測因子を示す構成図であり、図4は、クラック不良率の予測モデルを通じて予測されたクラック不良率と実際測定されたクラック不良率を示すグラフであり、図5は、各ロールの回転速度オフセット(offset)とクラック不良率の相関関係を示すグラフである。
【0016】
本発明の一実施形態に係るガラス基板の製造装置は、所定の速度で回転する複数個のロールにより移送されるガラス基板を冷却する移送部と、移送過程で、ガラス基板のクラック(crack)不良に関連した複数個の予測因子およびそれぞれのロールの回転速度情報の部分最小二乗回帰分析を通じてガラス基板のクラック不良率を予測する予測部と、ガラス基板のクラック不良率が低くなるようにそれぞれのロールの回転速度を調節する制御部とを含む。
【0017】
図1を参照すると、前記ガラス基板の製造装置は、徐冷装置10を含む。図2を参照して前記ガラス成形および徐冷装置10を説明すると、バス(bath)、ドロスボックス(Dross box)、レア(Lehr)を含む。この際、移送部は、複数個のロール11、12、13、14を含み、複数個のロールは、特に、ドロスボックス側に位置する。複数個のロールは、ガラス基板を移送し、移送過程で、ガラス基板の冷却(徐冷)が行われる。
【0018】
一方、徐冷中に、ガラス基板にクラックが発生することがある。特に、ガラス基板の移送速度によって各ロール11、12、13、14の回転速度も最適化されなければならない。もしガラス基板の移送速度とロールの回転速度が最適化されなければ、ガラス基板とロール11、12、13、14の間の摩擦によってガラス基板にクラックが発生することになる。すなわち、ガラス基板の移送速度に最適化されるように、ロールの回転速度にオフセットが発生しないように調節しなければならない。
【0019】
本発明の一実施形態に係るガラス基板の製造方法は、所定の速度で回転する複数個のロールにより移送されるガラス基板を冷却する段階(以下、冷却段階という)と、移送過程で、ガラス基板のクラック不良に関連した複数個の予測因子およびそれぞれのロールの回転速度情報によるガラス基板のクラック不良率を予測する段階(以下、予測段階という)と、ガラス基板のクラック不良率が低くなるようにそれぞれのロールの回転速度を調節する段階(以下、調節段階という)とを含む。
【0020】
図3を参照すると、複数個の予測因子は、ガラス成形工程の運転条件、およびガラスの幅を含み、予測因子と、それぞれのロールの回転速度情報により多変量技術による統計的モデル化が可能である。複数個の予測因子は、原料投入量、ガラスの厚さ、成形バス(bath)電力、成形バス温度、および外気温度を含むことができる。ただし、複数個の予測因子(運転条件、ガラスの幅など)は、クラック不良率を減らすために変化させにくい条件である。ただし、それぞれのロール11、12、13、14の最適化を通じてクラック不良率を予測および減少させることができる。したがって、前記の予測因子は、参考因子であり得、各ロールの回転速度情報は、最適化因子に該当することができる。
【0021】
この際、予測段階は、複数個の予測因子および複数個のロールの回転速度情報の部分最小二乗回帰分析を通じてクラック不良率を推定することによって行われ得る。
【0022】
図4を参照すると、複数個の予測因子に基づく部分最小二乗回帰分析を通じての約61%説明できる予測モデルを開発することができる。
【0023】
また、ロール11、12、13、14の回転速度情報は、ガラス基板の移送速度に対するそれぞれのロールの回転速度のオフセットでありうる。したがって、オフセットを減らすことができるように、それぞれのロールの回転速度を調節することができる。
【0024】
また、予測段階および調節段階は、リアルタイムで行われ得る。
【0025】
図5を参照すると、前記分析モデルを通じて特定の運転時点の4個のロール11、12、13、14のロール回転速度と最適方向が提示され得る。図5で、M1は、11番符号のロールを示し、M2は、12番符号のロールを示し、M3は、13番符号のロールを示し、M4は、14番符号のロールを示す。
【0026】
また、青色実線は、特定の運転時点におけるロール速度の敏感度関数を示し、青色点線は、信頼区間を示す。また、赤色点は、当該時点におけるロール回転速度であり、クラック不良率を最小化するためには、どんな方向(ロール速度の増加/減少)に調節されなければならないかを示すことになる。
【0027】
例えば、図5の(a)、(b)を参照すると、ガラス基板の移送速度に比べてロールの速度が速い場合に該当するので、当該ロールの回転速度を低減しなければならない。
【0028】
これとは異なって、図5の(c)、(d)を参照すると、ガラス基板の移送速度に比べてロールの速度が遅い場合に該当するので、当該ロールの回転速度を増加させなければならない。
【0029】
以上で説明された本発明の好ましい実施形態は、例示の目的のために開示されたものであり、本発明に関する通常の知識を有する当業者なら、本発明の思想と範囲内で多様な修正、変更、付加が可能であり、このような修正、変更および付加は、下記の特許請求範囲に属するものと見なすべきである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の一実施形態に係るガラス基板の製造方法および製造装置によれば、ガラス基板の製造工程内に測定されているデータを活用して、クラック不良発生の原因因子を導き出し、クラック不良率を予測できるモデルの開発が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5