【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーが共重合されたポリアミック酸のイミド化物であって、
前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して60モル%以上で含まれ、
前記芳香族ジカルボニルモノマーは、10〜40モル%のイソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)および60〜90モル%のテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)からなる、ポリアミドイミド共重合体が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記ポリアミドイミド共重合体を含むポリアミドイミドフィルムが提供される。
【0014】
以下、発明の実施形態によるポリアミドイミド共重合体およびこれを含むポリアミドイミドフィルムについて詳しく説明する。
【0015】
それに先立ち、本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0016】
本明細書で使用される単数形態は、文章がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0018】
I.ポリアミドイミド共重合体
発明の一実施形態によれば、
芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーが共重合されたポリアミック酸のイミド化物であって、
前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して60モル%以上で含まれ、
前記芳香族ジカルボニルモノマーは、10〜40モル%のイソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)および60〜90モル%のテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)からなる、ポリアミドイミド共重合体が提供される。
【0019】
本発明者らの継続的な研究の結果、芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーを用いたポリアミドイミド共重合体の形成に際して、特定組成の芳香族ジカルボニルモノマーを適用する場合、無色透明でありながらも優れた耐スクラッチ性を有する共重合体を形成できることが確認された。
【0020】
つまり、発明の実施形態により施された特定組成の前記芳香族ジカルボニルモノマーは、芳香族ジアミンモノマーおよび芳香族ジアンハイドライドモノマーとの共重合時に結晶性の発現を最小化することができ、これによって優れた耐スクラッチ性と低いヘイズ(haze)を同時に示すポリアミドイミド共重合体の形成を可能にする。
【0021】
発明の実施形態によれば、前記ポリアミドイミド共重合体は、前記芳香族ジアミンモノマー、前記芳香族ジアンハイドライドモノマー、および前記芳香族ジカルボニルモノマーが共重合されたポリアミック酸のイミド化物である。
【0022】
前記ポリアミック酸は、ブロック共重合体またはランダム共重合体であってもよい。
【0023】
例えば、ポリアミック酸ブロック共重合体は、前記芳香族ジアミンモノマーと前記芳香族ジアンハイドライドモノマーとの共重合に由来する第1単位構造と;前記芳香族ジアミンモノマーと前記芳香族ジカルボニルモノマーとの共重合に由来する第2単位構造とを含むことができる。
【0024】
そして、ポリアミック酸ランダム共重合体は、前記ポリアミドイミド共重合体は、前記芳香族ジアミンモノマー、前記芳香族ジアンハイドライドモノマー、および前記芳香族ジカルボニルモノマーがそれぞれアミド結合を形成し、ランダムに共重合された単位構造を含むことができる。
【0025】
このようなポリアミック酸は、イミド化によってイミド結合とアミド結合を同時に有するポリアミドイミド共重合体を形成する。
【0026】
発明の実施形態によれば、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して60モル%以上で含まれる方が、無色透明でありながらも優れた耐スクラッチ性を有する共重合体を形成するのに好ましい。
【0027】
好ましくは、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して60モル%以上、あるいは65モル%以上、あるいは67モル%以上で含まれる。
【0028】
ただし、前記芳香族ジカルボニルモノマーが過剰に使用される場合、耐吸湿性が低下したり、不透明になるなどの問題点が現れることがある。そのため、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して90モル%以下、あるいは85モル%以下、あるいは80モル%以下で含まれることが好ましい。
【0029】
特に、発明の実施形態によれば、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、イソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)およびテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)を共に含むことが好ましい。
【0030】
前記イソフタロイルクロライドおよびテレフタロイルクロライドは、中心のフェニレン基に対して、メタまたはパラの位置に2個のカルボニル基が結合された化合物である。
【0031】
したがって、ポリアミドイミド共重合体の形成に、前記芳香族ジカルボニルモノマーとしてイソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドを共に適用することによって、共重合体内のメタ結合に起因する加工性の向上とパラ結合に起因する機械的物性の向上に有利な効果を示すことができる。
【0032】
さらに、発明の実施形態によれば、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、10〜40モル%のイソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)および60〜90モル%のテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)からなることが好ましい。
【0033】
つまり、前記芳香族ジカルボニルモノマーをなすイソフタロイルクロライドおよびテレフタロイルクロライドは、前記モル比において共重合体の加工性と機械的物性の向上を可能にし、それと同時に高い硬度と低いヘイズの発現を可能にする。
【0034】
好ましくは、イソフタロイルクロライドは、前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して10モル%以上、あるいは12モル%以上;そして40モル%以下、あるいは35モル%以下、あるいは30モル%以下で含まれる。そして、好ましくは、テレフタロイルクロライドは、前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して90モル%以下、あるいは88モル%以下;そして60モル%以上、あるいは65モル%以上、あるいは70モル%以上で含まれる。
【0035】
上述のように、発明の実施形態によるポリアミドイミド共重合体において、前記芳香族ジカルボニルモノマーの組成が下記の2つの条件を同時に満たしてこそ、優れた耐スクラッチ性(高い等級の鉛筆硬度)と無色透明な特性(低いヘイズおよび黄色指数)を示すことができる。
【0036】
(i)前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して60モル%以上で含まれること
【0037】
(ii)前記芳香族ジカルボニルモノマーは、10〜40モル%のイソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)および60〜90モル%のテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)からなること
【0038】
一方、発明の実施形態によれば、前記ポリアミドイミド共重合体の形成のための前記芳香族ジアミンモノマーおよび前記芳香族ジアンハイドライドモノマーとしては、本発明の属する技術分野における通常の化合物が特別な制限なく適用可能である。
【0039】
具体的には、前記芳香族ジアミンモノマーとしては、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ビフェニルジアミン(2,2'−bis(trifluoromethyl)−4,4'−biphenyldiamine)、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン(4,4'−diaminodiphenyl sulfone)、4,4'−(9−フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'−(9−fluorenylidene)dianiline)、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4−(4−aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'−テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'−tetrachlorobenzidine)、2,7−ジアミノフルオレン(2,7−diaminofluorene)、4,4−ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4−diaminooctafluorobiphenyl)、m−フェニレンジアミン(m−phenylenediamine)、p−フェニレンジアミン(p−phenylenediamine)、4,4'−オキシジアニリン(4,4'−oxydianiline)、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−dimethyl−4,4'−diaminobiphenyl)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2−bis[4−(4−aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3−bis(4−aminophenoxy)benzene)、および4,4'−ジアミノベンズアニリド(4,4'−diaminobenzanilide)からなる群より選択された1種以上の化合物が好ましく使用できる。
【0040】
より好ましくは、前記芳香族ジアミンモノマーは、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ビフェニルジアミン(2,2'−bis(trifluoromethyl)−4,4'−biphenyldiamine)であってもよい。
【0041】
前記芳香族ジアンハイドライドモノマーとしては、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(3,3',4,4'−biphenyltetracarboxylic dianhydride)、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタリックアンハイドライド(4,4'−(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride)、2,2'−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド(2,2'−bis−(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride)、ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(benzophenone tetracarboxylic dianhydride)、ピロメリティックジアンハイドライド(pyromellitic dianhydride)、ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(benzophenone tetracarboxylic dianhydride)、オキシジフタリックアンハイドライド(oxydiphthalic anhydride)、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシリックジアンハイドライド(cyclobutane−1,2,3,4−tetracarboxylic dianhydride)、シクロペンタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(cyclopentane tetracarboxylic dianhydride)、およびビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンジアンハイドライド(bis(3,4−dicarboxyphenyl)sulfone dianhydride)からなる群より選択された1種以上の化合物が好ましく使用できる。
【0042】
より好ましくは、前記芳香族ジアンハイドライドモノマーは、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシリックジアンハイドライド(cyclobutane−1,2,3,4−tetracarboxylic dianhydride)、3,3',4,4'−ジフェニルテトラカルボキシリックアシッドジアンハイドライド(3,3',4,4'−biphenyltetracarboxylic acid dianhydride)、またはこれらの混合物であってもよい。
【0043】
特に、前記芳香族ジアミンモノマーである2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ビフェニルジアミン(2,2'−bis(trifluoromethyl)−4,4'−biphenyldiamine)と前記芳香族ジアンハイドライドモノマーである3,3',4,4'−ジフェニルテトラカルボキシリックアシッドジアンハイドライド(3,3',4,4'−biphenyltetracarboxylic acid dianhydride)は、イソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride)およびテレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)からなる前記芳香族ジカルボニルモノマーとの共重合によって、上述した特性を満たすポリアミドイミド共重合体の形成に有利に使用できる。
【0044】
そして、好ましくは、前記芳香族ジカルボニルモノマーは、前記ジアミンモノマーおよび前記芳香族ジカルボニルモノマーの総モルに対して30モル%以上、あるいは35モル%以上、40モル%以上;そして55モル%以下、あるいは50モル%以下、あるいは45モル%以下で含まれる方が、上述した特性の発現に有利である。
【0045】
一方、前記芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーが共重合されたポリアミック酸を形成する重合条件は特に制限されない。
【0046】
好ましくは、前記ポリアミック酸の形成のための重合は、不活性雰囲気の0〜100℃下、溶液重合で行われる。
【0047】
前記ポリアミック酸の形成のための溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ガンマ−ブチロラクトンなどが使用できる。
【0048】
前記ポリアミック酸の形成後のイミド化は、熱的にまたは化学的に行われる。例えば、化学的イミド化にはアセティックアンハイドライド(acetic anhydride)、ピリジン(pyridine)のような化合物が使用できる。
【0049】
発明の実施形態によれば、前記ポリアミドイミド共重合体は、10,000〜1,000,000g/mol、あるいは50,000〜1,000,000g/mol、あるいは50,000〜500,000g/mol、あるいは50,000〜300,000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0050】
II.ポリアミドイミドフィルム
発明の他の実施形態によれば、上述したポリアミドイミド共重合体を含む無色透明なポリアミドイミドフィルムが提供される。
【0051】
上述のように、本発明者らの継続的な研究の結果、芳香族ジアミンモノマー、芳香族ジアンハイドライドモノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーを用いたポリアミドイミド共重合体の形成に際して、特定組成の芳香族ジカルボニルモノマーを適用する場合、無色透明でありながらも優れた耐スクラッチ性を有する共重合体を形成できることが確認された。
【0052】
これにより、前記ポリアミドイミド共重合体を含むフィルムは、無色の透明性と共に高い耐スクラッチ性が求められる多様な成形品の材料に使用できる。例えば、前記ポリアミドイミドフィルムは、ディスプレイ用基板、ディスプレイ用保護フィルム、タッチパネルなどに適用可能である。
【0053】
前記ポリアミドイミドフィルムは、前記ポリアミドイミド共重合体を用いて、乾式法、湿式法のような通常の方法により製造される。例えば、前記ポリアミドイミドフィルムは、前記共重合体を含む溶液を任意の支持体上にコーティングして膜を形成し、前記膜から溶媒を蒸発させて乾燥する方法で得られる。必要に応じて、前記ポリアミドイミドフィルムに対する延伸および熱処理が行われる。
【0054】
前記ポリアミドイミドフィルムは、前記ポリアミドイミド共重合体を用いて製造されることによって、無色透明でありながらも優れた耐スクラッチ性を示すことができる。
【0055】
具体的には、前記ポリアミドイミドフィルムは、30±2μmの厚さを有する試験片に対して、ASTM D3363により測定された2H等級以上あるいは3H等級以上の鉛筆硬度(Pencil Hardness)を示すことができる。
【0056】
また、前記ポリアミドイミドフィルムは、30±2μmの厚さを有する試験片に対して、ASTM D1925により測定された3.0以下、あるいは2.8以下、あるいは2.75以下、あるいは2.5〜2.75、あるいは2.6〜2.75、あるいは2.65〜2.75の黄色指数(YI)を示すことができる。
【0057】
さらに、前記ポリアミドイミドフィルムは、30±2μmの厚さを有する試験片に対して、ASTM D1003により測定された0.5%以下、あるいは0.4%以下、あるいは0.1〜0.5%、あるいは0.2〜0.5%、あるいは0.2〜0.4%のヘイズ(haze)を示すことができる。
【0058】
また、前記ポリアミドイミドフィルムは、30±2μmの厚さにおいて550nm波長の可視光線に対する88.5%以上、あるいは89%以上、あるいは88.5〜89%の透過度(transmittance)を示すことができる。
【0059】
さらに、前記ポリアミドイミドフィルムは、30±2μmの厚さにおいて388nm波長の紫外線に対する25%以下、あるいは15%以下、あるいは13%以下、あるいは10〜25%、あるいは11〜25%の透過度を示すことができる。