【文献】
REGISTRY(STN)[online],2018.07.22[検索日 2021.06.07]CAS登録番号 2231260-04-9
【文献】
Uozumi, Yasuhiro 他,Asymmetric functionalization of bicycloalkenes by catalytic enantioposition-selective hydrosilylation,Tetrahedron Letters ,1992年,33(47),,7185-7188
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、産業上有用な、脂環構造(特にはノルボルナン環)とカルボニル基を有する加水分解性のケイ素化合物の高効率な工業的製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明では、下記一般式(1)で示されるヒドロシラン化合物と、下記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物とのヒドロシリル化反応による下記一般式(3)で示されるケイ素化合物の製造方法であって、白金系触媒の存在下、酸性化合物又は酸性化合物前駆体を漸次添加しながら下記一般式(1)で示されるヒドロシラン化合物と、下記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物とのヒドロシリル化反応を行うケイ素化合物の製造方法を提供する。
【化1】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基である。nは1、2又は3である。X
1は酸素原子又は単結合である。X
2はメチレン基又は酸素原子である。R
3、R
4は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基である。R
5は、炭素数1〜20の1価の基である。またR
5は、R
3又はR
4と結合して環を形成してもよい。)
【0007】
このようなケイ素化合物の製造方法とすれば、産業上有用な、脂環構造(特にはノルボルナン環)とカルボニル基を有する加水分解性のケイ素化合物の高効率な工業的製造方法となる。
【0008】
また、前記酸性化合物又は酸性化合物前駆体を、炭素数1〜20のカルボン酸とすることが好ましい。
【0009】
このような酸性化合物又は酸性化合物前駆体とすれば、反応性、収率の観点から特に好ましい。
【0010】
また、前記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物を、下記一般式(4)で示される5−ノルボルネン−2−カルボン酸エステル化合物とすることができる。
【化2】
(式中、R
3は水素原子、又はメチル基である。R
5は、炭素数1〜20の1価の基である。またR
5は、R
3と結合して環を形成してもよい。)
【0011】
本発明では、一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物を、このようなものとすることができる。
【0012】
また、本発明では、下記一般式(5)で示されるものであるケイ素化合物を提供する。
【化3】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基である。nは1、2又は3である。R
3’は、水素原子、又はメチル基である。R
5’は、炭素数7〜20の置換又は非置換のアラルキル基である。)
【0013】
このようなケイ素化合物は、その導入により縮合樹脂の各種特性を調整できることから産業上有用であり、例えば、半導体素子等の製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト法において、中間層として使用されるケイ素含有膜形成用組成物、あるいは、ケイ素含有フォトレジスト組成物への適用が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のケイ素化合物の製造方法によれば、産業上有用な、脂環構造(特にはノルボルナン環)とカルボニル基を有する加水分解性のケイ素化合物を高収率で製造でき、かつ、大量製造容易であるため、工業的利用価値が非常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、産業上有用な、脂環構造(特にはノルボルナン環)とカルボニル基を有する加水分解性のケイ素化合物の高効率な工業的製造方法の開発が求められていた。
【0017】
本発明者らは、ある特定の構造をもつ脂環構造ケイ素化合物を、ヒドロシリル化反応により合成することを試みた。しかし、既知のヒドロシリル化反応条件を当該ケイ素化合物の製造に適用した場合、反応後に多量の原料が残存することにより収率が低下する、精製が困難になるなどの問題があることが明らかとなった。即ち、特許文献3に記載の反応条件を適用した場合は、反応が途中で停止し多量の原料が残存、低収率となった。また、特許文献4に記載の反応条件では、ヒドロシリル化反応はうまく進行しなかった。
【0018】
そこで本発明者らは、カルボニル基含有脂環オレフィン化合物に対するヒドロシリル化反応について鋭意検討を重ねた。その結果、白金系触媒の存在下、酸性化合物又は酸性化合物前駆体を漸次添加しながら反応を行うことによって、当該ケイ素化合物を高収率で製造できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0019】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示されるヒドロシラン化合物と、下記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物とのヒドロシリル化反応による下記一般式(3)で示されるケイ素化合物の製造方法であって、白金系触媒の存在下、酸性化合物又は酸性化合物前駆体を漸次添加しながら下記一般式(1)で示されるヒドロシラン化合物と、下記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物とのヒドロシリル化反応を行うケイ素化合物の製造方法である。
【化4】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基である。nは1、2又は3である。X
1は酸素原子又は単結合である。X
2はメチレン基又は酸素原子である。R
3、R
4は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基である。R
5は、炭素数1〜20の1価の基である。またR
5は、R
3又はR
4と結合して環を形成してもよい。)
【0020】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
[ケイ素化合物の製造方法]
本発明では、上記一般式(1)で示されるヒドロシラン化合物と、上記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物とのヒドロシリル化反応による上記一般式(3)で示されるケイ素化合物の製造方法であって、白金系触媒の存在下、酸性化合物又は酸性化合物前駆体を漸次添加しながら上記一般式(1)で示されるヒドロシラン化合物と、上記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物とのヒドロシリル化反応を行うケイ素化合物の製造方法を提供する。以下、本発明に用いるヒドロシラン化合物、カルボニル基含有脂環オレフィン化合物、及びヒドロシリル化反応についてさらに詳細に説明する。
【0022】
<ヒドロシラン化合物>
ここで、本発明のケイ素化合物の製造方法に原料として用いられるヒドロシラン化合物は下記一般式(1)で示される。
【化5】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基である。nは1、2又は3である。)
【0023】
一般式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基である。R
1、R
2として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基を例示できるが、これらに限定されない。R
1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が特に好ましい。R
2としては、メチル基、エチル基、フェニル基が特に好ましい。nは1、2又は3である。
【0024】
上記のヒドロシラン化合物として、さらに具体的には、例えばトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
<カルボニル基含有脂環オレフィン化合物>
本発明のケイ素化合物の製造方法に原料として用いられるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物は下記一般式(2)で示される。
【化6】
(式中、X
1は酸素原子又は単結合である。X
2はメチレン基又は酸素原子である。R
3、R
4は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基である。R
5は、炭素数1〜20の1価の基である。またR
5は、R
3又はR
4と結合して環を形成してもよい。環を形成するときはR
3、R
4は単結合、R
5は炭素数1〜20の2価の基となる。)
【0026】
一般式(2)中、X
1は酸素原子又は単結合である。X
1は酸素原子であることが特に好ましい。X
2はメチレン基又は酸素原子である。X
2はメチレン基であることが特に好ましい。また、R
3、R
4は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又は単結合である。R
4は水素原子であることが特に好ましい。R
5は、炭素数1〜20の1価の基、又は炭素数1〜20の2価の基であって、R
3又はR
4と結合して環を形成してもよい。R
5として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0027】
また、上記一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物を、下記一般式(4)で示される5−ノルボルネン−2−カルボン酸エステル化合物とすることができる。
【化7】
(式中、R
3は水素原子、又はメチル基である。R
5は、炭素数1〜20の1価の基である。またR
5は、R
3と結合して環を形成してもよい。)
【0028】
上記のカルボニル基含有脂環オレフィン化合物として、さらに具体的には、下記の化合物を例示できるが、これらに限定されない。下式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、i−Prはイソプロピル基を示し、以下同様である。
【化8】
【0029】
上記化合物にはエナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、上記構造式は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0030】
<ケイ素化合物>
本発明のケイ素化合物の製造方法により得られるケイ素化合物は下記一般式(3)で示される。
【化9】
(上記一般式(3)中、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基である。X
1は酸素原子又は単結合である。X
2はメチレン基又は酸素原子である。R
3、R
4は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基である。R
5は、炭素数1〜20の1価の基である。またR
5は、R
3又はR
4と結合して環を形成してもよい。環を形成するときはR
3、R
4は単結合、R
5は炭素数1〜20の2価の基となる。nは1、2又は3である。)
【0031】
上記のケイ素化合物として、さらに具体的には、下記の化合物を例示できるが、これらに限定されない。
【化10】
【0032】
上記化合物にはエナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、上記構造式は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0033】
<ヒドロシリル化反応>
次に、本発明のケイ素化合物の製造方法は、以下のような、一般式(1)で示されるヒドロシラン化合物(ヒドロシラン化合物(1))と一般式(2)で示されるカルボニル基含有脂環オレフィン化合物(カルボニル基含有脂環オレフィン化合物(2))とのヒドロシリル化反応を用いて一般式(3)で示されるケイ素化合物(ケイ素化合物(3))を製造する方法である。以下、本発明のケイ素化合物の製造方法に用いるヒドロシリル化反応について詳しく説明する。
【化11】
(上記一般式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、X
1、X
2、nは上記と同様である。)
【0034】
ヒドロシラン化合物(1)とカルボニル基含有脂環オレフィン化合物(2)の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、カルボニル基含有脂環オレフィン化合物(2)1モルに対し、ヒドロシラン化合物(1)が0.5〜2モル、特に0.7〜1.3モルの範囲が好ましい。
【0035】
本発明に用いられる白金系触媒としては、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液等の白金触媒を有機溶媒で希釈した触媒の他、塩化白金酸、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金、ビス(アセチルアセトナト)白金、白金−炭素、白金−アルミナ、白金−シリカ等の担持触媒等が挙げられる。このなかでも、特に選択性の点から、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の白金ビニルシロキサン錯体を有機溶媒で希釈した触媒が好ましく、具体的には白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液が例示される。
【0036】
白金系触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、カルボニル基含有脂環オレフィン化合物(2)に対して好ましくは0.00001〜5モル、更に好ましくは0.00005〜4モル、特に好ましくは0.0001〜3モルである。白金系触媒の使用量が0.00001モル以上であれば触媒の効果がより十分に発現し、5モル以下であれば触媒量に見合うだけの反応促進効果が確実に得られる。
【0037】
本発明に用いる酸性化合物として、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、シュウ酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、パラ−クロロ安息香酸、トリメチルシリル酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、乳酸、アセト酢酸、グリオキシル酸、グルタミン酸、ピバル酸、t−ブチル酢酸、ペンタン酸、ウンデカン酸が挙げられるが、これらに限定されない。酸性化合物前駆体として、具体的には、ギ酸トリメチルシリル、酢酸トリメチルシリル、プロピオン酸トリエチルシリル、安息香酸トリメチルシリル、トリフルオロ酢酸トリメチルシリル、酪酸トリメチルシリル、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、シリコンテトラベンゾエートなどのカルボン酸シリルエステル、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸などのカルボン酸無水物、塩化アセチル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイルなどのカルボン酸ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
以下に、上記の酸性化合物、酸性化合物前駆体の構造式も併せて示す。
【化12】
【0039】
本発明に用いられる酸性化合物又は酸性化合物前駆体としては、反応性、収率の観点から、炭素数1〜20のカルボン酸が特に好ましい。酸性化合物又は酸性化合物前駆体の使用量は特に限定されないが、反応性、製品品質の観点からケイ素化合物(3)1モルに対し、0.0001〜1モル、特に0.001〜0.5モルの範囲が好ましい。
【0040】
上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。上記反応の反応温度は特に限定されず、必要に応じて反応途中で昇温してもよいが、0〜200℃、特に10〜150℃が好ましい。
【0041】
本発明のケイ素化合物の製造方法においては、白金系触媒の存在下、酸性化合物又は酸性化合物前駆体(以下、酸触媒と呼ぶ)を漸次添加しながら反応を行うことが重要である。酸触媒の漸次添加の方法は、多数回分割投入(断続添加)でも、連続フィードでもよい。連続フィードであれば、途中で反応が停滞し、未反応の両原料が系中に多量に残存するおそれがなく、それゆえに、酸触媒を添加した際に、未反応の両原料が一気反応して暴走反応を起こす可能性がないため、より好ましい。
【0042】
反応時の各原料の混合方法は特に限定されないが、具体的には以下の5つの方法を例示できる。なお、いずれの場合も、漸次添加する酸触媒は無希釈でもよいし、前述の反応溶媒又は他の原料で希釈してもよい。1)最初に反応器に脂環オレフィンと白金系触媒を仕込み、続いてヒドロシラン化合物と酸触媒を混合して、あるいは別々に漸次添加する。2)最初に反応器に白金系触媒を仕込み、続いて脂環オレフィン、ヒドロシラン化合物と酸触媒を混合して、あるいは別々に漸次添加する。3)最初に反応器に白金系触媒とヒドロシラン化合物を仕込み、続いて脂環オレフィンと酸触媒を混合して、あるいは別々に漸次添加する。4)最初に反応器に白金系触媒と脂環オレフィンの一部を仕込み、続いて酸触媒と残りの脂環オレフィンの混合物とヒドロシラン化合物を混合して、あるいは別々に漸次添加する。5)最初に反応器に白金系触媒、脂環オレフィンとヒドロシラン化合物を仕込み、続いて酸触媒を漸次添加する。上記の中で、1)〜4)は反応の制御が容易であり、特に好ましい。
【0043】
反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)等により反応を追跡して、反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物がすでに十分な純度を有している場合は、反応混合物をそのまま目的物として扱えるが、必要に応じて、蒸留、ろ過、洗浄、カラム分離、吸着剤処理等の各種の精製法によって更に精製して使用することもできる。触媒等微量不純物を取り除き、高純度にするためには、蒸留による精製が特に好ましい。
【0044】
[ケイ素化合物]
次に、本発明では、下記一般式(5)で示されるものであるケイ素化合物を提供する。以下、下記一般式(5)で示されるケイ素化合物について詳述する。
【化13】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基である。nは1、2又は3である。R
3’は、水素原子、又はメチル基である。R
5’は、炭素数7〜20の置換又は非置換のアラルキル基である。)
【0045】
一般式(5)中、R
3’は、水素原子、又はメチル基である。R
5’は、炭素数7〜20の置換又は非置換のアラルキル基である。R
5’は、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素を含んでいてもよい。R
5’としては、置換又は非置換のベンジル基が特に好ましい。置換基としては、炭素数1〜13のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、フルオロアルキル基、またはアルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子が特に好ましい。nは1、2又は3である。一般式(5)中、ノルボルナン環上のケイ素の置換位置は5位でも6位でもよいが、5、6位置換体の混合物がより好ましい。
【0046】
上記一般式(5)で示されるケイ素化合物として、さらに具体的には、下記の化合物を例示できるが、これらに限定されない。
【化14】
【0047】
上記化合物にはエナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、上記構造式は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例1]
3000mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチル777g(4.00mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液6.24g(0.096mol)を仕込んだ。内温を70〜80℃に温調しながらトリメトキシシラン587g(4.80mol)と酢酸11.6g(0.192mol)の混合物を3.5時間掛けて滴下した後、ジャケット温度80℃で2時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は99%であった。得られた反応液を減圧蒸留して5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸t−ブチルを94℃/15Paの留分として1075g(3.40mol)得た。収率は、85.0%であった。
【0050】
[実施例2]
100mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸イソブチル35.0g(0.17mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液0.26g(0.00004mol)を仕込んだ。内温を70〜84℃に温調しながらトリメトキシシラン24.6g(0.20mol)と酢酸0.49g(0.0081mol)の混合物を1時間掛けて滴下した後、ジャケット温度80℃で2時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は98%であった。得られた反応液を減圧蒸留して2−メチル−5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸イソブチルを103℃/20Paの留分として46.9g(0.146mol)得た。収率は、87.1%であった。
【0051】
[実施例3]
200mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸ベンジル50.0g(0.22mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液0.28g(0.00004mol)を仕込んだ。内温を60〜80℃に温調しながらトリメトキシシラン28.1g(0.23mol)と酢酸0.56g(0.0093mol)の混合物を2時間掛けて滴下した後、ジャケット温度55℃で24時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は97%であった。得られた反応液を減圧蒸留して5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸ベンジルを145℃/20Paの留分として63.4g(0.181mol)得た。収率は、82.6%であった。
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR/CDCl
3)の結果を
図1に示す。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm
−1)
2950、2876、2841、1733,1612,1522,1452,1437,1378,1345,1291,1252,1188,1158,1087,1036,1016,981,941,900,870,813,724,630,577,525,457cm
−1。
【0052】
[実施例4]
2000mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸3,4−ジフルオロベンジル435.0g(1.65mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液2.57g(0.00040mol)を仕込んだ。内温を80〜90℃に温調しながらトリメトキシシラン241.0g(1.98mol)と酢酸4.74g(0.079mol)の混合物を4時間掛けて滴下した後、ジャケット温度80℃で24時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は95%であった。得られた反応液を減圧蒸留して5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸3,4−ジフルオロベンジルを161℃/20Paの留分として536.6g(1.389mol)得た。収率は、84.4%であった。
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR/CDCl
3)の結果を
図2に示す。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm
−1)
3033,2950,2876,2840,1732,1498,1456,1380,1345,1302,1283,1253,1188,1158,1087,1029,1016,980,947,909,806,753,728,698,504,457cm
−1。
【0053】
[実施例5]
100mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチル15.0g(0.077mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液0.200g(0.00003mol)を仕込んだ。内温を75〜86℃に温調しながらトリメトキシシラン18.9g(0.154mol)と、酢酸0.37g(0.0062mol)を添加した5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチル15.0g(0.077mol)をそれぞれ別の滴下漏斗を用いて1時間掛けて滴下した後、ジャケット温度75℃で2時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は99%であった。得られた反応液を減圧蒸留して5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸t−ブチルを94℃/15Paの留分として41.9g(0.132mol)得た。収率は、86.0%であった。
【0054】
[実施例6]
100mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸ベンジル25.0g(0.110mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液0.310g(0.00005mol)を仕込んだ。内温を50〜75℃に温調しながらトリメトキシシラン29.5g(0.24mol)と、酢酸0.58g(0.0096mol)を添加した5−ノルボルネン−2−カルボン酸ベンジル25.0g(0.110mol)をそれぞれ別の滴下漏斗を用いて1時間掛けて滴下した後、ジャケット温度55℃で17時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は95%であった。得られた反応液を減圧蒸留して5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸ベンジルを145℃/20Paの留分として62.2g(0.177mol)得た。収率は、81.0%であった。
【0055】
[実施例7]
100mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチル30.0g(0.154mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液0.200g(0.00003mol)を仕込んだ。内温を75〜90℃に温調しながらトリメトキシシラン18.9g(0.154mol)と、2,2−ジメチル酪酸0.72g(0.0062mol)をウンデカン10.0g(0.064mol)に溶解させた溶液をそれぞれ別の滴下漏斗を用いて1時間掛けて滴下した後、ジャケット温度75℃で2時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は97%であった。得られた反応液を減圧蒸留して5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸t−ブチルを94℃/15Paの留分として40.9g(0.129mol)得た。収率は、84.0%であった。
【0056】
[実施例8]
3000mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチル777g(4.00mol)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の3%トルエン溶液13g(0.002mol)を仕込んだ。内温を70〜80℃に温調しながらトリメトキシシラン464g(3.80mol)と酢酸4.8g(0.08mol)の混合物を3時間掛けて滴下した後、ジャケット温度80℃で2時間熟成した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は70%であり、反応の進行が不十分であることが分かった。反応促進のため、酢酸1.2gを追加して系内に添加したところ、急激な発熱が起こった。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は98%であった。得られた反応液を減圧蒸留して5(又は6)−トリメトキシシリルノルボルナン−2−カルボン酸t−ブチルを94℃/15Paの留分として1046g(3.31mol)得た。収率は、87.0%であった。
【0057】
[比較例1]
5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチル777g(4.0mol)、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体トルエン溶液(白金3%含有)13g、酢酸14.8g(80mmol)の混合物を窒素雰囲気下、75℃で加熱撹拌した。反応液に、トリメトキシシラン489g(4.0mol)を3時間かけて滴加後、75℃で14時間加熱撹拌した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は47%であり、反応の進行が不十分であることが分かった。反応促進のため、酢酸3.7gを追加して系内に添加したところ、急激な発熱が起こり、反応液が沸騰した。
【0058】
[比較例2]
1000mlの4つ口ガラスフラスコに還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、5−ノルボルネン−2−カルボン酸3,4−ジフルオロベンジル194g(1.0mol)、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体トルエン溶液(白金3%含有)1.3g、炭酸アンモニウム0.9g(20mmol)を仕込んだ。内温を80〜90℃に温調しながらトリメトキシシラン122g(1.0mol)を4時間掛けて滴下後、75℃で14時間加熱撹拌した。反応液をGC分析した結果、目的物への転化率は10%と原料が多量に残存しており、反応の進行が不十分であることが分かった。
【0059】
本発明のケイ素化合物の製造方法を利用した実施例1〜8においては、目的のケイ素化合物を高収率で得ることができた。一方、酸性化合物を漸次添加せず、初期に一括投入した比較例1、及び酸性化合物又は酸性化合物前駆体の代わりに炭酸アンモニウムを用い、これを初期に一括投入した比較例2では、原材料の滴下終了後、長時間加熱撹拌しても目的物への転化率が低く、それゆえ目的のケイ素化合物を高収率で得られないことが分かった。
【0060】
上記の結果は、本発明の製造方法が、ヒドロシラン化合物とカルボニル基含有脂環オレフィン化合物とのヒドロシリル化反応を高収率で実現し、且つそれが工業的スケールで実施可能であることを示しており、その産業的価値の高さが示唆された。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。