(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係等が誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略することとする。さらに、各図において示す方向は、構成要素間の相対的な位置を示し、絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
【0011】
実施形態に係る発光装置の構成の一例を、
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
発光装置100は、上面31を光取り出し面とする発光素子30と、発光素子30の上面と接合して設けられ、波長変換部材11を含有する無機材料を主成分とする第1透光性部材1と、第1透光性部材1の上面5と接合して設けられ、無機材料を主成分とする第2透光性部材2と、を備える。第1透光性部材1の下面周縁は平面視において発光素子30の上面周縁よりも外側に位置し、第2透光性部材2の下面周縁は、平面視において第1透光性部材1の上面周縁よりも内側に位置し、第2透光性部材2の上面周縁は平面視において第1透光性部材の上面周縁よりも内側に位置する。
第1透光性部材1と第2透光性部材2とは一体の透光性部材10として形成されている。透光性部材10は、それぞれ上面と下面とを有する第1透光性部材1及び第2透光性部材2を備え、第1透光性部材の上面5と第2透光性部材の下面8とが接合して透光性部材10を構成している。発光素子30からの光は、第1透光性部材1の下面7から入射して第2透光性部材の上面3から外部に放出される。
【0012】
(発光素子)
発光素子30は、接合部材を介して基板40の導体配線にフリップチップ実装されている。発光素子30は、同一面側に一対の電極を有し、一対の電極の形成された面を下面として、下面と対向する上面31を主な光取り出し面としている。発光素子30は、公知のものを利用でき、例えば、発光ダイオードやレーザダイオードを用いるのが好ましい。また、発光素子30は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものを用いることができる。さらに、赤色の発光素子としては、窒化物系半導体素子の他にもGaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。なお、発光素子30は、前記した以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。発光素子30は、組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
発光素子30は、同一面側に正負一対の電極を有するものが好ましい。これにより、発光素子30を基板40上にフリップチップ実装することができる。この場合、一対の電極が形成された面と対向する面が、発光素子の主な光取り出し面となる。また、発光素子30を基板40上にフェイスアップ実装する場合は、一対の電極が形成された面が発光素子30の主な光取り出し面となる。発光素子30は、例えば、バンプ等の接合部材を介して基板40と電気的に接続される。
【0013】
(透光性部材)
透光性部材10は、発光装置100が備える発光素子30の上面31と接合して設けられている。透光性部材10は、それぞれ上面と下面とを有する第1透光性部材1及び第2透光性部材2を備え、第1透光性部材の上面5と第2透光性部材の下面8とが接合して透光性部材10を構成している。例えば、第1透光性部材1は波長変換部材11を含有するガラス板であり、第2透光性部材2はガラス板である。透光性部材10は、第1透光性部材1の下面7より第2透光性部材2の上面3の面積が小さい凸形状に形成されており、第1透光性部材1の側面6は、平面視において第2透光性部材2の側面4よりも外側に位置する。
透光性部材10の厚みは、例えば、60〜300μmとすることができる。透光性部材10の前記した厚みのうち、第2透光性部材2の厚みは、例えば、透光性部材10の厚みの50〜90%であることが好ましい。
【0014】
(第1透光性部材)
第1透光性部材1は、発光素子30の上面31と接合して設けられる。
第1透光性部材1は、波長変換部材を含み、無機材料を主成分としている。第1透光性部材1は、例えば、波長変換部材11を含有するガラスを用いることができる。第1透光性部材1は、例えば、平板状であり、上面5と、上面5と対向する下面7と、上面5及び下面7に接する側面6と、を有している。
第1透光性部材の下面7は、発光装置100が備える少なくとも一つ以上の発光素子30からの光が入射される面である。この下面7は、下面7と接合される一つ以上の発光素子30の上面31の面積の和よりも大きな面積となるように形成されている。また、第1透光性部材の下面7は、略平坦になるように形成されている。
第1透光性部材1の平面視形状は、後述する発光素子の形状、数及び配置等によって適宜設定することができ、円又は楕円、多角形及びこれらに近似する形状が挙げられる。なかでも、発光素子の外縁形状に合わせた形状(例えば共に略矩形状)であることが好ましい。また、第1透光性部材1と第2透光性部材2の平面視形状は略相似形としてもよいし、それぞれ異なる形状としてもよい。
【0015】
第1透光性部材の上面5は、下面7に略平行となるように形成されている。第1透光性部材の側面6は、第1透光性部材の下面7に対して略垂直な面に形成されている。側面6が下面7に対して略垂直に形成されることで、発光装置100の製造時において第1透光性部材1と発光素子30とを接合する接着材15の当該側面に対する這い上がりを抑制することができる。側面6への接着材15の這い上がりが抑制されることで、発光素子30から出射された光が第1透光性部材1を介さずに外部に漏れ出ることを防止することができる。
【0016】
そして、第1透光性部材の下面7は、発光素子30の上面31を全て包含するように、発光素子30の上面31よりも大きく形成されている。つまり、第1透光性部材の下面7周縁は、平面視において発光素子30の上面31周縁よりも外側に位置することとなる。第1透光性部材1の下面7が発光素子30の上面31よりも大きな面積で形成されることにより、発光素子30から出射される光をロスなく第1透光性部材1に入射させることができる。第1透光性部材の下面7は、当該下面7と接合される少なくとも一つ以上の発光素子30の上面31における面積の和に対して、例えば、105〜150%の範囲で大きな面積になるように形成されている。第1透光性部材1は、発光素子30から出射される光を下面7から入射させ、第2透光性部材の下面8から第2透光性部材2に入射させる。
【0017】
また、第1透光性部材1は、発光素子30から出射される光の少なくとも一部を波長変換可能な波長変換部材11を含有し、無機材料を用いて形成されている。無機材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、フッ化カルシウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、オキシナイトライドガラス、カルコゲナイドガラス等のガラスが挙げられる。
【0018】
波長変換部材11としては、この分野で用いられる蛍光体を適宜選択することができる。なお、波長変換部材11として蛍光体を用いる場合、第1透光性部材1は、例えば、蛍光体含有ガラス、蛍光体含有セラミックス、蛍光体の焼結体を用いることができる。蛍光体の具体例としては、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(CaO−Al
2O
3−SiO
2:Eu)、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)
2SiO
4:Eu)、βサイアロン蛍光体、CaAlSiN
3:Eu(SCASN系蛍光体)、(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu(SCASN蛍光体)等の窒化物系蛍光体、K
2SiF
6:Mn(KSF系蛍光体)、硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体などが挙げられる。
また、蛍光体は、青色発光素子又は紫外線発光素子と組み合わせることにより、様々な発光色を実現することができる。白色に発光可能な発光装置100とする場合、第1透光性部材1に含有される波長変換部材11の種類、濃度によって白色となるように調整される。第1透光性部材1に含有される波長変換部材11の濃度は、例えば、30〜80質量%程度である。
さらに、第1透光性部材1は、光拡散材を含有してもよい。光拡散材としては、例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などを用いることができる。第1透光性部材1中において
波長変換部材11は、第1透光性部材1の全体に分散されてもよいし、第1透光性部材1の上面あるいは下面側に偏在していてもよい。
【0019】
(第2透光性部材2)
第2透光性部材2は、第1透光性部材1の上面と接合して設けられる。第2透光性部材2は無機材料を主成分としている。第2透光性部材2は、例えば、ガラスを用いることができる。第2透光性部材2は、例えば平板状であり、上面3と、上面3に対向する下面8と、上面3及び下面8に接する側面4と、を備えている。第2透光性部材の下面8は、第1透光性部材の上面5より小さな面積で形成される。すなわち、第2透光性部材2は、第2透光性部材の下面8周縁が、平面視において第1透光性部材の上面5周縁よりも内側に位置し、第2等透光性部材の上面3周縁が、平面視において第1透光性部材の上面5周縁よりも内側に位置している。第2透光性部材の上面3の面積は、発光装置100が備える一つ以上の発光素子30の上面31の面積の和よりも小さいことが好ましい。さらに、第2透光性部材の上面3の面積は、第1透光性部材の下面7の面積に対して、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。このように第2透光性部材の上面3の面積を第1透光性部材の下面7の面積に対して小さい面積とすることにより、第1透光性部材の下面7から入射された発光素子30からの出射光を、発光素子30の上面31より小さな面積で第2透光性部材の上面3(発光装置100の光取り出し面)から放出させることができる。つまり、発光装置100は、第2透光性部材2により光取り出し面の面積が絞られて、より高輝度な発光装置として、より遠くを照らすことが可能となる。
【0020】
第2透光性部材の側面4は、第2透光性部材の上面3に対して略垂直に形成されていることが好ましい。この側面4は、第2透光性部材の上面3に対して略垂直に形成されることで、発光装置100の第2透光性部材2から露出する第1透光性部材1の上面5を覆う光反射性部材20の厚みを略均一とすることができる。第2透光性部材の側面4は、例えば、上面3に対して90度プラスマイナス5度の範囲で形成されており、本明細書中ではこの範囲を略垂直としている。第2透光性部材の側面4が上面3に対して略垂直に形成されることで、第2透光性部材の上面3を発光装置100の光取り出し面とした際に、発光装置100の上面における発光部と非発光部との境界が明確な発光装置100とすることができる。
【0021】
第2透光性部材2の厚みは、例えば第1透光性部材1の厚み以上とすることが好ましい。第2透光性部材2は、一例として30〜270μm程度である。第2透光性部材2は、例えば、ガラス材料を使用することができる。ガラス材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、フッ化カルシウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、オキシナイトライドガラス、カルコゲナイドガラス等が挙げられる。なお、使用されるガラス材料は、上面及び/又は下面に反射防止のためのAR(Anti Reflection)コートが施されてもよい。また、第2透光性部材2は、第1透光性部材1と屈折率が近いものであることが好ましい。
【0022】
第1透光性部材1及び第2透光性部材2は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂のような周知の接着材による接着、高屈折率の有機接着材による接着、低融点ガラスによる接着などで接合することができるが、接着材等の接合部材を介さずに、直接接合されることが好ましい。第1透光性部材1及び第2透光性部材2は、互いに主として無機材料で形成されていることから、例えば、圧着、焼結、表面活性化接合、原子拡散接合、水酸基接合による直接接合することができる。第1透光性部材1及び第2透光性部材2は、同じ材料で直接接合することで、屈折率による反射を低減して光取り出し効率を向上させることができる。
【0023】
また、第2透光性部材2にガラス板等の無機材料を用いることにより、例えば、樹脂材料と比較し熱抵抗が小さくなる。このため、発光素子からの出射光が第2透光性部材2により発光面積が絞られた、より高輝度な発光装置100において、長期使用による発光面の経年劣化を抑制することが可能となる。
【0024】
(接着材)
発光素子30と透光性部材10とは、例えば接着材15で接合することができる。接着材15は、発光素子30の上面から側面の少なくとも一部に連続すると共に、光反射性部材20と発光素子30の側面との間に介在して設けられる。光反射性部材20と発光素子30の側面との間に介在する接着材15の上面は、第1透光性部材の下面7と接して設けられている。発光素子30と透光性部材10との接合部材として接着材15を用いる場合、発光素子30から出射される光は、接着材15を介して透光性部材10の下面へと伝搬される。このため、接着材15には、発光素子30から出射される光を透光性部材10へと有効に導光できる部材を用いることが好ましい。このように導光性及び接着性に優れる材料として、接着材15は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂のような周知の樹脂材料、高屈折率の有機接着材、無機系接着材、低融点ガラスによる接着材などを用いることができる。接着材15は、発光素子30の上面31から側面にまで延在し、フィレット16として設けられることが好ましい。フィレット16は、第1透光性部材の下面7と発光素子30の側面との双方に接し、光反射性部材20側に凹の曲面であることが好ましい。このような形状によって、発光素子30から出射される光は接着材15のフィレット面により反射され、第1透光性部材1へと導光されやすくなる。
なお、透光性部材10と発光素子30とは、接着材15を用いずに、直接接合されてもよい。
【0025】
光反射性部材20は、
図1、
図2及び
図4に示すように、第2透光性部材の上面3以外に向かう光を、第2透光性部材の上面3から放出するように反射させると共に、発光素子30の側面を被覆して、発光素子30を外力、埃、ガスなどから保護するものである。この光反射性部材20は、透光性部材10の上面3(つまり第2透光性部材の上面3)を発光装置100の光取り出し面として露出させて、透光性部材10及び発光素子30並びに基板40の上面の一部を覆うように設けられている。光反射性部材20は、具体的には、第2透光性部材の側面4、第1透光性部材の上面5及び側面6、接着材15の側面、発光素子30の側面及び下面側を覆うように設けられている。発光素子30の光取り出し面は、光反射性部材20から露出して第1透光性部材の下面7と接合されていることにより、透光性部材10に光を入射することが可能となる。光反射性部材20は、発光素子30からの光を反射可能な部材からなり、透光性部材10と光反射性部材20との界面で、発光素子30からの光を反射させて、透光性部材10内へと入射させる。このように、発光素子30から出射された光は、光反射性部材20で反射して透光性部材10内を通過し、発光装置100の光取り出し面である第2透光性部材の上面3から、外部へと出射する。
【0026】
ここで、光反射性部材20の上面は、第2透光性部材の上面3の高さと同等か、第2透光性部材の上面3よりも低いことが好ましい。発光装置100の光出射面となる第2透光性部材の上面3から出射された光は、横方向にも広がりを持つ。そのため、光反射性部材20の上面が、第2透光性部材の上面3よりも高い場合には、第2透光性部材の上面3から出射された光が光反射性部材20の上面に当たって反射され、配光のばらつきが生じる。よって、光反射性部材20は、第2透光性部材の側面4の外周を覆い、光反射性部材20の上面の高さを第2透光性部材の上面3と同等あるいは低くするように設ける。そうすることで、発光装置100において、発光素子30から出射された光を外部に効率よく取り出すことができるので好ましい。
【0027】
光反射性部材20は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、また、これらの樹脂を少なくとも一種以上含むハイブリッド樹脂からなる母材に光反射性物質を含有させることで形成することができる。光反射性物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどを用いることができる。光反射性部材20は、光反射性物質の含有濃度、密度により光の反射量、透過量が異なるため、発光装置100の形状、大きさに応じて、適宜濃度、密度を調整するとよい。また、光反射性部材20は、光反射性に加え、放熱性を併せ持つ材料とすると、光反射性を持たせつつ放熱性を向上させることができる。このような材料として、熱伝導率の高い窒化アルミニウムや窒化ホウ素が挙げられる。なお、光反射性部材20は、異なる素材のものを併用してもよく、例えば、発光素子30までの高さ部分と、発光素子30から透光性部材10までの高さの部分とに、異なる光反射性部材20を使用することとしてもよい。
【0028】
(基板)
基板40は、少なくとも1つ以上の発光素子30を実装し、発光装置100を電気的に外部と接続する。基板40は、平板状の支持部材及び支持部材の表面及び/又は内部に配置された導体配線を備えて構成されている。なお、基板40は、発光素子30の電極の構成、大きさに応じて電極の形状、大きさ等の構造が設定される。
【0029】
また、基板40の支持部材は、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子30から出射される光や外光などを透過しにくい材料を用いることが好ましい。基板40は、ある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどのセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)などの樹脂が挙げられる。なお、支持部材は、キャビティを有する構造としてもよい。これにより、前述の光反射性部材20を滴下して硬化するなどして、容易に形成することができる。
導体配線及び放熱用端子は、例えば、Cu,Ag,Au,Al,Pt,Ti,W,Pd,Fe,Niなどの金属又はこれらを含む合金などを用いて形成することができる。このような導体配線は、電解めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタ等によって形成することができる。
【0030】
発光装置100は、以上説明した構成を備えているので、一例として、オートバイ、自動車等のヘッドライト、あるいは船舶、航空機等の照明として使用される場合に、発光素子30から出射される光をより遠くへ照射することができる。すなわち、発光装置100では、1つ以上の発光素子30から光が出射されると、光反射性部材20に反射されずに、透光性部材10中を伝搬して第2透光性部材の上面3に直接向かう光と、光反射性部材20に反射して第2透光性部材の上面3から出る光とがある。そして、発光装置100では、第1透光性部材の下面7の面積を、発光素子30の上面面積の和よりも大きくすることで、発光素子30から照射される光をロスなく受光することができる。さらに、第2透光性部材の上面3の面積は、発光素子30の上面31の面積の和よりも小さく、また、第1透光性部材の下面7の面積よりも小さい。そのため、発光素子30からの出射光は透光性部材10により、第2透光性部材の上面3に集約される。これにより、ヘッドライトのハイビーム用途等に適した、高輝度で、より遠方に光を照射することができる発光装置100とすることができる。なお、
図4では、代表的な光の照射方向を模式的に矢印で示している。
【0031】
[発光装置の製造方法]
次に
図6のフローチャートに示す発光装置100の製造方法S10について、
図5A〜
図5Fを中心に参照しながら説明する。
(準備工程S11)
準備工程S11は、透光性部材集合体A10を準備する工程である。準備工程S11では、
図5Aに示すように、波長変換部材11を含有する平板状の第1透光性部材集合体A1の上面に、複数の第2透光性部材2の下面が接合された透光部材集合体A10を準備する。例えば、第1透光性部材集合体A1は、発光素子30からの光の一部を波長変換する波長変換部材11を含有させた波長変換部材含有ガラス板であり、第2透光性部材2は、ガラス材料等の無機材料を略直方体のブロックに形成又は加工したものである。透光性部材集合体A10は、波長変換部材含有ガラス板の上面に平面視略矩形に加工した複数の第2透光性部材2を直接接合することで形成することができる。第1透光性部材集合体A1は、第2透光性部材2の下面と、接着材等の他の部材を介して接合されていてもよいが、直接接合されることが好ましく、例えば、圧着、焼結、表面活性化接合、原子拡散接合、水酸基接合により直接接合することができる。この準備工程S11では、第2透光性部材2よりも面積が大きな第1透光性部材集合体A1に複数の第2透光性部材2が接合された透光部材集合体A10として形成される。なお、複数の第2透光性部材2は、第1透光性部材集合体A1の上面において、整列して接合されていることが好ましい。本実施形態では、第2透光性部材2は、第1透光性部材集合体A1の上面に、行方向及び/又は列方向に略一定の間隔Dtを有して配置されている。
【0032】
(透光性部材形成工程S12)
透光性部材形成工程S12は、準備した透光性部材集合体A10から、第1透光性部材1及び第2透光性部材2を含む個々の透光性部材10を得る工程である。透光性部材形成工程S12では、第1透光性部材集合体A1及び第2透光性部材2を含む透光性部材集合体A10を略等間隔で分割することにより、第1透光性部材1側の下面7が発光素子30の上面よりも大きな面積を有する複数の透光性部材10を得る。
図5B及び
図5Cに示すように、この透光性部材形成工程S12では、透光性部材集合体A10を間隔Dtの位置で、間隔Dtより幅が狭いブレードBr1により第1透光性部材集合体A1を切断する。分割された透光性部材10における第1透光性部材の下面7周縁は、発光装置100に用いられる1つ以上の発光素子30の上面31の面積の和よりも大きな面積を有するように形成される。このようにして得られた透光性部材10は、第1透光性部材の下面7より第2透光性部材の上面3の面積が小さい凸形状に形成されている。第1透光性部材集合体A1の分割面は、透光性部材10における第1透光性部材の側面6を形成し、第1透光性部材の側面6は、平面視において第2透光性部材の側面4よりも外側に位置している。
【0033】
なお、透光性部材10は、第1透光性部材1と第2透光性部材2とが、直接接合されている場合には、第1透光性部材1と第2透光性部材2との境において屈折率差がほとんどない状態となる。
【0034】
(基板及び発光素子の準備工程)
基板40及び発光素子30の準備工程では、発光素子30及び基板40をそれぞれ準備する。発光素子30及び基板40の準備工程は、透光性部材10の接合工程S13より以前に準備されていればよい。
基板40は、平面視略矩形状の平板状に形成され、例えば、支持部材に導体配線及び放熱用端子が設けられている。
そして、基板40には、発光素子30が実装される。ここでは、一つの発光装置100につき一つの発光素子30が基板40の導体配線上にバンプ等の接合部材を介して実装される。
【0035】
(接合工程S13)
図5Dに示すように、接合工程S13は、透光性部材10と発光素子30とを接合する工程である。接合工程S13では、
図3に示すように、透光性部材10における第1透光性部材1の下面周縁が発光素子30の上面31の周縁よりも外側に位置するように、透光性部材10の下面と発光素子30の上面31とを接合する。
発光素子30と透光性部材10とは接着材15により接合されている。接着材15による接合は、まず発光素子30の上面31に接着材15を滴下し、接着材15上に透光性部材10を配置する。滴下された接着材15は、透光性部材10により押圧され、発光素子30の側面まで濡れ広がり、透光性部材10の下面と発光素子30の側面との間にフィレット16を形成するように設けられる。滴下する接着材15の量及び粘度は、発光素子30の側面にフィレット16が設けられ、かつ接着材15が基板40まで濡れ広がらない程度に適宜調整される。
【0036】
透光性部材10は、発光素子30の上面に配置された接着材15を介して第1透光性部材の下面7が発光素子30上に接合される。この透光性部材10は、第1透光性部材の下面7の面積が、一つ以上の発光素子30の上面31における面積の和よりも大きく形成され、発光素子30の側面から第1透光性部材の下面7の外縁までの距離が同等になるように配置されることが好ましい。また、透光性部材10は、第2透光性部材の上面3の中心が、全体として平面視で矩形状になるように整列して配置された1つ以上の発光素子30の全体の中心に略重なるように配置されることが好ましい。発光素子30と接合した透光性部材10は、第1透光性部材の下面7の面積が発光素子30の上面31における面積の和よりも大きい。そのため、透光性部材10は、発光素子30の上面から出た光を発光素子30の上面31より大きな面積の第1透光性部材の下面7から取り込み、第1透光性部材の下面7よりも小さく、かつ、発光素子30の上面31より小さな面積となる第2透光性部材の上面3へと導光することができる構成となる。
【0037】
(光反射性部材供給工程S14)
続いて、光反射性部材供給工程S14は、基板40に設けた発光素子30及び透光性部材10の周囲に光反射性部材20を設ける工程である。光反射性部材供給工程S14では、
図5Eに示すように、発光素子30と透光性部材10と基板40とを覆う光反射性部材20が設けられる。なお、発光装置100においては、1種類又は2種類以上の光反射性部材20を有してもよい。以下は、光反射性部材20を2層で形成する場合の一例である。
(第1の光反射性部材供給工程)
初めに、発光素子30と基板40との間及び発光素子30と側面の接着材15を覆う高さまで、光反射性部材20が供給される。なお、光反射性部材20は、発光素子30と基板40との間に配置される場合は、低線膨張の材料を用いることが好ましい。これにより、発光素子30と基板40との接合部における熱応力の緩和が可能となる。
【0038】
(第2の光反射性部材供給工程)
次に、透光性部材10の側面を覆う光反射性部材20を供給する。光反射性部材20は、第2透光性部材の側面4と、第1透光性部材の上面5と側面6とを被覆する。この際、第2透光性部材の上面3が光反射性部材20から露出するように、光反射性部材20は透光性部材10から離間した基板40上面に滴下することが好ましい。また、光反射性部材20は、先に供給した光反射性部材20の表面を覆うように供給される。
なお、光反射性部材20は、例えば、シリコーン樹脂に酸化チタンが含有されている樹脂をここでは使用している。
【0039】
(個片化工程S15)
個片化工程S15は、各発光装置100に個片化する工程である。個片化工程S15では、
図5Fに示すように、光反射性部材20の形成後に基板40が各発光装置の単位ごとにレーザ照射あるいはブレード等の工具により切断され、発光装置100が形成される。
前記のような各工程により製造された発光装置100は、一つ以上の発光素子30から出る光を、発光素子30の上面31における面積の和よりも大きな第1透光性部材の下面7から入射し、第1透光性部材の下面7よりも小さな第2透光性部材の上面3から外部に高輝度な光として放出することができる。また、第1透光性部材1及び第2透光性部材2を直接接合で接合している場合には、第1透光性部材1と第2透光性部材2との接合が強固になると共に光屈折率の変換が少なく、発光素子30からの熱による劣化を防止することができる。また、透光性部材10をガラス材料で形成しているので、発光装置100としても光照射面が劣化しにくく製品品質に優れている。
また、光反射性部材供給工程S14では、異なる2つの光反射性部材を供給することとして説明したが、もちろん、1つの光反射性部材20を供給することとしてもよい。
【0040】
(変形例)
なお、
図7及び
図8に示すように、発光装置100A、100Bにおいて、複数の発光素子30を備える発光素子群30A,30Bの構成とすることとしてもよい。以下、各構成について説明する。なお、すでに説明した発光装置100の構成及び製造方法については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
発光装置100Aでは、発光素子30を複数配置する発光素子群30Aの構成としてもよい。例えば、
図7で示すように、発光素子群30Aは、同じ大きさの2つの発光素子30が隣り合せに配置され整列した状態とする。発光素子30が隣接して配置された場合には、透光性部材10は、第1透光性部材の下面7を、発光素子30を並列させた合計面積となる発光素子群30Aの領域よりも大きくなるように形成されることになる。なお、発光素子群30Aの面積は、2つの発光素子30の外周を直線で矩形に囲む領域として発光素子30の間の領域も発光素子群30Aの上面面積の一部としている。また、透光性部材10は、第2透光性部材の上面3が、発光素子群30Aの面積よりも小さくなるように形成されている。このような構成の発光装置100Aでは、複数の発光素子30からの光を第1透光性部材の下面7から入射し、第1透光性部材の下面7よりも小さな第2透光性部材の上面3から外部に放出することができるので、より高輝度で遠くまで光を照射することができる。
【0041】
また、
図8に示すように、一例として、発光素子30を6つ整列して配置し発光素子群30Bとしてもよい。透光性部材10は、第1透光性部材の下面7を、6つの発光素子30を並列させた合計面積となる発光素子群30Bの領域よりも大きくなるように形成されることになる。なお、発光素子群30Bの面積は、6つの発光素子30の外周を直線で矩形に囲む領域として各発光素子30の間の領域も発光素子群30Bの上面面積の一部としている。また、透光性部材10は、第2透光性部材の上面3が、発光素子群30Bの面積よりも小さくなるように形成されている。このような構成の発光装置100Bにおいても、複数の発光素子30からの光を第1透光性部材の下面7から入射し、第1透光性部材の下面7よりも小さな第2透光性部材の上面3から外部に放出することができるので、より高輝度で遠くまで光を照射することができる。
【0042】
さらに、発光装置100では、発光素子30を少なくとも1つ以上備えており、前記したように2つや、6つ、あるいは、3つや、4つ、5つ、あるいは、7つ以上であることであっても構わない。
また、発光装置100が複数の発光素子30を備える場合、発光素子群(つまり複数の発光素子30)は、全体として平面視形状が略矩形状となるように配置されることが好ましい。また、第1透光性部材1の下面7と発光素子群の上面とが接着材を介して接合される場合、接着材は隣接する発光素子30の互いに対向する側面に延在して配置されることが好ましい。これにより、発光素子30間における色むら及び輝度むらを抑制することができる。
【0043】
さらに、第2透光性部材2は、略直方体として説明したが、例えば、円柱、楕円柱、角を丸めた多角形の柱状体としてもよい。なお、平面視形状が矩形状で断面視凸形状の透光性部材では、上側(第2透光性部材2)の側面の領域では光と熱により、光反射性部材が劣化しやすい場合がある。そこで、第2透光性部材2の角を丸めることで、光反射性部材の劣化を抑制することができると推測される。そのため、
図9に示すように、第2透光性部材2Aのように、各角2aを面取りした上面3Aとする形状とすることがより好ましい。なお、透光性部材2Aの角2aの面取りした部分の形状は図面では曲線として示しているが、1本の直線あるいは複数の直線で多角形となるように面取りした形状であってもよい。本開示の製造方法では、加工された複数の第2透光性部材2を第1透光性部材と接合するので、予め角が面取りされた第2透光性部材2Aを用いることができ、光反射性部材の劣化し難い形状の透光性部材10の製造が可能となる。
【0044】
また、以上説明した発光装置では、第2透光性部材の下面8と第1透光性部材の上面5とは大きさを異なることとして説明したが、第2透光性部材の下面8と、第1透光性部材の上面5とは同じ大きさとし、第2透光性部材の上面3を第1透光性部材の上面5よりも内側に位置するように構成してもよい。このような構成にすることで、第1透光性部材の上面5から第2透光性部材の下面8へと光が導光されやすくなり、発光装置100の光取り出し効率が向上する。さらに、1つの透光性部材10に複数の発光素子30を接合する場合には、各発光素子30の配置の影響やそれによる配光、輝度ムラ、色ムラの影響を低減させることができ好ましい。さらに、透光性部材10と発光素子30とを接合する接着材15に波長変換部材11、光拡散材等を含有させてもよい。さらに、発光素子30を複数個搭載する場合には、発光素子30のそれぞれに対して透光性部材10を接合してもよい。
【0045】
また、本発明に係る発光装置100において、ツェナーダイオード等の保護素子を基板40に搭載してもよい。これらの保護素子を、光反射性部材20に埋設することにより、発光素子30からの光が保護素子に吸収されたり、保護素子に遮光されたりすることによる光取り出しの低下を防止することができる。
さらに、2つの発光素子30を用いる場合には、2つの発光素子30の間隔は、2つの発光素子30の間に、接着材15のフィレット16が連続して形成されるような間隔であることが好ましい。具体的には、発光装置100が2つ以上の発光素子30を備える場合、隣接する発光素子30間の距離は、発光素子30の厚みの2倍以下であることが好ましい。
また、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法によれば、製造作業中に部品破損が極めて少なく、さらに光取り出し面の周囲からの光の漏れがない。