特許第6982623号(P6982623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許6982623インプリント用下層膜形成用組成物、キット、インプリント用硬化性組成物、積層体、積層体の製造方法、硬化物パターンの製造方法および回路基板の製造方法
<>
  • 特許6982623-インプリント用下層膜形成用組成物、キット、インプリント用硬化性組成物、積層体、積層体の製造方法、硬化物パターンの製造方法および回路基板の製造方法 図000030
  • 特許6982623-インプリント用下層膜形成用組成物、キット、インプリント用硬化性組成物、積層体、積層体の製造方法、硬化物パターンの製造方法および回路基板の製造方法 図000031
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982623
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】インプリント用下層膜形成用組成物、キット、インプリント用硬化性組成物、積層体、積層体の製造方法、硬化物パターンの製造方法および回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20211206BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20211206BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C59/02 Z
   C08F20/10
【請求項の数】14
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2019-545074(P2019-545074)
(86)(22)【出願日】2018年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2018035139
(87)【国際公開番号】WO2019065526
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2020年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-184854(P2017-184854)
(32)【優先日】2017年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】下重 直也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−508680(JP,A)
【文献】 特開2013−093552(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/104669(WO,A1)
【文献】 特開2011−138850(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/002413(WO,A1)
【文献】 特開2016−115921(JP,A)
【文献】 特開2013−077748(JP,A)
【文献】 特開2017−152705(JP,A)
【文献】 特開2014−192178(JP,A)
【文献】 特開2014−024322(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/052473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含む多官能(メタ)アクリレートと溶剤を含み、前記多官能(メタ)アクリレートは、23℃における粘度が11〜600mPa・sであり、分子量が200以上であり、前記多官能(メタ)アクリレートが下記式(1)で表される、インプリント用下層膜形成用組成物。
【化1】
式中、Qは下記式(1−1)または(1−2)で表される芳香環含有基および芳香族複素環含有基の少なくとも1種を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、LおよびLはそれぞれ独立に単結合または、直鎖もしくは分岐のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NR−、およびそれらの組み合わせに係る連結基のいずれかを表し、Rは水素原子またはアルキル基を表し、mは1以上4以下の整数を表す。ただし、Qが式(1−2)で表される基である場合、式(1)のmは1である。
【化2】
は下記式(Q1−1)〜(Q1−4)のいずれかで表される基であり、mは1以上4以下の整数を表し、Qは下記式(Q2−1)および(Q2−2)のいずれかで表される基であり、は単結合または連結基であり、pは1又は2であり、*は結合位置を表す。
〜Yはそれぞれ独立にメチン基または窒素原子を表し、XはNR、酸素原子、または硫黄原子を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表し、n1はm+1の整数であり、n2およびn3は1以上の整数であり、n2+n3はm+1の整数となり、n4はm+1の整数であり、n5およびn6は1以上の整数であり、n5+n6はm+1の整数であり、Lは単結合、メチレン基、エチレン基、2,2−プロパンジイル基、−O−、−S−、−SO−、−CO−、または、−COO−であり、*は結合位置を表す
〜Yはそれぞれ独立にメチン基または窒素原子を表し、XはNR、酸素原子、または硫黄原子を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表し、*は結合位置を表す。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリレートの少なくとも1種が下記(a)〜(d)の少なくとも1つの条件を満たす請求項1に記載のインプリント用下層膜形成用組成物;
(a)5員環および6員環の少なくとも1種を含む;
(b)ヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子および硫黄原子の少なくとも1種を含む複素環を含む;
(c)縮合環を含む;
(d)芳香環および芳香族複素環から選択される環を2つ以上含む。
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリレートの沸点が370℃以上である、請求項1または2に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項4】
前記多官能(メタ)アクリレートの大西パラメータが2.0〜4.5である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物;但し、大西パラメータとは、各化合物を構成する原子についての、(炭素原子、水素原子および酸素原子の数の和)/(炭素原子の数−酸素原子の数)である。
【請求項5】
前記多官能(メタ)アクリレートの含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物と、インプリント用硬化性組成物とを有するキット。
【請求項7】
前記インプリント用硬化性組成物が多官能(メタ)アクリレートを含み、前記インプリント用硬化性組成物中の多官能(メタ)アクリレートが芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含む請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記インプリント用下層膜形成用組成物に用いる多官能(メタ)アクリレートの23℃における粘度と、前記インプリント用硬化性組成物の23℃における粘度の差の絶対値が、500mPa・s以下である請求項6または7に記載のキット。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のキットに含まれるインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のキットを用いて積層体を製造する方法であって、前記インプリント用下層膜形成用組成物から形成された下層膜の表面に、インプリント用硬化性組成物を適用することを含む、積層体の製造方法。
【請求項11】
前記インプリント用硬化性組成物は、インクジェット法により、前記下層膜の表面に適用する、請求項10に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
さらに、前記インプリント用下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用する工程を含み、前記層状に適用したインプリント用下層膜形成用組成物を40〜100℃で、加熱することを含む、請求項10または11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のキットを用いて硬化物パターンを製造する方法であって、
基板上に、インプリント用下層膜形成用組成物を適用して下層膜を形成する下層膜形成工程と、前記下層膜の表面に、インプリント用硬化性組成物を適用する適用工程と、前記インプリント用硬化性組成物と、パターン形状を転写するためのパターンを有するモールドとを接触させるモールド接触工程と、前記インプリント用硬化性組成物に光を照射して硬化物を形成する光照射工程と、前記硬化物と前記モールドとを引き離す離型工程と、を有する硬化物パターンの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造方法により硬化物パターンを得る工程を含む、回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用下層膜形成用組成物、キット、インプリント用硬化性組成物、積層体、積層体の製造方法、硬化物パターンの製造方法および回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートなどと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成形できるため経済的であると共に、有害な廃棄物や排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
インプリント法は、光透過性モールドや光透過性基板を通して光照射して硬化性組成物を光硬化させた後、モールドを剥離することで微細パターンを光硬化物に転写するものである。この方法は、室温でのインプリントが可能になるため、半導体集積回路の作製などの超微細パターンの精密加工分野に応用できる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
【0004】
このようなインプリント法においては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用するものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に利用できる。これらの応用に関するインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0005】
一方、インプリント法の活発化に伴い、基板とインプリント用硬化性組成物との間の密着性が注目されるようになってきた。インプリント法は、基板の表面にインプリント用硬化性組成物を適用し、インプリント用硬化性組成物の表面にモールドを接触させた状態で光照射してインプリント用硬化性組成物を硬化させた後、モールドを剥離する。このモールドを剥離する工程で、硬化物が基板から剥れてモールドに付着してしまう場合がある。これは、基板と硬化物との密着性が、モールドと硬化物との密着性よりも低い領域が存在することが原因と考えられる。これを解決するために、基板と硬化物との密着性を向上させるインプリント用密着組成物を用いたインプリント用密着膜の利用が検討されている(例えば、特許文献1)。また、インプリント用硬化性組成物がインクジェット(IJ)法により適用される場合において、インクジェット液滴の濡れ広がりを良化させる技術が検討されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−028419号公報
【特許文献2】特開2017−55108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、インプリント用硬化性組成物と基板との間にインプリント用下層膜形成用組成物で形成された膜(下層膜)を用いる技術に着目した。これにより、インプリント用硬化性組成物と基板との密着性を高め、モールドの離型性を高めようとするものである。具体的には、図2に示すように、インプリント用下層膜形成用組成物を基板に適用し下層膜21を形成する。その表面にインプリント用硬化性組成物22の液滴を適切な間隔で滴下する。そこにモールドを接触させることで、上記液滴を下層膜21上で広げ、膜状のインプリント用硬化性組成物22とする。その後、インプリント用硬化性組成物(パターン形成層)を硬化して所望のパターンを付したインプリント層を得る。本発明ではこのような態様で用いられるインプリント用下層膜形成用組成物およびこれを利用した技術の改良を目的とした。
具体的に本発明は、形成された膜の厚さの均一性とインプリント用硬化性組成物の濡れ性に優れ、形成される膜が安定であるインプリント用下層膜形成用組成物、キット、インプリント用硬化性組成物、積層体、積層体の製造方法、硬化物パターンの製造方法および回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<17>により、上記課題は解決された。
<1> 芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含む多官能(メタ)アクリレートと溶剤を含み、上記多官能(メタ)アクリレートは、23℃における粘度が11〜600mPa・sであり、分子量が200以上である、インプリント用下層膜形成用組成物。
<2> 上記多官能(メタ)アクリレートの少なくとも1種が下記(a)〜(d)の少なくとも1つの条件を満たす<1>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物;
(a)5員環および6員環の少なくとも1種を含む;
(b)ヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子および硫黄原子の少なくとも1種を含む複素環を含む;
(c)縮合環を含む;
(d)芳香環および芳香族複素環から選択される環を2つ以上含む。
<3> 上記多官能(メタ)アクリレートの沸点が370℃以上である、<1>または<2>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物
<4> 上記多官能(メタ)アクリレートの大西パラメータが2.0〜4.5である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物;但し、大西パラメータとは、各化合物を構成する原子についての、(炭素原子、水素原子および酸素原子の数の和)/(炭素原子の数−酸素原子の数)である。
<5> 上記多官能(メタ)アクリレートが下記式(1)で表される<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物;
【化1】
式中、Q0は芳香環含有基および芳香族複素環含有基の少なくとも1種を表し、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、L1およびL2はそれぞれ独立に単結合または連結基を表し、mは1以上4以下の整数を表す。
<6> 上記多官能(メタ)アクリレートの含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物と、インプリント用硬化性組成物とを有するキット。
<8> 上記インプリント用硬化性組成物が多官能(メタ)アクリレートを含み、上記インプリント用硬化性組成物中の多官能(メタ)アクリレートが芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含む<7>に記載のキット。
<9> 上記インプリント用下層膜形成用組成物に用いる多官能(メタ)アクリレートの23℃における粘度と、上記インプリント用硬化性組成物の23℃における粘度の差の絶対値が、500mPa・s以下である<7>または<8>に記載のキット。
<10> <7>〜<9>のいずれか1つに記載のキットに含まれるインプリント用下層膜形成用組成物。
<11> <7>〜<9>のいずれか1つに記載のキットに用いるインプリント用硬化性組成物。
<12> <7>〜<9>のいずれか1つに記載のキットから形成される積層体であって、上記インプリント用下層膜形成用組成物から形成された下層膜と、上記インプリント用硬化性組成物から形成され、上記下層膜の表面に位置するパターン形成層とを有する、積層体。
<13> <7>〜<9>のいずれか1つに記載のキットを用いて積層体を製造する方法であって、上記インプリント用下層膜形成用組成物から形成された下層膜の表面に、インプリント用硬化性組成物を適用することを含む、積層体の製造方法。
<14> 上記インプリント用硬化性組成物は、インクジェット法により、上記下層膜の表面に適用する、<13>に記載の積層体の製造方法。
<15> さらに、上記インプリント用下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用する工程を含み、上記層状に適用したインプリント用下層膜形成用組成物を40〜100℃で、加熱することを含む、<13>または<14>に記載の積層体の製造方法。
<16> <7>〜<9>のいずれか1つに記載のキットを用いて硬化物パターンを製造する方法であって、
基板上に、インプリント用下層膜形成用組成物を適用して下層膜を形成する下層膜形成工程と、上記下層膜の表面に、インプリント用硬化性組成物を適用する適用工程と、上記インプリント用硬化性組成物と、パターン形状を転写するためのパターンを有するモールドとを接触させるモールド接触工程と、上記インプリント用硬化性組成物に光を照射して硬化物を形成する光照射工程と、上記硬化物と上記モールドとを引き離す離型工程と、を有する硬化物パターンの製造方法。
<17> <16>に記載の製造方法により硬化物パターンを得る工程を含む、回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、形成された膜の厚さの均一性とインプリント用硬化性組成物の濡れ性に優れ、形成される膜が安定であるインプリント用下層膜形成用組成物、キット、インプリント用硬化性組成物、積層体、積層体の製造方法、硬化物パターンの製造方法および回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】硬化物パターンの形成、および、得られた硬化物パターンをエッチングによる基板の加工に用いる場合の製造プロセスの一例を示す。
図2】下層膜の表面にインプリント用硬化性組成物をインクジェット法により塗布した場合の、インプリント用硬化性組成物の濡れ広がりの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表す。
本明細書において、「インプリント」は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズのパターン転写(ナノインプリント)をいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明における温度は、特に述べない限り、23℃とする。
本明細書において、「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線、極端紫外線(EUV)、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルタを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。
本発明における重量平均分子量(Mw)は、特に述べない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したものをいう。
本発明における沸点とは、1気圧(1atm=1013.25hPa)における沸点をいう。
【0012】
<インプリント用下層膜形成用組成物>
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物は、芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含む多官能(メタ)アクリレートと溶剤を含み、上記多官能(メタ)アクリレートは、23℃における粘度が11〜600mPa・sであり、分子量が200以上であることを特徴とする。このような構成とすることにより、形成された膜の厚さの均一性とインプリント用硬化性組成物の濡れ性に優れ、形成される膜が安定であるインプリント用下層膜形成用組成物が得られる。
特に、下層膜が薄くても厚さが均一な膜が形成可能になる。さらに、経時安定性に優れたインプリント用下層膜形成用組成物とすることもできる。
【0013】
<<多官能(メタ)アクリレート>>
本発明でインプリント用下層膜形成用組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレートは芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含み、少なくとも芳香環を含むことがより好ましい。本発明の一実施形態として、多官能(メタ)アクリレートが芳香環を含み、芳香族複素環を含まない態様が例示される。
芳香環は炭素数6〜22の炭化水素芳香環が好ましい(炭素数6〜18がより好ましく、6〜10がさらに好ましい)。芳香環は単環であっても縮合環であってもよく、単環が好ましい。芳香環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、フルオレン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、インデン環、インダン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ペリレン環など(以上の例示を環Cyと称する)が挙げられる。芳香族複素環は炭素数1〜12の芳香族複素環が好ましい(炭素数1〜6がより好ましく、1〜5がさらに好ましい)。芳香族複素環は単環であっても縮合環であってもよく、単環が好ましい。芳香族複素環が含有するヘテロ原子は特に限定されないが酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはそれらの組み合わせであることが好ましい。芳香族複素環の具体例としては、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、イソキノリン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環など(以上の例示を環hCyと称する)が挙げられる。
【0014】
上記多官能(メタ)アクリレートの少なくとも1種は、下記(a)〜(d)の少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい。
(a)5員環および6員環の少なくとも1種を含む;
(b)ヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子および硫黄原子の少なくとも1種を含む複素環を含む;
(c)縮合環を含む;
(d)芳香環および芳香族複素環から選択される環を2つ以上含む。
また、本発明で用いる多官能(メタ)アクリレートは、上記芳香族複素環以外のヘテロ原子を含まない態様が例示される。本発明で用いる多官能(メタ)アクリレートは、炭素原子、酸素原子、水素原子のみから構成される態様が例示される。
【0015】
上記多官能(メタ)アクリレートは、下記式(1)で表されることが好ましい。
【化2】
式中、Qは芳香環含有基および芳香族複素環含有基の少なくとも1種を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、LおよびLはそれぞれ独立に単結合または連結基を表し、mは1以上4以下の整数を表す。mは1〜3が好ましく、1または2がより好ましい。LおよびLが連結基のとき、後記連結基Lの例が挙げられる。LおよびLが置換基を有し得る連結基のとき、後記置換基Tを有していてもよい。式中のQは連結基Lを介してまたは介さずにLまたはLと結合して環を形成していてもよい。例えば、Qがベンゼン環であり、Lがメチレン基のとき、Lがフェニレン基を介してQのベンゼン環と結合して環を形成して、フルオレン構造を形成していてもよい(後記例示化合物B−20)。または、Qがフェニルエチル基であり、Lがメチレン基であり、Qのベンゼン環のオルト位とLのメチレン基とが結合してインダン構造を形成していてもよい(例えば、後述の例示化合物B−12)。
【0016】
上記Qは下記式(1−1)または(1−2)で表される芳香環含有基および芳香族複素環含有基であることが好ましい。ただし、式(1−2)においては、式(1)のmは1である。
【化3】
はm+1価の芳香環含有基または芳香族複素環含有基である。芳香環および芳香族複素環の好ましい例は上記環Cyまたは環hCyと同じである。*は結合位置を表す。Qは連結基Lを介してまたは介さずに式(1)のLもしくはLと結合して環を形成していてもよい。Qは本発明の効果を奏する範囲で1または2以上の置換基Tを有していてもよい。置換基Tは複数あるときは、互いに結合して、式(1)のLもしくはLと結合して、またはQと結合して環を形成していてもよい。複数あるときの置換基Tは互いに同じでも異なっていてもよい。mは式1で定義したものと同義である。
は1価の芳香環含有基または芳香族複素環含有基である。芳香環および芳香族複素環の好ましい例は上記環Cyまたは環hCyと同じである。*は結合位置を表す。pは1または2である。Lは単結合または連結基である。連結基としては後記連結基Lの例が挙げられる。なかでも、Lは単結合、メチレン基、エチレン基、2,2−プロパンジイル基、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−COO−が好ましい。Qは、Lまたは式(1)のLもしくはLと結合して環を形成していてもよい。複数あるときのL−Qは互いに同じでも異なっていてもよい。複数あるときのL−Qは、連結基Lを介してまたは介さずに、互いに結合して環を形成していてもよい。Qは本発明の効果を奏する範囲で1または2以上置換基Tを有していてもよい。置換基Tは複数あるときは、互いに結合して、式中のLと結合して、Q式(1)のLもしくはLと結合して、またはQと結合して環を形成していてもよい。複数あるときの置換基Tは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0017】
は下記式(Q1−1)〜(Q1−4)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化4】
〜Yはそれぞれ独立にメチン基または窒素原子を表す。XはNR、酸素原子、または硫黄原子を表す。Rは下記で定義するものと同義である。n1はm+1の整数である。n2およびn3は1以上の整数である。ただしn2+n3はm+1の整数となる。n4はm+1の整数である。n5およびn6は1以上の整数である。ただしn5+n6はm+1の整数である。Lは単結合または連結基である。連結基は下記連結基Lであることが好ましい。なかでも、Lは単結合、メチレン基、エチレン基、2,2−プロパンジイル基、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−COO−が好ましい。Lが置換基をとりうる連結基のとき、本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。たとえば、Lがアルキレン基のときは、フッ素原子が置換している態様も好ましいものとして挙げられる。*は結合位置を表す。*で表される結合位置は式中の炭素原子から延びていても、Y〜Yがメチン基の場合のメチン基の炭素原子から延びていても、XがNRである場合の窒素原子ないしRの基から延びていてもよい。Lは連結基Lを介してまたは介さずに式中の芳香環または芳香族複素環と結合して環を形成していてもよい。式(Q1−1)〜(Q1−4)中の芳香環または芳香族複素環は、本発明の効果を奏する範囲で、後記置換基Tを有していてもよい。置換基Tは式中の炭素原子のほか、Y〜Yがメチン基の場合のメチン基の炭素原子や、XがNRである場合の窒素原子やRに置換していてもよい。なかでも、このときの置換基Tとしては、アリール基(特にフェニル基)、アラルキル基(特にベンジル基)、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が好ましい。置換基Tは、複数あるときは、互いに結合して、または、上記式(1)のLもしくはLの連結基と結合して、式(Q1−2)もしくは(Q1−4)のLの連結基と結合して、あるいは、式中の芳香環または芳香族複素環と結合して環を形成していてもよい。例えば、Qがベンゼン環で、ヒドロキシル基とプロピル基を有し、両者が結合して、ジヒドロベンゾフラン環を形成していてもよい(例示化合物B−4)。複数あるときの置換基Tは互いに同じでも異なっていてもよい。式(Q1−1)〜(Q1−4)中の芳香環または複素芳香環は式(1)のLもしくはLと結合して環を形成していてもよい。式(Q1−2)および(Q1−4)中の左右の芳香環または複素芳香環は互いに連結基Lを介してまたは介さずに結合して環を形成していてもよい。
【0018】
は下記式(Q2−1)および(Q2−2)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化5】
X,Y〜Yは式(Q1−1)〜(Q1−4)で定義したものと同義の基である。*は結合位置を表す。*で表される結合位置は式中の炭素原子から延びていても、Y〜Yがメチン基の場合のメチン基の炭素原子から延びていても、XがNRである場合の窒素原子ないしRの基から延びていてもよい。式(Q2−1)および(Q2−2)のいずれかで表される基は、本発明の効果を奏する範囲で、後記置換基Tを有していてもよい。置換基Tは式中の炭素原子のほか、Y〜Yがメチン基の場合のメチン基の炭素原子や、XがNRである場合の窒素原子またはRの基に置換していてもよい。なかでも、このときの置換基Tとして、アリール基(特にフェニル基)、アラルキル基(特にベンジル基)、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が好ましい。置換基Tは、複数あるときは、互いに結合して、または、上記式(1)のLもしくはLの連結基と結合して、式(1−2)のLの連結基やLが結合する炭素原子と結合して、あるいは、式中の芳香環または複素芳香環と結合して環を形成していてもよい。複数あるときの置換基Tは互いに同じでも異なっていてもよい。式(Q2−1)および(Q2−2)中の芳香環または複素芳香環は、連結基Lを介してまたは介さずに、式(1−2)のLと結合して、Lが結合する炭素原子と結合して、または式(1)のLもしくはLと結合して環を形成していてもよい。
【0019】
連結基Lは、直鎖または分岐のアルキレン基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい)、アリーレン基(炭素数6〜22が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜10がさらに好ましい)、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NR−、およびそれらの組み合わせに係る連結基が挙げられる。Rは水素原子またはアルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、メチル基が一層好ましい)を表す。アルキレン基は下記置換基Tを有していてもよい。例えば、アルキレン基がフッ素原子を有するフッ化アルキレン基になっていてもよい。連結基Lに含まれる原子数は1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。
【0020】
置換基Tとしては、アルキル基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3〜24が好ましく、3〜12がより好ましく、3〜6がさらに好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜21が好ましく、7〜15がより好ましく、7〜11がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましい)、シクロアルケ二ル基(炭素数3〜24が好ましく、3〜12がより好ましく、3〜6がさらに好ましい)、ヒドロキシル基、アミノ基(炭素数0〜24が好ましく、0〜12がより好ましく、0〜6がさらに好ましい)、チオール基、カルボキシル基、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜10がさらに好ましい)、アシル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜3がさらに好ましい)、アシルオキシ基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜3がさらに好ましい)、アリーロイル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜19がより好ましく、7〜11がさらに好ましい)、アリーロイルオキシ基(炭素数7〜23が好ましく、7〜19がより好ましく、7〜11がさらに好ましい)、カルバモイル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましい)、スルファモイル基(炭素数0〜12が好ましく、0〜6がより好ましく、0〜3がさらに好ましい)、スルホ基、アルキルスルホニル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましい)、アリールスルホニル基(炭素数6〜22が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜10がさらに好ましい)、ヘテロ環基(炭素数1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、2〜5がさらに好ましい、5員環または6員環を含むことが好ましい)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基(=O)、イミノ基(=NR)、アルキリデン基(=C(R)などが挙げられる。Rは、上記と同義である。各置換基に含まれるアルキル部位およびアルケニル部位は直鎖でも分岐でもよく、鎖状でも環状でもよい。上記置換基Tが置換基を取りうる基である場合にはさらに置換基Tを有してもよい。例えば、アルキル基はハロゲン化アルキル基となってもよいし、アミノアルキル基やカルボキシアルキル基になっていてもよい。置換基がカルボキシル基やアミノ基などの塩を形成しうる基の場合、その基が塩を形成していてもよい。
【0021】
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物において、多官能(メタ)アクリレートは上記の通り芳香環または芳香族複素環を有することで、表面張力が高まり、インプリント用硬化性組成物の濡れ性が高まって効果的なモールド加工が達成される。それにより、パターン形成層(インプリント用硬化性組成物層)の特性の良化にもつなげることができる。さらに、インプリント用硬化性組成物にも芳香環または芳香族複素環を有する化合物(特には多官能(メタ)アクリレート)を含有させることによって、下層膜とインプリント用硬化性組成物との界面張力が小さくなり、相溶性に優れ、良好なパターン形成層を形成することができる。
【0022】
<<粘度>>
インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートの粘度は、11mPa・s以上であり、13mPa・s以上であることが好ましく、15mPa・s以上であることがより好ましく、18mPa・s以上であることがさらに好ましく、20mPa・s以上であることが一層好ましい。また、上記粘度は、600mPa・s以下であり、500mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以下であることがより好ましく、300mPa・s以下であることがさらに好ましく、150mPa・s以下であることが一層好ましい。粘度を上記の範囲とすることにより、特に膜の厚さの均一性を好適に制御できる点で好ましい。なお、本明細書において粘度は特に断らない限り後記実施例で記載した測定方法により測定した23℃での値とする。
インプリント用下層膜形成用組成物に用いる多官能(メタ)アクリレートの粘度(η1)は、インプリント用硬化性組成物の粘度(η2)の差の絶対値(Δη)=(|η2−η1|)が、500mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以下であることがより好ましく、300mPa・s以下であることがさらに好ましく、150mPa・s以下であることが一層好ましい。この粘度の差Δηを上記の範囲とすることにより、インプリント用下層膜形成用組成物とインプリント用硬化性組成物の拡散均一性がより向上する傾向にある。
なお、多官能(メタ)アクリレートを複数用いる場合には、組成物中に含まれる比率で各多官能(メタ)アクリレートを混合した液の粘度(η1)とする。
【0023】
<<分子量>>
インプリント用下層膜形成用組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレートの分子量は、200以上であり、300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましい。上限は特にないが、1500以下であることが実際的である。分子量を上記の範囲とすることにより、特に膜の安定性を好適に達成できる点で好ましい。
【0024】
<<沸点>>
インプリント用下層膜形成用組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレートの沸点は、300℃以上であることが好ましく、330℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることがさらに好ましく、370℃以上であることが一層好ましく、400℃以上であることがより一層好ましい。沸点の上限は特に定めるものではないが、例えば、1500℃以下とすることができ、さらには、1000℃以下とすることもでき、特には800℃以下とすることもできる。多官能(メタ)アクリレートの沸点を上記の範囲とすることにより、揮発性を好適な範囲に制御することができ、均一かつ安定な下層膜とすることに資する。なお、多官能(メタ)アクリレートを複数用いる場合には、各多官能(メタ)アクリレートの沸点の中で最も低い値を多官能(メタ)アクリレートの沸点として採用する。
【0025】
<<表面張力>>
インプリント用下層膜形成用組成物中の不揮発性成分における表面張力(γUL)は、30mN/m以上であることが好ましく、33mN/m以上であることがより好ましく、35mN/m以上であることがさらに好ましく、38mN/m以上であることが一層好ましい。表面張力の上限は特に定めるものではないが、例えば、50mN/m以下である。γULの表面張力を上記の範囲とすることにより、インプリント用硬化性組成物との表面張力の差を十分に確保でき、より良好な残膜均一性を達成することができる。上記表面張力は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。なお、本明細書において表面張力は特に断らない限り23℃での値をいう。
【0026】
<<大西パラメータ>>
インプリント用下層膜形成用組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレートの大西パラメータは2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。上記下限値以上とすることにより、エッチング加工耐性がより向上する傾向にある。上限は、5.0以下であることが好ましく、4.8以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、硬化性組成物と混和してもドライエッチング耐性の変動を小さくすることができる。大西パラメータの算定方法は後記実施例に記載の方法による。
【0027】
インプリント用下層膜形成用組成物において多官能(メタ)アクリレートを複数用いる場合には、本発明の効果を奏する範囲で、一部に本発明の規定する、分子量、沸点、表面張力、大西パラメータの範囲外のものが含まれることを妨げるものではない。本発明では、上記分子量、沸点、表面張力および大西パラメータの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくはいずれも満たすことが好ましい。
【0028】
以下に、本発明でインプリント用下層膜形成用組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレートの具体例を示すが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。なお、下表1の化合物の諸元では後記比較例で用いた化合物についても併せて記載している。
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【化9】
【0032】
【表1】
【0033】
インプリント用下層膜形成用組成物中の不揮発性成分の割合は、5.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが一層好ましい。下限値は特にないが0.01質量%以上であることが実際的である。このように微量の不揮発性成分を含有させ、溶剤を主体とする組成物とすることにより、基板に薄く適用することができ、ナノメートルオーダーの薄く均一な膜を形成しやすくなる。
インプリント用下層膜形成用組成物中の不揮発性成分中での多官能(メタ)アクリレートの割合は特に限定されないが、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましく、97質量%以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、100質量%以下であることが実際的である。なお、本明細書において不揮発性成分とは23℃で液体であり、沸点が250℃以下の成分を除いた成分をいう。
多官能(メタ)アクリレートは、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
<<反応性基を有する化合物>>>
インプリント用下層膜形成用組成物には、上記の芳香環および芳香族複素環から選ばれる少なくとも1種を有する多官能(メタ)アクリレート以外の、反応性基を有する化合物を含有していてもよい。反応性基としては、架橋性基が例示され、エチレン性不飽和基(エチレン性不飽和結合を含む基をいう)、エポキシ基等が例示され、エチレン性不飽和基が好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基等が例示され、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基がさらに好ましい。(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基となっていることが好ましい。上記反応性基を有する化合物は、1つの分子中に2種以上の反応性基を含んでいてもよいし、同じ種類の反応性基を2つ以上含んでいてもよい。上記反応性基を有する化合物は、一分子中に反応性基を1〜3つ含む化合物であることが好ましく、2つ含む化合物であることがより好ましい。
また、反応性基を有する化合物は、分子量が200〜1000であることが好ましく、200〜900であることがより好ましい。
インプリント用下層膜形成用組成物中の反応性基を有する化合物(上記の芳香環および芳香族複素環から選ばれる少なくとも1種を有する多官能(メタ)アクリレートを除く)の不揮発性成分中の割合は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましく、1質量%以下であることがさらに一層好ましい。下限値は特にないが0.01質量%以上であることが実際的である。
反応性基を有する化合物は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0035】
<<アルキレングリコール化合物>>
インプリント用下層膜形成用組成物は、アルキレングリコール化合物を含んでいてもよい。アルキレングリコール化合物は、アルキレングリコール構成単位を3〜1000個有していることが好ましく、4〜500個有していることがより好ましく、5〜100個有していることがさらに好ましく、5〜50個有していることが一層好ましい。アルキレングリコール化合物の重量平均分子量(Mw)は150〜10000が好ましく、200〜5000がより好ましく、300〜3000がさらに好ましく、300〜1000が一層好ましい。
アルキレングリコール化合物は、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、これらのモノまたはジアルキルエーテルもしくはアルキルエステル(モノまたはジメチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノまたはジノニルエーテル、モノまたはジデシルエーテル、モノステアリン酸エステル、モノオレイン酸エステル、モノアジピン酸エステル、モノコハク酸エステル)が例示され、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコールまたはその誘導体(アルキルエーテルもしくはアルキルエステル)が好ましい。本明細書で(ポリ)とかっこをつけて表示したときには、単量体でも多量体でもよいことを意味する。
アルキレングリコール化合物の23℃における表面張力は、38mN/m以上であることが好ましく、40mN/m以上であることがより好ましい。表面張力の上限は特に定めるものではないが、例えば48mN/m以下である。このような化合物を配合することにより、下層膜の直上に設けるインプリント用硬化性組成物の濡れ性をより向上させることができる。
アルキレングリコール化合物の沸点は特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば200℃以下である。このような化合物を配合することにより、揮発性がよく薄い下層膜を形成しやすくなる。
【0036】
アルキレングリコール化合物は、含有する場合、インプリント用下層膜形成用組成物の不揮発性成分中の割合が40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが一層好ましい。下限値は特に限定されないが、0.01質量%以上であることが実際的である。
アルキレングリコール化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0037】
<<重合開始剤>>
インプリント用下層膜形成用組成物は、重合開始剤を含まなくてもよいが、これを含んでいてもよい。重合開始剤を含まない場合には、インプリント用硬化性組成物に含有させた重合開始剤が下層膜に拡散し、下層膜内の反応性化合物の重合を促すことができる。拡散量が十分でなくとも硬化性組成物中の開始剤が開始した重合反応の連鎖が下層膜および下層膜内の反応性化合物の重合を促すことができる。一方、下層膜形成用組成物に重合開始剤を含めることで、下層膜内の反応性化合物の重合を促すこともできる。
重合開始剤としては熱重合開始剤や光重合開始剤等が挙げられるが、インプリント用硬化性組成物との架橋反応性を向上させる観点から光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、ラジカル重合開始剤がより好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0038】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016−027357号公報の段落0165〜0182の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
アシルホスフィン化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE−819やIRGACURE−TPO(商品名:いずれもBASF製)を用いることができる。
【0039】
インプリント用下層膜形成用組成物に用いられる重合開始剤の含有量は、配合する場合、不揮発性成分中、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。
重合開始剤は1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0040】
<<その他の不揮発性成分>>
インプリント用下層膜形成用組成物に配合される不揮発性成分としては、上記化合物の他に、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、界面活性剤等を1種または2種以上含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、アミン系、フェノール系、リン系、イオウ系、ラジカル系、フェノチアジン、またはこれらの組み合わせが挙げられ、フェノール系、リン系、イオウ系、ラジカル系、またはこれらの組み合わせが好ましい。
本発明では、インプリント用下層膜形成用組成物の不揮発性成分が上記の芳香環および芳香族複素環から選ばれる少なくとも1種を有する多官能(メタ)アクリレート以外の化合物を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、インプリント用下層膜形成用組成物中の不揮発性成分の0.1質量%以下であることをいう。
また、本発明では、インプリント用下層膜形成用組成物が、チオール基を少なくとも2つ有する化合物を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、インプリント用下層膜形成用組成物中の不揮発性成分の0.1質量%以下であることをいう。このような構成とすることにより、インプリント用下層膜形成用組成物の溶液の経時安定性がより効果的に発揮される傾向にある。
【0041】
<<溶剤>>
インプリント用下層膜形成用組成物は、23℃で液体であって沸点が300℃以下の化合物(溶剤)を99.0質量%以上の割合で含むことが好ましく、99.5質量%以上含むことがより好ましく、99.6質量%以上であってもよい。上限は特に限定されないが、99.99質量%以下であることが実際的である。本発明において、液体とは、23℃における粘度が100000mPa・s以下であることをいう。
溶剤は、インプリント用下層膜形成用組成物に、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
上記溶剤のうち、最も含有量の多い成分の沸点が180℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。沸点が上記の範囲以下の溶剤を採用することにより、下層膜から溶剤を容易に除去できる。本発明では、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる溶剤の内、好ましくは90質量%以上が、より好ましくは93質量%以上が、さらに好ましくは95質量%以上が、一層好ましくは99質量%以上が、上記沸点の条件を満たす溶剤である。
【0042】
上記溶剤は、有機溶剤が好ましい。溶剤は、好ましくは、エステル基、カルボニル基、ヒドロキシル基およびエーテル基からなる群のうちのいずれか1つ以上を有する溶剤である。
【0043】
溶剤の具体例としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが選択される。
【0044】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、および、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが特に好ましい。
【0045】
また、プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルまたはプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
乳酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、または乳酸プロピルが好ましい。
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、または酢酸3−メトキシブチルが好ましい。
アルコキシプロピオン酸エステルとしては、3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、または、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)が好ましい。
鎖状ケトンとしては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカルビノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトンまたはメチルアミルケトンが好ましい。
環状ケトンとしては、メチルシクロヘキサノン、イソホロンまたはシクロヘキサノンが好ましい。
ラクトンとしては、γ−ブチロラクトンが好ましい。
アルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0046】
上記成分の他、炭素数が7以上(7〜14が好ましく、7〜12がより好ましく、7〜10がさらに好ましい)、かつ、ヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
【0047】
炭素数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸2−メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチルなどが挙げられる。
【0048】
また、引火点(以下、fpともいう)が37℃以上であるものを用いることも好ましい。このような成分としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(fp:47℃)、乳酸エチル(fp:53℃)、3−エトキシプロピオン酸エチル(fp:49℃)、メチルアミルケトン(fp:42℃)、シクロヘキサノン(fp:40℃)、酢酸ペンチル(fp:45℃)、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル(fp:45℃)、γ−ブチロラクトン(fp:101℃)またはプロピレンカーボネート(fp:132℃)が好ましい。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、酢酸ペンチルまたはシクロヘキサノンがさらに好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルまたは乳酸エチルが特に好ましい。なお、ここで「引火点」とは、東京化成工業株式会社またはシグマアルドリッチ社の試薬カタログに記載されている値を意味している。
【0049】
より好ましい溶剤としては、水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エトキシエチルプロピオネート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチルおよび4−メチル−2−ペンタノールからなる群から選択される少なくとも1種であり、PGMEAおよびPGMEからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0050】
インプリント用下層膜形成用組成物の収納容器としては従来公知の収納容器を用いることができる。また、収納容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0051】
<インプリント用硬化性組成物>
次に、本発明で用いることができるインプリント用硬化性組成物について説明する。
インプリント用硬化性組成物は、特に定めるものではなく、公知のインプリント用硬化性組成物を用いることができ、少なくとも重合性化合物を含むことが好ましい。
【0052】
<<粘度>>
毛細管力を利用し、モールドパターンへの高速充填を可能にするため、インプリント用硬化性組成物の粘度は低く、表面張力は高く設計したほうが好ましい。具体的には、インプリント用硬化性組成物の23℃における粘度は、20.0mPa・s以下であることが好ましく、15.0mPa・s以下であることがより好ましく、11.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、9.0mPa・s以下であることが一層好ましい。上記粘度の下限値としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、5.0mPa・s以上とすることができる。粘度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。なお、本発明においては、インプリント用硬化性組成物の粘度(η2)とインプリント用下層膜形成用組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートの粘度(η1)とが、その差の絶対値(Δη)において調節されていることが好ましく、その範囲は上記で述べたとおりである。
また、インプリント用硬化性組成物の表面張力と下層膜形成用組成物に含まれる不揮発性成分の表面張力の差が小さい方が好ましく、10mN/m以下であることが好ましく、5mN/m以下であることがより好ましい。
また、インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物が有する重合性基と、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートが有する重合性基とは、その80%以上が同じ重合性基であることが好ましい。同じ重合性基とすることにより、下層膜とインプリント用硬化性組成物の反応性の差が小さくなり好ましい。
【0053】
<<表面張力>>
インプリント用硬化性組成物の23℃における表面張力(γResist)は30mN/m以上であることが好ましく、31mN/m以上であることがより好ましい。表面張力の高いインプリント用硬化性組成物を用いることで毛細管力が上昇し、モールドパターンへのインプリント用硬化性組成物の高速な充填が可能となる。上記表面張力の上限値としては、特に限定されるものではないが、下層膜との関係およびインクジェット適性を付与するという観点では、40mN/m以下であることが好ましく、38mN/m以下であることがより好ましく、36mN/m以下であってもよい。
インプリント用硬化性組成物の23℃における表面張力は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0054】
<<大西パラメータ>>
インプリント用硬化性組成物の大西パラメータは、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましく、3.5以下であることが一層好ましい。上記不揮発性成分の大西パラメータの下限値は、特に定めるものではないが、例えば、2.5以上、さらには、3.0以上であってもよい。大西パラメータは、後述する実施例に記載の方法で算出される。
【0055】
<<含有率等>>
本発明では、インプリント用硬化性組成物における溶剤の含有量は、インプリント用硬化性組成物の5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
インプリント用硬化性組成物は、ポリマー(好ましくは、重量平均分子量が10,000を超える、より好ましくは重量平均分子量が2000を超える、さらに好ましくは重量平均分子量が1000以上のポリマー)を実質的に含有しない態様とすることもできる。ポリマーを実質的に含有しないとは、例えば、ポリマーの含有量がインプリント用硬化性組成物の0.01質量%以下であることをいい、0.005質量%以下が好ましく、全く含有しないことがより好ましい。
【0056】
<<重合性化合物>>
インプリント用硬化性組成物は、重合性化合物を含むことが好ましく、インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物は、単官能重合性化合物であっても、多官能重合性化合物であっても、両者の混合物であってもよい。また、インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも一部は23℃で液体であることが好ましく、インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物の15質量%以上が23℃で液体であることがさらに好ましい。
重合性化合物は、環構造を含むことが好ましく、芳香環構造または芳香族複素環構造を含むことがより好ましい。
【0057】
<<<単官能重合性化合物>>>
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物の分子量は、50以上が好ましく、100以上がより好ましく、150以上がさらに好ましい。分子量は、また、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、300以下がさらに好ましく、270以下が一層好ましい。分子量を上記下限値以上とすることで、揮発性を抑制できる傾向がある。分子量を上記上限値以下とすることで、粘度を低減できる傾向がある。
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物の沸点は、85℃以上であることが好ましく、110℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。沸点を上記下限値以上とすることで、揮発性を抑制することができる。沸点の上限値については、特に定めるものでは無いが、例えば、沸点を350℃以下とすることができる。
【0058】
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物が有する重合性基の種類は特に定めるものでは無いが、エチレン性不飽和基、エポキシ基等が例示され、エチレン性不飽和基が好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が例示され、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基がさらに好ましい。また、(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0059】
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物を構成する原子の種類は特に定めるものでは無いが、炭素原子、酸素原子、水素原子およびハロゲン原子から選択される原子のみで構成されることが好ましく、炭素原子、酸素原子および水素原子から選択される原子のみで構成されることがより好ましい。
【0060】
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物の好ましい第一の実施形態は、炭素数4以上の直鎖または分岐の炭化水素鎖を有する化合物である。
本発明における炭化水素鎖とは、アルキル鎖、アルケニル鎖、アルキニル鎖を表し、アルキル鎖、アルケニル鎖が好ましく、アルキル鎖がより好ましい。
本発明において、アルキル鎖とは、アルキル基およびアルキレン基を表す。同様に、アルケニル鎖とは、アルケニル基およびアルケニレン基を表し、アルキニル鎖とはアルキニル基およびアルキニレン基を表す。これらの中でも、直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基がより好ましく、直鎖または分岐のアルキル基がさらに好ましく、直鎖のアルキル基が一層好ましい。
上記直鎖または分岐の炭化水素鎖(好ましくは、アルキル基)は、炭素数4以上であり、炭素数6以上が好ましく、炭素数8以上がより好ましく、炭素数10以上がさらに好ましく、炭素数12以上が一層好ましい。炭素数の上限値については、特に定めるものではないが、例えば、炭素数25以下とすることができる。
上記直鎖または分岐の炭化水素鎖は、エーテル基(−O−)を含んでいてもよいが、エーテル基を含んでいない方が離型性向上の観点から好ましい。
このような炭化水素鎖を有する単官能重合性化合物を用いることで、比較的少ない添加量で、硬化物(パターン)の弾性率を低減し、離型性が向上する。また、直鎖または分岐のアルキル基を有する単官能重合性化合物を用いると、モールドと硬化物(パターン)の界面エネルギーを低減して、さらに離型性を向上することができる。
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物が有する好ましい炭化水素基として、(1)〜(3)を挙げることができる。
(1)炭素数8以上の直鎖アルキル基
(2)炭素数10以上の分岐アルキル基
(3)炭素数1以上の直鎖または分岐のアルキル基が置換した脂環、芳香環または芳香族複素環
【0061】
(1)炭素数8以上の直鎖アルキル基
炭素数8以上の直鎖アルキル基は、炭素数10以上のものがより好ましく、炭素数11以上がさらに好ましく、炭素数12以上が一層好ましい。また、炭素数20以下が好ましく、炭素数18以下がより好ましく、炭素数16以下がさらに好ましく、炭素数14以下が一層好ましい。
(2)炭素数10以上の分岐アルキル基
上記炭素数10以上の分岐アルキル基は、炭素数10〜20のものが好ましく、炭素数10〜16がより好ましく、炭素数10〜14がさらに好ましく、炭素数10〜12が一層好ましい。
(3)炭素数1以上の直鎖または分岐のアルキル基が置換した脂環、芳香環または芳香族複素環
炭素数1以上の直鎖または分岐のアルキル基は、直鎖のアルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素数は、14以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。
脂環、芳香環または芳香族複素環の環は、単環であっても縮環であってもよいが、単環であることが好ましい。縮環である場合は、環の数は、2つまたは3つが好ましい。環は、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましく、6員環がさらに好ましい。環の具体例としては、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、ボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環が挙げられ、これらの中でもシクロヘキサン環、ボルナン環、トリシクロデカン環、アダマンタン環、ベンゼン環がより好ましく、ベンゼン環がさらに好ましい。
【0062】
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物は、炭素数4以上の直鎖または分岐の炭化水素鎖と重合性基が、直接にまたは連結基を介して結合している化合物が好ましく、上記(1)〜(3)の基のいずれか1つと、重合性基が直接に結合している化合物がより好ましい。連結基としては、−O−、−C(=O)−、−CH−またはこれらの組み合わせが例示される。本発明で用いる単官能重合性化合物としては、(1)炭素数8以上の直鎖アルキル基と、(メタ)アクリロイルオキシ基とが直接結合している、直鎖アルキル(メタ)アクリレートが、特に好ましい。
第一の実施形態の単官能重合性化合物としては、下記第1群および第2群を例示することができる。しかしながら、本発明がこれらに限定されるものでは無いことは言うまでもない。また、第1群の方が第2群よりもより好ましい。
第1群
【化10】
【0063】
第2群
【化11】
【0064】
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物の好ましい第二の実施形態は、環状構造を有する化合物である。環状構造としては、3〜8員環の単環または縮合環が好ましい。上記縮合環を構成する環の数は、2つまたは3つが好ましい。環状構造は、5員環または6員環がより好ましく、6員環がさらに好ましい。また、単環がより好ましい。
重合性化合物一分子中の環状構造の数は、1つであっても、2つ以上であってもよいが、1つまたは2つが好ましく、1つがより好ましい。尚、縮合環の場合は、縮合環を1つの環状構造として考える。
【0065】
第二の実施形態の単官能重合性化合物としては、下記化合物を例示することができる。しかしながら、本発明がこれらに限定されるものでは無いことは言うまでもない。
【化12】
【0066】
本発明では、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上記単官能重合性化合物以外の単官能重合性化合物を用いてもよく、特開2014−170949号公報に記載の重合性化合物のうちの単官能重合性化合物が例示され、これらの内容は本明細書に含まれる。
【0067】
インプリント用硬化性組成物に用いる単官能重合性化合物の全重合性化合物に対する含有量は、含有する場合、6質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、12質量%以上が一層好ましい。また、上記含有量は、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下であってもよい。
本発明では単官能重合性化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0068】
<<<多官能重合性化合物>>>
一方、インプリント用硬化性組成物に用いる多官能重合性化合物は、特に定めるものではないが、脂環、芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含むことが好ましく、芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含むことがより好ましい。脂環、芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含む化合物を、以下の説明において、環含有多官能重合性化合物ということがある。環含有多官能重合性化合物を用いることにより、インプリント用下層膜形成用組成物に芳香環および芳香族複素環から選ばれる少なくとも1種の多官能(メタ)アクリレートを採用したことと相まって、インプリント用硬化性組成物とインプリント用下層膜との間の界面張力が小さくなり、相溶性に優れ、下層膜に対する濡れ性が高まる。また、パターン形成層のエッチング耐性も向上する。
【0069】
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物の分子量は、1,000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下がさらに好ましく、350以下が一層好ましい。分子量の上限値を1,000以下とすることで、粘度を低減できる傾向がある。分子量の下限値については、特に定めるものでは無いが、例えば、200以上とすることができる。
【0070】
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物が有する重合性基の数は、2以上であり、2〜7が好ましく、2〜4がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2が一層好ましい。
【0071】
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物が有する重合性基の種類は特に定めるものでは無いが、エチレン性不飽和基、エポキシ基等が例示され、エチレン性不飽和基が好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が例示され、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基がさらに好ましい。また、(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。1つの分子中に2種以上の重合性基を含んでいてもよいし、同じ種類の重合性基を2つ以上含んでいてもよい。
【0072】
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物を構成する原子の種類は特に定めるものでは無いが、炭素原子、酸素原子、水素原子およびハロゲン原子から選択される原子のみで構成されることが好ましく、炭素原子、酸素原子および水素原子から選択される原子のみで構成されることがより好ましい。
【0073】
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物に含まれる環は、単環であっても縮環であってもよいが、単環であることが好ましい。縮環である場合は、環の数は、2つまたは3つが好ましい。環は、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましく、6員環がさらに好ましい。また、環は、脂環であっても、芳香環または芳香族複素環であってもよいが、芳香環または芳香族複素環であることが好ましく、芳香環であることがさらに好ましい。環の具体例としては、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環が挙げられ、これらの中でもシクロヘキサン環、トリシクロデカン環、アダマンタン環、ベンゼン環がより好ましく、ベンゼン環がさらに好ましい。あるいは、インプリント用下層膜形成用組成物の多官能(メタ)アクリレートについて例示した環Cyおよび環hCyの例が挙げられる。
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物における環の数は、1つであっても、2つ以上であってもよいが、1つまたは2つが好ましく、1つがより好ましい。尚、縮合環の場合は、縮合環を1つとして考える。
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物の構造は、(重合性基)−(単結合または2価の連結基)−(環を有する2価の基)−(単結合または2価の連結基)−(重合性基)で表されることが好ましい。ここで、連結基としては、アルキレン基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がさらに好ましい。
【0074】
インプリント用硬化性組成物に用いる環含有多官能重合性化合物は、下記式(I−1)で表されることが好ましい。
【化13】
Qは、脂環、芳香環および芳香族複素環から選ばれる少なくとも1種を有する2価の基を表す。R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。L11およびL12はそれぞれ独立に単結合または上記連結基Lを表す。QとL11またはL12は連結基Lを介してまたは介さずに結合して環を形成していてもよい。Q、L11およびL12は上記置換基Tを有していてもよい。置換基Tは複数が結合して環を形成してもよく、Qと結合して、またはL11またはL12と結合して環を形成してもよい。置換基Tが複数あるとき互いに同じでも異なっていてもよい。Qにおける脂環、芳香環または芳香族複素環の好ましい範囲は、上述と同様である。あるいは、環Cyおよび環hCyの例が挙げられる。qは1〜4の整数であり、1〜3の整数が好ましく、1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0075】
本発明においてインプリント用硬化性組成物に含まれる多官能重合性化合物は、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートから選ばれることが好ましい。両者が必ずしも同一であることは必須ではないが、インプリント用硬化性組成物に含まれる多官能重合性化合物と、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートの一部または全部が共通する態様が例示される。同一であることが好ましい。同種または同一の多官能(メタ)アクリレートをインプリント用硬化性組成物とインプリント用下層膜形成用組成物に用いることで、インプリント用硬化性組成物層と下層膜が相溶しやすくなり、濡れ性・エッチング加工耐性の均一性が向上する傾向にある。
【0076】
インプリント用硬化性組成物に用いる多官能重合性化合物としては、下記第1群および第2群を例示することができる。しかし、本発明がこれらに限定されるものでは無いことは言うまでもない。第1群の方がより好ましい。あるいは、インプリント用下層膜形成用組成物で例示した多官能(メタ)アクリレートの例が挙げられる。
第1群
【化14】
第2群
【化15】
【0077】
インプリント用硬化性組成物は、上記環含有多官能重合性化合物以外の他の多官能重合性化合物を含んでいてもよい。
インプリント用硬化性組成物に用いる他の多官能重合性化合物としては、特開2014−170949号公報に記載の重合性化合物のうち、環を有さない多官能重合性化合物が例示され、これらの内容は本明細書に含まれる。より具体的には、例えば、下記化合物が例示される。
【化16】
【0078】
多官能重合性化合物は、インプリント用硬化性組成物中の全重合性化合物に対して、30質量%以上含有することが好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が一層好ましく、60質量%以上であってもよく、さらに70質量%以上であってもよい。また、上限値は、95質量%未満であることが好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、85質量%以下とすることもできる。特に、上記環含有多官能重合性化合物の含有量を、上記下限値以上とし、インプリント用下層膜形成用組成物に芳香環および芳香族複素環から選ばれる少なくとも1種を含む多官能(メタ)アクリレートを採用することにより、インプリント用硬化性組成物と下層膜の相溶性に優れ、かつ、エッチング加工性に優れた組成物とすることができる。
インプリント用硬化性組成物は、多官能重合性化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0079】
本発明で用いるインプリント用硬化性組成物は、組成物の85質量%以上が重合性化合物であることが好ましく、90質量%以上が重合性化合物であることがより好ましく、93質量%以上が重合性化合物であることがさらに好ましい。
【0080】
<<他の成分>>
インプリント用硬化性組成物は、重合性化合物以外の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、界面活性剤、増感剤、離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、アミン系、フェノール系、リン系、イオウ系、ラジカル系、フェノチアジン、またはこれらの組み合わせが挙げられ、フェノール系、リン系、イオウ系、ラジカル系、またはこれらの組み合わせが好ましい。
本発明で用いることができるインプリント用硬化性組成物の具体例としては、後述する実施例に記載の組成物、特開2013−036027号公報、特開2014−090133号公報、特開2013−189537号公報に記載の組成物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、インプリント用硬化性組成物の調製、膜(パターン形成層)の形成方法についても、上記公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明で用いるインプリント用硬化性組成物の収納容器としては従来公知の収納容器を用いることができる。また、収納容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0082】
<キット>
本発明においては、上記芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含む多官能(メタ)アクリレートを含むインプリント用下層膜形成用組成物と、上記インプリント用硬化性組成物とを有するキットとすることが好ましい。キットの形態は特に限定されないが、両者を同一の梱包としてもよく、別の梱包としてもよい。両者をともに組み合わせて使用することを仕様書などで特定してもよい。上記インプリント用硬化性組成物は多官能(メタ)アクリレートを含み、このインプリント用硬化性組成物中の多官能(メタ)アクリレートが芳香環および芳香族複素環の少なくとも1種を含むことが好ましい。本発明のキットにおいて、上記インプリント用下層膜形成用組成物に用いる多官能(メタ)アクリレートの粘度(η1)と、上記インプリント用硬化性組成物の粘度(η2)とは、上記で示した範囲が好ましく、その差の絶対値(Δη)が上記の範囲であることが好ましい。
【0083】
<硬化物パターンの製造方法>
本発明の硬化物パターンの製造方法は、本発明のキットを用いて硬化物パターンを製造する方法であって、基板上に、インプリント用下層膜形成用組成物を適用して下層膜を形成する下層膜形成工程と、上記下層膜の表面に、インプリント用硬化性組成物を適用する適用工程と、上記インプリント用硬化性組成物と、パターン形状を転写するためのパターンを有するモールドとを接触させるモールド接触工程と、上記インプリント用硬化性組成物に光を照射して硬化物を形成する光照射工程と、上記硬化物と上記モールドとを引き離す離型工程と、を有する。
以下、硬化物パターンを形成する方法(硬化物パターンの製造方法)について、図1に従って説明する。本発明の構成が図1に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0084】
<<下層膜形成工程>>
下層膜形成工程では、図1(2)に示す様に、基板1上に、下層膜2を形成する。下層膜は、インプリント用下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用して形成することが好ましい。下層膜は、また、基板1の表面に直接に形成してもよいし、基板1の表面に密着膜が設けられていてもよい。密着膜が設けられている場合、密着膜の表面に、下層膜を設けることが好ましい。密着膜は、例えば、特開2014−24322号公報に記載のインプリント用下層膜形成用組成物から形成される膜を密着膜として用いることができる。
【0085】
基板上へのインプリント用下層膜形成用組成物の適用方法としては、特に定めるものではなく、一般によく知られた適用方法を採用できる。具体的には、適用方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法が例示され、スピンコート法が好ましい。
また、基板上にインプリント用下層膜形成用組成物を層状に適用した後、好ましくは、熱によって溶剤を揮発(乾燥)させて、薄膜である下層膜を形成する。本発明では、上述の通り、層状に適用したインプリント用下層膜形成用組成物を30〜120℃(好ましくは、40℃以上、また、100℃以下)で、加熱(ベイク)することが好ましい。加熱時間は、30秒〜5分とすることができる。
【0086】
下層膜2の厚さは、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、4nm以上であることがさらに好ましく、5nm以上であってもよく、7nm以上であってもよい。また、下層膜の厚さは、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。膜厚を上記下限値以上とすることにより、インプリント用硬化性組成物の下層膜上での拡張性(濡れ性)が向上し、インプリント後の均一な残膜形成が可能となる。膜厚を上記上限値以下とすることにより、インプリント後の残膜が薄くなり、膜厚ムラが発生しにくくなり、残膜均一性が向上する傾向にある。
【0087】
基板の材質としては、特に定めるものでは無く、特開2010−109092号公報(対応US出願の公開番号は、US2011/0183127)の段落0103の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明では、シリコン基板、サファイア基板、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)基板、窒化ガリウム基板、アルミニウム基板、アモルファス酸化アルミニウム基板、多結晶酸化アルミニウム基板、ならびに、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlGa、InP、または、ZnOから構成される基板が挙げられる。なお、ガラス基板の具体的な材料例としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。本発明では、シリコン基板が好ましい。
【0088】
<<適用工程>>
適用工程では、例えば、図1(3)に示すように、上記下層膜2の表面に、インプリント用硬化性組成物3を適用する。
インプリント用硬化性組成物の適用方法としては、特に定めるものでは無く、特開2010−109092号公報(対応US出願の公開番号は、US2011/0183127)の段落0102の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。上記インプリント用硬化性組成物は、インクジェット法により、上記下層膜の表面に適用することが好ましい。また、インプリント用硬化性組成物を、多重塗布により塗布してもよい。インクジェット法などにより下層膜の表面に液滴を配置する方法において、液滴の量は1〜20pL程度が好ましく、液滴間隔をあけて下層膜表面に配置することが好ましい。液滴間隔としては、10〜1000μmの間隔が好ましい。液滴間隔は、インクジェット法の場合は、インクジェットのノズルの配置間隔とする。
さらに、下層膜2と、基板上に適用した膜状のインプリント用硬化性組成物3の体積比は、1:1〜500であることが好ましく、1:10〜300であることがより好ましく、1:50〜200であることがさらに好ましい。
すなわち、本発明では、本発明のキットから形成される積層体であって、上記インプリント用下層膜形成用組成物から形成された下層膜と、上記インプリント用硬化性組成物から形成され、上記下層膜の表面に位置するパターン形成層とを有する積層体を開示する。
また、本発明の積層体の製造方法は、本発明のキットを用いて製造する方法であって、上記インプリント用下層膜形成用組成物から形成された下層膜の表面に、インプリント用硬化性組成物を適用することを含む。さらに、本発明の積層体の製造方法は、上記インプリント用下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用する工程を含み、上記層状に適用したインプリント用下層膜形成用組成物を30〜90℃(好ましくは、40℃以上、また、80℃以下)で、加熱(ベイク)することを含むことが好ましい。加熱時間は、30秒〜5分とすることができる。
【0089】
<<モールド接触工程>>
モールド接触工程では、例えば、図1(4)に示すように、上記インプリント用硬化性組成物3とパターン形状を転写するためのパターンを有するモールド4とを接触させる。このような工程を経ることにより、所望の硬化物パターン(インプリントパターン)が得られる。
具体的には、膜状のインプリント用硬化性組成物に所望のパターンを転写するために、膜状のインプリント用硬化性組成物3の表面にモールド4を押接する。
【0090】
モールドは、光透過性のモールドであってもよいし、光非透過性のモールドであってもよい。光透過性のモールドを用いる場合は、モールド側から硬化性組成物3に光を照射することが好ましい。一方、光非透過性のモールドを用いる場合は、基板として、光透過性基板を用い、基板側から光を照射することが好ましい。本発明では、光透過性モールドを用い、モールド側から光を照射することがより好ましい。
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドである。上記モールドが有するパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じて形成できるが、本発明では、モールドパターン製造方法は特に制限されない。また、本発明の硬化物パターン製造方法によって形成したパターンをモールドとして用いることもできる。
本発明において用いられる光透過性モールドを構成する材料は、特に限定されないが、ガラス、石英、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート樹脂などの光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示され、石英が好ましい。
本発明において光透過性の基板を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。
【0091】
上記硬化物パターンの製造方法では、インプリント用硬化性組成物を用いてインプリントリソグラフィを行うに際し、モールド圧力を10気圧以下とするのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部にあたるインプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる一方で、モールド転写の均一性が確保できる範囲から選択することが好ましい。
また、インプリント用硬化性組成物とモールドとの接触を、ヘリウムガスまたは凝縮性ガス、あるいはヘリウムガスと凝縮性ガスの両方を含む雰囲気下で行うことも好ましい。
【0092】
<<光照射工程>>
光照射工程では、上記インプリント用硬化性組成物に光を照射して硬化物を形成する。光照射工程における光照射の照射量は、硬化に必要な最小限の照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、インプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量などを調べて適宜決定される。
照射する光の種類は特に定めるものではないが、紫外光が例示される。
また、本発明に適用されるインプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温とするが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、上記硬化物パターン製造方法中、光照射時における好ましい真空度(絶対圧)は、10-1Paから常圧の範囲である。
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜500mW/cm2の範囲にすることが望ましい。
上記硬化物パターン製造方法においては、光照射により膜状のインプリント用硬化性組成物(パターン形成層)を硬化させた後、必要に応じて、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後にインプリント用硬化性組成物を加熱硬化させるための温度としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0093】
<<離型工程>>
離型工程では、上記硬化物と上記モールドとを引き離す(図1(5))。得られた硬化物パターンは後述する通り各種用途に利用できる。
すなわち、本発明では、上記下層膜の表面に、さらに、インプリント用硬化性組成物から形成される硬化物パターンを有する、積層体が開示される。また、本発明で用いるインプリント用硬化性組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.01μm〜30μm程度である。
さらに、後述するとおり、エッチング等を行うこともできる。
【0094】
<硬化物パターンとその応用>
上述のように上記硬化物パターンの製造方法によって形成された硬化物パターンは、液晶表示装置(LCD)などに用いられる永久膜や、半導体素子製造用のエッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)として使用することができる。
特に、本発明では、本発明の硬化物パターンの製造方法により硬化物パターンを得る工程を含む、回路基板の製造方法を開示する。さらに、本発明の回路基板の製造方法では、上記硬化物パターンの製造方法により得られた硬化物パターンをマスクとして基板にエッチングまたはイオン注入を行う工程と、電子部材を形成する工程と、を有していてもよい。上記回路基板は、半導体素子であることが好ましい。さらに、本発明では、上記回路基板の製造方法により回路基板を得る工程と、上記回路基板と上記回路基板を制御する制御機構とを接続する工程と、を有する電子機器の製造方法を開示する。
また、上記硬化物パターン製造方法によって形成されたパターンを利用して液晶表示装置のガラス基板にグリッドパターンを形成し、反射や吸収が少なく、大画面サイズ(例えば55インチ、60インチ超)の偏光板を安価に製造することが可能である。例えば、特開2015−132825号公報やWO2011/132649号に記載の偏光板が製造できる。なお、1インチは25.4mmである。
本発明で形成された硬化物パターンは、図1(6)(7)に示す通り、エッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)としても有用である。硬化物パターンをエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基板として例えばSiO等の薄膜が形成されたシリコン基板(シリコンウェハ等)等を用い、基板上に上記硬化物パターン製造方法によって、例えば、ナノまたはミクロンオーダーの微細な硬化物パターンを形成する。本発明では特にナノオーダーの微細パターンを形成でき、さらにはサイズが50nm以下、特には30nm以下のパターンも形成できる点で有益である。上記硬化物パターン製造方法で形成する硬化物パターンのサイズの下限値については特に定めるものでは無いが、例えば、1nm以上とすることができる。
また、本発明では、基板上に、本発明の硬化物パターンの製造方法により硬化物パターンを得る工程と、得られた上記硬化物パターンを用いて上記基板にエッチングを行う工程と、を有する、インプリント用モールドの製造方法も開示する。
ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基板上に所望の硬化物パターンを形成することができる。硬化物パターンは、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。すなわち、上記硬化物パターン製造方法によって形成されたパターンは、リソグラフィ用マスクとして好ましく用いられる。
【0095】
本発明で形成されたパターンは、具体的には、磁気ディスク等の記録媒体、固体撮像素子等の受光素子、LED(light emitting diode)や有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)等の発光素子、液晶表示装置(LCD)等の光デバイス、回折格子、レリーフホログラム、光導波路、光学フィルタ、マイクロレンズアレイ等の光学部品、薄膜トランジスタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、反射防止膜、偏光板、偏光素子、光学フィルム、柱材等のフラットパネルディスプレイ用部材、ナノバイオデバイス、免疫分析チップ、デオキシリボ核酸(DNA)分離チップ、マイクロリアクター、フォトニック液晶、ブロックコポリマーの自己組織化を用いた微細パターン形成(directed self−assembly、DSA)のためのガイドパターン等の作製に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0097】
<インプリント用下層膜形成用組成物の調製>
下記表2〜4に示すように各化合物を配合し(ただし、表の最下段のインプリント用硬化性組成物は除く)、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタと孔径0.003μmのPTFEフィルタにて二段ろ過を実施し、インプリント用下層膜形成用組成物(実施例・比較例)を調製した。なお、B−1〜B−35の化合物は上記の例示化合物である。
【0098】
<インプリント用硬化性組成物の調製(V−1)〜(V−5)>
下記表6に示すように、各化合物を配合し、さらに重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル(東京化成工業株式会社製)を重合性化合物の合計量に対して200質量ppm(0.02質量%)となるように加えて調製した。これを、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタでろ過して、次いで、孔径0.003μmのPTFEフィルタでろ過して、インプリント用硬化性組成物(V−1)〜(V−5)を調製した。
【0099】
<表面張力の測定>
表面張力は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENSIOMETER CBVP−A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で、表1に記載の化合物について測定した。単位は、mN/mで示した。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定した。合計6回の算術平均値を評価値として採用した。
【0100】
<粘度の測定>
粘度は、東機産業(株)製のE型回転粘度計RE85L、標準コーン・ロータ(1°34’×R24)を用い、サンプルカップを23℃に温度調節して、表1に記載の化合物について測定した。単位は、mPa・sで示した。測定に関するその他の詳細はJISZ8803:2011に準拠した。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定した。合計6回の算術平均値を評価値として採用した。
【0101】
<大西パラメータ>
構成成分の炭素原子、水素原子および酸素原子の数を下記式に代入して求めた。複数の化合物が含まれる場合には、各成分の質量比から計算される、組成物の単位質量当たりの炭素原子数、水素原子数、酸素原子数から大西パラメータを算出した。
大西パラメータ=(炭素原子、水素原子および酸素原子の数の和)/(炭素原子の数−酸素原子の数)
【0102】
<下層膜の作製>
<<実施例1〜20、実施例22〜37、比較例1、比較例2>>
シリコンウェハ上に、特開2014−24322号公報の実施例6に示す密着層形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着膜を形成した。次いで、密着膜の表面に、実施例・比較例に示すインプリント用下層膜形成用組成物をスピンコートし、60℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、表5に示す厚さを有する下層膜を形成した。
<<実施例21>>
シリコンウェハ上に、実施例21に示すインプリント用下層膜形成用組成物をスピンコートし、60℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、溶剤を乾燥させて、表5に示す厚さを有する下層膜を形成した。
【0103】
<膜厚均一性の評価>
上記で得られた下層膜表面をエリプソメータ(照射スポット径:30 μm×90 μm)を用いて膜厚を測定した。同一ウェハ内で30点測定し、下層膜表面の膜厚均一性(3σ)を算出し、下記の基準で評価した。
A:3σ≦1.5
B:1.5<3σ≦3.0
C:3.0<3σ
【0104】
<IJ液滴の濡れ性の評価>
上記と同様にして得られた下層膜の表面に、表6に示すインプリント用硬化性組成物V−1〜V−4のいずれかであって、23℃に温度調整したインプリント用硬化性組成物を、富士フイルムダイマティックス社製インクジェットプリンターDMP−2831を用いて、ノズルあたり6pLの液滴量で吐出して、下層膜の表面に液滴が約880μm間隔の正方配列となるように塗布した。塗布後、3秒後の液滴形状を撮影し(撮影した写真のサイズは1mm×1mmである)、インクジェット(IJ)の液滴の平均直径を測定し、下記の基準で評価した。
A:IJ液滴の平均直径>400μm
B:250μm<IJ液滴の平均直径≦400μm
C:200μm<IJ液滴の平均直径≦250μm
D:IJ液滴の平均直径≦200μm
【0105】
<下層膜の膜厚安定性(経時安定性)>
上記と同様にして得られた作製直後の下層膜の膜厚(T1)を測定した。さらに下層膜を形成したウェハを室温にて48時間放置し、再度、膜厚(T2)を測定し、下記の基準で評価した。下層膜形成直後と48時間後の膜厚差(ΔFT=│T1−T2│)を確認した。
下層膜の膜厚はエリプソメータおよび原子間力顕微鏡により測定した。
A:ΔFT≦0.5nm
B:0.5nm<ΔFT≦1.0nm
C:測定不可(48時間後に薄膜を形成していない)
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
*1:23℃における表面張力は44mN/mである
【0111】
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0112】
比較用多官能(メタ)アクリレート
【化17】
【0113】
C−1:重合開始剤
【化18】
【0114】
上記表6における沸点は1013.25hPaでの値である。表2〜4、6における各成分の量は、質量比である。表6における構造式※2は、混合物であり、m+n+lは平均10である。
【0115】
上記の結果から明らかなとおり、本発明に係る特定の多官能(メタ)アクリレートを含むインプリント用下層膜形成用組成物を用いることで、膜厚の均一性に優れ、高い濡れ性を示し、良好な膜の経時安定性を示すことが分かる(実施例)。これに対し、粘度が低すぎる多官能(メタ)アクリレートを用いたインプリント用下層膜形成用組成物では、膜厚の均一性および膜の経時安定性において劣ることが分かる(比較例1)。また、23℃で固体の多官能(メタ)アクリレートを用いたインプリント用下層膜形成用組成物では、濡れ性において劣ることが分かる(比較例2)。
【符号の説明】
【0116】
1 基板
2 下層膜
3 インプリント用硬化性組成物
4 モールド
21 下層膜
22 インプリント用硬化性組成物
図1
図2