特許第6982636号(P6982636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6982636硬化性組成物、近赤外線吸収剤、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6982636
(24)【登録日】2021年11月24日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】硬化性組成物、近赤外線吸収剤、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20211206BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20211206BHJP
   C09B 23/00 20060101ALI20211206BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20211206BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20211206BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G02B5/22
   C08L101/00
   C09B23/00
   C09B67/20 F
   H01L31/02 D
   H01L27/146 D
【請求項の数】26
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2019-568960(P2019-568960)
(86)(22)【出願日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2019000544
(87)【国際公開番号】WO2019150908
(87)【国際公開日】20190808
【審査請求日】2020年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-16322(P2018-16322)
(32)【優先日】2018年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/088063(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/030628(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/170339(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/114363(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/043166(WO,A1)
【文献】 特開2014−052431(JP,A)
【文献】 特開2008−298820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
C08L 101/00
C09B 23/00
C09B 67/20
H01L 31/0232
H01L 27/146
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(Cy1)で表される近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化1】

式(Cy1)中、Yは、アニオンを表す;
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが式(1)で表される基を表す;
Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい;
cy1は0〜2の整数を表し、ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい;
AcyおよびAcyは、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す;
【化2】

(1)中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【請求項2】
下記式(Cy1)で表される近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化3】

式(Cy1)中、Yは、アニオンを表す;
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが式(10)で表される基を表す;
Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい;
cy1は0〜2の整数を表し、ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい;
AcyおよびAcyは、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す;
【化4】

(10)中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【請求項3】
下記式(Cr1)で表される近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化5】

式(Cr1)中、AcおよびAcは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(Ac−1)で表される基を表し、AcおよびAcの少なくとも一つが式(1)で表される基を置換基として有する;
【化6】

式(Ac−1)中、*は結合手を表し、
Rc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Acは複素環基を表し、
c1は、0以上の整数を表し、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
c1が2以上の場合、複数のRcおよびRcはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化7】

(1)中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【請求項4】
下記式(Cr1)で表される近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化8】

式(Cr1)中、AcおよびAcは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(Ac−1)で表される基を表し、AcおよびAcの少なくとも一つが式(10)で表される基を置換基として有する;
【化9】

式(Ac−1)中、*は結合手を表し、
Rc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Acは複素環基を表し、
c1は、0以上の整数を表し、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
c1が2以上の場合、複数のRcおよびRcはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化10】

(10)中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【請求項5】
下記式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化11】

式中、は酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【請求項6】
下記式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化12】

式中、11は酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【請求項7】
下記式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化13】

式中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.97以上の1価の置換基を表す。
【請求項8】
前記式(1)のは3級アルキル基である、請求項1、3、5または7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記近赤外線吸収色素は、極大吸収波長を650〜1200nmの範囲に有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記近赤外線吸収色素は、ポリメチン化合物である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記近赤外線吸収色素は、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、および、クロコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記近赤外線吸収色素が、下記式(SQ1)で表される化合物である、請求項5または7に記載の硬化性組成物;
【化14】

式中、AsおよびAsは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(As−1)で表される基を表し、AsおよびAsの少なくとも一つが前記式(1)で表される基を置換基として有する;
【化15】

式中、*は結合手を表し、
Rs〜Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Asは複素環基を表し、
s1は、0以上の整数を表し、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
s1が2以上の場合、複数のRsおよびRsはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【請求項13】
前記近赤外線吸収色素が、下記式(Cy1)で表される化合物である、請求項5または7に記載の硬化性組成物;
【化16】

式中、Yは、アニオンを表す;
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが前記式(1)で表される基を表す;
Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい;
cy1は0〜2の整数を表し、ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい;
AcyおよびAcyは、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す。
【請求項14】
前記近赤外線吸収色素が、下記式(Cr1)で表される化合物である、請求項5または7に記載の硬化性組成物;
【化17】

式中、AcおよびAcは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(Ac−1)で表される基を表し、AcおよびAcの少なくとも一つが前記式(1)で表される基を置換基として有する;
【化18】

式中、*は結合手を表し、
Rc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Acは複素環基を表し、
c1は、0以上の整数を表し、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
c1が2以上の場合、複数のRcおよびRcはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【請求項15】
下記式(Cy1)で表される近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化19】

式(Cy1)中、Yは、アニオンを表す;
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが式(1)で表される基を表す;
Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい;
cy1は0〜2の整数を表し、ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい;
AcyおよびAcyは、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す;
【化20】

(1)中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【請求項16】
下記式(Cy1)で表される近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化21】

式(Cy1)中、Yは、アニオンを表す;
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが式(10)で表される基を表す;
Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい;
cy1は0〜2の整数を表し、ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい;
AcyおよびAcyは、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す;
【化22】

(10)中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【請求項17】
下記式(Cr1)で表される近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化23】

式(Cr1)中、AcおよびAcは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(Ac−1)で表される基を表し、AcおよびAcの少なくとも一つが式(1)で表される基を置換基として有する;
【化24】

式(Ac−1)中、*は結合手を表し、
Rc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Acは複素環基を表し、
c1は、0以上の整数を表し、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
c1が2以上の場合、複数のRcおよびRcはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化25】

(1)中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【請求項18】
下記式(Cr1)で表される近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化26】

式(Cr1)中、AcおよびAcは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(Ac−1)で表される基を表し、AcおよびAcの少なくとも一つが式(10)で表される基を置換基として有する;
【化27】

式(Ac−1)中、*は結合手を表し、
Rc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Acは複素環基を表し、
c1は、0以上の整数を表し、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
c1が2以上の場合、複数のRcおよびRcはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい;
【化28】

(10)中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【請求項19】
下記式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化29】

式中、は酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【請求項20】
下記式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化30】

式中、11は酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【請求項21】
下記式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化31】

式中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.97以上の1価の置換基を表す。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の硬化性組成物から得られる膜。
【請求項23】
請求項22に記載の膜を有する、近赤外線カットフィルタ。
【請求項24】
請求項22に記載の膜を有する、固体撮像素子。
【請求項25】
請求項22に記載の膜を有する、画像表示装置。
【請求項26】
請求項22に記載の膜を有する、赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収色素を含む硬化性組成物に関する。また、本発明は、近赤外線吸収剤、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、それには近赤外線カットフィルタを用いることが多い。
【0003】
近赤外線カットフィルタに用いられる近赤外線吸収色素として、スクアリリウム化合物などが知られている。例えば、特許文献1には、特定のスクアリリウム化合物を含む硬化性組成物を用いて近赤外線カットフィルタなどを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2014/088063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、特許文献1に記載されたスクアリリウム化合物を含む硬化性組成物を用いて得られる膜は、耐光性および耐湿性が不十分であり、さらなる改善の余地があることが分かった。
【0006】
よって、本発明の目的は、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成できる硬化性組成物を提供することにある。また、近赤外線吸収剤、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、後述する所定の基を有する近赤外線吸収色素を含む組成物を用いることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下を提供する。
<1> 下記式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化1】
式中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
<2> 上記Gは3級アルキル基である、<1>に記載の硬化性組成物。
<3> 下記式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物;
【化2】
式中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
<4> 近赤外線吸収色素は、極大吸収波長を650〜1200nmの範囲に有する、<1>〜<3>のいずれかに記載の硬化性組成物。
<5> 近赤外線吸収色素は、ポリメチン化合物である、<1>〜<4>のいずれかに記載の硬化性組成物。
<6> 近赤外線吸収色素は、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、および、クロコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種である、<1>〜<5>のいずれかに記載の硬化性組成物。
<7> 近赤外線吸収色素が、下記式(SQ1)で表される化合物である、<1>に記載の硬化性組成物;
【化3】
式中、AsおよびAsは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(As−1)で表される基を表し、AsおよびAsの少なくとも一つが式(1)で表される基を置換基として有する;
【化4】
式中、*は結合手を表し、
Rs〜Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Asは複素環基を表し、
s1は、0以上の整数を表し、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
s1が2以上の場合、複数のRsおよびRsはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
<8> 近赤外線吸収色素が、下記式(Cy1)で表される化合物である、<1>に記載の硬化性組成物;
【化5】
式中、Yは、アニオンを表す;
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが上記式(1)で表される基を表す;
Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい;
cy1は0〜2の整数を表し、ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい;
AcyおよびAcyは、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す。
<9> 近赤外線吸収色素が、下記式(Cr1)で表される化合物である、<1>に記載の硬化性組成物;
【化6】
式中、AcおよびAcは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(Ac−1)で表される基を表し、AcおよびAcの少なくとも一つが式(1)で表される基を置換基として有する;
【化7】
式中、*は結合手を表し、
Rc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Acは複素環基を表し、
c1は、0以上の整数を表し、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
c1が2以上の場合、複数のRcおよびRcはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
<10> 下記式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化8】
式中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;
は立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
<11> 下記式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収剤;
【化9】
式中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;
12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
<12> <1>〜<9>のいずれかに記載の硬化性組成物から得られる膜。
<13> <12>に記載の膜を有する、近赤外線カットフィルタ。
<14> <12>に記載の膜を有する、固体撮像素子。
<15> <12>に記載の膜を有する、画像表示装置。
<16> <12>に記載の膜を有する、赤外線センサ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成できる硬化性組成物を提供することができる。また、近赤外線吸収剤、膜、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TOSOH TSKgel Super HZM−HとTOSOH TSKgel Super HZ4000とTOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラムを用い、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いることによって求めることができる。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、近赤外線とは、波長700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、後述する式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素または後述する式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素と、硬化性化合物とを含むことを特徴とする。以下、式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素を近赤外線吸収色素(1)ともいう。また、式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素を近赤外線吸収色素(10)ともいう。
【0012】
本発明の硬化性組成物を用いることにより、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成することができる。このような効果が得られるメカニズムとしては以下によるものであると推測される。
【0013】
近赤外線吸収色素(1)は式(1)で表される基を有している。この基は、アミド結合(GがNRG1の場合)あるいはエステル結合(Gが酸素原子の場合)を有しているので、ドナー性が向上し、極大吸収波長がより長波長側にシフトしてより長波長側に吸収を持たせることができる。このため、近赤外線吸収色素(1)は、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れた分光特性を有している。そして、式(1)のGは、立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基であることにより、式(1)で表される基はアミド結合あるいはエステル結合近傍の立体障害が高いため、近赤外線吸収色素(1)に光が照射されても、近赤外線吸収色素(1)の光励起状態の運動を抑制し、近赤外線吸収色素(1)の光開裂を抑制できたと推測され、その結果優れた耐光性が得られたと推測される。また、式(1)で表される基はアミド結合あるいはエステル結合近傍の立体障害が高いため、式(1)で表される基が加水分解されにくくなり、その結果優れた耐湿性が得られたと推測される。また、製膜時に近赤外線吸収色素同士が凝集しすぎると得られる膜の可視透明性が低下する傾向にあるが、近赤外線吸収色素(1)は、立体障害の高い基である式(1)で表される基を有しているので、製膜時における近赤外線吸収色素(1)同士の凝集を抑制でき、その結果、より優れた可視透明性を有する膜を形成することもできる。
【0014】
また、近赤外線吸収色素(10)についても近赤外線吸収色素(1)と同様のメカニズムにより、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成することができると推測される。そして、式(10)のG12は炭素数6以上の3級アルキル基であるため、アミド結合あるいはエステル結合近傍の立体障害が高く、近赤外線吸収色素(10)に光が照射されても、近赤外線吸収色素(10)の光励起状態の運動を抑制して近赤外線吸収色素(10)の光開裂を抑制できたと推測され、その結果優れた耐光性が得られたと推測される。また、式(10)で表される基はアミド結合あるいはエステル結合近傍の立体障害が高いため、式(10)で表される基が加水分解されにくくなり、その結果優れた耐湿性が得られたと推測される。また、製膜時に近赤外線吸収色素同士が凝集しすぎると得られる膜の可視透明性が低下する傾向にあるが、近赤外線吸収色素(10)は、立体障害の高い基である式(10)で表される基を有しているので、製膜時における近赤外線吸収色素(10)同士の凝集を抑制でき、その結果、より優れた可視透明性を有する膜を形成することもできる。
【0015】
以下、本発明の硬化性組成物の各成分について説明する。
【0016】
<<近赤外線吸収色素A>>
硬化性組成物は、式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素(近赤外線吸収色素(1))、または、式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素(近赤外線吸収色素(10))を含む。以下、近赤外線吸収色素(1)と近赤外線吸収色素(10)とをあわせて近赤外線吸収色素Aともいう。
【0017】
【化10】
式(1)中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;Gは立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【0018】
【化11】
式中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;G12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【0019】
式(1)において、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す。RG1が表す1価の置換基としては、炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が更に好ましい。アリール基の炭素数は6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜10が更に好ましい。式(1)において、GはNRG1であることが好ましい。また、RG1は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0020】
式(1)において、Gは立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。Gが表わす1価の置換基の−Es’値としては、3.3以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、4.5以上であることが更に好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。本明細書において、−Es’値とは、置換基の立体的嵩高さを表すパラメータであり、置換基の−Es’値が大きいほどその置換基は嵩高い置換基であるといえる。置換基の−Es’値の具体例については、文献(J.A.Macphee,et al,Tetrahedron,Vol.34,pp3553〜3562、藤田稔夫編、化学増刊107、構造活性相関とドラッグデザイン、1986年2月20日発行(化学同人))に示されている。
【0021】
が表わす1価の置換基としては、−Es’値が2.4以上の基であれば特に限定はないが、炭化水素基が挙げられ、アルキル基およびアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。アルキル基およびアリール基は水素原子の一部が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基などで置換されていてもよい。アルキル基は、2級アルキル基または3級アルキル基であることが好ましく、より優れた耐光性が得られやすいという理由から3級アルキル基であることがより好ましい。詳細な理由は不明であるが、3級アルキル基はドナー性が高いため、近赤外線吸収色素の光励起状態の運動をより効果的に抑制できたためであると推測される。また、3級アルキル基はドナー性が高いため、近赤外線吸収色素の極大吸収波長をより長波長側にシフトさせることもでき、より優れた近赤外線遮蔽性が得られやすい。
アルキル基の炭素数は6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。上限は25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。Gが表わす1価の置換基は、炭素数6以上の2級アルキル基または3級アルキル基であることが好ましく、炭素数6以上の3級アルキル基であることがより好ましい。
【0022】
以下に、−Es’値が2.4以上の基の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【化12】
【0023】
式(10)において、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す。RG11が表す1価の置換基としては、炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が更に好ましい。アリール基の炭素数は6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜10が更に好ましい。式(10)において、G11はNRG11であることが好ましい。また、RG11は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0024】
式(10)において、G12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。3級アルキル基の炭素数は、7以上であることがより好ましい。上限は25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。G12の−Es’値は、2.4以上であることが好ましく、3.3以上であることがより好ましく、4.0以上であることが更に好ましく、4.5以上であることがより一層好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。
【0025】
12の好ましい具体例としては、上述したGの具体例として挙げた基のうち3級アルキル基であるものが挙げられる。
【0026】
近赤外線吸収色素Aは、極大吸収波長を650〜1200nmの範囲に有することが好ましく、700〜1200nmの範囲に有することがより好ましく、700〜1000nmの範囲に有することが更に好ましい。近赤外線吸収色素Aが極大吸収波長を上記範囲に有することで、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れた膜を製造しやすい。近赤外線吸収色素Aは顔料であってもよく、染料であってもよい。本発明の効果がより顕著に得られやすく、より優れた可視透明性を有する膜を形成し易いという理由から近赤外線吸収色素Aは染料であることが好ましい。
【0027】
近赤外線吸収色素Aは、上述した式(1)で表される基または式(10)で表される基を有する化合物であれば特に限定はない。ポリメチン化合物、ピロロピロール化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からポリメチン化合物であることが好ましく、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物であることがより好ましく、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物であることが更に好ましい。
【0028】
近赤外線吸収色素Aは、式(1)で表される基または式(10)で表される基を1分子中に1個以上有し、2個以上有することが好ましく、2〜10個有することがより好ましく、2〜6個有することが更に好ましく、2〜4個有することが特に好ましい。また、近赤外線吸収色素Aが、シアニン化合物の場合、式(1)で表される基または式(10)で表される基を1分子中に1〜10個有することが好ましく、1〜6個有することがより好ましく、1〜4個有することが更に好ましい。近赤外線吸収色素Aが、スクアリリウム化合物の場合、式(1)で表される基または式(10)で表される基を1分子中に1〜10個有することが好ましく、2〜10個有することがより好ましく、2〜4個有することが更に好ましい。近赤外線吸収色素Aが、クロコニウム化合物の場合、式(1)で表される基または式(10)で表される基を1分子中に1〜10個有することが好ましく、2〜10個有することがより好ましく、2〜4個有することが更に好ましい。
【0029】
(スクアリリウム化合物)
近赤外線吸収色素Aとしてのスクアリリウム化合物は、下記式(SQ1)で表される化合物であることが好ましい。
【化13】
式中、AsおよびAsは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(As−1)で表される基を表し、AsおよびAsの少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を置換基として有する;
【化14】
式中、*は結合手を表し、
Rs〜Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Asは複素環基を表し、
s1は、0以上の整数を表し、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、
RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、
s1が2以上の場合、複数のRsおよびRsはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
AsおよびAsが表わすアリール基の炭素数は、6〜48が好ましく、6〜22がより好ましく、6〜12が特に好ましい。
【0031】
As、AsおよびAsが表わす複素環基は、5員環または6員環の複素環基が好ましい。また、複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2〜8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2〜4の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2または3の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2の縮合環の複素環基が特に好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示され、窒素原子、硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0032】
式(As−1)におけるRs〜Rsは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表す。Rs〜Rsが表わすアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。Rs〜Rsは水素原子であることが好ましい。
【0033】
式(As−1)におけるns1は、0以上の整数を表す。ns1は0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0が更に好ましい。
【0034】
式(As−1)において、RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよく、RsとAsは、互いに結合して環を形成してもよく、RsとRsは、互いに結合して環を形成してもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。
【0035】
式(SQ1)において、AsおよびAsが表わす基は置換基を有することが好ましい。置換基としては後述する置換基T、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。式(SQ1)で表される化合物は、AsおよびAsの少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を置換基として有することが好ましい。
【0036】
式(SQ1)において、AsおよびAsがそれぞれ独立してアリール基または複素環基であるか、あるいは、AsおよびAsがそれぞれ独立して式(As−1)で表される基であることが好ましい。
【0037】
(置換基T)
置換基Tとしては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、−ORt、−CORt、−COORt、−OCORt、−NRtRt、−NHCORt、−CONRtRt、−NHCONRtRt、−NHCOORt、−SRt、−SORt、−SOORt、−NHSORtまたは−SONRtRtが挙げられる。RtおよびRtは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。RtとRtが結合して環を形成してもよい。なお、−COORtのRtが水素の場合は、水素原子が解離してもよく、塩の状態であってもよい。また、−SOORtのRtが水素原子の場合は、水素原子が解離してもよく、塩の状態であってもよい。
【0038】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルキニル基の炭素数は、2〜40が好ましく、2〜30がより好ましく、2〜25が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が更に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環のヘテロアリール基または縮合数が2〜8の縮合環のヘテロアリール基が好ましく、単環のヘテロアリール基または縮合数が2〜4の縮合環のヘテロアリール基がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12がより好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられる。
【0039】
なお、式(SQ1)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化15】
【0040】
式(SQ1)で表される化合物は、下記式(SQ2)で表される化合物または、(SQ3)で表される化合物であることが好ましい。
【0041】
【化16】
Rs11およびRs12は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Rs11およびRs12の少なくとも一方は、式(1)で表される基または式(10)で表される基を表す;
Rs13およびRs14はそれぞれ独立に置換基を表す;
s11およびns12はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す;
s11が2以上の場合、2個のRs13同士が結合して環を形成していてもよい;
s12が2以上の場合、2個のRs14同士が結合して環を形成していてもよい;
Rs21〜Rs24は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す;
Rs21とRs22、Rs23とRs24、Rs21とRs13、Rs22とRs13、Rs23とRs14、Rs24とRs14、Rs21と2個のRs13同士が結合して形成される環、Rs23と2個のRs14同士が結合して形成される環は、互いに結合して環を形成してもよい;
【0042】
式(SQ2)中、Rs11およびRs12が表わす置換基としては、上述した置換基T、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。式(SQ2)で表される化合物は、Rs11およびRs12の少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を表し、Rs11およびRs12が、式(1)で表される基または式(10)で表される基であることが好ましい。
【0043】
式(SQ2)中、Rs13およびRs14が表わす置換基としては、上述した置換基Tが挙げられる。
【0044】
式(SQ2)中、Rs21〜Rs24はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が更に好ましい。ヘテロアリール基は、単環のヘテロアリール基または縮合数が2〜8の縮合環のヘテロアリール基が好ましく、単環のヘテロアリール基または縮合数が2〜4の縮合環のヘテロアリール基がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12がより好ましい。アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられる。
【0045】
式(SQ2)中、ns11およびns12はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜2の整数を表すことが好ましい。
【0046】
式(SQ2)において、ns11が2以上の場合、2個のRs13同士が結合して環を形成していてもよく、ns12が2以上の場合、2個のRs14同士が結合して環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0047】
式(SQ2)において、Rs21とRs22、Rs23とRs24、Rs21とRs13、Rs22とRs13、Rs23とRs14、Rs24とRs14は、互いに結合して環を形成してもよい。また、2個のRs13同士が結合して環を形成している場合においては、Rs21と2個のRs13同士が結合して形成される環とが結合して更に環を形成していてもよい。また、2個のRs14同士が結合して環を形成している場合においては、Rs23と2個のRs14同士が結合して形成される環とが結合して更に環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。なお、Rs21と2個のRs13同士が結合して形成される環とが結合して更に環を形成している場合とは、例えば、以下の構造のことである。以下において、A1は、2個のRs13同士が結合して形成される環であり、A2は、環A1とRs22とが結合して形成される環であり、Rs22は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であり、Rs11およびRs13aは、水素原子または置換基であり、*は結合手である。Rs23と2個のRs14同士が結合して形成される環とが結合して更に環を形成している場合についても同様である。
【化17】
【0048】
【化18】
Rs31〜Rs34、Rs36〜Rs39は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す;
Rs31とRs32、Rs31とRs34、Rs32とRs33、Rs36とRs37、Rs36とRs39、Rs37とRs38は、互いに結合して環を形成してもよい;
Rs41およびRs42は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Rs41およびRs42の少なくとも一方は、式(1)で表される基または式(10)で表される基を表す;
Rs43およびRs44はそれぞれ独立に置換基を表す;
s21およびns22はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す;
s21が2以上の場合、2個のRs43同士が結合して環を形成していてもよい;
s22が2以上の場合、2個のRs44同士が結合して環を形成していてもよい。
【0049】
式(SQ3)中、Rs31〜Rs34、Rs36〜Rs39が表わすアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられる。
【0050】
式(SQ3)において、Rs31とRs32、Rs31とRs34、Rs32とRs33、Rs36とRs37、Rs36とRs39、Rs37とRs38は、互いに結合して環を形成してもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0051】
式(SQ3)中、Rs41およびRs42が表わす置換基としては、上述した置換基T、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。式(SQ3)で表される化合物は、Rs41およびRs42の少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を表し、Rs41およびRs42が、式(1)で表される基または式(10)で表される基であることが好ましい。
【0052】
式(SQ3)中、Rs43およびRs44が表わす置換基としては、上述した置換基Tが挙げられる。
【0053】
式(SQ3)中、ns21およびns22はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜2の整数を表すことが好ましい。
【0054】
式(SQ3)において、ns21が2以上の場合、2個のRs43同士が結合して環を形成していてもよく、ns22が2以上の場合、2個のRs44同士が結合して環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0055】
スクアリリウム化合物は、従来公知の方法、例えば、国際公開WO2014/088063号公報に記載された方法で製造することができる。具体的には、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン(以下、スクアリン酸ともいう)と、スクアリン酸と結合して式(SQ1)に示す構造を形成可能な縮合環を有する化合物とを反応させることで製造できる。例えば、スクアリリウム化合物が左右対称の構造である場合には、スクアリン酸1当量に対して上記範囲で所望の構造の縮合環を有する化合物2当量を反応させればよい。
【0056】
(シアニン化合物)
近赤外線吸収色素Aとしてのシアニン化合物は、下記式(Cy1)で表される化合物であることが好ましい。
【化19】
式中、Yは、アニオンを表す;
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を表す;
Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい;
cy1は0〜2の整数を表し、ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい;
AcyおよびAcyは、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す。
【0057】
Yが表わすアニオンとしては、ハライドイオン(Cl、Br、I)、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF、B(CN)、BF、B(C、ClO、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、(CFSO)、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば(CFSO)、テトラシアノボレートアニオンなどが挙げられる。
【0058】
Rcy〜Rcyは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては上述した置換基T、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。式(Cy1)において、Rcy〜Rcyの少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を表す。なかでも、耐光性に優れるという理由からメチン鎖のメソ位(中央)に位置する基が式(1)で表される基または式(10)で表される基であることが好ましい。例えば、式(Cy1)において、ncy1が1の場合、メチン鎖のメソ位(中央)に位置するRcyが式(1)で表される基または式(10)で表される基であることが好ましい。式(Cy1)において、Rcy〜Rcyのうち、2つが結合して環を形成していてもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0059】
cy1は0〜2の整数を表し、1または2が好ましい。ncy1が2の場合、複数のRcyおよびRcyは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0060】
AcyおよびAcyが表わすアリール基の炭素数は、6〜48が好ましく、6〜22がより好ましく、6〜12が特に好ましい。AcyおよびAcyが表わす複素環基は、5員環または6員環の複素環基が好ましい。また、複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2〜8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2〜4の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2または3の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2の縮合環の複素環基が特に好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示され、窒素原子、硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。AcyおよびAcyは、それぞれ独立して複素環基を表すことが好ましく、含窒素複素環基を表すことがより好ましい。含窒素複素環基としては、オキサゾール環基、イソオキサゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、ナフトオキサゾール環基、オキサゾロカルバゾール環基、オキサゾロジベンゾフラン環基、チアゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ナフトチアゾール環基、インドレニン環基、ベンゾインドレニン環基、イミダゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ナフトイミダゾール環基、キノリン環基、ピリジン環基、ピロロピリジン環基、フロピロール環基、インドリジン環基、イミダゾキノキサリン環基、キノキサリン環基が挙げられる。AcyおよびAcyが表わす基は置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基T、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。
【0061】
式(Cy1)で表される化合物は、下記式(Cy2)または式(Cy3)で表される化合物であることが好ましい。
【化20】
【0062】
式(Cy2)中、Yは、アニオンを表す;
Rcy11は、式(1)で表される基または式(10)で表される基を表す;
Rcy12〜Rcy15は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す;
Rcy12とRcy13、Rcy13とRcy14、Rcy14とRcy15は、互いに結合して環を形成してもよい;
Acy11およびAcy12は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す。
【0063】
式(Cy3)中、Yは、アニオンを表す;
Rcy21は、式(1)で表される基または式(10)で表される基を表す;
Rcy22〜Rcy27は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す;
Rcy22とRcy23、Rcy23とRcy24、Rcy24とRcy25、Rcy25とRcy26、Rcy26とRcy27は、互いに結合して環を形成してもよい;
Acy21およびAcy22は、それぞれ独立にアリール基または複素環基を表す。
【0064】
式(Cy2)のY、Acy11およびAcy12、式(Cy3)のY、Acy21およびAcy22は、式(Cy1)のY、AcyおよびAcyと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(Cy2)のRcy12〜Rcy15が表す置換基、式(Cy3)のRcy22〜Rcy27が表す置換基としては、上述した置換基T、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。
【0065】
式(Cy2)において、Rcy12とRcy13、Rcy13とRcy14、Rcy14とRcy15は、互いに結合して環を形成してもよく、耐光性に優れるという理由から、Rcy13とRcy14は、互いに結合して環を形成していることが好ましい。また、式(Cy3)において、Rcy22とRcy23、Rcy23とRcy24、Rcy24とRcy25、Rcy25とRcy26、Rcy26とRcy27は、互いに結合して環を形成してもよく、耐光性に優れるという理由から、Rcy24とRcy25は、互いに結合して環を形成していることが好ましい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0066】
シアニン化合物は、従来公知の方法、例えば、特開2015−172004号公報に記載された方法で製造可能である。
【0067】
(クロコニウム化合物)
近赤外線吸収色素Aとしてのクロコニウム化合物は、下記式(Cr1)で表される化合物であることが好ましい。
【化21】
式中、AcおよびAcは、それぞれ独立してアリール基、複素環基または式(Ac−1)で表される基を表し、AcおよびAcの少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を置換基として有する;
【化22】
式中、*は結合手を表し、
Rc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、
Acは複素環基を表し、
c1は、0以上の整数を表し、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、
RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、
c1が2以上の場合、複数のRcおよびRcはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
AcおよびAcが表わすアリール基の炭素数は、6〜48が好ましく、6〜22がより好ましく、6〜12が特に好ましい。
【0069】
Ac、AcおよびAcが表わす複素環基は、5員環または6員環の複素環基が好ましい。また、複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2〜8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2〜4の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2または3の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2の縮合環の複素環基が特に好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示され、窒素原子、硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0070】
式(Ac−1)におけるRc〜Rcは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表す。Rc〜Rcが表わすアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。Rc〜Rcは水素原子であることが好ましい。
【0071】
式(Ac−1)におけるnc1は、0以上の整数を表す。nc1は0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、1が更に好ましい。
【0072】
式(Ac−1)において、RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよく、RcとAcは、互いに結合して環を形成してもよく、RcとRcは、互いに結合して環を形成してもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、−CO−、−O−、−NH−、炭素数1〜10のアルキレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。
【0073】
式(Cr1)において、AcおよびAcが表わす基は置換基を有することが好ましい。置換基としては上述した置換基T、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。式(Cr1)で表される化合物は、AcおよびAcの少なくとも一つが式(1)で表される基または式(10)で表される基を置換基として有することが好ましい。
【0074】
式(Cr1)において、AcおよびAcがそれぞれ独立してアリール基または複素環基であるか、あるいは、AcおよびAcがそれぞれ独立して式(Ac−1)で表される基であることが好ましい。
【0075】
なお、式(Cr1)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化23】
【0076】
クロコニウム化合物は、従来公知の方法、例えば、特開2016−79331号公報に記載された方法で製造可能である。
【0077】
近赤外線吸収色素Aの具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【0078】
本発明の硬化性組成物において、近赤外線吸収色素Aの含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜70質量%とすることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物が、近赤外線吸収色素Aを2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0079】
<<他の近赤外線吸収色素>>
本発明の硬化性組成物は、上述した近赤外線吸収色素A以外の近赤外線吸収色素(他の近赤外線吸収色素)を含有することができる。他の近赤外線吸収色素としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物及びジベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物およびジイモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物およびクロコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。ピロロピロール化合物としては、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物、特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。スクアリリウム化合物としては、特開2011−208101号公報の段落番号0044〜0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060〜0061に記載の化合物、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0040に記載の化合物、特開2015−176046号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/190162号公報の段落番号0072に記載の化合物、特開2016−74649号公報の段落番号0196〜0228に記載の化合物、特開2017−67963号公報の段落番号0124に記載の化合物、国際公開WO2017/135359号公報に記載の化合物、特開2017−114956号公報に記載の化合物、特許6197940号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/120166号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物としては、特開2009−108267号公報の段落番号0044〜0045に記載の化合物、特開2002−194040号公報の段落番号0026〜0030に記載の化合物、特開2015−172004号公報に記載の化合物、特開2015−172102号公報に記載の化合物、特開2008−88426号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/190162号公報の段落番号0090に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。クロコニウム化合物としては、特開2017−82029号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。ジイモニウム化合物としては、特表2008−528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013−195480号公報の段落番号0013〜0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、他の近赤外線吸収色素としては、特開2016−146619号公報に記載された化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。他の近赤外線吸収色素の具体例としては、後述する実施例に記載の化合物が挙げられる。
【0080】
本発明の硬化性組成物が、他の近赤外線吸収色素を含有する場合、他の近赤外線吸収色素の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
また、他の近赤外線吸収色素と近赤外線吸収色素Aとの合計量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物が、他の近赤外線吸収色素を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、他の近赤外線吸収色素を実質的に含まない態様とすることもできる。本発明の硬化性組成物が、他の近赤外線吸収色素を実質的に含まないとは、他の近赤外線吸収色素の含有量が硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、他の近赤外線吸収色素を含有しないことがさらに好ましい。
【0081】
<<無機粒子>>
本発明の硬化性組成物は、無機粒子を含有することができる。無機粒子としては、金属酸化物粒子または金属粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO)粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子などが挙げられる。無機粒子については、特開2016−006476号公報の段落番号0080の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。無機粒子は酸化タングステン系化合物を用いることもできる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。セシウム酸化タングステンとしては、特開2016−006476号公報の段落番号0080に記載された化合物や、特許第6210180号公報に記載されたセシウム酸化タングステンを用いることもできる。
【0082】
本発明の硬化性組成物が、無機粒子を含有する場合、無機粒子の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、本発明の硬化性組成物は、無機粒子を実質的に含まない態様とすることもできる。本発明の硬化性組成物が、無機粒子を実質的に含まないとは、無機粒子の含有量が硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、無機粒子を含有しないことがさらに好ましい。
【0083】
<<有彩色着色剤>>
本発明の硬化性組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、極大吸収波長が400〜650nmの範囲に有する着色剤が好ましい。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。
【0084】
顔料は、有機顔料であることが好ましく、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されない。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独若しくは種々組合せて用いることができる。
【0085】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015−028144号公報、特開2015−34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
【0086】
本発明の硬化性組成物が有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
有彩色着色剤の含有量は、近赤外線吸収色素の100質量部に対し、10〜1000質量部が好ましく、50〜800質量部がより好ましい。
また、有彩色着色剤と近赤外線吸収色素と上述した他の近赤外線吸収色素との合計量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して1〜80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0087】
また、本発明の硬化性組成物は、有彩色着色剤を実質的に含有しないことも好ましい。有彩色着色剤を実質的に含有しないとは、有彩色着色剤の含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、有彩色着色剤を含有しないことがさらに好ましい。
【0088】
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の硬化性組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450〜650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900〜1300nmの光を透過する色材であることが好ましい。
本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
【0089】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報、国際公開WO2014/208348号公報、特表2015−525260号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0090】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
【0091】
本発明の硬化性組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がより一層好ましく、15質量%以下が特に好ましい。下限は、例えば、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の硬化性組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しないことも好ましい。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことがさらに好ましい。
【0092】
<<顔料誘導体>>
本発明の硬化性組成物が顔料を含む場合、更に顔料誘導体を含有することが好ましい。顔料誘導体としては、顔料の一部分を、酸性基、塩基性基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体は、分散性及び分散安定性の観点から、酸性基又は塩基性基を有する顔料誘導体を含有することが好ましい。本発明の硬化性組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0093】
<<硬化性化合物>>
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物を含有する。硬化性化合物としては、架橋性化合物、樹脂等が挙げられる。樹脂は、非架橋性の樹脂(架橋性基を有さない樹脂)であってもよく、架橋性の樹脂(架橋性基を有する樹脂)であってもよい。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基がより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられ、エポキシ基が好ましい。アルコキシシリル基としては、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられ、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。また、アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。クロロシリル基としては、モノクロロシリル基、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基が挙げられ、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基が好ましく、トリクロロシリル基がより好ましい。
【0094】
本発明において、硬化性化合物としては、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましく、樹脂とモノマータイプの架橋性化合物とを用いることがより好ましく、樹脂と、エチレン性不飽和結合を有する基を含むモノマータイプの架橋性化合物とを用いることが更に好ましい。
【0095】
硬化性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜80質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましい。本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。硬化性化合物を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0096】
(架橋性化合物)
架橋性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物、環状エーテル基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物、アルコキシシリル基を有する化合物、クロロシリル基を有する化合物等が挙げられる。架橋性化合物は、モノマーであってもよく、樹脂であってもよい。エチレン性不飽和結合を有する基を含むモノマータイプの架橋性化合物は、ラジカル重合性化合物として好ましく用いることができる。また、環状エーテル基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物は、カチオン重合性化合物として好ましく用いることができる。
【0097】
モノマータイプの架橋性化合物の分子量は、2000未満であることが好ましく、100以上2000未満であることがより好ましく、200以上2000未満であることがさらに好ましい。上限は、例えば1500以下であることが好ましい。樹脂タイプ(ポリマータイプ)の架橋性化合物の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000であることが好ましい。上限は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。下限は、3,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。
【0098】
樹脂タイプの架橋性化合物としては、エポキシ樹脂や、架橋性基を有する繰り返し単位を含む樹脂などが挙げられる。架橋性基を有する繰り返し単位としては、下記式(A2−1)〜(A2−4)などが挙げられる。
【化29】
【0099】
は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。Rは、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0100】
51は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO−、−NR10−(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
【0101】
は、架橋性基を表す。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基などが挙げられる。
【0102】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM−35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A−DPH−12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基が、エチレングリコール残基および/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物としては、特開2013−253224号公報の段落番号0034〜0038、特開2012−208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)に化合物等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM−460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP−1040(日本化薬(株)製)、アロニックス M−350、TO−2349(東亞合成製)を使用することもできる。
【0103】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、さらに、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。このような化合物の市販品としては、東亞合成株式会社製のアロニックスシリーズ(例えば、M−305、M−510、M−520)などが挙げられる。
【0104】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい。カプロラクトン構造を有する化合物については、特開2013−253224号公報の段落0042〜0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。カプロラクトン構造を有する化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されている、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120等が挙げられる。
【0105】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基とアルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。このような化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基と、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基とを有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基とエチレンオキシ基とを有する化合物であることがより好ましく、エチレンオキシ基を4〜20個有する3〜6官能(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR−494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA−330などが挙げられる。
【0106】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。また、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載されている分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることができる。市販品としては、UA−7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA−40H(日本化薬(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学(株))製などが挙げられる。
また、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物は、特開2017−48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物、特開2017−194662号公報に記載されている化合物を用いることもできる。また、8UH−1006、8UH−1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB−A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
【0107】
本発明の硬化性組成物がエチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物を含有する場合、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
また、モノマータイプのエチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0108】
環状エーテル基を有する化合物としては、単官能または多官能グリシジルエーテル化合物、多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物、環状エーテル基を有する繰り返し単位を含む樹脂などが挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)であることが好ましい。
【0109】
エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1〜100個有する化合物が好ましい。エポキシ基の数の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の数の下限は2個以上が好ましい。
【0110】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、2000〜100000が好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0111】
環状エーテル基を有する化合物については、特開2012−155288号公報の段落番号0191の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状エーテル基を有する化合物は特開2017−179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。また、環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、デナコール EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等の多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物が挙げられる。これらは低塩素品であるが、低塩素品ではないEX−212、EX−214、EX−216、EX−321、EX−850なども同様に使用できる。その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、EP−4003S、EP−4010S、EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)、JER1031S、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、サイクロマーP ACA 200M、ACA 230AA、ACA Z250、ACA Z251、ACA Z300、ACA Z320(以上、(株)ダイセル製)、JER−157S65、JER−152、JER−154、JER−157S70(以上、三菱化学(株)製)、アロンオキセタンOXT−121、OXT−221、OX−SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。また、アデカグリシロール ED−505((株)ADEKA製、エポキシ基含有モノマー)、マープルーフG−0150M、G−0105SA、G−0130SP、G−0250SP、G−1005S、G−1005SA、G−1010S、G−2050M、G−01100、G−01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。
【0112】
本発明の硬化性組成物が環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0113】
メチロール基を有する化合物(以下、メチロール化合物ともいう)としては、メチロール基が、窒素原子または芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。また、アルコキシメチル基を有する化合物(以下、アルコキシメチル化合物ともいう)としては、アルコキシメチル基が、窒素原子または芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。アルコキシメチル基またはメチロール基が、窒素原子に結合している化合物としては、アルコキシメチル化メラミン、メチロール化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル、メチロール化グリコールウリル、アルコキシメチル化尿素およびメチロール化尿素等が好ましい。また、特開2004−295116号公報の段落0134〜0147、特開2014−089408の段落0095〜0126の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0114】
本発明の硬化性組成物がメチロール化合物を含有する場合、メチロール化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0115】
本発明の硬化性組成物がアルコキシメチル化合物を含有する場合、アルコキシメチル化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0116】
アルコキシシリル基を有する化合物およびクロロシリル基を有する化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジクロロ(メチル)フェニルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランなどが挙げられる。また、アルコキシシリル基を有する繰り返し単位を含む樹脂、クロロシリル基を有する繰り返し単位を含む樹脂などを用いることもできる。市販品としては、信越シリコーン社製のKBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13、KBE−22、KBE−103、KBM−3033、KBE−3033、KBM−3063、KBE−3063、KBE−3083、KBM−3103、KBM−3066、KBM−7103、SZ−31、KPN−3504、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−9659、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007などが挙げられる。
【0117】
本発明の硬化性組成物がアルコキシシリル基を有する化合物を含有する場合アルコキシシリル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0118】
本発明の硬化性組成物がクロロシリル基を有する化合物を含有する場合、クロロシリル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0119】
(樹脂)
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物として樹脂を用いることができる。硬化性化合物は、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましい。樹脂は分散剤として用いることもできる。なお、顔料などを分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。なお、架橋性基を有する樹脂は、架橋性化合物にも該当する。
【0120】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0121】
樹脂としては、繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。ポリイミド樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製のネオプリム(登録商標)シリーズ(例えば、C3450)などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、マープルーフG−0150M、G−0105SA、G−0130SP、G−0250SP、G−1005S、G−1005SA、G−1010S、G−2050M、G−01100、G−01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。ウレタン樹脂としては、8UH−1006、8UH−1012(大成ファインケミカル(株)製)が挙げられる。また、樹脂は、国際公開WO2016/088645号公報の実施例に記載された樹脂、特開2017−57265号公報に記載された樹脂、特開2017−32685号公報に記載された樹脂、特開2017−075248号公報に記載された樹脂、特開2017−066240号公報に記載された樹脂、特開2017−167513号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂としては、下記構造の樹脂が挙げられる。以下の構造式中、Aは、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物から選択されるカルボン酸二無水物の残基であり、Mはフェニル基またはベンジル基である。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化30】
【0122】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。また、エポキシ樹脂の場合、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100以上が好ましく、100〜2,000,000がより好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、200以上がより好ましい。
【0123】
本発明で用いる樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。酸基を有する樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有する繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましい。
【0124】
酸基を有する樹脂は、更に架橋性基を有する繰り返し単位を含有していてもよい。酸基を有する樹脂が、更に架橋性基を有する繰り返し単位を含有する場合、全繰り返し単位中における架橋性基を有する繰り返し単位の含有量は、10〜90モル%であることが好ましく、20〜90モル%であることがより好ましく、20〜85モル%であることがさらに好ましい。また、全繰り返し単位中における酸基を有する繰り返し単位の含有量は、1〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることがさらに好ましい。
【0125】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0126】
【化31】
【0127】
式(ED1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【化32】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
【0128】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013−29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0129】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化33】
式(X)において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Rは、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
【0130】
酸基を有する樹脂については、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685〜0700)の記載、特開2012−198408号公報の段落番号0076〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。例えば、アクリベースFF−426(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。
【0131】
酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0132】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化34】
【0133】
本発明の硬化性組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40〜105mgKOH/gが好ましく、50〜105mgKOH/gがより好ましく、60〜105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0134】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0135】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤であることも好ましい。オリゴイミン系分散剤は、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40〜10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂であることが好ましい。塩基性窒素原子は、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系分散剤については、特開2012−255128号公報の段落番号0102〜0174の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk−111(BYKChemie社製)、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。また、特開2014−130338号公報の段落番号0041〜0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
【0137】
本発明の硬化性組成物が樹脂を含有する場合、樹脂の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して1〜80質量%であることが好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましい。また、酸基を含有する樹脂の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が特に好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。また、樹脂として分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜40質量%が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましい。下限は、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。
本発明の硬化性組成物は、樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。樹脂を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0138】
<<光重合開始剤>>
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含有する場合、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合性化合物の重合反応を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0139】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3−アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014−130173号公報の段落0065〜0111の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0140】
α−ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959、IRGACURE−127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α−アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−907、IRGACURE−369、IRGACURE−379、及び、IRGACURE−379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE−819、DAROCUR−TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0141】
オキシム化合物としては、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653−1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156−162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202−232)に記載の化合物、特開2000−66385号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特表2004−534797号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、特開2017−19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680公報に記載の化合物などがあげられる。オキシム化合物の具体例としては、3−ベンゾイルオキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN−1919((株)ADEKA製、特開2012−14052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられるまた、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI−730、NCI−831、NCI−930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0142】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0143】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0144】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物、特許第4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0145】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されるOE−01〜OE−75が挙げられる。
【0146】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0147】
【化35】
【化36】
【0148】
オキシム化合物は、波長350〜500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360〜480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000〜300,000であることがより好ましく、2,000〜300,000であることが更に好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0149】
本発明は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光重合開始剤を用いてもよい。このような光重合開始剤を用いることにより、光重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカル等の活性種が発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、組成物の経時安定性を向上させることができる。そのような光重合開始剤の具体例としては、特表2010−527339号公報、特表2011−524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016−532675号公報の段落番号0417〜0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039〜0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013−522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1〜7、特表2017−523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017−167399号公報の段落番号0020〜0033に記載されている光開始剤、特開2017−151342号公報の段落番号0017〜0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0150】
光重合開始剤は、オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α−アミノケトン化合物が50〜600質量部が好ましく、150〜400質量部がより好ましい。
【0151】
光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。光重合開始剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0152】
<<酸発生剤>>
本発明の硬化性組成物は、酸発生剤を含有することができる。特に、硬化性化合物が環状エーテル基を有する化合物など、カチオン重合性化合物を含有する場合、酸発生剤を含有することが好ましい。酸発生剤は、光照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)が好ましい。酸発生剤としては、光照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。酸発生剤の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号0066〜0122に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。また、本発明に使用しうる酸発生剤として好ましい化合物は、下記式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【化37】
【0153】
式(b1)において、R201、R202、及びR203は、各々独立に有機基を表す。Xは、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PFおよびSbFであり、より好ましくはBF、PFおよびSbFである。
【0154】
酸発生剤の市販品としては、WPAG−469(和光純薬(社)製)、CPI−100P(サンアプロ(株)製)などが挙げられる。
【0155】
酸発生剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が更に好ましい。本発明の硬化性組成物は、酸発生剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。酸発生剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0156】
<<架橋助剤>>
本発明の硬化性組成物は、架橋性化合物の反応を促進させることなどを目的として、架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、多官能チオール、アルコール、アミンおよびカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0157】
架橋助剤としての多官能チオールとしては、分子内に2個以上のチオール基を有する化合物が挙げられる。多官能チオールは、2級のアルカンチオール類であることが好ましく、特に下記式(T1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
式(T1)
【化38】
式(T1)中、nは2〜4の整数を表し、Lは2〜4価の連結基を表す。
【0158】
式(T1)において、連結基Lは炭素数2〜12の脂肪族基であることが好ましく、nが2であり、Lが炭素数2〜12のアルキレン基であることが特に好ましい。多官能チオールの具体例としては、下記の構造式(T2)〜(T4)で表される化合物が挙げられ、式(T2)で表される化合物が特に好ましい。多官能チオールは1種または複数種組み合わせて使用することが可能である。
【0159】
【化39】
【0160】
架橋助剤としてのアミンとしては、多価アミンが好ましく、ジアミンがより好ましい。例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0161】
架橋助剤としてのアルコールとしては、多価アルコールが好ましく、ジオールがより好ましい。例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物等が挙げられる。アルコールの具体例について、例えば、特開2013−253224号公報の段落番号0128〜0163、0172の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0162】
架橋助剤としてのカルボン酸としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸(無水物)、マレイン酸、フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。また、特開2017−036379号公報に記載のカルボキシ基含有エポキシ硬化剤を用いることもできる。
【0163】
架橋助剤の含有量は、架橋性化合物の100質量部に対し1〜1000質量部が好ましく、より好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは1〜200質量部である。本発明の硬化性組成物は、架橋助剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。架橋助剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0164】
<<触媒>>
本発明の硬化性組成物は、触媒をさらに含有することができる。特に、硬化性化合物として、アルコキシシリル基や、クロロシリル基を有する化合物を用いた場合、触媒を含有させることが好ましい。この態様によれば、ゾルゲル反応が促進されて、より強固な膜が得られやすい。触媒としては、酸触媒、塩基触媒などが挙げられる。酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸等のカルボン酸、RCOOHで示される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸などが挙げられる。また、塩化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化亜鉛、塩化スズ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、ヨードトリメチルシランなどのルイス酸を用いてもよい。塩基触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基化合物、エチルアミンやアニリンなどの有機アミンなどが挙げられる。また、触媒は、特開2013−201007号公報の段落番号0070〜0076に記載の触媒を用いることもできる。
触媒の含有量は、架橋性化合物の100質量部に対し0.1〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜50質量部であり、さらに好ましくは0.1〜20質量部である。本発明の硬化性組成物は、触媒を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。触媒を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0165】
<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0166】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0167】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0168】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0169】
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0170】
溶剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全量に対し、10〜90質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより一層好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
【0171】
また、本発明の硬化性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、硬化性組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の硬化性組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として硬化性組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した硬化性組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0172】
<<重合禁止剤>>
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルなどが挙げられる。重合禁止剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.001〜5質量%が好ましい。本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。重合禁止剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0173】
<<界面活性剤>>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238〜0245の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましい。本発明の硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)が向上し、省液性をより改善できる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0174】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、7〜25質量%が更に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的である。
【0175】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開WO2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤などが挙げられる。また、フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS−330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、SC−101、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068、SC−381、SC−383、S−393、KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0176】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造のアクリル系化合物であって、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(例えばメガファックDS−21)が挙げられる。
【0177】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との共重合体を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤については、特開2016−216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0178】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることができる。ブロックポリマーとしては、例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素共重合体を用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化40】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0179】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する繰り返し単位を含む含フッ素共重合体を用いることができる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0180】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD−6112、D−6112−W、D−6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0181】
界面活性剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001質量%〜5.0質量%が好ましく、0.005〜3.0質量%がより好ましい。本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。界面活性剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0182】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、アゾメチン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などが挙げられる。これらの詳細については、特開2012−208374号公報の段落番号0052〜0072、特開2013−68814号公報の段落番号0317〜0334、特開2016−162946号公報の段落番号0061〜0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV−503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。
【0183】
紫外線吸収剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。紫外線吸収剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0184】
<<その他添加剤>>
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、潜在酸化防止剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤としては、特開2004−295116号公報の段落番号0155〜0156に記載の添加剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011−90147号公報の段落番号0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などが挙げられる。また、国際公開WO2017164024号公報に記載された酸化防止剤を用いることもできる。酸化防止剤の市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−50F、AO−60、AO−60G、AO−80、AO−330など)が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100〜250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80〜200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017−008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA−5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0185】
本発明の硬化性組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1〜100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
【0186】
本発明の硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や硬化性組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物の保存条件としては特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、特開2016−180058号公報に記載された方法を用いることもできる。
【0187】
本発明の硬化性組成物は、上述した近赤外線吸収色素Aを含むことにより、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れた膜を製造することもできる。近赤外線カットフィルタにおいては、近赤外線遮蔽性および可視透明性に優れることが望まれているため、本発明の硬化性組成物は近赤外線カットフィルタ形成用の組成物として特に好ましく用いることができる。また、本発明の硬化性組成物において、さらに、可視光を遮光する色材を含有させることで、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。したがって、本発明の硬化性組成物は、赤外線透過フィルタ形成用の組成物として好ましく用いることもできる。
【0188】
<硬化性組成物の調製方法>
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。硬化性組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して硬化性組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して硬化性組成物として調製してもよい。
【0189】
また、硬化性組成物の調製に際しては、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスを実施するための手段の具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機については、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」、「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015−157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を使用することができる。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて顔料を微細化処理してもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015−194521号公報、特開2012−046629号公報の記載を参酌できる。
【0190】
硬化性組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0191】
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μmが好ましく、0.01〜3.0μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0192】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0193】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0194】
<近赤外線吸収剤>
次に、本発明の近赤外線吸収剤について説明する。
本発明の近赤外線吸収剤は、下記式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素、または、下記式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素を含むことを特徴とする。
【0195】
【化41】
式(1)中、GはNRG1または酸素原子を表し、RG1は水素原子または1価の置換基を表す;Gは立体パラメータである−Es’値が2.4以上の1価の置換基を表す。
【0196】
【化42】
式(10)中、G11はNRG11または酸素原子を表し、RG11は水素原子または1価の置換基を表す;G12は炭素数6以上の3級アルキル基を表す。
【0197】
式(1)で表される基を有する近赤外線吸収色素、および、式(10)で表される基を有する近赤外線吸収色素については、上述した本発明の硬化性組成物の近赤外線吸収色素Aの項で説明した範囲と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0198】
<膜>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の硬化性組成物から得られるものである。本発明の膜は、近赤外線カットフィルタや、赤外線透過フィルタなどに好ましく用いることができる。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。
【0199】
本発明の膜は、支持体上に積層した状態で用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。支持体としては、シリコンなどの半導体基材や、透明基材が挙げられる。透明基材は、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、結晶、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。透明基材の材質としてはガラスが好ましい。すなわち、透明基材はガラス基材であることが好ましい。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅含有ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスとしては、銅を含有するリン酸塩ガラス、銅を含有するフツリン酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF−50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。結晶としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。また、支持体と本発明の膜との密着性を高めるため、支持体の表面には下地層などが設けられていてもよい。
【0200】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の膜は700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400〜550nmの平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400〜550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700〜1000nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0201】
本発明の膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、上述した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、硬化性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などをさらに含有することができる。これらの詳細については、上述した材料が挙げられ、これらを用いることができる。
【0202】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の膜をカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0203】
本発明の膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0204】
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過させるものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本発明において、赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
【0205】
<膜の製造方法>
次に、本発明の膜の製造方法について説明する。本発明の膜は、本発明の硬化性組成物を塗布する工程を経て製造できる。
【0206】
硬化性組成物が塗布される支持体としては、特に限定は無く、シリコンなどの半導体基材や上述した透明基材が挙げられる。支持体には、有機膜や無機膜などが形成されていてもよい。有機膜の材料としては、例えば上述した樹脂が挙げられる。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは支持体表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。また、支持体としてガラス基材を用いる場合においては、ガラス基材の表面に無機膜を形成したり、ガラス基材を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。
【0207】
硬化性組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、樹脂組成物の塗布方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0208】
硬化性組成物を塗布して形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベークを150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、有機素材の特性をより効果的に維持することができる。プリベーク時間は、10〜3000秒が好ましく、40〜2500秒がより好ましく、80〜220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0209】
プリベーク後、更に加熱処理(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度としては、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、180〜240℃がより好ましい。ポストベーク時間としては、2〜10分が好ましく、4〜8分がより好ましい。ポストベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0210】
本発明の膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
【0211】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の硬化性組成物を支持体に塗布して形成した組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。
【0212】
<<露光工程>>
露光工程では組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180〜300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03〜2.5J/cmが好ましく、0.05〜1.0J/cmがより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m〜100000W/m(例えば、5000W/m、15000W/m、または、35000W/m)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m、酸素濃度35体積%で照度20000W/mなどとすることができる。
【0213】
<<現像工程>>
次に、組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する。組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液の温度は、例えば、20〜30℃が好ましい。現像時間は、20〜180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0214】
現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5〜100倍の範囲に設定することができる。なお、アルカリ性水溶液を現像液として使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。また、リンスは、現像後の組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0215】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、180〜230℃がより好ましい。また、加熱処理は、特開2016−172828号公報に記載された方法で行うこともできる。
【0216】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、支持体上の組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジスト層の形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落番号0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0217】
<近赤外線カットフィルタ>
本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した本発明の膜を有する。本発明の近赤外線カットフィルタは、700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400〜550nmの平均透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400〜550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700〜1000nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0218】
本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の膜の他に、さらに、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。本発明の近赤外線カットフィルタが、本発明の膜の他にさらに、誘電体多層膜を有することで、視野角が広く、近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られやすい。また、本発明の近赤外線カットフィルタが、本発明の膜の他にさらに、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014−41318号公報の段落番号0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0219】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0220】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明の膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012−227478号公報、特開2014−179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0221】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430〜485nm)、緑色領域(530〜580nm)および黄色領域(580〜620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加えさらに赤色領域(650〜700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0222】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を有する。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0223】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0224】
近赤外線カットフィルタ111は本発明の硬化性組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過および吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014−043556号公報の段落番号0214〜0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。赤外線透過フィルタ114は本発明の硬化性組成物を用いて形成することもできる。
【0225】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。また、図1に示す赤外線センサにおいて、近赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112の位置が入れ替わっても良い。また、固体撮像素子110と近赤外線カットフィルタ111との間、および/または、固体撮像素子110と赤外線透過フィルタ114との間に他の層が配置されていてもよい。他の層としては、硬化性化合物を含む組成物を用いて形成された有機物層などが挙げられる。また、カラーフィルタ112上に平坦化層が形成されていてもよい。
【実施例】
【0226】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0227】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
試料の重量平均分子量(Mw)は、以下の条件で測定した。
カラムの種類:TSKgel SuperHZ4000(TOSOH製、4.6mm(内径)×15cm)
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):60μL
装置名:東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)
検量線ベース樹脂:ポリスチレン
【0228】
<硬化性組成物の調製>
(実施例1〜16、比較例1〜3)
下記の組成1〜7に示す原料を混合して硬化性組成物を調製した。
<組成1>
下記表に示す化合物:2.3部
樹脂1:12.8部
紫外線吸収剤1:0.5部
界面活性剤1:0.04部
シクロヘキサノン:84.36部
【0229】
<組成2>
下記表に示す化合物:2.3部
樹脂2:12.8部
紫外線吸収剤1:0.5部
界面活性剤1:0.04部
シクロヘキサノン:64.36部
N−メチルピロリドン:20部
【0230】
<組成3>
下記表に示す化合物:2.3部
樹脂3:12.9部
架橋性化合物1:12.9部
光重合開始剤1:2.5部
紫外線吸収剤1:0.5部
界面活性剤1:0.04部
重合禁止剤(p−メトキシフェノール):0.006部
シクロヘキサノン:49.6部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:19.3部
【0231】
<組成4>
下記表に示す化合物:2.3部
樹脂4:12.9部
架橋性化合物1:12.9部
光重合開始剤1:2.5部
紫外線吸収剤1:0.5部
界面活性剤1:0.04部
重合禁止剤(p−メトキシフェノール):0.006部
シクロヘキサノン:49.6部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:19.3部
【0232】
<組成5>
下記表に示す化合物:2.3部
樹脂5:12.9部
架橋性化合物2:12.9部
酸発生剤1:2.5部
紫外線吸収剤1:0.5部
界面活性剤1:0.04部
シクロヘキサノン:49.6部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:19.3部
【0233】
<組成6>
下記表に示す化合物:2.3部
樹脂6:12.9部
酸触媒(リン酸):2.5部
紫外線吸収剤1:0.5部
界面活性剤1:0.04部
シクロヘキサノン:58.9部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:22.9部
【0234】
<組成7>
下記表に示す化合物:各々について1.2部ずつ
樹脂1:12.8部
紫外線吸収剤1:0.5部
界面活性剤1:0.04部
シクロヘキサノン:84.26部
【0235】
(樹脂)
樹脂1:ARTON F4520(JSR(株)製)
樹脂2:ネオプリム(登録商標)C3450(三菱ガス化学(株)製)
樹脂3:ベンジルメタクリレート(BzMA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):(BzMA/MAA)=(80/20)、Mw=15,000)
樹脂4:アリルメタクリレート(AMA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):(AMA/MAA)=(80/20)、Mw=15,000)
樹脂5:グリシジルメタクリレート(GlyMA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):(GlyMA/MAA)=(80/20)、Mw=15,000)
樹脂6:下記構造の化合物(繰り返し単位に付記した数値はモル比であり、Meはメチル基である。Mw=18,000)
【化43】
【0236】
(架橋性化合物)
架橋性化合物1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、製品名
KAYARAD DPHA)
架橋性化合物2:OXT−221(東亞合成(株)製)
【0237】
(光重合開始剤)
光重合開始剤1:IRGACURE−OXE01(BASF社製)〔2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン〕
【0238】
(酸発生剤)
酸発生剤1:CPI−100P(サンアプロ(株)製)
【0239】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤1:UV−503(大東化学株式会社)
【0240】
(界面活性剤)
界面活性剤1:下記化合物(Mw=14000、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。)
【化44】
【0241】
【表1】
【0242】
上記表中に記載の化合物は、以下の構造の化合物である。以下の構造式中、Meはメチル基である。なお、上記表に記載の−Es’値は、式(1)で表される基のGに相当する部位の基の−Es’値である。
【化45】
【化46】
【0243】
<膜の作製>
(作製例1)
(組成1、2、7の硬化性組成物を用いた膜の作製方法)
各硬化性組成物を、ガラス基材(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、膜を得た。
【0244】
(作製例2)
(組成3、4、5の硬化性組成物を用いた膜の作製方法)
各硬化性組成物を、ガラス基材(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、500mJ/cmで全面露光した。次いで現像液(CD−2060、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、次いで、純水でリンス処理し、次いで、スピン乾燥した。さらに、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、膜を得た。
【0245】
(作製例3)
(組成6の硬化性組成物を用いた膜の作製方法)
硬化性組成物を、ガラス基材(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、180℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、膜を得た。
【0246】
(可視透明性の評価)
得られた膜に対し、分光光度計(U−4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて波長300〜900nmの範囲の吸収スペクトルを測定した。得られた膜の極大吸収波長は、近赤外領域(650〜1200nm)に存在していた。極大吸収波長の吸光度を1とした時の、波長400〜550nmの平均吸光度を算出し、下記基準で可視透明性を評価した。なお、得られた膜の極大吸収波長は、近赤外領域(650〜1200nm)に存在しているので、極大吸収波長の吸光度を1としたときに、400〜550nmの平均吸光度が小さいほど、可視透明性に優れているといえる。
A:0.05未満
B:0.05以上、0.075未満
C:0.075以上、0.1未満
【0247】
(耐湿性の評価)
得られた膜を、85℃、相対湿度85%の高温高湿下で10時間放置して耐湿試験を行った。耐湿性試験前後の膜のそれぞれについて、分光光度計(U−4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長650〜1200nmにおける最大吸光度(Absλmax)と、波長400〜650nmにおける最小吸光度(Absλmin)とを測定し、「Absλmax/Absλmin」で表される吸光度比を求めた。
|{(耐湿試験前の膜の吸光度比−耐湿試験後の膜の吸光度比)/耐湿試験前の膜の吸光度比}×100|(%)で表される吸光度比変化率を、以下の基準で評価した。結果を以下の表に示す。
A:吸光度比変化率≦2%
B:2%<吸光度比変化率≦4%
C:4%<吸光度比変化率≦7%
D:7%<吸光度比変化率≦10%
E:10%<吸光度比変化率
【0248】
(耐光性)
得られた膜に対し、Xeランプにて紫外線カットフィルタを通して1万ルクスの光を225時間照射して耐光性試験を行った、色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)を用いて、耐光性試験前後の膜の色差のΔEab値を測定した。
A:ΔEab値<2.5
B:2.5≦ΔEab値<5
C:5≦ΔEab値<10
D:10≦ΔEab値<15
E:15≦ΔEab値
【0249】
【表2】
【0250】
上記表に示されるように、実施例の硬化性組成物を用いることで、耐光性および耐湿性に優れた膜を形成することができた。また、この膜は、近赤外領域に極大吸収波長を有しており、近赤外線遮蔽性に優れつつ、可視透明性にも優れていた。
【符号の説明】
【0251】
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層

図1