【文献】
MOHAMMED, Abdulkarim H. A. et al.,Oxidation of gem-chloronitroso- and vic-chloronitroso-alkanes and -cycloalkanes to respective chloro,Journal of Chemical Sciences,2011年,Vol.123,No.4,PP.433-441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記準備工程で準備する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液が、アルキル基の炭素数が1〜10である水酸化第4級アルキルアンモニウムの溶液である請求項1に記載の方法。
前記反応工程後に、反応液を保存する保存工程を含み、該保存工程において、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHが12.0以上、14.0未満となるよう調整された請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
前記保存工程後に、反応液のpHを調整する希釈工程を含み、該希釈工程において、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHを8.0以上、12.0未満とする請求項11に記載の方法。
前記希釈工程が、保存された次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を、25℃におけるpHが0より大きく7以下の溶液で希釈する工程である、請求項12に記載の方法。
該半導体ウエハが、銅、タングステン、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、アルミニウム、シリコン、酸化シリコン、及びこれらの化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む半導体ウエハである、請求項14に記載の処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献4の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液は、保存安定性が必ずしも満足のいくものではない。すなわち、酸化作用を発揮する次亜塩素酸イオンの経時的減少によって、所望の洗浄性能が発揮されていないことが、本発明者らの検討によって明らかとなった。
【0013】
また、特許文献4には利用可能なハロゲンのレベルを維持するために、例えば、トリアゾール、チアゾール、テトラゾールおよびイミダゾールを安定化剤として、洗浄組成物に添加することが開示されている。
【0014】
しかしながら、安定化剤を添加することで、洗浄後に有機物の残渣として残存しやすく、半導体素子の歩留まり低下を引き起こす。また、安定化剤は、特定の金属、例えば、トリアゾールであれば銅に吸着しやすく、銅を洗浄する能力を低下させることもある。
【0015】
したがって、本発明の第1の目的は、安定化剤を添加せずとも、次亜塩素酸イオン濃度の経時変化が少なく、保存安定性に優れた次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法を提供することにある。
【0016】
また、特許文献4に記載された次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を含む洗浄液は、上記の通り、フォトレジスト・残渣を除去することを目的としている。このため、例えば、洗浄液中のナトリウム、アルミニウム、および/またはカリウム等の金属含量を低減することは考慮されていない。洗浄液に含まれる金属含量が少ない方が半導体素子の生産効率を向上できるものと考えられる。
【0017】
したがって、本発明の第2の目的は、半導体素子を製造する工程に使用される、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液において、金属含量が低減された溶液、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記第1の目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、反応中の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHが管理されていないため、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液中に存在する次亜塩素酸イオン濃度が低下し、洗浄、除去力が低下することを見出した。
【0019】
すなわち、反応工程における次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHによって、次亜塩素酸イオン濃度が大きく変化する。そこで、反応工程のpHの変動要因をさらに検討した結果、反応工程の気相部の二酸化炭素が反応液に吸収され、反応液のpHが大きく変動しており、反応工程の気相部の二酸化炭素濃度を制御することで、安定化剤を添加せずとも、保存安定性が高い次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造できることを見出した。
【0020】
また、上記知見に基づきさらに検討を続けたところ、酸化剤、洗浄剤として、好適に使用できる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、安定化剤を添加せずとも次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHを調整することによって、保存安定性のさらなる向上が図れることを見出した。
【0021】
すなわち、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHによって、次亜塩素酸、及び次亜塩素酸イオンの不均化反応の反応速度が異なり、次亜塩素酸、及び次亜塩素酸イオンの自己分解が抑制されるpHの範囲が存在することが判明した。一般的には、次亜塩素酸ナトリウム溶液では、アルカリ性、例えば、pH11以上では、次亜塩素酸、及び次亜塩素酸イオンの不均化反応が抑制されることが知られているが、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の場合、pHが12以上14未満において、特異的に、次亜塩素酸、及び次亜塩素酸イオンの不均化反応が抑制されることが判明した。
【0022】
例えば、本発明の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を、金属の洗浄、除去に使用する場合、最適な次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHは、7より大きく12未満であるが、このようなpHの範囲で次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を調製し、保存した場合は、短時間で著しく酸化力が失われることが本発明者の検討によって、判明した。
【0023】
これらの知見から、安定化剤を添加せずとも次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHを調整することによって、次亜塩素酸イオン濃度が低下せず、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶
液の保存安定性が向上することを見出した。
【0024】
また、本発明者らは、上記第2の目的を達成するために鋭意検討を重ねた。先ず、特許文献4に記載されている次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液に含まれる可能性がある金属不純物について詳細に検討した。
【0025】
特許文献4においては、フォトレジストの除去を目的とするため、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液に含まれる金属原子を低減させる必要性は考慮されていない。
【0026】
具体的には、特許文献4の実施例では、エーレンマイヤーフラスコ中で、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液と塩素ガスとを反応させて、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造している。そして、該フラスコは何ら断りがないため、ガラス容器である蓋然性が高い。本発明者等によれば、該実施例の追試では、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液にナトリウム等の金属原子が比較的多く含まれることが分かった。
【0027】
そのため、本発明者等は、ナトリウム等の金属原子が含まれる原因を検討した。そして、その原因の一つは、原料となる水酸化第4級アルキルアンモニウム、およびフラスコの材質に起因しているものと考えられた。すなわち、水酸化第4級アルキルアンモニウムは強いアルカリ性を示す物質であるため、フラスコの材質であるガラスから、ナトリウム等の金属原子が溶けだすことが原因であると推定した。そして、水酸化第4級アルキルアンモニウム水溶液と塩素ガスとを反応させる際に、反応容器の材質を限定することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0028】
すなわち、本発明は、以下の要旨を含む。
(1)次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法であって、
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を準備する準備工程と
前記水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と、塩素を接触させる反応工程とを含んでなり、
反応工程における気相部の二酸化炭素濃度が100体積ppm以下であり、反応工程における液相部のpHが、10.5以上である、
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法。
【0029】
(2)前記準備工程で準備する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液が、アルキル基の炭素数が1〜10である水酸化第4級アルキルアンモニウムの溶液である(1)に記載の方法。
【0030】
(3)前記反応工程において、反応温度が−35℃以上15℃以下である(1)または(2)に記載の方法。
【0031】
(4)前記反応工程において、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液中の二酸化炭素濃度が500ppm以下である(1)〜(3)の何れか一項に記載の方法。
【0032】
(5)水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとを反応容器内で接触させる反応工程を含む、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造する方法において、
該反応容器内の該水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液が接触する面が、有機高分子材料からなる、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法。
【0033】
(6)前記有機高分子材料が、フッ素樹脂である(5)に記載の方法。
【0034】
(7)前記塩素ガスの水分量が、10体積ppm以下である(5)または(6)に記載の方法。
【0035】
(8)前記反応工程において得られた次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を、濾過する工程をさらに含む、(1)〜(7)の何れか一項に記載の方法。
【0036】
(9)濾過する次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHが13.5以下である(8)に記載の方法。
【0037】
(10)濾過する次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHが12.5以下である(9)に記載の方法。
【0038】
(11)前記反応工程後に、反応液を保存する保存工程を含み、該保存工程において、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHが12.0以上、14.0未満となるよう調整された(1)〜(10)の何れか一項に記載の方法。
【0039】
(12)前記保存工程後に、反応液のpHを調整する希釈工程を含み、該希釈工程において、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHを8.0以上、12.0未満とする(11)に記載の方法。
【0040】
(13)前記希釈工程が、保存された次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を、25℃におけるpHが0より大きく7以下の溶液で希釈する工程である、(12)に記載の方法。
【0041】
(14)上記(1)〜(13)の何れか一項に記載に方法により得た次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液により、半導体ウエハ表面を処理する、半導体ウエハの処理方法。
【0042】
(15)該半導体ウエハが、銅、タングステン、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、アルミニウム、シリコン、酸化シリコン、及びこれらの化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む半導体ウエハである、(14)に記載の処理方法。
【0043】
(16)ナトリウム、カリウム、およびアルミニウムの各金属の含有量がそれぞれ1ppb未満である次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液。
【0044】
(17)さらに、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の各金属の含有量がそれぞれ1ppb未満である(16)に記載の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液。
【0045】
(18)23℃におけるpHが9.0以上12.5以下である(16)または(17)に記載の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液。
【発明の効果】
【0046】
上記(1)〜(4)の本発明の第1の実施形態によれば、トリアゾール、チアゾール、テトラゾールおよびイミダゾール等の安定化剤を添加せずとも、保存安定性が高い次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造することができる。また、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、洗浄能力に関与しない安定化剤を添加する必要はない。したがって、本発明によって製造された次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を、半導体製造工程で使用すれば、歩留まりが低下しない洗浄液として好適に使用することができる。
【0047】
上記(5)〜(7)の本発明の第2の実施形態によれば、金属含量が少ない次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を得ることができる。そのため、半導体素子を製造する際に使用する、エッチング液、洗浄液として好適に利用できる。
【0048】
また、上記(8)〜(10)の濾過工程を含むことで、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液に含まれる金属含量をさらに低減することができる。
上記(11)のように、保存時のpHを制御することで、さらに保存安定性を向上できる。
本発明の各実施形態により奏される作用効果は、以下においてさらに具体的に詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
<第1実施形態:
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法>
第1の実施形態に係る
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法は、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を準備する準備工程と
前記水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と、塩素を接触させる反応工程とを含んでなり、
反応工程における気相部の二酸化炭素濃度が100体積ppm以下であり、反応工程における液相部のpHが、10.5以上であることを特徴とする。
以下、各工程を説明する。
【0051】
(水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を準備する準備工程)
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は、水酸化第4級アルキルアンモニウムが水に溶解した水溶液又は非水系溶媒に溶解した溶液の何れでも良い。水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は、水、又は非水系溶媒に水酸化第4級アルキルアンモニウムを溶解させることや市販の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を所望の濃度に希釈することなどで得ることができる。非水系溶媒としては、水酸化第4級アルキルアンモニウムを溶解できる公知の有機溶媒を挙げることができる。具体的には、アルコール、グリコールが挙げられ、特にメタノール、プロピレングリコールが好ましい。これら溶媒の中でも、工業的に入手が容易であって、かつ高純度の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を入手可能であるという点から、該溶媒は水であることが好ましい。
【0052】
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液の濃度は、特に限定されないが、水酸化第4級アルキルアンモニウムの濃度が高濃度になると塩が析出し、固体となる。したがって、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液の濃度は、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜27.5質量%、さらに好ましくは0.1〜25質量%である。
【0053】
準備する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液中には、通常は大気に由来する二酸化炭素が含まれている。二酸化炭素は、炭酸イオン、又は重炭酸イオンとして溶液中に存在している。二酸化炭素濃度は、特に制限されないが、炭酸イオンに換算して、0.001ppm以上500ppm以下(質量基準である)であることが好ましく、0.005ppm以上300ppm以下であることがより好ましく、0.01ppm以上100ppm以下であることがさらに好ましい。前記水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液に含まれる二酸化炭素濃度が0.001ppm以上500ppm以下であることにより、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpH変化を抑制できる。その結果、該次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の保存安定性を向上できる。このような二酸化炭素濃度の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は、市販のものを利用できる。
【0054】
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を準備する溶媒としては、水のみを溶媒とし水溶液を準備してもよいし、有機溶媒を混合して、非水系溶液として準備しても良い。次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の用途、洗浄対象物に対応して、溶媒を適宜変更すればよい。例えば、洗浄対象物をルテニウムとする場合は、溶媒は水のみで十分な洗浄が可能なため、水酸化第4級アルキルアンモニウム水溶液として準備すればよい。
【0055】
本実施形態において、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は、アルキル基の炭素数が1〜10である水酸化第4級アルキルアンモニウムの溶液であることが好ましく、炭素数1〜5である水酸化第4級アルキルアンモニウムの溶液であることがより好ましい。具体的な水酸化第4級アルキルアンモニウムを例示すると、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどである。これらの水酸化第4級アルキルアンモニウムは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、水酸化第4級アルキルアンモニウムに含まれる4つのアルキル基の炭素数は同一であっても良く、異なっていても良い。
【0056】
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとを反応させて次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造する工程において、反応容器内で生じる該次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を含む溶液のpHが低下する。後述する濾過操作の条件や、水酸化第4級アルキルアンモニウムの溶解性を考慮すると、本実施形態においては、原料となる水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液のpHの下限は10.5以上であり、好ましくは11.0以上、さらに好ましくは11.5以上、特に好ましくは12.0を超える。水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液のpHの上限は前記水酸化第4級アルキルアンモニウムの濃度によって決まる。
【0057】
また、本実施形態において使用する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は、金属、具体的には、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量が、それぞれ0.01ppb以上20ppb以下であることが好ましい。なお、当然のことながら、使用する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液に含まれる金属含量は、0.01ppb未満であってもよいが、このような水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を入手すること自体が困難である。
【0058】
そのため、上記金属含量が前記範囲を満足する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を使用することにより、それ自体の入手が容易となり、かつ、該次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造中、および製造後における濾過操作によって該金属不純物の除去・低減が容易となる。濾過操作によって金属不純物が除去・低減できる理由は明らかではないが、ある程度の量の金属不純物が存在することによって、濾過による除去が難しいコロイド状ではなく、ある程度の大きさを有する不純物粒子が生成し、濾過による除去が可能になるためと考えられる。そのため、本実施形態で使用する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は、pHが下がることにより金属不純物の固体物が濾過操作で除去・低減できるため、超高純度の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液ではなくとも好適に使用できる。この効果をより高め、特にアルカリ性でイオンとなっている不純物をより一層除去・低減するためには、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液に含まれる、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の金属含量はそれぞれ、0.01ppb以上5ppb以下となることがより好ましく、0.01ppb以上2ppb以下であることがさらに好ましい。
【0059】
以上のような水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は、市販のものを使用することができる。中でも、電解法、および/又はイオン交換樹脂等と接触させて高純度化した、半導体素子のフォトレジスト現像液として使用されている水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を好適に利用できる。そして、これら市販のものを、超純水のような金属不純物が含まれない溶媒で希釈して使用することもできる。
【0060】
(水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と、塩素を接触させる反応工程)
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素を接触、反応させることにより、水酸化第4級アルキルアンモニウムの水酸化物イオンが、塩素によって生成された次亜塩素酸イオンと置換され、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液が生成する。
【0061】
本実施形態において、使用する塩素ガスは、特に制限されるものではなく、市販のものを採用できる。その中でも、半導体材料のエッチング、半導体材料の原料として使用されるような高純度のガスを使用することができる。
【0062】
高純度ガスの中でも、特に水分量が少ないものが好ましく、具体的には10体積ppm以下(質量基準)の水分量のものを使用することが好ましい。この理由は明らかではないが以下のようなことが考えられる。例えば、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造する際、通常、塩素ガスは配管を経由して輸送される。そのため、水が多く存在すると、塩化水素が発生して配管、および流量計等の金属部材を腐食させ、塩素ガスと共に腐食した金属不純物が系内に導入され易くなると考えられる。そのため、塩素ガスに含まれる水分量は10体積ppm以下のものを使用することが好ましい。当然のことながら、市販の塩素ガスをそのまま使用することもできるし、反応系内に導入される直前に、乾燥材等を接触させて塩素ガスに含まれる水分量を低減させることもできる。塩素ガスに含まれる水分量の下限は、特に制限されるものではないが、工業的に入手可能なものを考えると、0.1体積ppmである。
【0063】
本実施形態において、該塩素ガスに含まれる二酸化炭素の濃度は、特に制限されないが、0.001体積ppm以上80体積ppm以下であることが好ましく、0.005体積ppm以上50体積ppm以下であることがより好ましく、0.01体積ppm以上2体積ppm以下であることがさらに好ましい。塩素ガスに含まれる二酸化炭素濃度が0.001体積ppm以上80体積ppm以下の範囲であれば、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpH変化を抑制できる。その結果、該次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の保存安定性を向上できる。このような二酸化炭素濃度の塩素ガスは、市販のものを利用できる。
【0064】
なお、本実施形態において、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素を接触させる方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。しかし、反応系への二酸化炭素の混入を避けるため、閉鎖系で反応を行うことが好ましい。簡易的には、
図1に示したように、三ツ口フラスコ内に準備した水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液に、塩素を吹き込むことで、十分に反応させることができ、保存安定性に優れた次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造することができる。また、詳細は後述するが、
図2に示す構成の反応装置を用いても良い。
【0065】
本実施形態において、塩素ガスの使用量(使用する塩素ガスの全量)は、特に制限されないが、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、0℃、1atm換算で、10〜31000mLであることが好ましい。この範囲で塩素ガスを使用することにより、反応系内の急激なpH変化を抑制し、濾過操作による金属不純物の除去・低減が容易となる。水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、塩素の使用量が0℃、1atm換算で、31000mLを越える使用量とすることもできるが、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液のpHの低下・変動が大きくなり、さらには未反応の塩素ガスが残留する傾向にある。一方、10mL未満の場合は、十分な次亜塩素酸イオンが生成できない傾向にある。そのため、工業的な製造を考慮すると、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液1リットルに対して、塩素ガスの使用量が0℃、1atm換算で、10〜31000mLの範囲であることが好ましい。ただし、塩素ガスの使用量は、得られる溶液のpH、すなわち、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHにおいて決定することもできる。
【0066】
また、塩素ガスを以下の速度で反応系内に供給することが好ましい。塩素ガスの供給流量(速度)は、急激なpHの低下を生じさせない、および反応に関与しない塩素ガスを低減するという点で、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液、1リットルに対して、0℃、1atm換算で、0.0034Pa・m
3/sec以上16.9Pa・m
3/sec以下が好ましい。この範囲を満足することにより、反応性が十分となり、急激なpHの低下・変動がなく、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造できる。この効果をより発揮するためには、塩素ガスの反応系内への供給量は、0.017Pa・m
3/sec以上5.1Pa・m
3/sec以下がより好ましく、0.034Pa・m
3/sec以上1.7Pa・m
3/sec以下がさらに好ましい。
【0067】
(反応工程における気相部)
反応工程における気相部の二酸化炭素濃度が100体積ppm以下であることが、本実施形態の最大の特徴である。本実施形態において、気相部とは、反応工程において、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と接触する気体で占められた部分のことであり、例えば、
図1に示す製造方法であれば、三ツ口フラスコ11内の気体が占める部分(上部空間)である。
【0068】
本実施形態において、気相部中の二酸化炭素濃度の上限は、100体積ppmである。100体積ppmを越える二酸化炭素濃度の場合は、反応工程時に式(1)、(2)の反応によって炭酸イオン、重炭酸イオンが発生し、それに伴って次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHが低下してしまう。
CO
2 + OH
− → HCO
3− …(1)
HCO
3− + OH
− → CO
32− + H
2O …(2)
上記の化学反応によってpHが低下すると、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の保存中に次亜塩素酸イオンが分解して、保存安定性が悪化すると推測している。
【0069】
なお、本実施形態において、気相部中の二酸化炭素濃度が、0.001〜100体積ppm、好ましくは、0.01〜80体積ppmであれば、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHを十分に制御すること可能となり、保存安定性に優れた次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造することができる。
【0070】
(反応工程のpH)
本実施形態の反応工程における液相部のpHの範囲は、10.5以上である。上限は特に限定はされないが、反応中のpHが過度に高いと、反応終了後に同じpHで長期間保存すると、次亜塩素酸イオンが分解され、有効塩素濃度が低下することがある。したがって、反応工程における液相部のpHは14未満であることが好ましく、13.9未満がより好ましく、11以上13.8未満がさらに好ましい。pHが前記範囲であれば、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の保存中に、次亜塩素酸イオンの分解が抑制され、保存安定性が向上する。なお、反応時のpHが高い場合であっても、後述するように保存時のpHを特定範囲に制御することで、保存安定性は向上する。一方、反応工程のpHが低すぎると式(3)に示す化学反応のため、保存安定性が低下する。
2HClO + ClO
− + 2OH
− →
ClO
3− + 2Cl
− + 2H
2O …(3)
【0071】
(反応工程の反応温度)
本実施形態の反応工程における水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液の反応温度の範囲は、−35℃以上15℃以下が好ましく、−15℃以上15℃以下がより好ましく、0℃以上15℃以下がさらに好ましい。反応温度が前記範囲であれば、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素が十分に反応し、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を高い生成効率で得ることができる。
【0072】
なお、反応温度が−35℃未満の場合、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液の凝固がはじまり、塩素との反応が十分でなくなってしまう。一方、反応温度が15℃を超える場合は、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液中に生成した次亜塩素酸イオンが熱によって分解する。特に反応時のpHが13.8以上では、反応温度が高くなると次亜塩素酸イオンの分解が顕著になる。次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウムの生成効率は、原料として供給した塩素分子のモル数に対する、生成した次亜塩素酸イオンのモル数の割合で評価できる。
【0073】
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、保存安定性に優れた、例えば、製造後10日経過しても、洗浄、除去力を十分保つことができる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造することができる。
【0074】
このことから明らかな通り、本実施形態の製造方法で得られた次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、保存安定性に優れており、半導体素子の製造工程において好適に使用することができる。
【0075】
<第2実施形態:
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法>
第2の実施形態は、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとを反応容器内で接触させる反応工程を含む、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造する方法に関し、
該反応容器内の該水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液が接触する面が、有機高分子材料からなることを特徴としている。以下、順を追って説明する。
【0076】
(水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液および塩素ガス)
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液および塩素ガスとしては、前記第1実施形態で説明したものと同様のものを使用できる。
【0077】
(反応条件 反応容器の内面に使用する有機高分子材料)
本実施形態においては、反応容器内で前記水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と前記塩素ガスとを接触させて、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造する。このとき、先ず、反応容器内に所定量の前記水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を導入しておき、次いで塩素ガスを該水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と接触するように導入すればよい。
【0078】
そして、本実施形態においては、反応容器内の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液が接触する面(以下、単に「反応容器の内面」とする場合もある)を、有機高分子材料で形成する。本発明者等の検討によれば、反応容器として、汎用のホウケイ酸ガラス製(以下、ガラス製)の反応容器を使用すると、原料として使用する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液が、該ガラス製に含まれる金属成分、例えば、ナトリウム、カリウム、およびアルミニウムを溶解する。これは、原料として使用する水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液がアルカリ性を示すことに起因すると考えられる。そのため、反応容器の内面を有機高分子材料で形成することにより、上記金属を含む不純物(金属不純物)の混入を低減できる。
【0079】
本実施形態においては、溶媒に有機溶媒を使用する場合には反応装置を防爆構造とすることが好ましい。そのため、簡易な装置構成とするためには、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液は水を溶媒とすることが好ましい。
【0080】
本実施形態において、使用する有機高分子材料としては、塩化ビニル系樹脂(軟質・硬質塩化ビニル樹脂)、ナイロン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、フッ素系樹脂等を使用できる。中でも、成型のし易さ、耐溶剤性、不純物の溶出が少ないもの等を考慮すると、フッ素系樹脂が挙げられる。
【0081】
該フッ素樹脂としては、フッ素原子を含有する樹脂(ポリマー)であれば特に制限されず、公知のフッ素樹脂を用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、及びパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体等が挙げられる。中でも、反応容器自体の入手のし易さ、生産性等を考慮すると、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を使用することが好ましい。
【0082】
本実施形態において、反応容器の内面を有機高分子材料で形成する方法としては、反応容器全体を有機高分子材料で形成する方法、ガラス製・ステンレス製の反応容器の内面のみを有機高分子材料で覆う方法などが挙げられる。
【0083】
また、有機高分子材料から金属成分が溶出するのを防ぐために洗浄してから使用することもできる。具体的には、高純度硝酸・塩酸のような酸で十分に洗浄し(例えば、1mol/Lの酸濃度の溶液に12時間浸漬させて洗浄し)、超純水等でさらに洗浄することが好ましい。また、安定した反応を行うためには、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとを反応させる前に、前記有機高分子材料で形成された反応容器の内面を前記方法で洗浄することが好ましい。
【0084】
本実施形態おいては、反応容器内の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液が接触する面を有機高分子材料で形成すれば、その他の部分は、ガラスであっても、ステンレス鋼であっても、不動態化処理したステンレス鋼であってもよい。ただし、影響は少ないため、必須ではないが、撹拌棒等も同じ有機高分子材料で形成することが好ましい。
【0085】
本実施形態おいては、反応容器内で前記水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとを接触させればよいが、撹拌中の前記水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液に塩素ガスを導入することが好ましい。その際の反応温度の範囲は、特に制限されるものではないが、前記第1の実施形態と同様とすることが好ましい。
【0086】
また、反応系内に二酸化炭素が存在すると、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHが低下する傾向にある。そのため、安定した製造を考慮すると、反応系内には、前記第1の実施形態と同様に、二酸化炭素が含まれないようにすることが好ましい。具体的には、二酸化炭素量が低減された水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液、塩素ガス等を使用することが好ましい。そして、二酸化炭素量が低減された不活性ガス存在下(例えば、窒素ガス存在下)にて反応を実施することが好ましい。このような条件で反応することで、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpH低下を抑制できるため、保存安定性が向上する。
【0087】
(反応装置)
次に、本実施形態において、好適に使用できる反応装置の一例を用いて説明する。
図2に反応装置31の概略図を示す。
【0088】
反応装置31において、反応容器32の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液33が接する面(反応容器の内面)34を前記有機高分子材料で形成する。そして、この反応装置31には、温度を確認できる温度計(熱電対)35を設けることもできる。そして、反応系内を混合できるように攪拌モーター36、撹拌棒37、撹拌羽38を備えることが好ましい。これら温度計35、撹拌棒37、撹拌羽38も、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液
33と接する部分は、有機高分子材料で形成されることが好ましい。
【0089】
また、該反応装置31には、塩素ガスを供給する塩素ガス供給管39を備え、該供給管39を通じて、反応系内へ塩素ガスを導入するガス導入管40を経由して水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液33と接触するようにすればよい。前記の通り、反応系内は、二酸化炭素が含まれない方が好ましいため、窒素ガス供給管41を設けることもできる。
図2においては、窒素ガス供給管41が途中、塩素ガス供給管39と合流し、ガス導入管40から窒素ガスが導入される構成となっているが、ガス導入管40は、塩素ガス導入管/窒素ガス導入管のそれぞれに分別されていてもよい。そして、このガス導入管40は、水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液33と接するため、前記有機高分子材料から形成されることが好ましい。
【0090】
また、下記に詳述するが、本実施形態においては、塩素ガスと水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液とを接触させて次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造する際、反応系内のpHが低下し、金属成分を含む固体物が析出する場合がある。本実施形態においては、この固体物を濾過により除去・低減するために、濾過装置を備えることもできる。この濾過装置は、反応液移送管42、ポンプ43、濾過フィルター44、反応液返送管45を備える。これら濾過装置における各部材は、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウムを含む反応溶液と接触するため、前記有機高分子材料で形成されることが好ましい。
【0091】
ポンプ43は、ケミカルダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、マグネットポンプ等が利用できる。中でも、金属成分による汚染防止のため、接液部が前記フッ素樹脂からなるポンプを使用することが好ましく、その中でも入手のし易さを考慮すると、マグネットポンプを使用することが好ましい。
【0092】
また、濾過フィルター44は、下記に詳述する材質、形態のものを使用することが好ましい。
図2では、1つの濾過フィルター44を設けた例を示したが、複数の濾過フィルター44をその使用目的(除去を目的とする不純物)に応じて直列、および/又は並列に配置することもできる。
【0093】
以上のような濾過装置を設けることにより、反応途中に濾過操作を行うこともできる。また、塩素ガスの供給を止めて、反応後にポンプ43により、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウムを含む溶液を循環させ、濾過フィルター44により、含まれる金属成分を含む固体物を除去・低減することもできる。なお、
図2には、反応装置と濾過装置とが一体となった構成を示したが、反応後に濾過を行うのであれば、反応装置と濾過装置とは別々に設置してもよい。
【0094】
また、供給された未反応の塩素ガスを逃がすための塩素ガス排出管46、塩素ガストラップ47を設けることもできる。塩素ガストラップ47には、例えば5質量%程度の水酸化ナトリウム水溶液を入れておけばよい。
【0095】
さらに、反応容器32の周囲には、反応温度を制御するための反応浴48を設けることもできる。
【0096】
そして、温度計35、撹拌棒37、ガス導入管40、反応液移送管42、反応液返送管45および塩素ガス排出管46は、ハーフジョイント49等により、反応容器32と接続できる。
【0097】
このような反応装置31を使用することにより、本実施形態の方法を容易に行うことができ、純度の高い次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造できる。
【0098】
<濾過工程>
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液と塩素ガスとが接触して、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を生成してくると、反応系内の溶液のpHが低下する。その際、金属不純物を含む固体物が析出する場合があり、それを除去・低減するために、好ましい実施形態では、濾過する工程を含むことが好ましい。すなわち、第1実施形態および第2実施形態の反応の途中、または所定の濃度まで塩素ガスを供給して得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を濾過することが好ましい。なお、濾過工程は、後述する保存工程あるいは希釈工程の後に行っても良い。
【0099】
濾過工程においては、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHに応じて、濾取される金属成分が異なることがある。
具体的には、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHが13.5以下とした場合、好ましくは該溶液のpHが12.5を超え13.5以下の場合には、マグネシウム、鉄、カドミウム等の水酸化物、ニッケル、銀の酸化物が固体化するため、濾過操作を行うことにより、これら不純物も除去・低減できる。
【0100】
また、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHが12.5以下とした場合、好ましくは該溶液のpHが9.0以上12.5以下の場合には、前記不純物に加えて、銅、鉛の酸化物が固体化するため、濾過操作を行うことにより、これら不純物も除去・低減できる。なお、溶液のpHは温度に依存し変動することがある。上記のpHは25℃での値を目安とする。実際に濾過工程を実施する際の液温は25℃に限定はされないが、好ましくは20〜28℃、さらに好ましくは23℃〜25℃で行う。
【0101】
このような金属不純物の固体物は、原料とする水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液、および塩素ガスの純度を高めても生成する。特に、反応容器の内面を有機高分子材料で形成した場合にも、該固体物が生成される場合がある。この原因は明らかではないが、塩素ガスという腐食性の高いガスを使用しているため、反応装置内のどこからか金属不純物が反応系内に含まれるためと推定している。
【0102】
濾過操作は、除去・低減を目的とする金属類が固体化されるpHで実施すればよい。そのため、1回のみの実施であってもよいし、各pHで複数回実施することもできる。その際、各pHで孔径の異なる濾過フィルターを複数準備し、孔径の大きな濾過フィルターから順に濾過することでより濾過効率が向上する。具体的には1段階目に粗大粒子を、2段階目で微粒子を除去することで実施可能である。なお、金属成分を含む固体物、例えば、単なる金属の不純物、金属酸化物、金属水酸化物、および/又はコロイド状物の内、1μm以上100μm以下の粒子のことを、以下、単に「粗大粒子」とする場合がある。一方、0.01μm以上1μm未満の粒子のことを、以下、単に「微粒子」ということがある。なお、固体物の粒径はレーザー回折による円相当径をいう。
【0103】
前記濾過操作は、特に制限されるものではなく、公知の濾過装置、濾過フィルターを使用して実施することができる。ただし、不要な金属成分を増加させないためには、濾過装置において、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液が接触する可能性のある面は、有機高分子材料で形成されることが好ましい。この有機高分子は、前記に例示したものと同じものが使用できる。
【0104】
具体的な濾過フィルターとして、有機高分子材料あるいは無機材料からなる濾過フィルターを使用することが好ましい。例えば、ポリオレフィン製(ポリプロピレン製、ポリエチレン製、超高分子量ポリエチレン製)、ポリスルフォン製、酢酸セルロース製、ポリイミド製、ポリスチレン、前記フッ素系樹脂、および/又は石英繊維製からなる濾過フィルターを挙げることができる。また、濾過フィルターは正に帯電している膜と負に帯電している膜とを組み合わせて使用することが好ましい。この理由は、多くの金属酸化物や金属水酸化物がアルカリ性雰囲気下で負に帯電しており、静電吸着によって正に帯電した濾過フィルターにより効果的に金属成分を除去することが可能となるためである。また一部の金属成分はカチオンの状態で存在していて正に帯電している。このため、負に帯電している濾過フィルターには静電吸着によって効果的にイオン化した金属成分を除去することが可能となる。
【0105】
濾過フィルターの孔径は、特に制限されるものではないが、粗大粒子の除去には孔径が1μm以上の濾過フィルター、あるいは精密濾過フィルターを使用することができる。一方、微粒子の除去には孔径が0.01μm以上1μm未満の精密濾過フィルター、限外濾過フィルター、あるいはナノフィルトレーション膜を使用することができる。
【0106】
以上のような濾過フィルターは、市販のものを使用できる。具体的には、日本インテグリス社製のポリテトラフルオロエチレン製「フロロガードATXフィルター(孔径0.05μm、)」、「クイックチェンジATEフィルター(孔径0.03μm)」、「トレントATEフィルター(孔径0.02μm)」
、「フロロラインP−1500(孔径0.05μm、0.1μm)」を使用できる。
【0107】
以上の濾過操作は、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHを、その用途に適した範囲に調整する前に実施することができる。この場合、一旦濾過操作を行った後、再度、塩素ガスと混合して目的とするpHの次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液とすることができる。また、水、塩化水素等の酸、および/又は水酸化第4級テトラメチルアンモニウム水溶液等のアルカリを混合して目的とするpHの次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液とすることもできる。一方、製造した次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHが洗浄液として適したpHである場合には、該溶液を濾過して、そのまま半導体素子を製造する際に使用する洗浄液とすればよい。
【0108】
このような濾過操作を行うことにより、特に、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛等の金属成分を低減することができる。
【0109】
<保存工程>
第1および第2の実施形態における反応工程後、あるいは上記濾過工程の後の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、そのまま洗浄液等の所定の用途に使用できるが、一般には、保存工程(貯蔵、輸送を含む)の後に、使用される。次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は単体では保存安定性が悪く、安定化剤の添加が必要とされていた。しかし、安定化剤は有機物残渣の原因となることがあり、改善が求められていたが、以下に説明する保存工程を経ることで、保存安定性がより向上した次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の供給が可能になる。
【0110】
本発明の好ましい実施形態に係る次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の製造方法は、前記反応工程後に、反応液を保存する保存工程を含み、該保存工程において、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の25℃におけるpHが12.0以上、14.0未満となるよう調整する。なお、反応工程後に濾過工程を行い、その後に保存工程を行っても良い。
【0111】
保存対象である次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の濃度は、特に制限されないが、工業的な製造を考慮すると、所定のpHにおける次亜塩素酸イオンが0.001〜20質量%、第4級アルキルアンモニウムイオンが0.001〜50質量%、含まれている次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液であることが好ましい。なお、「所定のpH」とは、保存工程におけるpHとして選択された12.0以上、14.0未満の何れかのpHをいう。
【0112】
その他、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液には、その用途に応じて所望により各種の添加剤を配合してもよい。例えば、添加剤として、金属キレート化剤、錯体化剤、金属溶解促進剤、金属腐食阻害剤、界面活性剤、酸、アルカリなどを加えることができる。これらの添加剤を加えることにより半導体ウエハ処理時に金属溶解の促進または抑制、表面ラフネスの改善、処理速度の向上、パーティクル付着の低減などが期待できるため、これら添加剤を含む洗浄液は半導体ウエハ処理に好適に利用できる。
【0113】
好ましい実施形態に係る次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の保存方法は、限定されたpHの範囲で次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を保存する。保存方法について、以下に詳細に記載する。
【0114】
ここで「保存」とは、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液が25℃におけるpHを12以上14未満の状態で保存を開始してから、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の濃度、及び/またはpHを調整するまでを意味する。なお、pHを調整した後の溶液のpHが12以上14未満である場合、該溶液をさらに保存すれば、それはやはり本発明の保存に該当する。次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHが最初から12以上14未満であればそのまま保存すれば良く、pHが12未満又は14以上である場合にはpHを12以上14未満の範囲に調整した後保存すれば良い。
【0115】
なお、溶液のpHは温度に依存し変動することがある。上記のpHは25℃での値を目安とする。実際に溶液を保存する際の液温は25℃に限定はされない。したがって、保存時の条件は、特に限定されることはないが、一般的な保存条件、すなわち、−25〜50℃で公知の容器、キャニスター缶や樹脂製の保存容器に保存するのが好ましく、−20〜40℃で、遮光できる保存容器、キャニスター缶等の輸送容器や樹脂製の保存容器に不活性ガスを充填して、暗所で保存することが、さらに好ましい。保存する温度が前記範囲を超える場合、長期間の保存の間に次亜塩素酸イオンが熱分解によって酸素分子を形成して容器が膨張し、破損することもある。
【0116】
好ましい実施形態では、25℃におけるpHが12以上14未満の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液として保存する。このpHの範囲内であれば、次亜塩素酸イオン濃度が低下せず、長期間の保存が可能である。pHが12未満の場合は、次亜塩素酸イオンの不均化反応が進行し、次亜塩素酸イオンが分解され、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の酸化力が低下する。一方、pHが14以上の場合は、カチオンである有機イオンが分解すると推定される。その結果、有機イオンの嵩高さによって阻害されていた次亜塩素酸イオンの不均化反応が再び進行し、次亜塩素酸イオンが分解すると推定される。25℃におけるpHが12以上13.9未満の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液として保存することが好ましく、25℃におけるpHが12以上13.8未満で保存することがより好ましい。
【0117】
前記の保存方法により、保存安定性が向上する理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推定している。次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液中では、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウムはその一部が次亜塩素酸イオンと有機イオンに解離しているが、大部分は次亜塩素酸イオンと有機イオンとがイオン結合しており、有機イオンの立体的な嵩高さが、次亜塩素酸イオンの不均化反応を抑制していると推測している。このため、有機イオンの立体的な嵩高さが大きくなるほど、不均化反応を抑制し、保存安定性が向上すると考えられる。有機イオンは嵩高い第4級アルキルアンモニウムイオン、例えば、テトラメチルアンモニウムイオンであれば、十分に不均化反応を抑制できる。
【0118】
本発明の保存方法によれば、保存期間が30日でも、好ましくは60日でも、さらに好ましくは90日でも、保存中の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の酸化力は、ほとんど変化しない。したがって、保存後、使用する条件に応じて、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を希釈するのみで、様々な用途に使用することができる。保存期間が長期間になればなるほど、生産性向上の効果を期待することができる。
【0119】
(希釈工程)
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、その用途に応じて適宜に希釈して用いることがある。希釈工程では、上記保存工程を経て、pH12以上で次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を保存した後、該次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液をpHが12未満の溶液で希釈し、pHを8.0以上12.0未満に調整する。
【0120】
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の希釈方法は、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液に含まれる水素イオン濃度を相対的に上昇させることができればよく、水で次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を希釈してもよいし、酸を含む溶液で希釈してもよいし、保存時の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHよりも低いpHの溶液で希釈してもよい。例えば、本発明の保存方法で保存された次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液より低いpHの溶液の例として、アルカリ性の溶液、例えば、pH12未満の水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液を挙げることができる。
【0121】
また、前記次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を希釈するために加えられる溶液に、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウムが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。例えば、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウムを含む溶液で希釈する場合は、pHを調整するだけでなく、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液濃度を任意に調整することができる。
【0122】
なお、本発明において、前記次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を希釈するために加えられる溶液は、pHが0より大きく7以下である溶液で希釈することが好ましい。酸性溶液を使用することで、pH調整にともなう次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウムの濃度低下を小さくできる。pHが0より大きく7以下である溶液の具体例として、例えば、無機酸であれば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭素酸、塩素酸、過塩素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、炭酸等を挙げることができ、有機酸であれば、ギ酸、酢酸、氷酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、乳酸、安息香酸等を挙げることができる。
【0123】
その他、希釈するために使用する溶液の不純物濃度が高い場合、得られた希釈液の用途が限定されることから、希釈するために使用する溶液の不純物が少ない方が好ましい。例えば、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を半導体ウエハの処理液として使用する場合、高純度であることが求められるため、高純度な次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液に対して、工業的に容易に高純度化可能な塩酸、硫酸などで、希釈することが好ましい。
【0124】
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の希釈方法としては、特に制限されず、公知の方法で希釈すればよい。例えば、容器の2つの供給口から、それぞれ次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液と希釈するために使用する溶液とを供給し、プロペラや回転子を用いて撹拌を行うことで混合する方法を用いてもよいし、ポンプを用いて液を循環することで混合する方法などを採用してもよい。また、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液が保存された容器に、希釈するために使用する溶液を供給して希釈してもよい。
【0125】
別の希釈方法としては、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液含有組成物を使用する場所において、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液と、希釈するために使用する溶液とを混合することで、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を希釈することもできる。例えば、2つのノズルから、それぞれ次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液と希釈するために使用する溶液をユースポイントに供給すれば、ユースポイントで希釈を行うことができる。この方法は、半導体ウエハを処理する時に特に有効である。
【0126】
その他、希釈液を半導体洗浄用に使用する場合には、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液に無機酸または有機酸を加えて希釈する方法を採用することができる。次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を供給する配管と無機酸または有機酸を供給する配管とを途中で合流させて混合することで希釈を行い、得られた希釈液を被洗浄面である半導体ウエハに供給する方法がある。この混合は、圧力を付した状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合する方法; 配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法; 配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など、公知の方法を採用することができる。
【0127】
以上の通り、希釈工程を採用することにより、使用時のpHで次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を保存した場合に比べ、酸化力を安定に保持した希釈液を利用することが可能となる。一般に次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を洗浄液等として使用する場合には、pHを8〜12程度に希釈するが、このpHで次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を保存すると、次亜塩素酸イオン濃度が低下し、洗浄性は低下する。しかし、上記保存工程を経て保存した後に、上記の希釈工程を経ることで、次亜塩素酸イオン濃度の高い希釈液(洗浄液)が得られる。
【0128】
(半導体ウエハの処理方法)
本発明の処理方法は、半導体ウエハにダメージを与えることなく、半導体ウエハに存在する種々の金属およびその化合物をエッチング、洗浄、除去できる処理方法である。ただし、処理の対象物がこれに限定される訳ではなく、当然のことながら、表面に金属類を有さない半導体ウエハの洗浄にも利用できるし、金属のウェットエッチングなどにも使用することができる。
【0129】
本発明の処理方法の対象は、銅、タングステン、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、アルミニウム、シリコン、酸化シリコン、及びこれらの化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物を有する半導体ウエハであることが好ましい。本発明は、次亜塩素酸イオンの強力な酸化作用を有効に発揮することができるため、前記の金属の中でも容易に酸化されない貴金属類の処理に好適に使用することができる。したがって、本発明の処理方法は、貴金属類、特に、ルテニウムを洗浄、除去する場合に、好適に使用することができる。例えば、ルテニウムを洗浄、除去する場合であれば、公知の洗浄方法を採用すればよい。
【0130】
以上のように、本発明の保存方法によれば、製造後30日経過しても、洗浄、除去力を十分に保つことができる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を提供することができる。このように、保存安定性に優れた次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を提供することにより、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の運搬や保存に関わるコストが低減でき、工業的に非常に重要である。
【0131】
<次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液>
第2実施形態の製造方法、さらには濾過工程を経ることで、金属成分の含有量が低減された次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を製造できる。なお、当然のことながら、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の溶媒は、原料である水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液の溶媒と同じであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で他の溶媒を加えることもできる。ただし、操作性、取り扱い易さ、汎用性等を考慮すると、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の溶媒は、水であることが好ましい。
【0132】
第2実施形態の製造方法、さらには濾過工程を経ることで、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、金属成分、具体的には、ナトリウム、カリウム、およびアルミニウムの含有量をそれぞれ1ppb(質量基準)未満とすることができる。これら金属成分の含有量は、実施例に示す誘導結合プラズマ質量分析法によって測定した値である。
【0133】
さらには、前記で説明した濾過操作等を行うことにより、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量をそれぞれ1ppb(質量基準)未満とすることができる。これら金属成分の含有量も、実施例に示す誘導結合プラズマ質量分析法によって測定した値である。
【0134】
そのため、最も好ましくは、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量がそれぞれ1ppb未満であることが好ましい。次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液中における金属成分の形態は特に限定はされず、金属原子あるいはイオンとして含まれていても良く、また酸化物や水酸化物といった微粒子、錯体などの形態であっても良い。
【0135】
また、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液のpHは、特に制限されるものではなく、使用する用途に応じて、適宜決定すればよい。例えば、pHが12.5を超えるものである場合には、フォトレジスト除去剤(現像液)として使用することもできるし、半導体素子を形成する際の貴金属層の平坦化に使用することもできる。
【0136】
中でも、pHを9.0以上12.5以下とすることにより、得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液は、貴金属類のエッチング処理に使用することもできる。この場合、高いpHの水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液に塩素ガスを供給しながら、pHを9.0以上12.5以下とすることができるため、製造も容易である。加えて、製造中、あるいは製造後に、濾過操作を行うことにより、より金属成分の含有量を低減することも可能となる。
【0137】
また、本発明で得られる次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液には、一般的な安定化剤であるベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、オキザニリド類、その他、サリシレート類等の公知の添加剤を配合することもできる。該安定化剤を添加することによって保存安定性が良好となる。
【実施例】
【0138】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。先ず、使用した測定装置、及び各成分の製造方法等について説明する。
【0139】
<pH測定方法>
水酸化第4級アルキルアンモニウム溶液、および次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液30mLを、卓上型pHメーター(LAQUA F―73、堀場製作所社製)を用いてpH測定した。pH測定は、23℃で安定した後に、実施した。
【0140】
<有効塩素濃度および次亜塩素酸イオン濃度の算出方法>
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液を、100mL三角フラスコに処理液0.5mLとヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬工業社製、試薬特級)2g、10質量%酢酸8mL、超純水10mLを加え、固形物が溶解するまで撹拌し、褐色溶液を得る。
【0141】
調整した褐色溶液は、0.02Mチオ硫酸ナトリウム溶液(富士フイルム和光純薬工業社製、容量分析用)を用いて溶液の色が褐色から極薄い黄色になるまで酸化還元滴定し、次いで、でんぷん溶液を加え薄紫色の溶液を得る。
【0142】
この溶液に、更に0.02Mチオ硫酸ナトリウム溶液を続けて加え、無色透明になった点を終点として有効塩素濃度を算出した。また、得られた有効塩素濃度から次亜塩素酸イオン濃度を算出した。例えば、有効塩素濃度1質量%であれば次亜塩素酸イオン濃度は0.73質量%となる。
【0143】
<気相部の二酸化炭素濃度の算出方法>
反応溶液内の気相部の二酸化炭素濃度は、CO
2モニター(CUSTOM社製、CO
2−M1)を用いて測定した。
【0144】
<反応効率>
供給した塩素分子のモル数に対する生成した次亜塩素酸イオンのモル数の割合(%)から反応効率を求めた。加えた塩素が全量反応した場合(分解が起こっていない)は、反応効率は100%となる。反応中に次亜塩素酸イオンが分解した場合は反応効率が低下する。
【0145】
<保存安定性の評価方法1>
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液をグローブバッグ内に移し、グローブバッグ内の二酸化炭素濃度が1ppm以下になった後、PFA製容器に移し替え、密閉した。次に、23℃の遮光された環境で10日間保管後、PFA製容器内の次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液の次亜塩素酸イオン濃度を測定した。次亜塩素酸イオン濃度比(10日後濃度/初期濃度)が60%以上100%以下を良好、60%未満を不良とした。
【0146】
<保存安定性の評価方法2>
次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液をグローブバッグ内に移し、グローブバッグ内の二酸化炭素濃度が1ppm以下になってからPFA製容器に移し替えた。次に、二酸化炭素濃度が1ppm以下であり、23℃の遮光された環境で30日間保存後、PFA製容器内の次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液中の次亜塩素酸イオン濃度を測定した。次亜塩素酸残存率(30日経過後の次亜塩素酸イオン濃度/初期次亜塩素酸イオン濃度)が50%以上を良好とし、50%未満では、実用上使用が困難となる問題を発生させることがあるため、不良と評価した。
【0147】
<ルテニウムのエッチング速度の算出方法>
シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いてルテニウムを200Å(±10%)成膜した。四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算した。具体的には、得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を30ml、ビーカーに準備し、次いで、pHが12超である次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液については無機酸、有機酸で所望のpHとなるように希釈し、測定溶液を得た。この測定溶液に10×20mmにカットしたルテニウム付きウエハの各サンプル片を、1分間浸漬し、処理前後の膜厚変化量を浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出し、ルテニウムエッチング速度として評価した。エッチング速度はpHが大きい程遅くなることが分かっている。したがって各pHにおいて実用上使用が可能な範囲を次のように決めた。pH9.1のときはルテニウムエッチング速度300Å/分以上を良好とし、300Å/分未満を不良と評価した。pH9.5のときは100Å/分以上を良好とし、100Å/分未満を不良と評価した。pH10.5のときは20Å/分以上を良好とし、20Å/分未満を不良と評価した。pH11.0のときは5Å/分以上を良好とし、5Å/分未満を不良と評価した。
【0148】
<次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液中の金属濃度測定方法>
次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液中の金属濃度測定には、高分解能誘導結合プラズマ質量分析を用いた。
【0149】
25mLのポリフルオロアルキルエーテル(PFA)製メスフラスコ(AsOne製、PFAメスフラスコ)に、超純水と1.25mLの高純度硝酸(関東化学社製、Ultrapure−100硝酸)を加えた。次いで、ピペット(AsOne社製、ピペットマンP1000)とフッ素樹脂製ピペットチップ(AsOne製、フッ素樹脂ピペットチップ)を用いて次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液0.25mLを採取し、PFAメスフラスコに加えて撹拌した。次いで、超純水でメスアップし、100倍希釈した測定
試料を準備した。さらに、高分解能誘導結合プラズマ質量分析装置(ThermoFisher Scientific社製、Element2)を使用し、検量線法で金属量を定量した。なお、マトリックスによる感度増減を確認するため、測定溶液に2ppbとなるよう不純物を添加したものも測定した。なお、測定条件は、RF出力が1500W、アルゴンガス流量はプラズマガスが15L/分、補助ガスが1.0L/分、ネブライザーガスが0.7L/分であった。
【0150】
<実施例1>
<次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液調整>
2Lのガラス製三ツ口フラスコ(コスモスビード社製)にCO
2含有量が2ppmである25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液253g、イオン交換水747gを混合して、CO
2含有量が0.5ppmであり、6.3質量%のTMAH水溶液を得た。このときのpHは13.8であった。なお、実験室内のCO
2濃度は350ppmであった。
【0151】
次いで、
図1に示すように、三ツ口フラスコ11の内に回転子14(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、一つの開口部に温度計保護管12(コスモスビード社製、底封じ型)と熱電対13を投入し、もう一つの開口部に塩素ガスボンベ、および窒素ガスボンベに接続され、任意で塩素ガス/窒素ガスの切換えが可能な状態にしたPFA製チューブ15(フロン工業株式会社製、F-8011−02)の先端を該溶液底部に浸漬させ、残りの一つの開口部は5質量%の水酸化ナトリウム水溶液17で満たしたガス洗浄瓶16(AsOne社製、ガス洗浄瓶、型番2450/500)に接続した。次に、二酸化炭素濃度が1ppm未満の窒素ガスをPFA製チューブから、0.289Pa・m
3/秒(0℃換算時)で20分間流すことで気相部の二酸化炭素を追いだした。この時、フラスコ内の気相部の二酸化炭素濃度は、1ppm以下であった。
【0152】
その後、マグネットスターラー(AsOne社製、C−MAG HS10)を三ツ口フラスコ下部に設置して300rpmで回転、撹拌し、三ツ口フラスコ外周部を氷水10で冷却しながら、塩素ガス(フジオックス社製、仕様純度99.4%)を0.064Pa・m
3/秒(0℃換算時)で180分間、供給し、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を得た。この時、反応中の液温は11℃であった。
【0153】
得られた溶液はガラス製三ツ口フラスコに入った状態で大気と接触しないようにグローブバッグ内に移し、グローブバッグ内の二酸化炭素濃度が1ppm以下になった後、1LのPFA製容器に移し替えた。
【0154】
<評価>
二酸化炭素濃度が1ppm以下となっているグローブバッグ中で、得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液薬液30mLをフッ素樹脂容器に注ぎ、pHと有効塩素濃度を評価し、pHは13.0、次亜塩素酸イオン濃度は1.59質量%となっていることを確認した。
【0155】
次いで、二酸化炭素濃度1ppm以下、保管温度23℃の環境下で10日間保存した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液薬液30mLをフッ素樹脂容器に注ぎ、pHと有効塩素濃度を評価した。この時、pHは13.0、次亜塩素酸イオン濃度は1.59質量%となっており、pHと有効塩素濃度が大きく変化していないことを確認した。
【0156】
<実施例2〜7>
実施例2〜7は、(A)TMAH溶液の質量濃度と(B)TMAH溶液のpH、(C)塩素の供給量と(D)供給速度、(E)反応温度、(F)気相中の二酸化炭素濃度が、表1に示した条件となるように調整した他は、実施例1と同様の方法で次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を調製し、評価を行った。なお、実施例7では反応中の冷却は行わず、反応温度は25℃から35℃に上昇した。
【0157】
<比較例1>
2Lのガラスビーカー(AsOne社製)にCO
2含有量が2ppmである25質量%のTMAH水溶液233g、イオン交換水767gを混合して5.8質量%のTMAH水溶液を得た。このときのpHは13.8であった。次いで、
図3に示すようにガラスビーカー21内に回転子24(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、次いで温度計保護管22(コスモスビード社製、底封じ型)と熱電対23を投入し、塩素ガスボンベに接続されたPFAチューブ25(フロン工業株式会社製、F−8011−02)の先端を該溶液底部に浸漬させた。この時、気相部の二酸化炭素濃度は、350ppmであった。
【0158】
その後、マグネットスターラー(AsOne社製、C−MAG HS10)をガラスビーカー下部に設置して300rpmで回転させながら、ガラスビーカー外周部を氷水28で冷却しながら塩素ガス(フジオックス社製、仕様純度99.4%)を0.064Pa・m
3/秒(0℃換算時)で180分間、供給し、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を得た。この時、反応中の液温は11℃であった。
【0159】
得られた溶液は大気と接触しないようにグローブバッグ内に移し、グローブバッグ内の二酸化炭素濃度が1ppm以下になった後、1LのPFA製容器に移し替えた。
【0160】
<比較例2〜3>
比較例2〜3は、(A)水酸化テトラメチルアンモニウム溶液の質量濃度と(B)水酸化テトラメチルアンモニウム溶液のpH、(C)塩素の供給量と(D)供給速度、(E)反応温度、(F)気相中の二酸化炭素濃度が、表1に示した条件となるように調整した他は、比較例1と同様の方法で次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を調製し、評価を行った。
【0161】
評価結果を表2に示した。なお、表中、TMAHは水酸化テトラメチルアンモニウム溶
液を示す。
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
<実施例11>
<次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液調整>
図2に示すように、容量2Lのポリテトラフルオロエチレン製の反応容器(AsOne社製、反応用円筒型容器C型2000cc)にポリテトラフルオロエチレン製ハーフジョイント49(AsOne社製、ハーフメスジョイントI型6φ)を複数接続できるように加工した反応容器32を準備し、該反応容器32に25質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液253g、超純水747gを混合して6.3質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を得た。この水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に含まれるナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量はそれぞれ1ppb未満であることを確認した。また、二酸化炭素濃度は5ppm(質量基準)であった。また、このときのpH(23℃)は13.8であった。
【0165】
該反応容器32の中心に撹拌棒37(AsOne社製、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製 撹拌棒・攪拌羽付き、全長450mm×径8mm)を設置し、上部を撹拌モーター36(新東科学社製、スリーワンモーターBLh600)で固定した。反応中の温度をモニタリングできるように、反応容器32に温度計35をセットした。
【0166】
塩素ガス(塩素ガス導入管39)/窒素ガス(窒素ガス供給管41)の切換えが可能な状態にしたテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体製のガス導入管40(フロン工業社製、PFAチューブ)の先端を該溶液底部(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液33)に浸漬させた。
【0167】
また、一つのハーフジョイントは、塩素ガス排出管46を介して、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で満たした塩素ガストラップ47(AsOne社製、ガス洗浄瓶)に接続した。
【0168】
また、一つのハーフジョイントとマグネットポンプ43(AsOne社製、テフロン(登録商標)で表面を被覆したマグネットポンプ)の入口側を反応液移送管42である、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体製チューブ(フロン工業社製、PFAチューブ)で接続し、次いで出口側を濾過フィルター44(日本インテグリス社製、フロロガードAT、孔径0.1μm)、および反応液移送管42と同じ材質からなる反応液返送管45で接続した。
【0169】
次に、二酸化炭素濃度が1ppm未満の窒素ガスを、窒素ガス供給管41、ガス供給管40(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体製チューブ(フロン工業社製、PFAチューブ))を介して0.29Pa・m
3/secで20分間流すことにより、反応容器32内における気相部の二酸化炭素を追いだした。
【0170】
その後、前記撹拌モーター36を300rpmで回転し、反応容器32の外周部を反応浴48(氷水)で冷却しながら、塩素ガス(市販品;仕様純度99.999% 水分量0.5ppm(質量基準)以下、二酸化炭素1ppm(質量基準)以下)を0.064Pa・m
3/secで180分間、供給して次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を得た(塩素ガスの全使用量6810mL。)。この時、反応中の液温は11℃であった。また、塩素ガスを供給しながら反応を行う際に、ポンプ43を起動し、濾過操作を行いながら次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造した(反応溶液のpH(23℃)が13.5以下となった場合においても、濾過操作を実施した。)。
【0171】
得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液のpH、次亜塩素酸イオン濃度を評価し、pHは13.0、次亜塩素酸イオン濃度は1.59質量%であった。次いで、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液中の金属濃度を<次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液中の金属原子濃度測定方法>に従って測定したところ、金属の含有量は、いずれも1ppb未満であった。結果を表4に示す。
【0172】
<実施例12、13>
実施例12、13は、表3に示す条件、すなわち、
(A)TMAH水溶液の質量濃度(ただし、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量が1ppb未満であり、二酸化炭素は2ppmのものを使用した。)が、表3に示した条件となるように調整した他は実施例11と同様にして、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造し、その金属含有量を調べた。
【0173】
ただし、実施例12においては、全塩素ガスを供給した後、塩素ガスの供給を止め
てからポンプ43を起動して濾過操作を行った。実施例13においては、該濾過操作を行わなかった。結果を表4に示した。
【0174】
<比較例11>
反応容器32として、1000mLのガラス製反応容器(柴田科学社製、1Lセパラブル反応容器)に摺合わせサイズ19/38mmのガラス製側管を加工した物を使用した以外は、実施例11と同じ条件で次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造した。比較例11においては、製造中に濾過を実施した。条件を表3に示し、結果を表4に示した。
【0175】
<比較例12>
反応容器32として、1000mLのガラス製三ツ口フラスコ(AsOne社製、三口ガラスフラスコ)を使用し、表3に示した条件で次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造した。その他の条件は、実施例12に従った。また、実施例12と同じ条件で濾過を行った。結果を表4に示した。
【0176】
<比較例13>
反応容器32として、1000mLのガラス製三ツ口フラスコ(AsOne社製、三口ガラスフラスコ)を使用した以外は、表3に示した条件で次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液を製造した。その他の条件は、実施例13に従った。結果を表4に示した。
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【0179】
<実施例14>
実施例11で得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液100mLに、35.0質量%の高純度塩酸を0.8mL加え、pH(23℃)を9.6に調整した(PFA製の容器内で調製した。)。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、カドミウム、および鉛の含有量は、それぞれ1ppb未満であることを確認した。
【0180】
<ルテニウムのエッチング性能評価>
シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成し、その上にスパッタ法を用いてルテニウムを1000Å(±10%)成膜した。四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算した。
【0181】
実施例14で得られたpH9.6の次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液30mLをビーカー(PFA製のビーカー)に入れ、洗浄液中に10×20mmとした各サンプル片を、1分間浸漬し、処理前後の膜厚変化量を浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出したところ、エッチング速度は100Å/分以上であった。
【0182】
<実施例21>
実施例1と同様にして、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を得た。得られた水溶液はガラス製三ツ口フラスコに入った状態で大気と接触しないようにグローブバッグ内に移し、グローブバッグ内の二酸化炭素濃度が1ppm以下になってから1LのPFA容器に移し替えた。
【0183】
二酸化炭素濃度が1ppm以下となっているグローブバッグ中で、得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液薬液30mLをPFA製容器に注ぎ、上述の「pH測定方法」を用いて製造直後のpHと、上述の「有効塩素濃度および次亜塩素酸イオン濃度の算出方法」を用いて製造直後の有効塩素濃度を測定した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液のpHは13.0、有効塩素濃度は2.18質量%であった。
【0184】
<保存安定性の評価方法2>
次いで二酸化炭素濃度1ppm以下、保存温度23℃の環境下で、pH13.0で30日間保存した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液中の、pHと有効塩素濃度を評価したところ、pHは13.0、有効塩素濃度は2.18質量%となっており、経時変化していないことを確認した。
【0185】
35質量%の半導体用高純度塩酸(関東化学社製、高純度試薬ウルトラピュアHCl)8.8mLを、製造直後、及び保存30日間経過後の次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液に添加し、撹拌して、それぞれpH9.5となるように希釈した。
【0186】
得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液の希釈後のpHを測定したところ、pH9.5であることが確認できた。また、有効塩素濃度を測定したところ、2.18質量%であり、希釈前後で変化していないことが確認できた。
【0187】
pH9.5になるよう希釈した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液について、前述したルテニウムのエッチング速度の算出方法を用いてエッチング速度を評価したところ、100Å/分以上であることが分かった。
【0188】
<実施例22〜27、比較例21、参考例>
実施例22〜27、比較例21、参考例は、(A)水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液の質量濃度、(B)TMAH溶液のpH、(F)希釈する溶液、(G)希釈する溶液の濃度、(H)希釈する溶液の添加量が表5に示した条件となるように変更した以外は、実施例21と同様の方法で調整し、評価を行った。ただし、保存30日経過後の次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液のpHが10以下であった場合は、該次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム水溶液の希釈を行わずに、ルテニウムのエッチング速度の算出方法を用いてエッチング速度を評価した。得られた結果を表6に示した。
【0189】
<実施例28>
参考例と同様にして、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液を得た。得られた水溶液はガラス製三ツ口フラスコに入った状態で大気と接触しないようにグローブバッグ内に移し、グローブバッグ内の二酸化炭素濃度が1ppm以下になってから1LのPFA容器に移し替えた。
【0190】
グローブバッグ内で35質量%の半導体用高純度塩酸100mLを、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液1000gに添加し、撹拌した。上述の「pH測定方法」を用いてpHと、上述の「有効塩素濃度および次亜塩素酸イオン濃度の算出方法」を用いて有効塩素濃度を測定した。得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液のpHは13.0、有効塩素濃度は1.98質量%であった。
【0191】
次いで二酸化炭素濃度1ppm以下、保存温度23℃の環境下で、pH13.0で30日間保存した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液中の、pHと有効塩素濃度を評価したところ、pHは13.0、有効塩素濃度は1.98質量%となっており、経時変化していないことを確認した。
【0192】
35質量%の半導体用高純度塩酸8.8mLを、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液に添加し、撹拌した。
【0193】
得られた次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液の希釈後のpHを測定したところ、pH9.5であることが確認できた。また、有効塩素濃度を測定したところ、1.98質量%であり、希釈前後で変化していないことが確認できた。
【0194】
pH9.5になるよう希釈した次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム溶液について、前述したルテニウムのエッチング速度の算出方法を用いてエッチング速度を評価したところ、100Å/分以上であることが分かった。
【0195】
【表5】
【0196】
【表6】