(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における導通接点針の構成を示す構成図である。
図2は、実施の形態1における導通接点針の先端側から見た図である。
図1において、実施の形態1における導通接点針18は、針本体13と、針本体13の先端部に形成された複数の凸部11とを備えている。導通接点針18は、
図1及び
図2に示すように、針本体13が円柱状或いは四角柱状等で形成され、先端側(
図1では下側)が先細りし、先細り部分のさらに先端部分が丸みを帯びた曲面、例えば、球状(SR形状)に形成される。先端側を先細りさせることで、押圧した際に膜中に侵入し易くできる。そして、かかる例えば球状に形成された先端部分の領域20が先端側から掘り込まれ、
図1及び
図2に示すように、四角柱状で形成された複数の凸部11(或いは凸部11間に形成される複数の凹部)を形成する。先端部分が丸みを帯びた曲面に複数の凸部11を形成することで、少なくとも曲面の先端に形成される凸部11を確実に導電膜に接触させることができる。領域20は、ホルム(holm)の式における見かけの接触面よりも大きな領域に設定する。これにより、見かけの接触面内には確実にホルム(holm)の式における真実接触面を形成する複数の凸部11が配置される。
【0015】
導通接点針18は、導電性材料で構成される。例えば、導電性ダイヤモンド、或いは導電性ジルコニア等の超高硬度な導電性材料が用いられると好適である。なお、針本体13の形状は、円柱状或いは四角柱状の他、三角柱状、五角柱状、六角柱状、或いはそれ以上の多角柱状であっても構わない。また、先細りする先端側は、円錐状、或いは、三角錐状、四角錐状、五角錐状、六角錐状、若しくはそれ以上の多角錐状であっても構わない。また、凸部11の形状は、四角柱状の他、円柱状、三角柱状、五角柱状、六角柱状、或いはそれ以上の多角柱状であっても構わない。より好適には、四角柱以上の多角柱状或いは円柱状が望ましい。
【0016】
針本体13のサイズは、断面直径或いは断面1辺が0.1mm〜0.5mm程度が好適である。望ましくは0.2mm〜0.4mmが好適である。さらに望ましくは0.2mm〜0.3mmが好適である。また、長手方向の長さは、1mm〜5mm程度が好適である。望ましくは1mm〜3mmが好適である。さらに望ましくは1mm〜1.5mmが好適である。先端部分の球状は、SR10μm〜40μmが好適である。望ましくはSR15μm〜30μmが好適である。さらに望ましくはSR15μm〜25μmが好適である。なお、
図1では、凸部11の幅Wと或いは凸部11間の隙間Lのサイズが同程度に示されているが、後述するように、隙間Lは、凸部11の幅Wよりも大きく形成される。
【0017】
図3は、実施の形態1における導通接点針の導通状態の一例を示す断面図である。
図3の例では、半導体装置を製造するための露光用マスク基板の断面を一例として示している。電子ビームが照射される露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)では、ガラス基板302上に導電膜304が形成され、導電膜304上に絶縁膜306が形成され、絶縁膜306上にレジスト膜308が形成される。導電膜304の材料として、例えば、クロム(Cr)、タングステン(W)、及び窒化クロム(CrNx)等を用いると好適できる。レジスト膜308上からの描画後、現像、及びエッチングを経て残った絶縁膜306が遮光膜になって、かかる絶縁膜306のマスクパターンが形成される。上述したように、昨今のパターンの微細化に伴い、マスクパターンの形成にあたって、導電膜304(遮光膜)の耐エッチング性を向上させるべく、従来とは異なり、導電膜304上に緻密な絶縁膜306の層を形成する。緻密な絶縁膜306の材料として、例えば、酸化クロム(CrO
2)、窒化シリコン(SiNx)、或いは酸化シリコン(SiOx)等を用いると好適できる。緻密な絶縁膜306は、引張強度が大きい。そのため、従来のアースピンでは、レジスト膜を破断させることができても緻密な絶縁膜306を破断させることが困難であった。かかる点については、アースピンへの荷重を大きくしても、緻密な絶縁膜306を変形させるだけで破断させることができず、その下層の導電膜304まで侵入することが困難であった。その結果、導電膜304にアースピンを差し込み、接地させることができずレジスト膜308の帯電を十分に抑制することが困難になってしまうといった問題があった。これに対して、実施の形態1では、針本体13の先細り部分の先端部分に複数の凸部11を形成することによって、導電膜304上に被破断膜となる緻密な絶縁膜306とレジスト膜308とが形成された露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)(基板の一例)を被破断膜上から押圧して、被破断膜を破断させて導電膜304と導通することができる。ここでは、緻密な絶縁膜306とレジスト膜308との積層膜が、導電膜304に通じるための被破断膜となる。なお、
図3では、導通接点針18の先端部分の複数の凸部11の図示は省略している。次に、導通接点針18の先端部分の複数の凸部11の形状およびサイズ等の仕様について説明する。
【0018】
図4は、実施の形態1における導通接点針の先端部分の差し込み前後の状態の一例を示す断面図である。
図4(a)では、導通接点針18の先端部分の複数の凸部11を
図3と同様の露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)に差し込む前の状態を示している。露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)において、導電膜304は、例えば、10〜30nmの膜厚で形成される。そして、絶縁膜306は、例えば、20〜40nmの膜厚で形成される。そして、レジスト膜308は、例えば、80〜200nmの膜厚で形成される。かかる露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)に対して、導通接点針18を押圧して、複数の凸部11をレジスト膜308の上方から差し込むと、
図4(b)に示すように、複数の凸部11は、レジスト膜308を破断させて侵入した後、下層の絶縁膜306を破断させる。そして、下層の導電膜304に到達する。その場合に、隣り合う凸部11間の隙間には、破断したレジスト膜308と絶縁膜306が埋め込まれていく。よって、複数の凸部11の高さ寸法Dは、レジスト膜308と絶縁膜306との膜厚の合計(被破断膜の膜厚)よりも大きく形成される。例えば、レジスト膜308と絶縁膜306との膜厚の合計が200nm(0.2μm)であれば、複数の凸部11の高さ寸法Dは、0.2μmよりも大きくなるように形成する。なお、
図4(b)に示すように、隣り合う凸部11間の隙間には、凸部11が侵入したことによって押し遣られた膜部分も一緒に埋め込まれるので、複数の凸部11の高さ寸法Dは、かかる押し遣られた膜部分が逃げ込むことができる隙間分を確保することが有効である。よって、レジスト膜308と絶縁膜306との膜厚の合計よりも若干大きく形成する方が好適である。例えば、レジスト膜308と絶縁膜306との膜厚の合計の1.5倍以上にするとさらに好適である。例えば、レジスト膜308と絶縁膜306との膜厚の合計が200nm(0.2μm)であれば、複数の凸部11の高さ寸法Dは、0.2μm以上必要となり、0.3μm以上にするとさらに好適である。例えば、レジスト膜308のポアソン比が0.3〜0.4となる材料を用い、レジスト膜308と絶縁膜306との膜厚の合計が200nm(0.2μm)の場合に、複数の凸部11の高さ寸法Dは、0.3μmあれば十分な導通効果(抵抗値)を得ることができることが実験により確認されている。なお、必要な凸部11の高さ寸法D=(レジスト膜厚+絶縁膜厚)+(レジスト膜厚×ポアゾン比)で求めることができる。
【0019】
図5は、実施の形態1における凸部のサイズと数と応力との関係の一例を示す図である。
図5において、縦軸は、各層に発生する応力を示し、横軸は凸部のサイズを示す。ここでは、例えば0.225N(23gf)の荷重で導通接点針18を押圧した場合を示している。また、
図5では、凸部11が25個(B)、50個(D)、及び100個(F)、それぞれ形成された場合にCrO
2(絶縁膜306)に働く各応力の分布、及び凸部11が25個(A)、50個(C)、及び100個(E)、それぞれ形成された場合にクォーツ(Qz:ガラス基板302)に働く各応力の分布、が示されている。ここでの個数は、絶縁膜306及びクォーツを押圧する凸部11の個数を示す。
【0020】
実施の形態1において、導通接点針18が導電膜304と導通するためには、CrO
2(絶縁膜306)を破断させる必要がある。よって、CrO
2の破断応力(
図5では、約3000MPa)よりも凸部11の先端の応力が大きくなるサイズと数の凸部11が必要となる。一方、導通接点針18がガラス基板302を破断させてしまうとパーティクルが発生するため望ましくない。よって、クォーツの破断応力(
図5では、約14000MPa)よりも凸部11の先端の応力が小さくなるサイズと数の凸部11が必要となる。したがって、凸部11のサイズと数は、対象となる基板の材料によってその使用可能な範囲が決定される。なお、複数の凸部11によって、絶縁膜306を破断させる場合、凸部11の頂面(先端側端面)全面で膜を破断させるわけではなく、凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺に生じる応力集中によって破断させる。言い換えれば、せん断応力=荷重/(凸部11の頂面周囲の辺の長さの合計×個数)で近似できる。よって、
図5で示す応力分布は、矩形の頂面(先端側端面)の周囲の辺に生じる集中応力の値で示している。複数の凸部の無い従来のアースピンでは、集中応力が生じる辺が不足している、或いは存在しないため、アースピンを押圧する荷重を増加しても結局アースピンの先端に絶縁膜306を破断させるだけの集中応力が生じない。その結果、絶縁膜306を変形させるだけで破断させるには至らない。これに対して、実施の形態1では、複数の凸部11によって、絶縁膜306を破断させるだけの集中応力を発生させることができる。その結果、絶縁膜306を破断させて、下層の導電膜304に到達できる。
【0021】
図6は、実施の形態1における使用可能な凸部のサイズと数との関係の一例を示す図である。
図6では、縦軸に凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺のサイズ(正方形の1辺)を示し、横軸に凸部11の膜への接触個数を示している。
図6では、
図5の説明で使用可能とした範囲を示し、CrO
2の破断応力境界とクォーツの破断応力境界の2線の間の領域のサイズと個数(本数)が凸部の使用範囲となる。例えば、凸部11の膜への接触個数を40個に設定する場合、凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺のサイズ(正方形の1辺)は0.3μm〜0.47μmのサイズで形成可能である。例えば、凸部11の膜への接触個数を60個に設定する場合、凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺のサイズ(正方形の1辺)は0.22μm〜0.42μmのサイズで形成可能である。逆に、凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺のサイズ(正方形の1辺)を0.3μmに設定すると、凸部11の膜への接触個数を40〜105個の範囲で形成可能となる。複数の凸部11を製造する場合、現実的には、凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺のサイズ(正方形の1辺)は0.05μm以上が望ましい。より望ましくは、0.2μm〜0.5μmのサイズが好適である。さらに望ましくは、0.3μm〜0.4μmのサイズが好適である。凸部11の膜への接触個数は25個以上が望ましい。より望ましくは、30〜65個が好適である。導通接点針18を製造する場合には、実際には絶縁膜306に接触しない凸部11も含めて、かかる条件範囲で決まる接触個数以上の凸部11を形成すればよい。これにより、絶縁膜306の破断に必要な個数の凸部11を確保できる。
【0022】
図7は、実施の形態1における凸部によって押圧された絶縁膜の状態と隣り合う凸部間の隙間サイズとの関係の一例を示す図である。
図7(a)では、隣り合う凸部11間の隙間のサイズ(距離)L1が十分な大きさで形成された場合における隣り合う複数の凸部11によって押圧された絶縁膜306の断面状態を示す。
図7(b)では、隣り合う凸部11間の隙間のサイズ(距離)L2が十分な大きさよりも狭く形成された場合における隣り合う複数の凸部11によって押圧された絶縁膜306の断面状態を示す。L1>L2となる。凸部11が絶縁膜306を押圧する場合、実際に絶縁膜306を破断するのは、凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺の作用による。よって、かかる辺に集中応力を生じさせる必要がある。ここで、
図7(b)に示すように、隣り合う凸部11間の隙間のサイズ(距離)Lが狭い場合、例えば、左端に位置する凸部11の左側の辺a1と、右端に位置する凸部11の右側の辺b3と、には集中応力が生じる。その結果、かかる2辺a1,b3では、絶縁膜306を少なくとも変形させる(ひずませる)ことができる。しかし、2辺a1,b3で変形させられた絶縁膜306は、2辺a1,b3の間では平坦のままの状態を維持してしまう。言い換えれば、中央の凸部11では、絶縁膜306は変形しない。すなわち、中央の凸部11の辺a2,b2には、集中応力が生じていない。同様に、左端に位置する凸部11の右側の辺b1と、右端に位置する凸部11の左側の辺a3でも絶縁膜306は変形しない。言い換えれば、辺b1,a3には、集中応力が生じていない。よって、このまま荷重を大きくしても、辺b1,a2,b2,a3では、絶縁膜306を破断することが困難になる。その結果、少なくとも中央の凸部11は下層の導電膜304に接触できない。これでは、真実接触面を構成する凸部11の個数が不足し、帯電防止に必要な接触抵抗値を得られなくなってしまう。一方、
図7(a)に示すように、隣り合う凸部11間の隙間のサイズ(距離)L1が十分な大きさに確保されると、絶縁膜306に接触する隣り合う凸部11のすべての辺で絶縁膜306を少なくとも変形させる(ひずませる)ことができる。すなわち、隣り合う凸部11のすべての辺a1,b1,a3,b3で集中応力を生じさせることができる。そして、かかる各辺の応力がそれぞれ絶縁膜306のせん断応力(引っ張り応力)を超えれば、それぞれ絶縁膜306を破断できる。その結果、隣り合う凸部11を下層の導電膜304に接触させることができる。よって、真実接触面を構成する凸部11の個数を確保でき、帯電防止に必要な接触抵抗値を得ることができる。したがって、隣り合う凸部11のすべての辺a1,b1,a3,b3で絶縁膜306のせん断応力(引っ張り応力)を超える応力が得られるような隣り合う凸部11間の隙間のサイズ(距離)L1で複数の凸部11を形成すればよい。
【0023】
図8は、実施の形態1における凸部の両端の辺にかかる応力差と隣り合う凸部間の隙間のサイズとの関係を示す図である。隣り合う凸部11が共に絶縁膜306を確実に破断させるには、各凸部11の両端の辺(例えば、
図7(a)の辺a1,b1)に絶縁膜306を変形させる(ひずませる)応力が生じ、かつ、両端の辺(例えば、
図7(a)の辺a1,b1)に生じる応力差が0になる状態が最も望ましい。応力差を0にするためには、
図8の例では、隣り合う凸部11間の隙間のサイズ(距離)Lが1.8μm必要であることがわかる。ただし、実験の結果、隣り合う凸部11間の隙間のサイズ(距離)Lが1.3μm以上あれば、応力差が0でなくても、隣り合う凸部11が共に絶縁膜306を破断できることがわかっている。
【0024】
図9は、実施の形態1における凸部の配置状況の一例を示す図である。針本体13の先細り部分の先端部に、例えば、凸部11と隙間とを1:1のサイズで格子状に複数の凸部11を形成した場合を
図9(b)に示す。かかる場合、導通作業を実施後は凸部11間にコンタミが付着してしまった。これに対して、針本体13の先細り部分の先端部に、例えば、凸部11間の隙間Lを凸部11のサイズWに対して十分大きくなるように千鳥格子状に複数の凸部11を形成した場合を
図9(a)に示す。かかる場合、導通作業を実施後のコンタミの付着は見られなかった。この結果から、隣り合う凸部11間の隙間寸法Lが狭すぎると絶縁膜306の破断が困難になるばかりでなく、レジスト膜308を破断させた際のコンタミが付着してしまうといった問題が生じることがわかった。よって、隣り合う凸部11間の隙間寸法Lが凸部の幅Wと同程度になる梨地加工等で複数の凸部を製造する場合についても隙間が狭くなってしまい、同様の問題が生じることになる。かかる点からも凸部11間の隙間Lを所定長さ以上確保することが効果的であることがわかる。
【0025】
図10は、実施の形態1における凸部の先端面のエッジ部の面取り加工の発生応力に対する影響を説明するための図である。
図10の例では、絶縁膜306(CrOx)層に対する応力として、凸部11の頂面(先端側端面)を形成する周囲の辺のサイズ(正方形の1辺)を0.35μmに設定し、−0.175μm変位させた場合を一例として示している。凸部11の先端面の面取り加工として、R0.025μmからR寸法を大きくするのに伴い発生応力が比例して小さくなり、R0.05μm付近で変曲点を迎え、その後、R寸法を大きくするのに伴い発生応力が収束していく。よって、凸部11の先端面のエッジ部は、鋭角(シャープ)であるほど好適であり、さらに望ましくは変曲点(R0.05μm)よりも小さいとなお好適である。
【0026】
図11は、実施の形態1と比較例とにおける導通接点針で被破断膜上から押圧した場合の接触抵抗値の一例を示す図である。
図11(a)では、先端に複数の凸部11が無い従来のアースピン(比較例)を基板の被破断膜(絶縁膜306及びレジスト膜308の積層膜)上から押圧した場合における基板表面の接触抵抗との関係の一例を示している。接触抵抗値の単位はアドレスユニット(A.U.)で示している。
図11(b)では、先端に複数の凸部11が配置された実施の形態1における導通接点針(アースピン)を基板の被破断膜(絶縁膜306及びレジスト膜308の積層膜)上から押圧した場合における、荷重と基板表面の接触抵抗との関係の一例を示している。接触抵抗値の単位はアドレスユニット(A.U.)で示している。実施の形態1と比較例とでそれぞれN1〜N5の5つのサンプルを用いて測定した。ここでは、パーティクルを発生させないようにクォーツ(ガラス基板302)を破断させない荷重の範囲で測定した結果を示している。
図11(a)に示すように、複数の凸部11が無い従来のアースピンでは、荷重を大きくしてもほとんど接触抵抗値が変わらないことがわかる。これは、アースピンが絶縁膜306の下層に配置される導電膜304と接触できていないことを示す。これに対して、実施の形態1では、
図11(b)に示すように、荷重をかけることで、接触抵抗値が大きく下がることがわかる。
図11(b)の例では、0.2N以上でいずれのサンプルでもほぼ収束しており、かかる荷重以上で実施の形態1のアースピンがN1〜N5のいずれのサンプルでも絶縁膜306の下層に配置される導電膜304に十分接触できていることがわかる。かかる点は、被破断膜のうち特に破断しにくい緻密な絶縁膜306を破断することができていることを示す。以上からもクォーツ(ガラス基板302)を破断させない荷重の範囲で絶縁膜306を破断させるには、実施の形態1の形状が有効であることがわかる。
【0027】
図12は、実施の形態1と比較例とにおける導通接点針で被破断膜上から押圧した場合の接触抵抗値の他の一例を示す図である。
図12では、クォーツ(ガラス基板302)を破断させる荷重かどうかに関係なく、荷重をかけて得られた基板表面の接触抵抗の測定結果の一例を示す。
図12では、先端に複数の凸部11が無い従来のアースピン(比較例)を基板の被破断膜(絶縁膜306及びレジスト膜308の積層膜)上から押圧した場合における基板表面の接触抵抗と、先端に複数の凸部11が配置された実施の形態1における導通接点針(アースピン)を基板の被破断膜(絶縁膜306及びレジスト膜308の積層膜)上から押圧した場合における基板表面の接触抵抗との測定結果の一例を示す。ここでは、比較例のアースピンと実施の形態1のアースピンとについて、それぞれ複数のサンプル品を作成し、その効果を測定した。先端に複数の凸部11が無い従来のアースピン(比較例)では、サンプルの中には荷重を大きくかけたことで絶縁膜306を何等かの影響で破断させて、その下層に辿り着き接触抵抗値が低くなったものも存在したが、荷重を大きくしても接触抵抗値の許容閾値Kthよりも高いものも多くあり、接触抵抗値がばらついてしまった。これに対して、先端に複数の凸部11が配置された実施の形態1では、いずれも接触抵抗値が許容閾値Kthよりも低く抑えられ、ばらつきが小さかった。かかる点からも実施の形態1のアースピンではいずれのサンプルでも絶縁膜306の下層に配置される導電膜304に十分接触できていることがわかる。
【0028】
図13は、実施の形態1と比較例とにおける接触痕の一例を説明するための図である。
図13(a)では、先端に複数の凸部11が無い従来のアースピン(比較例)を用いて、クォーツ(ガラス基板302)を破断させない荷重の範囲で基板を押圧した場合の接触痕の一例を示す。
図13(b)では、先端に複数の凸部11が配置された実施の形態1を用いて、クォーツ(ガラス基板302)を破断させない荷重の範囲で基板を押圧した場合の接触痕の一例を示す。比較例では、
図13(a)に示すように、基板の表面の膜を変形させるだけで、アースピンが導電膜304に到達していない。これに対して、実施の形態1を用いた実験では、
図13(b)に示すように、アースピンの凸部がクォーツ(ガラス基板302)まで変形させて、凸部11の痕を生成するケースを確認している。このように、実施の形態1では、アースピンを導電膜304に到達させることができる。
【0029】
以上のように被破断膜の破断及び導電膜304との導通に優れた実施の形態1の導通接点針(アースピン)を搭載する装置の一例について以下に説明する。実施の形態1では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0030】
図14は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型(VSB型)の描画装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1の成形アパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2の成形アパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。描画室103内には、少なくともXY方向に移動可能なXYステージ105が配置される。XYステージ105上には、レジストが塗布された基板101が配置される。ここでは、例えば、上述した露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)が配置される。露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)では、ガラス基板302上にクロム(Cr)等の遮光膜(導電膜304)、酸化クロム等の絶縁膜306、及びレジスト膜308の順で各膜が積層されている。基板101として、露光用マスク基板300(描画前のマスクブランクス)の代わりに、シリコンウェハ等の半導体装置を製造するための半導体基板が配置されても構わない。かかる半導体基板においても、導電膜304、緻密な絶縁膜306、及びレジスト膜308の順で各膜が積層されている。基板101は、基板カバー10が装着された状態でXYステージ105上に配置される。基板カバー10を介して基板101は描画装置100のグランドに接続され、グランド電位に維持される。
【0031】
制御部160は、制御計算機ユニット110、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。制御計算機ユニット110、制御回路120、及び記憶装置140は、図示しないバスを介して互いに接続されている。制御回路120は、描画機構150に接続され、描画機構150の各構成を駆動制御する。
【0032】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。導通接点針18が基板101の被破断膜上から押圧して、被破断膜を破断させて導電膜と導通すると共に、導通接点針18にグランド電位が印加された状態で、描画機構150(照射機構)は、基板101に電子ビームを照射する。ここでは、描画機構150は、電子ビームを用いて基板101にパターンを描画する。描画機構150の動作を、以下、具体的に説明する。
【0033】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1の成形アパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1の成形アパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2の成形アパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形を行なう)ことができる。かかる可変成形はショット毎に行なわれ、通常ショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。そして、第2の成形アパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
【0034】
図15は、実施の形態1における基板カバーを示す上面図である。
図16は、
図15の基板カバーが基板に装着された状態を示す上面図である。
図17は、
図15の基板カバーの断面図である。基板カバー10は、3つの接点サポート部材12(12a,12b,12c)及びフレーム16(枠状部材の一例)を備えている。接点サポート部材12(12a,12b,12c)は、3点指示で基板カバー10を支持する位置にフレーム16の上面側から取り付けされている。そして、接点サポート部材12(12a,12b,12c)は、フレーム16の内周端よりも内側に張り出すように取り付けられている。内側に張り出すだけではなく、さらに外周端よりも外側に張り出すように取り付けられてもよい。接点サポート部材12は、フレーム16に、例えば、ねじ止め或いは溶接等で固定されている。各接点サポート部材12(12a,12b,12c)の裏面側には、フレーム16の内周端よりも内側の位置に接点部となる導通接点針18(ここではアースピン)が先端を裏面側に向けて配置される。
【0035】
フレーム16は、板材により構成され、外周寸法が基板101の外周端よりも大きく、内側の中央部に形成された開口部の寸法が基板101の外周端よりも小さく形成されている。すなわち、
図16に示すように基板101の上部に基板カバー10を上方から重ねた場合に、点線で示す基板101の外周部の全周がフレーム16に重なるように形成されている。このように、基板カバー10は、基板101の外周部全体を上方からカバーする。そして、基板カバー10を基板101に取り付けた際に、3つの導通接点針18が基板101上に形成されている膜内に食い込み、同じく基板101上に形成されている導電膜と導通する。
【0036】
基板カバー10は、全体が導電性材料で形成されているもの、或いは全体が絶縁材料で形成され、その表面に導電性材料がコーティングされているもの等が好適である。導電性材料としては、金属材料、例えば銅(Cu)やチタン(Ti)およびその合金等が好適であり、絶縁材料としては、例えばアルミナ等のセラミックス材料等が好適である。
【0037】
そして、基板カバー10を基板101に装着することによって、3つの導通接点針18が緻密で破断しにくい絶縁膜を破断して、下層の導電膜と導通する。導通接点針18は、基板カバー10を介してグランド電位に接続される。かかる構成により、基板101表面に電子ビーム200が衝突或いは散乱することによって生じた帯電を抑制できる。その結果、電子ビーム200の軌道が曲げられることを抑制し、高精度な寸法のパターンを描画できる。
【0038】
以上のように、実施の形態1によれば、緻密な被破断膜を破断させて下層膜と導通することができる。よって、導電膜304上に形成された他の膜の帯電を抑制できる。
【0039】
実施の形態2.
実施の形態1では、針本体13の先細りさせた先端側の端を例えば球状に形成している場合を示したがこれに限るものではない。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0040】
図18は、実施の形態2における導通接点針の構成を示す構成図である。
図18において、導通接点針18の針本体13の先細りさせた先端側の端が平面であってもよい。そして、かかる平面が先端側から掘り込まれ、例えば四角柱状で形成された複数の凸部11(或いは凸部11間に形成される複数の凹部)を形成してもよい。その他の点は、
図1と同様である。かかる構成でも、緻密な被破断膜を破断させて下層膜と導通することができる。なお、
図18に形成されている凸部11は先端側の面全てに形成されていても良いし、面の一部に形成されていても良い。実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。導通接点針18を差し込む基板は、露光用マスク基板300に限るものではなく、例えば、半導体基板に直接電子ビームを照射してパターンを描画する際に半導体基板に差し込む場合にも適用できる。その他、グランド接続させる場合だけではなく、半導体基板の絶縁膜下の導電層の抵抗値の測定を行う場合等にも適用できる。
【0042】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0043】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての導通接点針は、本発明の範囲に包含される。