特許第6983026号(P6983026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983026
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20211206BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-196138(P2017-196138)
(22)【出願日】2017年10月6日
(65)【公開番号】特開2019-71334(P2019-71334A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 剛史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
【審査官】 湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−313756(JP,A)
【文献】 特開2013−202740(JP,A)
【文献】 特開2003−211354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、スピンドルに装着された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該切削ユニットを該保持面と直交する切り込み送り方向に移動させる移動ユニットと、回転によって発生する該スピンドルの振動量を測定する振動測定ユニットと、を備え、
該振動測定ユニットは、
対向して設置された発光部および受光部と、該発光部と該受光部の間に形成され該切削ブレードの外周部の侵入を許容するブレード侵入部とを備える検出器と、
該受光部の受光量を電圧値に変換する光電変換部と、
該スピンドルの該振動量が所定値以下となる第1の速度で該スピンドルを回転させ、少なくとも該スピンドル1回転分の該電圧値の情報を角度座標の情報とともに収集し、装着した該切削ブレードの中心と該スピンドルの回転中心の位置ずれ量を示す基準データとして記録する基準データ記録部と、
該第1の速度よりい被加工物を加工する際の第2の速度で該スピンドルを回転させ、少なくとも該スピンドル1回転分の該電圧値の情報を角度座標の情報とともに収集し、該切削ブレードの外周の振動量を示す振動データとして記録する振動データ記録部と、
該角度座標を揃えた該基準データと該振動データの差分から、該位置ずれ量を取り除いた該スピンドルの振動量を算出する振動算出部と、
該振動算出部で算出した該振動量が許容範囲内であるかを判定する判定部と、を備える切削装置。
【請求項2】
該検出器及び該光電変換部は、該切削ブレードの外周の切り込み送り方向の基準位置を検出する基準位置検出部である請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハや各種パッケージ基板を切削ブレードで切削して分割するための切削装置(ダイシングソー)が知られている。切削装置は、切削ブレードを例えば60000rpmなどの回転数で高速回転しつつ切削を実施するが、切削ブレードが厚かったり、直径が大きかったりすると、重量バランスの偏重が発生しやすく、スピンドルの回転が偏心して、振動してしまう場合がある。
【0003】
スピンドルの回転が偏心すると、切削ブレードがいわゆる片当たり状態となってしまい、切削した被加工物に欠けが発生してしまうなど、加工不良の原因になる場合がある。通常は、安全のため、高速回転するスピンドルにオペレータが触るなどして振動を直接捉える事が出来ないので、専用の回転バランス測定器を用い、専門の技能を有するオペレータが振動を測定するメンテナンス工程を実施している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されたメンテナンス工程は、専門の技能を有するオペレータにより実施されるために、スピンドルの振動を捉えるのにコストと時間がかかっている。
【0004】
また、スピンドルの振動を測定するのに、受光部の受光する光の遮断量で切削ブレードの先端位置を捉える基準位置検出機構(例えば、特許文献2参照)を利用する事も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−129743号公報
【特許文献2】特開2001−298001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献2に示された基準位置検出機構を用いても、切削ブレードの真円ずれ、切削ブレード先端の凹凸(砥粒の突出によるもの。特に大粒径のブレードでは5μm以上でかつ10μm程度以下となる)とスピンドルの振動とを切り分けて把握することができない。このために、前述した特許文献2に示された基準位置検出機構を用いても、スピンドルの振動を正確に測定することが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スピンドルの振動の測定誤差を抑制することができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、スピンドルに装着された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該切削ユニットを該保持面と直交する切り込み送り方向に移動させる移動ユニットと、回転によって発生する該スピンドルの振動量を測定する振動測定ユニットと、を備え、該振動測定ユニットは、対向して設置された発光部および受光部と、該発光部と該受光部の間に形成され該切削ブレードの外周部の侵入を許容するブレード侵入部とを備える検出器と、該受光部の受光量を電圧値に変換する光電変換部と、該スピンドルの該振動量が所定値以下となる第1の速度で該スピンドルを回転させ、少なくとも該スピンドル1回転分の該電圧値の情報を角度座標の情報とともに収集し、装着した該切削ブレードの中心と該スピンドルの回転中心の位置ずれ量を示す基準データとして記録する基準データ記録部と、該第1の速度よりい被加工物を加工する際の第2の速度で該スピンドルを回転させ、少なくとも該スピンドル1回転分の該電圧値の情報を角度座標の情報とともに収集し、該切削ブレードの外周の振動量を示す振動データとして記録する振動データ記録部と、該角度座標を揃えた該基準データと該振動データの差分から、該位置ずれ量を取り除いた該スピンドルの振動量を算出する振動算出部と、該振動算出部で算出した該振動量が許容範囲内であるかを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記切削装置において、該検出器及び該光電変換部は、該切削ブレードの外周の切り込み送り方向の基準位置を検出する基準位置検出部でも良い。
【発明の効果】
【0010】
そこで、本願発明の切削装置は、スピンドルの振動がほぼ無い(例えば5μm以下)低回転でスピンドルを回転させて基準位置検出部でブレード先端の振動を測定して予め振動成分以外の先端の振動(切削ブレードの真円ずれや切削ブレードの先端の凹凸)を割りだす。その後、実際の加工速度でスピンドルを回転させて再度ブレード先端の振動を測定し、先に測定したデータとの差分から、スピンドル振動自体を算出することが出来るという効果を奏する。これにより、スピンドルの振動を確実に測定することが出来るとともに、ブレード先端の振動が、真円ずれなどが原因なのか、スピンドルやマウントなど機械的な要因が原因なのか、切り分ける事が出来るという効果を奏する。また、基準位置検出部を用いるため、新たな機構の追加を最低限にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された切削装置の振動測定ユニットの構成を示すブロック図である。
図3図3は、図2に示された振動測定ユニットの検出器等を示す側面図である。
図4図4は、図1に示された切削装置の切削ユニットの切削ブレード等を示す正面図である。
図5図5は、実施形態1に係る切削装置の制御ユニットがスピンドルの振動量を測定する流れを示すフローチャートである。
図6図6は、図5中のステップST2で記録された基準データの一例を示す図である。
図7図7は、図5中のステップST3で記録された振動データの一例を示す図である。
図8図8は、図5中のステップST4で算出された振動量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された切削装置の振動測定ユニットの構成を示すブロック図である。図3は、図2に示された振動測定ユニットの検出器等を示す側面図である。図4は、図1に示された切削装置の切削ユニットの切削ブレード等を示す正面図である。
【0014】
図1に示す実施形態1に係る切削装置1は、被加工物200を切削(加工)する装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成される複数の分割予定ライン202によって区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0015】
被加工物200は、デバイス203が複数形成されている表面201の裏側の裏面204に粘着テープ210が貼着され、粘着テープ210の外縁が環状フレーム211に貼着されることで、環状フレーム211の開口に粘着テープ210で支持される。実施形態1において、被加工物200は、環状フレーム211の開口に粘着テープ210で支持された状態で、分割予定ライン202に沿って切削加工が施されて、個々のデバイス203に分割される。また、本発明では、被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、ガラス板等でも良い。
【0016】
図1に示された切削装置1は、被加工物200を切削(加工)して、被加工物200を個々のデバイス203に分割する加工装置である。切削装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ユニット20と、加工送りユニットであるX軸移動ユニット30と、割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット40と、切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット50と、振動測定ユニット60とを備える。切削装置1は、図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0017】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット30により水平方向と平行なX軸方向に沿って移動自在に設けられ、回転駆動源12により鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。なお、Z軸方向は、X軸方向と保持面11との双方と直交する切り込み方向である。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、被加工物200を吸引、保持する。回転駆動源12は、X軸移動ユニット30によりX軸方向に移動される移動テーブル13上に配置されている。また、チャックテーブル10の周りには、環状フレーム211をクランプするクランプ部14が複数設けられている。
【0018】
切削ユニット20は、スピンドル22に装着された切削ブレード21でチャックテーブル10に保持された被加工物200を切削するものである。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット40によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット50によりZ軸方向に移動自在に設けられている。なお、Y軸方向は、水平方向と平行でかつX軸方向と直交している。
【0019】
一方の切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット40、Z軸移動ユニット50などを介して、装置本体2から立設した一方の柱部3に設けられている。他方の切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット40、Z軸移動ユニット50などを介して、装置本体2から立設した他方の柱部4に設けられている。なお、柱部3,4は、上端が水平梁5により連結されている。
【0020】
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット40及びZ軸移動ユニット50により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。また、一方の切削ユニット20は、被加工物200の表面201を撮像する撮像ユニット80が一体的に移動するように固定されている。撮像ユニット80は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラを備えている。CCDカメラは、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得、得た画像を振動測定ユニット60の制御ユニット100に出力する。
【0021】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。切削ブレード21は、図2及び図3に示すように、スピンドル22の先端に設けられた工具装着部23と、工具装着部23の先端に螺合するナット24との間に挟持されて、スピンドル22の先端に装着される。スピンドル22は、図示しないモータにより軸心回りに回転される。スピンドル22は、モータにより回転されることで、切削ブレード21を回転させて、被加工物200を切削する。スピンドル22は、スピンドルハウジング25内に収容され、スピンドルハウジング25は、Z軸移動ユニット50に支持されている。切削ユニット20のスピンドル22及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。また、切削ユニット20は、切削ブレード21を回転する際に、スピンドル22が、図3に示す実線で示す位置と図3に点線で示す位置とに亘って振動することがある。切削ユニット20は、スピンドル22が切削ブレード21を回転する際に生じるスピンドル22の振動を抑制するための図示しない回転バランス調整機構を備える。
【0022】
実施形態において、回転バランス調整機構は、ナット24の外周面に開口しかつナット24の周方向に等間隔に設けられた図示しないねじ孔と、ねじ孔に螺合するバランスウエイト用ねじとを備える。回転バランス調整機構は、スピンドル22の振動が極力小さくなるように、各ねじ孔に対するバランスウエイト用ねじのねじ込み量が切削装置1のオペレータにより調整される。
【0023】
また、切削ブレード21は、スピンドル22の先端に装着された直後でかつ被加工物200の切削前等において、図4に示すように、切り刃26の外縁の中心と、スピンドル22の回転中心とがずれていることがある。なお、図4は、スピンドル22の回転中心を中心とする円を点線で示し、切り刃26の外縁の中心がスピンドル22の回転中心からずれた切削ブレード21を実線で示している。本明細書は、切削ユニット20の切削ブレード21の切り刃26の外縁の中心がスピンドル22の回転中心からずれることを、位置ずれ(真円ずれともいう)という。また、位置ずれは、スピンドル22の先端に装着された直後でかつ被加工物200の切削前の他に、切り刃26の外縁に砥粒が突出した部分と砥粒が突出していない部分とが生じることでも発生する。
【0024】
また、切削ユニット20は、図2に示すように、スピンドル22の予め定められた所定位置からの回転角度を検出する角度検出器27を備える。角度検出器27は、ロータリエンコーダ等で構成され、検出した回転角度を制御ユニット100に出力する。なお、角度検出器27が検出するスピンドル22の所定位置からの回転角度は、角度座標である。
【0025】
X軸移動ユニット30は、チャックテーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット40は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット50は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りする移動ユニットである。
【0026】
X軸移動ユニット30、Y軸移動ユニット40及びZ軸移動ユニット50は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ31,41,51、ボールねじ31,41,51を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ32,42,52及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール33,43,53を備える。
【0027】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニット54とを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニット54は、パルスモータ52のパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニット54は、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。
【0028】
振動測定ユニット60は、回転によって発生するスピンドル22の振動量を測定するユニットである。振動測定ユニット60は、検出器61と、制御ユニット100とを備える。
【0029】
検出器61は、図2に示すように、装置本体2に固定されかつチャックテーブル10のY軸方向の隣に配設された検出器本体62と、光源63とを備える。検出器本体62は、切削ブレード21の移動範囲に設置されている。検出器本体62は、Y軸方向に互いに間隔をあけて対向して設置された発光部64及び受光部65を設けている。
【0030】
発光部64及び受光部65は、平坦なガラス等で形成されている。発光部64と受光部65とは、光軸を一致させて設けられている。発光部64は、光ファイバー66を介して光源63に接続されており、光源63からの光を受光部65に向けて射出する。受光部65は、発光部64からの光を受光する。受光部65は、制御ユニット100の光電変換部101に光ファイバー67を介して接続されており、発光部64から受光した光を光電変換部101に送る。
【0031】
検出器本体62は、発光部64と受光部65との間に形成された空間であって、切削ブレード21の切り刃26の外周部の侵入を許容するブレード侵入部68を設けている。実施形態において、ブレード侵入部68は、検出器本体62に形成された溝である。ブレード侵入部68は、溝の一方の内面に発光部64を設け、溝の他方の内面に受光部65を設けている。
【0032】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、コンピュータである。制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット120と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットと、報知ユニット130とに接続されている。入力ユニットは、表示ユニット120に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニット130は、制御ユニット100からのエラー信号を発信して、光と音との少なくとも一方をオペレータに報知する。
【0033】
制御ユニット100は、図2に示すように、光電変換部101と、データ記録部102と、振動算出部103と、判定部104とを備える。光電変換部101は、受光部65から送られた光を受光し、受光部65から送られた光の受光量を電圧値に変換する。光電変換部101は、受光量を、受光量に応じた電圧値に変換し、変換した電圧値をデータ記録部102に出力する。なお、切削ブレード21がブレード侵入部68に侵入する深さが深くなるに従って、切削ブレード21が発光部64と受光部65との間を遮る量が増加すると、光電変換部101が出力する電圧値が徐々に減少する。実施形態1において、光電変換部101は、受光量が100%の時(切削ブレード21が全く光を遮っていない時)には5V(最大電圧)、受光量が0%の時(切削ブレード21が完全に光を遮る時)には0V(最小電圧)の電圧値を出力する。
【0034】
データ記録部102は、基準データ記録部105と、振動データ記録部106とを備える。基準データ記録部105は、第1の速度である第1の回転数でスピンドル22を回転させ、少なくともスピンドル22の1回転分の光電変換部101から入力した電圧値の情報を、角度検出器27から入力した回転角度の情報とともに収集する。基準データ記録部105は、少なくともスピンドル22の1回転分の光電変換部101から入力した電圧値の情報と、角度検出器27から入力した回転角度の情報とを対応付けて、基準データ300として記録する。
【0035】
なお、第1の回転数は、切削ユニット20が被加工物200を実際に切削するときの回転数よりも遅い速度であり、スピンドル22の振動量を示す振幅が所定値(例えば、5μm)以下となる回転数である。実施形態1において、第1の回転数は、スピンドル22が殆ど振動しない、振動しても振動の振幅が、切削ユニット20が被加工物200を実際に切削するときに許容される振動の振幅よりも十分に小さくなる回転数である。実施形態1において、第1の回転数は、例えば、10000rpm以下、望ましくは6000rpm以下であるが、これらに限定されない。
【0036】
実施形態1において、基準データ記録部105は、第1の回転数でスピンドル22を複数回転させた時の電圧値の情報を回転角度の情報とともに、基準データ300として記録する。なお、基準データ300は、第1の回転数が前述した回転数であるために、スピンドル22に装着した切削ブレード21の切り刃26の外縁の中心とスピンドル22の回転中心との位置ずれの量(位置ずれ量に相当)を示すデータである。
【0037】
振動データ記録部106は、第2の速度である第2の回転数でスピンドル22を回転させ、少なくともスピンドル22の1回転分の光電変換部101から入力した電圧値の情報を、角度検出器27から入力した回転角度の情報とともに収集する。振動データ記録部106は、少なくともスピンドル22の1回転分の光電変換部101から入力した電圧値の情報と、角度検出器27から入力した回転角度の情報とを対応付けて、振動データ400として記録する。
【0038】
なお、第2の回転数は、第1の回転数より早い回転数であり、切削ユニット20が被加工物200を実際に切削するときの回転数である。実施形態1において、第2の回転数は、例えば、50000rpm以上でかつ60000rpm以下であるが、これらに限定されない。
【0039】
実施形態1において、振動データ記録部106は、第2の回転数でスピンドル22を複数回転させた時の電圧値の情報を回転角度の情報とともに、振動データ400として記録する。なお、振動データ400は、第2の回転数が前述した回転数であるために、スピンドル22に装着した切削ブレード21の切削中の切り刃26の外周の振動量を示すデータである。
【0040】
なお、データ記録部105,106が記録する基準データ300及び振動データ400は、スピンドル22の回転により発生する振動が位置ずれ及び回転バランス調整機構の調整不足を原因とする重量バランスの偏重により発生するために、電圧値が周期的に増減する正弦波となる。
【0041】
振動算出部103は、回転角度を揃えた基準データ300と振動データ400との差分を算出し、算出した差分から前述した位置ずれ量を取り除いたスピンドル22の切削中の振動量を算出する。実施形態1において、振動算出部103は、基準データ300の周期と振動データ400との周期とが一致するように、データ300,400の少なくとも一方を変換する。振動算出部103は、データ300,400同士の周期を一致させた後、振動データ400の最大の電圧値から対応する基準データ300の最大の電圧値を引いて、差分を算出して、振動データ400から位置ずれ量を取り除く。又は、振動算出部103は、データ300,400同士の周期を一致させた後、基準データ300の最小の電圧値から対応する振動データ400の最小の電圧値を引いて、差分を算出して、振動データ400から位置ずれ量を取り除く。実施形態1において、振動算出部103は、電圧値同士の差分を振動量として記録する。また、実施形態1では、振動算出部103は、電圧値同士の差分を振動量として記録するが、本発明では、これに限定されることなく、例えば、電圧値同士の差分を基に、振動するスピンドル22の振幅を算出し、振幅を振動量として記録しても良い。
【0042】
判定部104は、振動算出部103が算出した振動量が許容範囲内であるか否かを判定する。実施形態1において、データ300,400の電圧値同士の差分が、予め定められた最小値以上でかつ最大値以下であるか否かを判定する。判定部104は、差分が最小値以上でかつ最大値以下であると、振動算出部103が算出した振動量が許容範囲内であると判定する。判定部104は、算出した値が最小値未満又は最大値を超えていると、振動算出部103が算出した振動量が許容範囲外であると判定して、報知ユニット130にエラー信号を出力する。なお、最小値及び最大値は、スピンドル22の許容できる振動、又は切削加工で被加工物200に欠けが発生するような加工不良が発生しない振動に対応する値である。
【0043】
また、制御ユニット100は、基準位置算出部107を備える。基準位置算出部107は、保持面11と検出器61の高さの差が予め登録された状態で、検出器61で切削ブレード21の切り刃26の下端の位置を基準位置として設定するものである。基準位置の登録は、切削ブレード21の交換や切削ブレード21の消耗により切削ブレード21の下端の位置に変化があった場合、適宜実施する。
【0044】
基準位置算出部107は、光電変換部101から入力する電圧値の基準電圧値を記憶している。基準電圧値は、最小電圧よりも大きく、最大電圧よりも小さい値であり、実施形態1において、3Vである。基準電圧値は、予め保持面11との高さの差が登録された位置に切削ブレード21が位置付けられ場合の値に設定されている。基準位置算出部107は、基準位置を検出する際に、Z軸移動ユニット50に切削ブレード21を下降させて、切削ブレード21の切り刃26の外周をブレード侵入部68に徐々に侵入させる。基準位置算出部107は、光電変換部101から入力する電圧値が基準電圧値に達した時のZ軸方向位置検出ユニット54が検出した切削ブレード21の下端の位置を基準位置として記憶する。このように、検出器61、光電変換部101及び基準位置算出部107は、切削ユニット20の切削ブレード21の切り刃26の外周のZ軸方向の基準位置を検出する基準位置検出部110である。
【0045】
次に、実施形態1に係る切削装置1の加工動作について説明する。加工動作では、オペレータが加工内容情報を制御ユニット100に登録し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1が加工動作を開始する。まず、オペレータが切削加工前の被加工物200をチャックテーブル10の保持面11に載置し、オペレータから加工動作の開始指示があると、制御ユニット100は、加工動作を開始する。
【0046】
加工動作では、制御ユニット100は、チャックテーブル10の保持面11に被加工物200を吸引保持し、X軸移動ユニット30によりチャックテーブル10を切削ユニット20の下方に向かって移動して、一方の切削ユニット20に取り付けられた撮像ユニット80の下方にチャックテーブル10に保持された被加工物200を位置付け、撮像ユニット80に被加工物200を撮像させる。制御ユニット100が、チャックテーブル10に保持された被加工物200の分割予定ライン202と、切削ユニット20の切削ブレード21との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、チャックテーブル10に保持された被加工物200と切削ユニット20との相対位置を調整する。
【0047】
そして、制御ユニット100は、加工内容情報に基づいて、X軸移動ユニット30とY軸移動ユニット40とZ軸移動ユニット50と回転駆動源12により、切削ブレード21と被加工物200とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させて、切削ブレード21により分割予定ライン202を切削する。
【0048】
制御ユニット100は、すべての分割予定ライン202を切削して、被加工物200を個々のデバイス203に分割すると、チャックテーブル10を切削ユニット20の下方から退避させた後、チャックテーブル10の吸引保持を解除する。
【0049】
また、切削装置1は、所定のドレッシングタイミングにおいて、チャックテーブル10に図示しないドレシングボードを保持し、切削ブレード21でドレッシングボードを切削する所謂ドレッシングを実施する。ドレッシングタイミングは、例えば、予め設定された数の分割予定ライン202を切削する毎である。また、ドレッシングタイミングは、まさに1枚の被加工物200を加工している途中でも良く、複数の被加工物200を連続して加工する際に、被加工物200を交換するタイミングでも良い。なお、ドレッシングボードは、切削ブレード21の真円ずれを無くし、目詰まりしたり目つぶれして切削能力が低下した切削ブレード21を目立てして、切削ブレード21の切削能力を回復させるものである。
【0050】
また、制御ユニット100は、所定の基準位置設定タイミングにおいて、基準位置を設定する。基準位置設定タイミングは、基準位置を設定するタイミングであることをいい、例えば、予め設定された数の分割予定ライン202を切削する毎、加工動作の開始時又はドレッシング直後である。
【0051】
次に、振動測定ユニット60の制御ユニット100がスピンドル22の振動量を測定する方法を図面に基づいて説明する。図5は、実施形態1に係る切削装置の制御ユニットがスピンドルの振動量を測定する流れを示すフローチャートである。図6は、図5中のステップST2で記録された基準データの一例を示す図である。図7は、図5中のステップST3で記録された振動データの一例を示す図である。図8は、図5中のステップST4で算出された振動量の一例を示す図である。
【0052】
制御ユニット100は、加工動作において、図5に示すフローチャートを予め設定された所定のタイミングにおいて繰り返し実施する。制御ユニット100は、振動測定タイミングであるか否かを判定する(ステップST1)。制御ユニット100は、振動測定タイミングではないと判定する(ステップST1:No)と、ステップST1を繰り返す。振動測定タイミングは、スピンドル22の振動量を測定するタイミングであることをいい、例えば、切削ブレード21が交換されて、被加工物200の切削前の切削ブレード21がドレッシングボードによりドレッシングされて、切り刃26の外縁の中心とスピンドル22の回転中心との位置ずれが抑制された直後である。
【0053】
制御ユニット100は、振動測定タイミングであると判定する(ステップST1:Yes)と、基準データ記録部105が図6に一例を示す基準データ300を記録する(ステップST2)。ステップST2では、基準データ記録部105は、光源63に発光部64を介して受光部65に光を照射させ、測定対象の切削ユニット20のスピンドル22を前述した第1の回転数で回転させる。基準データ記録部105は、移動ユニット30,40,50に測定対象の切削ユニット20に装着された切削ブレード21をブレード侵入部68に挿入させる。
【0054】
基準データ記録部105は、光電変換部101からの電圧値を角度検出器27からの回転角度とともに収集し、電圧値と角度検出器27とを対応付けて、基準データ300として記録する。なお、図6に一例を示す基準データ300は、回転角度にくわえて収集開始からの経過時間を、電圧値に対応付けている。
【0055】
基準データ記録部105が、予め定められた所定時間基準データ300を記録すると、振動データ記録部106が測定対象の切削ユニット20のスピンドル22を前述した第2の回転数で回転させて、図7に一例を示す振動データ400を記録する(ステップST3)。ステップST3では、振動データ記録部106は、光電変換部101からの電圧値を角度検出器27からの回転角度とともに収集し、電圧値と角度検出器27とを対応付けて、振動データ400として記録する。なお、図7に一例を示す振動データ400は、回転角度にくわえて収集開始からの経過時間を、電圧値に対応付けている。
【0056】
振動データ記録部106が、予め定められた所定時間振動データ400を記録すると、振動算出部103がスピンドル22の振動量を算出し、記録する(ステップST4)。実施形態1において、ステップST4では、振動算出部103は、振動データ400の最大の電圧値から基準データ300の最大の電圧値を引く、又は基準データ300の最小の電圧値から振動データ400の最小の電圧値を引いて、電圧値の差分を求め、差分をスピンドル22の振動量500として記録する。
【0057】
判定部104が、電圧値の差分が予め定められた最小値以上でかつ最大値以下であるか否かを判定して、スピンドル22の振動量500が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップST5)。判定部104が、スピンドル22の振動量500が許容範囲内である(ステップST5:Yes)と判定すると、ステップST1に戻る。判定部104が、スピンドル22の振動量500が許容範囲外である(ステップST5:No)と判定すると、報知ユニット130にエラー信号を出力し、報知ユニット130がオペレータに報知し(ステップST6)、切削装置1の動作を停止させる。そして、オペレータが、回転バランス調整機構の調整を実施する。
【0058】
また、本発明では、制御ユニット100の振動算出部103は、ステップST4において、基準データ300の最大の電圧値から基準データ300の最小の電圧値を引いて、位置ずれ量に対応した値600を算出して記録し、ステップST5において、判定部104が位置ずれ量に対応した値600が第2の許容範囲内であるか否かを判定しても良い。そして、ステップST6において、表示ユニット120に位置ずれ量に対応した値600が第2の許容範囲外である旨を表示しても良い。この場合、オペレータは、位置ずれ量に対応した値600が第2の許容範囲外である旨を把握できるので、速やかにドレッシングを再度実施することができる。
【0059】
前述した切削装置1の制御ユニット100は、フォトディテクタ、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。また、光電変換部101の機能は、フォトディテクタにより実現される。データ記録部105,106及び振動算出部103の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行し、データ300,400、振動量を記憶装置に記録することにより実現される。判定部104の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0060】
以上のように、実施形態1に係る切削装置1は、スピンドル22の振動が無い又はほぼ無い(例えば、振幅が5μm以下)低回転である第1の回転数でスピンドル22を回転させて基準位置検出部110の検出器61で切削ブレード21の切り刃26の先端の振動を測定して、基準データ300を記録する。このために、基準データ300は、スピンドル22の振動を含まない又は殆ど含まないとともに、位置ずれ量を割り出すことができる。
【0061】
その後、切削装置1は、実際の加工速度である第2の回転数でスピンドル22を回転させて、基準位置検出部110の検出器61で切削ブレード21の切り刃26の先端の振動を測定して、振動データ400を記録する。切削装置1は、基準データ300と振動データ400の差分を振動量500として算出する。このように、切削装置1は、基準データ300と振動データ400の差分を振動量500として算出するので、位置ずれ量を含まないスピンドル22の振動量を測定でき、スピンドル22の振動の測定誤差を抑制することができるという効果を奏する。これにより、切削装置1は、スピンドル22の振動を確実に測定することが出来るとともに、切削ブレード21の切り刃26の先端の振動が、位置ずれが原因なのか、スピンドル22やナット24など機械的な要因が原因なのかを切り分けて把握することが出来るという効果を奏する。また、切削装置1は、スピンドル22の振動を測定するために、基準位置検出部110を用いるため、新たな機構の追加を最低限にすることが出来る。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 切削装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 切削ユニット
21 切削ブレード
22 スピンドル
50 Z軸移動ユニット(移動ユニット)
60 振動測定ユニット
61 検出器
64 発光部
65 受光部
68 ブレード侵入部
101 光電変換部
103 振動算出部
104 判定部
105 基準データ記録部
106 振動データ記録部
110 基準位置検出部
200 被加工物
300 基準データ
400 振動データ
500 振動量
Z 切り込み送り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8