(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
所定回転軸回りの回転基準位置を設定する基準設定工程と、
ある吸収性物品を製造するために、前記ある吸収性物品に係る資材を、張力を付与した状態で搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、
前記搬送方向における第1位置において、第1モータにより第1回転軸回りに回転する第1加工部を用いて、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第1回転角度だけ回転した第1角度位置に対応する前記第1モータの回転位置にて、前記資材に第1加工を行う第1加工工程と、
前記搬送方向における第2位置において、第2モータにより第2回転軸回りに回転する第2加工部を用いて、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第2回転角度だけ回転した第2角度位置に対応する前記第2モータの回転位置にて、前記資材に第2加工を行う第2加工工程と、
前記張力が解除された前記資材において、前記第1加工が施された部位と前記第2加工が施された部位とが所定の位置関係となるように、前記第2角度位置を調整する角度調整工程と、
前記角度調整工程の後に、前記第1角度位置と調整後の前記第2角度位置との相対角度を特定可能な情報を記憶する記憶工程と、
を有する製造方法によって、前記ある吸収性物品を製造し、
前記ある吸収性物品を製造した後に、他の吸収性物品を製造し、
前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記情報を用いて、前記第2角度位置を設定することを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【0014】
このような吸収性物品の製造方法によれば、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0015】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造するまで、前記第1モータに設けられたエンコーダー、及び前記第2モータに設けられたエンコーダーは通電状態にあることが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品の製造方法によれば、段替えの前後においてそれぞれのモータの回転角度を制御部が検知することができる。
【0017】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記記憶工程において、前記情報を記憶する際の、前記第1モータ及び前記第2モータの角度位置を記憶し、
前記第1モータに設けられたエンコーダー、及び前記第2モータに設けられたエンコーダーが非通電状態の際に、前記第1モータ及び前記第2モータをそれぞれ回転不能に拘束する拘束工程を有することが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品の製造方法によれば、段替えの際にエンコーダーが非通電状態となりモータの回転角度を制御部が検知できない場合でも、エンコーダーが再び通電状態となれば制御部がモータの回転角度を検知することができる。
【0019】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記ある吸収性物品を製造した後に、前記他の吸収性物品を製造する際には、前記第2加工部に換えて他の加工部を用い、
前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際には、前記他の加工部に換えて再度前記第2加工部を用いることが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品の製造方法によれば、戻し段替えの前後においてエンコーダーが通電している状態を容易に実現できる。
【0021】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記ある吸収性物品に係る資材に付与する張力を調整する張力調整工程を更に有し、
前記張力調整工程の後に、前記角度調整工程を実行することが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品の製造方法によれば、適切なタイミングで角度調整工程を実行するため、次の記憶工程が実行される際により正確な情報を記憶部に記憶することができ、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0023】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記資材の搬送速度を調整する速度調整工程を更に有し、
前記速度調整工程の後に、前記角度調整工程を実行することが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品の製造方法によれば、適切なタイミングで角度調整工程を実行するため、次の記憶工程が実行される際により正確な情報を記憶部に記憶することができ、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0025】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記搬送工程では、資材ロールから繰り出された前記資材を搬送し、
前記資材ロールを新しい資材ロールに交換する交換工程を有し、
前記交換工程の後に、前記角度調整工程を実行することが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品の製造方法によれば、適切なタイミングで角度調整工程を実行するため、次の記憶工程が実行される際により正確な情報を記憶部に記憶することができ、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0027】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記第2加工部を備えた第2加工ユニットは加熱部を備え、
前記加熱部の加熱温度を調整する温度調整工程を更に有し、
前記記憶工程において、調整後の前記加熱温度を記憶し、
前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記加熱部は、記憶された前記加熱温度にて加熱することが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品の製造方法によれば、戻し段替えの際に加熱部の温度調整を速やかに行うことができ、より一層速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0029】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記第2加工部を備えた第2加工ユニットは加圧部を備え、
前記加圧部の加圧力を調整する加圧力調整工程を更に有し、
前記記憶工程において、調整後の前記加圧力を記憶し、
前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記加圧部は、記憶された前記加圧力にて加圧することが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品の製造方法によれば、戻し段替えの際に加圧部の加圧力調整を速やかに行うことができ、より一層速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0031】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記搬送方向における第3位置において、第3加工部用いて、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第3回転角度だけ回転したタイミングにて、接着剤を前記資材に塗布する第3加工工程を更に有し、
前記張力が解除された前記資材において、前記第1加工が施された部位と前記接着剤が塗布された部位とが所定の位置関係となるように、第3角度位置を調整する他の角度調整工程を更に有し、
前記情報は、前記第1角度位置と調整後の前記第3角度位置との相対角度を特定可能な情報が含まれ、
前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記情報を用いて、前記第3角度位置を設定することが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品の製造方法によれば、接着剤の塗布装置のような加工部として回転体を有さない加工ユニット10においても、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0033】
かかる吸収性物品の製造方法であって、
前記記憶工程においては、前記第1角度位置と、前記他の吸収性物品を製造する前の前記ある吸収性物品を製造する際に行われた前記角度調整工程のうち、最後の前記角度調整工程において調整された前記第2角度位置と、の相対角度を特定可能な情報として記憶することが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品の製造方法によれば、ある吸収性物品の戻し段替えにおいて、前回ある吸収性物品を製造していた際の最後に調整した加工位置に戻すため、より一層速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0035】
所定回転軸回りの回転基準位置を設定するための基準部と、
吸収性物品を製造するために、前記吸収性物品に係る資材を、張力を付与した状態で搬送方向に沿って搬送する搬送機構と、
第1モータ及び該第1モータにより第1回転軸回りに回転する第1加工部を備え、前記搬送方向における第1位置において、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第1回転角度だけ回転した第1角度位置に対応する前記第1モータの回転位置にて、前記資材に第1加工を行う第1加工機構と、
第2モータ及び該第2モータにより第2回転軸回りに回転する第2加工部を備え、前記搬送方向における第2位置において、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第2回転角度だけ回転した第2角度位置に対応する前記第2モータの回転位置にて、前記資材に第2加工を行う第2加工機構と、
前記張力が解除された前記資材において、前記第1加工が施された部位と前記第2加工が施された部位とが所定の位置関係となるように、第2角度位置を調整する制御部と、
情報を記憶するための記憶部と、
を有し、
ある吸収性物品を製造する際に、前記制御部は、前記第2角度位置を調整した後に、第1角度位置と調整後の前記第2角度位置との相対角度を特定可能な情報を記憶部に記憶し、
前記ある吸収性物品を製造した後に、他の吸収性物品を製造し、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記制御部は、前記情報を用いて、前記第2角度位置を設定することを特徴とする吸収性物品製造装置。
【0036】
このような吸収性物品製造装置によれば、前述した吸収性物品の製造方法の場合と同様の作用効果を奏する。
【0037】
===本実施の形態に係る吸収性物品製造方法について===
本実施の形態に係る吸収性物品の製造方法は、吸収性物品製造装置1における吸収性物品の製造で使用される。
【0038】
吸収性物品の例としては、生理用ナプキン、展開型やパンツ型の使い捨ておむつ等を挙げることができるが、着用対象者の排泄液を吸収する物品であればどのようなものでも構わない。
【0039】
吸収性物品は、排泄液を吸収する吸収体と、吸収体の厚さ方向の肌側に配された液透過性のトップシートと、吸収体の非肌側に配されて非肌側への排泄液の漏れを防ぐ液不透過性のバックシートと、弾性部材の一例としての糸ゴムを有している。そして、バックシートは、バックフィルムとバック不織布とを備え、双方が重なることにより形成されている。
【0040】
吸収体は、液体吸収性素材を成形した吸収性コアを有する。液体吸収性素材としては、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー(SAP)を例示できて、ここでは、これらが使用されている。トップシートやバック不織布の素材例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂繊維を含有する不織布を挙げることができ、バックフィルムについては、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルムを例示できる。
【0041】
<<<吸収性物品製造装置1について>>>
図1は、吸収性物品製造装置1の製造ラインの一例を示した模式図である。吸収性物品製造装置1は、搬送される吸収性物品に係る資材に対し、切断加工、プレス加工、貼付加工の各種加工を製品ピッチ(搬送方向における製品の間隔)で繰り返して行うことにより、連続した吸収性物品を該製品ピッチで連続シート状の資材に生成し、最終的に個々の吸収性物品に切り分けて完成品の吸収性物品を製造する装置である。これらの各種加工は、所定の加工を行う加工部を有する加工ユニット10(加工機構に相当)により行われる。各種加工を行う加工ユニット10は、資材の搬送経路上の所定の位置に設けられており、動力源(モータ等)の動力で加工部が動作して加工を行う。なお、
図1については、本発明を分かり易く説明するために、幾つかの加工ユニット10の記載を省略した図としている(以降では、当該加工ユニット10の説明についても省略している)。
【0042】
本実施形態に係る吸収性物品製造装置1は、
図1に示すように、搬送されるトップシートに対して加工を行うトップライン3と、吸収体に対して加工を行う吸収体ライン4と、バックシートに対して加工を行うバックライン5と、トップシートと吸収体とバックシートとが合流地点Aで合流して生成された製品資材シートに対して加工を行う製品ライン2とを有している。
【0043】
トップライン3で搬送されるトップシートはシート状の資材であり、トップシートのトップライン3への搬入は、トップシートがコイル状に巻かれた資材ロールの形態でなされる。すなわち、トップシートが巻かれた資材ロールからトップシートが繰り出され、繰り出されたトップシートは搬送方向(トップシートの連続方向)に不図示の搬送機構によって搬送される。そして、トップシートは各種加工が行われた後に合流地点Aに至り、製品資材シートが生成される。
【0044】
資材ロールから繰り出されてトップライン3を搬送されるトップシートは、エンボス加工ユニット10eに至る。エンボス加工ユニット10eは、製品ピッチでトップシートにエンボス加工を行う装置であり、搬送されるトップシートを挟んで上下一対の回転体からなる加工部を有している。上部ロール11U(回転体)の外周面には所定パターンの凸模様を彫られており、下部ロール11L(回転体)の外周面には上部ロール11Uの外周面の凸部に応じた凹部が彫られている。これらの上部ロール11Uと下部ロール11Lの外周面の凹凸部は、加熱部により加熱されており、加熱された該凹凸部が搬送されるトップシートに対して協働して挟み込む(噛み合う)ことにより、トップシートにエンボス模様の加工が施される。
【0045】
エンボス加工が施されたトップシートは、トップライン3を搬送されて、テープ貼付ユニット10dに至る。テープ貼付ユニット10dは、製品ピッチでトップシートに回転体である転写ロールを用いてファスニングテープの貼付加工を行う装置であり、搬送されるトップシートを挟んでファスニングテープの貼付を行う上下一対の回転体からなる加工部を有している。上部ロール11Uの外周面には吸気口が設けられ吸気により吸着力が発生しており、上部ロール11Uは外周面にファスニングテープを吸着した状態で回転している。上部ロール11Uが回転して外周面に吸着したファスニングテープが下部ロール11Lと対向する位置に至ると、上部ロール11Uは該ファスニングテープの吸着(吸気)を停止する。そして、下部ロール11Lと協働して該ファスニングテープをトップシートと挟み込んで押圧する。ファスニングテープにはトップシートに接合する部分に接着剤が塗布されており、該接着剤をトップシートに押し付けて貼り付けることにより、ファスニングテープの貼付加工が行われる。
【0046】
ファスニングテープが貼り付けられたトップシートは、トップライン3を搬送されて、接着剤塗布ユニット10cに至る。接着剤塗布ユニット10cは、製品ピッチでトップシートにホットメルト接着剤(以下、接着剤ともいう)を塗布する装置であり、ホットメルト接着剤の塗布を行う加工部を有する。該加工部には、液体状のホットメルト接着剤を吐出するノズルが備えられており、該ノズル先端からホットメルト接着剤をトップシートに吐出することにより、ホットメルト接着剤の塗布が施される。
【0047】
ホットメルト接着剤が塗布されたトップシートは、トップライン3を搬送されて、合流地点Aに至る。
【0048】
吸収体ライン4においては、搬送される資材(吸収体)の搬送経路上に設けられた加工ユニット10により各種加工が行われた吸収体が搬送されて合流地点Aに至り、バックライン5においては、搬送される資材(バックシート)の搬送経路上に設けられた加工ユニット10により各種加工が行われたバックシートが搬送されて合流地点Aに至る。
【0049】
そして、合流地点Aでは、トップライン3を搬送されるトップシートと、バックライン5を搬送されるバックシートとが、吸収体ライン4を搬送される吸収体を挟み込むように合流して、トップシートとバックシートが接着剤等で接合されることにより、製品資材シートが生成される。
【0050】
合流地点Aで生成された製品資材シートは、搬送機構により製品ライン2を搬送されて、ロータリーダイカッターユニット10bに至る。ロータリーダイカッターユニット10bは、製品ピッチで製品資材シートに回転体であるロータリーダイカッターを用いて吸収性物品の外形形状を形成する装置であり、搬送される製品資材シートを挟んで上下一対の回転体からなる加工部を有している。上部ロール11Uには切断刃(上刃)が備えられており、下部ロール11Lには上部ロール11Uの切断刃を受けるアンビル(下刃)が備えられている。上部ロール11Uの上刃と下部ロール11Lの下刃は、上部ロール11Uと下部ロール11Lが対向する位置で協働して製品資材シートを切断加工することにより、製品資材シートに吸収性物品の外形形状を形成する。
【0051】
吸収性物品の外形形状を形成した製品資材シートは、製品ライン2を搬送されて、エンド切断ユニット10aに至る。エンド切断ユニット10aは、製品資材シートに製品ピッチで連続して生成された吸収性物品を回転体であるエンドカッターで個々の吸収性物品に切り分ける装置であり、搬送される製品資材シートを挟んで上下一対の回転体からなる加工部を有している。上部ロール11Uには上刃が備えられており、下部ロール11Lには該上刃を受ける下刃が備えられている。上部ロール11Uの上刃と下部ロール11Lの下刃は、上部ロール11Uと下部ロール11Lが対向する位置で協働して製品資材シートの幅方向の一端から他端まで横断するように切断加工する。この切断加工により、製品資材シートに連続して生成された吸収性物品が個々の吸収性物品に切り分けられ、完成品の吸収性物品が製造される。
【0052】
<<<加工ユニット10について>>>
図2は上下一対の回転体により加工を行う加工ユニット10を示した概略図である。
図2の左図は加工ユニット10の正面概略図であり、
図2の右図は加工ユニット10の側面概略図である。
【0053】
前述したとおり、エンド切断ユニット10a、ロータリーダイカッターユニット10b、テープ貼付ユニット10d、エンボス加工ユニット10eは、いずれも上下一対の回転体により加工を行う加工ユニット10であり、
図2のような構成を有している。以下、
図2に示す上下一対の回転体により加工を行う加工ユニット10を回転体加工ユニットとも呼ぶ。そして、
図2を用いて回転体加工ユニットの構成を説明する(接着剤塗布ユニット10cについては後述する)。
【0054】
回転体加工ユニットは、上下一対の回転体である上部ロール11Uと下部ロール11Lの加工部を備えており、上部ロール11Uと下部ロール11Lの対向する対向位置Fを搬送される資材が通過する。そして、対向位置Fを資材が通過する際に、加工部が資材に対して加工を行う。
【0055】
回転体加工ユニットの加工部(上部ロール11U及び下部ロール11L)は、鏡板20の表側(
図2の右図においては鏡板20の左側)に設けられており、鏡板20の表側に設けられたユニット架台15の上に設置される。このユニット架台15はそれぞれの回転体加工ユニットに応じて設けられており、鏡板20の所定の位置に固定されている。そして、ユニット架台15への回転体加工ユニットの加工部の設置は、回転体加工ユニットの交換部を設置することにより行われる。この交換部とは、後述する吸収性物品製造装置1の段替えにおいて、加工部と別の加工部とを交換するためのユニットを構成している部分であり、加工部と位置決め部を有している。そして、回転体加工ユニットの交換部の設置の際には、位置決め部による設置位置の位置決めが行われ、
図2の左図に示すように、回転体加工ユニットの交換部下部に設けられた凹部10nと、ユニット架台15の回転体加工ユニット交換部設置面(交換部の底面と接する面)に設けられた凸部15aとが嵌め合わされる。
【0056】
つまり、凹部10nと凸部15aを嵌め合せることにより、回転体加工ユニットがユニット架台15の所定の位置に設置されることとなり、それぞれの回転体加工ユニットは、吸収性物品製造装置1の資材搬送ラインの所定の位置に設けられることとなる。そのため、例えば、ある回転体加工ユニットの交換部(例えば、エンド切断ユニット10a)を一度取り外してから再度取り付けた場合でも、取り外し前と取り付け後において他の回転体加工ユニット(例えば、ロータリーダイカッターユニット10b)との資材の搬送経路上の距離が等しくなる。
【0057】
図2の右図に示すように、鏡板20の裏側(
図2の右図においては鏡板20の右側)には動力源として駆動部30が設けられている。駆動部30は、1つの回転体加工ユニットに対して、1つずつ設けられている。本実施の形態に係る駆動部30は、駆動回転するモータの一例としてのサーボモータであり、鏡板20の裏側に固定されている。また、サーボモータはエンコーダーを有しており、該エンコーダーはサーボモータの回転角度を検出して、後述する制御部50へ検出結果を送信する。エンコーダーの例としては、光学式や磁気式のエンコーダーが挙げられる。
【0058】
駆動部30の駆動軸31には駆動歯車32が備えられており、上部ロール歯車13Uと噛み合っている。すなわち、駆動部30が駆動回転すると、駆動歯車32が駆動軸31を介して回転し、上部ロール歯車13Uを回転させる。
【0059】
上部ロール回転軸12Uは、鏡板20の裏側から表側まで貫通して備えられた不図示の支持部により回転自在に支持されており、一端側に上部ロール歯車13Uが固定されて他端側に上部ロール11Uが固定されている。すなわち、駆動部30が駆動回転すると上部ロール歯車13Uが回転し、上部ロール歯車13Uが回転すると、上部ロール回転軸12Uを介して上部ロール11Uが回転する。
【0060】
下部ロール11Lも上部ロール11Uと同じ構成をしており、下部ロール歯車13Lが回転すると、下部ロール回転軸12Lを介して下部ロール11Lが回転する。そして、下部ロール歯車13Lは上部ロール歯車13Uと、回転方向が反対になるように噛み合っている。すなわち、上部ロール歯車13U(上部ロール11U)が右回転をした場合には、下部ロール歯車13L(下部ロール11L)は左回転するように、互いの歯車が噛み合わされている。
【0061】
また、一般的には上部ロール11Uと下部ロール11Lとが同じ回転速度で回転するように上部ロール歯車13Uと下部ロール歯車13Lとが噛み合わされており、本実施形態においても、そのように構成されている。例えば、上部ロール11Uの上刃と下部ロール11Lの下刃が対向位置Fにおいて資材の切断加工を実行してから、上部ロール11Uが360度回転すると下部ロール11Lも360度回転し、対向位置Fでは該上刃と該下刃が再度同じ切断加工をするように構成されている。
【0062】
次に、接着剤塗布ユニット10cの構成について説明する。接着剤塗布ユニット10cは、鏡板20の表側に設けられており、鏡板20の所定の位置に固定されている。接着剤塗布ユニット10cでは、トップシートとバックシートを接着するためのホットメルト接着剤をトップシートの接合面に塗布するため、該接合面がある側に設けられている。
【0063】
ホットメルト接着剤の塗布装置(加工部であるノズル)へのホットメルト接着剤の供給は、吸収性物品製造装置1に備えられた溶融タンクから行われる。溶融タンクはホットメルト接着剤を固体状から液体状に溶融し、該液体状のホットメルト接着剤を通過管を通じて、ホットメルト接着剤の塗布装置に供給する。そして、ホットメルト接着剤の塗布装置は、塗布装置がホットメルト接着剤を塗布する位置に資材の所定の加工位置(塗布位置)が搬送されてきたら、ノズルからのホットメルト接着剤の吐出を開始し、資材の所定の加工位置(塗布位置)にホットメルト接着剤を塗布する。
【0064】
また、エンド切断ユニット10a乃至エンボス加工ユニット10eは、各々の加工目的に応じた機能とその調整機能を備えている。例えば、エンボス加工ユニット10eのエンボス加工を行う加工ユニット10であれば、凹凸部を加熱する加熱部と加熱された凹凸部の温度を加熱部の加熱温度により調整する温度調整機能を備えている(温度調整工程に相当)。加えて、凹凸部(上部ロール11Uと下部ロール11L)を押さえつける加圧部と押さえつける加圧力を調整する圧力調整機能を備えている(加圧力調整工程に相当)。
【0065】
<<<加工ユニット10の動作について>>>
次に、吸収性物品製造装置1の加工ユニット10の動作について説明する。
【0066】
それぞれの加工ユニット10は、完成した吸収性物品の所定の位置に所定の加工をする必要がある。すなわち、搬送される資材の所定の位置に所定の加工をする必要がある。所定の位置から外れた位置に加工が施されていると、完成した吸収性物品は不良品となり廃棄しなければならない。そのため、それぞれの加工ユニット10の加工位置が資材の所定の位置になるように加工ユニット10の動作を制御する必要がある。
【0067】
本実施の形態においては、加工ユニット10の動作を制御するために吸収性物品製造装置1に1つの基準部が備えられている。該基準部は原点を有しており、それぞれの加工ユニット10の動作の基準となる。つまり、それぞれの加工ユニット10は、基準部の動作の開始(停止)と同時に動作を開始(停止)し、基準部の原点の動きを基準として連動する。加工ユニット10には、加工角度が設定されており、加工角度は、基準部の原点が回転して加工角度に至ると該加工角度が設定された加工ユニット10が搬送される資材の所定の位置に加工を行うように設定される。
【0068】
つまり、加工ユニット10の加工角度は、それぞれの加工ユニット10により異なり、その加工ユニット10の加工部のどの位置が加工を施すか(例えば、加工部が回転体かつ切断装置であれば該回転体の回転軸まわりのどの位置にカッターを備えているか)、その加工ユニット10が搬送される資材の搬送方向のどの位置に加工を行うか、その加工ユニット10が搬送経路上のどの位置に設けられているか等の条件を考慮して設定される。すなわち、それぞれの加工ユニット10には個々の加工角度が設定される。
【0069】
そして、本実施の形態においては、それぞれの加工ユニット10は基準部に対して次のように動作する。すなわち、それぞれの回転体加工ユニットの加工部は、基準部の原点が一回転すると同じように一回転し、基準部の原点が0度(基準部角度とも呼ぶ)に位置する際には、それぞれの回転体加工ユニットの加工部(回転体)も同じように0度(回転体角度とも呼ぶ)に位置することとする(つまり、回転体角度については、基準部の原点が0度に位置するときの加工部(回転体)の角度を0度と定義する)。そして、加工角度とは、基準部角度(回転体角度)がその角度になったときに、加工部が資材に対して加工を行う角度を意味する。例えば、加工角度が90度に設定されたのであれば、基準部の原点と回転体が連動して回転して、基準部角度(回転体角度)が90度となったときに、加工部が資材に対して加工を行う。
【0070】
また、基準部の原点が0度の位置が製品ピッチの一端に対応することとし、基準部の原点が一回転した360度の位置が製品ピッチの他端に対応することとする。つまり、資材に連続して生成される吸収性物品に対して、吸収性物品の搬送方向下流側の一端を0度とし、上流側の他端を360度(搬送方向上流側の次の吸収性物品の一端であり0度)とする(回転体加工ユニットではない接着剤塗布ユニット10cについては後述する)。
【0071】
本実施の形態においては、基準部をエンド切断ユニット10aの駆動部30としており、基準部の原点を該駆動部30の駆動軸31(駆動歯車32)の回転角度0度の位置に設定する。つまり、所定回転軸回り(エンド切断ユニット10aの駆動軸31)の回転基準位置(基準部の原点位置)を設定する(基準設定工程に相当)。そして、基準部の原点を基準として、それぞれの加工ユニット10の加工角度が設定される。ここでは、エンド切断ユニット10aの加工角度が0度、ロータリーダイカッターユニット10bの加工角度が30度、テープ貼付ユニット10dの加工角度が60度、エンボス加工ユニット10eの加工角度が90度に、それぞれ設定されることとして、後の説明を行う。
【0072】
また、回転体加工ユニットの加工部は、それぞれの回転体加工ユニットの駆動部30を駆動源として回転する。そして、駆動部30のモータはエンコーダーを有しており、その回転角度を後述する制御部50が検知することにより、制御部50は回転体加工ユニットの加工部の回転角度(前記回転体角度)を認識している。つまり、制御部50は、駆動部30の回転角度を介して回転体加工ユニットの回転角度を認識している。そのため、それぞれの回転体加工ユニットの加工角度に対応する回転角度(回転位置)がそれぞれの駆動部30に存在する。
【0073】
つまり、搬送方向における第1位置(例えば、ロータリーダイカッターユニット10bが位置する位置)において、第1モータにより第1回転軸回りに回転する第1加工部を用いて、回転基準位置(基準部角度が0度の位置)から所定回転軸回りに第1回転角度(加工角度であり上記例では30度)だけ回転した第1角度位置に対応する第1モータの回転位置にて、資材に第1加工を行い(第1加工工程に相当)、搬送方向における第2位置(例えば、エンボス加工ユニット10eが位置する位置)において、第2モータにより第2回転軸回りに回転する第2加工部を用いて、回転基準位置から所定回転軸回りに第2回転角度(上記例では90度)だけ回転した第2角度位置に対応する第2モータの回転位置にて、資材に第2加工を行う(第2加工工程に相当)。
【0074】
接着剤塗布ユニット10cは、上記の回転体加工ユニットのように回転体を有していないが、基準部の原点の回転角度を製品ピッチに割り当てて、加工位置を回転角度に変換することにより、上記と同じように制御することが可能である。前述したように、資材に連続して生成される吸収性物品の搬送方向下流側の一端が基準部の原点の0度に対応し、上流側の他端が基準部の原点の360度に対応する。そして、資材の所定の位置にホットメルト接着剤が塗布されるようにノズルがホットメルト接着剤を吐出するタイミングを基準部の原点の0度から360度までの回転角度に変換して、変換した該回転角度を接着剤塗布ユニット10cの加工角度とする。このようにすると、基準部の原点の回転角度とノズルからホットメルト接着剤を吐出するタイミングを関連付ける(加工角度とする)ことができるため、接着剤塗布ユニット10cの動作(例えば、ノズルの弁の開閉)を上記回転体加工ユニットと同じように基準部の動作に基づいて制御することが可能となる。
【0075】
つまり、搬送方向における第3位置(接着剤塗布ユニット10cが位置する位置)において、第3加工部(ノズル)用いて、回転基準位置から所定回転軸回りに第3回転角度(接着剤塗布ユニット10cの加工角度)だけ回転したタイミングにて、接着剤を資材に塗布する(第3加工工程に相当)。
【0076】
ここまでは加工ユニット10の動作として、それぞれの加工ユニット10が基準部の動きに基づいて動作することを説明したが、以下では、搬送される資材の伸長状態等の変化に対して個々の加工ユニット10の加工位置を個々に調整することにより、搬送される資材の所定の位置に加工を行う動作の制御について説明する。
【0077】
本実施の形態においては、搬送される資材はシート状であるため、資材が支持されていない場所(例えば、加工ユニット10と加工ユニット10の間)では、資材が容易に資材の厚み方向へ撓んでしまう。そして、搬送される資材が撓んでしまうと、加工ユニット10を資材が通過する際に、幅方向の所定の通過位置から外れたり、資材にしわが生じてしまう可能性がある。つまり、加工不良の原因となり得る。そのため、資材を搬送する搬送機構は、吸収性物品に係る資材を、張力を付与した状態で搬送方向に沿って搬送する(搬送工程に相当)。そして、本実施の形態においては、テンション調整装置(
図3参照)を用いて資材に前記張力を付与している。つまり、吸収性物品に係る資材に付与する張力を調整する調整機能を有している(張力調整工程に相当)。
【0078】
吸収性物品に係るシート状の資材は、不織布等の伸長性を有した素材により構成されている。そのため、資材に張力を付与した状態で搬送すると、資材は常に伸長した状態で搬送されることとなる。テンション調整装置は、資材の伸長状態が一定になるように、一定の張力を付与しているが、シート状の資材の厚みや幅には一定のばらつきがあり、該ばらつきにより資材の伸長状態が変化する。また、吸収性物品製造装置1の周辺環境や資材を保管していた場所の温度や湿度等の環境によっても、資材に含まれる水分量等の影響により資材の伸長状態が変化する。また、資材(トップシート)が資材ロールより繰り出されて搬送されることは前述したが、この資材ロールは資材シートを運搬するために生成されたものであり、一般的には軸心部に一定の回転速度で資材シートを巻き付けることにより生成される。そのため、軸心部から半径方向に近い資材シートと遠い資材シートで巻き付けられた際に受けた張力が異なり、資材の伸長状態が異なっている。すなわち、搬送される資材の伸長状態は、吸収性物品を製造している間にも時々刻々と変化する。したがって、加工ユニット10の加工位置を資材の伸長状態に合わせた所定の位置になるように、加工ユニット10の動作を制御する必要がある。
【0079】
本実施の形態に係る吸収性物品製造装置1には、前記の動作の制御を行うために加工位置検出部40と制御部50が備えられている。
図3は、制御部50と他の装置の関係を示した図である。
【0080】
加工位置検出部40は、搬送される資材に加工された各種加工の加工位置を検出する装置であり、資材の搬送経路に沿って設けられている。例えば、エンボス加工の加工範囲を検出する装置や、ファスニングテープの貼付位置を検出する装置である。それぞれの加工位置検出部40は、各種加工位置を検出して該検出結果を制御部50に送信する。加工位置検出部40の例としては、撮像装置や光電管が挙げられる。
【0081】
制御部50は、分析部51と記憶部52を有しており、加工位置検出部40、駆動部30(詳しくは、駆動部30が有しているエンコーダー)等から送信される資材の加工位置や駆動軸31の回転角度等の情報を受信する。そして、受信した情報や記憶部52に記憶している情報を分析部51で分析して加工位置のずれ量を演算する。そして、該ずれ量が所定の閾値を超えている場合には、その加工を行っている加工ユニット10の加工のタイミングを調整する。
【0082】
加工位置検出部40が撮像装置の場合を一例として挙げると、該加工位置検出部40は、対応する加工の加工位置の画像を製品ピッチで(基準部と同期して)撮影して制御部50に送信する。制御部50には、該加工位置検出部40が対応する加工の基準加工位置が示された画像(例えば、ある加工位置(基準位置)に対して該加工がなされるべき加工位置が示された画像)が記憶部52に記憶されており、分析部51が該基準加工位置の画像を記憶部52から読み出して、送信されてきた画像の加工位置と比較する。そして、対象となる加工部分の基準加工位置からの加工位置のずれ量を演算する。それぞれの加工の加工位置には、基準加工位置とのずれ量の閾値が設定されており、このずれ量が閾値を超えるような場合には、制御部50が該加工ユニット10(回転体加工ユニット)の駆動部30の回転速度を調整する。
【0083】
この回転体加工ユニットの駆動部30の回転速度の調整は、ずれ量が閾値を超えた回転体加工ユニットに設定された加工角度を調整(再設定)するために行われる。例えば、回転体加工ユニットの加工のタイミングが遅いためにずれ量が閾値を超えた場合には、基準部の原点と該回転体加工ユニットの加工角度との位相差が小さくなるように加工角度を再設定する。このようにすれば、該回転体加工ユニットの加工のタイミングのみを早めることができる。具体的には、ずれ量が閾値より小さくなるまで、該回転体加工ユニットの駆動部30の回転速度(上部ロール11U及び下部ロール11Lの回転速度)を一時的に速くする(加工のタイミングが早いためにずれ量が閾値を超えた場合は一時的に遅くする)。そして、ずれ量が閾値内に入れば、一時的に速くした(遅くした)回転速度を元の回転速度に戻す、という調整がなされ、結果として、加工角度が再設定される。
【0084】
つまり、張力が解除された資材(すなわち、完成品の吸収性物品)において、第1加工(例えば、ロータリーダイカッターユニット10bの加工)が施された部位と第2加工(例えば、エンボス加工ユニット10eの加工)が施された部位とが所定の位置関係となるように、第2角度位置(例えば、エンボス加工ユニット10eの加工角度)を調整する(角度調整工程に相当)。
【0085】
接着剤塗布ユニット10cの加工角度の再設定については、接着剤を吐出するタイミングを調整する。すなわち、加工角度を再設定して、ノズル弁の開閉のタイミングを調整する。つまり、張力が解除された資材において、第1加工(例えば、ロータリーダイカッターユニット10bの加工)が施された部位と接着剤が塗布された部位(接着剤塗布ユニット10cの塗布(加工)位置)とが所定の位置関係となるように、第3角度位置(接着剤塗布ユニット10cの加工角度)を調整する(他の角度調整工程に相当)。
【0086】
本実施の形態においては、角度調整工程において調整されたそれぞれの加工ユニット10の加工角度(再設定された加工角度)を記憶部52に記憶する。つまり、角度調整工程の後に第1角度位置(例えば、ロータリーダイカッターユニット10bの加工角度)と調整後の第2角度位置(例えば、再設定されたエンボス加工ユニット10eの加工角度)との相対角度を特定可能な情報(例えば、双方の加工角度)を記憶する(記憶工程に相当)。接着剤塗布ユニット10cの場合であれば、第1角度位置(例えば、ロータリーダイカッターユニット10bの加工角度)と調整後の第3角度位置(再設定された接着剤塗布ユニット10cの加工角度)との相対角度を特定可能な情報(例えば、双方の加工角度)を記憶する(記憶工程に相当)。
【0087】
また、前述したとおり、エンド切断ユニット10a乃至エンボス加工ユニット10eは、各々の加工目的に応じた機能とその調整機能を備えている。例えば、エンボス加工ユニット10eのエンボス加工を行う加工ユニットであれば、温度調整工程と加圧力調整工程を実行する調整機能(装置)を備えている。そして、本実施の形態においては、これらの調整機能により調整された加熱温度や加圧力等もそれぞれの加工ユニット10の加熱温度や加圧力等として記憶部52に記憶する(記憶工程に相当)。
【0088】
そして、以下で説明する吸収性物品製造装置1の段替えの際に、この記憶部52に記憶した加工角度等の情報を用いて段替えする。
【0089】
<<<吸収性物品製造装置1の段替えについて>>>
次に、吸収性物品製造装置1の段替えについて説明する。吸収性物品製造装置1の段替えとは、吸収性物品製造装置1で製造する吸収性物品の製品の仕様を変更することである。製品の仕様とは、製品の寸法、形状等のことであり、製品の仕様の変更とは、例えば、寸法であればMサイズからLサイズに変更する場合であり、形状であれば生理用ナプキンを羽根つきから羽根なしに変更する場合や、エンボス加工のパターン形状を変更する場合である。吸収性物品の製造においては、1日毎や1日の交代勤務の交代毎に(つまり、頻繁に)製造する吸収性物品の製品の仕様を変更することがあり、その度に吸収性物品製造装置1の段替えが行われる。
【0090】
本実施の形態に係る吸収性物品製造装置1の段替えでは、吸収性物品に係る資材や各種加工を行う加工部を変更される仕様に合わせて交換するため、一部を交換することもあれば、全てを交換することもある。また、加工部の交換においては、加工ユニット10の交換部を取り外して、別の加工ユニット10の交換部を取り付ける。そのため、段替えのために交換された交換前後の加工ユニット10の交換部は、同じような構成をしている。
【0091】
また、吸収性物品製造装置1においては、同じ製品の仕様による吸収性物品の製造が間欠的に繰り返して行われる。つまり、ある吸収性物品を製造した後に、他の吸収性物品を製造してから再度ある吸収性物品を製造するように、吸収性物品の製品の仕様に合わせて間欠的に繰り返し段替えが行われる。すなわち、ある製品から他の製品を挟んで元の製品の仕様に戻す段替えが行われる。以下では、この戻す段替えについて説明する。
【0092】
<元の製品の仕様に戻す段替えについて>
本実施の形態においては、元の製品の仕様に戻す段替えとして、上記で説明したエンド切断ユニット10a乃至エンボス加工ユニット10eを用いてある吸収性物品を製造し、エンド切断ユニット10a乃至エンボス加工ユニット10eのうちのロータリーダイカッターユニット10bの交換部とエンボス加工ユニット10eの交換部をそれぞれ別の加工ユニット10(回転体加工ユニット)の交換部に交換して、他の吸収性物品を製造する段替えを行い、他の吸収性物品を製造した後に、それぞれの別の加工ユニット10の交換部をロータリーダイカッターユニット10bとエンボス加工ユニット10eの交換部に交換して、前記ある吸収性物品の製造に戻す段替えを行う。
【0093】
図4は、上下一対の回転体により加工を行う加工ユニット10の交換部を鏡板20から取り外した図である。ここでは、戻し段替えについて説明するため、他の吸収性物品を製造するための別の回転体加工ユニットの交換部を取り外した図となる。
図4に示すように、戻し段替えのため別の回転体加工ユニットの交換部を取り外す際には、回転体加工ユニットの加工部である上部ロール11U及び下部ロール11Lと共に、上部ロール回転軸12U及び下部ロール回転軸12Lと、上部ロール歯車13U及び下部ロール歯車13Lを取り外す。つまり、駆動歯車32と上部ロール歯車13Uの噛み合いを解除して、回転体加工ユニットの交換部を取り外す。このような取り外し方法であれば、鏡板20の所定の位置に固定された駆動部30を交換しなくてよいため、段替えにより加工ユニット10の加工部が交換されても、該加工ユニット10の駆動部30のエンコーダーを通電したままの状態とすることができる(サーボモータ自体は誤動作防止等のため非通電でもよい)。
【0094】
次に、ロータリーダイカッターユニット10bとエンボス加工ユニット10eの交換部を別の回転体加工ユニットの交換部が設置されていた位置に取り付ける。前述したとおり、交換前後の回転体加工ユニットの交換部はそれぞれ同じような構成をしている。すなわち、ロータリーダイカッターユニット10bとエンボス加工ユニット10eの交換部は、加工部と共に、上部ロール回転軸12U及び下部ロール回転軸12L、上部ロール歯車13U及び下部ロール歯車13Lを有している。また、前述したように、ロータリーダイカッターユニット10bとエンボス加工ユニット10eの交換部下部には凹部10nが設けられている。したがって、該凹部10nとユニット架台15の凸部15aとで搬送経路上の位置決めを行い、上部ロール歯車13Uと駆動歯車32とを噛み合わせて取り付けることにより、ロータリーダイカッターユニット10bとエンボス加工ユニット10eの交換部を交換することができる。
【0095】
そして、ロータリーダイカッターユニット10bとエンボス加工ユニット10eは前回(それぞれ別の加工ユニット10に交換される前)のある吸収性物品の製造において、それぞれの加工角度が角度調整工程により調整され、この調整された(再設定された)それぞれの加工角度が記憶部52に記憶されている。本実施の形態においては、これらの記憶部52に記憶されているそれぞれの加工角度を用いて、ロータリーダイカッターユニット10bとエンボス加工ユニット10eを前回ある吸収性物品の製造をしていた状態に戻す段替えを行う。更に、交換した加工ユニット10だけではなく、吸収性物品製造装置1のそれぞれの加工ユニット10(交換されていない加工ユニット10)に対しても、この記憶部52に記憶されたそれぞれの加工ユニット10の加工角度を用いて前回ある吸収性物品を製造していた状態に戻す。
【0096】
つまり、ある吸収性物品を製造した後に、他の吸収性物品を製造し、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記情報(記憶部52に記憶された加工角度)を用いて、第2角度位置(例えば、エンボス加工ユニット10eの加工角度)を設定する。本実施の形態に係る戻し段替えとは、それぞれの加工ユニット10が前回ある吸収性物品を製造していた状態に戻る段替えをいう。
【0097】
以下では、
図5を用いて、当該戻し段替えの手順について、エンボス加工ユニット10eを例に挙げて説明する。
図5は、戻し段替えの手順を説明するための説明図である。
【0098】
図5の上図には、前回エンボス加工ユニット10eの交換部を取り外す直前のエンボス加工ユニット10eの状態が示されている。
図5の左側には、
図2の右図の左側からみたエンボス加工ユニット10eの正面概略図が示されており、上部ロール11Uの内側には三角形状が表示されている。この三角形状は、エンボス加工の模様生成部(上部ロール11Uの外周面に彫られた凸模様)を表しており、当該模様生成部が資材に対向した際に(換言すれば、
図5において、当該模様生成部が6時の位置に位置して下向きになった際に)資材にエンボス加工を行う。
【0099】
また、本実施の形態においては、前述した基準部角度(回転体角度)が0度のときに、エンボス加工ユニット10eの交換を行うこととする。つまり、
図5の上図には、基準部角度(回転体角度)が0度のときのエンボス加工ユニット10eの状態が示されている。また、ここでは、加工角度は90度に設定されており、前記記憶部52にも加工角度が90度であることが記録されていることとする(したがって、
図5の上図においては、三角形状が9時の位置に位置しており、当該上図の状態から90度反時計回りに上部ロール11Uが回転すると模様生成部が資材に対向するようになっている)。したがって、本例における戻し段替えにおいては、以下で説明する戻し段替えが完了した際においても、当該上図と同様に、加工角度が90度になるように(つまり、基準部角度0度から基準部の原点と回転体(上部ロール11U)が連動して回転した際に、模様生成部が資材に対向するように)することが目的(目標)となる。
【0100】
図5の中央図は、戻し段替えが行われた直後のエンボス加工ユニット10eの状態を示した図である。戻し段替えを行う際には、回転体加工ユニットの交換部の取り付けを行うこととなるが、この場合に、前記模様生成部が何時の位置に位置することになるかは不定である(取り付けの度に、区々である)。今回は、
図5の中央図に示すように、作業者が交換部を取り付けた結果、模様生成部の位置が8時の位置になったこととしている。そして、当然のことながら、吸収性物品製造装置1(制御部50)は、模様生成部が何時の位置に位置した状態で交換部の取り付けが行われたかを把握することができない。
【0101】
そこで、先ず、制御部50は、上部ロール11U(及び下部ロール11L)を回転させて、模様生成部を12時の位置に位置させる(
図5の下図参照。つまり、12時の位置に位置させると共に、12時の位置に模様生成部が位置することを把握する)。本実施の形態においては、鏡板20にドグ検出部41aが設けられ、上部ロール11U側(具体的には、上部ロール歯車13U)にブラケット41cを介してドグ41bが設けられている。そして、ドグ41bは、ドグ41bがドグ検出部41aに対向した(ドグ検出部41aがドグ41bを検出した)際に模様生成部が12時の位置に位置するような位置に、取り付けられている。したがって、制御部50が、
図5の下図に示すように、上部ロール11U(及び下部ロール11L)を回転させ、ドグ検出部41aからドグ検出に係る通知を受信したタイミングで上部ロール11U(及び下部ロール11L)の回転を止めることにより、模様生成部を12時の位置に位置させることができる。
【0102】
次に、制御部50は、戻し段替え開始前に保存しておいた加工角度を記憶部52から読み出す。そして、当該加工角度を用いて、戻し段替え後の加工角度の設定を行う。具体的には、以下の通りとなる。
【0103】
すなわち、
図5の下図の状態は、加工角度が180度の状態(つまり、基準部角度0度から基準部の原点と回転体(上部ロール11U)が連動して180度回転した際に、模様生成部が資材に対向する状態)となっているので、設定すべき加工角度(記憶部52から読み出した加工角度)である90度にするためには、上部ロール11Uを反時計回りに90度回転させる必要がある。すなわち、制御部50は、180度−90度=90度という演算を行い、上部ロール11Uを反時計回りに90度回転させる。このことにより、エンボス加工ユニット10eの状態は、
図5の上図の状態、すなわち、加工角度が90度の状態(つまり、基準部角度0度から基準部の原点と回転体(上部ロール11U)が連動して回転した際に、模様生成部が資材に対向する状態)となり、エンボス加工ユニット10eの戻し段替えが完了する。
【0104】
なお、本手順では、基準部角度が0度のときに(換言すれば、0度でなければ0度に戻して)、エンボス加工ユニット10eの交換を行うこととしたが、これに限定されるものではなく、基準部角度が0度でないときに交換を行うことも可能である。かかるケースにおいては、戻し段替えが行われる際に、この分の補正がさらに必要となる。
【0105】
例えば、基準部角度が30度のときに交換を行った場合には、
図5の下図の状態は、加工角度が210度(=180度+30度)の状態(つまり、基準部角度0度から基準部の原点と回転体(上部ロール11U)が連動して210度回転した際に、模様生成部が資材に対向する状態)となる。したがって、上部ロール11Uを反時計回りに120度(=210度−90度)回転させることで、加工角度が90度の状態を作り出すこととなる。
【0106】
また、前述したとおり、接着剤塗布ユニット10cにおいても、前回ある吸収性物品から他の吸収性物品に段替えされる際に、調整された加工角度が接着剤塗布ユニット10cの加工角度として記憶部52に記憶されている。したがって、接着剤塗布ユニット10cについても、記憶部52に記憶されている加工角度を用いて戻し段替えを行う。つまり、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記情報(記憶部52に記憶された加工角度)を用いて、第3角度位置(接着剤塗布ユニット10cの加工角度)を設定する。
【0107】
また、前述したとおり、それぞれの加工ユニット10の調整機能により調整された加熱温度や加圧力等もそれぞれの加工ユニット10の加熱温度や加圧力等として記憶部52に記憶されている。そして、本実施の形態においては、これらの記憶部52に記憶されているそれぞれの加工ユニット10の加熱温度や加圧力等を用いて戻し段替えを行う。つまり、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記加熱部(加圧部)は、記憶された前記加熱温度(加圧力)にて加熱(加圧)する。
【0108】
また、本実施の形態においては、前回のある吸収性物品の製造において最後に調整された加工ユニット10の加工角度を用いて戻し段替えを行う。つまり、記憶工程においては、第1角度位置(例えば、ロータリーダイカッターユニット10bの加工角度)と、他の吸収性物品を製造する前のある吸収性物品を製造する際に行われた角度調整工程のうち、最後の角度調整工程において調整された第2角度位置(例えば、エンボス加工ユニット10eの加工角度)と、の相対角度を特定可能な情報(例えば、双方の加工角度)として記憶する。したがって、加工ユニット10の加工角度の記憶部52への記憶は、調整(再設定)の度に記憶してもよいし、他の吸収性物品に段替えする直前のみ記憶してもよい。
【0109】
<<<本実施の形態の有効性について>>>
前述したとおり、本実施の形態に係る吸収性物品の製造方法においては、所定回転軸回りの回転基準位置を設定する基準設定工程と、ある吸収性物品を製造するために、前記ある吸収性物品に係る資材を、張力を付与した状態で搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、前記搬送方向における第1位置において、第1モータにより第1回転軸回りに回転する第1加工部を用いて、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第1回転角度だけ回転した第1角度位置に対応する前記第1モータの回転位置にて、前記資材に第1加工を行う第1加工工程と、前記搬送方向における第2位置において、第2モータにより第2回転軸回りに回転する第2加工部を用いて、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第2回転角度だけ回転した第2角度位置に対応する前記第2モータの回転位置にて、前記資材に第2加工を行う第2加工工程と、前記張力が解除された前記資材において、前記第1加工が施された部位と前記第2加工が施された部位とが所定の位置関係となるように、前記第2角度位置を調整する角度調整工程と、前記角度調整工程の後に、前記第1角度位置と調整後の前記第2角度位置との相対角度を特定可能な情報を記憶する記憶工程と、を有する製造方法によって、前記ある吸収性物品を製造し、前記ある吸収性物品を製造した後に、他の吸収性物品を製造し、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記情報を用いて、前記第2角度位置を設定することとした。そのため、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0110】
従来は、製品の仕様に合わせて加工ユニット10を交換することにより、吸収性物品製造装置1の段替えを行っていた。この加工ユニット10を交換して吸収性物品製造装置1を段替えする方法では、戻し段替えの際に長時間を費やすこととなり、生産性が低下する問題があった。つまり、吸収性物品製造装置1の段替えを行う度に製造条件がリセットされて、戻し段替えを行う製品の仕様に合わせて一から資材に対し加工を行う加工位置の調整が必要となっていた。
【0111】
これに対し本実施の形態においては、前述したように、前回のある吸収性物品を製造する際に調整された加工角度を記憶部52に記憶させて、ある吸収性物品の戻し段替えをする際に、前記記憶させた加工角度を戻し段替えの際の加工角度として用いることとした。そのため、戻し段替え後の加工ユニット10が資材に対して加工を行う加工位置が前回ある吸収性物品を製造していた際に調整された加工位置となり(すなわち、前回の状態に戻り)、一から(初期の設置状態から)加工位置の調整をする必要がない。すなわち、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0112】
また、前記記憶工程においては、前記第1角度位置と、前記他の吸収性物品を製造する前の前記ある吸収性物品を製造する際に行われた前記角度調整工程のうち、最後の前記角度調整工程において調整された前記第2角度位置と、の相対角度を特定可能な情報として記憶することとした。つまり、ある吸収性物品の戻し段替え後の資材に対して加工を行う加工位置が前回ある吸収性物品を製造していた際の最後に調整された加工位置となるため、より一層速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0113】
また、前記第2加工部を備えた第2加工ユニットは加熱部を備え、前記加熱部の加熱温度を調整する温度調整工程を更に有し、前記記憶工程において、調整後の前記加熱温度を記憶し、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記加熱部は、記憶された前記加熱温度にて加熱することとした。つまり、ある吸収性物品に戻し段替え後の加熱部の加熱温度が前回ある吸収性物品を製造していた際に調整された加熱温度となり、一から加熱温度の調整をする必要がないため、より一層速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0114】
また、前記第2加工部を備えた第2加工ユニットは加圧部を備え、前記加圧部の加圧力を調整する加圧力調整工程を更に有し、前記記憶工程において、調整後の前記加圧力を記憶し、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記加圧部は、記憶された前記加圧力にて加圧することとした。つまり、ある吸収性物品の戻し段替え後の資材に対し加圧を行う加圧力が前回ある吸収性物品を製造していた際に調整された加圧力となり、一から加圧力の調整をする必要がないため、より一層速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0115】
また、前記搬送方向における第3位置において、第3加工部用いて、前記回転基準位置から前記所定回転軸回りに第3回転角度だけ回転したタイミングにて、接着剤を前記資材に塗布する第3加工工程を更に有し、前記張力が解除された前記資材において、前記第1加工が施された部位と前記接着剤が塗布された部位とが所定の位置関係となるように、第3角度位置を調整する他の角度調整工程を更に有し、前記情報は、前記第1角度位置と調整後の前記第3角度位置との相対角度を特定可能な情報が含まれ、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際に、前記情報を用いて、前記第3角度位置を設定することとした。そのため、接着剤の塗布装置のような加工部として回転体を有さない加工ユニット10においても、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0116】
===第二実施の形態===
次に、第二実施の形態について説明する。
図6の上図は、
図2の右図に対応するもので、第二実施の形態に係る加工ユニット10の側面概略図であり、
図6の下図は、第二実施の形態に係る上部ロール回転軸12Uの嵌め合い部における断面形状を3つ示した図である。
【0117】
第二実施の形態においては、回転体加工ユニットの交換部の交換の際に、上部ロール歯車13Uと駆動歯車32の噛み合わせを解除するのではなく、上部ロール回転軸12Uをカップリング(軸継手)で着脱することにより回転体加工ユニットの交換部の交換を行う。そのため、第二実施の形態に係る回転体加工ユニットは、上部ロール歯車13Uに設けられた上部ロール回転軸12U(以下、駆動部30側の回転軸ともいう)と、上部ロール11Uに設けられた上部ロール回転軸12U(以下、交換部側の回転軸ともいう)と、の2つの上部ロール回転軸12U(以下、2つの回転軸ともいう)を備えており、2つの回転軸には嵌め合い部(軸と穴)が設けられている。そして、この2つの回転軸に設けられた嵌め合い部の断面は円形状ではなく、一部変形している。
【0118】
図6の下図に嵌め合い部の軸側断面形状として用いることができる例を3つ示している。つまり、
図6の下図の左側の断面形状のような、回転軸中心から外周まである角度をもって切り欠きを有した形状や、
図6の下図の中央の断面形状のような、半径方向に交差する方向に平面を有するような切り欠きを有した形状や、
図6の下図の右側の断面形状のように、円形に突起した部位を有する水滴状のような形状を用いることができる。そして、嵌め合い部の穴側断面形状は、このような軸側断面形状に応じた断面形状となる。すなわち、回転軸が切り欠き部を有していれば相手側はそれに対応した突起部を有し、回転軸が突起部を有していれば相手側はそれに対応した切り欠き部を有する。そうすると、2つの回転軸の着脱が2つの回転軸の断面形状が一致する場合のみ可能となる。
【0119】
次に、第二実施の形態においても、段替えの前後においてそれぞれの回転体加工ユニットが有する駆動部30のエンコーダーは通電したままの状態である。つまり、他の吸収性物品を製造した後、再度ある吸収性物品を製造するまで、第1モータ(例えば、ロータリーダイカッターユニット10bに配された駆動部30)に設けられたエンコーダー、及び第2モータ(例えば、エンボス加工ユニット10eに配された駆動部30)に設けられたエンコーダーは通電状態にある。ここでいう「通電」とは、装置に電気が供給されている状態であり、装置の電源の入り切りという意味ではない。電源が「切り」であっても、電源プラグが電源に差し込まれていれば電源プラグを通じて電気が装置に供給されるので、このような場合も「通電」状態の範疇に入る。この段替え前後において、それぞれの駆動部30のエンコーダーが通電状態にあることにより、制御部50がそれぞれの駆動部30の回転角度を検知することができる。
【0120】
そして、このエンコーダーが通電した状態で段替えを行うことを容易にしているのが、回転体加工ユニットの段替えにおいて回転体加工ユニットの交換部のみを交換し、回転体加工ユニットの駆動部30を交換しないことにある。つまり、前記ある吸収性物品を製造した後に、前記他の吸収性物品を製造する際には、前記第2加工部に換えて他の加工部を用い、前記他の吸収性物品を製造した後、再度前記ある吸収性物品を製造する際には、前記他の加工部に換えて再度前記第2加工部を用いる。このようにすると、該回転体加工ユニットの段替えの間に、電源プラグが電源に差し込まれた状態を維持することができるので、容易にエンコーダーを通電した状態とすることができる。
【0121】
また、本実施の形態においては、カップリング(軸継手)での装着を行っているため、前述したような不定性(模様生成部が何時の位置に位置することになるかが、取り付けの度に、区々となる事象)が生じない。つまり、駆動部30の回転角度と模様生成部が何時の位置に位置するかは、一対一に対応しており、この対応関係が取り付けの度に変わることはない。したがって、エンコーダーを通電した状態としておけば、制御部50は、段替えの前後で、駆動部30の回転角度のみならず、模様生成部の位置も把握することができる。
【0122】
また、駆動部30側の回転軸の搬送経路上の位置が回転体加工ユニットの交換部の交換により変更されないため、戻し段替え後の回転体加工ユニットの交換部(加工部)の搬送経路上における位置が、取り外す前に回転体加工ユニットの交換部(加工部)が設置されていた搬送経路上における位置と同じ位置となる。つまり、ある回転体加工ユニットの交換部(加工部)は、搬送経路上(ユニット架台15)の所定の位置にのみ設置される。
【0123】
===第三実施の形態===
次に、第三実施の形態について説明する。
図7は、
図2の右図に対応するものであり、第三実施の形態に係る加工ユニット10の側面概略図である。
【0124】
第三実施の形態においては、回転体加工ユニットの交換部の交換の際に、上部ロール歯車13Uと駆動歯車32の噛み合わせを解除するのではなく、上部ロール回転軸12Uと下部ロール回転軸12Lをそれぞれカップリング(軸継手)により着脱して加工ユニット10の交換を行う。そして、このカップリングとしてシュミットカップリング14(リンク式のカップリングであり、加工部の軸径の変化によるカップリング着脱位置の高さ寸法の変化に対応できるカップリング)を用いる。
【0125】
第三実施の形態によれば、回転体加工ユニットの交換部を交換する際に鏡板20の裏側の機構が交換されない。つまり、駆動部30側の回転軸の搬送経路上における位置が回転体加工ユニットの交換部の交換により変更されない。
【0126】
また、シュミットカップリング14の着脱を第二実施の形態のように断面形状が一致する場合のみ可能としてもよい。
【0127】
===第四実施の形態===
次に、第四実施の形態について説明する。上記においては、搬送される資材の伸長状態が時々刻々と変化することに対応して、制御部50がそれぞれの加工ユニット10の加工角度を調整する角度調整工程(すなわち、連続した角度調整工程)について説明したが、第四実施の形態においては、上記のような角度調整工程をより間欠的に実行することとし、吸収性物品製造装置1の以下の製造条件(加工条件)を調整したタイミングでは、必ず角度調整工程を実行することとする。
【0128】
先ず、搬送される資材の張力をテンション調整装置により変更して、吸収性物品製造装置1の製造条件を調整したタイミングで角度調整工程を実行する。つまり、張力調整工程の後に、前記角度調整工程を実行する。搬送される資材に付与される張力が変更されると、資材の伸長状態に変化が生じ得る。したがって、このタイミングでそれぞれの加工ユニット10の加工角度を調整することにより、適切なタイミングで角度調整工程が実行されるため、次の記憶工程が実行される際により正確な情報を記憶部52に記憶することができ、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0129】
次に、搬送される資材の搬送速度を搬送機構により変更して、吸収性物品製造装置1の製造条件を調整したタイミングで角度調整工程を実行する。つまり、速度調整工程の後に、前記角度調整工程を実行する。資材を搬送する搬送機構は、資材の搬送速度を調整する機能を有しており(速度調整工程に相当)、単位時間当たりの吸収性物品の製造量を調整するために、資材の搬送速度を調整する場合がある。例えば、何かしらの不具合により吸収性物品の製造が停止し、製造の再開後に通常よりも単位時間当たりの吸収性物品の製造量を上げるために、資材の搬送速度を大きくする場合がある。
【0130】
搬送される資材の搬送速度が変更されると、資材の移動スピードが変わるため、資材の伸長状態に変化が生じる可能性がある。したがって、このタイミングでそれぞれの加工ユニット10の加工角度を調整することにより、適切なタイミングで角度調整工程が実行されるため、次の記憶工程が実行される際により正確な情報を記憶部52に記憶することができ、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0131】
最後に、トップシートが資材ロールから繰り出されてトップライン3を搬送されることは既に述べたが、搬送されているトップシートの資材ロールから、次の新しいトップシートの資材ロールにトップシートの供給元を変更する際にも角度調整工程が実行される。つまり、資材ロールを次の新しい資材ロールに交換(交換工程に相当)した後に、角度調整工程が実行される。既存の資材ロールから新しい資材ロールへの資材の供給元の交換は、既存の資材ロールと新しい資材ロールとを資材継ぎで継いで行われる。つまり、既存の資材ロールから新しい資材ロールへと供給元が切り替わると、資材が繰り出される資材ロールの半径方向の位置がこの切り替わりと同時に半径方向の外側へ移動する。そして、前述したとおり、資材ロールに巻かれた資材シートの伸長状態は半径方向により異なる。つまり、新しい資材ロールに切り替わるタイミングにおいては、繰り出される資材シートの資材ロールの半径方向位置が大きく変化するため、資材の伸長状態にも変化が生じ得る。そのため、個々の加工ユニット10の加工角度について調整を行うことが望ましい。したがって、このタイミングでそれぞれの加工ユニット10の加工角度を調整することにより、適切なタイミングで角度調整工程が実行されるため、次の記憶工程が実行される際により正確な情報を記憶部52に記憶することができ、速やかな戻し段替えを行うことが可能となる。
【0132】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0133】
また、上記実施の形態においては、それぞれの駆動部30のエンコーダーを通電したまま段替えを行うことにより、段替え前後において制御部50がそれぞれの駆動部30の回転角度を検知することができたが、これに限らない。例えば、それぞれの駆動部30のエンコーダーを非通電にする場合でも、非通電にする前にそれぞれの駆動部30の駆動軸31を回転できないように拘束してから、それぞれの駆動部30の回転角度を記憶部52に記憶しておき、エンコーダーが非通電状態の間は、該拘束状態を維持していればよい。つまり、前記記憶工程において、前記情報を記憶する際の、前記第1モータ及び前記第2モータの角度位置を記憶し、前記第1モータに設けられたエンコーダー、及び前記第2モータに設けられたエンコーダーが非通電状態の際に、前記第1モータ及び前記第2モータをそれぞれ回転不能に拘束する(拘束工程に相当)ようにしてもよい。
【0134】
このような拘束工程を実行するようにすれば、エンコーダーが非通電状態から通電状態に戻った際に、制御部50は記憶部52からそれぞれの駆動部30の回転角度を読み出し、それぞれの駆動部30の回転角度であると設定してから該拘束状態を解放すれば、駆動部30の原点出しを実行することなく、制御部50がそれぞれの駆動部30の回転角度を検知できることとなる。この駆動軸31を拘束する例としては、高摩擦力であって駆動軸31との間に滑りが生じにくい拘束部を駆動軸31の外周面の一部の全周に亘って押圧する拘束機構を設けることにより、摩擦力を用いて機械的に駆動軸31の回転を拘束する例を挙げることができる。
【0135】
また、上記実施の形態においては、回転体加工ユニットの交換部の搬送経路上の位置決めを凹部10nと凸部15aを嵌め合わせて行っていたが、これに限らない。例えば、
図8の上図に示すように、回転体加工ユニットの交換部の外側面とユニット架台15の内側面を嵌め合わせて、ユニット架台15の回転体加工ユニットの交換部設置面には、回転体加工ユニットの交換部を移動させるためのスライドレール16(エアースライドレール)を設けてもよい。また別の例では、
図8の中央図に示すように、鏡板20に回転体加工ユニットの交換部の外側面と嵌め合わせて位置決めする位置決め部20aを設けてもよいし、
図8の下図に示すように、回転体加工ユニットの交換部に穴を設けて鏡板20に設けられた位置決め棒20bが嵌め合うようにして位置決めしてもよい。
【0136】
また、上記実施の形態においては、回転体加工ユニットの駆動部30と加工部との駆動回転の伝達機構として歯車を用いた機構を用いたが、これに限らない。例えば、プーリーとベルトを用いた駆動回転の伝達機構を用いても構わない。
【0137】
また、上記実施の形態においては、加工角度を単一の角度としていたが、これに限らない。例えば、加工の開始回転角度と終了回転角度の範囲を加工角度としても構わない。
【0138】
また、上記実施の形態においては、前回のある吸収性物品の製造において最後に調整された加工ユニット10の加工角度を用いて戻し段替えを行ったが、これに限らない。例えば、加工角度だけではなく、最後に調整された加熱温度や加圧力を用いて戻し段替えを行ってもよい。
【0139】
また、上記実施の形態においては、回転体加工ユニットが上下一対の回転体のみを有したが、これに限らない。例えば、資材に貼り付ける材料を製品ピッチで上下一対の加工部に受け渡しを行う上下一対とは別の回転体(加工部以外の回転体)を有していても構わない。
【0140】
また、上記実施の形態においては、戻し段替えの前後において電源プラグを電源に差し込んでエンコーダーを通電状態としていたが、これに限らない。例えば、加工ユニット10にバッテリーバックアップを備えて、該バッテリーバックアップにより通電状態としてもよい。
【0141】
また、上記実施の形態においては、基準部をエンド切断ユニット10aの駆動部30としたが、これに限らない。例えば、加工ユニット10とは別に原点の設定のみに用いられる基準部を設けてもよい。
【0142】
また、上記実施の形態においては、トップライン3と製品ライン2に設けられた加工ユニット10について説明したが、これに限らない。吸収体ライン4やバックライン5に設けられた加工ユニット10についても本発明を適用することが可能である。