(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め定められた成膜条件に基づきSiとHとNとを含むガスを供給し、処理容器内の基板を載置する載置台にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加し、前記処理容器内にマイクロ波電力を印加してマイクロ波プラズマによる成膜処理を行う成膜工程と、
予め定められたエッチング条件に基づきHを含むガス又はHとArとを含むガスを供給し、処理容器内の基板を載置する載置台にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加し、前記処理容器内にマイクロ波電力を印加してマイクロ波プラズマによるエッチング処理を行うエッチング工程と、
を繰り返し実行し、基板上に形成された凹部へのSiN膜の埋め込みを行い、
前記成膜処理を行う工程と前記エッチング処理を行う工程の間に、マイクロ波電力及びバイアス電圧発生用の高周波電力を印加し、Nを含むガスを供給してマイクロ波プラズマによる窒化工程を行う、埋め込み方法。
前記成膜工程では、前記成膜条件のうち前記処理容器内の圧力は10Pa以下であり、前記マイクロ波電力は3kW〜5kWであり、バイアス電圧発生用の高周波電力は5W〜100Wであり、前記SiとHとNとを含むガスはSiH4とN2との混合ガスであり、
前記エッチング工程では、前記エッチング条件のうち前記処理容器内の圧力は10Pa以下であり、前記マイクロ波電力は前記成膜処理において供給するマイクロ波電力よりも低い電力であり、バイアス電圧発生用の高周波電力は200W〜500Wであり、前記Hを含むガスとしてH2ガスを供給するか又は前記HとArとを含むガスとしてH2とArとの混合ガスを供給する、
請求項12に記載の埋め込み方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0010】
[マイクロ波プラズマ処理装置]
図1は、一実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100の断面図の一例を示す。マイクロ波プラズマ処理装置100は、ウェハWを収容する処理容器1を有する。マイクロ波プラズマ処理装置100は、マイクロ波によって処理容器1の天井面に形成される表面波プラズマにより、ウェハWに対して所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の一例である。所定のプラズマ処理としては、成膜処理及びエッチング処理が挙げられる。
【0011】
マイクロ波プラズマ処理装置100は、処理容器1とマイクロ波プラズマ源2と制御装置3とを有する。処理容器1は、気密に構成されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなる略円筒状の容器であり、接地されている。
【0012】
処理容器1は、本体部10を有し、内部にプラズマの処理空間を形成する。本体部10は、処理容器1の天井壁を構成する円盤状の天板である。処理容器1と本体部10との接触面には支持リング129が設けられ、これにより、処理容器1の内部は気密にシールされている。本体部10は、アルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料から形成されている。
【0013】
マイクロ波プラズマ源2は、マイクロ波出力部30とマイクロ波伝送部40とマイクロ波放射機構50とを有する。マイクロ波出力部30は、複数経路に分配してマイクロ波を出力する。マイクロ波は、マイクロ波伝送部40とマイクロ波放射機構50とを通って処理容器1の内部に導入される。処理容器1内に供給されたガスは、導入されたマイクロ波の電界により励起し、これにより表面波プラズマが形成される。
【0014】
処理容器1内にはウェハWを載置する載置台11が設けられている。載置台11は、処理容器1の底部中央に絶縁部材12aを介して立設された筒状の支持部材12により支持されている。載置台11及び支持部材12を構成する材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウム等の金属や内部に高周波用の電極を有した絶縁部材(セラミックス等)が例示される。載置台11には、ウェハWを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、ウェハWの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路等が設けられてもよい。
【0015】
載置台11には、整合器13を介して高周波バイアス電源14が接続されている。高周波バイアス電源14から載置台11にバイアス電圧発生用の高周波電力が供給される。これにより、ウェハW側にプラズマのイオンが引き込まれる。高周波バイアス電源14は、載置台11にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加する高周波電力印加部の一例である。
【0016】
処理容器1の底部には排気管15が接続されており、排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。排気装置16を作動させると処理容器1内が排気され、これにより、処理容器1内が所定の真空度まで高速に減圧される。処理容器1の側壁には、ウェハWの搬入及び搬出を行うための搬入及び搬出口17と、搬入及び搬出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0017】
マイクロ波伝送部40は、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送する。マイクロ波伝送部40は、1つの中央マイクロ波導入部43bと6つの周縁マイクロ波導入部43aとを有する。
【0018】
中央マイクロ波導入部43bは、本体部10の中央に配置され、6つの周縁マイクロ波導入部43aは、本体部10の周辺に円周方向に等間隔に配置される。以下、周縁マイクロ波導入部43aおよび中央マイクロ波導入部43bを総称して、マイクロ波導入部43ともいう。マイクロ波導入部43は、アンプ部42から出力されたマイクロ波をマイクロ波放射機構50に導入する機能およびインピーダンスを整合する機能を有する。
【0019】
6つの周縁マイクロ波導入部43aの下方にて本体部10の内部には6つの誘電体層123が配置されている。また、中央マイクロ波導入部43bの下方にて本体部10の内部には1つの誘電体層133が配置されている。なお、マイクロ波導入部43の個数は6つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0020】
マイクロ波放射機構50は、誘電体天板121,131、スロット122,132及び誘電体層123,133を有する。誘電体天板121,131は、マイクロ波を透過させる円盤状の誘電体から形成され、本体部10の上面に配置されている。誘電体天板121,131は、比誘電率が真空よりも大きい、例えば、石英、アルミナ(Al
2O
3)等により形成されている。
【0021】
誘電体天板121,131の下には、本体部10に形成されたスロット122,132を介して誘電体層123,133が本体部10の開口の裏面に当接されている。誘電体層123、133は、例えば、石英、アルミナ(Al
2O
3)等により形成されている。誘電体層123,133は、本体部10に形成された開口の厚み分だけ天井面から凹んだ位置に設けられ、マイクロ波をプラズマ生成空間Uに供給する誘電体窓として機能する。
【0022】
周縁マイクロ波導入部43aおよび中央マイクロ波導入部43bは、筒状の外側導体52およびその中心に設けられた棒状の内側導体53を同軸状に配置する。外側導体52と内側導体53の間には、マイクロ波電力が給電され、マイクロ波放射機構50に向かってマイクロ波が伝播するマイクロ波伝送路44となっている。
【0023】
周縁マイクロ波導入部43aおよび中央マイクロ波導入部43bには、スラグ54と、その先端部に位置するインピーダンス調整部材140とが設けられている。スラグ54を移動させることにより、処理容器1内の負荷インピーダンスをマイクロ波出力部30におけるマイクロ波電源の特性インピーダンスに整合させる機能を有する。インピーダンス調整部材140は、誘電体で形成され、その比誘電率によりマイクロ波伝送路44のインピーダンスを調整するようになっている。
【0024】
なお、マイクロ波出力部30、マイクロ波伝送部40及びマイクロ波放射機構50は、処理容器1内にマイクロ波電力を印加するマイクロ波電力印加部の一例である。
【0025】
ガス供給源22から供給されるガスは、ガス供給配管111を介してガス拡散室62からガス供給孔60を通り、処理容器1内にシャワー状に供給される。ガスの一例としては、Arガス等のプラズマ生成用のガス、N
2ガス等の高エネルギーで分解させたいガス、シランガス等の処理ガスが挙げられる。ガス供給源22、ガス供給配管111及びガス供給孔60は、ガスを供給するガス供給部の一例である。
【0026】
マイクロ波プラズマ処理装置100の各部は、制御装置3により制御される。制御装置3は、マイクロプロセッサ4、ROM(Read Only Memory)5、RAM(Random Access Memory)6を有している。ROM5やRAM6にはマイクロ波プラズマ処理装置100のプロセスシーケンス及び制御パラメータであるプロセスレシピが記憶されている。マイクロプロセッサ4は、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに基づき、マイクロ波プラズマ処理装置100の各部を制御する制御部の一例である。また、制御装置3は、タッチパネル7及びディスプレイ8を有し、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに従って所定の制御を行う際の入力や結果の表示が可能になっている。また、制御装置3は、SiN膜の埋め込み処理を制御する。
【0027】
かかる構成のマイクロ波プラズマ処理装置100においてプラズマ処理を行う際には、まず、ウェハWが、搬送アーム上に保持された状態で、開口したゲートバルブ18から搬入及び搬出口17を通り処理容器1内に搬入される。ゲートバルブ18はウェハWを搬入後に閉じられる。ウェハWは、載置台11の上方まで搬送されると、搬送アームからプッシャーピンに移され、プッシャーピンが降下することにより載置台11に載置される。処理容器1の内部の圧力は、排気装置16により所定の真空度に保持される。処理ガスがガス供給孔60からシャワー状に処理容器1内に導入される。周縁マイクロ波導入部43aおよび中央マイクロ波導入部43bを介してマイクロ波放射機構50から放射されたマイクロ波が天井壁の内部表面を伝播する。表面波となって伝播するマイクロ波の電界により、ガスが励起され、処理容器1側の天井壁下のプラズマ生成空間Uに生成された表面波プラズマによってウェハWにプラズマ処理が施される。
【0028】
[埋め込み方法]
次に、一実施形態に係る埋め込み方法の一例について、
図2を参照して説明する。
図2は、一実施形態に係る埋め込み方法の一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えばマイクロ波プラズマ処理装置100の制御装置3において実行される。
【0029】
本処理が開始されると、制御装置3は、予め定められた成膜条件に基づき成膜工程の実行を制御する(ステップS10)。成膜工程では、SiとHとNとを含むガスを供給し、載置台11にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加し、処理容器1内にマイクロ波電力を印加してマイクロ波プラズマによる成膜処理を行う。成膜条件の適正化についての具体的な実験については後述する。
【0030】
次に、制御装置3は、予め定められたエッチング条件に基づきエッチング工程の実行を制御する(ステップS12)。エッチング工程では、Hを含むガス又はHとArとを含むガスを供給し、載置台11にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加し、処理容器1内にマイクロ波電力を印加してマイクロ波プラズマによるエッチング処理を行う。エッチング条件の適正化についての具体的な実験については後述する。
【0031】
次に、制御装置3は、所定回数繰り返したかを判定する(ステップS14)。制御装置3は、成膜工程及びエッチング工程を所定回数実行するまで、ステップS10〜S14を繰り返し、所定回数実行した後、本処理を終了する。
【0032】
これにより、
図3に示すように、ウェハW上に凹部が形成された構造体21に対して成膜工程においてSiN膜20が成膜され、エッチング工程においてSiN膜20をエッチングして凹部の開口を広げる。エッチング工程では、SiN膜20の底部を削らずに側部や開口を削ることが好ましい。
【0033】
このようにして成膜工程とエッチング工程とを繰り返すことで、ウェハWに形成された凹部へのSiN膜20の埋め込みを実現できる。
【0034】
[マイクロ波プラズマ処理装置の特徴]
上記に説明した構成のマイクロ波プラズマ処理装置100以外のプラズマ処理装置では、マイクロ波プラズマ処理装置100よりもプラズマの電子温度が高く、イオンエネルギーが高い。
【0035】
マイクロ波プラズマ処理装置100では、処理容器1の天井面をマイクロ波の表面波が伝搬し、マイクロ波の表面波によって処理容器1内にプラズマを拡散させ、その拡散プラズマ(以下、「マイクロ波プラズマ」ともいう。)を用いてウェハWに成膜及びエッチングを行う。
【0036】
かかるマイクロ波プラズマの特徴としては、生成されるプラズマの電子密度が高く、プラズマの電子温度が低い、つまり、イオンエネルギーが低いため、ウェハWへのダメージが少ない点が挙げられる。
【0037】
本実施形態では、かかる特徴のマイクロ波プラズマを用いて、成膜工程→エッチング工程を繰り返し、構造物21に形成された凹部の開口を塞がないようにして凹部への埋め込みを行う。その際、載置台11にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加することにより、イオンの挙動を制御する。これにより、アスペクト比が7.5以上の高アスペクト比の凹部においてもSiN膜を完全に埋め込むことができる。
【0038】
成膜工程では、凹部の底部からSiN膜の埋め込みを行うために成膜条件の適正化を行う。また、エッチング工程では、凹部の底部をエッチングしたり、底部やマスクにダメージを与えたり、エッチング時等に生成される副生成物が凹部に堆積したりすることを回避しながら、凹部の開口を広げるためにエッチング条件の適正化を行う。以下では、成膜条件を適正化するための実験結果の一例について説明した後、エッチング条件を適正化するための実験結果の一例について説明する。
【0039】
[成膜条件の適正化]
<成膜条件:圧力>
一実施形態に係る成膜工程における成膜条件の適正化について説明する。最初に、圧力条件を可変にして、一実施形態に係る成膜工程を実行したときの実験結果の一例について
図4を参照して説明する。
図4は、一実施形態に係る成膜工程における圧力依存の実験結果の一例を示す図である。本実験では、処理容器1内の圧力を10Pa、20Pa、40Pa、80Paに制御する。本実験におけるその他の成膜条件を以下に示す。
【0040】
(成膜条件)
ガス種 Ar、SiH
4、N
2
マイクロ波電力 3kW
バイアス電圧発生用の高周波電力 5W
なお、成膜条件におけるガス種に示すArとSiH
4とN
2との混合ガスは、SiとHとNとを含むガスの一例である。また、成膜条件におけるマイクロ波電力は3kWに限られず、3kW〜5kWの範囲であればよい。本体部10の天井壁を構成する円盤状の天板の直径φは458mmである。よって、マイクロ波電力を3kW〜5kWの範囲とすると、単位面積当たりのマイクロ波電力は、約1.821(W/cm
2)〜約3.035(W/cm
2)の範囲であればよい。
【0041】
また、成膜条件におけるバイアス電圧発生用の高周波電力は5Wに限られず、5W〜100Wの範囲であればよい。電極として機能する載置台11の直径φは300mmである。よって、バイアス電圧発生用の高周波電力を5W〜100Wの範囲とすると、単位面積当たりのバイアス電圧発生用の高周波電力は、約0.007074(W/cm
2)〜約0.1415(W/cm
2)の範囲であればよい。
【0042】
本実験の結果について、
図4の最下段の膜厚に示すように、構造体21の上面に成膜されたSiN膜20をTopで示し、構造体21の凹部の側壁に成膜されたSiN膜20をSideで示し、凹部の底部に成膜されたSiN膜20をBottomで示す。
【0043】
1段目の各圧力に対して2段目に示した実験結果の成膜パターンの断面のSideとTopとの厚さの比(=Side/Top)を3段目に示し、BottomとSideとの厚さの比(=Bottom/Side)を4段目に示す。
【0044】
この結果によれば、処理容器1内の圧力を10Paにしたとき、Bottom/Sideは「1.24」となっており、凹部の側部に膜が形成され難く、凹部の底部から膜を形成することができる。これは、処理容器1内を10Pa以下の圧力にすることで、バイアス電圧発生用の高周波電力を載置台11に印加したときに、イオンが垂直に凹部に入り、側壁に膜が付着し難くなり、凹部の底部の膜を厚くすることができるためである。
【0045】
一方、処理容器1内を20Pa、40Pa、80Paの圧力にすると、バイアス電圧発生用の高周波電力を載置台11に印加したときに、イオンが垂直に凹部に入らずに、凹部の底部及び側壁が均等に成膜される。以上から、成膜工程において、処理容器1内の圧力は10Pa以下に制御すればよい。これにより、凹部の側壁への膜の付着が少なくなり、凹部の底部からSiN膜20を埋め込むことができる。
【0046】
<RIと成膜条件>
次に、一実施形態に係る成膜工程により成膜された膜質を示す一つの指標となるRI(Refractive Index)の評価結果について
図5を参照して説明する。
図5は、一実施形態に係るRIと成膜の結果との関係の一例を示す図である。RI値は、膜に光を照射したときの光の屈折率を示し、膜質を評価するときの手段の一つとして用いられる。本実施形態では、
図5の低RI値は、RI値が2.5又はそれよりも小さい値を示し、高RI値は、RI値が2.7又はそれよりも大きい値を示す。本実験の成膜条件を以下に示す。
【0047】
(成膜条件)
圧力 8Pa
ガス種 Ar、SiH
4、N
2
マイクロ波電力 3kW
バイアス電圧発生用の高周波電力 5W
1段目のRI値に対して2段目に示した実験結果の成膜パターンの断面のSideとTopとの比(=Side/Top)を3段目に示し、BottomとSideとの比(=Bottom/Side)を4段目に示す。
【0048】
2段目に示した実験結果の成膜パターンの断面によれば、高RI値を持つ膜である程、その膜の形成において構造体21の凹部の側部に膜が形成され難く(A及び最下段を参照)、凹部の底部から膜を堆積できることがわかる。また、低RI値を持つ膜である程、その膜の形成において構造体21の凹部の側部と底部とで均等に成膜され(B及び最下段を参照)、凹部の開口が狭くなる。
【0049】
更に、低RI値である場合には、最下段の右端に示すように凹部の開口においてオーバーハング(ピンチング)が発生し、更に開口が狭まることがわかる(C及び最下段を参照参照)。以上から、成膜工程において、高RI値を持つ膜が成膜されるように成膜条件を設定することが好ましい。これにより、凹部の側壁への膜の付着が少なくなり、凹部の底部からSiN膜20を埋め込むことができる。
【0050】
<成膜条件:バイアス電圧発生用の高周波電力>
次に、バイアス電圧発生用の高周波電力(RF)を可変にして、一実施形態に係る成膜工程を実行したときの実験結果の一例について
図6を参照して説明する。
図6は、一実施形態に係る成膜工程におけるバイアス電圧発生用の電力依存の結果の一例を示す図である。本実験では、バイアス電圧発生用の高周波電力を0W、5W、10W、25Wに制御する。本実験におけるその他の成膜条件を以下に示す。
【0051】
(成膜条件)
圧力 8Pa
ガス種 Ar、SiH
4、N
2
マイクロ波電力 3kW
以上の成膜条件では、高RI値のSiN膜20が形成されることが実験でわかっている。本実験の結果では、高RI値のSiN膜20を形成するように成膜条件が設定されているため、
図6の最下段の膜厚に示すように、バイアス電圧発生用の電力がいずれの値であっても、凹部の側部に膜が形成され難く、凹部の底部から膜を堆積できる。
【0052】
更に、バイアス電圧発生用の電力を10Wに高くすると、イオンの引き込み力が強くなり、凹部の開口を狭めずに凹部の底部の膜厚を増加できる(D及び最下段を参照)。これは、バイアス電圧発生用の高周波電力を高くすると、バイアス電圧発生用の高周波電力を載置台11に印加したときに、イオンが垂直に凹部に入射されるためである。これにより、側壁に膜が付着し難くなり、凹部の底部の膜を厚くすることができる。ただし、バイアス電圧発生用の電力が高すぎると、構造体のパターンを傷つけ易くなる。また、バイアス電圧発生用の電力を高くする程、凹部の開口に副生成物が再付着し、凹部の開口においてオーバーハング(ピンチング)が発生し、開口が狭くなる(E参照)。一方、バイアス電圧発生用の電力を印加しないと、凹部の側部に膜が形成され、凹部の底部の膜厚を増加し難くなることがわかる。よって、本実験からバイアス電圧発生用の電力は5W以上に制御することが好ましい。
【0053】
<成膜条件:ガス流量比及びバイアス電圧発生用の高周波電力>
次に、ガス流量比及びバイアス電圧発生用の高周波電力を可変にして、一実施形態に係る成膜工程を実行したときの実験結果の一例について
図7を参照して説明する。
図7は、一実施形態に係るガス流量比とバイアス電圧発生用の電力(RF)を可変に制御したときの成膜の結果の一例を示す図である。本実験におけるその他の成膜条件を以下に示す。
【0054】
(成膜条件)
圧力 8Pa
ガス種 SiH
4、H
2
マイクロ波電力 3kW
図7の行は、SiH
4とN
2のガス流量比(=SiH
4/N
2)を示す。
図7の列は、バイアス電圧発生用の高周波電力(RF)を示す。ガス流量比とバイアス電圧発生用の高周波電力を変化させたときの成膜パターンを(a)〜(n)で示す。
【0055】
この結果、例えばバイアス電圧発生用の高周波電力を含む、ガス流量比以外の成膜条件が変わらない場合、SiH
4とN
2とのガス流量比の変化に応じてRI値が変化することがわかる。具体的には、RI値は2.0〜3.0の範囲にて変化し、N
2に対するSiH
4の流量比が高くなる程RI値が高くなり、凹部の開口が広くなる(F参照)。N
2に対するSiH
4の流量比が低い程RI値が低くなり、凹部の開口が狭くなる又は閉じる(G参照)。
【0056】
また、SiH
4とN
2とのガス流量比が同じであれば、バイアス電圧発生用の高周波電力が低い程凹部の開口が広くなる(G,F参照)。またバイアス電圧発生用の高周波電力を印加しない場合(0W)、凹部の開口が閉じる(成膜パターン(b)参照)。バイアス電圧発生用の高周波電力が200Wの場合、成膜パターンが崩れ、凹部の開口が閉じる(I参照)。
【0057】
以上から、成膜工程において、凹部の開口を狭めずに成膜工程を実行するためには、バイアス電圧発生用の電力を5W〜100Wに制御することが好ましい。これにより、凹部の側壁への膜の付着が少なくなり、凹部の底部からSiN膜20を埋め込むことができる。
【0058】
また、SiN膜のRI値が約2.5〜約2.7の範囲になるように成膜条件を制御して、成膜工程を実行することが好ましい。RI値を約2.5〜約2.7程度の高RI値になるように成膜するとSiN膜20中にSi成分が多く含まれる膜が形成されることがわかる。SiN膜20中のSiの割合を高くするためには、マイクロ波電力を3kW〜5kWの範囲に制御し、バイアス電圧発生用の電力を5W〜100Wに制御する。
【0059】
加えて、バイアス電圧発生用の電力を5W〜100Wの範囲で高く制御したり低くしたりすることで、SiH
4ガスの解離度を制御し、これにより、SiH
4から生成されるSiH
3*、SiH
2*、SiH
*のラジカル及びイオンの比率を調整することができる。SiH
4のガスから生成されるラジカルのうち、高次のSiH
3*は付着係数が高く、低次のSiH
*は付着係数が低い。よって、バイアス電圧発生用の電力を5W〜100Wの範囲で制御してSiH
4のガスの解離度を制御することで、凹部の側壁への膜の付着確率を制御し、これにより、凹部の側壁への膜の付着を抑制し、SiN膜20を凹部の底部から埋め込むことができる。
【0060】
[エッチング条件の適正化]
<エッチング条件:圧力>
次に、一実施形態に係るエッチング工程におけるエッチング条件の適正化について説明する。最初に、エッチングの圧力依存の結果の一例について
図8を参照して説明する。
図8は、一実施形態に係る圧力を可変に制御したときのエッチングの結果の一例を示す図である。本実験では、成膜工程においてSiN膜が形成されているウェハWに対してエッチング工程を実行する。その際、処理容器1内の圧力を2Pa、4Pa、10Pa、20Pa、30Paに制御する。本実験におけるその他のエッチング条件を以下に示す。
【0061】
(エッチング条件)
圧力 8Pa
ガス種 H
2又はArとH
2の混合ガス
マイクロ波電力 2W
バイアス電圧発生用の高周波電力 200W
なお、エッチング条件におけるガス種に示すH
2ガスは、Hを含むガスの一例である。また、ガス種に示すArとH
2の混合ガスは、HとArとを含むガスの一例である。また、エッチング工程におけるマイクロ波電力は、2Wに制御されることに限られず、成膜工程時に制御するマイクロ波電力よりも低い電力に制御すればよい。
【0062】
また、エッチング条件におけるバイアス電圧発生用の高周波電力は200Wに限られず、200W〜500Wの範囲であればよい。つまり、単位面積当たりのバイアス電圧発生用の高周波電力は、約0
.2829(W/cm
2)〜約0.7074(W/cm
2)の範囲であればよい。
【0063】
図8の上段の成膜パターンは、成膜工程の後にエッチング工程を実行せずに成膜時間を増加させた場合、成膜時間の増加に伴い凹部の開口が閉じる(J参照)ことを示す。
図8の下段は、本実験の結果の一例を示す。この結果によれば、処理容器1内の圧力を10Pa以下にすることで、構造体21の凹部の開口を広がることがわかる(K参照)。一方、処理容器1内の圧力を20Paよりも高圧にすると、エッチング工程等で生成された副生成物が凹部の側壁や開口に再付着して開口が狭まる又は閉じることがわかる。
【0064】
これは、10Pa以下の圧力の場合、バイアス電圧発生用の高周波電力を載置台11に印加することで、イオンが垂直にホールに入り、凹部内のエッチングを垂直に行うことが可能になるため、開口が広がると考えられる。
【0065】
以上から、エッチング工程において、処理容器1内の圧力は10Pa以下に制御してもよいし、4Pa〜10Paに制御することが好ましい。これにより、凹部の側壁や開口への膜の再付着が抑制され、凹部の開口を広げ、次の成膜工程において凹部の底部からSiN膜20を埋め込むことができる。
【0066】
<エッチング条件:ガス流量比>
次に、ガス流量比を変えて一実施形態に係るエッチング工程を実行したときの実験結果の一例について
図9を参照して説明する。
図9は、一実施形態に係るエッチングにおけるガス流量比とエッチング結果の一例を示す図である。本実験におけるその他のエッチング条件を以下に示す。
【0067】
(エッチング条件)
圧力 8Pa
ガス種 Ar、H
2
マイクロ波電力 2W
バイアス電圧発生用の高周波電力 200W
本実験では、上記エッチング条件でエッチング工程を実行し、以下の成膜条件で成膜工程を実行することを5回繰り返し行った。
【0068】
(成膜条件)
圧力 8Pa
ガス種 Ar、SiH
4、H
2
マイクロ波電力 3000W
バイアス電圧発生用の高周波電力 5W
左の成膜パターンは、Initial(初期状態の凹部)のとき、すなわち、SiN膜が成膜された状態である。Initialに対してエッチング工程を実行したときのガス流量比と成膜パターンとの関係について説明する。中央の成膜パターンは、エッチング工程におけるArとH
2のガス流量比が10/1の場合にエッチングされた凹部の状態を示す。また、右の成膜パターンは、ArとH
2のガス流量比が10/12の場合にエッチング工程によりエッチングされた凹部の状態を示す。これによれば、中央の成膜パターンでは、凹部のエッチング形状が垂直にならずに、開口を狭くするオーバーハングが発生している。
【0069】
これに対して、右の成膜パターンでは、凹部のエッチング形状が垂直になり、開口が広がっていることがわかる。本実験の結果から、ArとH
2との混合ガスを供給する場合、H
2の流量をArの流量よりも多く供給するように制御することが好ましい。Arガスを増やすと凹部の内部を叩いてエッチングが測定される。この場合、削られた副生成物が凹部内に再付着し、凹部の側部や開口が狭まる可能性がある。
【0070】
以上から、エッチング工程では、H
2とArとの混合ガスを供給する場合、H
2の流量をArの流量よりも多く供給することが好ましい。これにより、凹部の開口を広げ、エッチング形状をより垂直にすることができる。
【0071】
なお、エッチング工程においてガス種は、ArとH
2の混合ガスか、H
2ガスの単一ガスを用いることができる。ただし、マイクロ波プラズマを安定させるためには、H
2ガスの単一ガスよりもArとH
2の混合ガスの方が好ましい。
【0072】
<エッチング条件:バイアス電圧発生用の高周波電力>
次に、バイアス電圧発生用の高周波電力を可変にして、一実施形態に係るエッチング工程を実行したときの実験結果の一例について
図10を参照して説明する。
図10は、一実施形態に係るバイアス電圧発生用の電力を可変に制御したときのエッチングの結果の一例を示す図である。本実験では、バイアス電圧発生用の高周波電力を50W、100W、200W、300Wに制御する。本実験におけるその他のエッチング条件を以下に示す。
【0073】
(エッチング条件)
圧力 8Pa
ガス種 ArとH
2の混合ガス
図10の行はマイクロ波電力の大きさの目安を示し、上段の成膜パターンでは、エッチング工程のマイクロ波電力が成膜工程のマイクロ波電力よりも低いことを示す。中段の成膜パターンでは、エッチング工程のマイクロ波電力が成膜工程のマイクロ波電力と同程度であることを示す。下段の成膜パターンでは、エッチング工程のマイクロ波電力が成膜工程のマイクロ波電力よりも高いことを示す。
【0074】
この結果では、バイアス電圧発生用の電力を50W又は100Wに制御した場合、凹部の開口が閉じている。一方、エッチング工程においてバイアス電圧発生用の電力を200W又は300Wに制御し、かつ、エッチング工程のマイクロ波電力を成膜工程のマイクロ波電力よりも低く制御してエッチングすると、凹部の開口が狭まらず、SiN膜20が凹部に埋め込まれることがわかる。よって、バイアス電圧発生用の電力を200W〜300Wに制御し、かつ、エッチング工程のマイクロ波電力を成膜工程のマイクロ波電力よりも低くすることで、成膜工程→エッチング工程の繰り返しにより、凹部にSiN膜20を埋め込むことができる。
【0075】
なお、
図10の中段ではマスク選択比が低く、下段ではエッチングにより生成された副生成物が凹部の開口に再付着して、凹部の開口が狭まっている又は閉じている。以上から、バイアス電圧発生用の電力を200W〜300Wに制御し、かつ、エッチング工程におけるマイクロ波電力を、成膜工程におけるマイクロ波電力よりも低く制御することで、凹部のエッチング形状を垂直に保持し、凹部の底部からSiN膜20を埋め込むことができる。
【0076】
ただし、バイアス電圧発生用の電力の大きさは、構造体21のパターンの形状や、マイクロ波プラズマ処理装置100の載置台11の上面と処理容器1の天井面とのギャップ等により適切値が異なる。よって、エッチング工程において、バイアス電圧発生用の電力を200W〜500Wに制御してもよい。特に、アスペクト比が7.5以上の高アスペクトのホール等をエッチングする場合には500W程度の高いバイアス電圧発生用の電力を印加することが好ましい。
【0077】
以上に説明した成膜工程及びエッチング工程は、マイクロ波プラズマ処理装置100の処理容器1内で実行される。成膜工程とエッチング工程とを別の装置で実行すると、工数が増え、特に高アスペクト比のホール等の凹部の埋め込みを実行する場合には膨大な工数が必要となる。本実施形態では、成膜工程及びエッチング工程を同一のマイクロ波プラズマ処理装置100で連続して行うことができる。これにより、スループットを向上させることができる。
【0078】
[変形例:窒化工程の挿入]
RI値はSiN膜20の絶縁性と関連し、2.0〜3.0の範囲であることが好ましい。しかし、埋め込まれたSiN膜20に高い絶縁性が求められるときと、それ程高い絶縁性は求められない場合がある。
【0079】
例えば層間絶縁を行うために、配線間のスペースにSiN膜20を埋め込む場合、高い絶縁性が求められる。一方、SiN膜20中にSi成分が多く含まれる膜では絶縁性が低くなる。
【0080】
そこで、本変形例では、SiN膜20中にSi成分が多く含まれる膜を窒化することでSiN膜20の絶縁性を高める。これにより、絶縁性の高いSiN膜20の埋め込みを実現し、埋め込まれたSiN膜により層間絶縁を行うことができる。
【0081】
変形例に係る埋め込み方法の一例について、
図11を参照しながら説明する。
図11は、一実施形態の変形例に係る埋め込み方法の一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えばマイクロ波プラズマ処理装置100の制御装置3において実行される。
【0082】
本処理が開始されると、制御装置3は、予め定められた成膜条件に基づき成膜工程の実行を制御する(ステップS20)。成膜工程では、適正化された成膜条件に基づきSiとHとNとを含むガスを供給し、載置台11にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加し、処理容器1内にマイクロ波電力を印加してマイクロ波プラズマによる成膜処理を行う。
【0083】
次に、制御装置3は、成膜されたSiN膜を所定の窒化条件に基づき窒化する窒化工程を実行する(ステップS22)。窒化工程では、N
2ガスが供給される。N
2ガスは、Nを含むガスの一例である。
【0084】
次に、制御装置3は、予め定められたエッチング条件に基づきエッチング工程の実行を制御する(ステップS24)。エッチング工程では、Hを含むガス又はHとArとを含むガスを供給し、載置台11にバイアス電圧発生用の高周波電力を印加し、処理容器1内にマイクロ波電力を印加してマイクロ波プラズマによるエッチング処理を行う。
【0085】
次に、制御装置3は、所定回数繰り返したかを判定する(ステップS26)。制御装置3は、成膜工程及びエッチング工程を所定回数実行するまで、ステップS20〜S26を繰り返し実行し、所定回数実行した後、本処理を終了する。
【0086】
これにより、
図12に示すように、凹部を有する構造体21に対して成膜工程においてSiN膜20が成膜される。次に、窒化工程によりSiN膜20が窒化される。次に、エッチング工程においてSiN膜20の側部をエッチングして凹部の開口を広げ、エッチング形状を垂直にする。かかる変形例では、成膜工程と窒化工程とエッチング工程とを繰り返すことで、絶縁性の高いSiN膜20の埋め込みを実現できる。なお、エッチング工程を終えた後、SiN膜20の埋め込み後の表面に表面荒れ等がある場合には、最後に成膜工程を実行することが好ましい。
【0087】
図13は、一実施形態の変形例に係るSiN膜の窒化と漏れ抵抗の関係の一例を示す図である。
図13の横軸は絶縁破壊電圧E(MV/cm)を示し、縦軸は膜の漏れ抵抗J(A/cm
2)を示す。
【0088】
aは、成膜工程(C)とエッチング工程(E)との繰り返しによって成膜された、RI2.80のSiN膜に対して絶縁破壊電圧Eを印加したときの漏れ抵抗Jを示す。bは、成膜工程(C)とエッチング工程(E)との繰り返しによって成膜された、RI2.06のSiN膜に対して絶縁破壊電圧Eを印加したときの漏れ抵抗Jを示す。
【0089】
cは、成膜工程(C)とエッチング工程(E)と窒化工程(N)を5秒繰り返し、成膜された、RI2.80のSiN膜に対して絶縁破壊電圧Eを印加したときの漏れ抵抗Jを示す。dは、成膜工程(C)とエッチング工程(E)と窒化工程(N)を15秒繰り返し、成膜された、RI2.80のSiN膜に対して絶縁破壊電圧Eを印加したときの漏れ抵抗Jを示す。eは、成膜工程(C)とエッチング工程(E)と窒化工程(N)を30秒繰り返し、成膜された、RI2.80のSiN膜に対して絶縁破壊電圧Eを印加したときの漏れ抵抗Jを示す。
【0090】
これによれば、成膜工程(C)とエッチング工程(E)の間に窒化工程(N)を挿入することで、漏れ抵抗Jが下がり、SiN膜の絶縁性が高められていることがわかる。
【0091】
[トリートメント処理]
成膜工程とエッチング工程との繰り返しや、成膜工程と窒化工程とエッチング工程との繰り返しにより凹部に埋め込んだSiN膜20に対して、トリートメントするトリートメント工程を有してもよい。トリートメント工程は、成膜工程、窒化工程、エッチング工程を行うマイクロ波プラズマ処理装置100と同一装置で行われる。
【0092】
この場合、制御装置3は、凹部へのSiN膜の埋め込み後、処理容器内にHを含むガスを供給し、マイクロ波プラズマによるSiN膜のトリートメント処理を行う。
【0093】
制御装置3は、Hを含むガスとしてH
2とArとの混合ガスを供給し、Arの流量をH
2の流量よりも多く供給するように制御して前記トリートメント処理を行う。トリートメント条件を以下に示す。
【0094】
(トリートメント条件)
ガス種 Ar/H
2
ガス流量比 Ar/H
2=10/1
圧力 10Pa
マイクロ波電力 4kW
バイアス電圧発生用の高周波電力 200W
トリートメント時間 60s
上記トリートメント条件に基づきポリシリコン膜にトリートメント工程を実行した結果を
図14に示す。これによれば、
図14の(a)の最左に示す表面粗さRaが2.63nmの状態から、上記のプラズマトリートメントを実行することにより、
図14の(b)に示す0.21nmの状態まで、Si膜の表面を滑らかにすることができた。
【0095】
なお、
図14の(a)は、最左から最右に向かって結晶性を下げたときのSi膜の表面の状態を示す。最右は、結晶性が0%、つまりアモルファスシリコン(aSi)膜の表面状態を示す。
【0096】
図14の(a)と(b)とを比較すると、本実施形態に係るトリートメント工程を実行することで、Si膜の表面のラフネスを低減でき、膜の結晶性を下げた場合と同様にSi膜の表面を滑らかにすることができることがわかった。
【0097】
これによれば、SiN膜についても、その表面を滑らかにすることで、次工程でSiN膜上への膜の形成を良好にすることができる。また、トリートメント工程は、成膜工程及びエッチング工程と同一のマイクロ波プラズマ処理装置100の処理容器1内で行うことができる。これにより、スループットを向上させることができる。
【0098】
なお、トリートメント工程では、Arの流量をH
2の流量よりも多く供給するように制御することが好ましい。また、トリートメント工程は、SiN膜のトリートメントだけでなく、他の膜のトリートメントとしても実行可能である。
【0099】
以上、一実施形態に係るSiN膜の埋め込み処理、変形例に係る埋め込み処理、埋め込み処理後のトリートメント処理について説明した。成膜工程では、SiとHとNとを含むガスの一例として、Ar、SiH
4、N
2のガスを供給した。ただし、SiH
4の替わりにSi
2H
6、Si
2H
2CF
2のガス種を使用することができる。
【0100】
また、窒化工程では、Nを含むガスの一例として、N
2ガスを挙げた。ただし、N
2の替わりにNH
3のガス種を使用することができる。
【0101】
また、エッチング工程では、Hを含むガス又はHとArとを含むガスの一例として、H
2ガス又はArとH
2の混合ガスを挙げた。ただし、Hを含むガスはH
2の単一ガスに限られず、H
2とHeの混合ガスを使用することができる。
【0102】
以上に説明したように、本実施形態に係るSiN膜の埋め込み方法によれば、成膜条件とエッチング条件を適正化し、適正化された成膜条件及びエッチング条件に基づき成膜工程及びエッチング工程を繰り返し行うことで、ウェハW上に形成された凹部へSiN膜を埋め込むことができる。
【0103】
また、成膜工程とエッチング工程の間にて窒化工程を行うことで、SiN膜の絶縁性を向上させることができる。更に、成膜工程とエッチング工程とを繰り返し行った後、トリートメント工程を実行することで、SiN膜の表面を滑らかにし、次工程において良好に成膜することができる。
【0104】
以上、処理装置及び埋め込み方法を上記実施形態により説明したが、本開示にかかる処理装置及び埋め込み方法は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0105】
本開示に係る基板処理装置は、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のどのタイプでも適用可能である。
【0106】
本明細書では、基板の一例としてウェハWを挙げて説明した。しかし、基板は、これに限らず、LCD(Liquid Crystal Display)、FPD(Flat Panel Display)に用いられる各種基板、CD基板、プリント基板等であっても良い。