(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
メチオニンの製造方法として、例えば、以下の方法が知られている。5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン(以下、メチオニンヒダントインと記すことがある。)を加水分解することによりメチオニン塩を含む液(以下、加水分解反応液と記すことがある。)を得て、加水分解反応液に二酸化炭素を導入することによりメチオニンを析出させてメチオニンのスラリー(以下、単にスラリーと記すことがある。)を得る方法である。
この製造方法では、スラリーを固液分離して得られるメチオニンのケーキを洗浄し、その後乾燥することにより、製品としての粉体のメチオニンが得られる。
【0003】
前述のスラリーを固液分離して得られるメチオニンのケーキ(以下、粗製ケーキと記すことがある。)には、カリウム等の不純物が含まれている。このため、この不純物の含有率が低い高品質なメチオニン(以下、精製メチオニンと記すことがある。)を得るために、粗製ケーキの洗浄方法について、さまざまな検討が行われている。(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、回分式の遠心ろ過機を用いてスラリーを固液分離した後、この遠心ろ過機内で、スプレーを用いて粗製ケーキに対して洗浄水を吹きかけることで、粗製ケーキの洗浄が試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、メチオニンの生産性を向上させるために、スラリーの固液分離で使用する回分式のろ過機を連続式のろ過機に置き換えることを検討した。この検討において、連続式のろ過機を用いてスラリーを固液分離して粗製ケーキを得て、この粗製ケーキをろ過機内でスプレーで洗浄したところ、この粗製ケーキに含まれる不純物が除去されにくく、所望のレベルまで不純物を除去するには、多量の洗浄水が必要であることがわかった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、連続式のろ過機を用いた場合の、単位洗浄水量当たりの不純物除去率の向上、すなわちメチオニンの洗浄効率の向上が達成可能な精製メチオニンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、連続式のろ過機を用いた場合に、粗製ケーキに含まれる不純物が除去されにくい点について鋭意検討したところ、粗製ケーキに含まれる不純物には、メチオニンの結晶粒内に取り込まれた不純物とそうでない不純物とが混在することがわかり、後者の不純物はスプレーによる洗浄で容易に除去できるものの、前者の不純物は除去されにくく、この不純物を除去するにはある程度の時間メチオニンの結晶粒と洗浄水とを接触させる必要があるという知見を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係る精製メチオニンの製造方法は、粗製メチオニンのスラリーから精製メチオニンを製造する方法であって、
(1)連続式のろ過機を用いて粗製メチオニンのスラリーを固液分離する工程、
(2)前記粗製メチオニンのスラリーを固液分離することにより得られる粗製ケーキに粗洗水を吹き付けて当該粗製ケーキを洗浄する工程、及び、
(3)前記粗製ケーキに粗洗水を吹き付けて当該粗製ケーキを洗浄することにより得られる準精製ケーキと精洗水とを混合して当該準精製ケーキを洗浄する工程
を含む。
【0009】
この製造方法では、連続式のろ過機を用いてスラリーを固液分離することにより得られる粗製ケーキを、粗洗水を吹き付けて洗浄した後、精洗水と混合して洗浄することを特徴とする。この製造方法では、メチオニンの結晶粒表面に存在する不純物は、粗製ケーキに粗洗水を吹き付けてこの粗製ケーキを洗浄することにより除去され、メチオニンの結晶粒内に存在する不純物は、準精製ケーキと精洗水とを混合して洗浄することにより除去される。この製造方法では、ケーキに洗浄水を吹き付けて洗浄する方法(以下、スプレー洗浄と記すことがある)と、ケーキと洗浄水とを混合することにより洗浄する方法(以下、リスラリー洗浄と記すことがある)とを組み合わせて行うことにより、スプレー洗浄及びリスラリー洗浄のいずれか一方のみで洗浄する方法に比べて、少ない洗浄水の量で粗製ケーキに含まれる不純物を除去することができる。この製造方法では、連続式のろ過機を用いた場合の、メチオニンの洗浄効率の向上が達成可能である。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明の製造方法では、連続式のろ過機を用いた場合の、メチオニンの洗浄効率の向上が達成可能である。この製造方法は、連続式のろ過機を用いた場合でも、少ない洗浄水の量で不純物含有率が低い高品質な精製メチオニンを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本明細書においては、本発明の説明に必要な部分を除いて、従来から公知の部分の内容に関しては詳細な説明は省略する。
【0012】
[精製メチオニンの製造方法]
本発明の製造方法は、粗製メチオニンのスラリーから精製メチオニンを製造する方法であって、分離工程、粗洗水吹付工程及び精洗水混合工程を含む。
【0013】
粗製メチオニンのスラリーの製造方法としては、例えば、以下に記す加水分解工程に次いで、晶析工程を実施する方法が挙げられる。
【0014】
[加水分解工程]
加水分解工程では、メチオニンヒダントインが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ化合物の存在下で加水分解させられる。これにより、メチオニン塩を含む液(以下、加水分解反応液と記すことがある。)が得られる。この加水分解工程では、圧力は約0.5〜1.0MPaGの範囲で設定される。温度は、150〜200℃の範囲で設定される。なお、原料であるメチオニンヒダントインの製造方法としては、例えば、3−メチルメルカプトプロピオンアルデヒドシアンヒドリンを水中で二酸化炭素及びアンモニアと反応させる方法が挙げられる。
【0015】
[晶析工程]
晶析工程では、加水分解工程で得た加水分解反応液に二酸化炭素が導入される。これにより、メチオニンが析出し、メチオニンの結晶粒が分散した、メチオニンのスラリーが得られる。晶析工程では、晶析温度は通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃である。晶析時間は、二酸化炭素が反応液に飽和してメチオニンが十分に析出するまでの時間を目安とするが、通常30分〜24時間である。
【0016】
本発明では、加水分解反応液に二酸化炭素を導入して得られるメチオニンのスラリーが粗製メチオニンのスラリーである。粗製メチオニンのスラリー中のメチオニン濃度は、固形分濃度として通常5〜30質量%の範囲である。この粗製メチオニンのスラリーには、加水分解に使用した水酸化カリウム等のアルカリ化合物、メチオニンの二量体、メチオニンの分解により生じるグリシン及びアラニン等の不純物が含まれている。
【0017】
[分離工程]
分離工程では、晶析工程で得た粗製メチオニンのスラリーを固液分離することにより、固体成分である粗製メチオニンのケーキ(すなわち、粗製ケーキ)と、液体成分である母液とが得られる。この製造方法では、この粗製メチオニンのスラリーを固液分離するために、連続式のろ過機(以下、単に、ろ過機と記すことがある。)が用いられる。
【0018】
本発明では、ろ過機は以下に説明するような連続式のろ過機であれば、このろ過機に特に制限はない。連続式のろ過機としては、加圧タイプのろ過機等が例示される。
【0019】
この分離工程では、晶析工程が行われた反応槽から粗製メチオニンのスラリーが連続的にろ過機に供給される。このろ過機において、固液分離が連続的に行われ、プレート状の粗製ケーキが連続的に形成される。このプレート状の粗製ケーキの厚さは、15〜100mmの範囲で設定される。この分離工程では、固液分離のための諸条件は、粗製ケーキの含水率が概ね40質量%以下になるように、適宜設定される。
【0020】
前述したように、粗製メチオニンのスラリーには不純物が含まれている。このため、固液分離によって得た粗製ケーキにも、不純物が含まれている。
【0021】
本発明においては、加水分解工程で使用した、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ化合物に由来する不純物が粗製ケーキに含まれている。このため、使用したアルカリ化合物のタイプによって、このアルカリ化合物に由来する不純物は変わる。例えば、アルカリ化合物として炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及び水酸化カリウムを含む塩基性カリウム化合物を用いる場合、不純物濃度はカリウム濃度により示される。この場合の粗製ケーキの不純物濃度は通常、0.5質量%〜8質量%の範囲にある。なお、このカリウム濃度は、乾燥後の粗製ケーキの質量に対するカリウムの質量の比率で表される。本発明においてカリウムの質量は、イオンクロマトグラフィーにより測定したカリウムイオン量をカリウムの質量に換算することにより得られる。カリウムイオン量を測定するための分析条件は、次の通りである。
(イオンクロマトグラフィー分析条件)
カラム:Dionex IonPac CS12A
カラムサイズ:内径4mm、長さ250mm
溶離液:18mmol/L メタンスルホン酸
【0022】
[粗洗水吹付工程]
粗洗水吹付工程では、分離工程で得た粗製ケーキに洗浄水を吹き付けて、この粗製ケーキが洗浄される。本発明では、粗製ケーキの洗浄に用いる洗浄水が粗洗水である。この製造方法では、この粗洗水吹付工程は、前述の分離工程で用いられたろ過機内又はそれとは別の装置内で行われる。生産効率の観点からは、分離工程で用いられたろ過機内で粗洗水吹付工程が行われることが好ましい。この製造方法では、ろ過機において、連続的に形成されていくプレート状の粗製ケーキに粗洗水が吹き付けられ、この粗製ケーキが洗浄される。これにより、粗製ケーキに含まれる不純物の一部が洗い流される。このため、洗浄後の粗製ケーキに含まれる不純物の量は、洗浄前のそれよりも少ない。本発明では、粗洗水による洗浄により不純物の量が減らされた洗浄後の粗製ケーキが準精製ケーキである。なお、この粗洗水吹付工程では、粗洗水の温度は通常5〜35℃の範囲で適宜設定される。
【0023】
この製造方法では、粗製ケーキへの粗洗水の吹き付けにはスプレーが用いられる。この製造方法では、粗洗水の吹付量を調整でき、粗製ケーキ全体に満遍なく粗洗水を吹き付けることができればよく、粗製ケーキに粗洗水を吹き付けるためのスプレーに特に制限はない。
【0024】
この粗洗水吹付工程においては、不純物の効果的な除去の観点から、粗製ケーキに吹き付けられる粗洗水の質量は、この粗製ケーキの乾燥後の質量100gに対して、100g以上が好ましく、300g以下が好ましい。この粗洗水の質量は、粗製ケーキの乾燥後の質量100gに対して、150g以上がより好ましく、250g以下がより好ましい。
【0025】
この製造方法では、粗洗水として水が用いられてもよく、この粗洗水としてメチオニン水溶液が用いられてもよい。粗製ケーキを構成するメチオニンの、粗洗水への溶解を防止し、製品におけるメチオニンの収率を向上させる観点から、この粗洗水としては、メチオニン水溶液が好ましい。この場合、粗洗水中のメチオニンの濃度は、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。常温常圧におけるメチオニンの水への飽和溶解度が3.0質量%であることから、この粗洗水中のメチオニンの濃度の上限は3.0質量%である。つまり、粗洗水中のメチオニンの濃度は、3.0質量%以下である。本発明においてメチオニンの濃度は、液体クロマトグラフィーにより測定され得る。
【0026】
粗洗水において使用される水は、特に限定されるものではない。この水としては、蒸留水、純水、イオン交換水、水蒸気の凝縮水、工業用水等が例示される。
連続式のろ過機内で粗洗水吹付工程を行うことにより得られる準精製ケーキの含水率は通常20質量%以上40質量%以下である。メチオニンの精製において、準精製ケーキの含水率がこの範囲になる場合に本発明の製造方法を適用することにより、メチオニンの洗浄効率を向上させることができる。
【0027】
[精洗水混合工程]
精洗水混合工程では、粗洗水吹付工程で得た準精製ケーキが洗浄水を用いてさらに洗浄される。本発明では、準精製ケーキの洗浄に用いる洗浄水が精洗水である。この精洗水混合工程では、ろ過機から排出された準精製ケーキが精洗水とともに攪拌装置のドラムに投入される。投入後、このドラム内にある攪拌翼を回転させて、準精製ケーキと精洗水とが攪拌され混合される。このようにリスラリー洗浄を行うことにより、準精製ケーキを構成するメチオニンの結晶粒と精洗水とを、ある程度の時間をかけて、接触させることができ、準精製ケーキ中に残存する不純物、詳細には、準精製ケーキを構成するメチオニンの結晶粒内に存在する不純物が除去される。これにより、清浄されたメチオニンのスラリー、すなわち、精製メチオニンのスラリーが得られる。なお、この精洗水混合工程では、準精製ケーキを投入した後にドラムに精洗水が投入されてもよく、精洗水を投入した後にこのドラムに準精製ケーキが投入されてもよく、準精製ケーキと精洗水とが同時に投入されてもよい。精洗水の温度は通常、5〜35℃の範囲で適宜設定される。
【0028】
この製造方法では、攪拌装置において、準精製ケーキと精洗水とを十分に攪拌して混合できればよく、この攪拌装置に特に制限はない。
【0029】
この精洗水混合工程においては、不純物の効果的な除去の観点から、準精製ケーキとともにドラムに投入される精洗水の質量は、この準精製ケーキの乾燥後の質量100gに対して、100g以上が好ましく、300g以下が好ましい。この精洗水の質量は、準精製ケーキの乾燥後の質量100gに対して、150g以上がより好ましく、250g以下がより好ましい。
【0030】
この製造方法では、精洗水として水が用いられてもよく、この精洗水としてメチオニン水溶液が用いられてもよい。メチオニンの精洗水への溶解を防止し、製品におけるメチオニンの収率を向上させる観点から、この精洗水としては、メチオニン水溶液が好ましい。
この場合、精洗水中のメチオニンの濃度は、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。常温常圧におけるメチオニンの水への飽和溶解度が3.0質量%であることから、この精洗水中のメチオニンの濃度の上限は3.0質量%である。つまり、精洗水中のメチオニンの濃度は、3.0質量%以下である。
【0031】
精洗水において使用される水は、特に限定されるものではない。この水としては、蒸留水、純水、イオン交換水、水蒸気の凝縮水、工業用水等が例示される。
【0032】
この精洗水混合工程においては、準精製ケーキと精洗水との混合のために攪拌している時間(以下、攪拌時間)は、製造コストへの影響と、不純物の効果的な除去とが考慮され適宜決められる。通常、この攪拌時間は、3分以上30分以下の範囲で設定される。
【0033】
この製造方法では、精洗水混合工程で得た、精製メチオニンのスラリーは、通常、従来公知の固液分離機を用いて、固液分離される。これにより、精製メチオニンのケーキ(以下、精製ケーキともいう。)が得られる。つまり、この製造方法は、精製メチオニンのスラリーを固液分離する工程(以下、第二分離工程ともいう。)をさらに含んでいる。精製メチオニンのスラリー中のメチオニン濃度は、固形分濃度として通常20〜45質量%程度である。
【0034】
この製造方法では、第二分離工程で得た精製ケーキは、通常、従来公知の乾燥機に投入される。この乾燥機において、精製ケーキは乾燥される。これにより、水分が除去され、不純物含有率が低減された高品質な、粉末状のメチオニン、すなわち、精製メチオニンが得られる。この製造方法は、精製メチオニンのスラリーを固液分離することにより得られる精製ケーキを乾燥する工程(以下、乾燥工程ともいう。)をさらに含んでいる。
【0035】
この製造方法では、乾燥工程において、十分に水分が除去され、精製メチオニンが得られればよく、精製ケーキの乾燥方法に特に制限はない。この製造方法では、乾燥工程は、従来から公知の製造方法における乾燥工程の内容と同様の内容で構成されている。この製造方法では、乾燥温度は通常50〜150℃であり、好ましくは100〜140℃である。乾燥時間は通常10分〜24時間であり、好ましくは30分〜2時間である。なお、十分に水分が除去された状態とは、精製メチオニンの含水率が5質量%以下である状態を意味する。
【0036】
以上説明したように、この製造方法は、粗製メチオニンのスラリーから精製メチオニンを製造する方法であって、分離工程、粗洗水吹付工程、精洗水混合工程、第二分離工程及び乾燥工程を含んでいる。具体的には、この製造方法では、分離工程において粗製メチオニンのスラリーから粗製ケーキが連続的に形成される。粗洗水吹付工程において、この粗製ケーキが洗浄される。この洗浄により得た準精製ケーキが、精洗水混合工程において、精洗水との混合により、さらに洗浄され、精製メチオニンのスラリーが得られる。第二分離工程において、精製メチオニンのスラリーが固液分離され、精製ケーキが得られる。そして、乾燥工程において、この精製ケーキが乾燥され、精製メチオニンが得られる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の製造方法では、連続式のろ過機を用いた場合の、メチオニンの洗浄効率の向上が達成可能である。この製造方法では、連続式のろ過機を用いた場合でも、少ない洗浄水の量で不純物含有率が低い高品質な精製メチオニンが得られる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
[粗製メチオニンのスラリーの製造]
メチオニンアルデヒド及び青酸を常温及び常圧下で反応させてメチオニンシアンヒドリンを合成した。このメチオニンシアンヒドリンに対し、炭酸アンモニウムを水中で、75℃で2.5時間反応させて、メチオニンヒダントインを15質量%、アンモニアを3.6質量%含む、ヒダントイン液を得た。
このヒダントイン液に不活性ガスとして窒素ガスを吹き込んだ。
窒素ガスの吹き込みが行われたヒダントイン液に、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及び水酸化カリウムを含む塩基性カリウム化合物を混合して得た液(カリウム濃度=約7.5質量%)をオートクレーブの上部より連続して供給し(供給速度700g/時間)、圧力1.0MPaG、温度180℃に保持しながら加水分解反応を行い、メチオニン塩を含む液(以下、加水分解反応液)を得た。
加水分解反応液には、0.35MPaG、20℃で二酸化炭素が導入された。これにより、メチオニンを析出させ、粗製メチオニンのスラリーを得た。
【0040】
[実施例]
粗製メチオニンのスラリーを固液分離して、粗製ケーキを得た。粗製ケーキ(40g)に粗洗水を吹き付けてこの粗製ケーキを洗浄し、準精製ケーキを得た。この準精製ケーキの含水率は、27質量%であった。粗洗水として、メチオニン水溶液(メチオニン濃度=2質量%、カリウム濃度=0.2質量%)を用いた。この粗洗水の使用量は、乾燥後の粗製ケーキの質量の1.8倍に設定された。
【0041】
この実施例では、準精製ケーキを精洗水と混合しスラリーを得た。精洗水として、メチオニン水溶液(メチオニン濃度=2質量%)を用いた。この精洗水の使用量は、乾燥後の準精製ケーキの質量の2.2倍に設定された。攪拌時間は、3分に設定された。
【0042】
この実施例では、準精製ケーキを精洗水と混合して得たスラリーを通気脱水し、メチオニンのケーキを得た。このケーキを乾燥し、粉末状のメチオニンを得た。
【0043】
この実施例では、固液分離工程、粗洗水吹付工程及び精洗水混合工程が実施された。このことが下記の表1において「Y」で表されている。
【0044】
[比較例1]
粗製メチオニンのスラリーを固液分離して、粗製ケーキを得た。この粗製ケーキ(40g)を粗洗水と混合しスラリーを得た。粗洗水として、メチオニン水溶液(メチオニン濃度=2質量%)を用いた。この粗洗水の使用量は、乾燥後の粗製ケーキの質量の12.5倍に設定された。攪拌時間は、3分に設定された。
【0045】
この比較例1では、粗製ケーキを粗洗水と混合して得たスラリーを通気脱水し、メチオニンのケーキを得た。このケーキを乾燥し、粉末状のメチオニンを得た。
【0046】
この比較例1では、固液分離工程及び粗洗水混合工程が実施された。このことが下記の表1において「Y」で表されている。この比較例1では、粗洗水吹付工程は実施されていない。
【0047】
[比較例2]
粗製メチオニンのスラリーを固液分離して、粗製ケーキを得た。粗製ケーキ(40g)に粗洗水を吹き付けてこの粗製ケーキを洗浄し、準精製ケーキを得た。この準精製ケーキの含水率は、27質量%であった。粗洗水として、メチオニン水溶液(メチオニン濃度=2質量%、カリウム濃度=0.2質量%)を用いた。この粗洗水の使用量は、乾燥後の粗製ケーキの質量の2.4倍に設定された。
【0048】
この比較例2では、準精製ケーキに精洗水をさらに吹き付けて、この準精製ケーキを洗浄した。精洗水として、メチオニン水溶液(メチオニン濃度=2質量%)を用いた。この精洗水の使用量は、乾燥後の準精製ケーキの質量の2.5倍に設定された。
【0049】
この比較例2では、洗浄後の準精製ケーキを通気脱水し、メチオニンのケーキを得た。
このケーキを乾燥し、粉末状のメチオニンを得た。
【0050】
この比較例2では、固液分離工程、粗洗水吹付工程及び精洗水吹付工程が実施された。
このことが下記の表1において「Y」で表されている。この比較例2では、精洗水混合工程は実施されていない。
【0051】
[洗浄水量]
実施例並びに比較例1及び2のそれぞれについて、洗浄水量、すなわち、洗浄水の使用量を計測した。この結果が、乾燥後のケーキの質量に対する洗浄水の使用量の比率で、下記の表1に示されている。この数値が小さいほど、洗浄水の使用量が少ないことを表している。なお、洗浄水として粗洗水と精洗水とを使用した場合には、洗浄水の使用量は両者の合計使用量で表される。
【0052】
[洗浄効率]
実施例並びに比較例1及び2それぞれの洗浄効率が下記の表1に示されている。洗浄効率は、カリウム除去率(以下、K除去率と記す)を洗浄水量で除することにより、単位洗浄水量当たりのK除去率を算出して評価した。この数値が大きいほど、洗浄効率が高いことを表している。
なお、K除去率は、以下の式(1)により算出した。
式(1) K除去率(%)=[(洗浄前のメチオニン中のカリウム含有率−洗浄後のメチオニン中のカリウム含有率)/洗浄前のメチオニン中のカリウム含有率]×100
上記式(1)において、洗浄前のメチオニン中のカリウム含有率は、固液分離後のメチオニンケーキ中のカリウム含有率を乾燥メチオニン中のカリウム含有率に換算した値であり、同様に、洗浄後のメチオニン中のカリウム含有率は、洗浄後のメチオニンケーキ中のカリウム含有率を乾燥メチオニン中のカリウム含有率に換算した値である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されているように、実施例は、比較例1及び2に比して、洗浄効率が高い。この評価結果から、連続式のろ過機を用いた場合の、メチオニンの洗浄効率の向上が達成されることは明らかである。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕粗製メチオニンのスラリーから精製メチオニンを製造する方法であって、
連続式のろ過機を用いて粗製メチオニンのスラリーを固液分離する工程と、
前記粗製メチオニンのスラリーを固液分離することにより得られる粗製ケーキに粗洗水を吹き付けて当該粗製ケーキを洗浄する工程と、
前記粗製ケーキに粗洗水を吹き付けて当該粗製ケーキを洗浄することにより得られる準精製ケーキと精洗水とを混合して当該準精製ケーキを洗浄する工程と
を含む、前記方法。
〔2〕前記準精製ケーキの含水率が20質量%以上40質量%以下である、〔1〕に記載の方法。