(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性粒子はCu粒子であり、前記耐アーク性粒子はCr粒子、W粒子およびMo粒子の少なくともいずれか1つの粒子であり、前記混合粉末の質量を100wt%としたときに、前記導電性粒子の粉末の質量が20wt%以上80wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点の製造方法。
【背景技術】
【0002】
高電圧配電設備に備えられた真空遮断器は、高電圧配電設備の故障および異常時に電流を遮断するために用いられている。真空遮断器は、電流を遮断する機能を有する真空バルブを備えている。真空バルブは、高真空に保たれた絶縁容器内部で、固定電極と可動電極とが同軸上に対向配置された構造を有している。真空バルブの固定電極および可動電極の対向面にはそれぞれ電気接点が備えられている。この電気接点同士が接触および離間することで真空バルブの閉極および開極が行われる。
【0003】
電気接点は、高電圧、大電流を遮断するときに直接アークにさらされる。電気接点に要求される特性は、遮断容量が大きいこと、耐電圧値が高いこと、電気伝導性に優れていること、耐溶着性に優れていること、接点消耗量が少ないこと、およびこれらの特性の安定性が高いことなどが挙げられる。
【0004】
従来の真空バルブの電気接点は、Cu(銅)などの導電性物質を主成分とする母材と、この母材中に分散して存在するCr(クロム)などの高融点物質粒子とで構成されている。このような電気接点は、例えば次のような工程で製造される。その工程は、Cu粉末とCr粉末とを混合して混合粉末とする工程、混合粉末を加圧圧縮して成形体とする工程、成形体を高温焼成して焼結体とする工程、および焼結体を機械加工して電気接点の形状にする工程である。
【0005】
上述のような工程で製造された電気接点において、電気接点の内部に残留する酸素などの不純物ガスは遮断性能に大きく影響する。特に残留酸素は、開極のときに電気接点から放出され、可動電気接点と固定電気接点との間の電気的な経路となり易い。その結果、残留酸素は、真空バルブの遮断特性を著しく低下させるという問題がある。この問題に対処するためには、電気接点の内部に残留する不純物ガスを極力減らす必要がある。
【0006】
また、電気接点においては、進み小電流遮断において電気接点同士の溶着を引き剥がすときに溶着痕が引き延ばされるため、電気接点の表面の凹凸が大きくなる。その結果、溶着痕の先端部で電界集中が生じ、耐電圧性能が低下するという問題がある。この問題に対処するためには、電気接点表面にCr粒子の粒径が小さい微細化皮膜を形成する必要がある。
【0007】
さらに、高電圧下で使用される電気接点は、電圧が高くなるにしたがって表面にかかる機械的な力およびジュール熱が増加する。そのため、電流遮断の繰り返しに起因して電気接点の表面に破断が生じ、耐電圧性能が徐々に低下していくという問題がある。この問題に対処するためには、微細化皮膜を厚膜化する必要がある。
【0008】
電気接点表面に微細化皮膜を形成する方法として、コンディショニングと呼ばれる方法がある。コンディショニングとは、例えば電気接点の表面に高電圧を印加してアーク放電を発生させ、このアーク放電の熱で電気接点の表面を溶融して微細化皮膜を形成する方法である。また、別の方法として、摩擦撹拌接合を応用する方法がある。この方法は、摩擦撹拌の技術を応用して電気接点の表面を摩擦熱で溶融して微細化皮膜を形成する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
一方、電気接点の微細化皮膜を厚膜化する方法として溶射を用いる方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る真空バルブおよび電気接点について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る真空バルブの断面模式図である。本実施の形態の真空バルブ1は、遮断室2を備えている。遮断室2は、円筒形状の絶縁容器3と、円盤形状の金属蓋5aおよび5bとで構成されている。金属蓋5aおよび5bの両端は、封止金具4aおよび4bで絶縁容器3にそれぞれ固定されている。絶縁容器3、金属蓋5aおよび5bで密封された遮断室2は、真空気密に保たれている。遮断室2内には、固定電極棒6と可動電極棒7とが対向して取り付けられている。固定電極棒6および可動電極棒7の端部には、固定電極8および可動電極9がそれぞれ取り付けられている。また、固定電極8および可動電極9の接触部には、固定電気接点10および可動電気接点11がロウ付けによりそれぞれ取り付けられている。固定電気接点10および可動電気接点11の少なくとも一方には、本実施の形態に係る電気接点が適用されている。
【0018】
可動電極棒7には、ベローズ12が取り付けられている。ベローズ12は、遮断室2の内部を真空気密に保持しながら可動電極棒7の軸方向の移動を可能にしている。可動電極棒7の軸方向の移動によって、可動電極9が固定電極8に接触したり離れたりする。ベローズ12の上部には、金属製のベローズ用アークシールド13が設けられている。ベローズ用アークシールド13は、ベローズ12にアーク蒸気が付着することを防止している。また、遮断室2内の固定電極8および可動電極9を覆う位置に、金属製の絶縁容器用アークシールド14が設けられている。絶縁容器用アークシールド14は、絶縁容器3の内壁にアーク蒸気が付着することを防止している。
【0019】
一般に、固定電極8、可動電極9、固定電気接点10および可動電気接点11の形状は、円盤形状である。以下、本実施の形態の電気接点の形状は、円盤形状であるとして説明する。ただし、電気接点の形状は、円盤形状以外の形状でもよい。
【0020】
これ以降、本実施の形態における電気接点について説明する。始めに本実施の形態の電気接点の製造方法について説明する。
図2は、本実施の形態における電気接点の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施の形態における電気接点の製造方法は、導電性粒子の粉末と耐アーク性粒子の粉末とを混合する工程S1と、混合粉末を不活性ガスと共に基板の表面に吹き付ける工程S2と、基板の表面に吹き付けられた混合粉末にレーザー光を照射して混合粉末を軟化もしくは溶融させて基板の表面に皮膜を形成する工程S3と、基板の表面に形成された皮膜を冷却固化する工程S4とを備えている。
次に、各工程を詳細に説明する。
【0021】
[導電性粒子の粉末と耐アーク性粒子の粉末とを混合する工程S1]
導電性粒子としては、例えばCu粒子を用いる。耐アーク性粒子としては、例えばCr粒子、W粒子およびMo粒子の少なくともいずれか1つの粒子を用いる。導電性粒子の粉末と耐アーク性粒子の粉末とを混合して混合粉末とする。混合粉末の質量を100wt%としたときに、導電性粒子の粉末の質量は20wt%以上80wt%以下とする。導電性粒子および耐アーク性粒子の粒径は、0.1μm以上120μm以下が好ましい。これらの粒子の粒径が0.1μm未満の場合、粒子の表面酸化、粒子同士の凝集などの影響を受けやすくなる。これらの粒子の粒径が120μmを超える場合、後述するレーザー光の照射による溶融のときに不完全溶融となり易く、微細化皮膜中での耐アーク性粒子の粒径が大きくなる。
なお、原料粉末の平均粒径は、レーザー回折散乱法を原理とするレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0022】
[混合粉末を不活性ガスと共に基板の表面に吹き付ける工程S2]
図3は、本実施の形態における電気接点の製造方法の説明図である。基板21の表面に向かって、供給管22から導電性粒子23と耐アーク性粒子24との混合粉末が不活性ガス25を用いて供給される。このとき、不活性ガス25の供給量の体積は、例えば混合粉末の重量1g当たり0.5リットル以上8.3リットル以下に設定されている。混合粉末の流量は、6〜24g/分の範囲であることが好ましい。また、不活性ガス25の流量は、3〜200リットル/分の範囲が好ましい。不活性ガス25としては、例えばアルゴンガス、窒素ガスなどの非酸化性ガスを用いることができる。混合粉末の重量1g当たりの不活性ガス25の体積が0.5リットル未満の場合、不純物ガスが混合粉末に混入し易くなる。その結果、次の工程において混合粉末が加熱されたときに、混合粉末と不純物ガスとが結合する場合がある。特に酸素が混入した場合、遮断特性を著しく低下させる。混合粉末の重量1g当たりの不活性ガス25の体積が8.3リットルを超える場合、次の工程において混合粉末がレーザー光で加熱された後の冷却速度が速くなりすぎる。加熱された後の混合粉末の冷却速度が速くなりすぎると、混合粉末が基板に付着する前に凝固が始まって成膜が困難となる場合がある。
【0023】
なお、不活性ガス25の供給量の体積を混合粉末の重量1g当たり0.5リットル以上8.3リットル以下の範囲で設定し、混合粉末および不活性ガスの流量を変化させることで微細化皮膜の特性を変化させることができる。例えば、混合粉末の流量を変化させると、次の工程において基板および混合粉末にそれぞれ入力されるレーザー光のエネルギー量が変化するために微細化皮膜と基板との間の密着力が変化する。
【0024】
なお、この工程において、供給管22から基板21に不活性ガスを吹き付ける角度は、とくに限定されない。不活性ガス中において、混合粉末は凝集が少ない状態であることが好ましい。
【0025】
[レーザー光を照射して混合粉末を軟化もしくは溶融させて基板の表面に皮膜を形成する工程S3]
図3に示すように、基板の表面に吹き付けられた混合粉末にレーザー光26が照射される。基板の表面に吹き付けられた混合粉末は、レーザー光26によって加熱され軟化もしくは溶融した状態となる。この軟化もしくは溶融状態の粉末27が基板21の表面に付着して微細化皮膜が形成される。この工程に用いられるレーザー光には、例えばYAGレーザー(Yttrium Aluminum Garnet Laser)の波長1064nmのレーザー光を用いることができる。なお、YAGレーザーの第二高調波の波長532nmのレーザー光、または第三高調波の波長355nmのレーザー光を用いてもよい。また、YAGレーザーに替えて、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザーなど他のレーザーを用いてもよい。なお、この工程において、基板に対してレーザー光が照射される角度は、とくに限定されない。
【0026】
図4は、この工程における微細化皮膜の形成過程を説明する説明図である。この工程において、レーザー光26は、
図4の黒矢印に示すように基板21の表面を掃引される。レーザー光26が照射された基板21の表面には、基板21の素材が溶融したメルトプール28が形成される。このメルトプール28と軟化もしくは溶融状態の粉末27との間で金属結合が行われ、微細化皮膜29が基板21の表面に強固に付着する。レーザー光26の掃引が繰り返されることで、微細化皮膜29は基板21の表面全体に肉盛りされた状態で形成される。
【0027】
なお、この工程において形成された微細化皮膜29は、不可避的に混入する例えばアルゴン、窒素などの元素が含まれる場合がある。また、YAGレーザーの波長1064nmのレーザー光を用いる場合、基板21の赤外線領域の光吸収率が低いために、メルトプール28が有効に形成されない場合がある。メルトプール28が有効に形成されない場合、微細化皮膜29と基板21との密着力が低下する。基板21の赤外線領域の光吸収率を上げるために、基板21の温度を80℃以上に加熱する加熱処理を施してもよい。あるいは基板21の赤外線領域の光吸収率を上げるために、基板21の表面に酸化被膜処理またはCr被膜処理を施してもよい。
【0028】
[基板の表面に形成された皮膜を冷却固化する工程S4]
レーザー光が掃引されてレーザー光の照射領域から外れることで、基板の表面に形成された微細化皮膜29が冷却される。このとき、不活性ガスの供給は続けられているので、微細化皮膜29の冷却速度が高まる。例えば、冷却速度が300K/秒以上の場合、微細化皮膜29の内部のCr粒子は1μm以下に微細化される。
【0029】
このようにして製造された電気接点は、真空バルブの電気接点とするために、必要に応じて機械加工される。具体的な機械加工は、真空バルブの電気接点としての設計上の必要な直径および厚さとするための研削加工、端部にテーパーを付けるためのテーパー加工、表面を研磨するための研磨加工などである。ただし、成膜後の微細化皮膜の表面が十分に平坦である場合、研磨加工は省略される場合がある。
【0030】
次に、本実施の形態における電気接点の電気特性評価について説明する。上述のような製造方法で試験接点を2つ作製し、この2つの試験接点をそれぞれ固定電気接点および可動電気接点とする評価用真空バルブを作製した。この評価用真空バルブを用いて、電気接点の電気特性評価を行った。電気接点の電気特性評価は、遮断特性の評価、耐電圧特性の評価、および繰り返し耐電圧特性の評価の3つである。
【0031】
遮断特性の評価は、次のようにして行った。コンデンサバンクの開閉を行うサイリスタと評価用真空バルブとを直列接続した回路を組み立てた。この回路において、コンデンサバンクからの放電を利用した通電電流を閉極した状態の評価用真空バルブに流した。コンデンサバンクは外部電源で充電される。通電電流を2kAから1kAずつ上げて評価用真空バルブを強制的に開極する遮断試験を行った。通電電流が4kAのときに遮断試験が成功したか否かで遮断特性の合否を判定した。なお、遮断試験の成功とは、評価用真空バルブを開極したときに、アークが完全に消滅する場合を意味する。遮断試験の不成功とは、評価用真空バルブを開極したときに、アークが継続するかまたは一旦消滅したアークが再度発生する場合を意味する。すなわち、遮断特性の評価においては、通電電流が4kAのときに遮断試験に成功した場合を合格とし、通電電流が4kAのときに遮断試験が不成功の場合を不合格とした。
【0032】
耐電圧特性の評価は、次のようにして行った。評価用真空バルブにおいて、固定電気接点と可動電気接点との間隔を2mmに設定した。この状態で固定電気接点と可動電気接点との間にインパルス電源を用いて電圧を印加した。印加電圧を4kVから4kVずつ順次上昇させ、絶縁破壊電圧を測定した。なお、絶縁破壊電圧は、電気接点の表面状態に強く依存する。そのため、絶縁破壊電圧の測定は絶縁破壊電圧が飽和傾向になるまで行った。耐電圧特性の評価においては、絶縁破壊電圧が40kV以上の場合を合格とし、絶縁破壊電圧が40kVに満たない場合を不合格とした。
【0033】
繰り返し耐電圧特性の評価は、上述の耐電圧特性の評価を連続で3回繰り返し行った。繰り返し耐電圧特性の評価においては、3回の連続評価で耐電圧特性の評価がすべて合格である場合を合格とし、3回の連続評価で耐電圧特性の評価が1回でも不合格である場合を不合格とした。
【0034】
以下、本実施の形態の電気接点について、具体的な実施例および比較例を説明する。
[実施例1〜6][比較例1〜5]
実施例1〜6および比較例1〜5の電気接点は、導電性粒子と耐アーク性粒子との混合粉末はすべて同じ条件であり、不活性ガスの供給条件が異なっている。実施例1〜6および比較例1〜5の混合粉末は次のようにして準備した。平均粒径10μmのCu粉末と平均粒径40μmのCr粉末とをV型混合撹拌機を用いて1時間以上混合して均一な混合粉末とした。この混合粉末のCu:Crは、50wt%:50wt%とした。
【0035】
また、実施例1〜6および比較例1〜5の電気接点における基板は、次のようにして作製した。平均粒径10μmのCu粉末と平均粒径40μmのCr粉末とをV型混合撹拌機を用いて1時間以上混合して均一な混合粉末とした。この混合粉末のCu:Crは、60wt%:40wt%とした。この混合粉末を内径φ35mmのダイス金型(鋼製)に入れ、油圧プレス機を用いて20〜100MPaの圧力で圧縮成形し、厚さ10mmの成形体を作製した。得られた成形体を水素雰囲気中900℃で2時間焼成して焼結体を作製した。得られた焼結体を直径約φ30mm、厚さ約2mmのCu円板の下に置き、水素雰囲気中で2時間溶浸した。このようにして基板を作製した。溶浸温度は1120℃とした。なお、被溶浸材のCuが未溶融の場合は10℃ずつ温度を上げて再度溶浸処理を施した。このときにCuが溶けた温度を溶浸温度とした。
【0036】
この基板の表面に上述の混合粉末をアルゴンガスと共に吹き付け、レーザー光を用いて溶融させることで基板の表面に微細化皮膜を形成した。実施例1〜6および比較例1〜5の電気接点においては、混合粉末の重量1g当たりのアルゴンガスの体積をそれぞれ0.5、0.7、1.0、2.0、5.0、8.3、0.2、0.4、8.4、9.2および10.0リットルとした。なお、混合粉末の流量は、一定の12g/分とした。また、レーザー光の掃引速度は、10mm/秒とした。そして、レーザー光の掃引を繰り返して、膜厚が1mmの微細化皮膜を形成した。この電気接点に対して、評価用真空バルブの電気接点とするために、微細化皮膜を残して直径φ30mm、厚さ8mmに加工し、側面に半円加工を加えた。このようにして作製された2つの電気接点を評価用真空バルブの固定電極および可動電極にそれぞれロウ付けして固定電気接点および可動電気接点とした。この評価用真空バルブを用いて、上述の電気特性評価を行った。
【0037】
図5は、実施例1〜6および比較例1〜5の電気接点における不活性ガスの供給条件および電気特性評価結果を表にした図である。実施例1〜6の電気接点の評価結果から、混合粉末の重量1g当たりのアルゴンガスの体積が0.5〜8.3リットルの範囲であれば、遮断特性の評価、耐電圧特性の評価および繰り返し耐電圧特性の評価の全てにおいて良好な結果が得られた。この条件の下では、混合粉末の量に対して十分な量のアルゴンガスを用いているため、微細化皮膜の酸素含有率を0.5wt%以下にすることができる。その結果、微細化皮膜中の不純物ガスの量が低下し遮断特性が向上したと推定される。また、レーザー光によって溶融した粉末とアルゴンガスとは、同時に基板表面へ流れ基板表面に付着する。このとき、アルゴンガスは基板に付着した溶融粉末に対して冷却ガスとしても作用する。溶融粉末がアルゴンガスによって急冷凝固することで、微細化皮膜中のCr粒子の平均粒径は15μm以下となる。とくに、微細化皮膜の冷却速度が300K/秒より高速な場合には微細化皮膜中のCr粒子の平均粒径は10μm以下となり、良好な耐電圧特性が得られる。
【0038】
また、この条件の下で形成される微細化皮膜の膜厚は、1層当たり500〜800μmとなる。これを積層することで膜厚が1mm以上の厚い微細化皮膜を得ることができる。また、この条件の下では1層目のレーザー光は、混合粉末だけでなく基板の表面を同時に溶解させることができる。そのため、微細化皮膜と基板との界面を金属結合させることができる。その結果、微細化皮膜の密着性を向上させることができ、微細化皮膜と基板との界面のせん断強度を200MPa以上にすることができる。
【0039】
一方、混合粉末の重量1g当たりのアルゴンガスの体積が0.5リットル未満の比較例1および2においては、遮断特性の評価、耐電圧特性の評価および繰り返し耐電圧特性の評価全てにおいて不合格となった。比較例1および2においては、混合粉末の量に対してアルゴンガスの体積が少ないために微細化皮膜中の不純物ガスの量が増加したため遮断特性が低下したと推定される。また、比較例1および2においては、冷却ガスとしてのアルゴンガスの量が少ないために微細化皮膜の冷却速度が低下し、Cr粒子の粒径が大きくなって耐電圧特性が低下したと推定される。
【0040】
また、混合粉末の重量1g当たりのアルゴンガスの体積が8.3リットルを超える比較例3〜5においては、微細化皮膜が形成されなかった。比較例3〜5においては、冷却ガスとしてのアルゴンガスの量が多いために、レーザー光で一旦溶融した粉末が基板に到達する前に再凝固したために微細化皮膜が形成されなかったと推定される。
【0041】
上述の実施例1〜6および比較例1〜5の結果から、不活性ガス25の供給量の体積が混合粉末の重量1g当たり0.5リットル以上8.3リットル以下の範囲であれば、遮断特性、耐電圧特性および繰り返し耐電圧特性の全てにおいて良好な電気接点が得られる。このことから、不活性ガス25の供給量の体積が混合粉末の重量1g当たり0.5リットル以上8.3リットル以下の範囲であれば、内部に残留する酸素などの不純物ガスが少ない膜厚の厚い微細化皮膜を形成できることがわかった。
【0042】
また、このように構成された電気接点の製造方法においては、混合粉末を不活性ガスと共に基板の表面に吹き付けているので、微細化皮膜を形成する皮膜形成室をシールドガスで満たす必要がない。また、不活性ガスは、混合粉末の供給と不純物ガスの混入防止と微細化皮膜の冷却という3つの作用を発揮する。そのため、製造装置の構造が簡易になる。
【0043】
[比較例6〜8]
比較例6〜8の電気接点は、従来技術で製造された電気接点である。比較例6の電気接点は、焼結法で作製されたものである。比較例7の電気接点は、焼結法で作製された電気接点にコンディショニング処理を施したものである。比較例8の電気接点は、溶射法で作製されたものである。なお、比較例6〜8の電気接点において、導電性粒子と耐アーク性粒子との混合粉末はすべて実施例1と同じ条件である。
【0044】
比較例6の電気接点は、次のようにして作製した。実施例1と同じ混合粉末を内径φ35mmのダイス金型(鋼製)に入れ、油圧プレス機を用いて20〜100MPaの圧力で圧縮成形し、厚さ10mmの成形体を作製した。得られた成形体を水素雰囲気中900℃で2時間焼成して焼結体を作製した。得られた焼結体を直径約φ30mm、厚さ約2mmのCu円板の下に置き、水素雰囲気中で2時間溶浸した。このようにして、比較例6の電気接点を作製した。溶浸温度は1120℃とした。なお、被溶浸材のCuが未溶融の場合は10℃ずつ温度を上げて再度溶浸処理を施した。このときにCuが溶けた温度を溶浸温度とした。このようにして作製した電気接点で評価用真空バルブを作製した。
【0045】
比較例7の電気接点は、次のようにして作製した。比較例6の電気接点で作製された評価用真空バルブにおいて、コンディショニング処理を行った。コンディショニング処理は、次の手順で行った。評価用真空バルブにおいて、閉極された状態で10kAの直流電流を流し電極間を強制的に開極して電流遮断を行った。この電流遮断のときに発生するアークで電気接点の表面を溶融させて微細化皮膜を形成した。電流遮断は5回以上行った。また、固定電気接点および可動電気接点の両方の電気接点表面に均等に微細化皮膜を形成するために、直流電流の極性を切り替えて電流遮断を実施した。
【0046】
比較例8の電気接点は、次のようにして作製した。溶射ガンを用いて実施例1と同じ混合粉末を基板の表面に溶射した。基板は、実施例1で用いた基板と同じである。このようにして作製した電気接点で評価用真空バルブを作製した。
【0047】
図6は、比較例6〜8の電気接点における製造方法および電気特性評価結果を表にした図である。焼結法で作製された比較例6の電気接点は、遮断特性評価では合格したが、耐電圧特性評価および繰り返し耐電圧特性評価では不合格となった。その理由は、次のように推定される。焼結法で作製された比較例6の電気接点は、表面の硬度が高くないために電流遮断で溶着が引き剥がされるときに電気接点の表面の溶着痕が大きくなったと推定される。その結果、比較例6の電気接点では溶着痕の先端部に電界集中が生じ、耐電圧性能が低下したと推定される。
【0048】
コンディショニング処理が施された比較例7の電気接点は、遮断特性評価および耐電圧特性評価では合格したが、繰り返し耐電圧特性評価では不合格となった。その理由は、次のように推定される。コンディショニング処理が施された比較例7の電気接点は、比較例6の電気接点に比べて表面の硬度が向上したため耐電圧性能が向上したと推定される。しかしながら、コンディショニング処理で微細化された微細化皮膜はその膜厚が薄い。そのため、比較例7の電気接点は繰り返し耐電圧特性評価において微細化皮膜が破断し、その破断部分に電界集中が生じて不合格になったと推定される。
【0049】
溶射法で作製された比較例8の電気接点は、耐電圧特性評価および繰り返し耐電圧特性評価では合格したが、遮断特性評価では不合格となった。その理由は、次のように推定される。溶射法で作製された比較例8の電気接点は、膜厚が厚く緻密な微細化皮膜が形成されている。そのため、比較例8の電気接点は、耐電圧性能および繰り返し耐電圧性能が向上したと推定される。しかしながら、比較例8の電気接点は溶射による成膜過程で粉末材料が非常に高温になり酸化が促進され、その結果、微細化皮膜の酸素含有率が増加して遮断性能が低下したと推定される。
【0050】
[実施例7][比較例9、10]
実施例7および比較例9、10の電気接点は、基板の素材を変更した電気接点である。実施例7の電気接点は、基板に銅クロム合金を用いたものである。比較例9の電気接点は、基板にアルミニウムを用いたものである。比較例10の電気接点は、基板に鉄を用いたものである。
【0051】
実施例7の電気接点における基板は、実施例1の基板と同じである。すなわち、実施例7の電気接点における基板は、Cu:Crが60wt%:40wt%の銅クロム合金である。比較例9の電気接点における基板は、純度3Nのアルミニウムである。比較例10の電気接点における基板は、純度3Nの鉄である。これらの基板の形状は、外径φ35mm、厚さ10mmとした。また、実施例7および比較例9、10の電気接点における微細化皮膜の形成方法は、実施例1の形成方法と同じとした。したがって、微細化皮膜のCu:Crは、50wt%:50wt%である。ただし、混合粉末の重量1g当たりのアルゴンガスの体積は、2.5リットルとした。
【0052】
図7は、実施例7および比較例9、10の電気接点における基板の素材および電気特性評価結果を表にした図である。基板に銅クロム合金を用いた実施例7の電気接点は、遮断特性の評価、耐電圧特性の評価および繰り返し耐電圧特性の評価の全てにおいて合格となった。これに対して、基板にアルミニウムを用いた比較例9、および基板に鉄を用いた比較例10の電気接点においては、遮断特性の評価および繰り返し耐電圧特性の評価において不合格となった。比較例9、10の電気接点の遮断性能が低下した原因は、基板の電気伝導率が低いためと考えられる。また、比較例9、10の電気接点の繰り返しの耐電圧性能が低下した原因は、基板の電気伝導率が低いため基板でジュール熱が発生し易く、繰り返しの耐電圧特性の評価で微細化皮膜の温度が上昇して微細化皮膜が破断し易くなったためと推定される。
【0053】
なお、基板の電気伝導率は、微細化皮膜の電気伝導率より大きいことが好ましい。したがって、基板に銅を用いることが好ましい。また、基板に銅クロム合金を用いた場合でも、基板に含まれるCuが占める割合が、微細化皮膜に含まれるCuが占める割合よりも大きいことが好ましい。
【0054】
[実施例8〜12][比較例11〜16]
実施例8〜12および比較例11〜16の電気接点は、微細化皮膜の形成方法は同じであり、微細化皮膜のCu含有率が異なっている。微細化皮膜のCu含有率の調整は、Cu粉末とCr粉末とを混合して混合粉末を作製するときのCu粉末とCr粉末との質量比を調整して行った。実施例8〜12および比較例11〜16の電気接点の微細化皮膜の形成方法は、実施例1の形成方法と同じとした。ただし、混合粉末の重量1g当たりのアルゴンガスの体積は、2.5リットルとした。
【0055】
図8は、実施例8〜12および比較例11〜16の電気接点における微細化皮膜のCu含有率および電気特性評価結果を表にした図である。
図8に示した表からわかるように、微細化皮膜のCu含有率が20wt%以上の実施例8〜12および比較例14〜16の電気接点においては、遮断特性の評価は合格となった。電気接点における遮断性能は、微細化皮膜の電気伝導率に依存する。微細化皮膜のCu含有率が20wt%以上であれば、微細化皮膜の電気伝導率は十分高くなり遮断性能が向上する。一方、微細化皮膜のCu含有率が20wt%未満の比較例11〜13の電気接点においては、遮断特性の評価は不合格となった。その理由は、次のように推定される。微細化皮膜のCu含有率が20wt%未満の電気接点においては、母材のCuを経由して電気伝導可能な容量を超えた電流がCr粒子を経由して流れるために遮断性能が低下したと推定される。
【0056】
また、
図8に示した表からわかるように、微細化皮膜のCu含有率が80wt%以下の実施例8〜12および比較例11〜13の電気接点においては、耐電圧特性の評価および繰り返し耐電圧特性の評価は合格となった。電気接点における耐電圧性能は、微細化皮膜の絶縁性に依存する。微細化皮膜の絶縁性はその物質の硬度および融点と正の相関をもつ。銅クロム合金において、その物質の硬度および融点を高くする役割はクロムが担っている。微細化皮膜のCu含有率が80wt%以下、すなわちCr含有率が20wt%を超えていれば、微細化皮膜の硬度および融点が十分高くなり耐電圧性能が向上する。一方、微細化皮膜のCu含有率が80wt%を超える比較例14〜16の電気接点においては、耐電圧特性の評価および繰り返し耐電圧特性の評価は不合格となった。その理由は、次のように推定される。微細化皮膜のCu含有率が80wt%を超える電気接点においては、微細化皮膜の表面におけるCuが占める面積が大きくなり、電流遮断時に微細化皮膜の表面に突起が形成され易くなったためと推定される。また、微細化皮膜における電気伝導経路のCuの寄与率が上昇し、仕事関数が減少して電子放出され易くなったためとも推定される。
【0057】
上述の実施例8〜12および比較例11〜16の結果から、遮断性能と耐電圧性能とを同時に満足するためには微細化皮膜のCu含有率が20wt%以上80wt%以下であり、残部がCrであることが好ましい。なお、微細化皮膜は、CuとCr以外の不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0058】
[実施例13〜17][比較例17〜19]
実施例13〜17および比較例17〜19の電気接点は、微細化皮膜の形成方法は同じであり、微細化皮膜の酸素含有率が異なっている。実施例13〜17および比較例17〜19の電気接点は、実施例1と同様な方法で微細化皮膜を形成した。ただし、原料粉末である混合粉末に付着する酸素量を調整して、微細化皮膜の酸素含有率を調整した。具体的には、実施例13〜17および比較例17〜19の電気接点は、実施例1と同様な微細化皮膜の形成方法において、真空保管から大気暴露後、室温でそれぞれ10、30、60、120、100、150、180および200分間保持した混合粉末を用いた。大気中で保持する時間が長くなるにしたがって混合粉末の表面酸化量が増える。混合粉末の表面酸化量が増えるにしたがって、その混合粉末を用いて形成された微細化皮膜の酸素含有率も増える。
【0059】
微細化皮膜の酸素含有率は、赤外線吸収法を用いて測定した。赤外線吸収法は、例えば測定試料を黒鉛るつぼに入れて加熱溶融して測定試料中の酸素を一酸化炭素に変換し、この一酸化炭素の赤外線吸収量から酸素量を測定する方法である。なお、微細化皮膜の酸素含有率は、任意に3分割された微細化皮膜で測定された酸素含有率の平均値とした。
【0060】
図9は、実施例13〜17および比較例17〜19の電気接点における微細化皮膜の酸素含有率および遮断特性の評価結果を表にした図である。
図9に示した表からわかるように、微細化皮膜の酸素含有率が0.5wt%以下の実施例13〜17の電気接点においては、遮断特性の評価は合格となった。一方、微細化皮膜の酸素含有率が0.5wt%を超える比較例17〜19の電気接点においては、遮断特性の評価は不合格となった。その理由は、微細化皮膜の酸素含有率が0.5wt%を超える電気接点においては、開極のときに伝導キャリアとして働く脱ガスした酸素の量が可動電気接点と固定電気接点との間の伝導パスを形成するために十分な量となったためと推定される。
【0061】
[実施例18〜21][比較例20、21]
実施例18〜21および比較例20、21の電気接点は、微細化皮膜の形成方法は同じであり、微細化皮膜中のCr粒子の粒径が異なっている。実施例18〜21の電気接点は、実施例1と同様な微細化皮膜の形成方法において、アルゴンガスの体積を混合粉末の重量1gに対してそれぞれ2.0、1.0、0.7および0.5リットルとしたものである。比較例20、21の電気接点は、実施例1と同様な微細化皮膜の形成方法において、アルゴンガスの体積を混合粉末の重量1gに対してそれぞれ0.4および0.2リットルとしたものである。混合粉末の重量1g当たりのアルゴンガスの体積が増えるにしたがって、冷却速度が速くなるため微細化皮膜中のCr粒子の粒径が小さくなる。
【0062】
Cr粒子の粒径は、次のようにして測定した。走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)とこれに付属するエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:EDX)とを用いて微細化皮膜の断面観察および組成分析を行った。観察された断面画像において組成分析によりCr粒子を特定した。
図10は、本実施の形態の電気接点で観察された断面画像の模式図である。
図10に示すように、本実施の形態の電気接点には、Cuからなる母材30の中に高融点物質粒子であるCr粒子31が分散して存在していた。観察された断面画像において、Cr粒子31の幾何学的な形状に基づいてCr粒子31の形状を球形近似した場合の粒径を算出した。そして、観察された断面画像に含まれる全てのCr粒子31の粒径の平均値を算出してその平均値を最終的にCr粒子31の粒径とした。
【0063】
図11は、実施例18〜21および比較例20、21の電気接点における微細化皮膜中のCr粒子の粒径および耐電圧特性の評価結果を表にした図である。
図11に示した表からわかるように、微細化皮膜中のCr粒子の粒径が15μm以下の実施例18〜21の電気接点においては、耐電圧特性の評価は合格となった。一方、微細化皮膜中のCr粒子の粒径が15μmを超える比較例20、21の電気接点においては、耐電圧特性の評価は不合格となった。その理由は、微細化皮膜中のCr粒子の粒径が15μmを超える電気接点においては、電気接点の表面の凸凹が大きくなって耐電圧性能が低下したと推定される。
【0064】
[実施例22〜24][比較例22、23]
実施例22〜24および比較例22、23の電気接点は、微細化皮膜の形成方法は同じであり、微細化皮膜と基板との界面のせん断強度が異なっている。実施例22〜24および比較例22、23の電気接点は、実施例1と同様な微細化皮膜の形成方法において、混合粉末の流量を変化させて微細化皮膜と基板との界面のせん断強度を変化させたものである。なお、アルゴンガスの体積は、混合粉末の重量1gに対して2.5リットルの一定とした。実施例22〜24の電気接点は、混合粉末の流量をそれぞれ8、15、および24g/分としたものである。比較例22、23の電気接点は、混合粉末の流量をそれぞれ33および40g/分としたものである。混合粉末の流量が増えるにしたがって基板に加えられるエネルギーが低下し、基板のメルトプールの温度が低下するため微細化皮膜と基板との界面のせん断強度が低下する。なお、微細化皮膜と基板との界面のせん断強度は、次のようにして測定した。微細化皮膜と基板との界面を側面に露出させた短辺1mmで長辺2mmの長方形の突起を電気接点の表面に切削加工で作製する。この突起に対して微細化皮膜と基板との界面をせん断するように治具を引っかける。この治具に対して突起の短辺と平行な方向に1mm/分で荷重を印加し、微細化皮膜が基板から剥がれるときに加えられている荷重をせん断強度とした。
【0065】
図12は、実施例22〜24および比較例22、23の電気接点における微細化皮膜と基板との界面のせん断強度および繰り返し耐電圧特性の評価結果を表にした図である。
図12に示した表からわかるように、微細化皮膜と基板との界面のせん断強度が200MPa以上の実施例22〜24の電気接点においては、繰り返し耐電圧特性の評価は合格となった。一方、微細化皮膜と基板との界面のせん断強度が200MPa未満の比較例22、23の電気接点においては、繰り返し耐電圧特性の評価は不合格となった。その理由は、微細化皮膜と基板との界面のせん断強度が200MPa未満の電気接点においては、繰り返し耐電圧特性の評価において、徐々に微細化皮膜と基板との界面に微小な剥がれが生じたためと推定される。この微細化皮膜と基板との界面の微小な剥がれは、その剥がれた部分が寄生容量の発生原因となり、遮断性能および耐電圧性能の低下を招くと推定される。
【0066】
なお、本実施の形態に係る電気接点において、耐アーク成分としてCrを用いていた。耐アーク成分としては、Cr以外にW(タングステン)、Mo(モリブデン)など融点が1800℃を超える材料を用いることができる。また、耐アーク成分として、Cr、WおよびMoの炭化物を用いることもできる。
【0067】
また、本実施の形態に係る電気接点においては、微細化皮膜の膜厚は1mmであった。微細化皮膜の膜厚は0.5mm以上10mm以下が好ましい。微細化皮膜の膜厚が0.5mm未満の場合、電気接点の開閉に伴う機械的な圧力で微細化皮膜が破断し易くなる。また、微細化皮膜の膜厚が10mmを超過する場合、微細化皮膜の形成時に割れなどが生じ易くなると共に、電気接点の抵抗値が上昇して遮断性能が低下する。
【0068】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
導電性粒子の粉末と耐アーク性粒子の粉末との混合粉末を不活性ガスと共に基板の表面に吹き付ける工程(S2)と、基板の表面に吹き付けられた混合粉末にレーザー光を照射して混合粉末を軟化もしくは溶融させて基板の表面に皮膜を形成する工程(S3)と、基板の表面に形成された皮膜を冷却固化する工程(S4)とを備えている。そして、不活性ガスの体積は、混合粉末の重量1g当たり0.5リットル以上8.3リットル以下である。