【実施例】
【0054】
<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>
以下に、本実施例における層状金属水酸化物のナノ粒子の製造方法を説明する。なお、本実施例では、水熱合成法にしたがって、様々な粒径の層状金属水酸化物のナノ粒子を製造した。
【0055】
まず、0.6M MgCl
2水溶液(5mL)と、0.2M AlCl
3水溶液(5mL)とを混合して、MgCl
2の最終濃度が0.3Mであり、かつ、AlCl
3の最終濃度が0.1Mである、溶液A(10mL)を調製した。
【0056】
別途、0.3M NaOH水溶液(20mL)と、0.026M Na
2CO
3水溶液(20mL)とを混合して、NaOHの最終濃度が0.15Mであり、かつ、Na
2CO
3の最終濃度が0.013Mである、溶液B(40mL)を調製した。
【0057】
200mL容量の三角フラスコに溶液Bを加え、当該三角フラスコ内の溶液Bを撹拌しながら、当該溶液Bに対して溶液Aを加えた。その後、溶液Aと溶液Bとの混合物を室温にて10分間撹拌し、白色の生成物を形成させた。
【0058】
溶液Aと溶液Bとの混合物を遠心分離し、白色の沈殿物を回収した。当該沈殿物をイオン交換水によって2回洗浄した。
【0059】
洗浄後の沈殿物を40mLのイオン交換水に懸濁し、水熱合成法にしたがって、層状金属水酸化物のナノ粒子を製造した。なお、反応条件は100℃とし、反応時間は、4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間とした。なお、水熱合成法の詳細については、AU2005318862A1に記載の方法にしたがった。
【0060】
水熱合成の時間が経過するにつれて、沈殿物を含むイオン交換水の白濁度が増すことが確認できた(図示せず)。
【0061】
<2.粉末X線回折測定(XRD)>
以下に、粉末X線回折測定の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
【0062】
以下に、粉末X線回折測定の試験方法について説明する。
(使用機材)
X線回折装置:D8−ADVANCE(Burker AXS株式会社製)
ディテクター:D8−ADVANCE VANTEC(Burker AXS株式会社製)
測定線源:波長1.5418ÅのCu Kα
フィルター:Ni
(測定条件)
X線管負荷:40mA、35kV
測定角度:5.0−70.0deg
サンプリング間隔:0.007deg
発散スリット(入射):0.6mm
受光スリットDetector Slit:12.09mm
Antiscattering Slit:7.87mm
ディテクター受光角:3.00°
次いで、粉末X線回折測定の試験結果について説明する。
【0063】
図1にXRDピークを示す。(a)は反応時間を4時間、(b)は反応時間を8時間、(c)は反応時間を16時間、(d)は反応時間を48時間、(e)は反応時間を72時間、として作製した層状金属水酸化物ナノ粒子のXRDピークを示し、(f)は市販品であるハイドロタルサイトのXRDピークを示す。
【0064】
以降、(a)から(e)の符号は、各々、水熱合成法の反応時間を、4時間、8時間、16時間、48時間、および72時間として製造した層状金属水酸化物のナノ粒子の試験結果を示し、(f)は、市販品であるハイドロタルサイトの試験結果を示す。
【0065】
図1に記載の(003)および(006)は層状金属水酸化物特有のピークを示す。(a)から(e)および(f)のすべてに上記ピークが認められた。そのため、本発明の製法による層状金属水酸化物ナノ粒子は、反応時間を変更しても市販品のハイドロタルサイトと同様の層構造を有していることが明らかになった。
【0066】
更に、(003)回折線を用いた周知の方法によって算出した結晶子サイズは、(a)〜(f)の各々について、13.4nm、13.1nm、14.5nm、17.1nm、17.0nm、および、20.3nmであった。
【0067】
<3.走査型電子顕微鏡観察(SEM)および動的光散乱測定(DLS)>
以下に、走査型電子顕微鏡観察の試験方法、および、試験結果について説明する。また、以下に、動的光散乱測定の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載されている反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
【0068】
以下に、走査型電子顕微鏡観察の試験方法について説明する。
(使用機器)
走査型電子顕微鏡:S4800(日立製)
(測定条件)
加速電圧:15kV(通常時)
20kV(EDX使用時)
次いで、走査型電子顕微鏡観察の試験結果について説明する。
【0069】
図2に(a)から(f)のSEMによる観察画像を示す。(a)から(e)はすべて六角形の板状結晶が認められ、反応時間の増加に伴う粒子径の増大傾向が認められた。一方、(f)は結晶が凝集しているためのため、結晶の形状は確認できなかった。
【0070】
以下に、動的光散乱測定の試験方法について説明する。
(使用機器)
動的光散乱測定器:ELSZ‐1000ZS(大塚電子株式会社製)
次いで、動的光散乱測定の試験結果について説明する。
【0071】
(a)から(f)のそれぞれの平均粒子径は、(a)は約61nm、(b)は約70nm、(c)は約82nm、(d)は約98nm、(e)は約116nmであった。
【0072】
<4.結合プラズマ発光分光分析(ICP)>
以下に、結合プラズマ発光分光分析の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
【0073】
以下に、結合プラズマ発光分光分析の試験方法について説明する。
(使用機器)
ICP測定装置:iCAP6500(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
(測定条件)
測定元素:AlおよびMg
測定方向:アキシャル
試料形態:液体
検量線条件:絶対検量線法
(試料調整方法)
試料10mgを1mlのNHO
3に溶解させ、超純水で50mlに定容した。定容した試料を5倍希釈し測定用試料とした。
【0074】
Al用標準溶液として、2.0、4.0、6.0および8.0ppmのAl(NO
3)
3・9H
2Oを含む溶液を調整し、当該溶液を用いて検量線を作成した。
【0075】
Mg用標準溶液として、用いて2.5、5.0、7.5、および10ppmのMg(NO
3)
2・6H
2Oを含む溶液を調整し、当該溶液を用いて検量線を作成した。
【0076】
次いで、結合プラズマ発光分光分析の試験結果について説明する。
【0077】
図3に(a)から(f)に含まれるAlおよびMgの含有量、および組成について示す。
【0078】
図3の(a)から(e)に示されるように、層状金属水酸化物ナノ粒子が含有する金属イオン(Alイオンの含有量およびMgイオンの含有量を加えたもの)に対するAlイオンの含有割合に差が認められず一般式(1)のxが一定となった。そのため、反応時間による組成への影響はないことが明らかになった。また、層状金属水酸化物ナノ粒子の原料として炭酸ナトリウムを用いており、さらに当該層状金属水酸化物ナノ粒子がゲスト層へ炭酸イオンを挿入しやすい性質を有するため、陰イオンとして炭酸イオンが選択的に挿入されている。
【0079】
図3の(f)に示されるように、市販のハイドロタルサイトは、水熱合成法で調製した層状金属水酸化物ナノ粒子とは異なる組成を有していた。
【0080】
<5.二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験>
以下に、二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間、8時間、16時間、48時間、または72時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
【0081】
以下に、二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験の試験方法について説明する。
(使用機器)
質量分析計:JMS−Q1050GC(日本電子株式会社製)
キャリアガス:Ar(100cc/min.)
(測定条件)
石英管セルに石英ウールと約30mgの層状金属水酸化物試料を入れ、電気炉で600℃まで10℃/minで昇温し、脱離した二酸化炭素および水をガスクロマトグラフ質量分析計にて分析を行った。
【0082】
次いで、二酸化炭素および水の脱離挙動観察試験の試験結果について説明する。
【0083】
図4に、(a)から(e)の層状金属水酸化物ナノ粒子、および、(f)のハイドロタルサイトにおける水および二酸化炭素の脱離挙動について示す。
【0084】
図4上部は水の離脱挙動について示したものであり、(a)から(f)では、水の脱離挙動に差が認められなかった。また、水の脱離挙動観察試験において220℃、330℃、および400℃付近にピークが観察された。これらは、典型的なMgAl−LDH−CO
3粒子(金属イオンとしてMgイオンとAlイオンを用い、ゲスト層に炭酸ガスが挿入された層状金属水酸化物粒子)の熱分解時における、水の離脱挙動であると考えられる。具体的に、約220℃の水の脱離は、層間(ゲスト層)に含まれる水の脱離であると考えられる。約330℃の水の脱離は、Al−OHの縮合脱水に起因する水の脱離であると考えられる。約400℃の水の脱離は、Mg−OHの縮合脱水および炭酸イオンの分解に起因する水の脱離であると考えられる。
【0085】
図4下部は二酸化炭素の脱離挙動について示したものであり、(f)に示す市販のハイドロタルサイトでは400℃未満での二酸化炭素の脱離がほとんど認められなかった。一方、(a)から(e)に示す層状金属水酸化物ナノ粒子では反応時間の短いものほど(換言すれば、平均粒子径が小さいものほど)低温(350℃付近)での二酸化炭素の離脱が多いことが明らかになった。
【0086】
低温での二酸化炭素の離脱の要因を調べるため、(a)に示す層状金属水酸化物ナノ粒子の層構造と、(f)に示すハイドロタルサイトの層構造とについて、XRDを用いて評価した。
【0087】
図5に、(a)と(f)とにおける、常温、350℃、および600℃におけるXRDピークを示す。(a)と(f)とは、共に、常温、350℃においては層構造を維持している。しかし、(a)と(f)とは、共に、600℃においては層構造が破壊されていることが認められた。このことは、層状金属水酸化物ナノ粒子の350℃未満における二酸化炭素の離脱は、層構造の変化に起因しないことを示しており、層状金属水酸化物粒子をナノ粒子化することにより発現した性質と考えられる。
【0088】
<6.二酸化炭素の吸着脱離試験>
以下に、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の反応時間が4時間の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用い、比較対照試験には、市販品であるハイドロタルサイト(和光純薬製、以下HTとも呼ぶ)を用いた。
【0089】
以下に、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験方法について説明する。
(使用機器)
質量分析計:JMS−Q1050GC(日本電子株式会社製)
(測定方法)
(1)石英管セルに石英ウールと約30mgの層状金属水酸化物試料((a)または(f))とを入れた。
(2)アルゴン100cc/min.流通環境下で、電気炉を用いて層状金属水酸化物試料を200℃まで加熱し、約1時間恒温を維持した。
(3)層状金属水酸化物試料を350℃まで加熱し、層状金属水酸化物試料から二酸化炭素を離脱させた。
(4)二酸化炭素離脱後、層状金属水酸化物試料を200℃まで冷却して、当該層状金属水酸化物試料に1%二酸化炭素とアルゴンとの混合ガス100cc/min.、および、水1.2cc/hを1時間接触させることにより、層状金属水酸化物試料へ二酸化炭素を再吸着させた。
(5)系内に残留している二酸化炭素をアルゴンで置換した。
【0090】
上記工程(3)から(5)を1サイクルとした工程を複数回行い、各工程における二酸化炭素離脱量をガスクロマトグラフ質量分析計にて測定した。
【0091】
次いで、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験結果について説明する。
【0092】
図6において、「0サイクル」は、上記(1)から(3)を行った時の二酸化炭素の離脱量を示し、「1サイクル」は、上記(4)、(5)および(3)を1回目に行った際の二酸化炭素の離脱量を示し、「2サイクル」は、上記(4)、(5)および(3)を2回目に行った際の二酸化炭素の脱離量を示す。
【0093】
(f)では、層構造を保ち得る条件下で二酸化炭素を離脱させても二酸化炭素の再離脱が認められなかった。一方、(a)では、(f)に比べて0サイクル目での二酸化炭素の離脱量が多く、かつ、二酸化炭素の再吸着および再離脱が認められた。