特許第6983460号(P6983460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983460新規な高分子およびこれを含む有機発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983460
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】新規な高分子およびこれを含む有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/14 20060101AFI20211206BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211206BHJP
   C08F 212/32 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C08F212/14
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   C08F212/32
【請求項の数】15
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2020-525875(P2020-525875)
(86)(22)【出願日】2019年7月31日
(65)【公表番号】特表2021-502439(P2021-502439A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(86)【国際出願番号】KR2019009568
(87)【国際公開番号】WO2020027589
(87)【国際公開日】20200206
【審査請求日】2020年5月8日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0089565
(32)【優先日】2018年7月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0092669
(32)【優先日】2019年7月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】エスダー・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェスン・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ボムグ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ミンソブ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンイル・パク
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/031622(WO,A1)
【文献】 特開2017−119785(JP,A)
【文献】 特開2006−152263(JP,A)
【文献】 特開2013−014770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 212/00 − 226/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される繰り返し単位、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位を含む高分子:
【化1】
上記化学式1中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであり、
は、置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
は、単結合;置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
Arは、置換または非置換の炭素数6〜60のアリール、または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリールであり、
ArおよびArは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜60のアルコキシ、置換または非置換の炭素数6〜60のアリール、または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリールであり、
xは、前記高分子内の上記化学式1の繰り返し単位のモル比である;
【化2】
上記化学式2中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであり、
は、単結合;置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;(置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン)−O−;(置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン)−O−(置換または非置換の炭素数1〜60のアルキレン);または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
yは、前記高分子内の上記化学式2の繰り返し単位のモル比である;
【化3】
上記化学式3中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであり、
は、単結合;置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
Arは、置換または非置換の炭素数3〜60のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6〜60のアリール、または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリールであり、
Arは、水素、または置換または非置換の炭素数6〜60のアリールであり、
zは、前記高分子内の上記化学式3の繰り返し単位のモル比であり、
nは、0〜5の整数である。
【請求項2】
x:y:zは0.5〜0.9:0.05〜0.45:0.05〜0.45である、請求項1に記載の高分子。
【請求項3】
はフェニレン、またはビフェニリレンである、請求項1または2に記載の高分子。
【請求項4】
は単結合、フェニレン、ビフェニリレン、またはターフェニリレンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項5】
Arは、フェニル、ビフェニリル、ジメチルフルオレニル、またはジフェニルフルオレニルであり、前記Arは非置換であるか、またはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、またはネオブトキシに置換されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項6】
ArおよびArは、それぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ジメチルフルオレニル、またはジフェニルフルオレニルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項7】
上記化学式1は、下記で表される繰り返し単位で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の高分子:
【化4A】
【化4B】
【化4C】
【化4D】
【化4E】
【化4F】
【化4G】
上記式中、xは請求項1で定義した意味を有する。
【請求項8】
は、単結合、フェニレン、−(フェニレン)−O−、−(フェニレン)−O−(ブタン−1,4−ジイル)、またはビフェニリレンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項9】
上記化学式2は、下記で表される繰り返し単位で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子:
【化5】
上記式中、yは請求項1で定義した意味を有する。
【請求項10】
は単結合、フェニレン、またはビフェニリレンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項11】
Arは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、1個または2個の炭素数1〜4のアルキル置換されたフェニル、またはビフェニリルである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項12】
Arは、水素、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、またはクォーターフェニリルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項13】
上記化学式3は、下記で表される繰り返し単位で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の高分子:
【化6A】
【化6B】
上記式中、zは請求項1で定義した意味を有し、TMSはトリメチルシリル基を、t−Buはt−ブチル基を意味する。
【請求項14】
前記高分子の重量平均分子量は5,000〜1,000,000である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項15】
正極と;前記正極に対向して具備された負極と;前記正極と前記負極との間に具備された発光層と;前記正極と前記発光層との間に具備された正孔輸送層とを含み、前記正孔輸送層は請求項1乃至14のいずれか1項に記載の高分子を含むものである、有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年7月31日付の韓国特許出願第10−2018−0089565号および2019年7月30日付の韓国特許出願第10−2019−0092669号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、新規な高分子およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れる。このため、多くの研究が進められている。
【0003】
有機発光素子は、一般的に正極、負極、および前記正極と負極との間の有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質から構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び底状態に落ちる時、光が出るようになる。
【0004】
このような有機発光素子に使用される有機物に対して新たな材料の開発が要求され続けている。
【0005】
一方、最近では工程費用節減のために既存の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を利用した有機発光素子が開発されている。初期にはすべての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、層構造形態でHIL、HTL、EMLだけを溶液工程で進行し、以後の工程は、既存の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程を研究中である。
【0006】
そこで、本発明では有機発光素子に用いられながら同時に溶液工程で蒸着可能な新規な有機発光素子の素材を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特開第10−2000−0051826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規な高分子およびこれを含む有機発光素子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記化学式1で表される繰り返し単位、下記化学式2で表される繰り返し単位、および下記化学式3で表される繰り返し単位を含む高分子を提供する:
【化1】
上記化学式1中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであり、
は、置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
は、単結合;置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
Arは、置換または非置換の炭素数6〜60のアリール、または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリールであり、
ArおよびArは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜60のアルコキシ、置換または非置換の炭素数6〜60のアリール、または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリールであり、
【化2】
上記化学式2中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであり、
は、単結合;置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;(置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン)−O−;(置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン)−O−(置換または非置換の炭素数1〜60のアルキレン);または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
【化3】
上記化学式3中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1〜10のアルキルであり、
は、単結合;置換または非置換の炭素数6〜60のアリーレン;または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリーレンであり、
Arは、置換または非置換の炭素数3〜60のシクロアルキル、置換または非置換の炭素数6〜60のアリール、または置換または非置換の、N、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上を含む炭素数2〜60のヘテロアリールであり、
Arは、水素、または置換または非置換の炭素数6〜60のアリールであり、
nは、0〜5の整数である。
【0010】
また、本発明は、正極と;前記正極と対向して具備された負極と;前記正極と前記負極との間に具備された発光層と;前記正極と前記発光層との間に具備された正孔輸送層とを含み、前記正孔輸送層は前記高分子を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高分子は、有機発光素子の正孔輸送層の材料として用いられ、また、溶液工程で蒸着可能で、有機発光素子において効率の向上、低い駆動電圧および/または寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】基板1、正極2、正孔輸送層3、発光層4、負極5からなる有機発光素子の例を示すものである。
図2】基板1、正極2、正孔注入層6、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層7、電子注入層8および負極5からなる有機発光素子の例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。
【0014】
本明細書において、
【化4】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換されるかまたは非置換であるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されるかまたは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0016】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0017】
本明細書において、エステル基は、カルボキシル基の酸素が、炭素数1〜25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6〜25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化6】
【0018】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化7】
【0019】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t−ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0022】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1〜40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1〜20である。他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1〜10である。さらに他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1〜6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−メチル−ブチル、1−エチル−ブチル、ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n−オクチル、tert−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、1−エチル−プロピル、1,1−ジメチル−プロピル、イソヘキシル、2−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2〜40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2〜20である。他の一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2〜10である。さらに他の一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2〜6である。具体的な例としては、ビニル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、1,3−ブタジエニル、アリル、1−フェニルビニル−1−イル、2−フェニルビニル−1−イル、2,2−ジフェニルビニル−1−イル、2−フェニル−2−(ナフチル−1−イル)ビニル−1−イル、2,2−ビス(ジフェニル−1−イル)ビニル−1−イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3〜60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3〜30である。他の一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3〜20である。さらに他の一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3〜6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3−メチルシクロペンチル、2,3−ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、2,3−ジメチルシクロヘキシル、3,4,5−トリメチルシクロヘキシル、4−tert−ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6〜60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6〜30である。他の一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6〜20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化8】
などであってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種元素としてO、N、Si、およびSのうちの1個以上を含むヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2〜60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0029】
本発明は、上記化学式1で表される繰り返し単位、上記化学式2で表される繰り返し単位および上記化学式3で表される繰り返し単位を含む高分子を提供する。
【0030】
従来用いられてきた溶液蒸着用物質は、溶媒に対する溶解度があっても、その後に層蒸着時に使用される溶媒に前記物質が溶け込んで層間が混合して素子性能を劣化させるという問題がある。
しかし、本発明に係る高分子は、以下に詳しく説明するように、上記化学式1で表される繰り返し単位による優れた正孔伝達特性を有すると共に、堆積後、上記化学式2で表される繰り返し単位を硬化することにより溶媒耐性(solvent orthogonality)を付与して層間混合を抑制することでき、また、上記化学式3で表される繰り返し単位により溶液工程で溶解度を改善し、硬化温度を下げることができる。以下、各繰り返し単位別に説明する。
【0031】
(第1の繰り返し単位)
本明細書において「第1の繰り返し単位」とは、発明による高分子に含まれる化学式1で表される繰り返し単位であって、優れた正孔伝達特性を有する。
【0032】
好ましくは、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、またはメチルであり、より好ましくは全て水素である。
【0033】
好ましくは、Lは置換または非置換の炭素数6〜12のアリーレンであり、より好ましくは、フェニレン、またはビフェニリレンであり、最も好ましくは1,4−フェニレン、または4,4’−ビフェニリレンである。
【0034】
好ましくは、Lは、単結合、置換または非置換の炭素数6〜18のアリーレンであり、より好ましくはフェニレン、ビフェニリレン、またはターフェニリレンであり、最も好ましくは1,4−フェニレン、1,1’−ビフェニリレン、または
【化9】
である。
【0035】
好ましくは、Arは、フェニル、ビフェニリル、ジメチルフルオレニル、またはジフェニルフルオレニルであり、前記Arは非置換されるか、または炭素数1〜4のアルキル、または炭素数1〜4のアルコキシに置換される。より好ましくは、Arは、フェニル、ビフェニリル、ジメチルフルオレニル、またはジフェニルフルオレニルであり、前記Arは、非置換であるか、またはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、またはネオブトキシに置換される。
【0036】
好ましくは、ArおよびArはそれぞれ独立して、炭素数6〜25のアリールであり、より好ましくは、それぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、ジメチルフルオレニル、またはジフェニルフルオレニルである。
【0037】
好ましくは、上記化学式1は、下記で表される繰り返し単位で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【0038】
【化10A】
【0039】
【化10B】
【0040】
【化10C】
【0041】
【化10D】
【0042】
【化10E】
【0043】
【化10F】
【0044】
【化10G】
【0045】
一方、上記化学式1で表される化合物は、下記化学式1−1で表される単量体に由来する:
【化11】
【0046】
上記化学式1−1中、R〜R、L、LおよびAr〜Arは、上記化学式1で定義した通りである。
【0047】
上記化学式1−1で表される化合物は、下記反応式1のような製造方法で製造することができる。
【化12】
【0048】
上記反応式1中、Xを除いた残りの定義は先に定義した通りであり、Xはハロゲンであり、好ましくはブロモ、またはクロロである。上記反応式1はアミン置換反応であって、パラジウム触媒と塩基の存在下で反応させて、上記化学式1−1で表される化合物を製造する反応である。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化され得る。
【0049】
(第2の繰り返し単位)
本明細書において「第2の繰り返し単位」とは、発明による高分子に含まれる化学式2で表される繰り返し単位であって、硬化可能な反応基であるベンゾシクロブタン(benzocyclobutane)を含む。本発明に係る高分子を堆積させた後、熱工程で前記ベンゾシクロブタンと後述する第3の繰り返し単位のアルケンとをcycloaddition反応させることによって、堆積された高分子に溶媒耐性が付与されて、その後の溶液工程での有機発光素子の製造に適用することが可能になる。
【0050】
好ましくは、上記化学式2は下記化学式2’で表される。
【化13】
【0051】
好ましくは、R〜Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、より好ましくは全て水素である。
【0052】
好ましくは、Lは、単結合、置換または非置換の炭素数6〜12のアリーレン、(置換または非置換の炭素数6〜12のアリーレン)−O−;(置換または非置換の炭素数6〜12のアリーレン)−O−(置換または非置換の炭素数1〜10のアルキレン)であり、より好ましくは、単結合、フェニレン、−(フェニレン)−O−、−(フェニレン)−O−(ブタン−1,4−ジイル)、またはビフェニリレンであり、最も好ましくは1,4−フェニレン、または4,4’−ビフェニリレンである。
【0053】
好ましくは、上記化学式2は、下記で表される繰り返し単位で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【化14】
【0054】
一方、上記化学式2で表される化合物は、下記化学式2−1で表される単量体に由来する:
【化15】
上記化学式2−1中、R〜R、およびLは、上記化学式2で定義した通りである。
【0055】
上記化学式2−1で表される化合物は、下記反応式2のような製造方法で製造することができる。
【化16】
【0056】
上記反応式2中、Xを除いた残りの定義は先に定義した通りであり、Xはハロゲンであり、好ましくはブロモ、またはクロロである。上記反応式2は鈴木カップリング反応であって、パラジウム触媒と塩基の存在下で反応させて、上記化学式2−1で表される化合物を製造する反応である。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化され得る。
【0057】
(第3の繰り返し単位)
本明細書において「第3の繰り返し単位」とは、発明による高分子に含まれる化学式3で表される繰り返し単位であって、本発明に係る高分子の溶解度を改善し、またはビニル基を含むことにより硬化温度を下げることができる。
【0058】
好ましくは、R〜Rはそれぞれ独立して、水素、またはメチルであり、より好ましくは全て水素である。
【0059】
好ましくは、Lは、単結合、置換または非置換の炭素数6〜12のアリーレンであり、より好ましくは、単結合、フェニレン、またはビフェニリレンであり、最も好ましくは、単結合、1,4−フェニレン、または4,4’−ビフェニリレンである。
【0060】
好ましくは、Arは、炭素数3〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜12のアリールであり、より好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、1個または2個の炭素数1〜4のアルキルに置換されたフェニル、またはビフェニリルである。
【0061】
好ましくは、Arは水素、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、またはクォーターフェニリルである。
【0062】
好ましくは、上記化学式3は、下記で表される繰り返し単位で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【化17A】
【化17B】
【0063】
上記において、TMSはトリメチルシリルを、t−Buはt−ブチルを意味する。
【0064】
一方、上記化学式3で表される化合物は、下記化学式3−1で表される単量体に由来する:
【化18】
【0065】
上記化学式3−1中、R〜R、L、Ar、Ar、およびnは上記化学式3で定義した通りである。
【0066】
上記化学式3−1で表される化合物は、下記反応式3のような製造方法で製造することができる。
【化19】
【0067】
上記反応式3中、Xを除いた残りの定義は先に定義した通りであり、Xはハロゲンであり、好ましくはブロモ、またはクロロである。上記反応式3は鈴木カップリング反応であって、パラジウム触媒と塩基の存在下で反応させて、上記化学式3−1で表される化合物を製造する反応である。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化され得る。
【0068】
(高分子)
本発明に係る高分子は、上述した化学式1−1で表される単量体、化学式2−1で表される単量体、および化学式3−1で表される単量体を重合して製造することができる。好ましくは、本発明に係る高分子は、前記繰り返し単位を含むランダム共重合体である。
【0069】
本発明に係る高分子において、x、yおよびzは、前記高分子内の上記化学式1の繰り返し単位、化学式2の繰り返し単位および化学式3の繰り返し単位のモル比であり、x:y:zは0.5〜0.9:0.05〜0.45:0.05〜0.45である。上述した化学式1−1で表される単量体、化学式2−1で表される単量体、および化学式3−1で表される単量体の反応モル比を調節して、前記高分子のモル比を調節することができる。
【0070】
好ましくは、前記高分子の重量平均分子量は15,000〜1,000,000であり、より好ましくは40,000〜100,000である。
【0071】
一方、前記高分子は、ドーピング物質と共に使用することができる。前記ドーピング物質は、下記化学式Kの化合物、化学式Lまたは化学式Mのイオン性化合物を使用することができ、これらに限定されない。
【化20】
【0072】
(コーティング組成物)
本発明に係る高分子は、溶液工程で有機発光素子の有機物層、特に正孔輸送層を形成することができる。このため、本発明は、上述した本発明に係る高分子および溶媒を含むコーティング組成物を提供する。
【0073】
前記溶媒は、本発明に係る高分子を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に制限されず、一例として、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;ブチルベンゾエート、メチル−2−メトキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;テトラリン;3−phenoxy−tolueneなどの溶媒が挙げられる。また、上述した溶媒を1種単独でまたは2種以上の溶媒を混合して使用することができる。
【0074】
また、前記コーティング組成物の粘度は1cP〜10cPが好ましく、上記の範囲でコーティングが容易である。また、前記コーティング組成物中の本発明に係る高分子の濃度は、0.1wt/v%〜20wt/v%であることが好ましい。
【0075】
また、前記コーティング組成物は、熱重合開始剤および光重合開始剤からなる群より選択される1種または2種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0076】
前記熱重合開始剤として、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、およびアゾビスシクロヘキシルニトリルなどのアゾ系があるが、これらに限定されない。
【0077】
前記光重合開始剤として、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニルエーテルなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤;およびエチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのその他光重合開始剤があるが、これらに限定されない。
【0078】
また、光重合促進効果を有するものを単独または前記光重合開始剤と併用して使用することもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどがあるが、これらに限定されない。
【0079】
また、本発明は、上述したコーティング組成物を使用して正孔輸送層を形成する方法を提供する。具体的には、正極上に、または正極上に形成された正孔注入層上に、上述した本発明に係るコーティング組成物を溶液工程でコーティングする段階と;前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理または光処理する段階とを含む。
【0080】
前記溶液工程は、上述した本発明に係るコーティング組成物を使用することで、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらにのみ限定されるものではない。
【0081】
前記熱処理段階において熱処理温度は150〜230℃であることが好ましい。また、前記熱処理時間は1分〜3時間であり、より好ましくは10分〜1時間である。また、前記熱処理は、アルゴン、窒素などの不活性気体雰囲気で行うことが好ましい。また、前記コーティング段階と前記熱処理または光処理段階との間に溶媒を蒸発させる段階をさらに含むことができる。
【0082】
(有機発光素子)
また、本発明は、上述した本発明に係る高分子を含む有機発光素子を提供する。具体的には、本発明は、正極と;前記正極に対向して具備された負極と;前記正極と前記負極との間に具備された発光層と;前記正極と前記発光層との間に具備された正孔輸送層とを含み、前記正孔輸送層は本発明に係る高分子を含む、有機発光素子を提供する。
【0083】
本発明の一実施形態による有機発光素子の構造は、図1および図2に例示されている。
【0084】
図1は、基板1、正極2、正孔輸送層3、発光層4、負極5からなる有機発光素子の例を示すものである。図2は、基板1、正極2、正孔注入層6、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層7、電子注入層8および負極5からなる有機発光素子の例を示すものである。
【0085】
本発明に係る有機発光素子は、前記正孔輸送層が本発明に係る高分子を含み、上述した方法と同様に製造されることを除けば、当技術分野で知られている材料および方法で製造することができる。
【0086】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、基板上に正極、有機物層および負極を順次に積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e−beam evaporation)などのPVD(physical Vapor Deposition)方法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いられる物質を蒸着させて製造することができる。
【0087】
この方法以外にも、基板上に負極物質、有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を製造することができる(WO2003/012890)。ただし、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0088】
前記正極物質としては、通常有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。前記正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSNO:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0089】
前記負極物質としては、通常有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。前記負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などの金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0090】
前記正孔注入層は電極から正孔を注入する層であって、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、正極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(最高被占軌道:highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノン、ならびにポリアニリン系およびポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0091】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔および電子の輸送をそれぞれ受けて結合させることにより可視光線領域の光を発し得る物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良好な物質が好ましい。具体的な例としては、8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0092】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0093】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換または非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換または非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換または非置換される。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0094】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層であって、電子輸送物質としては、負極から電子注入をよく受けて発光層に移し得る物質で、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されているような、任意の所望するカソード物質と共に使用可能である。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムであり、各場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0095】
前記電子注入層は、電極から電子を注入する層であって、電子を輸送する能力を有し、負極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物、および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0096】
前記金属錯体化合物としては、8−ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナト)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナト)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナト)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナト)(2−ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0097】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料によって前面発光型、後面発光型、または両面発光型であり得る。
【0098】
また、本発明に係る高分子は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスターにも含まれ得る。
【0099】
本発明に係る高分子およびこれを含む有機発光素子の製造を以下の実施例で具体的に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0100】
[中間体の製造]
中間体5および6の製造
【化21】
【0101】
化合物1(9g、27.9mmol)と化合物2(4.18g、27.9mmol)を無水THF(100mL)に溶かした後、Pd(PPh(0.32g、0.28mmol)と2M炭酸カリウム(KCO/H0)水溶液(70mL)を入れ、6時間還流させた。反応溶液を常温に冷却した後、有機層を抽出した。反応液を濃縮させ、エタノールで再結晶して化合物3(8.9g、収率92%)を得た。
MS:[M+H]=348
【0102】
化合物3(8.2g、23.6mmol)をDMF(200mL)に溶かし、N−ブロモコハク酸イミド(4.15g、23.6mmol)を添加した後、5時間常温で攪拌した。反応溶液に蒸留水を入れて終了させ、有機層を抽出した。反応液を濃縮させ、エタノールで再結晶して化合物4(8.25g、収率82%)を得た。
MS:[M+H]=427
【0103】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(13.41g、37.532mmol)とカリウムt−ブトキシド(4.21g、37.532mmol)を無水THF(300mL)に入れてまず攪拌した。以降、無水THF(60mL)に溶かした化合物4(8g、18.766mmol)をゆっくり滴下した後、5時間反応させた。炭酸ナトリウム水溶液で反応を終了した後、メチレンクロライドと水を用いて有機層を抽出し、残余水分をMgSOを使用して除去した。反応液を濃縮させた後、メチレンクロライドとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物5(7.8g、98%)を得た。
MS:[M+H]=425
【0104】
化合物5(2g、4.713mmol)と(4−クロロフェニル)ボロン酸(1.1g、7.069mmol)を無水THF(20mL)に溶かした後、Pd(PPh(0.32g、0.28mmol)と2M炭酸カリウム(KCO/H0)水溶液(15mL)を入れ、6時間還流させた。反応溶液を常温に冷却した後、有機層を抽出した。反応液を濃縮させ、エタノールで再結晶して化合物6(2g、収率93%)を得た。
MS:[M+H]=457
【0105】
[製造例1]
製造例1−1:化合物A1の製造
【化22】
【0106】
化合物5(3.65g、8.615mmol)、(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ボロン酸(2.99g、10.338mmol)、Pd(PPh(498mg、0.431mmol)、およびKCO(3.57g、25.845mmol)をTHF(43mL)および蒸留水(15mL)に溶かし、70℃で15時間攪拌した。酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。MgSOを用いて脱水させた後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質を酢酸エチルとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物A1を製造した。
MS:[M+H]=589
【0107】
製造例1−2:化合物A2の製造
【化23】
(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ボロン酸の代わりに(4−(ジビフェニル−4−イルアミノ)フェニル)ボロン酸を使用したことを除いて、化合物A1の製造方法と同様の方法で、化合物A2を製造した。
MS:[M+H]=741
【0108】
製造例1−3:化合物A3の製造
【化24】
(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ボロン酸の代わりに(4−(ビフェニル−4−イル(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ)フェニル)ボロン酸を使用したことを除いて、化合物A1の製造方法と同様の方法で、化合物A3を製造した。
MS:[M+H]=782
【0109】
製造例1−4:化合物A4の製造
【化25】
化合物5(3.65g、8.615mmol)、ジフェニルアミン(1.74g、10.338mmol)、Pd(t−BuP)(220mg、0.431mmol)、およびナトリウムt−ブトキシド(2.48g、25.845mmol)をトルエン(26mL)に溶かし、100℃で15時間攪拌した。酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。MgSOを用いて脱水させた後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質を酢酸エチルとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物A4を製造した。
MS:[M+H]=513
【0110】
製造例1−5:化合物A5の製造
【化26】
ジフェニルアミンの代わりにジビフェニル−4−イルアミンを使用したことを除いて、化合物A4の製造方法と同様の方法で、化合物A5を製造した。
MS:[M+H]=665
【0111】
製造例1−6:化合物A6の製造
【化27】
ジフェニルアミンの代わりにN−(ビフェニル−4−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミンを使用したことを除いて、化合物A4の製造方法と同様の方法で、化合物A6を製造した。
MS:[M+H]=665
【0112】
製造例1−7:化合物A7の製造
【化28】
化合物5の代わりに化合物6を使用したことを除いて、化合物A1の製造方法と同様の方法で、化合物A7を製造した。
MS:[M+H]=665
【0113】
製造例1−8:化合物A8の製造
【化29】
化合物5の代わりに化合物6を使用し、(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ボロン酸の代わりに(4−(ジビフェニル−4−イルアミノ)フェニル)ボロン酸を使用したことを除いて、化合物A1の製造方法と同様の方法で、化合物A8を製造した。
MS:[M+H]=818
【0114】
製造例1−9:化合物A9の製造
【化30】
化合物5の代わりに化合物6を使用し、(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ボロン酸の代わりに4−(ビフェニル−4−イル(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ)フェニルボロン酸を使用したことを除いて、化合物A1の製造方法と同様の方法で、化合物A9を製造した。
MS:[M+H]=858
【0115】
[製造例2]
製造例2−1:化合物B2の製造
【化31】
【0116】
(4−ホルミルフェニル)ボロン酸(4.91g、32.778mmol)と3−ブロモビシクロ[4.2.0]オクタ−1(6),2,4−トリエン(5g、27.315mmol)をPd(PPh(1.58g、1.366mmol)、およびKCO(11.32g、81.945mmol)をTHF(200mL)および蒸留水(100mL)に溶かし、70℃で15時間攪拌した。酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。MgSOを用いて脱水させた後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質を酢酸エチルとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物7を製造した。
MS:[M+H]=209
【0117】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(13.41g、37.532mmol)とカリウムt−ブトキシド(4.21g、37.532mmol)を無水THF(30mL)に入れて攪拌した。以降、無水THF(10mL)に溶かした化合物7(3.90g、18.766mmol)をゆっくり滴下した後、4時間反応させた。炭酸ナトリウム水溶液で反応を終了した後、メチレンクロライドと水を用いて有機層を抽出し、残余水分をMgSOを用いて除去した。反応液を濃縮させた後、メチレンクロライドとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物B2(3.2g、収率84%)を製造した。
MS:[M+H]=207
【0118】
[製造例3]
製造例3−1:化合物D1の製造
【化32】
【0119】
2−ブロモ−9H−フルオレン−9−オン(5g)をTHF(50mL)に溶かした後、0℃でフェニルマグネシウムブロミド(11mL、3M solution in ether)を入れ、30分間攪拌した。アンモニウムクロリド水溶液で反応を終了した後、酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。有機層の残余水をMgSOで除去した後、ろ過し、ろ過液は減圧濃縮機を用いて溶媒を除去し、MPLCで精製して、化合物14(5.4g)を得た。
【0120】
化合物14(5.4g)をメチレンクロライド(40mL)に溶かした後、TESH(3.84mL)とTFA(1.9mL)をゆっくり滴下した後、常温で16時間攪拌した。これをメチレンクロライドと水を用いて有機層を抽出した後、残余水をMgSOで除去した後、溶媒を減圧濃縮機で除去した。得られた固体をMPLCを用いて精製して、化合物15(4.8g)を得た。
【0121】
化合物15(1g)をトルエン(10mL)に溶かした後、TBAB(0.1g)、NaOH(0.4g)、および水(2mL)を入れ、まず攪拌した。6−ブロモヘキセン(0.6mL)を入れ、120℃で一晩反応させた後、酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。有機層に残った水をMgSOで除去し、減圧濃縮機で溶媒を除去した後、MPLCで精製して、化合物16(0.7g)を得た。
【0122】
化合物16(1.7g、4.22mmol)、4−ビニルベンゼンボロン酸(750mg、5.06mmol)、Pd(PPh(243mg、0.21mmol)、およびKCO(1.75g、12.65mmol)を丸底フラスコに入れた後、窒素で置換した。THF(17mL)とHO(4.2mL)を投入した後、90℃で4時間攪拌した。酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。有機層に残った水をMgSOで除去した後、ろ過した。ろ過液を真空乾燥した後、MPLCで精製して、化合物D1(950mg)を得た。
MS:[M+H]=427
【0123】
製造例3−2:化合物D2の製造
【化33】
6−ブロモヘキセンの代わりに8−ブロモオクテンを使用したことを除いて、化合物D1の製造方法と同様の方法で、化合物D2を製造した。
MS:[M+H]=455
【0124】
[実施例]
実施例1:共重合体C1の製造
【化34】
上記で製造した化合物A1(500mg)、化合物B2(22mg)、化合物D1(45mg)、およびAIBN(1.2mg)をトルエンに入れ、窒素置換下にて100℃で14時間反応させた。酢酸エチルに沈殿して合成された高分子C1を製造した。製造された高分子の数平均分子量および重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を用いたGPCで測定した。
Mn:37100、Mw:78600
【0125】
実施例2:共重合体C2の製造
【化35】
化合物A1の代わりに化合物A3を使用し、化合物B2の代わりに3−ビニルビシクロ[4,2,0]オクタ−1(6)、2,4−トリエンを使用したことを除いて、共重合体C1の製造と同様の方法で、共重合体C2を製造した。製造された高分子の数平均分子量および重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を用いたGPCで測定した。
Mn:45700、Mw:97400
【0126】
実施例3:共重合体C3の製造
【化36】
化合物A1の代わりに化合物A6を使用し、化合物B2の代わりに3−ビニルビシクロ[4,2,0]オクタ−1(6)、2,4−トリエンを使用し、化合物D1の代わりに化合物D2を使用したことを除いて、共重合体C1の製造と同様の方法で、共重合体C3を製造した。製造された高分子の数平均分子量および重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を用いたGPCで測定した。
Mn:39200、Mw:62400
【0127】
実施例4:共重合体C4の製造
【化37】
化合物A1の代わりに化合物A9を使用したことを除いて、共重合体C1の製造と同様の方法で、共重合体C4を製造した。製造された高分子の数平均分子量および重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を用いたGPCで測定した。
Mn:35900、Mw:73100
【0128】
実施例5:共重合体C5の製造
【化38】
上記で製造した化合物A1(500mg)、化合物B2(44mg)、化合物D1(90mg)、およびAIBN(1.2mg)をトルエンに入れ、窒素置換下にて100℃で14時間反応させた。酢酸エチルに沈殿して合成された共重合体C5を製造した。製造された高分子の数平均分子量および重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を用いたGPCで測定した。
Mn:45030、Mw:92770
【0129】
実施例6:共重合体C6の製造
【化39】
化合物A1の代わりに化合物A3を使用し、化合物B2の代わりに3−ビニルビシクロ[4,2,0]オクタ−1(6)、2,4−トリエンを使用したことを除いて、共重合体C1の製造と同様の方法で、共重合体C6を製造した。製造された高分子の数平均分子量および重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を用いたGPCで測定した。
Mn:32560、Mw:74470
【0130】
比較例:共重合体Fの製造
(1)化合物11の製造
【化40】
【0131】
化合物9(4−(9H−カルバゾール−9−イル)ベンズアルデヒド、10g、26.856mmol)とNBS(N−ブロモコハク酸イミド、6.62g、37.225mmol)をDMF(184mL)に入れ、4時間攪拌した後、酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。MgSOを用いて脱水させた後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質を酢酸エチルとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物10(12.5g、収率:97%)を得た。
MS:[M+H]=351
【0132】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(15.3g、42.830mmol)とカリウムt−ブトキシド(6.4g、57.106mmol)をTHF(70mL)に入れて攪拌した後、上記で製造した化合物10(10g、28.553mmol)をさらに入れ、4時間攪拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液を用いて残余塩基を除去した後、酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。MgSOを用いて脱水させた後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質を酢酸エチルとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物11(9.5g、収率:96%)を得た。
MS:[M+H]=349
【0133】
(2)化合物12の製造
【化41】
上記で製造した化合物11(3g、8.615mmol)、(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ボロン酸(2.99g、10.338mmol)、Pd(PPh(498mg、0.431mmol)、およびKCO(3.57g、25.845mmol)をTHF(43mL)および蒸留水(15mL)に溶かし、70℃で15時間攪拌した。酢酸エチルと水を用いて有機層を抽出した。MgSOを用いて脱水させた後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質を酢酸エチルとヘキサンでカラムクロマトグラフィーを用いて、化合物12を製造した。
MS:[M+H]=513
【0134】
(3)共重合体Fの製造
【化42】
共重合体C1の製造方法と同様の方法で製造するものの、出発物質として化合物12と化合物B2を使用し、当量を調節して共重合体Fを製造した。製造された高分子の数平均分子量および重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を用いたGPCで測定した。
Mn:37800、Mw:77900
【0135】
[実験例]
実験例1−1
ITO(indium tin oxide)が1,500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルタ(Filter)で2次ろ過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピル、アセトンの溶剤で超音波洗浄をし乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後、グローブボックスに基板を輸送させた。
【0136】
ITO透明電極上に、上記で製造した共重合体C1および下記化合物M(8:2の重量比)の2wt%トルエンインクをスピンコーティング(4000rpm)し、200℃で30分間熱処理(硬化)して40nmの厚さに正孔注入層を形成した。真空蒸着機に移送した後、前記正孔注入層上に下記化合物Gを真空蒸着して20nm厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上に下記化合物Hと下記化合物Iを92:8の重量比で20nmの厚さに真空蒸着して発光層を形成した。前記発光層上に下記化合物Jを35nmの厚さに真空蒸着して電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層上に順次に1nmの厚さにLiFと100nmの厚さにアルミニウムを蒸着してカソードを形成した。
【0137】
【化43】
【0138】
前記過程で、有機物の蒸着速度は0.4〜0.7Å/secを維持し、LiFは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は1×10−7〜5×10−8torrを維持した。
【0139】
実験例1−2〜1−4
前記実験例1−1と同様の方法で製造するものの、共重合体C1の代わりに下記表1に記載された共重合体を使用したことを除いては同様の方法で、有機発光素子を製造した。
【0140】
比較実験例1
前記実験例1−1と同様の方法で製造するものの、共重合体C1の代わりに共重合体Fを使用したことを除いては同様の方法で、有機発光素子を製造した。
【0141】
前記実験例および比較実験例で製造した有機発光素子を10mA/cmの電流密度で駆動電圧、外部量子効率(external quantum efficiency、EQE)、輝度および寿命を測定した結果を下記表1に示す。前記外部量子効率は、(放出された光子数)/(注入された電荷運搬体数)から求めた。T80は、輝度が初期輝度(500nit)から80%に減少するのにかかる時間を意味する。
【0142】
【表1】
【0143】
上記表1に示すように、本発明に係る共重合体は化学式および化学式3を含むことによって、そうでない共重合体に比べて効率および寿命が改善されることを確認することができた。また、本発明に係る共重合体は有機溶媒に対する溶解度に優れており、コーティング組成物の製造が容易である。上記表1の結果から前記コーティング組成物を用いて均一なコーティング層を形成することができ、膜の安定性も優れて有機発光素子でさらに優れた性能を示すことを確認した。
【0144】
実験例2−1
ITO(indium tin oxide)が1,500Åの厚さに薄膜蒸着されたガラス基板を洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトンの溶剤でそれぞれ30分ずつ超音波洗浄をし乾燥させた後、前記基板をグローブボックスに輸送させた。
【0145】
こうして準備されたITO透明電極上に、下記化合物A’と下記化合物Mを重量比8:2で混合してcyclohexanoneに溶かした溶液をスピンコーティングして400Åの厚さに成膜した。これを窒素雰囲気下、220℃で30分間加熱して正孔注入層を形成した。上記で製造した共重合体C1をトルエンに溶解させて前記正孔注入層上にスピンコーティングして200Åで成膜し、窒素雰囲気下で190℃で1時間加熱して正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上に、下記化合物Hと下記化合物Iを92:8の重量比でcyclohexanoneに溶かした溶液をスピンコーティングして200Åで成膜し、窒素雰囲気下で120℃で1時間加熱して発光層を形成した。前記発光層上に、下記化合物Jを35nmの厚さに真空蒸着して電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層上に順次に1nmの厚さにLiFと100nmの厚さにアルミニウムを蒸着してカソードを形成した。
【0146】
【化44】
【0147】
前記過程で、有機物の蒸着速度は0.4〜0.7Å/secを維持し、LiFは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10−7〜5×10−8torrを維持した。
【0148】
実験例2−2〜2−6
前記実験例2−1と同様の方法で製造するものの、共重合体C1の代わりに下記表2に記載された共重合体を使用したことを除いては同様の方法で、有機発光素子を製造した。
【0149】
比較実験例2
前記実験例2−1と同様の方法で製造するものの、共重合体C1の代わりに共重合体Fを使用したことを除いては同様の方法で、有機発光素子を製造した。
【0150】
前記実験例および比較実験例で製造した有機発光素子を10mA/cmの電流密度で駆動電圧、外部量子効率(external quantum efficiency、EQE)、輝度および寿命を測定した結果を下記表2に示す。前記外部量子効率は、(放出された光子数)/(注入された電荷運搬体数)から求めた。T80は、輝度が初期輝度(500nit)から80%に減少するのにかかる時間を意味する。
【0151】
【表2】
【0152】
上記表2に示すように、本発明に係る共重合体は化学式および化学式3を含むことによって、そうでない共重合体に比べて効率および寿命が改善されることを確認することができた。また、本発明に係る共重合体は有機溶媒に対する溶解度に優れており、コーティング組成物の製造が容易である。上記表2の結果から前記コーティング組成物を用いて均一なコーティング層を形成することができ、膜の安定性も優れて有機発光素子でさらに優れた性能を示すことを確認した。
【符号の説明】
【0153】
1:基板
2:正極
3:正孔輸送層
4:発光層
5:負極
6:正孔注入層
7:電子輸送層
8:電子注入層
図1
図2