特許第6983558号(P6983558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983558
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】プラズマクリーナで使用される磁石
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/16 20060101AFI20211206BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01J37/16
   H05H1/46 A
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-136869(P2017-136869)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-29052(P2018-29052A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2020年6月30日
(31)【優先権主張番号】16184239.8
(32)【優先日】2016年8月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル シュヴェーダ
(72)【発明者】
【氏名】リボル ノヴァーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーツラフ シュチェパーネク
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル ポロウチェク
【審査官】 中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−503031(JP,A)
【文献】 特開2008−177154(JP,A)
【文献】 特開2009−004778(JP,A)
【文献】 特開2012−238623(JP,A)
【文献】 特開2016−048665(JP,A)
【文献】 特表2009−516920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/16
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバから汚染物質をクリーニングするためのクリーニングシステムであって、
プラズマを生成するためのプラズマ発生器を備え、該プラズマ発生器は、荷電粒子及び反応性中性粒子が前記プラズマ発生器を離れる出口を有する、
クリーニングシステムにおいて、
前記真空チャンバに入る荷電粒子の数を低減するために、前記プラズマ発生器の外側に磁石が配置されており、
真空チャンバ内のワークピースに作用するための荷電粒子ビームを提供するように構成された荷電粒子ビームカラムをさらに有し、前記磁石は、前記荷電粒子の動作を妨げないために十分に弱い磁場を生成するクリーニングシステム。
【請求項2】
前記出口から前記真空チャンバまで反応性中性粒子を導くための通路をさらに有する、請求項1に記載のクリーニングシステム。
【請求項3】
前記磁石が前記通路に隣接して配置されており、前記通路内まで延在する磁場を生じる、請求項記載のクリーニングシステム
【請求項4】
前記磁石が永久磁石である、請求項1乃至いずれか一項記載のクリーニングシステム
【請求項5】
前記磁石がNdFeB又はSmCo磁石を含む、請求項記載のクリーニングシステム
【請求項6】
前記磁石がコイルである、請求項1乃至のいずれか一項記載のクリーニングシステム
【請求項7】
前記プラズマ発生器からの荷電粒子が前記真空チャンバ内において、二次プラズマ源を生成することを防ぐために、磁気が十分に強い、請求項1乃至のいずれか一項記載のクリーニングシステム
【請求項8】
前記磁石が前記プラズマ発生器の前記出口に隣接して配置されている、請求項1乃至7のいずれか一項記載のクリーニングシステム
【請求項9】
前記プラズマ発生器が、ACグロー放電プラズマ発生器、RF誘導結合もしくは容量結合プラズマ発生器、又は、DCプラズマ発生器を含む、請求項1乃至のいずれか一項記載のクリーニングシステム
【請求項10】
ワークピースを処理するための真空チャンバと、該真空チャンバ及び/又は前記ワークピースをクリーニングするためのプラズマクリーニングシステムとを備える装置であって、
請求項1乃至9いずれか1項に記載のクリーニングシステムと、
処理されるべき試料を含む真空チャンバと、
前記真空チャンバ及び前記プラズマ発生器を連結する通路と、
を備える装置。
【請求項11】
真空チャンバから汚染物質をクリーニングする方法であって、
前記真空チャンバの外側のプラズマ発生器内でプラズマを生成するステップであって、前記プラズマは反応性中性粒子及び荷電粒子を含み、前記プラズマ発生器は前記反応性中性粒子及び荷電粒子が真空チャンバを離れる出口を有する、ステップと、
前記出口を介して、反応性中性粒子及び荷電粒子が前記プラズマ発生器を離れることを可能にするステップと、
を有する方法において、
前記荷電粒子が真空チャンバに入るのを妨げるために前記プラズマ発生器の外側に配置された磁石からの磁場を用いて、前記荷電粒子が前記出口を離れた後に前記荷電粒子を偏向させるステップであって、真空チャンバ内のワークピースに作用するための荷電粒子ビームを提供するように構成された荷電粒子ビームカラムをさらに有し、前記磁石は、前記荷電粒子の動作を妨げないために十分に弱い磁場を生成する、ステップを、
有することを特徴とする方法。
【請求項12】
磁石からの磁場を用いて、前記荷電粒子が前記出口を離れた後に前記荷電粒子を偏向させるステップは、永久磁石からの磁場によって、前記荷電粒子を偏向させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
磁石からの磁場を用いて、前記荷電粒子が前記出口を離れた後に前記荷電粒子を偏向させるステップは、コイルからの磁場によって、前記荷電粒子を偏向させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記プラズマ発生器の前記出口は、前記プラズマ発生器と前記真空チャンバとの間の通路内に開口しており、前記荷電粒子が前記出口を離れた後に前記荷電粒子を偏向させるステップは、前記通路内で前記荷電粒子を偏向させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空チャンバのプラズマクリーニングに関し、特に改良されたプラズマクリーニングのための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡及び集束イオンビームシステムのような、荷電粒子ビームシステムは、画像形成、ワークピース上のパターンの作成、及び、試料材料の成分分析のための様々なアプリケーションで用いられる。この種のシステムは、真空チャンバ内のワークピースに作用する。真空チャンバ内の汚染物質は、ワークピース表面とのビームの相互作用に悪影響を与えることがあり、試料分析のために用いられる、例えばX線及び放出電子のような二次電子の放出を妨げることがある。荷電粒子ビーム処理及び分析が、原子レベル近傍で発生するので、真空チャンバ及びワークピースの清浄度は重要である。微小工学のために必要とされる精密レベルで、構造を作製し分析を実行するために、清潔な環境が必要とされる。
【0003】
汚染源は、例えば、指紋、クリーニング溶剤の残留物、潤滑油及び真空チャンバにおいて、以前に用いられた残留プロセス化学物質、さらにワークピース自体を含む。汚染は、機器の内部要素に、存在してもよい。例えば、短時間でも大気条件にさらされたままにされれば、炭化水素膜がワークピース表面に蓄積されるであろう。これらの汚染源から蒸発する有機化合物はビームの照射によって、解離して、有機化合物をワークピース上へ及び試料チャンバの内の表面上へ付着させうる。
【0004】
溶媒及び研磨クリーナによる真空チャンバのクリーニングコンポーネントは、不十分である。乾燥窒素のようなガスによって、真空システムをパージングすることは、時間がかかり、非効率的である。
【0005】
顕微鏡システム及びワークピースをクリーニングするために、プラズマクリーナが開発された。いくつかのシステムでは、低温プラズマが、処理機器の真空チャンバの中で発生する。このような真空システムは、プラズマとの直接接触に耐えるように設計されていなければならない。「ダウンストリーム」プラズマクリーナと呼ばれる他のシステムにおいて、プラズマは真空チャンバの外側で生成され、粒子が、プラズマクリーナから真空システムに移動する。本出願人、FEI Company,Hillsboro,Oregonは、その顕微鏡に対する付属品として、ダウンストリームプラズマクリーナを提供する。ダウンストリームプラズマクリーナは、例えば、Sakai他のU.S.Pat.No.5,312,519、及び、VaneのU.S.Pat.No.6,610,247とU.S.Pat.No.6,105,589に記載されている。
【0006】
プラズマクリーニングシステムは、原料ガスをイオン化することによって、プラズマを点火し維持するためのエネルギーを供給する。イオンを生成する他に、プラズマシステムは、反応性の中性原子又は分子であるラジカルも、原料ガスから生成する。発生するイオン及びラジカルのタイプは、プラズマを生成する原料ガス及びエネルギーに依存する。例えば、空気が原料ガスとして用いられる場合、酸素及び窒素ラジカルが発生する。U.S.6,105,589は、酸素ラジカルを破壊する窒素イオンの生成を制限するために、プラズマの励起エネルギーを制御することを述べる。
【0007】
プラズマチャンバの開口は、反応性及び非反応性の両方のイオン、電子及び中性粒子がプラズマ発生器を出て、真空チャンバに入ることを可能にする。酸素ラジカルのような、反応性ラジカルは、真空チャンバ内の炭化水素汚染物質と反応し、真空システムによって、システムから容易に送出されうる不安定な成分を形成する。これは、意図された反応であり、この種のプラズマクリーナの機能的原理である。
【0008】
プラズマ発生器から真空チャンバに入るイオンは、真空チャンバの中のコンポーネントの方へ加速されることができ、それらのコンポーネントにダメージを与えることができる。プラズマ発生器からの荷電粒子は、真空チャンバの他の中性原子をイオン化し、プラズマクリーナの出口から数デシメートル離れた、制御されていない二次プラズマ源を生成するのに十分強い電界を生成することもできる。真空チャンバ内の、検出器及び精密ステージのような高感度な装置の近くの、このような二次プラズマ源は、この種の装置に急激にダメージを与えることができる。
【0009】
図1はデュアルビームシステムの真空チャンバ100の内部の写真であり、電子ビームカラム及びイオンビームカラムを含む。明るい領域は、強力な二次プラズマ源を現す。領域102は、プラズマクリーナが真空チャンバ100に連結されるポイント近傍のプラズマであり、領域104は、電子ビームカラム及びイオンビームカラムの下の試料位置の近傍で自己発生したプラズマである。
【0010】
二次プラズマ源の点火を防止するために、プラズマ発生器の出力は、低減されなければならない。しかしながら、出力を低減させることは、生成される反応性ラジカルの量も低減させ、それは、マシンの不所望な休止時間をもたらすクリーニング回数を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5312519号公報
【特許文献2】米国特許第6610247号公報
【特許文献3】米国特許第6105589号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、クリーニングされるシステムにダメージを与えることなく、改良された効率で、より高い出力において、作用できるように、ダウンストリームプラズマクリーナの改良を提供することにある。
【0013】
汚染と反応する反応性の中性粒子が真空チャンバに入ることを可能にする一方で、プラズマ発生器から真空チャンバに入る電子及びイオンを除去し又はその数を著しく減少させるために、プラズマクリーナの通路に対して垂直な成分を有する磁場が用いられる。
【0014】
上記は、以下の本発明の詳細な説明をよりよく理解できるように、本発明の特徴及び技術的利点をかなり広範に概説したものである。本発明の付加的な特徴及び効果は、以下に記載される。開示された概念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実行するための他の構造を変更又は設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者には理解されるべきである。また、当業者であれば、そのような均等な構成は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱しないことを理解すべきである。
【0015】
本発明及びその利点のより完全な理解のために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】荷電粒子ビームシステムの真空チャンバの中のプラズマの写真である。
図2】取り付けられた磁石を有するプラズマクリーナの概略図である。
図3】取り付けられたプラズマクリーナと荷電粒子ビームシステムとの間の通路に取り付けられた磁石を概略的に示す図である。
図4】真空チャンバ及びプラズマ源を概略的に示す図である。
図5】異なる条件の下でのプラズマクリーナのクリーニング効率を示すチャートである。
図6】真空チャンバに入る荷電粒子を低減するための磁場を含むシステム内の、図1の写真と類似の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は、無線周波数発生器204のような電源により給電されたプラズマチャンバ202を含むプラズマクリーナ200の概略を示す図である。ガス供給(図示せず)に連結されたリーク弁206は、プラズマチャンバ202内にガスを供給する。フランジ208は、荷電粒子ビームシステム(図示せず)上の嵌合部に連結する。プラズマチャンバの出口に隣接した磁石210は、大部分の荷電粒子が荷電粒子ビームシステムの真空チャンバに達しないように、プラズマを離れさせ、軌道を変化させるローレンツ力を荷電粒子上に生じさせる磁場を提供する。
【0018】
好適な磁石の種類及び磁場強度は、実際の特定の用途に依存し、より詳しくは、プラズマクリーナ及びクリーニングされる真空チャンバの両方の設計に依存する。磁石のサイズ、位置及び強度を決定する際に考慮される要素は、プラズマクリーナとその出口の寸法及びプラズマクリーナとターゲット真空チャンバとの間の距離である。2つの制約が最適な磁石の選択を決定する。1)磁石の横方向寸法は、プラズマクリーナの出口の直径と類似していなければならない。2)磁石は事実上可能な限り強くなければならない、しかし、磁場はプラズマクリーナから離れて(far from)延在してはならない。プラズマクリーナと真空チャンバとの間の通路に対して垂直な磁場を提供するために、図1に示すように、磁石は、好ましくは、一方の極が通路に面し、他方の極が通路から離れるように配向される。磁石は、例えば、NdFeB又はSmCoから成ることができる。
【0019】
通常、場がより強いほど、磁石は、プラズマが顕微鏡チャンバに入るのをよりよく防止する。最大磁場強度は、実際の設計(空間制約及び利用できる永久磁石)で決められる。実験では、約2cm×2cm×1cmの1つのNdFeB磁石により生成された場が、プラズマクリーナの出口の荷電粒子が真空チャンバに入るのを止めるのに十分であるが、約2分の1のサイズのより小さい磁石は、いくつかの荷電粒子がチャンバに入ることを可能にする。
【0020】
同じ場の配向を有する電磁石を用いることもできるが、十分に強い場を生成するために必要な高電流のため、実用性が低い。このような装置は、確実により大きく、けた違いに高価になる。
【0021】
磁石は、異なるタイプのプラズマ発生器で用いられることが可能である。例えば、あるタイプのプラズマクリーナは、低周波(120kHz)及び低電力(約20W未満)のAC電源を用いたグロー放電発生器である。プラズマを生成する電界は電気伝導壁及びスクリーンにより画定される体積内に閉じ込められ、したがって、この体積内の原子及び分子だけがイオン化される。しかしながら、プラズマは、試料チャンバ内へ延在する。プラズマは、例えば、接続された真空チャンバを通るプラズマクリーナのチャンバの小さい入り口及び一定のポンピングによって、プラズマクリーナのチャンバ内で数十パスカルに減圧された周囲空気から発生できる。
【0022】
真空チャンバに入る荷電粒子を低減させるための磁石の使用は、イオンではなくフリーラジカルを供給することを目的としたプラズマ源がターゲット真空チャンバから空間的に分離されている任意のプラズマクリーナに適用可能である。磁石は、既存のプラズマクリーナに対する追加部品として加えられることが可能である。例えば、磁石はプラズマクリーナと真空チャンバとの間の通路の外側に配置されることができ、磁場は通路を透過する。
【0023】
図3は、通路306によって、真空チャンバ304システムに連結されたプラズマクリーナ302を模式的に示す。磁石308は、通過306に延在する磁場310を生成し、磁場310はプラズマクリーナ302を離れさせるローレンツ力を粒子上に引き起こし、ほとんど又は全ての荷電粒子が真空チャンバ304に入るのを防ぐ。(図3の磁石の厚さは誇張されて示される。)出願人は、走査型電子顕微鏡又はDual Beam(FIB/SEM)システム用に選択された磁石サイズでは、磁気シールドが通常は必要でないことを見出した。より小型又はより高感度なシステムでの使用のような、ある種の用途にはシールドが望ましいかもしれない。シールドは、プラズマクリーナの出口に取り付けられるメッシュとしての軟磁性体を用いて、容易に実施されうる。
【0024】
図4は、典型的なデュアルビーム(FIB/SEM)システム402を示す。デュアルビームシステムは、例えば、本願の出願人、FEI Company,Hillsboro,Oregonから市販されている。デュアルビームシステム402はイオンビーム集束カラム404及び電子ビーム集束カラム406を含み、その両方が、試料真空チャンバ412内のステージ410に配置された試料408に作用する。ワークピース408がドア416又はエアーロック(図示せず)を介して入れられたあと、ポンピングシステム414は試料真空チャンバ412を排気する。
【0025】
プラズマ発生器420は、選択された反応性粒子がチャンバ412内へ通過できる通路422によって、試料真空チャンバ412に、連結される。プラズマクリーナ420は、例えば、低周波及び低電力使用するグロー放電発生器でもよい。プラズマは、クリーニングに必要な酸素ラジカルのような電気的に中性な有効成分及び有害な荷電イオンを含む。
【0026】
磁石428はプラズマクリーナ420の出口に又は通路422の上に位置決めされており、プラズマクリーナ420と試料真空チャンバ412との間に磁場を生成する。磁石428のサイズ及び強度は、デュアルビームシステム402、プラズマクリーナ420及び他のシステムコンポーネントの設計によって、決められる。磁場の強度は、プラズマクリーナ420又はチャンバ412内へあまりに入り込んで(too far into)延在することなく、可能な限り強くなるように選択される。磁場の強さは、磁石428の材料組成を決める。例えば、NdFeB磁石によって、発生する磁場は、チャンバ412のシステムコンポーネントに影響を及ぼすことなく、プラズマクリーナ420への出口でプラズマ内の荷電イオンをトラップするのに十分である。磁石428は、NdFeBに限定されず、例えば、SmCoのような他の材料から構成されることができる。磁石428の磁場は、イオン及び電子が通路422を通ってチャンバ412に流れ込むのをトラップし、妨げる。それは、チャンバ412内の二次プラズマの生成を妨げ、したがって、プラズマ及び高電圧との接触によるチャンバ412の内部コンポーネントへの損傷を排除する。磁石428の磁場は、通路422を通ってチャンバ412に流れることができる酸素ラジカルに影響を及ぼさない。酸素ラジカルは、チャンバ412内部で一旦炭化水素と結合し、その後、真空ポンプによって、チャンバ412から取り除かれるように解放される。なお、 図4は、デュアルビームシステムを示すが、本発明の実施形態は、ワークピースが真空チャンバ内で処理される、電子ビームシステム又はイオンビームシステムのような他のタイプの荷電粒子ビームシステムにおいても実施できる。
【0027】
図5は、本発明により改良されたプラズマクリーナの性能と従来技術のプラズマクリーナの性能とを比較するグラフを示す。図5は、磁場有り及び磁場無しの10Wのプラズマクリーナに加えて、比較のための5Wのプラズマクリーナに必要なクリーニング時間を示す。磁場有りの10Wのプラズマクリーナのクリーニング効率(10Wの+MF)は、磁場無しの10Wのクリーナのクリーニング効率と類似している。これは、磁場が、真空チャンバで二次プラズマを抑制すると共に、真空チャンバをクリーニングするために利用できる反応性分子の数を減少させないことを示す。10Wのクリーナは、5Wのクリーナより速く、クリーニングする。したがって、真空チャンバ内で二次プラズマが生成されるという欠点を伴わずに高出力プラズマ発生装置の利点を得ることができる。
【0028】
図6は、 プラズマクリーナの出力部に配置された磁石(図示せず)を備えたプラズマクリーナ(図示せず)が動作中の、図1の真空チャンバ100の内部を示す。プラズマグロー602はプラズマ発生器からの接続の近くで視認できるが、ワークピース位置606にはプラズマがない。
【0029】
関連する真空チャンバ内にイオンではなくフリーラジカルを供給することを目的としたプラズマ源からプラズマをシールドするための磁場を提供することによって、真空チャンバのクリーニングを改善することは、示された実施形態に限定されず、 関連する真空チャンバから空間的に分離された、全ての外部プラズマクリーナに適用できす。
【0030】
「隣接する」とは、磁場が、荷電粒子が真空チャンバに入るのを防ぐために十分な強度で、磁石から隣接する構造内に延在するように十分に近接していることを意味する。「通路」は、いかなる特定の長さも意味するものではなく、構造物間の開口であってもよい。
【0031】
本発明の実施形態は、ワークピースを処理するための真空チャンバと、真空チャンバをクリーニングするためのプラズマクリーニングシステムとを備える装置であって、
【0032】
処理されるべき試料を含む真空チャンバと、
【0033】
真空チャンバの外側に位置し、反応性の中性粒子及び荷電粒子を生成するプラズマ発生器と、
【0034】
真空チャンバ及びプラズマ発生器を連結する通路と、
【0035】
真空チャンバ内の汚染を減らす反応性の中性粒子が真空チャンバに入るのを可能にする一方で、プラズマ発生器から真空チャンバに入る荷電粒子の数を低減するために、プラズマ発生器から離れる荷電粒子に力を与える磁場を提供する磁場源と、
を備える装置を示す。
【0036】
いくつかの実施形態では、磁場源は、永久磁石である。
【0037】
いくつかの実施形態では、磁場源は、コイルである。
【0038】
いくつかの実施形態では、磁場は、プラズマ発生器からの荷電粒子が真空チャンバ内で二次プラズマを生成するのを妨げるために、十分に強い。
【0039】
いくつかの実施形態では、磁場は、真空チャンバ内の荷電粒子ビームに干渉しないために、十分に弱い。
【0040】
いくつかの実施形態では、磁場源は、NdFeB又はSmCo磁石を備える。
【0041】
いくつかの実施形態では、磁場源は、プラズマ発生器の出口に隣接して配置される。
【0042】
いくつかの実施形態では、磁場源は通路に隣接して配置され、磁場は通路内に延在する。
【0043】
いくつかの実施形態では、反応性の中性粒子は真空チャンバ内の有機汚染物質と反応して、真空チャンバの内部をクリーニングする。
【0044】
いくつかの実施形態では、プラズマ発生器は、酸素ラジカル及びイオンを生成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、プラズマ発生器は、プラズマチャンバを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、プラズマ発生器は、ACグロー放電プラズマ発生器を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、プラズマ発生器は、誘導結合又は容量結合プラズマチャンバ、DCプラズマ発生器、マイクロ波プラズマ発生器又は電子サイクロトロン共鳴プラズマ発生器を含む。
【0048】
いくつかの実施形態は、真空チャンバから汚染物質をクリーニングするクリーニングシステムであって、
【0049】
荷電粒子及び反応性の中性粒子がプラズマ発生器を離れる出口を有する、プラズマを生成するためのプラズマ発生器と、
【0050】
真空チャンバに入る荷電粒子の数を低減するために、プラズマ発生器の外側に配置された磁石と、を備えるクリーニングシステムを示す。
【0051】
いくつかの実施形態は、さらに、出口から真空チャンバへ、反応性の中性粒子を導くための通路を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、磁石は、通路に隣接して配置される。
【0053】
いくつかの実施形態では、磁石は、プラズマ発生器の出口に隣接して配置される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態は、真空チャンバから汚染物質をクリーニングする方法であって、
【0055】
真空チャンバの外側のプラズマ発生器内でプラズマを生成するステップであって、プラズマは反応性中性粒子及び荷電粒子を含み、プラズマ発生器は反応性中性粒子及び荷電粒子が真空チャンバを離れる出口を有する、ステップと、
【0056】
出口を介して、反応性中性粒子及び荷電粒子が前記プラズマ発生器を離れることを可能にするステップと、
【0057】
荷電粒子が真空チャンバに入るのを妨げるために、プラズマ発生器の外側に配置された磁石からの磁場を用いて、荷電粒子が出口を離れた後に荷電粒子を偏向させるステップと、を含む方法を示す。
【0058】
いくつかの実施形態は、さらに、反応性中性粒子を、真空チャンバ内の汚染物質と反応させるために、真空チャンバ内に導くステップを含む。
【0059】
いくつかの実施例は、さらに、真空チャンバ内での反応性中性粒子と汚染との間の反応により生成される反応生成物を排出するステップを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、プラズマ発生器の出口は、プラズマ発生器と真空チャンバとの間の通路内に開口しており、荷電粒子が出口を離れた後に荷電粒子を偏向させるステップは、通路内で荷電粒子を偏向させるステップを含む。
【0061】
本発明の好ましい方法又は装置は、多くの新規な態様を有し、本発明は、異なるためのために異なる方法又は装置で具体化できるため、あらゆる態様があらゆる実施形態に存在する必要はない。さらに、記載された実施形態の態様の多くは、 別個に特許性が有り得る。本発明は、上述の実施例に記載され示されたように、広い適用性を有し、多くの利点を提供できる。実施形態は、特定の用途に応じて大きく変わるであろうし、すべての実施形態が本発明により達成されるすべての利点を提供し、すべての目的を満たすわけではない。
【0062】
「ワークピース」、「試料」、「基板」及び「標本」の用語は、特に明記しない限り、本出願では互換的に使用される。さらに、「自動的」、「自動化された」の用語又は類似の用語が本明細書で使用されるときは常に、これらの用語は自動的又は自動化されたプロセス又は手動ステップの手動開始を含むと理解される。
【0063】
「プラズマ発生器」及び「プラズマチャンバ」の用語は、本願明細書において、同じ物を意味するために用いられる。
【0064】
以下の説明及び特許請求の範囲では、「含む」及び「含む」という用語は拡張可能に使用されているため、「含むがこれに限定されない」という意味に解釈すべきである。本明細書において、任意の用語が特別に定義されていない限り、その用語がその明白かつ通常の意味を与えられることを意図する。添付の図面は、本発明の理解を助けることを意図しており、特記しない限り、縮尺通りに描かれていない。
【0065】
本明細書に記載された様々な特徴は、本明細書の実施形態に記載された組み合わせだけでなく、任意の機能的組み合わせ又は部分的組み合わせで使用されてもよい。このように、本開示は、いずれの種類の組合せとして部分的組合せの説明文を提供することと、解釈されなければならない。
【0066】
本発明及びその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に対して様々な変更、置換及び変更を行うことができることを理解されたい。さらに、本出願は、本明細書に記載されるプロセス、機構、製造、組成物、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。通常の当業者であれば、本発明の開示から、本明細書で述べた実施形態に対応して、実質的に同じ機能を果たし又は実質的に同じ結果を達成する、既存の又は後に開発される、プロセス、機構、製造、組成物、手段、方法又はステップが本発明に従って利用され得ることを容易に理解するであろう。したがって、添付の請求の範囲は、このような方法、機構、製造、組成物、手段、方法又はステップを含むことを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6