(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983596
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ゼリー飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20211206BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20211206BHJP
【FI】
A23L2/00 E
A23L29/20
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-179374(P2017-179374)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-54731(P2019-54731A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】羽生 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】神生 将人
(72)【発明者】
【氏名】堀本 智仁
(72)【発明者】
【氏名】長井 拓也
【審査官】
吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−252156(JP,A)
【文献】
実開平01−139825(JP,U)
【文献】
特開2011−211964(JP,A)
【文献】
特開2010−268756(JP,A)
【文献】
特開2013−028464(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/125671(WO,A1)
【文献】
特開2004−174024(JP,A)
【文献】
特開2002−209532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゲル化剤を含む主原料を60〜95℃の温度、−0.07〜−0.01MPaの陰圧下で水に溶解してゲル化剤溶液を調製するゲル化剤溶液調製工程、
少なくともゲル化剤を含む主原料を水に溶解して得られたゲル化剤溶液と、ゲル化剤を含まない副原料とを比例混合して混合物を得る混合工程、および
少なくともゲル化剤を含む主原料を水に溶解して得られたゲル化剤溶液と、ゲル化剤を含まない副原料とを含む混合物を、流路内で乱流体、遷移流体およびそれらの組み合わせから選択される流体となるように調節し、該流体を前記流路内でジュール加熱方式により加熱処理する殺菌工程
を含み、
該ゲル化剤溶液調製工程の完了後3時間以内に該混合工程において比例混合が行われる、ゼリー飲料の製造方法。
【請求項2】
前記ゲル化剤が翼先端速度5〜30m/秒の回転子で1〜30分間せん断される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記主原料が、賦形剤、無機酸、有機酸、無機酸の塩および有機酸の塩からなる群から選択される少なくとも一つをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記主原料中のゲル化剤の含有量が5重量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該ゲル化剤溶液調製工程の前に、前記主原料が流動撹拌型または容器回転型の混合機により撹拌混合される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記副原料が、前記副原料を水に溶解して得られた副原料溶液として前記ゲル化剤と比例混合される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記副原料または副原料溶液の粘度が300mPa・s以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該混合工程における混合エネルギーが100〜8000kJ/m3である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱処理が、前記混合物のレイノルズ数が2000以上となる条件下で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物が外部加熱方式によりさらに加熱処理される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー飲料の需要は年々拡大しており、今後も消費の拡大が見込まれている。一方、従来、ゼリー飲料の製造においては、小さいバッチサイズで複数の種類の製品の製造を間欠的に行う汎用の製造ラインが一般的に用いられていた(例えば、特許文献1〜3)。しかしながら、このような製造ラインでは、製品を短時間(約8時間)かつ間欠的にしか製造できないことから、製造能力が低く、ゼリー飲料の需要の拡大に対応しにくいという課題があった。
【0003】
従来の製造ラインにおいて製品を短時間かつ間欠的にしか製造できない要因としては種々考えられるが、(1)ゼリー飲料の製造に使用されるゲル化剤の溶解性が低いこと、(2)ゲル化剤を溶解した後に適切なゲル化能を長時間保持することが困難であるため、予めゲル化剤を溶解しておくことができないこと、(3)ゲル化剤を含むゼリー飲料は粘度が高く殺菌時に殺菌機内で対流しづらいため、温度が不均一になりやすく、焦げやすい成分が高温部分で焦げて凝集し、殺菌機の伝熱面(内壁)に凝集物が堆積するため、殺菌を長時間連続して行うことができないこと等が要因として考えられている。
【0004】
一方、ゲルの溶解性の向上に関しては、ゲル化剤をせん断して溶解性を高める方法が知られている(例えば、特許文献2および3)。また、粘度が高い製品の製造における加熱殺菌に関しては、ジュール加熱により、製品の中間加工品の加熱を短時間で均一に行うことにより殺菌する方法が知られている(例えば、特許文献4)。
【0005】
このような状況に対し、上述したような要因を解決し、ゼリー飲料を長時間連続的に製造することができる方法を提供することは重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−0−89525号公報
【特許文献2】特開2013−233159号公報
【特許文献3】特開2015−091257号公報
【特許文献4】特開2010−124807号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ゼリー飲料の製造において、少なくともゲル化剤を含む主原料を特定の条件下で真空吸引して水に溶解してゲル化剤溶液を調製する工程、当該ゲル化剤溶液と、ゲル化剤を含まない副原料とを比例混合して混合物を得る工程、当該混合物をジュール加熱方式により特定の条件下で加熱処理する工程の少なくとも一つを経ることにより、従来は短時間(8時間程度)かつ間欠的にしか行うことができなかったゼリー飲料の製造を、従来以上の長時間にわたり連続的に行うことができることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0008】
したがって、本発明は、ゼリー飲料を長時間連続的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0009】
すなわち、本発明によれば、具体的に以下の発明が提供される。
(1)少なくともゲル化剤を含む主原料を60〜95℃の温度、−0.07〜−0.01MPaの陰圧下で水に溶解してゲル化剤溶液を調製するゲル化剤溶液調製工程、
少なくともゲル化剤を含む主原料を水に溶解して得られたゲル化剤溶液と、ゲル化剤を含まない副原料とを比例混合して混合物を得る混合工程、および
少なくともゲル化剤を含む主原料を水に溶解して得られたゲル化剤溶液と、ゲル化剤を含まない副原料とを含む混合物を、流路内で乱流体、遷移流体およびそれらの組み合わせから選択される流体となるように調節し、該流体を前記流路内でジュール加熱方式により加熱処理する殺菌工程
からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含む、ゼリー飲料の製造方法。
(2)前記ゲル化剤溶液調製工程、混合工程および殺菌工程をすべて含む、(1)に記載の方法。
(3)前記ゲル化剤溶液調製工程および混合工程を含み、該ゲル化剤溶液調製工程の完了後3時間以内に該混合工程において比例混合が行われる、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記ゲル化剤溶液調製工程を含み、前記ゲル化剤が翼先端速度5〜30m/秒の回転子で1〜30分間せん断される、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記ゲル化剤溶液調製工程を含み、前記主原料が、賦形剤、無機酸、有機酸、無機酸の塩および有機酸の塩からなる群から選択される少なくとも一つをさらに含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記ゲル化剤溶液調製工程を含み、前記主原料中のゲル化剤の含有量が5重量%以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記ゲル化剤溶液調製工程を含み、該工程の前に、前記主原料が流動撹拌型または容器回転型の混合機により撹拌混合される、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記混合工程を含み、前記副原料が、前記副原料を水に溶解して得られた副原料溶液として前記ゲル化剤と比例混合される、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(9)前記混合工程を含み、前記副原料または副原料溶液の粘度が300mPa・s以下である、(1)〜(3)および(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記混合工程を含み、該混合工程における混合エネルギーが100〜8000kJ/m
3である、(1)〜(3)および(8)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記殺菌工程を含み、前記加熱処理が、前記混合物のレイノルズ数が2000以上となる条件下で行われる、(1)または(2)に記載の方法。
(12)前記殺菌工程を含み、前記混合物が外部加熱方式によりさらに加熱処理される、(1)〜(2)および(11)のいずれかに記載の方法。
【0010】
本発明のゼリー飲料の製造方法によれば、各原料成分を含む溶液の調製工程、溶液の混合工程および混合液の殺菌工程の少なくとも一つの工程を効率化することにより、長時間連続的にゼリー飲料を製造することが可能となる。また、ゼリー飲料の原料の一つであるゲル化剤は継粉(ダマ)になりやすいため、従来の方法においては、ゲル化剤を人の手により穏やかに添加していたが、本発明の方法によれば機械的にゲル化剤を添加することができるため、製造過程において人の手を省くこと(省人化)も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の製造方法を行うための装置の一例の概略図である。
【
図2A】ゲル化剤溶液調製工程におけるせん断時間とゲル強度との関係を示すグラフである。
【
図2B】ゲル化剤溶液調製工程完了後の95℃における経過時間(保持時間)とゲル強度との関係を示すグラフである。
【
図3】混合工程におけるラインミキサーの出力(回転数)とゲル強度との関係を示すグラフである。
【
図4】ジュール加熱方式の加熱処理またはチューブ方式の加熱処理を行った場合の配管内圧力(背圧)の経時変化を示すグラフである。
【0012】
本発明は、少なくともゲル化剤を含む主原料を特定の温度および圧力条件下で水に溶解してゲル化剤溶液を調製するゲル化剤調製工程、少なくともゲル化剤を含む主原料を水に溶解して得られたゲル化剤溶液と、ゲル化剤を含まない副原料とを比例混合して混合物を得る混合工程、ならびに少なくともゲル化剤を含む主原料を水に溶解して得られたゲル化剤溶液と、ゲル化剤を含まない副原料とを含む混合物を特定の時間ジュール加熱方式により加熱処理する殺菌工程からなる群から選択される少なくとも一つの工程を含む。
【0013】
本発明において「ゼリー飲料」とは、後述するゲル化剤を含んでなる飲料を意味する。
以下、本発明のゼリー飲料の製造方法における工程をそれぞれ詳細に説明する。ただし、本発明は以下に述べる態様に限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で自由に変更できるものである。本発明の製造方法を行うための装置の一例の概略図を
図1に示す。
【0014】
<ゲル化剤溶液調製工程>
本発明において、ゲル化剤溶液調製工程は、少なくともゲル化剤を含む主原料に陰圧をかけることにより真空吸引して水に添加し、主原料の成分を水に溶解させることにより行われる。本発明において「主原料」とは、ゼリー飲料の原材料のうちのゲル化剤であるか、またはゲル化剤とゲル化剤以外の少なくとも一つの原材料との混合物を意味する。
【0015】
ゲル化剤溶液調製工程は、例えば真空ミキサー等を用いて行われる。真空ミキサーとしては、連続的に溶解を行うインライン式と、回分で溶解を行うバッチ式とが存在し、上記の条件で主原料を加工することができるものであれば特に限定されないが、インライン式ではゲル化剤を連続的に微少量ずつ吸引溶解するという極めて高度な吸引制御技術が必要であり、生産ラインの安定的な稼働や製品の組成の安定性等の観点から、バッチ式の真空ミキサーを用いることが好ましい。バッチ式の真空ミキサーとしては、例えば、特開2013−233159号公報および特開2013−233159号公報において開示されている真空ミキサー(Highest V)等が挙げられる。
【0016】
ゲル化剤溶液調製工程においては、水に添加された主成分をせん断することにより、主原料の成分の水への溶解を促進してもよい。
【0017】
主原料に含まれるゲル化剤としては、粉末状のゲル化剤(ゲル化剤粉末)を用いることが好ましい。ゲル化剤粉末は、安息角が20〜60°であることが好ましく、25〜55°であることがより好ましく、26〜50°であることがさらに好ましい。このような安息角を有するゲル化剤粉末を使用した場合、ゲル化剤の流動が安定して起こり、貯蔵槽(ホッパー)等に貯蔵したゲル化剤が安定して製造ラインに供給される。
【0018】
ゲル化剤粉末の圧縮度は0〜50%であることが好ましく、0〜40%であることが好ましく、0〜35%であることがより好ましい。このような圧縮度を有するゲル化剤粉末を使用した場合、圧密による輸送配管内における詰まり等が生じにくいため、ゲル化剤が安定して製造ラインに供給される。
【0019】
ゲル化剤粉末のゆるめかさ密度は200〜700kg/m
3であることが好ましく、230〜680kg/m
3であることがより好ましく、250〜650kg/m
3であることがさらに好ましい。また、かためかさ密度は300〜900kg/m
3であることが好ましく、350〜880kg/m
3であることがより好ましく、380〜850kg/m
3であることがさらに好ましい。
【0020】
ゲル化剤粉末の50%平均粒径(d50)は30〜1250μmであることが好ましく、35〜500μmであることがより好ましく、40〜200μmであることがさらに好ましい。
【0021】
ゲル化剤粉末の水分含量は2.0〜20.0重量%であることが好ましく、3.0〜15.0重量%であることがより好ましく、4.0〜14.5重量%であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明において「ゲル化剤」とは、単独または他の物質との組み合わせにより液体に粘性を付与する作用、または液体をゲル状にする作用を有する物質を意味する。また、本発明において「ゲル化剤」とは、ゲル状態を単独で維持することができる物質、ゲル状態の維持を単独で補助することができる物質、ゲル状態を維持することができ、ゲル状態を維持することを単独で補助することができる物質の2種以上の組み合わせ、ならびにミネラル、乳タンパク質および糖質からなる群から選択される少なくとも一つと反応することによりゲル状態を維持することができる物質を意味する。
【0023】
ゲル化剤の成分としては、ゲル化作用を有する成分であれば特に限定されないが、例えば、日本国厚生労働省が規定する指定添加物であるアルギン酸塩および加工デンプン、ならびに既存添加物として指定されている増粘安定剤、例えば、アウレオバシジウム培養液、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸、ウェランガム、エレミ樹脂、カシアガム、ガティガム、カードラン、カラギーナン、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、グルコサミン、酵母細胞壁、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、デキストラン、トラガントガム、トロロアオイ、納豆菌ガム、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、ペクチン、マクロホモプシスガム、モモ樹脂、ラムザンガムおよびレバン等が挙げられる。また、その他のゲル化剤の成分としては、例えば、グルコマンナン、ローカストビンガム、寒天、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、アルギン酸エステルおよび大豆多糖類等が挙げられる。これらのうち、ゲル化剤の成分の特に好ましい例としては、グァーガム、脱アシル型ジェランガム、ローカストビンガム、キサンタンガム、寒天、カラギーナンおよびゼラチンが挙げられる。ゲル化剤は、これらの成分を単独で含んでもよく、または複数種類を組み合わせて含んでもよい。
【0024】
グァーガムを含むゲル化剤としては、例えば、ビストップD−20(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、SUPERGEL CSA 200/50(Pakistan Gum & Chemicals社製)、GRINDSTED GUAR 175およびGRINDSTED GUAR 80S(いずれもDuPont Nutrition Biosciences社製)等が挙げられる。
【0025】
脱アシル型ジェランガムを含むゲル化剤としては、例えば、ゲルメイトKAおよびゲルメイトKB(いずれもDSP五協フード&ケミカル社製)、ならびにケルコゲル(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
ローカストビンガムを含むゲル化剤としては、例えば、GENU(登録商標) GUM type RL-200-J(CP Kelco社製)、ビストップD−2050(F)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、VS−400(新田ゼラチン株式会社製)およびGRINDSTED LBG 057(DuPont Nutrition Biosciences社製)等が挙げられる。
【0027】
キサンタンガムを含むゲル化剤としては、例えば、サンエースC(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、ティカンタンガムSD−F−W、ティカンタンガムSD−F−C、ティカンタンガムSD−R−WおよびティカンタンガムSD−R−C(いずれもTIC Gums, Inc.社製)、ならびにエコーガムFおよびエコーガムT(いずれもDSP五協フード&ケミカル社製)等が挙げられる。
【0028】
寒天を含むゲル化剤としては、例えば、寒天YM−70、ウルトラ寒天AX−30、ウルトラ寒天AX−100、ウルトラ寒天AX−200、ウルトラ寒天UX−30、ウルトラ寒天UX−100、ウルトラ寒天UX−200、ウルトラ寒天イーナ、カリコンカン、即溶性寒天UP−37、寒天T−1および弾力寒天大和(いずれも伊那食品工業株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
カラギーナンを含むゲル化剤としては、例えば、カラギニンCSK−1(F)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、サンカラNo.1049、サンカラNo.208(いずれも太陽化学株式会社製)およびNC810K(三菱商事フードテック株式会社社製)等が挙げられる。
【0030】
ゼラチンを含むゲル化剤としては、例えば、GBL250、GBL200、APH‐250、APH‐200、♯300、♯250、♯200、FGL−250TS、FGL−200SP(いずれも新田ゼラチン株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
グルコマンナンは、コンニャク芋に含まれる多糖類であり、制限はされないものの、一般的にD−グルコースとD−マンノースとがほぼ1:1.6のモル比で、β−1,4結合により重合した、分子量約1,000,000〜2,000,000の難消化性の多糖類である。グルコマンナンを含むゲル化剤としては、レオレックスRS(清水化学株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
ペクチンは、一般にエステル化の程度によって高メトキシル(HM)ペクチンと低メトキシル(LM)ペクチンの2種類に分類されるが、本発明においてはいずれのペクチンも使用することができる。
【0033】
上記の成分を複数種含むゲル化剤としては、例えば、グルコマンナン、ローカストビンガムおよび寒天を含む合剤、例えば、イナゲルDJ−800(伊那食品工業株式会社製)、ペクチン、ジェランガム、ローカストビンガムおよび寒天を含む合剤、例えばFM−1694(新田ゼラチン株式会社製)、ならびにローカストビンガム、グァーガムおよび寒天を含む合剤、例えばゲルアップJ−3986(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)等が挙げられる。
【0034】
上記ゲル化剤は単独で使用してもよく、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
主原料に含まれるゲル化剤の含有量は5重量%以下であり、3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0036】
主原料は、ゲル化剤に加えて、製造する製品の品質に応じて賦形剤、無機酸、有機酸およびそれらの塩等の添加剤をさらに含んでいてもよい。主原料に添加される無機酸または有機酸としては、通常飲食品の原料として使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば、炭酸、塩酸、リン酸およびメタリン酸等の無機酸、ならびにクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸およびアスコルビン酸等の有機酸を使用することができる。また、無機酸または有機酸の塩としては、通常飲食品の原料として使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化マグネシウムおよび炭酸マグネシウム等を使用することができる。これらの添加剤は単独で使用してもよく、または複数種を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤は、主原料に予め添加する以外に、後述する副原料に予め添加してもよく、また、ゲル化溶液調製工程、後述する混合工程および殺菌工程の間および/または前後に添加してもよい。
【0037】
ゲル化剤溶液調製工程において、主原料の真空吸引を行うための圧力は、温度に応じて、調製工程中に溶液が沸騰しない範囲内の低い圧力とする。具体的には、−0.07〜−0.01MPaであり、−0.04〜−0.015Mpaであることが好ましく、−0.025〜−0.015MPaであることがより好ましい。
【0038】
主原料の真空吸引を行う際の温度は60〜95℃であり、60〜90℃であることが好ましく、60〜70℃であることがより好ましい。また、真空吸引により主原料と水とを混合した後に、真空吸引時よりも高い温度に昇温して、主原料を水に溶解させてもよい。真空吸引後に昇温する場合の温度としては、真空吸引時の温度よりも高い温度であれば特に限定されず、例えば、70〜100℃の範囲とする。市販のゲル化剤を用いる場合、製造者により推奨される溶解温度が指定される場合には、指定される温度とすることが好ましい。真空吸引後に昇温する場合、加温装置を用いて昇温してもよく、またはせん断により発生する熱を利用して昇温してもよい。
【0039】
また、ゲル化剤溶液調製工程において、水に添加した主原料はせん断されることが好ましい。主原料のせん断は回転子(ローター)を用いて行うことが好ましく、せん断力としては、翼先端速度が5〜30m/秒であることが好ましく、7〜27m/秒であることがより好ましく、8〜25m/秒であることがさらに好ましい。また、せん断時間は1〜30分であることが好ましく、2〜20分であることがより好ましく、5〜10分であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明のゲル化剤溶液調製工程においては、高温下で陰圧をかけて主原料を真空吸引することにより、主原料を安定的に速やかに水に添加および溶解してゲル化剤溶液を得ることができる。また、主原料をせん断する場合には、主原料をより速やかに水に溶解することができる。
【0041】
得られたゲル化剤溶液を後述する混合工程の比例混合に供するまでの時間は、ゲル化剤溶液調製工程の完了後3時間以内であることが好ましく、2.5時間以内であることがより好ましく、2時間以内であることがさらに好ましい。
【0042】
<混合工程>
本発明において、混合工程は、ゲル化剤溶液とゲル化剤を含まない副原料とを比例混合することにより行われる。本発明において「副原料」とは、ゼリー飲料の原材料のうちゲル化剤以外の原材料の混合物を意味する。なお、本発明において、主原料と副原料とに同じ種類の原材料が含まれていてもよい。副原料は、副原料を予め水に溶解して得られた副原料溶液としてゲル化剤溶液と混合してもよい。ゲル化剤溶液と副原料とを比例混合する装置としては、例えば、国際公開第2013/125671号公報において開示されている高精度比例添加システム(QUICK)等が挙げられる。また、ゲル化剤溶液と副原料の混合は、例えばラインミキサーを用いて行われる。ラインミキサーとしては、例えば、ラインミキサーMK2000(IKA社製)等が挙げられる。ラインミキサーはスタティックミキサーと組み合わせて用いることもできる。
【0043】
本発明の方法において用いられる副原料の成分としては、通常飲食品の原料として使用可能な成分であって、ゲル化剤以外の成分であれば特に限定されないが、例えば、アミノ酸、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、pH調整剤、果汁およびフレーバー類等を使用することができる。アミノ酸としては、例えば必須アミノ酸、たんぱく質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイたんぱく質、ホエイたんぱく質濃縮物、ホエイたんぱく質分離物、ホエイたんぱく質加水分解物、α−カゼイン、β−カゼイン、κ−カゼイン、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆たんぱく質、鶏卵たんぱく質、肉たんぱく質等の動植物性たんぱく質、これらの分解物、バター、乳清ミネラル、クリーム、ホエイ、非たんぱく態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種の乳由来成分等が挙げられる。カゼインホスホペプチド等のペプチドやアミノ酸を含んでいてもよい。糖質としては、例えば、糖類、加工でんぷん(デキストリンのほか、可溶性でんぷん、ブリティッシュスターチ、酸化でんぷん、でんぷんエステル、でんぷんエーテル等)、食物繊維等が挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等に、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂、パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油等に、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂等が挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸等が挙げられる。ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン等が挙げられる。pH調整剤としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸およびエルソルビン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、ならびにそれらの塩等が挙げられる。これらの成分は単独で使用してもよく、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
副原料中の各成分を均質に混合する観点から、副原料または副原料溶液の85℃における粘度は300mPa・s以下であることが好ましく、200mPa・s以下であることがより好ましく、150mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0045】
混合工程において、ゲル化剤溶液と副原料とを混合する際の、混合物の単位体積当たりに対してラインミキサーにより与えられる混合エネルギーは100〜8000kJ/m
3であり、300〜7000kJ/m
3であることが好ましく、400〜6500kJ/m
3であることがより好ましい。混合エネルギーは、製品の品質を調節するために、上記範囲内で適宜調整できるようにすることが好ましい。
【0046】
混合工程の前に、必要に応じて副原料または副原料溶液の成分を、高圧ホモジナイザー等を用いて予め混合・均質化してしてもよい。
【0047】
<殺菌工程>
本発明において、殺菌工程は、ゲル化剤溶液と副原料とを含む混合物(調合液)を、流路(配管)内で遷移流体から乱流体の状態に調節して流動させながら、ジュール加熱方式により加熱処理することにより行われる。すなわち、殺菌工程は、調合液が殺菌のために流路内を通過する間に行われる。本発明において「ジュール加熱」とは、通電加熱とも呼ばれる内部加熱方式の一つであり、対象物に直接通電して、対象物の電気抵抗により生じる熱(ジュール熱)により対象物を加熱する方法を意味する。また、本発明において「乱流体」とは、不規則かつ無秩序に流れる流体を意味し、好ましくはレイノルズ数Re4,000以上、より好ましくはレイノルズ数Re4,050以上、さらに好ましくはレイノルズ数Re4,100以上の流体を意味する。これに対し、規則正しく流れる流体を「層流体」といい、本発明において「遷移流体」とは、層流から乱流に遷移する際に生じる流体を意味し、好ましくはレイノルズ数Re2,000以上4,000未満、より好ましくはレイノルズ数Re2,050以上3,950以下、さらに好ましくはレイノルズ数Re2,100以上3,900以下の流体を意味する。
【0048】
本発明において、殺菌工程は、調合液を流路内で流動させながら加熱を行うことが可能な流路を備えた公知のジュール加熱装置を用いることが可能である。かかるジュール加熱装置としては、例えば、後述する実施例において使用されるサノヴォ社製のジュール加熱装置が挙げられる。
【0049】
殺菌工程において、調合液を流動させる流路のサイズは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、ゼリー飲料の生産スケールに応じて適宜設定することができるが、流路内で遷移流体または乱流体を効率的に発生させる観点からは、内径が比較的小さいことが好ましい。具体的には、流路の内径は25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、15mm以下であることがさらに好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。また、流路の内径の好適な範囲としては、0.1〜25mm、0.l〜20mm、0.1〜15mm、5〜25mm、5〜20mm、5〜15mm、0.1〜10mm、0.1〜8mm、0.1〜5mm等が挙げられる。
【0050】
殺菌工程において、調合液を流動させる流路の長さは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、十分な加熱処理の観点から、0.01〜20mであることが好ましく、0.1〜15mであることがより好ましく、0.1〜10mであることがさらに好ましく、0.5〜5mであることがさらに好ましく、1〜5mであることが特に好ましい。
【0051】
また、殺菌工程において、調合液を流動させる流路の形状は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、円筒状、正角柱状および多角柱状等が挙げられるが、均一な流動状態を実現する観点から、円筒状とすることが好ましい。
【0052】
殺菌工程について、調合液を「流路内で乱流体、遷移流体およびそれらの組み合わせから選択される流体となるように調節」するとは、使用されるジュール加熱装置(特にその流路内径)および調合液の性質(粘度、密度、流速および流量等)に応じて、調合液が遷移流体、乱流体またはその組み合わせとなり、層流を生じさせないために必要とされるレイノルズ数Reを備えている状態とすること意味する。調合液が流路内で乱流体、遷移流体およびそれらの組み合わせとなる状態において、調合液のレイノルズ数Reは、例えば、約2,000以上であり、4,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、8,000以上であることがさらに好ましい。また、調合液のレイノルズ数Reの範囲は、例えば、2,000〜60,000であり、2,000〜50,000であることが好ましく、4,000〜50,000であることがより好ましく、4,000〜45,000であることがさらに好ましい。流路内において調合液のレイノルズ数を上記範囲に設定することは、流路近傍での調合液の温度の不均一性を防ぐことができ、調合液を全体的に均一に加熱処理する上で有利である。また、上記レイノルズ数の範囲は、調合液中の焦げ付きやすい成分(例えば、たんぱく質等)が高温部分で焦げて凝集し、殺菌機の伝熱面(内壁)に凝集物が堆積することを防ぐ上でも好ましい。レイノルズ数は、調合液の密度、粘度、流速、流量および流路内径に応じて当業者によって適宜調節される。
【0053】
殺菌工程において、調合液の流路における流速は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、ゼリー飲料の所望の生産効率を勘案して適宜設定することができるが、10〜6,000L/時間であることが好ましく、50〜5,500L/時間であることがより好ましく、50〜5,000L/時間であることがさらに好ましく、100〜5,000L/時間であることがさらに好ましく、200〜5,000L/時間であることがさらに好ましく、300〜5,000L/時間であることがさらに好ましく、350〜4,500L/時間であることが特に好ましい。
【0054】
また、殺菌工程において、焦げ付きやすい高粘性、高密度の調合液の焦げ付きを防止する観点から、ジュール加熱装置への調合液の供給量には高い精度が求められる。したがって、ジュール加熱装置には、高粘性、高密度であっても一定量の調合液を送り出すことが可能な送り出し装置を設置することが好ましい。このような送り出し装置としては、例えば、公知の高圧ホモポンプ等が挙げられる。
【0055】
殺菌工程における調合液の加熱処理の温度は、85〜120℃であることが好ましく、90〜115℃であることがより好ましく、95〜110℃であることがさらに好ましく、99〜110℃であることがさらに好ましい。
【0056】
殺菌工程における調合液の加熱処理の時間は、0.01秒〜200分であることが好ましく、0.01秒〜100分であることがより好ましく、0.01秒〜10分であることがさらに好ましく、0.01〜90秒間であることがさらに好ましく、0.1〜90秒間であることがさらに好ましく、20〜90秒間であることがさらに好ましく、25〜75秒間であることがよりさらに好ましく、30〜60秒間であることがさらに好ましい。
【0057】
また、殺菌工程においては、ジュール加熱における電極に流れる電流密度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0058】
殺菌工程においては、必要に応じて、ジュール加熱方式に加えてさらに外部加熱方式の加熱処理を行ってもよい。外部加熱方式の加熱処理としては、プレート式、チューブ式およびカキトリ式等の間接的な外部加熱方式、ならびにスチームインジェクション方式およびスチームインフュージョン方式等の直接的な外部加熱方式等が挙げられる。これらの外部加熱方式の加熱処理は単独で、あるいは複数種を組み合わせて、ジュール加熱方式の加熱処理の前および/または後に行うことができる。
【0059】
本発明の製造方法は、上述したゲル化剤溶液調製工程、混合工程および殺菌工程からなる群から選択される2つ以上の工程を含むことが好ましく、3つすべての工程を含むことがより好ましく、3つすべての工程を含み、ゲル化剤溶液調製工程、混合工程および殺菌工程をこの順番で行うことが特に好ましい。3つすべての工程を含み、ゲル化剤溶液調製工程、混合工程および殺菌工程の順番で行うことにより、より長時間にわたり連続的にゼリー飲料を製造することが可能となる。
【0060】
また、本発明の製造方法は、通常ゼリー飲料を製造する際に行われる工程をさらに含んでもよい。このようなさらなる工程として、例えば、以下に説明するような予備混合工程を含んでもよい。
【0061】
<主原料の予備混合工程>
本発明の製造方法は、ゲル化剤溶液調製工程の前に、必要に応じて主原料の成分を予め混合する工程(主原料の予備混合工程)を含んでもよい。特に、主原料がゲル化剤以外の成分を含み、主原料中のゲル化剤の含有量が低い場合(例えば、1重量%以下の場合)には、主原料の予備混合を行うことにより、主原料の各成分が均一に混合されるため、安定した組成の主原料を連続的にゲル化剤溶液調製工程に供給することが可能となる。
【0062】
主原料の予備混合工程は、例えば流動撹拌方式または容器回転方式の混合装置を用いて行われる。いずれの方式の混合装置でも、混合の過程においてゲル化剤の粒子径が変化する等の主原料の物性に対する影響が少なく、また、十分に均一に混合することが可能である。しかしながら、主原料の予備混合工程完了後の混合装置からの排出時の主原料成分の均一性(偏析の有無)の観点から、主原料の予備混合工程においては、主原料の各成分を粒子径や排出のタイミングによらずより均一に排出することが可能な流動撹拌方式の混合装置を用いることが好ましい。流動撹拌方式の混合装置としては、例えばエアブレンダ―を用いることができ、エアブレンダ―としては、例えばNol−tecエアブレンダ―(東洋ハイテック株式会社製)等が挙げられる。また、容器回転方式の混合装置としては、例えばロッキングミキサーを用いることができ、ロッキングミキサーとしては、例えば粉体混合機ロッキングミキサー(標準型混合機、愛知電機株式会社製)等が挙げられる。これらの混合装置は、それぞれ製造元が推奨する条件で用いることが好ましい。
【0063】
エアブレンダ―の容量は、十分な量の主原料を供給することができるよう、有効体積(主原料の成分が十分に均一に混合できる範囲)が160〜500L程度の範囲となるように、例えば900L程度であることが好ましい。
【0064】
混合装置において各成分が混合された主原料は、必要量ごとに混合装置から排出される。混合装置から排出された主原料は、そのままゲル化剤溶液調製工程に供給されてもよいが、送り込み貯蔵槽(インフィードホッパー)に供給された後、送り込み貯蔵槽からゲル化剤溶液調製工程に供給されてもよい。必要量の主原料を一旦送り込み貯蔵槽に供給することにより、ゲル化剤溶液調製工程における真空ミキサーに主原料が吸引される速度を安定化することができる。
【0065】
送り込み貯蔵槽の容量は、有効体積が85L程度となるように、例えば100L程度であることが好ましい。
【0066】
また、ゼリー飲料の製造においては、ゲル化剤の量が製品の質に大きく影響することから、混合装置から送り込み貯蔵槽への主原料の供給量には高い精度が求められる。したがって、混合装置は、一定量の主原料を送り出すことが可能な送り出し装置を備えることが好ましい。このような送り出し装置としては、例えば、チョークゲート計量機(東洋ハイテック社製)およびロータリーバルブ(DSMR-200S-RPS、アイシン産機社製)等が挙げられる。さらに、主原料に含まれるゲル化剤の安息角が大きい場合、ゲル化剤が輸送配管内壁に付着して供給量が安定しなくなることが考えられる。このようなゲル化剤の輸送配管内壁への付着を防ぐため、輸送配管はバイブレータを備えることが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0068】
実施例においては、下記の表1〜4に示す組成を有するゼリー飲料A〜Hについて、本発明のゼリー飲料の製造方法におけるゲル化剤溶液調製工程、混合工程および殺菌工程のそれぞれの条件の検討と、従来の方法との比較による有効性の確認を行った。また、本発明の製造方法においてゲル化剤溶液調製工程、混合工程および殺菌工程をすべて組み合わせた場合に、ゼリー飲料A〜Hのそれぞれを長期間にわたり連続的に製造できるかどうかを確認した。
【0069】
ゼリー飲料AおよびBの組成を以下に示す。
【表1】
【0070】
ゼリー飲料CおよびDの組成を以下に示す。
【表2】
【0071】
ゼリー飲料EおよびFの組成を以下に示す。
【表3】
【0072】
ゼリー飲料GおよびHの組成を以下に示す。
【表4】
【0073】
実施例1:ゲル化剤溶液調製工程の条件検討
ゲル化剤溶液調製工程における真空吸引の条件を、上述の真空ミキサーHighest Vを用いて検討した。一方、比較として、従来のゼリー飲料の製造方法におけるゲル化剤溶液調製工程で一般的に用いられる真空ミキサー(SPM-500V、Scanima社製)にバタフライ弁を取り付けたものを用いて真空吸引を行った。
具体的には、まず、22種類のゲル化剤(グァーガムを主に含むゲル化剤(1種類)、脱アシル型ジェランガムを主に含むゲル化剤(2種類)、ローカストビンガムを主に含むゲル化剤(2種類)、キサンタンガムを主に含むゲル化剤(2種類)、寒天を主に含むゲル化剤(6種類)、カラギーナンを主に含むゲル化剤(2種類)、ゼラチンを主に含むゲル化剤(3種類)、加工でんぷんを主に含むゲル化剤(1種類)、グルコマンナンを主に含むゲル化剤(1種類)、グァーガム、ローカストビンガムおよび寒天を含むゲル化剤(1種類)、ならびに寒天、ローカストビンガムおよびグルコマンナンを含むゲル化剤(1種類))を温度85℃、圧力−0.025MPaで吸引した。
【0074】
この結果、上述した22種類のいずれのゲル化剤も、温度85℃および圧力−0.025MPaの過酷な条件で吸引および溶解することができた。また、このような条件下でゲル化剤を真空吸引した場合には、ゲル化剤が継粉(ダマ)となることがほとんどなかった。すなわち、本発明のゲル化剤溶液調製工程のように、ゲル化剤を高い陰圧により吸引し、高速で水に添加することにより、従来は人の手により穏やかに水に添加する必要があったゲル化剤を、機械的に高速で水に添加および溶解できることが示された。
【0075】
一方、比較として用いたScanima社製の真空ミキサーにより真空吸引を行った場合、いずれのゲル化剤の場合も即座にバルブの閉塞を引き起こしたため、ゲル化剤の添加を続行することができなかった。
【0076】
次に、ゼリー飲料A〜Hのゲル化剤溶液の中で、ゲル強度の低下(ゲルダウン)が最も生じやすいゼリー飲料Cの寒天を含むゲル化剤溶液について、ゲル化剤成分の4倍濃縮液(ゲル化剤濃縮液)を、Highest Vを用いて、温度95℃および圧力−0.015MPaで吸引し、50Hzでせん断した時のゲル強度の経時変化を測定した。結果を
図2Aに示す。さらに、ゲル化剤が溶解した後に95℃で保持した時のゲル強度の経時変化を測定した。結果を
図2Bに示す。ゲル強度は、いずれもレオナー(株式会社山電製)を用いて測定した。
【0077】
図2Aの結果から、ゲル化剤濃縮液を翼先端速度21.3m/秒でせん断した場合、1分後にはゲル強度が安定することが示された。さらに、翼先端速度21.3m/秒で15分せん断した場合でも、ゲル強度の低下(ゲルダウン)が見られないことが示された。
【0078】
図2Bの結果から、ゲル化剤が溶解した後に95℃で保持した場合、溶解後約2.5時間でゲル強度が低下し始めることが示された。なお、
図2Bのグラフは、ゲル化剤が溶解した時点ですでに15分以上95℃の条件下に置かれていたことから、2.5〜3時間程度はゲル強度が保持されると考えられる。すなわち、本発明のゲル化剤溶液調製工程により、上述した22種類のゲル化剤の中で最もゲルダウンを生じやすい寒天を主成分として含むゲル化剤であっても、長時間にわたりゲルダウンを生じないことが示された。また、上述した寒天を主成分として含むゲル化剤以外の15種類のゲル化剤についても同様に検討を行ったところ、いずれのゲル化剤についても、寒天を主成分として含むゲル化剤と同等またはそれ以上の時間、ゲルダウンを生じないことが示された。
【0079】
これらの結果から、ゲル化剤溶液調製工程において、ゲル化剤を、翼先端速度を調節してせん断した場合でも、ゼリー飲料を製造する上で十分なゲル強度が長時間にわたり維持されることが示された。
【0080】
実施例2:混合工程の条件検討
ゼリー飲料A〜Hの中で、製造工程においてゲル化剤溶液と副原料とが最も混合されにくいゼリー飲料D(粘度34mPa・s(85℃))について、ゲル化剤溶液と副原料との比例混合の条件を、ラインミキサーMK2000(モーター最大出力2.2kW、IKA社製)を用いて検討した。一方、比較として、従来のゼリー飲料の製造方法における混合工程で一般的に用いられるスタティックミキサー(MK2000/4、IKA(登録商標) Werke GmbH & Co.製)を用いて、ゼリー飲料Dについてゲル化剤溶液と副原料との比例混合を行った。
具体的には、ゼリー飲料Dのゲル化剤溶液と副原料とをラインミキサーMK2000に添加し、高速回転(50Hz、8460rpm、翼先端速度26.5m/秒)、中速回転(20Hz、3384rpm、翼先端速度10.6m/秒)および無回転のそれぞれで1時間撹拌して混合した。なお、ゲル化剤溶液と副原料との混合においてラインミキサーMK2000により与えられる単位体積当たりのエネルギーは、高速回転で6495kJ/m
3であり、中速回転で416kJ/m
3であった。結果を
図3に示す。
【0081】
図3の結果から、ラインミキサーMK2000の回転数(ゲル化剤溶液と副原料とを混合するために与えられたエネルギー量)に応じて、ゲル強度が低下することが示された。しかしながら、高速回転であっても無回転と比較してゲル強度の低下が13%程度にとどまった。一般的に、ゲル強度が9000N/m
2以上であれば、ゼリー飲料に必要なゲル強度であることから、より激しい高速回転の条件(50Hz、8460rpm、翼先端速度26.5m/秒)であっても本発明の混合工程に適用し得ることが示された。
【0082】
一方、比較として用いたスタティックミキサー(MK2000/4、IKA(登録商標) Werke GmbH & Co.製)によりゼリー飲料Dのゲル化剤溶液と副原料との比例混合を行った場合、ゲル化剤溶液と副原料とが十分に混合されず、それぞれが不均一に分布する状態となった。
【0083】
実施例1および2の結果から、本発明におけるゲル化剤溶液調製工程および混合工程のいずれも、人手をほとんど要することなく機械的に行うことが可能であることが示された。すなわち、本発明におけるゲル化剤溶液調製工程および混合工程が、長時間連続的なゼリー飲料の製造の達成に寄与し得ることが示唆された。
【0084】
実施例3:殺菌工程の条件検討
ゼリー飲料A〜Hの中でチューブ方式の加熱により最も焦げ付きやすいゼリー飲料Aの調合液(粘度6.4mPa・s(85℃))を用いて、本発明の殺菌工程で用いるジュール加熱方式による加熱殺菌の有効性を確認した。一方、比較として、ゼリー飲料Aの調合液を用いて、従来のゼリー飲料の製造方法における殺菌工程で一般的に用いられるチューブ方式の加熱殺菌を行った。各方式の加熱殺菌の条件を表5に示す。
具体的には、ジュール加熱方式による加熱殺菌を以下の方法により行った。
すなわち、試験例1として、50℃のゼリー飲料A調合液を90℃まで加熱(予熱)し、ジュール加熱式殺菌機(サノヴォ社製)の配管(配管内径4.5mm、配管長さ2m)内に、調合液が配管内で乱流体(レイノルズ数Re=5069)となるように、ポンプにより流速(流量)400L/時間で送り込み、配管内で99℃で25秒間ジュール加熱方式による加熱殺菌を行った。
また、試験例2として、配管内で110℃で5秒間加熱を行う以外は試験例1と同様の条件により加熱殺菌を行った。
一方、チューブ方式による加熱殺菌を以下の方法により行った。
すなわち、比較試験例1として、50℃のゼリー飲料Aの調合液を75℃まで加熱(予熱)し、チューブ式殺菌機(APV社製)の配管内にポンプにより流速(流量)400L/時間で送り込み、99℃で20秒間チューブ方式による加熱殺菌を行った。
また、比較試験例2として、予熱温度を90℃とし、配管内で110℃で5秒間加熱を行う以外は比較試験例1と同様の条件により加熱殺菌を行った。
各試験例および比較試験例における配管内の焦げ付きの状態を、ポンプ直後に設置した圧力計の圧力(背圧)の経時変化によって確認した。結果を
図4に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
図4の結果から、ジュール加熱方式の加熱殺菌を行った試験例1および2においては、加熱処理開始後5〜6分においてもまったく圧力(背圧)の上昇が観察されなかった。さらに加熱処理を継続したところ、ジュール加熱方式の加熱処理を行った試験番号3および4においては、加熱処理開始後6時間においても圧力(背圧)の上昇が観察されなかった。これは、ジュール加熱方式の加熱処理の過程で調合液の焦げ付きが見られなかったことを意味する。さらに、ゼリー飲料B〜Hの調合液についても、ジュール加熱方式の加熱殺菌を行った場合には、加熱処理開始後6時間においても圧力(背圧)の上昇が観察されなかった。これらの結果から、ゼリー飲料の調合液の殺菌において、配管内で調合液が乱流体および/または遷移流体となるように調節した条件下でジュール加熱方式の加熱処理を行うことにより、調合液の焦げを生じることなく、その結果、長時間にわたり連続的に安定的に調合液の殺菌を行うことが可能であることが示された。
【0087】
一方、チューブ方式の加熱殺菌を行った比較試験例1および2においては、加熱処理開始直後から著しい圧力(背圧)の上昇が観察された。これは、チューブ方式の加熱処理の過程で調合液が焦げ付き、配管内に堆積したことを意味する。さらに、ゼリー飲料B〜Hの調合液についても、チューブ方式これらの結果から、調合液の殺菌において、従来一般的なチューブ方式の加熱処理を行った場合、配管内に焦げ付いた調合液が堆積し、その結果、長時間にわたる連続的な調合液の殺菌を行うことができないことが示された。
【0088】
実施例4:ゼリー飲料の製造
図1に示すような装置を用いて、実施例1〜3に示した本発明の各工程を組み合わせたゼリー飲料の製造方法により8種類のゼリー飲料A〜Hの製造を行った。一方、比較として、従来のゼリー飲料の製造方法により、同じくゼリー飲料A〜Hの製造を行った。
その結果、本発明の各工程を組み合わせた製造方法によりゼリー飲料A〜Hを製造した場合には、いずれのゼリー飲料についても24時間以上の長時間にわたり連続的かつ安定的に製造することが可能であった。一方、従来の製造方法でゼリー飲料A〜Hを製造した場合には、いずれのゼリー飲料についても少なくとも1つの工程において問題が生じ、その結果、最大でも8時間程度しか連続的に製造をすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、上述したゲル化剤溶液調製工程、混合工程および殺菌工程を組み合わせることにより、従来は、短時間(8時間程度)かつ間欠的にしか行うことができなかったゼリー飲料の製造を、長時間(24時間以上)連続的に行うことが可能となり、拡大が見込まれるゼリー飲料の需要に応えることが可能となる。