特許第6983831号(P6983831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983831弛み評価方法、弛み評価装置、及び弛み評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983831
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】弛み評価方法、弛み評価装置、及び弛み評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20211206BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20211206BHJP
【FI】
   A61B5/00 M
   G06T7/00 660A
   G06T7/00 300E
   A61B5/00ZDM
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-58309(P2019-58309)
(22)【出願日】2019年3月26日
(65)【公開番号】特開2020-156690(P2020-156690A)
(43)【公開日】2020年10月1日
【審査請求日】2021年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山口 義隆
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−148880(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162050(WO,A1)
【文献】 特開2011−150595(JP,A)
【文献】 特開2010−022547(JP,A)
【文献】 特開2016−077755(JP,A)
【文献】 特許第6473959(JP,B1)
【文献】 特開2014−004105(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0059806(US,A1)
【文献】 国際公開第2018/052755(WO,A1)
【文献】 米国特許第5867588(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象者の顔の第1の三次元顔形状データを取得し、
前記評価対象者の顔に基づいて、弛みのない第1の三次元理想顔形状データを生成し、
前記第1の三次元顔形状データと前記第1の三次元理想顔形状データとの差分を前記評価対象者の顔の弛みを評価する第1の特徴量として算出し、
予め作成された顔の弛みを評価するモデルと前記第1の特徴量に基づいて、弛み指標値を算出し、
前記弛み指標値に基づいて、前記評価対象者の顔の弛みを評価する方法であって、
前記モデルは、複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データ、前記複数の被験者それぞれの顔に基づいて作成された、複数の弛みのない第2の三次元理想顔形状データ、及び前記複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値に基づいて作成されたものである
弛み評価方法。
【請求項2】
前記モデルは、
前記被験者それぞれの前記第2の三次元顔形状データと前記第2の三次元理想顔形状データとの差分を、前記複数の被験者それぞれの顔の弛みを評価する第2の特徴量として算出し、
前記被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値及び前記第2の特徴量を回帰分析して導かれたものである請求項1に記載の弛み評価方法。
【請求項3】
前記第1の特徴量及び前記第2の特徴量は、差分体積及び差分表面積の少なくとも1つである請求項2に記載の弛み評価方法。
【請求項4】
前記第1の特徴量及び前記第2の特徴量は、
弛みの出やすい顔の特徴点を基準にして、前記評価対象者及び前記複数の被験者の顔に複数の領域を設定し、前記複数の領域の少なくとも1つの領域から算出されたものである請求項2または3に記載の弛み評価方法。
【請求項5】
前記顔の特徴点とは、目、頬、頬下、鼻尻、口角及び顎の少なくとも1つである請求項4に記載の弛み評価方法。
【請求項6】
評価対象者の顔の第1の三次元顔形状データを取得する顔形状データ取得手段と、
前記評価対象者の顔に基づいて、弛みのない第1の三次元理想顔形状データを作成する理想顔形状生成手段と、
前記第1の三次元顔形状データと前記第1の三次元理想顔形状データとの差分を前記評価対象者の顔の弛みを評価する第1の特徴量として算出する特徴量算出手段と、
予め作成された顔の弛みを評価するモデルと前記第1の特徴量に基づいて、弛み指標値を算出する弛み指標値算出手段と、
前記弛み指標値に基づいて、評価対象者の顔の弛みを評価する弛み評価手段と、
を有し、
前記モデルは、複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データ、前記複数の被験者それぞれの顔に基づいて作成された、複数の弛みのない第2の三次元理想顔形状データ、及び前記複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値に基づいて作成されたものである、
弛み評価装置。
【請求項7】
前記弛み評価装置は、さらに、前記モデルを生成するモデル生成手段を有し、
前記顔形状データ取得手段は、前記複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データを取得し、
前記理想顔形状生成手段は、前記複数の被験者それぞれの顔に基づいて作成された第2の三次元理想顔形状データを生成し、
前記特徴量算出手段は、前記第2の三次元顔形状データと前記第2の三次元理想顔形状データとの差分を評価する第2の特徴量として算出し、
前記モデル生成手段は、前記複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値及び前記第2の特徴量を回帰分析して前記モデルを生成する、
請求項6に記載の弛み評価装置。
【請求項8】
前記第1の特徴量及び前記第2の特徴量は、差分体積及び差分表面積の少なくとも1つである請求項7に記載の弛み評価装置。
【請求項9】
前記特徴量算出手段は、弛みの出やすい顔の特徴点を基準にして、前記評価対象者及び前記複数の被験者の顔に複数の領域を設定し、前記複数の領域の少なくとも1つの領域から算出されたものである請求項7または8に記載の弛み評価装置。
【請求項10】
前記顔の特徴点とは、目、頬、頬下、鼻尻、口角及び顎の少なくとも1つである請求項9に記載の弛み評価装置。
【請求項11】
評価対象者の顔の第1の三次元顔形状データを取得するステップと、
前記評価対象者の顔に基づいて、弛みのない第1の三次元理想顔形状データを生成するステップと、
前記第1の三次元顔形状データと前記第1の三次元理想顔形状データとの差分を前記評価対象者の顔の弛みを評価する第1の特徴量として算出するステップと、
予め作成された顔の弛みを評価するモデルと前記第1の特徴量に基づいて、弛み指標値を算出するステップと、
前記弛み指標値に基づいて、前記評価対象者の顔の弛みを評価するステップ、を有し、
前記モデルは、複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データ、前記被験者の顔それぞれに基づいて作成された、複数の弛みのない第2の三次元理想顔形状データ、及び前記複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値に基づいて作成されたものである
コンピュータに実行させるための弛み評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弛み評価方法、弛み評価装置、及び弛み評価プログラムに係り、特に、評価対象者の三次元顔形状データに基づいて、顔肌の弛みを評価する弛み評価方法、弛み評価装置、及び弛み評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
肌の状態の評価、及び加齢による皮膚の変化を把握したり、化粧品、及びスキンケア製品、スキンケアの効果を調査し、化粧品等の研究または商品開発に応用したりするためには、被験者の肌質感の評価が必要とされる。
このような肌質感の評価方法として、被験者の撮影画像(二次元データ)に基づく方法が多く提案されているが、肌の弛み、特に、顔肌の弛みに係る評価については、弛みが顔の輪郭、目、頬、鼻尻といった三次元形状に寄与するところが大きいため、被験者の顔の撮影画像の明暗及び色に基づく評価の精度には不十分なところがあった。
【0003】
そこで、近年、より高精度な弛みの評価を行うため、被験者の顔の三次元形状データに基づいて、弛みの評価を行う方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、多変量解析を用いて、多数の被験者の顔表面の三次元座標データから抽出し、顔の造作の印象傾向と高い相関のある高次の基底ベクトルを取得し、その重み係数を相違させた2つ以上の頭部画像を対比可能に配置した顔印象判定チャート、及び顔印象の傾向と、重み係数の次数との関係を示す印象対応チャートを作成するとともに、2つの頭部画像の差異にあたる特徴量を算出し、その特徴量が被験者の顔に発現している度合いを判断指標として、被験者の顔形状(ほうれい線及び頬の弛み等)を評価する方法が示されている。
【0004】
特許文献2には、評価対象者の顔表面の三次元形状データと、複数の評価対象者の顔表面に基づいて生成された三次元平均顔形状データとの差分に基づいて、評価対象者の顔形状、又は平均顔形状にカラー領域を表示して、例えば、化粧品等の使用前後の評価対象者の顔の引き締まり又は膨張変化を評価したり、その平均的な効果がどの部分にどの程度発生したのかを評価したりすることができることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5905702号公報
【特許文献2】特開2011−150595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、多変量解析を行い、顔印象判定チャート、印象対応チャートの作成、及び特徴量の算出を行う必要があり、非常に手間及び時間がかかるといった問題がある。
また、特許文献2の方法は、肌の形状変化をカラー表示することで、どの部分にどの程度弛みが存在するのかを把握することはできるものの、客観的にどの程度弛みが存在するのかわからないため、高精度に弛みを評価することができない。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を解消するために、肌の弛みを容易、客観的、且つ、高精度に評価することができる弛み評価方法、弛み評価装置、及び弛み評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る弛み評価方法は、評価対象者の顔の第1の三次元顔形状データを取得し、評価対象者の顔に基づいて、弛みのない第1の三次元理想顔形状データを生成し、第1の三次元顔形状データと第1の三次元理想顔形状データとの差分を評価対象者の顔の弛みを評価する第1の特徴量として算出し、予め作成された顔の弛みを評価するモデルと第1の特徴量に基づいて、弛み指標値を算出し、弛み指標値に基づいて、評価対象者の顔の弛みを評価する方法であって、モデルは、複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データ、複数の被験者それぞれの顔に基づいて作成された、複数の弛みのない第2の三次元理想顔形状データ、及び複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値に基づいて作成されたものである
【0009】
ここで、モデルは、被験者それぞれの第2の三次元顔形状データと第2の三次元理想顔形状データとの差分を、複数の被験者それぞれの顔の弛みを評価する第2の特徴量として算出し、被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値及び第2の特徴量を回帰分析して導かれたものであることが好ましい。
第1の特徴量及び第2の特徴量は、差分体積及び差分表面積の少なくとも1つであることが好ましい。
第1の特徴量及び第2の特徴量は、弛みの出やすい顔の特徴点を基準にして、評価対象者及び複数の被験者の顔に複数の領域を設定し、複数の領域の少なくとも1つの領域から算出されたものであることが好ましい。
顔の特徴点とは、目、頬、頬下、鼻尻、口角及び顎の少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
この発明に係る弛み評価装置は、評価対象者の顔の第1の三次元顔形状データを取得する顔形状データ取得手段と、前記評価対象者の顔に基づいて、弛みのない第1の三次元理想顔形状データを作成する理想顔形状生成手段と、前記第1の三次元顔形状データと前記第1の三次元理想顔形状データとの差分を前記評価対象者の顔の弛みを評価する第1の特徴量として算出する特徴量算出手段と、予め作成された顔の弛みを評価するモデルと前記第1の特徴量に基づいて、弛み指標値を算出する弛み指標値算出手段と、前記弛み指標値に基づいて、評価対象者の顔の弛みを評価する弛み評価手段と、を有し、前記モデルは、複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データ、前記複数の被験者それぞれの顔に基づいて作成された、複数の弛みのない第2の三次元理想顔形状データ、及び前記複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値に基づいて作成されたものである。
【0011】
弛み評価装置は、さらに、さらに、モデルを生成するモデル生成手段を有し、顔形状データ取得手段は、複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データを取得し、理想顔形状生成手段は、複数の被験者それぞれの顔に基づいて作成された第2の三次元理想顔形状データを生成し、特徴量算出手段は、第2の三次元顔形状データと第2の三次元理想顔形状データとの差分を評価する第2の特徴量として算出し、モデル生成手段は、複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値及び第2の特徴量を回帰分析してモデルを生成するものであることが好ましい。
第1の特徴量及び第2の特徴量は、差分体積及び差分表面積の少なくとも1つであることが好ましい。
特徴量算出手段は、弛みの出やすい顔の特徴点を基準にして、評価対象者及び複数の被験者の顔に複数の領域を設定し、複数の領域の少なくとも1つの領域から算出されたものであることが好ましい。
顔の特徴点とは、目、頬、頬下、鼻尻、口角及び顎の少なくとも1つであることが好ましい。
【0012】
この発明のコンピュータに実行させるための弛み評価プログラムは、評価対象者の顔の第1の三次元顔形状データを取得するステップと、評価対象者の顔に基づいて、弛みのない第1の三次元理想顔形状データを生成するステップと、第1の三次元顔形状データと第1の三次元理想顔形状データとの差分を評価対象者の顔の弛みを評価する第1の特徴量として算出するステップと、予め作成された顔の弛みを評価するモデルと第1の特徴量に基づいて、弛み指標値を算出するステップと、弛み指標値に基づいて、評価対象者の顔の弛みを評価するステップ、を有し、モデルは、複数の被験者それぞれの顔から取得した第2の三次元顔形状データ、被験者の顔それぞれに基づいて作成された、複数の弛みのない第2の三次元理想顔形状データ、及び複数の被験者それぞれの顔の弛みの目視評価値に基づいて作成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、肌の弛みを容易に、客観的に、且つ高精度に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1に係る肌の弛み評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】被験者の顔の特徴点を示す図である。
図3】被験者の顔に設定された評価領域を示す図である。
図4】実施の形態1に係る肌の弛み評価方法を示す図である。
図5】弛み指標値と弛み印象値(目視評価値)との相関を示す図である。
図6】差分体積の総和と弛み印象値(目視評価値)との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る肌の弛み評価装置の構成を示す。図1に示す肌の弛み評価装置は、被験者の顔表面に基づいて取得した三次元顔形状データを用いて、被験者の顔肌の弛みを評価するものである。この弛み評価装置は、被験者の顔から三次元顔形状データを取得する三次元顔形状データ取得部2には、三次元理想顔データ形状生成部4、特徴量算出部6、弛み指標値算出部8、弛み評価部10、表示部12、制御部14、操作部16、データベース18、及びモデル式生成部20を有する。ここで、三次元顔形状データ取得部2には、三次元理想顔データ形状生成部4、特徴量算出部6、弛み指標値算出部8、弛み評価部10、及び表示部12が順次接続されている。また、三次元理想顔形状データ形状生成部4、特徴量算出部6、弛み指標値算出部8、弛み評価部10、及び表示部12は、制御部14に接続され、この制御部14には、操作部16が接続されている。また、弛み指標値算出部8及び弛み評価部10にはデータベース18が接続され、このデータベース18には、モデル式生成部20が接続されている。
例えば、
【0016】
三次元顔形状データ取得部2は、例えば、被験者の顔肌を測定する三次元形状測定装置(図示せず)を備えており、この三次元形状測定装置を用いて被験者(評価対象者)の顔を測定し、三次元形状データを取得する。三次元形状測定装置としては、被験者の顔を測定して三次元形状データを取得できれば、特に制限的ではなく、どのような三次元形状測定装置でもよく、公知の三次元形状測定装置であっても良いのは勿論である。
三次元形状測定装置による三次元顔形状データの取得方法としては、特に限定されず、例えば、格子パターン投影方式による撮影手法、レーザーによる光切断方式による撮影手法、及びステレオ方式による撮影手法等の従来ある撮影手法により得られる三次元画像を用いることができる。
また、三次元顔形状データは、三次元形状測定装置を用いて取得する方法に限定されず、被験者の顔をデジタルカメラ、及びCCD(charge coupled device)カメラなどを用いて撮影した1枚の画像、又は複数の撮影画像から従来の手法により三次元顔形状を構築したデータを使用してもよい。
【0017】
1枚の画像から三次元顔形状を構築する従来の方法としては、例えば、
Aaron S. Jackson, Adrian Bulat, Vasileios Argyriou, Georgios Tzimiropoulos, “Large Pose 3D Face Reconstruction from a Single Image via Direct Volumetric CNN Regression”, ICCV 2017
が挙げられる。
また、複数の画像から三次元顔形状を構築する従来の方法としては、例えば、
[1] M.I.A. Lourakis and A.A. Argyros (2009). "SBA: A Software Package for Generic Sparse Bundle Adjustment".ACM Transactions on Mathematical Software (ACM) 36 (1): 1-30.
[2] R. Hartley, A. Zisserman, "Multiple View Geometry in Computer Vision", Cambridge University Press, 2003.
[3] B. Triggs; P. McLauchlan; R. Hartley; A. Fitzgibbon (1999). "Bundle Adjustment: A Modern Synthesis".Proceedings of the International Workshop on Vision Algorithms.Springer-Verlag. pp. 298-372.
が挙げられる。
【0018】
三次元理想顔形状データ生成部4は、三次元顔形状データ取得部2から入力された三次元顔形状データに基づいて、被験者の顔に弛みのない三次元理想顔形状データを生成する。ここで、三次元理想顔形状とは、被験者の顔の骨格に沿う顔形状である。三次元理想顔形状の作成方法については、例えば、ZBrush、Maya、3d Maxのような三次元形状編集ソフトウェアを用いて、手動で、被験者の三次元顔形状から、被験者の弛みのない理想的な顔形状を作成することができる。手動で理想的な顔形状を作成する際、作成者は、被験者本人の若齢時の撮影画像を参考にしたり、被検者と同姓の子供の撮影画像を参考に理想顔を作成したり、各年代別の平均顔を参考にして作成することができる。
【0019】
また、公知の機械学習装置を用いて、弛みのない理想的な顔形状の作成方法を学習させ、自動的に、被験者の三次元顔形状から理想的な顔形状を作成させることもできる。例えば、特許第5950486号公報に記載のシステムを用いることができる。
また、過去に、顔表面に弛みがなく、はりがある若齢時の被験者の顔から取得した三次元顔形状を三次元理想顔形状とすることもできる。例えば、被験者が40代であれば、被験者が20代のときに取得した複数の三次元顔形状の平均顔を理想顔とすることもできる。
また、例えば、被験者の同性の子供の顔形状を取得することが可能な場合は、その子供の顔形状を被験者の理想顔とすることもできる。
また、過去に、被験者の顔表面に弛みがなく、はりがある若齢時の顔を撮影した撮影画像を三次元顔形状データ取得部2の三次元形状測定装置へ入力して構築した三次元顔形状を三次元理想顔形状とすることもできる。例えば、被験者が40代であれば、被験者が20代のときに撮影した複数の画像の平均顔を理想顔とすることもできる。
【0020】
特徴量算出手段6は、三次元顔形状データ取得部2から入力される三次元顔形状データと、三次元理想顔形状データ取得部4から入力される三次元理想顔形状データとの差分から、弛みを反映する特徴量を算出するものである。特徴量算出手段6は、三次元顔形状データ取得部2及び三次元理想顔形状データ取得部4に接続される解析範囲設定部22と、解析範囲設定部22に接続される差分体積算出部24及び差分表面積算出部26とを有する。
【0021】
解析範囲設定部22は、弛みによる変化が起こりにくい顔の目、鼻及び額を基準に、三次元顔形状データと三次元理想顔形状データの位置を合わせてから、弛みが生じやすい顔の特徴点、両目を結ぶラインL1、口角を結ぶラインL2、及び鼻筋から顎の先端かけてのラインL3に基づいて、弛みの発生、又は弛みの改善に深く関与する表情筋が存在する部分を解析領域R1〜R8として設定する。
ここで、顔の特徴点としては、図2に示すように、目(1及び2)、頬(3及び4)、鼻尻(5及び6)頬下(7及び8)、口角(9及び10)、及び顎(11)が挙げられる。また、解析領域R1〜R8としては、図3に示すように、左右目の下の眼輪筋に該当する領域(R1及びR6)、左右鼻横の大小頬骨筋に該当する領域(R2及びR7)、左右頬輪郭に存在する咬筋に該当する領域(R3及びR8)、左右口角付近に存在する頬筋及び笑筋に該当する領域(R4及びR9)、顎輪郭に存在するオトガイ横筋に該当する領域(R5及びR10)が設定される。
【0022】
差分体積算出部24は、三次元顔形状データ及び三次元理想顔形状データから、解析範囲設定部22で設定された解析領域R1〜R8ごとの体積を算出し、両データの差分体積を算出する。具体的には、顔の表面形状における、三次元顔形状データの設定領域R1における体積と、三次元理想顔形状データの設定領域R1における体積との差分、三次元顔形状データの設定領域R2における体積と、三次元理想顔形状データの設定領域R2における体積との差分をそれぞれ算出する。同様に、設定領域R3〜R8の差分体積もそれぞれ算出する。また、さらに、左右の各領域を統合し、目の下の領域をRS1(R1+R6)、鼻横の領域をRS2(R2+R7)、頬輪郭の領域をRS3(R3+R8)、口角の領域をRS4(R4+R9)、顎輪郭の領域をRS5(R5+R10)として領域を設定し、差分体積をそれぞれ算出する。設定解析領域R1〜R8、及びRS1〜RS5ごとに算出された差分体積は、弛み指標値算出部8へ出力される。
【0023】
差分表面積算出部26は、三次元顔形状データ、及び三次元理想顔形状データから、顔の表面形状データをそれぞれ取得し、解析範囲設定部22で設定された解析領域R1〜R8ごとの表面積を算出し、両データの差分表面積を算出する。具体的には、顔の表面形状における、三次元顔形状データの設定領域R1における表面積と、三次元理想顔形状データの設定領域R1における表面積との差分、三次元顔形状データの設定領域R2における表面積と、三次元理想顔形状データの設定領域R2における表面積との差分をそれぞれ算出する。同様に、設定領域R3〜R8の差分表面積もそれぞれ算出する。設定解析領域R1〜R8ごとに算出された差分表面積は、弛み指標値算出部8へ出力される。
【0024】
弛み指標値算出部8は、弛み評価に用いる1又は2以上の解析領域を選択し、差分体積算出部24から入力された各解析領域における差分体積、及び差分表面積算出部26から入力された各解析領域における差分表面積の少なくとも1つを、後述するモデル式(線形モデル)に代入して、弛み指標値を算出する。算出された弛み指標値、弛み評価部10に入力される。
弛み評価に用いる1又は2以上の解析領域は、顔の表情、性別、国別、地域別、皮膚への化粧及び薬剤の塗布状況に応じて選択することができる。
その中でも、精度良く弛みを評価できるため、解析領域RS1、RS2、RS3、及びRS4を選択することが好ましい。理由は、弛みの印象に大きく寄与する筋肉が存在する領域であるためである。
弛み評価部10は、データベース18から読み出された目視評価値と弛み指標値との関係と、弛み指標値算出部8から入力された弛み指標値とを比較することにより、評価対象者の顔肌の弛みを評価し、その結果を表示部12へ出力する。
【0025】
表示部12は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ装置を含んでおり、弛み評価部10で評価された弛みの評価結果を表示する。なお、表示部12は、評価結果とともに、三次元顔形状、及び三次元理想顔形状を表示することもできる。
操作部16は、操作者が情報の入力操作を行うためのもので、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
制御部14は、操作者により操作部16から入力された各種の指令信号等に基づいて、肌の装置内の各部の制御を行うものである。
【0026】
なお、三次元顔形状データ取得部2、三次元理想顔形状データ生成部4、特徴量算出部6、弛み指標値算出部8、弛み評価部10、表示部12、及び制御部14は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。また、CPUにバスなどの信号線を介してメモリを接続することができ、例えば、三次元顔形状データ取得部2で取得された三次元顔形状、三次元理想顔形状データ取得部4で取得された三次元理想顔形状、特徴量算出部6の解析範囲設定部22で設定された解析範囲をともに表示した顔形状データ、及び弛み評価部10で算出された弛みの評価結果などを(図示しない)メモリにそれぞれ格納し、このメモリに格納された画像および弛みの評価結果を制御部14の制御の下で表示部12に表示させることができる。
【0027】
データベース18は、モデル式生成部20で生成される弛み指標値を算出するための線形モデル式を格納する。
ここで、先述した線形モデル式の作成方法を説明する。
まず、三次元顔形状データ取得部2は、無作為に選ばれた複数の被験者の顔それぞれから、三次元顔形状データを取得する。次いで、三次元理想顔形状データ生成部4へ入力される。三次元理想顔形状データ生成部4では、各被験者に対応する三次元顔形状データそれぞれに基づいて、各被験者の弛みのない三次元理想顔形状データが生成される。各被験者に対応する三次元理想顔形状データ、及び三次元理想顔形状データはセットで解析範囲設定部22に入力され、各被験者の顔に基づいて、弛みを評価する複数の解析領域R1〜R8が設定され、差分体積算出部24、及び差分表面積算出26において、各被験者に対応する三次元理想顔形状データと三次元理想顔形状データとの差分が弛み特徴量として算出され、弛み指標値算出部8に入力される。
【0028】
弛み指標値算出部8は、弛み評価に用いる1又は2以上の解析領域を選択し、差分体積算出部24から入力された各解析領域における差分体積、及び差分表面積算出部26から入力された各解析領域における差分表面積の少なくとも1つを選択する。選択された弛み特徴量は、解析領域とともに、データベース18に格納される。また、(図示しない)入力部を使って、複数のパネラーが各被験者の顔の弛みを評価した目視評価値も格納される。
【0029】
モデル式生成部20は、データベース18から、選択された解析領域、弛み特徴量(差分体積及び差分表面積)、及び目視評価値を取得し、選択された解析領域に係る弛み特徴量及び目視評価値を重回帰分析することにより、弛み指標値を算出するためのモデル式を生成する。
なお、上述のモデル式の生成方法以外に、サポートベクター回帰を用いてモデル式を生成してもよいし、その他の公知の機械学習の手法を用いてもよい。
【0030】
データベース18は、生成されたモデル式とともに、モデル式を生成する際に用いられた、三次元顔形状データ、三次元理想顔形状データ、選択された解析領域、差分体積、差分表面積、目視評価値等を格納する。
なお、予め肌の弛みの目視評価を実施して算出された目視評価値と弛み指標値との関係を格納したデータベースを弛み指標値算出部8及び弛み評価部10に接続することもできる。
弛み評価部10は、データベースから読み出された目視評価値と弛み指標値との関係と、弛み指標値算出部8から入力された弛み指標値とを比較することにより、評価対象者の顔肌の弛みを評価することができる。
【0031】
次に、この実施の形態1に係る動作について説明する。
図4は、実施の形態1に係る肌の弛み評価装置により実行される肌の弛み評価方法のフローチャートを示す図である。
まず、3D(三次元)顔形状データ取得部2は、評価対象者の顔の三次元顔形状データを取得する(ステップS1)。三次元顔形状データは、3D(三次元)理想顔形状データ生成部4に出力され、評価対象者の三次元顔形状に基づいて、三次元形状編集ソフトを用いて、弛みのない理想的な三次元顔形状が手動で生成される。三次元顔形状データ及び三次元理想顔形状データは、特徴量算出部6の解析範囲設定部22に出力される。
【0032】
解析範囲設定部22は、弛みによる変化が起こりにくい顔の鼻及び額を基準に、三次元顔形状データと三次元理想顔形状データの位置を合わせ、弛みが生じやすい顔の特徴点に基づいて、弛みを評価する複数の解析領域R1〜R8を設定する。
複数の解析領域が設定された三次元顔形状データ及び三次元理想顔形状データは、それぞれ、差分体積算出部24及び差分表面積算出部26に出力され、解析範囲設定部22で設定された解析領域ごとの体積及び表面積の少なくとも1つが算出され、弛み特徴量として、両データの差分体積及び差分表面積の少なくとも1つが算出される(ステップS3)。
【0033】
算出がされた差分体積及び差分表面積の少なくとも1つが弛み特徴量として弛み指標値算出部8に出力される。弛み指標値算出部8は、少なくとも1つの解析領域を選択し、選択された領域に係る複数の弛み特徴量を、データベース18に格納された弛み指標値を算出する線形モデル式に代入し、弛み指標値を算出する(ステップS4)。算出された弛み指標値は、弛み評価部10に出力され、弛みの有無、弛みの程度等が評価される(ステップS5)。
【0034】
弛み評価装置を用いて、評価対象者の肌の弛みを評価した実施例を示す。
実施例1
(1)弛み指標値算出のモデル式の作成
まず、弛み指標値を算出するためのモデル式を作成するために、無作為に選びだした37人の被験者それぞれの三次元顔形状データ、及び三次元理想顔形状データを取得した。三次元理想顔形状データは、37人の被験者の三次元顔形状データを基に手動で作成した。
ついで、本願の実施の形態1の肌の弛み評価装置を用いて、取得した、三次元顔形状データ及び三次元理想顔形状データの顔形状を位置合わせした後、図3に示すように、顔形状に複数の解析領域を設定した。また、複数の解析領域に基づく差分体積を算出し、その中から、解析領域RS1、RS2、RS3、及びRS4における差分体積を弛み指標値として選択した。また、下記5段階の弛みグレード分類による各被験者の顔肌(三次元顔形状)の目視評価を、パネラー7人により行った。各被験者の顔肌の目視評価値(弛み印象値)は、7人のパネラーによる目視評価値の平均値とした。
【0035】
<5段階の弛みグレード分類>
5 たるんでいない
4 わずかにたるんでいる
3 ややたるんでいる
2 たるんでいる
1 とてもたるんでいる
【0036】
上述の目視評価値を行った被験者37人の被験者から取得された複数の弛み特徴量(解析領域RS1、RS2、RS3、及びRS4における弛み特徴量(差分体積)をそれぞれB、C、D、及びEとする)と目視評価値(弛み印象値)から、重回帰分析により、複数の弛み特徴量の線形和からなる弛み指標モデル(線形モデル)を作成した。具体的には、解析領域RS1、RS2、RS3、及びRS4における弛み特徴量(差分体積)をB、C、D、及びEとするとき、弛み指標=A−0.1248×B−0.0439×C−0.0208×D−0.4537×Eで示された。なお、Aは定数である。
【0037】
(2)モデル式を用いた評価対象者の顔肌の弛み評価
評価対象者37人それぞれから、モデル式作成時と同様に、三次元顔形状データ、及び三次元理想顔形状データを取得し、解析領域RS1、RS2、RS3、及びRS4における差分体積(弛み指標値)を算出した。
また、さらに、評価対象者37人の三次元顔形状データそれぞれの目視評価を先述した方法と同様の方法で行い、弛み印象値をもとめた。
図5は、弛み指標値と弛み印象値の相関関係を示すグラフ(y=0.788+0.775)を示す。弛み指標の値と目視評価値との間の相関を求めた結果、相関係数Rは、0.788であった。
【0038】
一方、図6は、先述したモデル式を使用せず、解析領域RS1、RS2、RS3、及びRS4における差分体積の和と、弛み印象値との相関関係を示すグラフ(y=−32.22x+196.9)を示す。差分体積の総和と目視評価値との間の相関を求めた結果、相関係数Rは、0.598であった。
これより、モデル式を用いて算出された弛み指標値と目視評価値(弛み印象値)との相関関係の方は、高い相関が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0039】
2 3D(三次元)顔形状データ取得部、4 3D(三次元)理想顔形状データ生成部、6 特徴量算出部、8 弛み指標値算出部、10 弛み評価部、12 表示部、14 制御部、16 操作部、18 データベース、20 モデル式生成部、22 解析範囲設定部、 24 差分体積算出部、 26 差分表面積算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6