特許第6983895号(P6983895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983895前駆体フィルム、両面導電性フィルムの製造方法、タッチパネルセンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983895
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】前駆体フィルム、両面導電性フィルムの製造方法、タッチパネルセンサー
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20211206BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20211206BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20211206BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20211206BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B32B27/32 Z
   B32B27/00 Z
   B32B27/30 A
   B32B27/36
   B32B27/36 102
   G06F3/041 660
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-539629(P2019-539629)
(86)(22)【出願日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2018032183
(87)【国際公開番号】WO2019044998
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-168542(P2017-168542)
(32)【優先日】2017年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松岡 知佳
(72)【発明者】
【氏名】塚原 次郎
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−280905(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/126426(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/051971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 −43/00
C23C18/00 −20/08
C25D 5/00 − 7/12
G06F 3/03
3/041− 3/047
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線によるマスク露光工程と、現像工程と、めっき工程とによって両面導電性フィルムを得るための前駆体フィルムであって、
前記前駆体フィルムは、基板と、前記基板の両面に配置された被めっき層前駆体層と、前記被めっき層前駆体層上に配置された保護フィルムとを有し、
前記基板は、芳香環を含む樹脂を含み、
前記保護フィルムは、ポリオレフィンを含み、
前記保護フィルムの厚みは、3〜25μmであ
前記樹脂が、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリカーボネート系樹脂、又は、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂である、前駆体フィルム。
【請求項2】
前記被めっき層前駆体層が、カルボン酸基を有するポリマーと、多官能アクリルアミドモノマー又は多官能メタクリルアミドモノマーとを含む、請求項1に記載の前駆体フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の前駆体フィルム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の前駆体フィルムを用いた両面導電性フィルムの製造方法であり、
マスクを密着させた前記前駆体フィルムに対して紫外線を照射して、前記被めっき層前駆体層を露光する工程と、
露光された前記被めっき層前駆体層から保護フィルムを除去する工程と、
露光された前記被めっき層前駆体層を現像する現像工程と、
現像工程により形成されたパターン状の被めっき層にめっき処理を施すめっき工程と、をこの順に有する、両面導電性フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法で製造された両面導電性フィルムを含む、タッチパネルセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と基板の両面に配置された導電層とを有する両面導電性フィルムを製造するための前駆体フィルムに関する。また、本発明は、上記前駆体フィルムを用いた両面導電性フィルムの製造方法に関する。また、本発明は、タッチパネルセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電層(導電性細線)が形成された導電性フィルムは、種々の用途に使用されている。近年、携帯電話及び携帯ゲーム機器等へのタッチパネルの搭載に伴い、多点検出が可能な静電容量方式のタッチパネルセンサー用の導電性フィルムの需要が急速に拡大している。
【0003】
このような導電層の形成には、例えば、被めっき層を用いた方法が提案されている。
特許文献1には、基板上にフッ素系の界面活性剤を含む被めっき層前駆体層を設置し、マスクを用いてパターン状に露光してパターン状の被めっき層を形成した後、被めっき層上にめっき処理を施す方法が提案されている。この方法によれば、露光時にマスクを被めっき層前駆体層に密着させてもマスクが汚れないため、高精細なパターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2016/158669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチパネルの応用分野では、より精度の高い動作が求められており、そのためには1枚のフィルムの両面に導電層を有する両面導電性フィルムが必要となる。特許文献1のようにめっき法を応用して両面導電性フィルムを作ろうとした場合、基板の両面に被めっき層前駆体層を有する前駆体フィルムが必要となるが、この前駆体フィルムに適した高精細な露光方法が求められることになる。
【0006】
基板の両面に被めっき層前駆体層を有する前駆体フィルムにおいては、ロール・トゥ・ロール製造を考慮した場合、搬送ロールの汚れを防止しながらマスクの汚れも防止することが求められる。基板の両面に被めっき層前駆体層を有する前駆体フィルムは、未硬化の有機層を最上層とする構成であるがゆえに、たとえフッ素系の界面活性剤を含んでいたとしても、搬送ロールとマスクの汚れを同時に防止することは困難であると考えられる。
【0007】
そこで、今般、本発明者は、基板の両面に配置された被めっき層前駆体層の表面に保護フィルムを配置した前駆体フィルムを作製してその性能について検討を行った。なお、この保護フィルムは、所定の工程後に剥離可能である必要がある。
検討の結果、前駆体フィルムの構成によっては、紫外線露光によってパターン状の被めっき層を形成する工程、現像工程、及びめっき工程を経て得られる両面導電性フィルムの導電性細線の線幅が太りすぎる場合があることを知見した。さらに、基板の両面に配置された被めっき層前駆体層のうちの一方を紫外線露光によってパターン状の被めっき層とする際、他方の被めっき層前駆体層に上記パターンが裏写りしてしまう場合があることも知見した。
【0008】
そこで、本発明は、導電性細線の線幅が小さい両面導電性フィルムを形成でき、且つ基板の両面に配置された被めっき層前駆体層のうちの一方を紫外線露光によってパターン状の被めっき層とする際に、他方の被めっき層前駆体層への上記パターンの裏写りを抑制できる前駆体フィルムの提供を課題とする。
また、本発明は、上記前駆体フィルムを利用した両面導電性フィルムの製造方法の提供を課題とする。
また、本発明は、上記製造方法により得られるタッチパネルセンサーの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らの検討の結果、下記所定の前駆体フィルムによって、上記解題を解決できることを見出した。
【0010】
〔1〕 紫外線によるマスク露光工程と、現像工程と、めっき工程とによって両面導電性フィルムを得るための前駆体フィルムであって、
上記前駆体フィルムは、基板と、上記基板の両面に配置された被めっき層前駆体層と、上記被めっき層前駆体層上に配置された保護フィルムとを有し、
上記基板は、芳香環を含む樹脂を含み、
上記保護フィルムは、ポリオレフィンを含み、
上記保護フィルムの厚みは、3〜25μmである、前駆体フィルム。
〔2〕 上記樹脂が、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリカーボネート系樹脂、又は、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂である、〔1〕に記載の前駆体フィルム。
〔3〕 上記被めっき層前駆体層が、カルボン酸基を有するポリマーと、多官能アクリルアミドモノマー又は多官能メタクリルアミドモノマーとを含む、〔1〕又は〔2〕に記載の前駆体フィルム。
〔4〕 上記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の前駆体フィルム。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の前駆体フィルムを用いた両面導電性フィルムの製造方法であり、
マスクを密着させた上記前駆体フィルムに対して紫外線を照射して、上記被めっき層前駆体層を露光する工程と、
露光された上記被めっき層前駆体層から保護フィルムを除去する工程と、
露光された上記被めっき層前駆体層を現像する現像工程と、
現像工程により形成されたパターン状の被めっき層にめっき処理を施すめっき工程と、をこの順に有する、両面導電性フィルムの製造方法。
〔6〕 〔5〕に記載の方法で製造された両面導電性フィルムを含む、タッチパネルセンサー。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性細線の線幅が小さい両面導電性フィルムを形成でき、且つ基板の両面に配置された被めっき層前駆体層のうちの一方を紫外線露光によってパターン状の被めっき層とする際に、他方の被めっき層前駆体層への上記パターンの裏写りを抑制できる前駆体フィルムを提供できる。
また、本発明によれば、上記前駆体フィルムを利用した両面導電性フィルムの製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、上記製造方法により得られるタッチパネルセンサーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の前駆体フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の前駆体フィルムから得られる中間状態である、パターニングされた被めっき層を有する基板の一例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の製造方法により得られた両面導電性フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の前駆体フィルム及びそれを用いた両面導電性フィルムの製造方法について説明する。
なお、本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[前駆体フィルム]
本発明の前駆体フィルムは、基板と、上記基板の両面に配置された被めっき層前駆体層と、上記被めっき層前駆体層上に配置された保護フィルムとを有し、
上記基板は、芳香環を含む樹脂を含み、
上記保護フィルムは、ポリオレフィンを含み、
上記保護フィルムの厚みは、3〜25μmである。
【0015】
本発明の前駆体フィルムは、紫外線によるマスク露光工程、現像工程(現像は、湿式が好ましい。)、及びめっき工程をこの順に施すことにより両面導電性フィルムを得るための出発材料(前駆体)である。本発明では、様々な表面接触に起因する汚れ(マスクの汚れ、搬送ロールの汚れ、及び前駆体フィルムの汚れ等)を完全に防止する目的で、前駆体フィルムの表面を保護フィルムで覆うという構成とした。一方、15μm以下(好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下)の線幅の金属細線を得るための高精細なマスク露光では、光の回折現象の影響により精細度が低下することが懸念される。検討の結果、前駆体フィルムを上記構成とし、且つ紫外線で露光することが有効であることが判明した。
【0016】
以下、上記前駆体フィルムの実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1に示す前駆体フィルム20は、基板10と、基板10の両面に配置された被めっき層前駆体層11と、被めっき層前駆体層11上に配置された保護フィルム12とを有する。
以下において、上記前駆体フィルムの各構成について詳述する。
【0017】
<基板>
基板は、芳香環を含む樹脂を含む。
基板は、芳香環を含む樹脂を主成分として含むことが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、基板を構成する樹脂の全質量のうち50質量%以上を占める樹脂を意図する。
上記基板は、紫外線露光に好ましく用いられる270nm以下の短波長の紫外線を実質的に透過させないことが好ましい。
芳香環を含む樹脂としては、芳香環(ベンゼン環、及びナフタレン環等)を含む繰り返し単位を含む樹脂が好ましく、例えば、ポリエーテルスルホン系樹脂、芳香環を含む繰り返し単位を含む(言い換えると、芳香環を含むモノマーに由来する繰り返し単位を含む)ポリアクリル系樹脂、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリウレタン系樹脂、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂(ポリアリレート系樹脂を含む)、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリカーボネート系樹脂、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリアミド系樹脂、及び、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリイミド系樹脂等が挙げられる。
上記芳香環を含む樹脂としては、なかでも、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリカーボネート系樹脂、又は芳香環を含む繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂が好ましい。
【0018】
上記基板の厚みとしては、紫外線露光の際に光照射側の面のみを露光して裏面の被めっき層前駆体層へのパターンの裏写りがより抑制される点、及び薄型化の点から、0.15〜2mmが好ましく、0.2〜1mmがより好ましい。基板の厚みを0.15mm以上とすることで、例えば270nmの紫外光の透過率を0.1%以下に抑えることが可能である。
また、基板は、透明であることが好ましく、例えば、400〜700nmの波長の光の全光線透過率が80%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、100%未満の場合が多い。
【0019】
基板は、被めっき層前駆体層の塗布性を向上させる目的、及び被めっき層前駆体層との密着性を向上させる目的で、プライマー層(下塗り層)を有していてもよい。
【0020】
<被めっき層前駆体層>
被めっき層前駆体層は、硬化処理によって被めっき層に変化する層であり、硬化処理(具体的には、紫外線照射による露光工程)によって硬化反応を起こす機能と、めっき触媒又はその前駆体を保持する機能との2つを併せ持つ層である。このため、被めっき層前駆体層は、上記2つの機能を発現するような材料によって構成される。すなわち、被めっき層前駆体層は、めっき触媒若しくはその前駆体と相互作用し、且つ、硬化処理によって硬化反応を起こす化合物を含むか、又は、めっき触媒若しくはその前駆体と相互作用する化合物と、硬化処理によって硬化反応を起こす化合物との両方を含むか、いずれかである。
めっき触媒又はその前駆体と相互作用し、且つ硬化処理によって硬化反応を起こす化合物の例としては、例えば、特開2009−007540号公報の段落[0106]〜[0112]に記載のポリマー、特開2006−135271号公報の段落[0065]〜[0070]に記載のポリマー、及びUS2010−080964号公報の段落[0030]〜[0108]に記載のポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、公知の方法(例えば、上記で列挙された文献中の方法)により製造できる。
【0021】
本発明において被めっき層前駆体層は、なかでも、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する化合物(以下「相互作用性化合物」という。)と、硬化処理によって硬化反応を起こす化合物(以下「硬化性化合物」という。)の両方を含む組成であることが好ましい。
以下において、被めっき層前駆体層の好適態様について詳しく述べる。
【0022】
(相互作用性化合物)
相互作用性化合物は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(以下「相互作用性基」という。)を有する化合物である。
相互作用とは、具体的には、静電引力による相互作用、又は配位結合形成による相互作用が挙げられる。
相互作用性基としては、例えば公知の相互作用性基(例えば、国際公開第2016/181824号の段落[0021]に記載の基等)を用いることができる。なかでも、相互作用性基としては、極性が高く、めっき触媒又はその前駆体等への吸着能が高いことから、カルボン酸基(カルボキシル基)、スルホン酸基、リン酸基、若しくはボロン酸基等のアニオン性極性基、ポリエーテル基、又はシアノ基が好ましく、カルボン酸基がより好ましい。
【0023】
相互作用性化合物としては、低分子化合物であっても、ポリマーであってもよいが、めっき工程で処理液中に溶出しないことが望まれるため、ポリマーであることが好ましい。
相互作用性基を有するポリマーの例としては、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位、及び、不飽和カルボン酸の誘導体に由来する繰り返し単位からなる群より選ばれる1種以上を含むポリマーが挙げられる。
不飽和カルボン酸とは、カルボン酸基を有する不飽和化合物である。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、不飽和カルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸の塩、及び不飽和ジカルボン酸のモノエステル等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸のナトリウム塩、及びフマル酸のモノエステル等が挙げられる。
【0024】
相互作用性基を有するポリマーは、硬化反応によって被めっき層が形成されたのちは不動化することが望まれる。このため、相互作用性基を有する化合物は、架橋点を形成可能なポリマーであることが好ましい。このようなポリマーの例としては共役ジエン由来の繰り返し単位を有するコポリマーが挙げられる。
共役ジエン由来の繰り返し単位としては、一つの単結合で隔てられた、二つの炭素−炭素二重結合を有する分子構造由来の繰り返し単位が好ましい。
共役ジエンとしては、例えば、イソプレン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、2,4−オクタジエン、3,5−オクタジエン、1,3−ノナジエン、2,4−ノナジエン、3,5−ノナジエン、1,3−デカジエン、2,4−デカジエン、3,5−デカジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ペンタジエン、3−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ヘキサジエン、2−ベンジル−1,3−ブタジエン、及び2−p−トリル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0025】
相互作用性基を有するポリマーとしてはカルボン酸基を有するポリマーが好ましく、その具体例としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ブタジエン−アクリル酸コポリマー、イソプレン−メタクリル酸コポリマー、ブタジエン−ビニル安息香酸コポリマー、2,3−ジメチルブタジエン−マレイン酸コポリマー、ブタジエン−マレイン酸コポリマー、及びイソプレン−マレイン酸コポリマー等が挙げられる。なかでも、ブタジエン−マレイン酸コポリマー、又はイソプレン−マレイン酸コポリマーが好ましい。
【0026】
なお、相互作用性基を有するコポリマーにおいて、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位、及び、不飽和カルボン酸の誘導体に由来する繰り返し単位からなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位の含有量(複数含まれる場合はその合計含有量)は、全繰り返し単位に対して25〜75モル%であることが好ましい。また、共役ジエン由来の繰り返し単位の含有量(複数含まれる場合はその合計含有量)は、全繰り返し単位に対して25〜75モル%であることが好ましい。
【0027】
(硬化性化合物)
硬化性化合物は硬化性基を有する化合物である。
ここで、硬化性基とは、エネルギー付与によって化学結合を形成し得る官能基を意図し、例えば、ラジカル重合性基、及びカチオン重合性基等が挙げられる。硬化性基としては、反応性がより優れる点から、なかでも、ラジカル重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては特に制限されず、公知のラジカル重合性基(例えば、国際公開第2016/181824号の段落[0022]に記載の基等)が挙げられる。ラジカル重合性基としては、なかでも、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、又はメタクリルアミド基が好ましく、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、又はスチリル基がより好ましい。
ラジカル重合性基を有する化合物とは、いわゆるラジカル重合性モノマー(以下「モノマー」という。)である。本発明では、モノマーは、単官能モノマーであっても多官能モノマーであってもよいが、多官能モノマーであることが好ましい。多官能モノマーとしては、2〜6個のラジカル重合性基を有するモノマーが好ましく、2個のラジカル重合性基を有するモノマーがより好ましい。
多官能モノマーの分子量としては、反応性に影響を与える架橋反応中の分子の運動性の観点から、150〜1000が好ましく、200〜800がより好ましい。
【0028】
上記多官能モノマーとしては、めっき処理に対する適性に優れるという点で、なかでも、多官能アクリルアミド又は多官能メタクリルアミドが好ましい。多官能アクリルアミド及び多官能メタクリルアミドのラジカル重合性基の数は2〜6が好ましい。
多官能アクリルアミド及び多官能メタクリルアミドは、それぞれ、ポリオキシアルキレン基を有することが好ましい。このうち、被めっき層の延伸性がより優れる点で、ポリオキシアルキレン基を有する2官能アクリルアミド又はメタクリルアミドがより好ましい。上記アクリルアミド又はメタクリルアミドとしては、なかでも、下記式(1)で表される2官能アクリルアミド又はメタクリルアミドが特に好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の種類は特に制限されず、公知の置換基(例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等。より具体的には、アルキル基、及びアリール基等。)が挙げられる。
1及びL2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
2価の連結基の種類は特に制限されないが、例えば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基であっても、2価の不飽和炭化水素基であっても、2価の芳香族炭化水素基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、炭素数1〜20が好ましく、例えば、アルキレン基が挙げられる。2価の不飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、炭素数1〜20が好ましく、例えば、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられる。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数6〜20が好ましく、例えばフェニレン基が挙げられる。それ以外にも、2価の複素環基、−O−、−S−、−SO2−、−NR10−、−CO−(−C(=O)−)、−COO−(−C(=O)O−)、−NR10−CO−、−CO−NR10−、−SO3−、−SO2NR10−、及び、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、R10は、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を表す。上記2価の連結基中の水素原子は、他の置換基で置換されていてもよい。
式(1)中、Aは、アルキレン基を表す。アルキレン基中の炭素数は特に制限されないが、1〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。例えば、Aが炭素数1のアルキレン基の場合、−(A−O)−はオキシメチレン基(−CH2O−)を、Aが炭素数2のアルキレン基の場合、−(A−O)−はオキシエチレン基(−CH2CH2O−)を、Aが炭素数3のアルキレン基の場合、−(A−O)−はオキシプロピレン基(−CH2CH(CH3)O−、−CH(CH3)CH2O−又はCH2CH2CH2O−)を表す。なお、アルキレン基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。
mは、オキシアルキレン基の繰り返し数を表し、2以上の整数を表す。繰り返し数は特に制限されないが、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
【0031】
上記アクリルアミド又はメタクリルアミドとしては各種市販品を利用でき、公技番号2013−502654号記載の方法により合成できる。
【0032】
(相互作用性化合物と硬化性化合物の組成比)
被めっき層前駆体層における相互作用性化合物と硬化性化合物の組成比は特に制限されず、典型的には質量比で1:9〜9:1であり、2:8〜8:2が好ましく、3:7〜7:3がより好ましい。
【0033】
(重合開始剤)
被めっき層前駆体層は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤の種類は特に制限されず、公知の重合開始剤(好ましくは、光重合開始剤)が挙げられる。重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、ベンゾイン類、ケトン類、チオキサントン類、ベンジル類、ベンジルケタール類、オキスムエステル類、ビスアシルフォスフィノキサイド類、アシルフォスフィンオキサイド類、アントラキノン類、及びアゾ類が挙げられる。
重合開始剤としては、BASF社からIRGACUREの商品名で販売されている各種の重合開始剤(例えばIRGACURE−651、IRGACURE−184、IRGACURE−127)等が好ましい。
被めっき層前駆体層が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は特に制限されないが、被めっき層前駆体層の総量に対して、0.05〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0034】
(被めっき層前駆体層の形成)
被めっき層前駆体層は各種の塗布法によって形成される。被めっき層前駆体層を形成するための塗布液(以下「塗布液」という。)は、溶媒、及び界面活性剤等を含んでいてもよい。
溶媒の種類は特に制限されず、水及び有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、公知の有機溶媒(例えば、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、及び炭化水素系溶媒等)が挙げられる。
溶媒で希釈された塗布液における固形分濃度は、例えば、0.01〜100質量%であり、0.1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。ここで、固形分とは、最終的な被めっき層前駆体層を構成する成分であり、溶媒は含まれない。最終的な被めっき層前駆体層を構成する成分は、その性状が液体状であっても固形分に含まれる。
【0035】
界面活性剤の種類は特に制限されず、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましい。界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
塗布液における界面活性剤の含有量は特に制限されないが、塗布液全量に対して、0.005〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.2質量%がより好ましく、0.01〜0.1質量%が更に好ましい。
【0036】
塗布液は、必要に応じて、その他の任意成分(例えば、増感剤、硬化剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、フィラー、難燃剤、すべり剤、可塑剤、及び、めっき触媒若しくはその前駆体等)を含んでいてもよい。
【0037】
<保護フィルム>
上記保護フィルムは、ポリオレフィンを含み、且つ厚みが3〜25μmである。上記保護フィルムは、基板の両面に設置された被めっき層前駆体層がマスク及びウェブ搬送ロールに直接接触することを防止する役割を有する。また、上記前駆体フィルムを用いて両面導電性フィルムを作成する際、紫外線によるマスク露光は保護フィルムを付けたまま行うことを想定しているため、保護フィルムは紫外線透過性であって、且つ、薄膜であることが求められる。また、上記保護フィルムは、露光後に剥離される。つまり、上記保護フィルムは、露光後の被めっき層前駆体層から剥離可能であることが必要とされる。
【0038】
保護フィルムは、ポリオレフィンを含む。
保護フィルムは、ポリオレフィンを主成分として含むことが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、保護フィルムを構成する樹脂の全質量のうち50質量%以上を占める樹脂を意図する。なかでも、保護フィルムを構成する樹脂のうち95質量%以上(好ましくは98質量%以上であり、より好ましくは99質量%以上である。)がポリオレフィンであることが好ましい。
上記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びシクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0039】
保護フィルムの厚みは3〜25μmである。保護フィルムの厚みが3μm未満である場合、保護フィルムの取り扱い性に劣る場合がある。一方、保護フィルムの厚みが25μm超である場合、マスク露光の精度が劣る場合がある。保護フィルムの厚みは、形成される両面導電性フィルムの導電性細線の線幅がより小さい点、及び紫外線露光の際に光照射側の面のみを露光して裏面の被めっき層前駆体層へのパターンの裏写りがより抑制される点で、3〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
また、保護フィルムの材質と厚みを上述した態様とすることで、紫外線透過性の指標である270nmの光に対する透過率を80%以上とすることができる。上限は特に制限されないが、100%以下の場合が多い。
また、マスク露光の精度の観点から、保護フィルムのヘイズ値は低いほどよい。保護フィルムのヘイズ値は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、0%以上の場合が多い。
【0040】
[前駆体フィルムを用いた両面導電性フィルムの製造方法]
上記前駆体フィルムは、両面導電性フィルムの製造に用いることができる。
以下において、両面導電性フィルムの製造方法について詳述する。
【0041】
本発明の両面導電性フィルムの製造方法は、下記の工程A〜Dをこの順に有する。
工程A:マスクを密着させた前駆体フィルムに対して紫外線を照射して、被めっき層前駆体層を露光する工程
工程B:露光された上記被めっき層前駆体層から保護フィルムを除去する工程
工程C:露光された上記被めっき層前駆体層を現像する現像工程
工程D:現像工程により形成されたパターン状の被めっき層にめっき処理を施すめっき工程。
以下、工程A〜Dについて説明する。
【0042】
<工程A(露光工程)>
露光工程は、紫外線の照射により、被めっき層前駆体層をパターン状に露光する工程である。
露光工程は、高精細なパターンを得るために、マスクを密着させた被めっき層前駆体層に対して紫外線を照射する方法がとられる。
露光光源としては、紫外線を照射できるものであれば特に制限はないが、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、及びキセノンランプ等が挙げられる。
照射光量としては特に制限されず、0.01〜5J/cmが好ましく、0.05〜1J/cmがより好ましい。
露光工程により、被めっき層前駆体層中の化合物に含まれる重合性基が活性化され、重合又は架橋反応が起こり、被めっき層前駆体層の硬化が進行する。
【0043】
<工程B(保護フィルム除去工程)>
露光工程を経た後、保護フィルムを除去する工程を実施する。
保護フィルムの除去方法としては特に制限されず、例えば、保護フィルムの端をテープ等で接着し、基材からゆっくりと剥がす等の方法が挙げられる。
【0044】
<工程C(現像工程)>
露光工程によって得られたパターン状に硬化した被めっき層前駆体層に対して、現像処理を施すことにより、パターン状の被めっき層が形成される。つまり、工程Cを経ることで、基材と、基材の両面に配置されたパターン状の被めっき層とを有する、パターニングされた被めっき層を有する基板が得られる(図2参照)。
現像処理の方法は特に制限されず、使用される材料の種類に応じて、最適な現像処理が実施される。現像液としては、例えば、有機溶媒、純水、及びアルカリ水溶液が挙げられる。
【0045】
被めっき層の厚みは特に制限されないが、被めっき層前駆体層の厚みと、露光現像条件とによって適宜決定される。
被めっき層の平均厚みとしては、0.05〜30μmが好ましく、0.07〜10μmがより好ましく、0.1〜3μmが更に好ましい。
上記平均厚みは、被めっき層の垂直断面を電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡)にて観察して、任意の10点の厚みを測定して、それらを算術平均した平均値である。
【0046】
透明両面導電性フィルムを形成する場合、被めっき層のパターンはメッシュ状であることが好ましい。
メッシュを構成する細線部の線幅は特に制限されないが、めっき工程を経て被めっき層上に形成される金属層の線幅が被めっき層の線幅で規定される関係上、透明両面導電性フィルムの導電特性及び見かけ上の透明性とのバランスの点で、好ましい範囲が存在する。被めっき層のメッシュの線幅としては、0.2〜30μmが好ましく、0.5〜15μmがより好ましく、1〜10μmが更に好ましい。
【0047】
メッシュパターンとしては、直線を基調とした多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形、及びランダムな多角形等)であってもよいし、曲線(例えば、湾曲形状、円弧状、及びサイン曲線形状等)を基調とするメッシュパターンであってもよい。
【0048】
メッシュ開口部の一辺(曲線を基調とするメッシュパターンの場合は、開口部の図形に内包できる最大の直線)の長さは特に制限されないが、5〜4000μmが好ましく、20〜2000μmがより好ましく、80〜1000μmが更に好ましい。
【0049】
<工程D(めっき工程)>
めっき工程は被めっき層上に金属層を形成することにより両面導電性フィルムを作製する工程である。被めっき層が基板上にパターン状に配置されている場合は、そのパターンに沿った金属層(パターン状金属層)が形成される。つまり、工程Dを経ることで、パターン状の被めっき層上に金属層が形成される(図3参照)。
金属層を形成する方法は特に制限されないが、例えば、被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程、及び、めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層にめっき処理を施す工程を実施することが好ましい。
【0050】
(被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程)
被めっき層には相互作用性化合物が含まれているため、溶液中に付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)することができる。使用されるめっき触媒又はその前駆体の種類は、めっき処理の種類により適宜決定される。
【0051】
めっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体が好ましい。
無電解めっき触媒としては、無電解めっき時の活性核となるものであれば特に制限されず、例えば、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)が挙げられる。具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Pt、Au、及びCo等が挙げられる。この無電解めっき触媒としては、金属コロイドを用いてもよい。
無電解めっき触媒前駆体は、化学反応により無電解めっき触媒となるものであれば特に制限されず、例えば、上記無電解めっき触媒として挙げた金属のイオンが挙げられる。
【0052】
めっき触媒又はその前駆体を被めっき層に付与する方法としては、例えば、めっき触媒又はその前駆体を溶媒に分散又は溶解させた溶液を調製し、その溶液を被めっき層上に塗布する方法、又は、その溶液中に被めっき層付き基板を浸漬する方法が挙げられる。上記溶液の溶媒としては、例えば、水又は有機溶媒が挙げられる。
【0053】
(被めっき層にめっき処理を施す工程)
本工程はめっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層上に金属層を形成することを意図したものである。めっき処理の方法は特に制限されないが、例えば、無電解めっき処理が好ましく用いられる。
【0054】
無電解めっき処理とは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる処理である。
無電解めっき処理の手順としては、例えば、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層付き基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒又はその前駆体を除去した後、無電解めっき浴に浸漬することが好ましい。無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用できる。一般的な無電解めっき浴には、溶媒(例えば、水)の他に、めっき用の金属イオン、還元剤、及び金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれる。無電解めっき触媒の前駆体は無電解めっき浴中で還元され、活性な無電解めっき触媒に変化することが知られている。被めっき層が無電解めっき触媒の前駆体を含んでいる場合、無電解めっき触媒の前駆体を無電解めっき触媒に変換する目的で、還元浴に浸漬してから無電解めっき浴に浸漬してもよい。
【0055】
本工程では、無電解めっき処理を実施した後に、必要に応じて電解めっき処理を実施してもよい。電解めっきを行うことにより形成される金属層の厚みを適宜調整可能である。
【0056】
[両面導電性フィルムの用途]
上記手順によって得られた両面導電性フィルムは、各種用途に適用できる。例えば、タッチパネルセンサー、半導体チップ、FPC(Flexible printed circuits)、COF(Chip on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、アンテナ、多層配線基板、及びマザーボード等の種々の用途に適用できる。なかでも、タッチパネルセンサー(特に、静電容量式タッチパネルセンサー)に用いることが好ましい。上記導電性フィルムをタッチパネルセンサーに適用する場合、パターン状金属層がタッチパネルセンサー中の検出電極又は引き出し配線として機能する。このようなタッチパネルセンサーは、タッチパネルに好適に適用できる。
また、両面導電性フィルムは、発熱体として用いることもできる。例えば、パターン状金属層に電流を流すことにより、パターン状金属層の温度が上昇して、パターン状金属層が熱電線として機能する。
【0057】
両面導電性フィルムの導電性パターンを保護するために、オーバーコート層を設置してもよい。オーバーコートの方法として特に制限はないが、例えば、スプレー法、及び気相法等が挙げられる。
オーバーコート材料としては、各種の硬化性化合物が使用できる。
硬化性化合物の例としては、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物、及び縮合重合性化合物等が挙げられ、縮合重合性化合物が好ましい。縮合重合性化合物の例としては、アルコキシシラン類、及びアルコキシチタン類等が挙げられ、アルコキシシラン類が好ましい。アルコキシシランとしては、例えば、テトラアルコキシシラン(テトラエトキシシラン等)、モノアルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等)、及びジアルキルジアルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、及びジエチルジメトキシシラン等)が挙げられる。
オーバーコート材料は、各種の溶媒で希釈して用いてもよい。溶媒としては、各種のアルコール類が挙げられる。なお、縮合重合性化合物に対しては、ルイス酸等の重合触媒を併用してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0059】
[実施例1〜5の前駆体フィルムの作製]
<実施例1>
(被めっき層前駆体層形成用組成物(塗布液)1の調製)
以下の各成分を混合し、塗布液1を得た。
イソプロパノール 91.37質量部
ブタジエン−マレイン酸共重合体42質量%水溶液(Polyscience製)
6質量部
下記に示す化合物A 2.5質量部
IRGACURE 127(BASF社製) 0.13質量部
【0060】
【化2】
【0061】
(前駆体フィルムP−1の作製)
ポリカーボネート基板(芳香環を含む樹脂を含む基板に該当。帝人製、パンライトPC、厚み250μm)の一方の主面上に厚み0.8μmのプライマー層が形成されるように、基板上にZ913−3(アイカ工業製)を塗布し、得られた塗膜に対してUV(紫外線)照射し、プライマー層を形成した。次に、もう一方の主面上にも同様の処理を施してプライマー層を形成した。
次に、各プライマー層上に厚み0.9μmの被めっき層前駆体層が形成されるように、塗布液1を塗布して、両面に被めっき層前駆体層を有する基板を得た。
次に、各被めっき層前駆体層上に、厚み12μmのポリプロピレンフィルム(東レ製、トレファン12D−KW37。保護フィルムに該当する。また、波長270nmにおける透過率は81%であり、ヘイズは0.4%である。)を圧着して前駆体フィルムP−1を得た。
【0062】
<実施例2>
保護フィルムの厚みを25μm(東レ製、トレファン25D−2578。また、波長270nmにおける透過率は81%であり、ヘイズは0.7%である。)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、前駆体フィルムP−2を得た。
【0063】
<実施例3>
基板を厚み188μmのポリエチレンテレフタレート(芳香環を含む樹脂を含む基板に該当。東洋紡製、コスモシャインA4300)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、前駆体フィルムP−3を得た。
【0064】
<実施例4>
基板を厚み250μmのポリエチレンナフタレート(芳香環を含む樹脂を含む基板に該当。帝人フィルムソリューション製、テオネックスQ51)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、前駆体フィルムP−4を得た。
【0065】
<実施例5>
保護フィルムの厚みを4μm(東レ製、トレファン4D。また、透過率は84%であり、ヘイズは3.0%である。)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、前駆体フィルムP−5を得た。
【0066】
[実施例1〜5の両面導電性フィルムの作製]
作製した実施例1〜5の前駆体フィルムを用いて、実施例1〜5の両面導電性フィルムを作製した。以下に、手順を詳述する。
【0067】
細線部の幅が9μmで、開口部の一辺の長さが300μmであるメッシュ状の開口パターンを有する石英マスクを前駆体フィルムの一方の主面に密着させて、メタルハライド光源を用いて照射エネルギー量が0.2J/cmとなるように露光した。次いで、前駆体フィルムのもう一方の主面に対しても同様の露光を行った。
【0068】
保護フィルムを剥離した。このとき、P−1〜P−5の保護フィルムの剥離性はいずれも良好であり、めっき層前駆体層に剥がれは見られなかった。その後、室温の水にて、露光された被めっき層前駆体層をシャワー洗浄して、現像処理し、両面にメッシュ状の被めっき層を有する基板を得た(図2参照)。なお、被めっき層の厚みは、0.9μmであった。
【0069】
次に、得られた基板を炭酸ナトリウム1質量%水溶液に常温にて5分間浸漬し、純水にて十分に洗浄した後、Pd触媒付与液(オムニシールド1573アクチベーター、ローム・アンド・ハース電子材料社製)に30℃にて5分間浸漬し、純水にて洗浄した。次に、還元液(サーキュポジットP13オキサイドコンバーター60C、ローム・アンド・ハース電子材料社製)に30℃にて5分間浸漬し、純水にて十分に洗浄した。
次に、無電解めっき液(サーキュポジット4500、ローム・アンド・ハース電子材料社製)に45℃にて15分間浸漬し、純水にて洗浄してメッシュ状の金属層(銅)を有する両面導電性フィルムを得た。
得られためっき銅は空気界面側が銅の金属光沢を有し、基板側が光沢のない黒色であった。
【0070】
[比較例1〜4の前駆体フィルムの作製]
<比較例1>
保護フィルムを厚み40μmのポリプロピレンフィルム(東レ製、トレファン40D−2578。また、波長270nmにおける透過率は79%であり、ヘイズは2.0%である。)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、比較用前駆体フィルムCP−1を得た。
【0071】
<比較例2>
保護フィルムを厚み19μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡製、東洋紡エステルE5101。また、波長270nmにおける透過率は0%である。)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、比較用前駆体フィルムCP−2を得た。
【0072】
<比較例3>
基板を188μm厚みのシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン製、ゼオノアZF16)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、比較用前駆体フィルムCP−3を得た。
【0073】
<比較例4>
保護フィルムを厚み18μmのポリビニルアルコール(クラレ社製、ポバールフィルム)に変更した以外は実施例1と同様の手順により、比較用前駆体フィルムCP−4を得た。
【0074】
[比較例1〜4の比較用両面導電性フィルムの作製]
作製した比較例1〜4の比較用前駆体フィルムを用いて、実施例1と同様の手順により、比較例1〜4の比較用両面導電性フィルムを作製した。
【0075】
[評価]
上記実施例及び比較例にて得られた両面導電性フィルムを用いて、以下の各種評価を実施した。結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0076】
<金属線幅の測定>
上記実施例及び比較例にて得られた両面導電性フィルムを光学顕微鏡で観察し、任意に選んだ20点の平均線幅を求めた。
【0077】
<裏面の被めっき層前駆体層へのパターンの裏写りの評価>
実施例及び比較例で作製した前駆体フィルムを用い、一方の主面のみ照射エネルギー量が0.8J/cmとなるように露光し、もう一方の主面からは露光しないという処理を施した。その後は、実施例1と同様の方法で現像処理及びめっき処理を行った。
上記の評価実験にて得られたフィルムを光学顕微鏡で観察し、以下の基準に従って評価した。
「A」:露光面側の所定の位置にパターン状被めっき層が形成されており、裏面側での金属析出の面積が全体の1%未満である場合(露光面側は銅の金属光沢が観察され、裏面は光沢のない黒色である場合)
「B」:露光面側の所定の位置にパターン状被めっき層が形成されているが、裏面側での金属析出の面積が全体の1%以上である場合(露光面側は銅の金属光沢が観察され、裏面からも銅の金属光沢が観測される場合)
【0078】
以下に表1を示す。
なお、表1中、「芳香族ポリカーボネート」とは、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリカーボネート系樹脂に該当する。また、「芳香族エステル」とは、芳香環を含む繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂に該当する。なお、「PET」は、ポリエチレンテレフタレートの略語であり、「PEN」は、ポリエチレンナフタレートの略語である。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例の前駆体フィルムを使用した得られた両面導電性フィルムは、保護フィルムに起因する細線の太りが最小限に抑制されていて、且つ裏面への光漏れがない(言い換えると、裏面の被めっき層前駆体層へのパターンの裏写りが抑制されている)ことが分かる。
一方、比較例1の比較用前駆体フィルムCP−1を用いた場合、保護フィルムが厚すぎるために露光ボケに起因する精細度の低下が起きている。
また、比較例2の比較用前駆体フィルムCP−2を用いた場合、保護フィルムが紫外線を吸収してしまうために被めっき層前駆体層の硬化反応が起こらず、金属層が形成しない。
また、比較例3の比較用前駆体フィルムCP−3を用いた場合、裏面への光漏れが生じて(言い換えると、裏面の被めっき層前駆体層へのパターンの裏写りが生じて)、裏面での硬化反応に起因するめっき析出が起きていることが分かる。
また、比較例4の比較用前駆体フィルムCP−4を用いた場合、保護フィルムと被めっき層との接着が強く生じることにより、保護フィルムの剥離の際、パターン状の被めっき層が基板から剥離した。
【符号の説明】
【0081】
10 基板
11 被めっき層前駆体層
12 保護フィルム
14 メッシュ状の被めっき層
16 メッシュ状の金属層
20 前駆体フィルム
図1
図2
図3