特許第6984073号(P6984073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6984073高純度モリブデンオキシクロライド及びその製造方法
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  • 6984073-高純度モリブデンオキシクロライド及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6984073
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】高純度モリブデンオキシクロライド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/04 20060101AFI20211206BHJP
   C23C 16/08 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C01G39/04
   C23C16/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-526807(P2021-526807)
(86)(22)【出願日】2020年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2020046450
【審査請求日】2021年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2020-33357(P2020-33357)
(32)【優先日】2020年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀行
(72)【発明者】
【氏名】谷 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】深沢 早
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−065509(JP,A)
【文献】 国際公開第2020/021786(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102632245(CN,A)
【文献】 S. V. PLUSHEVA et al.,Journal of the Less-Common Metals,1982年,86,pp.299-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 39/04
C23C 16/08
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度が99.9999重量%以上であることを特徴とするモリブデンオキシクロライド。
【請求項2】
W含有量が1重量ppm未満であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデンオキシクロライド。
【請求項3】
W含有量が0.1重量ppm未満であることを特徴とする請求項1に記載のモリブデンオキシクロライド。
【請求項4】
Fe含有量が0.1重量ppm未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のモリブデンオキシクロライド。
【請求項5】
Na含有量が0.1重量ppm未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のモリブデンオキシクロライド。
【請求項6】
K含有量が1重量ppm未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のモリブデンオキシクロライド。
【請求項7】
MoOCl、MoOCl、MoOCl、MoOClのいずれか一種を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載のモリブデンオキシクロライド。
【請求項8】
MoOとClとを反応させてモリブデンのオキシクロライドを反応室で合成し、合成したモリブデンのオキシクロライドの気体を冷却して回収室でモリブデンのオキシクロライドを析出させて、モリブデンのオキシクロライドを製造する方法であって、前記反応室と前記回収室との間に不純物トラップを設けて、該不純物トラップにおいて不純物を除
去することを特徴とするモリブデンオキシクロライドの製造方法。
【請求項9】
前記不純物トラップ内に物理フィルターを設けることを特徴とする請求項に記載のモリブデンオキシクロライドの製造方法。
【請求項10】
前記不純物トラップの温度を150℃〜250℃に保持することを特徴とする請求項又はに記載のモリブデンオキシクロライドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の気相成長用材料、化学反応用触媒等に好適に用いることができる、高純度モリブデンオキシクロライド及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の機能的電子デバイスにおけるコンタクトプラグ、配線、又は配線下の拡散バリア層等の薄膜には、モリブデン(Mo)やタングステン(W)など、物理的、化学的に安定で低抵抗な金属材料が従来から多く用いられている。また、拡散バリア層には、これらの金属の窒化物、炭化物等の化合物の薄膜も多く用いられている。モリブデン又はモリブデン化合物の薄膜は、モリブデン元素を含む化合物を前駆体として蒸発、気化させて、これを基材表面で分解、反応させて薄膜化する、化学気相堆積(CVD)法によって形成されている。
【0003】
また、近年のデバイスの高集積化、高密度化に伴う狭ピッチ化、コンタクトプラグ部の深部延伸化が進み、金属層は高アスペクト比の凹部に形成される傾向にあり、そのような高アスペクト比に凹部に均一に金属層を形成するために、原子相蒸着(ALD)法を用いて、凹部内にシード層となる薄い金属層を均一に形成し、その後に前述のCVD法やめっき法等で厚いコンタクトプラグや配線となる金属層を形成する技術も使用されている。
【0004】
上述したCVD法又はALD法によって金属又は金属化合物を形成する際に使用される前駆体化合物には、有機金属化合物、金属カルボニル、金属のハロゲン化物などがある。このような従来技術として、モリブデンの塩化物(MoCl5)を用いて、MoS2膜を形成する例(特許文献1)、モリブデンのカルボニル(Mo(CO)6)を用いてMo膜を形成する例(特許文献2)、モリブデンの有機化合物を用いてMo膜を形成する例(特許文献3)、MoS2を形成する例(特許文献4)、を挙げることができる。
【0005】
しかし、一般的なモリブデン塩化物である五塩化モリブデン(MoCl5)は不安定で、分解によって有毒な塩化水素を自然発生するため取扱い難く、工業的なプロセスで使用するためには保存、保管に関する問題がある。また、金属カルボニルを原料としたCVDやALDでは、上記の問題は生じないが、それ自体が毒性であることに加えて、モリブデンを含む金属のカルボニルは蒸気圧が低く、CVDやALD成膜時の原料ガス流量、圧力の制御が難しいという問題がある。
【0006】
そこで、特許文献5又は非特許文献1に開示されているように、モリブデンのオキシクロライド(MoOCl2、MoOCl3、 MoOCl4、MoO2Cl2)を原料前駆体として使用して、モリブデン又はモリブデン化合物のCVD成膜を行う方法がある。このモリブデンのオキシクロライド自体は、このようなCVD原料の他、特許文献6及び7、非特許文献2に開示されているように、有機合成等の化学反応用の触媒としても従来から知られている物質である。モリブデンのオキシクロライドは、非特許文献3に記載されているように、酸化モリブデン粉末を塩素ガスで直接塩化することによって合成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−225808号公報
【特許文献2】特表2008−520834号公報
【特許文献3】特開2006−097101号公報
【特許文献4】特表平11−507629号公報
【特許文献5】特開2000−119045号公報
【特許文献6】特開2003−252845号公報
【特許文献7】特開平08−277263号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K. A. Gesheva et al., Thin Solid Films, Vol.79, 1981, pp. 39-49
【非特許文献2】Rita G, de Noronha et al., Cat. Commun., Vol.12, 2011, pp. 337-340
【非特許文献3】Y. Monteil et al., J. Cryst. Growth, Vol. 67, 1984, pp. 595-606
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
モリブデンのオキシクロライドは、例えば酸化モリブデン(MoO3)の原料粉末を塩素ガス(Cl2)で塩化することなどにより、合成することができる。このとき合成温度を適切に管理することにより、不純物をある程度分離することができるが、原料中に不純物として含まれるタングステン(W)等の金属不純物は、塩化物や酸塩化物を形成し、これらは蒸気圧が高いために除去することが困難であった。特に原料MoO3中に高い濃度で存在するWは、最終製品のモリブデンオキシクロライドに高い濃度で残留する問題があった。本発明は、このような問題を解決しようとするものであり、高純度のモリブデンオキシクロライド及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、高純度モリブデンオキシクロライドを合成するための装置に不純物トラップなどを設けることにより、蒸気圧の高いタングステン(W)などの塩化物を効果的に分離することができ、高純度のモリブデンオキシクロライドを製造することができるとの知見を得て、本発明を完成させた。
上述の知見に基づき、本発明の一態様は、純度99.9995重量%以上であることを特徴とするモリブデンオキシクロライドであることを要旨とするものである。なお、本開示において、モリブデンオキシクロライドとは、MoOCl2、MoOCl3、MoOCl4、MoO2Cl2のうち、いずれか一種を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来では合成中にその除去が困難であったタングステン(W)などを分離することができ、高純度モリブデンオキシクロライドを得ることが可能となる。そして、このような高純度モリブデンオキシクロライドをCVD法やALD法における前駆体として用いることにより、半導体装置中の薄膜において、不純物金属に起因する特性不良を回避することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】モリブデンオキシクロライドを合成するための装置の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
モリブデンオキシクロライドは、酸化モリブデン(MoO3)粉末を塩素ガスによって塩化することによって合成することができる。しかし、原料である酸化モリブデン粉末には、不純物としてタングステン(W)や鉄(Fe)が比較的多く含まれ、これらの金属不純物は合成中に塩素ガスと反応して酸塩化物を形成し、その酸塩化物は蒸気圧が高いため、気相分離が困難であった。そのため、従来では、原料起因のタングステン等を除去できず、合成したモリブデンオキシクロライド中には、Wが10wtppm程度含まれており、Wを除く純度が5N(99.999重量%)程度であった。
【0014】
このような不純物を含むモリブデンオキシクロライドをCVD法又はALD法の前駆体として使用した場合には、成膜後のモリブデン化合物中に不純物が残存して、膜の特性を劣化させるという問題があった。特に、半導体積層構造の薄膜として使用される場合はデバイス性能を低下させるという問題があった。
このようなことから、本発明は高純度モリブデンオキシクロライドを提供することを課題とし、本発明の実施形態に係るモリブデンオキシクロライドは純度が99.9995重量%(5N5)以上であることを特徴とするものである。好ましくは、純度が99.9999重量%(6N)以上である。
【0015】
本開示において、純度とは、Ba、W、Ti、Ag、Na、K、Fe、In、Zn、Cu、Cr、Alを、ICP−MS法で分析し、その合計含有量(wt%)を100wt%から差し引くことで求めるものとする。なお、各元素の分析値が下記の場合は検出下限未満に該当するとして、その含有量を0(ゼロ)と見做す。
Ba:<0.1重量ppm、W:<0.1重量ppm、Ti:<0.1重量ppm、A g:<0.1重量ppm、Na:<0.1重量ppm、K:<1重量ppm、
Fe:<0.1重量ppm、In:<0.1重量ppm、Zn:<0.1重量ppm、 Cu:<0.1重量ppm、Cr:<0.1重量ppm、Al:<0.1重量ppm
これらの元素は、電子デバイスの配線等として使用される場合に、抵抗率の増大、エレクトロマイグレーションの発生、素子内部への拡散などを引き起こして、デバイス性能を低下させるため、特に排除されることが好ましい元素である。
【0016】
本発明の実施形態に係るモリブデンオキシクロライドは、W(タングステン)含有量が5重量ppm未満であることが好ましい。より好ましくは1重量ppm未満であり、さらに好ましくは0.1重量ppm未満である。また、Fe(鉄)含有量が0.1重量ppm未満であることが好ましい。上述の通り、タングステンや鉄は、原料である酸化モリブデン中に比較的多く含まれる不純物であり、また、合成中に形成される塩化タングステン、塩化鉄などは蒸気圧が高いため、合成物のモリブデンオキシクロライドに混入しやすく、気相分離が困難であるという性質を有する。本発明によれば、このような除去が難しいこれらの不純物を極めて低い含有量とすることができる。
【0017】
本発明の実施形態に係るモリブデンオキシクロライドは、Na(ナトリウム)含有量が0.1重量ppm未満であることが好ましい。ナトリウムは、反応ガスの塩素や他の不純物成分と反応して塩化ナトリウムなどの各種塩を形成し、混入することがある。このアルカリ金属であるナトリウムは、電子デバイスの配線等において、特に、そのデバイス性能を低下させる原因となることから、その含有量を0.1重量ppm未満まで低減することが好ましい。同様にアルカリ金属であるK(カリウム)についても、1重量ppm未満まで低減することが好ましい。
【0018】
次に、本発明の実施形態に係るモリブデンオキシクロライドの製造方法を以下に詳述する。
【0019】
原料として、MoO3(三酸化モリブデン)粉末を用意する。MoO3原料は高純度のものを使用することが好ましく、タングステンを除き、純度3N(99.9重量%)以上、より好ましくは、純度4N(99.99重量%)以上のものを使用する。原料は供給管から通過させて投入しやすくする観点から、粒子径(D50)が0.1mm〜1mm程度のものを用いることが好ましい。
【0020】
モリブデンオキシクロライドを合成するための垂直型の合成装置1の一例を図1に示す。なお、この装置図は概略模式図であり、各部品の大きさ、形状、接続、配置等については、これに制限されるものではなく、適宜、変更してもよい。また、ガス配管の経路には、必要に応じて弁や流動制御装置等が設けられてもよい。
垂直型の合成装置1には、主として、反応室3、不純物トラップ6、回収室8、回収容器9を備え、反応室3には、反応容器2、ガス供給管4、原料供給管5、熱電対10を備える。また、不純物トラップ6の内部には、物理フィルター7を備える。
【0021】
次に、合成方法について説明する。まず、反応容器2にMoO3粉末を供給し、これを700〜1000℃で加熱する。また、合成によって、MoO3原料が消費されてMoO3が減少した際には、必要に応じて原料供給管5から、原料を投入することができる。その後、MoO3反応容器2にガス供給管4から塩素ガスを供給して、塩化を行う。このとき、キャリアガスとなるArガスを導入してもよい。
塩素ガス等の導入により、MoO3がCl2と反応して、例えば、MoO3+Cl2→MoO2Cl2+0.5O2の反応式の下、MoO2Cl2が生成される。その他、塩化の程度が異なるMoOCl2、MoOCl3、MoOCl4も生成しうる。生成したモリブデンオキシクロライドは、気体として放出される。
【0022】
上述の合成反応より得られるモリブデンオキシクロライドの気体は、不純物トラップ6を経由して、回収室8へと至る。このとき、タングステンや鉄等の不純物は、塩化物又は酸塩化物として気化して拡散するが、温度が制御された不純物トラップ6を設けることによって、回収室8への混入を防止することができる。これは、不純物トラップ6内で気体の流速が落ちることで、不純物がトラップされることと考えられる。
【0023】
また、不純物トラップ6には、ガラスフィルター、石英ウールなどの物理フィルターを設けることが好ましい。これにより、固体として飛散するNaの混入なども防止することができ、また、不純物トラップ6で回収したタングステンや鉄などの不純物も物理フィルターに析出させることで、下流(回収室)への排出をより効果的に防止することができる。不純物トラップ6における温度は、MoO2Cl2が気体である温度が下限となり、不純物成分が固相となることが多い温度が上限となり、具体的には150℃〜250℃に維持しておくことが好ましい。また、不純物トラップ6の径や長さを変えることで、回収効率と不純物の除去率を適宜、調整することができる。
【0024】
その後、不純物が除去されたモリブデンオキシクロライドの気体は、回収室8にて冷却されることで、モリブデンオキシクロライドの固相として析出する。回収室8の下方には、回収容器9が接続されており、回収室8では回収しきれなかった析出物や回収室8から落下する析出物を回収することができる。冷却は自然冷却とすることができる。これにより、本発明の実施形態に係る高純度のモリブデンオキシクロライドを得ることができる。
なお、回収容器には、さらに未反応の塩素、あるいは昇華性の塩化物を排出し、それらを無害化するような除害装置へと至る排気筒、あるいは、装置内圧力を調整する真空ポンプへと至る真空配管が接続されていてもよい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例、比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものでない。
【0026】
(実施例1)
MoO3原料を反応容器に充填した後、800℃で加熱し、その後、ガス供給管から塩素ガスを導入して、MoO2Cl2の合成を行い、その後、気化したMoO2Cl2を不純物トラップ(190℃で保持)に通過させた後、回収室に析出させて、回収容器で固相のMoO2Cl2を回収した。合成は、基本的に図1に示す装置を用いて行ったが、実施例1では、図1に示される物理フィルター7は設置しなかった。得られたMoO2Cl2に含まれる各元素の含有量を表1に示す。表1に示す通り、MoO2Cl2の純度は99.9999重量%であり、高純度のものが得られた。また、W含有量は0.1重量ppm未満、Fe含有量は0.1重量ppm未満であった。
【0027】
(実施例2)
合成は、基本的に図1に示す装置を用いて行った。MoO3原料を反応容器に充填した後、800℃で加熱し、その後、ガス供給管から塩素ガスを導入して、MoO2Cl2の合成を行い、その後、気化したMoO2Cl2を不純物トラップ(190℃で保持、石英ウールあり)に通過させた後、回収室に析出させて、回収容器で固相のMoO2Cl2を回収した。得られたMoO2Cl2に含まれる各元素の含有量を表1に示す。表1に示す通り、MoO2Cl2の純度は99.9999重量%であり、高純度のものが得られた。また、W含有量は0.1重量ppm未満、Fe含有量は0.1重量ppm未満であった。
【0028】
(実施例3)
合成は、基本的に図1に示す装置を用いて行った。MoO3原料を反応容器に充填した後、800℃で加熱し、その後、ガス供給管から塩素ガスを導入して、MoO2Cl2の合成を行い、その後、気化したMoO2Cl2を不純物トラップ(155℃で保持、石英ウールあり)に通過させた後、回収室に析出させて、回収容器で固相のMoO2Cl2を回収した。得られたMoO2Cl2に含まれる各元素の含有量を表1に示す。表1に示す通り、MoO2Cl2の純度は99.9999重量%超であり、高純度のものが得られた。また、W含有量は0.1重量ppm未満、Fe含有量は0.1重量ppm未満であった。
【0029】
(実施例4)
合成は、基本的に図1に示す装置を用いて行った。MoO3原料を反応容器に充填した後、900℃で加熱し、その後、ガス供給管から塩素ガスを導入して、MoO2Cl2の合成を行い、その後、気化したMoO2Cl2を不純物トラップ(190℃で保持)に通過させた後、回収室に析出させて、回収容器で固相のMoO2Cl2を回収した。また、実施例4では回収効率を上げるために、不純物トラップの長さを他の実施例に比べて短縮した。得られたMoO2Cl2に含まれる各元素の含有量を表1に示す。表1に示す通り、MoO2Cl2の純度は99.9996重量%であり、高純度のものが得られた。また、W含有量は2.1重量ppm、Fe含有量は0.1重量ppm未満であった。
【0030】
(実施例5)
合成は、基本的に図1に示す装置を用いて行った。MoO3原料を反応容器に充填した後、900℃で加熱し、その後、ガス供給管から塩素ガスを導入して、MoO2Cl2の合成を行い、その後、気化したMoO2Cl2を不純物トラップ(190℃で保持)に通過させた後、回収室に析出させて、回収容器で固相のMoO2Cl2を回収した。得られたMoO2Cl2に含まれる各元素の含有量を表1に示す。表1に示す通り、MoO2Cl2の純度は99.9998重量%であり、高純度のものが得られた。また、W含有量は0.8重量ppm、Fe含有量は0.1重量ppm未満であった。
【0031】
(比較例1)
MoO3原料を反応容器に充填した後、800℃で加熱し、その後、ガス供給管から塩素ガスを導入して、MoO2Cl2の合成を行い、その後、気化したMoO2Cl2を回収部に析出させて、回収容器で固相のMoO2Cl2を回収した。なお、合成は、基本的に図1に示す装置を用いて行ったが、比較例1では、図1に示される不純物トラップ6(及び物理フィルター7)は設置しなかった。得られたMoO2Cl2に含まれる各元素の含有量を表1に示す。表1に示す通り、純度は99.999質量%未満であり、不純物であるWの含有量は17重量ppm、Feの含有量は30重量ppmであった。
【0032】
以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、モリブデンオキシクロライドの合成において、従来から特に除去が困難であった不純物を低減して高純度にすることができる。そのため、高純度のモリブデンオキシクロライドをCVDやALDなどの原料または触媒として用い、薄膜形成や化合物の合成を行う、半導体産業、電子デバイス製造、機能性材料創生、有機・無機化学工業といった産業・技術分野に対して大きな技術的貢献を果たすものである。
【符号の説明】
【0034】
1 合成装置
2 反応容器
3 反応室
4 ガス供給管
5 原料供給管
6 不純物トラップ
7 物理フィルター
8 回収室
9 回収容器
10 熱電対
【要約】
純度が99.9995重量%以上であることを特徴とするモリブデンのオキシクロライド。MoO3とCl2とを反応させてモリブデンのオキシクロライドを反応室で合成し、合成したモリブデンのオキシクロライドの気体を冷却して回収室でモリブデンのオキシクロライドを析出させて、モリブデンのオキシクロライドを製造する方法であって、前記反応室と前記回収室との間に不純物トラップを設けて、該不純物トラップにおいて不純物を除去することを特徴とするモリブデンオキシクロライドの製造方法。本発明は、高純度モリブデンオキシクロライド及びその製造方法を提供することを課題とする。
【選択図】なし
図1