(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題及びエネルギー問題に対して両面から取り組んだ新しい発電システムとして、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCと呼称することがある)が注目されている。このSOFCは、一般に、空気極、固体電解質及び燃料極からなる単セルが順次積層されたいわゆるセルスタック構造を有している。これらのうち、燃料極の材料には例えばニッケル又は酸化ニッケルと、安定化ジルコニアからなる固体電解質との混合粉末が通常用いられている。燃料極は、発電時に燃料ガスとしての水素や炭化水素により還元されてニッケルメタルとなり、ニッケルと固体電解質と空隙からなる三相界面が燃料ガスと酸素との反応場となるため、上記の混合粉末は粒径を小さくして比表面積を大きくすることが発電効率の向上にとって重要な要件となる。
【0003】
上記の燃料極材料の作製では、例えば特許文献1に記載のように、所定の導電率、気孔率などの設計条件を満たす燃料極が得られるように、最適な物性をもつニッケル化合物や固体電解質としての安定化ジルコニアなどを選定し、それらを所定の割合で配合してから均一に混ざり合うようにボールミルなどを用いて湿式混合し、得られたペースト状の混合粉末を焼成して電極材料を形成する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、酸化ニッケル原料と安定化ジルコニアとをビーズミルなどにより湿式混合した後、得られたスラリーを噴霧乾燥することで乾燥粉を作製し、この乾燥粉を熱処理して複合粒子を作製する方法が開示されている。更に特許文献3には、ニッケル化合物、ジルコニア化合物、及び安定化ジルコニアに必要な所定の安定化材の化合物を用いて晶析を行い、得られた前駆体を熱処理して燃料極材料を作製する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、比重や粒度の異なるニッケル化合物と安定化ジルコニアなどの固体電解質とを特許文献1に示すボールミルなどを用いて湿式混合した場合、過度に解砕が進んでしまうことがあり、その結果、後段の固液分離が困難になって固液分離に長時間を要し、その間に混合状態のニッケル化合物と安定化ジルコニアなどの電解質成分とが分離して均一な材料が得られないことがあった。また、固液分離後に乾燥処理を行う場合は、粒子同士の距離が接近しすぎて凝集することがあった。更に、熱処理の際に焼結が進みすぎて、微細で均一な混合状態が得られないことがあった。
【0007】
特許文献2の製造方法は噴霧乾燥を行う設備の投資が新たに必要となるうえ、大量の水分を蒸発させる必要があるため高コストとなる。また、特許文献3に示す製造方法では、中和点の異なる3種類以上の元素を同時に沈降させることが難しく、予定していた組成からずれることがあった。また、熱処理の際にすべての元素や化合物が同じ熱処理条件にさらされるため、酸化ニッケル及び安定化ジルコニアの各々の粒径を調整するのが困難であった。このように、従来の技術で得られた燃料極材料は、酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合物が不均質になりやすく、また、製造コストがかかり過ぎることがあるため、更なる改善が望まれていた。
【0008】
また、上記の燃料極の作製に際して行われる熱処理は、通常は雰囲気温度1300〜1500℃の高温で熱処理することで焼成が行われる。その際、上記した酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合状態が不均質では、焼成時に燃料極材料の収縮が大きくなりやすく、その結果、燃料極に割れ、剥離、反りなどが生じ、燃料ガスの漏れや発電特性の低下が起こることがあった。特に平板型の燃料電池では、焼成時の収縮により電池を構成する固体電解質、燃料極及び空気極を良好に積層することができなくなるなどの問題が生ずることがあった。
【0009】
本発明は、上記した従来技術が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、SOFCの燃料極の作製に際して行われる焼成時に反り、ヒビ、割れなどの問題が生じにくい、酸化ニッケルと安定化ジルコニアとの混合粉末からなるSOFC用燃料極材料の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、SOFCの燃料極材料であるニッケル化合物と安定化ジルコニアとからなる複合粒子に対して粉砕混合、熱処理及び解砕からなる一連の処理を行ったところ、酸化ニッケルと安定化ジルコニアとがほぼ均一に複合化された加熱収縮率の低い複合粒子が得られ、これを用いてSOFCの燃料極を作製すると、焼成時に反り、ヒビ、割れなどの問題がほとんど生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の固体酸化物形燃料電池用燃料極材料の製造方法は、
水酸化ニッケル及び一次粒子が凝集した二次粒子の形態の酸化ニッケルのうちの少なくとも一方からなるニッケル化合物と安定化ジルコニアとを粉砕混合してそれらの混合物を得る粉砕混合工程と、前記混合物を熱処理して酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合焼成物を得る熱処理工程と、前記混合焼成物を解砕する解砕工程とを有する固体酸化物形燃料電池用燃料極材料粉末の製造方法であって、前記粉砕混合が、流体エネルギー解砕装置により行われ
、前記粉砕混合される前記ニッケル化合物と安定化ジルコニアとの配合割合が、酸化物換算の質量比で50:50〜70:30の範囲内であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SOFCの燃料極の作製に際して行われる焼成時に反り、ヒビ、割れなどの問題がほとんど生じないので、極めて高品質の固体酸化物形燃料電池が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る固体酸化物型燃料電池用燃料極材料粉末の製造方法は、少なくともニッケル化合物と安定化ジルコニアとを粉砕混合してそれらの混合物を得る粉砕混合工程と、得られた混合物を熱処理して酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合焼成物を得る熱処理工程と、前記混合焼成物を解砕して粉末状の燃料極材料を得る解砕工程とを有している。これにより、少なくとも酸化ニッケルと安定化ジルコニアが複合化された混合粉末からなる固体酸化物形燃料電池用燃料極材料を作製することができる。
【0014】
かかる本発明の実施形態に係る燃料極材料の製造方法においては、上記の粉砕混合工程において、乾式ジェットミルのような流体エネルギー解砕装置で混合することが特に重要である。これにより、従来の混合法とは異なり、被混合物と共にセラミックボールなどの解砕メディアを装入することなく均一に混合された混合物を得ることができる。よって、不純物の混入が少ない高品質の燃料極材料粉末を低コストに作製することが可能になる。
【0015】
更に、本発明の実施形態に係る燃料極材料の製造方法では、原料のニッケル化合物が水酸化ニッケルの場合は、熱処理工程において水酸化ニッケルから酸化ニッケルへの酸化と、燃料極材料全体の焼成とを同時に行うことができるので、熱処理のコストを低減することができる。この場合、酸化ニッケルよりもニッケル化合物のほうが粉砕されやすいため、熱処理工程では、より微細に混合されたニッケル化合物に対して熱処理を行うことができる。これにより、熱処理温度を調整することでニッケル化合物粒子同士や安定化ジルコニア粒子同士の焼結による二次粒子の生成を抑制しつつ酸化ニッケルと安定化ジルコニアとが一体化した混合焼成物を生成することができる。以下、かかる本発明の実施形態に係る燃料極材料粉末の製造方法について工程毎に具体的に説明する。
【0016】
(粉砕混合工程)
粉砕混合工程は、所定の割合で配合されたニッケル化合物と安定化ジルコニアとを流体エネルギー解砕装置を用いて粉砕混合する工程である。この粉砕混合工程では、ニッケル化合物と安定化ジルコニアとを粉砕しながら混ぜ合わせることができ、これによりニッケル化合物と安定化ジルコニアとの均一な混合物が得られる。
【0017】
この粉砕混合工程の原料であるニッケル化合物としては、酸化ニッケル及び水酸化ニッケルのうちの少なくとも一方を用いることができる。これらの中では、水酸化ニッケルがより好ましい。その理由は、水酸化ニッケルは酸化ニッケルよりも解砕が容易であり、かつ、後工程の熱処理工程において燃料極材料全体の焼成と水酸化ニッケルから酸化ニッケルへの酸化とを一度に行うことができるため、別途水酸化ニッケルを酸化ニッケルに酸化する工程が不要となり、全体的な製造コストを低減することができる。なお、これら酸化ニッケルや水酸化ニッケルは公知の方法で製造されたものを用いることができる。また、ニッケル化合物は微細な粉末でなくてもよく、その形態も一次粒子のみならず一次粒子が凝集した二次粒子が少なくとも部分的に含まれていてもよい。よって、前処理としてニッケル化合物を解砕する必要はない。
【0018】
この粉砕混合工程の他の原料である安定化ジルコニアは、特に限定するものではないが、後工程の熱処理工程における熱処理温度及び燃料電池として用いる時の作動温度によって構造変化が生じにくく、且つ燃料電池の出力にも影響を与える酸素イオン導電性を有するものであることが好ましい。このような安定化ジルコニアとしては、MgO、CaO、SrO、Y
2O
3、及びSc
2O
3のうちの少なくとも1種からなる安定化材の添加により安定化されているものを挙げることができる。
【0019】
これらの中では、酸化イットリウム(Y
2O
3)で安定化されたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)又は酸化スカンジウムで安定化されたスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)が特に好ましく、安定化剤の添加量は8〜10mol%のものがより好ましい。これらの安定化ジルコニアは、例えば酸化イットリウム(Y
2O
3)を8mol%添加することで安定化させた東ソー株式会社製のTZ−8Yや、酸化スカンジウム(Sc
2O
3)を10mol%添加することで安定化させた第一稀元素化学工業株式会社製の10ScSZ等が市販されている。
【0020】
この粉砕混合工程で処理されるニッケル化合物と安定化ジルコニアは、「ニッケル化合物:安定化ジルコニア」で表わされる配合割合が、酸化物換算の質量比で50:50〜70:30の範囲内にあるのが好ましい。その理由は、配合割合をこの範囲内にすることで燃料極の熱膨張係数を電解質の熱膨張係数にほぼ整合させることができるうえ、十分な導電率や発電効率を発現させることができるからである。なお、この粉砕混合工程ではニッケル化合物の配合割合を上記の下限側の配合割合である50:50よりも低くし、その後工程において酸化ニッケルのみを添加して混合することで、最終的に得られる複合粒子中に含まれる酸化ニッケルと安定化ジルコニアの酸化物換算での質量比を上記の50:50〜70:30の範囲内となるように調整してもよい。
【0021】
この粉砕混合工程では、上記のニッケル化合物及び安定化ジルコニアに加えて、固体酸化物形燃料電池の燃料極に含有させるために他の酸化物を含有させてもよい。このような他の酸化物としては、例えば特開2006−252796号公報に記載されているジルコニア、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロムや、特開2005−019261号公報に記載されるアルミナ等を挙げることができる。
【0022】
この粉砕混合工程では、解砕装置を用いて上記ニッケル化合物と安定化ジルコニとの粉砕混合が行われる。このように、粉砕混合は解砕しながら混合を行うため、単に混合する場合と比較してより均一性に優れた混合物を得ることができる。解砕装置には、ビーズミルやボールミル等の解砕メディアを用いたもの、ジェットミル等の流体エネルギーを利用することで解砕メディアを用いずに解砕するもの等があるが、本発明の実施形態の燃料極材料の製造方法においては、解砕メディアを用いない解砕法を採用する。その理由は、解砕メディアを用いると解砕自体は容易になるものの、ジルコニア等の解砕メディアを構成している成分が不純物として燃料極材料に混入するおそれがあるからである。また、粉砕混合後にニッケル化合物と安定化ジルコニアとの混合物から解砕メディアを分離する際に、混合物の均一性が損なわれることがあるからである。
【0023】
上記の解砕メディアを用いない解砕法には、ガス(気体)や溶媒(液体)を粉体のキャリアとして用い、この流体の流動エネルギーにより粉体の粒子同士を衝突させる方法、溶媒の流動により粉体にせん断力をかける方法、溶媒のキャビテーションによる衝撃力を用いる方法等の流体エネルギーを用いた解砕法がある。粉体の粒子同士を衝突させる方法を採用した解砕装置としては、例えば、乾式ジェットミルや湿式ジェットミルがあり、具体的には前者にはナノグラインディングミル(登録商標)やクロスジェットミル(登録商標)、後者にはアルティマイザー(登録商標)やスターバースト(登録商標)を挙げることができる。また、溶媒の流動によりせん断力を与える方法を採用した解砕装置としては、例えば、ナノマイザー(登録商標)等を挙げることができ、溶媒のキャビテーションによる衝撃力を用いる方法を採用した解砕装置としては、例えば、ナノメーカー(登録商標)等を挙げることができる。
【0024】
上記の解砕メディアを用いない解砕法の中では、不純物混入の虞が少なく且つ比較的大きな解砕力が得られるので、粉体の粒子同士を衝突させる解砕法が好ましい。上記の流体エネルギーを用いた解砕法の中では、流体にガスを用いる乾式解砕法が特に好ましい。その理由は、乾式解砕法は液体を用いる湿式解砕法とは異なり、解砕後の乾燥処理が不要であるため、乾燥処理中に生じうるニッケル化合物の微粉末の再凝集の問題が生じることがない。また、湿式法の場合に必要な高価な乾燥設備と乾燥のためのエネルギーが不要になる。特に乾式で粒子同士を衝突させる解砕法は、安定化ジルコニアによりニッケル化合物の解砕(粉砕)が促進されるため、流体エネルギーを利用した解砕装置の中では解砕効率が高く、よって解砕に要する時間やエネルギーを低減することができるからである。なお、上記の解砕装置を用いて粉砕混合する際の解砕条件には特に限定がなく、通常の条件の範囲内において適宜調整することにより容易に目的とする粒径や比表面積をもつ燃料極材料粉末を得ることができる。
【0025】
(熱処理工程)
熱処理工程は、前工程の粉砕混合工程で得られたニッケル化合物と安定化ジルコニアの混合物を熱処理して酸化ニッケルと安定化ジルコニアとが複合化した混合焼成物を生成する工程である。ここで複合化とは、酸化ニッケル粒子と安定化ジルコニア粒子とが互いに焼結により一体化した形態を意味している。この熱処理工程の熱処理温度(仮焼温度とも称する)は、特に限定するものではないが、雰囲気温度900〜1300℃が好ましい。この熱処理温度が900℃未満では、酸化ニッケルと安定化ジルコニアとの焼結が効率よく進まず、電極焼付け時の収縮が大きくなるおそれがある。逆に、熱処理温度が1300℃を超えると複合化した混合焼成物同士の焼結や、前述した二次粒子の生成が過度に進行し、後工程の解砕工程で解砕処理を行っても電極材料として使用するために好適な大きさまでこれら焼結体を解砕するのが困難になるので好ましくない。
【0026】
この熱処理を行う設備には特に限定がなく、マッフル炉、管状炉、転動炉等の一般的な焼成炉や焙焼炉を用いることができる。熱処理時の雰囲気は、非還元性雰囲気であれば特に限定はなく、例えば、大気雰囲気、酸素富化空気雰囲気、酸素雰囲気で処理することができるが、経済性を考慮すると大気雰囲気がより好ましい。なお、前述した粉砕混合工程で処理されるニッケル化合物に少なくとも部分的に水酸化ニッケルが含まれる場合は、この熱処理の際に水酸基の脱離により水蒸気が発生する。従って、この水蒸気を効率よく排出するため、十分な流速をもった気流中で熱処理を行うことが好ましい。
【0027】
この熱処理の時間は、前述した熱処理温度や処理量等の処理条件に応じて適宜設定することができるが、燃料極材料としての最終的な粉末形態での比表面積が2m
2/g以上5m
2/g未満となるように熱処理時間を含む熱処理条件を定めるのが好ましい。この燃料極材料としての最終的な粉末形態は熱処理工程後の解砕工程によって得られるが、その比表面積は、この熱処理工程後の粉末の比表面積に対して約1.5〜2.5m
2/g程度増加するだけである。従って、熱処理工程後に得られる燃料極材料粉末の比表面積に基づいて熱処理条件を設定してもよい。すなわち、解砕工程前の燃料極材料粉末の比表面積が0.5〜2.5m
2/gとなるような条件で熱処理することが好ましい。なお、熱処理温度を前述した範囲内に設定することにより、後述する解砕後の粉末のD90と比表面積をそれぞれ所望の値に容易に制御することができる。
【0028】
(解砕工程)
解砕工程は、上記の熱処理工程により得られた酸化ニッケルと安定化ジルコニアの混合焼成物を解砕装置を用いて解砕処理する工程である。この解砕処理により、前工程の熱処理によって粗大化した混合焼成物同士の焼結物が解きほぐされるので、固体酸化物形燃料電池用の燃料極材料粉末として所望の粒径や比表面積をもつ燃料極材料粉末を得ることができる。
【0029】
この解砕に用いる解砕装置は、解砕メディアを用いる媒体式であるのが好ましい。その理由は、解砕メディアを用いることで解砕能力が高くなり、前工程の熱処理により焼結した酸化ニッケルと安定化ジルコニアとの混合粉末の焼結体を効率よく解砕することができるからである。なお、前工程の熱処理工程で得た酸化ニッケルと安定化ジルコニアとの混合焼成物はほぼ均一な混合状態で複合化されているため、この解砕工程で解砕した後においても各々の分散状態はほとんど変化することはない。よって、この解砕処理後に解砕メディアを混合粉末(燃料極材料粉末)から分離する際に当該混合粉末の均一性が損なわれることはほとんどない。但し、解砕メディアからの不純物混入が生じうるので、解砕メディアの材質にはジルコニアを用いることが好ましい。
【0030】
この解砕工程では、乾式解砕法を採用するのが好ましい。その理由は、湿式解砕の場合は解砕後に乾燥処理が必要になるため、この乾燥処理により酸化ニッケル微粉末が再凝集して凝集体を形成することがあるからである。なお、この解砕工程における解砕条件には特に限定がなく、通常の解砕条件の範囲内で適宜調整することにより、所望の粒径(粒度分布)や比表面積を有する燃料極材料粉末を得ることができる。
【0031】
以上説明した粉砕混合工程、熱処理工程、及び解砕工程からなる一連の製造方法により、従来の製造方法に比べて酸化ニッケルと安定化ジルコニアとがより均一に複合化された混合粉末を得ることができる。これにより、SOFCの燃料極の作製に際して行われる焼成時に反り、ヒビ、割れなどの問題を生じにくくすることができる。また、この複合化された混合粒子は、比表面積が2m
2/g以上5m
2/g未満、D90が5μm以下の微細な粉末形態にすることができ、よって固体酸化物型燃料電池用の燃料極材料粉末として好適である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いたD50、D90の測定は、Microtrac Inc製の粒子径測定装置(Microtrac 9320−X100)を用いて、レーザー回折・散乱法で行った。ここでD50及びD90は、上記レーザー回折・散乱法で測定した粉末を粒度分布で表したときの体積積算値がそれぞれ50%及び90%に相当する粒径である。また、比表面積の測定は、窒素ガス吸着によるBET法により求めた。更に、作製した燃料極材料の加熱収縮率の測定は、ブルカー・エイエックス社製の熱膨張率測定装置(Thermo Mechanical Analysis:TMA400S)を使用し、一軸加圧成形により直径5mm、高さ10mmの円柱状に成形した測定サンプルを、300mL/minの空気気流中において10℃/minで雰囲気温度1400℃まで昇温し、この雰囲気温度1400℃で測定した収縮率をそのサンプルの加熱収縮率とした。
【0033】
[実施例1]
先ず、邪魔板とオーバーフロー口を備えた攪拌機付きの実質容積4Lの反応槽に、純水、水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムでpH8.5、炭酸ナトリウム濃度0.6mol/Lに調整した炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとからなる混合水溶液4Lを調製し、十分に攪拌した。また、硫酸ニッケルを純水に溶解してニッケル濃度120g/Lのニッケル水溶液を調製した。更に、上記混合水溶液とは別に、炭酸ナトリウム濃度0.6mol/Lに調整した炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとからなる添加用混合水溶液を調製した。
【0034】
次に、上記のニッケル水溶液と添加用混合水溶液とを、反応槽内の炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとからなる混合水溶液に同時並行的且つ連続的に添加し、これにより得られる反応液を、そのpHが8.5を中心として±0.2以内の変動幅となるように添加用混合水溶液の流量で調整した。反応槽内では液温を60℃とし、攪拌機は700rpmの回転数で撹拌した。このようにして、連続晶析法により水酸化ニッケル粒子の晶析を行いながら、反応液を連続的にオーバーフローさせることによって、析出した水酸化ニッケル粒子を回収した。なお、ニッケル水溶液は75mL/分の流量で添加することによって、添加用混合水溶液の流量と合わせて算出した水酸化ニッケルの滞留時間(反応時間)を約0.5時間に調整した。また、ニッケル水溶液及び添加用混合水溶液が、各々供給ノズル出口部において乱流になるように各ノズルのサイズを選定した。
【0035】
オーバーフローにより回収した水酸化ニッケル粒子を含むスラリーに対してヌッチェによる濾過と保持時間30分の純水レパルプを10回繰り返して、水酸化ニッケル粒子の濾過ケーキを得た。この濾過ケーキを、送風乾燥機を用いて130℃の大気中にて24時間かけて乾燥処理し、水酸化ニッケル粉末(A)を得た。得られた水酸化ニッケル粉末(A)から500gを分取して大気焼成炉に装入し、900℃の大気雰囲気で5時間かけて熱処理して、一次粒子が焼結した二次粒子の形態を有する酸化ニッケル粉末(B)を得た。得られた酸化ニッケル粉末(B)をサンプリングして硝酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(セイコー社製 SPS−3000)で測定したところ、その硫黄品位は10質量ppmであった。
【0036】
次に、酸化イットリウムで安定化させたジルコニア粉末である東ソー株式会社製のYSZ粉末(TZ−8Y)を用意し、上記の酸化ニッケル粉末(B)とこのYSZ粉末とを酸化物換算の質量比で65:35となるようにそれぞれ秤量した後、これら粉末を竪型混合器にて5分間かけて予備混合した。更に、この混合物から分取した300gを徳寿工作所製の流体エネルギー解砕装置であるナノグラインディングミル(登録商標)に装入してプッシャーノズル圧力1.0MPa、グラインディング圧力0.9MPaにて粉砕混合した。得られた混合粉末から分取した100gを大気焼成炉に装入し、900℃の大気雰囲気で5時間かけて熱処理した後、乾式ボールミルにて解砕した。このようにして試料1の燃料極材料粉末を作製した。
【0037】
また、大気焼成炉での熱処理温度を900℃に代えてそれぞれ1000℃及び1300℃にした以外は上記試料1の場合と同様にして試料2及び試料3の燃料極材料粉末を作製した。このようにして作製した試料1〜3の燃料極材料粉末の比表面積、加熱収縮率並びにD50及びD90を測定した。
【0038】
[実施例2]
竪型混合器及び流体エネルギー解砕装置に装入するニッケル化合物を酸化ニッケル粉末(B)に代えて水酸化ニッケル粉末(A)にした以外は上記実施例1と同様にして、試料4の燃料極材料粉末(熱処理温度900℃)、試料5の燃料極材料粉末(熱処理温度1000℃)、及び試料6の燃料極材料粉末(熱処理温度1300℃)をそれぞれ作製し、実施例1と同様に、比表面積、加熱収縮率、並びにD50及びD90を測定した。
【0039】
[比較例]
ニッケル化合物として酸化ニッケル粉末(B)300gをナノグラインディングミル(登録商標、徳寿工作所製)にてプッシャーノズル圧力1.0MPa、グラインディング圧力0.9MPaにて粉砕してD50が0.5μm以下の酸化ニッケル微粉末とした。燃料極用の酸化ニッケル微粉末のD50は、0.5μm以下が好適とされている。作製した酸化ニッケル微粉末と、YSZ粉末(東ソー株式会社製、TZ−8Y)とを用いて、酸化ニッケルとYSZの重量比が酸化物換算で65:35となるように各々を秤量した後、純水と共にボールミルにて24時間かけて解砕し、得られたスラリーを105℃で24時間かけて乾燥処理し、酸化ニッケルとYSZの混合物を得た。この混合物を粉砕混合しないで、実施例1と同様に900〜1300℃の熱処理温度の熱処理及び解砕を行い、試料7の燃料極材料粉末(熱処理温度900℃)、試料8の燃料極材料粉末(熱処理温度1000℃)、及び試料9の燃料極材料粉末(熱処理温度1300℃)をそれぞれ作製し、実施例1と同様に比表面積、加熱収縮率、並びにD50及びD90を測定した。その測定結果を実施例1、2の測定結果と共に下記表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1より、ニッケル化合物及び安定化ジルコニアに対して、本発明の方法に従って乾式粉砕混合処理、熱処理、及び解砕処理からなる一連の処理を行って得た試料1〜6の燃料極材料粉末は、従来の処理法で得た比較例の試料7〜9の燃料極材料粉末とほぼ同程度の低い加熱収縮率が得られた。よって、燃料極の作製に際して行われる焼成時に反り、ヒビ、割れなどの問題が発生しにくい燃料極材料粉末を、従来の処理法よりも低コストに作製できることが分かる。すなわち、試料1〜3では酸化ニッケル粉末(B)を解砕して酸化ニッケル微粉末にする工程が不要であり、試料4〜6では水酸化ニッケル粉末(A)を酸化ニッケル粉末に酸化する工程が不要であるので、それらのコストを削減することができる。