(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合工程は、前記処理液の溶媒についての前記溶解度パラメータと、前記複数の溶剤の各々についての前記溶解度パラメータと、に基づいて、前記複数の各溶剤の混合比を決定する混合比決定工程と、
決定した混合比で溶剤を混合して前記洗浄液を生成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の流路洗浄方法。
前記制御部は、前記処理液の溶媒についての前記溶解度パラメータと、前記複数の溶剤の各々についての前記溶解度パラメータと、に基づいた混合比で前記複数の溶剤が混合されるように、制御信号を出力して前記混合部への前記複数の溶剤の供給を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の流路洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の流路洗浄装置を含む一実施の形態に係るレジスト塗布装置1を示している。レジスト塗布装置1は、ウエハWの表面に処理液であるレジストを供給して、当該レジストを塗布してレジスト膜の形成を行う。レジストは2種類のうちから1種類が選択されてウエハWに供給される。各レジストは溶媒として、溶剤を含んでいる。
【0012】
そして、このレジスト塗布装置1では複数の溶剤を混合してシンナーである洗浄液を生成し、ウエハWにレジストの塗布処理を行う前にレジストの流路に当該洗浄液を供給して、当該流路の洗浄を行う。洗浄液の生成に用いられる溶剤についてはレジストに関する情報に基づいてm種類(mは3以上の整数)の溶剤の中から、m種類より少ないn種類(nは2以上の整数)の溶剤が選択される。具体的に、この処理例では2種類の溶剤が選択される。さらにその選択された溶剤について、体積比である混合比についても設定される。レジストに関する情報とは、この例ではレジストの溶媒の種類についての情報である。
【0013】
上記の洗浄液として用いる溶剤の選択及び混合比の決定については、ハンセン(Hansen)の溶解度パラメータ(SP)に関して、洗浄液がレジストの溶媒と近似するように行われる。上記のハンセンの溶解度パラメータとは、溶剤の性質を表す指標の一つとして知られている。当該溶解度パラメータは、分散項、分極項及び水素結合項からなり、溶剤はこれら3つのパラメータ値を有しており、
図2に示すように、その性質は合成ベクトル200で規定することができる。
【0014】
分散項は分子間の分散項に由来するエネルギー、分極項は分子間の極性力に由来するエネルギー、水素結合項は分子間の水素結合力に由来するエネルギーである。従って、溶解度パラメータを構成する分散項、分極項及び水素結合項が各々近いほど溶剤は、任意の物質に対して近い溶解性を示すことになる。各溶解度パラメータの求め方については、文献「Hansen Solubility Parameters」(著者:Hansen、Charles(2007)、発行元CRC Press)に記載されている。そして、各溶解度パラメータの値は、溶剤の分子構造が特定されれば一義的に決まる値である。なお、特に記載が無い限り本明細書において溶解度パラメータは、ハンセンの溶解度パラメータを指す。
【0015】
この処理例では、溶解度パラメータのうち分極項及び水素結合項について、レジストの溶媒に近似する洗浄液が生成されるようにする。より具体的に述べると、XY座標系において、X軸に分極項、Y軸に水素結合項を夫々設定したときの洗浄液の合成ベクトルについて、レジストの溶媒の合成ベクトルと近似させるように洗浄液を生成させる。さらに詳しく述べると、洗浄液の合成ベクトルの先端として表される座標が、レジストの溶媒の合成ベクトルの先端として表される座標に近接するように洗浄液を生成する。
【0016】
そのように洗浄液を生成したときの作用効果を説明するために、先ず
図3に本発明の比較例の処理について説明する。
図3ではレジストの流路をなす配管を101とし、その縦断面を示している。背景技術の項目で説明したように、配管101には異物である有機物が付着する場合が有る。102、103は、互いに異なる種類の化合物によって構成される有機物である。
図3(a)(b)は、配管101にレジストを供給する前に1種類の溶剤、例えばガンマブチロラクトン(GBL)を供給することで、配管101内を洗浄する例を示している。当該GBLの溶解性について、例えば有機物102に対しては高く、有機物103に対しては低いものとすると、この洗浄処理によっては有機物102のみが除去され、有機物103が配管101に付着したまま残る。そして、この洗浄処理の後に配管101に供給されるレジストの溶媒について、有機物103に対する溶解性が高いとすると、
図3(c)に示すように、溶媒により有機物103が配管101から除去されてウエハWにパーティクルとなって供給されてしまい、当該ウエハWの欠陥となってしまう。
【0017】
そこで、既述のようにレジストの情報に基づいて溶剤を混合し、レジストの溶剤に近い溶解度パラメータを持つように洗浄液を生成して、配管101に供給する(
図4(a)(b))。有機物103についてはレジストの溶媒に対する溶解性が高いため、洗浄液に対する溶解性についても高い。従って当該有機物103は、洗浄液に溶解され、配管101から除去される(
図4(c))。従って、レジストを配管101に供給したときに有機物103が残留した状態となることが抑制され、当該有機物103がウエハWにパーティクルとして付着することが抑制される。
【0018】
なお、
図4では有機物102についても洗浄液によって除去されるように示されている。仮に洗浄液の有機物102に対する溶解性が低く、洗浄液の供給後も有機物102が配管101に付着したまま残ったとしても、洗浄液とレジストの溶剤は溶解性について近似するため、レジストを配管101に供給した際に有機物102は溶解せずに当該配管101に付着したまま残ることになる。従って、当該有機物102のウエハWへの付着が抑制されることになる。
【0019】
このレジスト塗布装置1では互いに異なる溶媒を備える2種類のレジストが用いられるため、各レジストに対応する2種類の洗浄液が生成される。
図1に戻って、レジスト塗布装置1の構成について説明する。図中11はウエハWの裏面中央部を水平に保持するスピンチャックである。図中12は回転機構であり、当該スピンチャック11を回転させて、ウエハWを垂直軸回りに回転させる。図中13は、スピンチャック11に載置されるウエハWを囲むカップであり、ウエハWから飛散した液を受け止める。図中14は、カップ13に開口する排液口である。図中15A、15Bはレジスト供給ノズルであり、各々異なる種類のレジストを鉛直下方に吐出する。
【0020】
ウエハWの処理にはこの15A、15Bのうちのいずれかのレジスト供給ノズルが使用され、各レジスト供給ノズル15A、15Bからレジストが、回転するウエハWの中心部に供給される。遠心力により当該レジストが、ウエハWの中心部から周縁部へと広がるスピンコートによって、ウエハWの表面全体にレジスト膜が形成される。レジスト供給ノズル15Aから吐出されるレジストをレジストA、レジスト供給ノズル15Bから吐出されるレジストをレジストBとする。例えばレジストAを構成する溶媒、レジストBを構成する溶媒について、組成は互いに異なっている。なお、レジスト供給ノズル15A、15Bは、図示しない駆動機構に接続されており、カップ13の外側の位置と、既述のようにウエハWにレジストを供給するカップ13内の位置との間で移動自在である。
【0021】
レジスト供給ノズル15A、15Bには配管系20が接続されており、以下、この配管系20を構成する各要素について説明する。図中21A、21Bは、レジスト供給配管であり、レジスト供給ノズル15A、15Bに夫々接続されている。これらのレジスト供給配管21A、21Bは、上記の配管101に相当する。
【0022】
レジスト供給配管21Aには、バルブV1、ポンプ22A、フィルタ23A、中間タンク24A、バルブV2が、上流側に向かってこの順に介設されている。レジスト供給ノズル15A、レジスト供給配管21A、バルブV1、ポンプ22A、フィルタ23A、中間タンク24A及びバルブV2は、レジストAの流路20Aを構成する。レジスト供給配管21Bには、バルブV3、ポンプ22B、フィルタ23B、中間タンク24B、バルブV4が、上流側に向かってこの順に介設されている。レジスト供給ノズル15B、レジスト供給配管21B、バルブV3、ポンプ22B、フィルタ23B、中間タンク24B及びバルブV4は、レジストAの流路20Bを構成する。
【0023】
バルブV2、V4の上流側で、レジスト供給配管21A、21Bは互いに合流して合流管25をなし、合流管25の上流側は分岐して、配管26A、26Bとして形成されている。配管26Aの上流側はバルブV5を介して、レジストAが貯留されるレジスト供給ボトル27Aに接続されている。このレジスト供給ボトル27Aに貯留されるレジストAは、上記のポンプ22Aによりレジスト供給ノズル15Aに圧送される。このレジスト供給ボトル27Bに貯留されるレジストBは、上記のポンプ22Bによりレジスト供給ノズル15Bに圧送される。
【0024】
レジスト供給ボトル27AにはレジストAが、レジスト供給ボトル27BにはレジストBが夫々貯留されている。レジスト供給ボトル27Aは貯留されたレジストAをレジスト供給配管21A、合流管25、レジスト供給配管21Aのポンプ22Aに供給することができる。ポンプ22Aの動作と各バルブの開閉動作により、レジスト供給ボトル27Aに貯留されるレジストAは、レジスト供給ノズル15Aに供給される。ポンプ22Bの動作と各バルブの開閉動作により、レジスト供給ボトル27Bに貯留されるレジストBは、レジスト供給ノズル15Bに供給される。
【0025】
合流管25には配管28の一端が接続され、配管28の他端は既述した洗浄液が貯留される洗浄液タンク31に接続されている。洗浄液タンク31にはガス供給管32の一端、排気管33の一端、洗浄液供給管34の一端が各々接続されている。ガス供給管32の他端はN
2(窒素)ガスの供給源35に接続されている。排気管33の他端は、排気機構36に接続されている。洗浄液供給管34にはバルブV7が介設されている。N2ガス供給源35から供給されるN
2ガスは洗浄液タンク31内を加圧し、洗浄液タンク31内に貯留された洗浄液を、合流管25及びレジスト供給配管21A、21Bを介してレジスト供給ノズル15A、15Bへ供給する。排気機構36は洗浄液タンク31内を排気することで、そのようにレジスト供給ノズル15A、15Bに向けて供給された洗浄液を洗浄液タンク31内に戻すことができる。このように洗浄液が往復移動することで、レジストAの流路20A及びレジストBの流路20Bが洗浄される。洗浄液タンク31、N2ガス供給源35及び排気機構36により、洗浄機構が構成されている。
【0026】
洗浄液供給管34の上流側は例えば4つに分岐し、配管41及び単一溶剤供給管42〜44を形成している。配管41の上流側はバルブV11を介して混合部45に接続されている。混合部45には、溶剤供給管51〜54の各下流端が接続されている。混合部45はこれら溶剤供給管51〜54から供給された各溶剤が、例えば撹拌されて混合されるように構成されている。
【0027】
溶剤供給管51の上流側は、レジスト塗布装置1が設置される工場の溶剤供給路55に接続されている。例えば当該溶剤供給路55から溶剤供給管51に、溶剤としてPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)が供給される。溶剤供給管51には、この溶剤供給路55から混合部45への溶剤の給断及び流量調整が行えるように、バルブV21、フィルタ56A、流量調整部(フローコントローラ)57A、バルブV22がこの順に介設されている。
【0028】
溶剤供給管52の上流側は、バルブV23、フィルタ56B、流量調整部57Bをこの順に介して、溶剤であるPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)が貯留された溶剤タンク61Bに接続されている。溶剤供給管53の上流側は、バルブV24、フィルタ56C、流量調整部57Cをこの順に介して、溶剤であるシクロヘキサノンが貯留された溶剤タンク61Cに接続されている。溶剤供給管54の上流側は、バルブV25、フィルタ56D、流量調整部57Dをこの順に介して、溶剤であるGBLが貯留された溶剤タンク61Dに接続されている。このように溶剤供給管52〜54に各々介設されたバルブ及び流量調整部により、各溶剤が貯留された溶剤タンク61B、61C、61Dから混合部45への溶剤の給断と、混合部45へ調整される溶剤の流量の調整と、を行うことができる。各流量調整部57A〜57Bは溶剤供給部をなし、下流側への溶剤の流量については、互いに独立して行うことができる。
【0029】
また、溶剤供給管52、53、54には、流量調整部57B、57C、57Dの上流側に、上記の単一溶剤供給管42、43、44の上流端が夫々接続されており、単一溶剤供給管42、43、44にはバルブV31、V32、V33が夫々介設されている。従って、溶剤タンク61B、61C、61Dから混合部45を介して洗浄液タンク31に各溶剤を供給する状態と、混合部45を迂回して洗浄液タンク31に各溶剤を供給する状態とが互いに切り替えられるように構成されている。
【0030】
溶剤タンク61B、61C、61Dには、N2ガス供給管62B、62C、62Dの下流端が夫々接続されている。当該N
2ガス供給管62A、62B、62Cの上流側から溶剤タンク61B、61C、61DにN
2ガスが各々供給されることによって、これらの溶剤タンク61B、61C、61Dは加圧される。そのように加圧されることで、溶剤供給管52、53、54、洗浄液タンク31及びレジストAの流路20A、レジストBの流路20Bに各溶剤を供給することができる。N
2ガス供給管62B、62C、62Dには、N
2ガスの溶剤タンク61B、61C、61Dへの給断を制御できるようにバルブV31、V32、V33が夫々介設されている。なお、上記の配管系20において、一部のバルブ及び、溶剤を貯留するために管路に介設されたタンクなどの構成要素については、図と説明の煩雑化を防ぐために省略している。
【0031】
続いて、レジスト塗布装置1に設けられる制御部10について、
図5を参照しながら説明する。制御部10は例えばコンピュータからなり、図中71はバスである。バス71には、各種の演算を行うCPU72、プログラム格納部73、入力部74、メモリ75、ワークメモリ76が接続されている。プログラム格納部73には、既述のレジストの流路の洗浄及びウエハWへのレジストの塗布を行うことができるように命令(ステップ群)が組まれたプログラム77が格納されている。
【0032】
プログラム77によって制御部10からレジスト塗布装置1の各部に制御信号が出力される。それにより、レジスト塗布装置1の各部の動作が制御される。配管系20に含まれる各バルブの開閉、各流量調整部による下流側への溶剤の流量調整、回転機構12によるウエハWの回転などの動作が、プログラム77により制御される。また、プログラム77は、後述する洗浄液として使用する溶剤の選択及び溶剤の混合比の算出についても行う。プログラム77は、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード及びDVDなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部73に格納される。
【0033】
メモリ75には、各種の溶剤についての水素結合項、分極項の値が記憶されている。この各種の溶剤には、レジスト塗布装置1で洗浄液を構成するPGME、PGMEA、シクロヘキサノン、GBLの他に、レジストの溶媒を構成し得る各種の溶剤が含まれる。ワークメモリ76は、メモリ75に記憶された水素結合項及び分極項についての各値から、洗浄液として使用する溶剤及び溶剤の混合比を決定する演算を行うために用いられる。この演算の一例については後に詳述する。入力部74は、マウス、キーボード、ボタンなどであり、例えばレジスト塗布装置1のオペレータが、レジストに関する情報を入力する。従って入力部74は、当該情報を取得するための情報取得部として構成されている。また、オペレータが入力部74から所定の操作を行うと、後述の洗浄処理が実行される。
【0034】
上記のレジストの情報に基づいた、洗浄液を構成する溶剤の選択及び混合比の決定例について、
図6を参照して説明する。ここでは説明を簡易にするために、洗浄液を構成する溶剤は、PGMEA、シクロヘキサノン及びGBLのうち2つから選択されて洗浄液として混合されるものとして説明するが、PGMEが含まれるように洗浄液を生成してもよい。
図6はXY座標系において、X軸に分極項を、Y軸に水素結合項を夫々示したものであり、各軸の数値の単位は(J/cm
3)
0.5である。このXY座標系において、レジストA、レジストB、PGMEA、シクロヘキサノン、GBLの溶解度パラメータを座標A(Ax、Ay),座標B(Bx、By)、座標C(Cx、Cy)、座標D(Dx、Dy)、座標E(Ex、Ey)として夫々表している。
【0035】
上記のようにレジストA、Bに対応する洗浄液が各々生成される。レジストAに対応する洗浄液を洗浄液A、レジストBに対応する洗浄液を洗浄液Bとして説明する。先に、洗浄液Aを生成するための2種類の溶剤の選択方法、及びその2種類の溶剤の混合比の決定方法について説明する。先ず、上記のXY座標系において、座標Aから座標C、座標D、座標Eまでの各々の距離を算出する。従って、座標AC間の距離={(Ax−Cx)
2+(Ay−Cy)
2}
1/2、座標AD間の距離={(Ax−Dx)
2+(Ay−Dy)
2}
1/2、座標AE間の距離={(Ax−Ex)
2+(Ay−Ey)
2}
1/2を各々算出する。そして、算出されたこれら3つの距離のうち短い距離のものから順に2つを選び出す。その選び出した2つの座標間の距離について、各距離の算出に用いた座標の溶剤を、洗浄液Aの生成に使用する溶剤として決定する。具体的に例えば、座標AC間の距離>座標AD間の距離>座標AE間の距離であれば、座標AD間の距離、座標AE間の距離が選び出される。そして、座標AD間の距離の算出に用いた座標Dに対応するシクロヘキサノン、座標AE間の距離の算出に用いた座標Eに対応するGBLが、夫々洗浄液Aを生成する溶剤として決定される。
【0036】
そして、この選び出した2つの座標間の距離の比に対応するように、溶剤の混合比が決定される。選び出した座標間の距離を一の座標間の距離、他の座標間の距離とし、一の座標間の距離:他の座標間の距離=M:Nであるとすると、
一の座標間に対応する溶剤の混合比率=100×N/(M+N)%
他の座標間に対応する溶剤の混合比率=100×M/(M+N)%として計算する。
具体的に、座標AD間の距離:座標AE間の距離=3:4であるとすると、
座標AD間に対応する溶剤であるシクロヘキサノンの混合比率=100×4/(3+4)%=57%
座標AE間に対応する溶剤であるGBLの混合比率=100×3/(3+4)%=43%として計算される。
【0037】
洗浄液Bを生成するために使用する溶剤及び混合比についても、洗浄液Aを生成するために使用する溶剤及び混合比と同様に決定される。従って、座標BC間の距離、座標BD間の距離、座標BE間の距離が各々算出され、距離が短いものから順に2つが選び出される。そして、選び出された距離の算出に用いられた座標の溶剤が、洗浄液Bを生成する溶剤とされる。例えば、座標BE間の距離>座標BD間の距離>座標BC間の距離とすると、座標C、座標Dに夫々対応するPGMEA、シクロヘキサノンが洗浄液Bの生成に使用する溶剤として決定される。そして、座標BC間の距離:座標BD間の距離=1:8である場合、下記のように混合比が計算される。このような溶剤の選択及び選択された溶剤の混合比の算出は、上記のプログラム77によって行われる。
PGMEAの比率=100×8/(1+8)%=89%
シクロヘキサノンの比率=100×1/(1+8)%=11%
【0038】
ところで説明の便宜上、レジストA、Bについて各々を構成する溶媒については1つの溶剤であるように説明してきたが、複数の溶剤によって構成されていてもよい。そのように溶媒が複数の溶剤により構成される場合は、レジストの情報として、例えば当該溶媒を構成する各溶剤の種類と、各溶剤の混合比とが例えば入力部74から入力されることになる。そして、そのように入力されたデータと、メモリ75に記憶された溶解度パラメータとに基づいて演算が行われ、上記のレジストAの座標(Ax、Ay)、レジストBの座標(Bx、By)が各々設定される。具体的には例えばレジストAの溶媒が溶剤F(Fx、Fy)と、溶剤(Gx、Gy)との2種類が混合されたものであり、混合比が溶剤F:溶剤G=P:Qとすると、下記の式1によってレジストAの座標が算出される。溶媒が3種類以上の溶剤が混合されたものであっても同様の計算式で演算され、レジストAの座標が設定される。つまり、3種類の溶剤が混合されている溶媒の場合には、3種類のうちの2種類が混合された混合溶剤の座標を下記の式1に当てはめて計算し、算出された混合溶剤の座標と3種類の溶剤のうちの残りの1種類の座標とを下記の式1に当てはめて計算すればよい。
Ax=((P・Fx+Q・Gx)/(P+Q))、Ay=(P・Fy+Q・Gy)/(P+Q))・・・式1
【0039】
続いて、上記のレジスト塗布装置1において、レジストの流路が洗浄される手順と、洗浄後にウエハWの処理を行う手順とについて各管における液及びガスの流通状態を示す
図7〜
図14を参照しながら説明する。
図7〜
図14では液及びガスが流通している管について、液及びガスの流通が行われていない管に比べて太く示している。また、配管系20におけるバルブは、後述するような洗浄処理とウエハWへのレジスト塗布処理とが行われるように開閉状態が適宜切り替えられる。各図中において閉じているバルブについては、開いているバルブと区別するために斜線を付して示している。
【0040】
先ず、オペレータがレジストA、レジストBに関する情報を入力し、
図6で説明したレジストAに対応する座標A及びレジストBに対応する座標Bについて設定される。そして、オペレータが、入力部74から洗浄処理を開始する所定の処理を行うと、
図6で説明したように、レジストAに対応する洗浄液Aとして、シクロヘキサノン及びGBLが使用されることが決定され、さらにこれらの溶剤の混合比についてシクロヘキサノン:GBL=57%:43%として決定される。また、レジストBに対応する洗浄液Bとして、PGMEA及びシクロヘキサノンが使用されることが決定され、さらにこれらの溶剤の混合比についてPGMEA:シクロヘキサノン=89%:11%として決定される。
【0041】
その後、例えば溶剤タンク61Dが加圧され、溶剤タンク61D内のGBLが単一溶剤供給管42、洗浄液タンク31を順に介してレジスト供給ノズル15A、15Bに圧送されて、これらレジスト供給ノズル15A、15Bから排出される(
図7)。それにより、レジストAの流路20A及びレジストBの流路20Bが粗洗浄される(ステップS1)。
【0042】
続いて、単一溶剤供給管42へのGBLの供給が停止し、溶剤タンク61C及び溶剤タンク61Dが加圧される状態となる。それにより、これらの溶剤タンク61C、61Dからシクロヘキサノン、GBLが混合部45に夫々供給され、当該混合部45にてこれらの溶剤が混合されて洗浄液Aが生成される。流量調整部57C、57Dにより、シクロヘキサノンの混合部45への供給流量:GBLの混合部45への供給流量は、決定された混合比である57:43とされる。この洗浄液Aは、混合部45から洗浄液タンク31に供給されて、貯留される(
図8)。
【0043】
然る後、溶剤タンク61C、61Dの加圧が停止し、混合部45から洗浄液タンク31への洗浄液Aの供給が停止される。そして、洗浄液タンク31内が加圧されることで、レジストAの流路20Aにおいて洗浄液Aが、レジスト供給ノズル15Aへと供給される(
図9)。続いて、洗浄液タンク31内の加圧が停止し、当該洗浄液タンク31内が排気されることで、洗浄液タンク31の下流側へ供給されている洗浄液Aが洗浄液タンク31に戻される。既述のように、このレジスト供給ノズル15Aへの洗浄液Aの供給と、洗浄液タンク31への洗浄液Aの回収とが繰り返され、レジストAの流路20Aが洗浄される(ステップS2)。
【0044】
この洗浄について具体的に述べると、洗浄液Aの溶解性がレジストAの溶解性に近似しているため、
図3で説明したようにレジストAを供給したときに溶解する有機物が、当該洗浄液Aに溶解し、レジストAの流路20Aを構成する壁部から除去される。然る後、洗浄液タンク31内が加圧され、洗浄液タンク31内及び流路20Aにおける洗浄液Aはレジスト供給ノズル15Aから排出されて除去される。従って、この洗浄液Aに溶解した有機物についても、レジストAの流路20Aから除去される。
【0045】
その後、溶剤タンク61B及び溶剤タンク61Cが加圧される状態となり、これらの溶剤タンク61B、61CからPGMEA、シクロヘキサノンが混合部45に夫々供給され、当該混合部45にてこれらの溶剤が混合されて洗浄液Bが生成される。流量調整部57B、57Cにより、PGMEAの混合部45への供給流量:シクロヘキサノンの混合部への供給流量は、決定された混合比である89:11とされる。このように生成した洗浄液Bは、混合部45から洗浄液タンク31に供給されて、貯留される(
図10)。
【0046】
然る後、混合部45から洗浄液タンク31への洗浄液Bの供給が停止し、洗浄液タンク31内が加圧されることで、混合部45から洗浄液タンク31への洗浄液Aの供給が停止される。そして、洗浄液タンク31内が加圧されることで、レジストBの流路20Bにおいて洗浄液Bが、レジスト供給ノズル15Bへと供給される(
図11)。
【0047】
続いて、洗浄液タンク31内の加圧が停止し、当該洗浄液タンク31内が排気されることで、洗浄液タンク31の下流側へ供給されている洗浄液Bが洗浄液タンク31に戻される。このレジスト供給ノズル15Bへの洗浄液Bの供給と、洗浄液タンク31への洗浄液Bの回収とが繰り返され、レジストBの流路20Bが洗浄される。具体的に述べると、洗浄液Bの溶解性がレジストBの溶解性に近似しているため、
図3で説明したようにレジストBを供給したときに溶解する有機物が、当該洗浄液Bに溶解し、レジストBの流路20Bを構成する壁部から除去される。然る後、洗浄液タンク31内が加圧され、洗浄液タンク31内及び流路20Bにおける洗浄液Bはレジスト供給ノズル15Bから排出されて除去される。従って、この洗浄液Bに溶解した有機物についても、レジストBの流路20Bから除去される。
【0048】
然る後、溶剤タンク61Bが加圧され、溶剤タンク61B内のPEGMEAが単一溶剤供給管42、洗浄液タンク31を順に介してレジスト供給ノズル15A、15Bに圧送される。そしてPEMEAは、これらレジスト供給ノズル15A、15Bから排出されて洗浄処理が終了する(
図12、ステップS4)。このようにPGMEAをレジスト供給ノズル15A、15Bから吐出するのは、このように吐出されるPGMEAを作業員が取得し、検査を行うことにより洗浄が適切に行われたか否かを検査するためである。この検査で異常が無ければ、例えば装置のオペレータにより、ウエハWへのレジスト塗布処理が開始されるように入力部74から所定の操作が行われる。
【0049】
然る後、ウエハWが順次カップ13内に搬送されてレジスト塗布処理が行われる。このレジスト塗布処理では、レジストAがレジスト供給ボトル27Aから洗浄された流路20Aに供給され、レジスト供給ノズル15Aからスピンチャック11に保持されて回転するウエハWに吐出されて、スピンコートされる(
図13)。また、レジストBがレジスト供給ボトル27Bから洗浄された流路20Bに供給され、レジスト供給ノズル15Bから、スピンチャック11に保持されて回転するウエハWに吐出されて、スピンコートされる(
図14)。
【0050】
このレジスト塗布装置1によれば、溶剤を混合し、ハンセンの溶解度パラメータについてレジストA、Bを構成する溶媒と近似するように洗浄液A、Bを夫々生成している。そして、レジストA、レジストBをレジストの流路20A、20Bに夫々供給してレジスト塗布処理を行う前に、洗浄液A、Bをレジストの流路20A、20Bに夫々供給して洗浄処理を行う。従って、ウエハWにレジストA、Bを供給して処理を行う際に、流路20A、20Bに付着した異物がレジストA、Bの溶媒に溶解してウエハWに供給されることが抑制される。結果として、ウエハWに欠陥が発生することを抑制することができる。
【0051】
さらに洗浄液A,Bの溶解度は、レジストA、Bを構成する溶媒の溶解度と近似するため、レジストA,Bの供給時にレジストの流路20A、20BからウエハWに供給されてしまうおそれが有る異物を洗浄処理時に速やかに除去することができる。従って、洗浄に要する時間の短縮化を図ることができる。別の見方をすれば、洗浄を行う時間の不足により、ウエハWに異物が付着してしまうリスクを低減させることができる。また、そのように短い時間で効率良く異物を除去することができるため、洗浄処理に用いる各溶剤の使用量の低減を図ることができる。
【0052】
そしてレジスト塗布装置1によれば、洗浄液を構成する溶剤の選択を行い、さらに選択した溶剤の混合比が調整されることで、洗浄液の溶解度パラメータをレジストの溶媒の溶解度パラメータに、より近似させることができる。その結果として、より確実にレジストの流路20A、20Bから異物を除去することができる。
【0053】
なお、上記の粗洗浄を行うステップS1、洗浄後の状態を確認するステップS4について、使用する溶剤は上記の例には限られない。ところでレジスト供給配管21A、21Bにパーティクルカウンタを設け、ステップS4が実行されるときには、制御部10がこのパーティクルカウンタから送信される検出信号によって異物の数を検出すると共に閾値と比較できる構成としてもよい。従って上記のステップS4は、作業員による検査が行われることには限られない。
【0054】
また、そのように制御部10が異物の数を閾値と比較する構成とされた場合は、異物の数が閾値より低いと判定されると、洗浄処理が終了してウエハWの処理が可能となり、異物の数が閾値以上であると判定されると、例えばステップS2以降の動作が再度実行され、洗浄処理が継続されるようにしてもよい。つまり、洗浄処理の開始から洗浄処理の終了までの動作が自動で実行されるような構成とすることができる。また、上記のように異物の数が閾値より低いと判定されてウエハWの処理が可能となったときには、制御部10がスピンチャック11へのウエハWの搬送を行う搬送機構に制御信号を出力し、自動でウエハWへのレジスト塗布処理が行われるようにしてもよい。このようにレジスト塗布装置1については、洗浄処理の開始からウエハWへの処理が終了するまでの間の一連の処理が、自動で実施されるように構成することができる。
【0055】
既述の例では各溶剤の溶解度パラメータ及びレジストの溶媒の溶解度パラメータに基づいて演算を行い、洗浄液として使用する溶剤を選択し、さらに選択された溶剤の混合比を決定しているが、そのように溶剤の選択及び混合比を決定することには限られない。
図15は、レジスト塗布装置1に設けられる制御部の他の構成例である制御部10Aを示している。制御部10Aにおける制御部10との差異点としては、テーブルが記憶された記憶部78が、バス71に接続されて設けられていることが挙げられる。このテーブルについては、上記の混合部45に供給されて洗浄液を生成し得るGBL、PGME、PGMEA、シクロヘキサノンの各々の混合比と、その混合比で混合したときに生成する洗浄液についての水素結合項及び分極項との対応について規定したものである。つまり、各溶剤の混合比が互いに異なる洗浄液と、当該洗浄液の溶解パラメータとの対応関係について記憶されている。
【0056】
このように制御部10Aが構成される場合、レジストに関する情報が取得され、当該情報に含まれる溶剤の種類及び溶剤の混合比に関する情報からレジストの溶媒における水素結合項及び分極項の各値が取得されると、記憶部78のテーブルから、水素結合項と分極項との各々が、取得されたレジストの溶媒の水素結合項、分極項と最も近い溶剤の混合比が選び出される。そして、そのように選び出された混合比に基づいて、混合部45へ供給される各溶剤の流量が調整されることで、洗浄液が生成されて洗浄が行われる。
【0057】
上記のテーブルにおいては、GBL、PGME、PGMEA、シクロヘキサノンの混合比について様々に設定されているが、そのように設定された混合比には、これらの4種類の溶剤のうちの1つまたは2つについて混合比率が0%とされた混合比が含まれている。つまり、このテーブルは上記の4種類の溶剤のうち、4種類、3種類あるいは2種類が選択されて混合される場合が有るように設定されている。つまり、m種類(mは3以上の整数)の溶剤のうち、m種類より少ないn種類(nは2以上の整数)の溶剤が選択される場合が有るように構成されている。従って、このテーブルは、取得したレジストに関する情報に基づき、m種類(mは3以上の整数)の前記溶剤からn種類以下の前記溶剤を選択するために予め設定された第1のデータ、及び取得したレジストに関する情報に基づき、前記複数の溶剤の混合比を決定するために予め設定された第2のデータに相当する。なお、上記のような溶剤の選択が行われず、4種類の溶剤についての混合比のみが、レジストの溶媒に応じて変化するように、記憶部78のテーブルが設定されていてもよい。また使用する溶剤の種類のみがレジストの溶媒に応じて変化し、溶剤の混合比については溶剤の種類に応じて変化しないようにテーブルを設定してもよい。つまりテーブルは第1のデータ、第2のデータの一方のみを含むように構成されていてもよい。
【0058】
なお、
図5、
図6で説明したように制御部10が、各溶剤の溶解度パラメータの座標に基づいた演算により使用する溶剤を選択する場合も、選択する溶剤は2種類に限られない。例えば上記の4種類の溶剤の座標について、レジストの溶媒の座標に近い座標を持つ3種類を選び出し、混合してもよい。また、制御部10が混合比を各溶剤の溶解度パラメータに応じて設定する例を示したが、そのような混合比の設定を行わず、洗浄液を構成する溶剤の選択が行われたら、選択された溶剤について予め設定された比率で混合部45に供給されて洗浄液が生成されるようにしてもよい。具体的には、例えば各溶剤の洗浄液に占める比率が互いに等しくなるように各溶剤が混合部45に供給されて洗浄液が生成するようにしてもよい。
【0059】
ところで、制御部10または10Aを構成するメモリには、例えばレジストの種別を特定する情報と、当該レジストに対応する洗浄液を構成する溶剤の組み合わせとが互いに対応付けられて、複数ずつ記憶されるように構成されていてもよい。レジストの種別を特定する情報とは、具体的には例えばレジストの製品名であったり、所定のID番号などである。そして、オペレータがレジストの種別を特定する情報を入力すると、この情報に対応する洗浄液を構成する溶剤の組み合わせが選び出され、当該組み合わせの溶剤が混合部45に供給されて洗浄液が生成されるようにしてもよい。つまり、制御部10、10Aが取得するレジストに関する情報としては、上記の例のようなレジストの溶媒の溶解度パラメータを特定するための情報であることには限られない。また、制御部10、10Aがそのようなレジストに関する情報を取得せず、レジスト塗布処理で使用するレジストに応じて装置のオペレータが手動で装置を操作することで、このレジストに対応する2種類以上の溶剤が混合部45に供給されて洗浄液が生成され、レジストの流路20A、20Bに供給されるようにしてもよい。
【0060】
ところで、レジストの溶媒に近似するように洗浄液が生成されることについて詳しく述べる。2次元の座標系において、洗浄液の生成に用いる個々の溶剤の溶解度パラメータの座標、洗浄液の溶解度パラメータの座標、レジストの溶媒の溶解度パラメータの座標を夫々表すものとする。そして、溶剤の座標とレジストの溶媒の座標とについての各距離>洗浄液の座標とレジストの座標との距離である場合には、レジストの溶媒の溶解度パラメータに対して近似する溶解度パラメータを有する洗浄液が生成されたものとする。
【0061】
具体的に
図16を参照して説明する。この
図16では既述の分極項をX軸、水素結合項をY軸にとったXY座標系で、溶剤1の座標と、溶剤2の座標と、溶剤1,2を混合して生成した洗浄液の座標と、レジストの溶媒の座標とを示している。
図16に示す例では、溶剤1の座標とレジストの溶媒の座標との距離L1及び溶剤2の座標とレジストの溶媒の座標との距離L2よりも洗浄液の座標とレジストの溶媒の座標との距離L3の方が小さい。従って、溶解度パラメータについて、レジストの溶媒に近似するように複数の溶剤が混合されて洗浄液が生成されたことになる。なお、この洗浄液の座標としては、複数の溶剤が混合されてなるレジストの溶媒の座標を求める場合と同様、既述した式1によって、個々の溶剤の座標から算出することができる。また、上記の距離L3については、6[(J/cm
3)
0.5]以下であることが好ましく、3[(J/cm
3)
0.5]以下であることがより好ましい。さらに、上記のように二次元の座標系で各溶剤の座標、レジストの溶媒の座標及び洗浄液の座標について既述の関係が成り立てばよい。従って、X軸、Y軸については上記のように分極項、水素結合項として設定されることには限られず、X軸、Y軸の一方については、分散項として設定されてもよい。
【0062】
上記の処理液としてはレジストに限られない。例えば、絶縁膜形成用の薬液、反射防止膜形成用の薬液や接着剤を供給するための流路について、本発明を用いて洗浄することができる。また、上記のレジスト塗布装置1については、レジストA、Bが貯留されたレジスト供給ボトル27A、27Bが設けられない構成とされてもよい。つまり、ウエハWへのレジスト処理が行われず、流路20A、20Bの洗浄のみを行う流路洗浄装置として装置が構成されていてもよい。そして、当該流路洗浄装置で洗浄された流路20A、20Bを、レジストA、レジストBを用いて処理を行うレジスト塗布装置に取り付け、当該レジスト塗布装置でレジスト塗布処理を行ってもよい。つまり、流路の洗浄を行う装置は、基板の処理を行う基板処理装置に組み込まれることに限定されない。
ところで、溶解度パラメータが処理液を構成する溶媒に近似するように複数の溶剤を混合するにあたり、当該溶解度パラメータとしてはハンセンの溶解度パラメータであるものとして説明してきたが、ハンセンの溶解度パラメータには限られない。例えばヒルデブラント(Hildebrand)、Fedors、Van Krevelen、HoyまたはSmallなどの溶解度パラメータについて、処理液を構成する溶媒に近似するように複数の溶剤を混合して洗浄液を生成するようにしてもよい。
また、本発明は既述した実施形態に限られず、各実施形態は適宜変更したり、互いに組み合わせたりすることができる。
【0063】
(評価試験)
続いて、本発明に関連して行われた評価試験1について説明する。
図17は、この評価試験で用いた実験装置の概略構成を示している。レジスト供給ノズル15Aが下流側に接続され、レジストが貯留されるレジスト供給ボトル27Aが上流側に接続され、バルブV1、ポンプ22A及びフィルタ23Aが介設されたレジスト供給配管21Aを備えている。この実験装置のレジスト供給配管21Aについては、配管本体17と、この配管本体17に介設され、且つ配管本体17に対して着脱自在な検査用配管18と、によって構成される。
【0064】
配管本体17から取り外した状態の複数の検査用配管18内に、溶剤を各々通流させて洗浄処理を行った。そして各検査用配管18の洗浄処理後は、洗浄済みの検査用配管18を配管本体17に接続し、検査用配管18の洗浄に用いた溶剤を配管本体17内に通流することで、さらに洗浄処理を行った。この洗浄処理中、レジスト供給ノズル15Aから吐出されてウエハWに付着するパーティクルの数を計測し、当該パーティクルの数が基準値である8個よりも小さくなった時点を基準時として、洗浄処理を終了する。この基準時の後に4日間、ウエハWにレジストを供給して成膜処理を行い、各日の午前、午後に処理されたウエハWに付着したパーティクルの数を測定した。なお、パーティクルについては、80μm以上のものを計測対象とした。上記の検査用配管18の洗浄処理については、溶剤11Aを供給するか、溶剤11Aとは異なる種類の溶剤12Aを供給するか、あるいは溶剤11A及び溶剤12Aをこの順番で供給することにより行った。溶剤11Aで洗浄した検査用配管18を使用して行った試験を評価試験1−1、溶剤12Aで洗浄した検査用配管18を使用して行った試験を評価試験1−2、溶剤11A、溶剤12Aの順で洗浄した検査用配管18を使用して行った試験を評価試験1−3とする。
【0065】
図18のグラフは、この評価試験1の結果を示している。グラフの横軸はパーティクルを測定したタイミングを示し、グラフの縦軸は計測されたパーティクル数を示している。1種類の溶剤で洗浄を行った評価試験1−1、1−2では成膜処理を開始してから時間が経つにつれて計測されるパーティクルが増加し、評価試験1−1では3日目以降、評価試験1−2では2日目以降、夫々基準値を超えた。それに対して2種類の溶剤で洗浄を行った評価試験1−3では、測定期間中に計測されたパーティクル数は、基準値より小さい。従って、検査用配管18には溶剤11A,溶剤12Aに対して各々異なる溶解性を持つ異物が付着しており、評価試験1−1,1−2では洗浄処理により異物が除去しきれず、レジストの供給時に当該異物がレジストの溶媒により溶解して、レジスト供給ノズル15AからウエハWに吐出されたことが考えられる。このような結果から、配管に付着する異物を確実に除去するためには、単一の溶剤を用いて洗浄を行うよりも、上記の実施形態のように溶解度パラメータについてレジストの溶媒に近似する洗浄液を用いて洗浄を行うことが有効であることが推定される。