(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984445
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】移動脱水車の配車システム、配車方法及び配車支援装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20211213BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20211213BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
C02F11/04 A
B09B3/00 CZAB
G08G1/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-11740(P2018-11740)
(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公開番号】特開2019-126794(P2019-126794A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】布施 智之
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−000980(JP,A)
【文献】
特開2017−000982(JP,A)
【文献】
特開2005−034828(JP,A)
【文献】
特開2003−236598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
B09B 3/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物をメタン発酵槽で処理してバイオガスを発生させる複数の廃棄物処理施設へ移動脱水車を派遣する配車システムであって、
各廃棄物処理施設に設置され、前記メタン発酵槽で生じた消化液を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内の消化液量を検出するセンサと、
前記複数の廃棄物処理施設毎に、前記貯留槽内の現在の消化液量と、過去の消化液量の変動とに基づいて、該貯留槽内の消化液量が所定値に達する時期を予測し、廃棄物処理施設への移動脱水車の派遣時期を決定する配車支援装置と、
を備える移動脱水車の配車システム。
【請求項2】
前記配車支援装置は、前記移動脱水車のオペレータの端末に対し、移動脱水車を派遣する廃棄物処理施設及び派遣時期を通知することを特徴とする請求項1に記載の配車システム。
【請求項3】
廃棄物をメタン発酵槽で処理してバイオガスを発生させる複数の廃棄物処理施設へ移動脱水車を派遣する時期を決定する配車方法であって、
各廃棄物処理施設に設置され、前記メタン発酵槽で生じた消化液を貯留する貯留槽内の消化液量を、センサを用いて検出する工程と、
配車支援装置を用いて前記センサの検出結果を収集し、前記複数の廃棄物処理施設毎に、前記貯留槽内の現在の消化液量と、過去の消化液量の変動とに基づいて、該貯留槽内の消化液量が所定値に達する時期を予測し、廃棄物処理施設への移動脱水車の派遣時期を決定する工程と、
を備える移動脱水車の配車方法。
【請求項4】
廃棄物をメタン発酵槽で処理してバイオガスを発生させる複数の廃棄物処理施設へ移動脱水車を派遣する時期を決定する配車支援装置であって、
前記メタン発酵槽で生じた消化液を貯留する貯留槽内の消化液量を検出するセンサから検出結果を収集する通信処理部と、
前記センサの検出結果から、現在の貯留槽内の消化液貯留量を計算する貯留量計算部と、
前記複数の廃棄物処理施設毎の、前記貯留槽内の過去の消化液貯留量の変化を示す貯留量データを記憶する記憶部と、
貯留量計算部が算出した現在の消化液貯留量と、前記貯留量データとに基づいて、該貯留槽内の消化液量が所定値に達する時期を予測する予測部と、
前記予測部の予測結果に基づいて、移動脱水車を派遣する廃棄物処理施設及び派遣時期を決定する決定部と、
を備える移動脱水車の配車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動脱水車の配車システム、配車方法及び配車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家畜糞尿、食品残渣物等の廃棄物をメタン発酵させてバイオガスを生成し、生成したバイオガスをガス発電機に供給して発電を行うバイオガス発電が注目されている。排出事業者から収集した廃棄物は、運搬車でバイオガス発電施設へ搬入されていた。バイオガス発電施設を運営している事業者は、廃棄物の受入費と、発電した電力の売電とにより収益をあげることができる。
【0003】
バイオガス発電施設には、有機性廃棄物を嫌気性反応により減量化すると共にバイオガスを発生させ
るメタン発酵槽と
、メタン発酵槽で発生したバイオガスを用いて発電を行う発電機とが設けられている。また、バイオガス発電施設には
、メタン発酵槽の消化液の脱水処理を行う脱水設備が設けられている。
【0004】
しかし、脱水設備のコストは高額であり、特に廃棄物処理量が1トン/日程度の小型の施設では、事業採算性を悪化させる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−300400号公報
【特許文献2】特開2003−236598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、小型
のメタン発酵設備を有する廃棄物処理施設の事業採算性を向上できる移動脱水車の配車システム、配車方法及び配車支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による移動脱水車の配車システムは、廃棄物
をメタン発酵槽で処理してバイオガスを発生させる複数の廃棄物処理施設へ移動脱水車を派遣する配車システムであって、各廃棄物処理施設に設置され、前
記メタン発酵槽で生じた消化液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽内の消化液量を検出するセンサと、前記複数の廃棄物処理施設毎に、前記貯留槽内の現在の消化液量と、過去の消化液量の変動とに基づいて、該貯留槽内の消化液量が所定値に達する時期を予測し、廃棄物処理施設への移動脱水車の派遣時期を決定する配車支援装置と、を備えるものである。
【0008】
本発明の一態様において、前記配車支援装置は、前記移動脱水車のオペレータの端末に対し、移動脱水車を派遣する廃棄物処理施設及び派遣時期を通知する。
【0009】
本発明による移動脱水車の配車方法は、廃棄物
をメタン発酵槽で処理してバイオガスを発生させる複数の廃棄物処理施設へ移動脱水車を派遣する時期を決定する配車方法であって、各廃棄物処理施設に設置され、前
記メタン発酵槽で生じた消化液を貯留する貯留槽内の消化液量を、センサを用いて検出する工程と、配車支援装置を用いて前記センサの検出結果を収集し、前記複数の廃棄物処理施設毎に、前記貯留槽内の現在の消化液量と、過去の消化液量の変動とに基づいて、該貯留槽内の消化液量が所定値に達する時期を予測し、
廃棄物処理施設への移動脱水車の派遣時期を決定する工程と、を備えるものである。
【0010】
本発明による移動脱水車の配車支援装置は、廃棄物
をメタン発酵槽で処理してバイオガスを発生させる複数の廃棄物処理施設へ移動脱水車を派遣する時期を決定する配車支援装置であって、前
記メタン発酵槽で生じた消化液を貯留する貯留槽内の消化液量を検出するセンサから検出結果を収集する通信処理部と、前記センサの検出結果から、現在の貯留槽内の消化液貯留量を計算する貯留量計算部と、前記複数の廃棄物処理施設毎の、前記貯留槽内の過去の消化液貯留量の変化を示す貯留量データを記憶する記憶部と、貯留量計算部が算出した現在の消化液貯留量と、前記貯留量データとに基づいて、該貯留槽内の消化液量が所定値に達する時期を予測する予測部と、前記予測部の予測結果に基づいて、移動脱水車を派遣する廃棄物処理施設及び派遣時期を決定する決定部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型
のメタン発酵設備を有する廃棄物処理施設の事業採算性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る配車システムの模式図である。
【
図2】同実施形態に係る配車支援装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る配車システムの模式図である。
図1に示すように、配車システムは、移動式汚泥脱水施設である移動脱水車3と、移動脱水車3を複数の廃棄物処理施設2へ配車(派遣)する時期を決定する配車支援装置1とを備える。
【0015】
廃棄物処理施設2は、廃棄物
をメタン発酵させてメタンガスを含むバイオガスを生成し、生成したバイオガスを利用する施設である。廃棄物処理施設2で処理される廃棄物は、家畜糞尿、食品残渣物等の有機ごみである。廃棄物処理施設2としては、例えば産廃処理施設、一般廃棄物処理施設、し尿処理場、下水処理場などが挙げられる。バイオガスの利用としては、発電を行う、ボイラ燃料とする、導管注入する、精製又は液化して燃料とする、水素を製造するなどが挙げられる。下記の実施形態では、発電を行う例について説明する。
【0016】
各廃棄物処理施設2には、前処理部21
、メタン発酵槽22、発電機23、貯留槽24等が設置されている。前処理部21は、例えば、破砕、選別、調質の機能を有し
、メタン発酵に適さない異物を除去したり、水分調整を行ったりする。破砕、選別機能を有する装置としては、多軸式低速回転破砕機や回転ブレード式破砕分別機、湿式破砕分別機等を用いることができる。
【0017】
メタン発酵槽22は、前処理部21から供給される有機性廃棄物を、嫌気性反応により減量化すると共にバイオガスを発生させる
。メタン発酵槽22は、嫌気性条件を維持するために密閉槽であり、熱の拡散を抑えるために断熱構造となっている。
【0018】
発電機23はガスエンジン発電機であり
、メタン発酵槽22で発生したバイオガスを用いて発電を行う。発電された電力は、売電システムを用いて売電される。
【0019】
メタン発酵槽22で生成されるバイオガスの主成分はメタンガス及び二酸化炭素であり、微量の硫化水素が含まれる。そのため、発電機23にバイオガスを供給する前に、脱硫
装置(図示略)により硫化水素が除去される。
【0020】
メタン発酵槽22の消化液は貯留槽24に貯留される。貯留槽24にはセンサ(液位計)20が設けられており、貯留槽24内の消化液の液位が測定されるようになっている。廃棄物処理施設2には、センサ20による測定結果を収集し、配車支援装置1へ送信するコンピュータ(図示略)が設けられている。例えば、コンピュータは、センサ20による測定結果を1〜2回/日程度の頻度で収集し、配車支援装置1へ送信する。
【0021】
貯留槽24内の消化液の脱水処理は、廃棄物処理施設2に派遣された移動脱水車3により行われる。移動脱水車3は公知のものを使用することができ、例えば、薬液溶解タンクと、薬液溶解タンクで作製された凝集液を消化液中に攪拌混入してフロックを生成させる反応タンクと、フロックに含まれる液分を脱水するスクリュー式脱水機とを車両の荷台に搭載したものである。
【0022】
移動脱水車3で脱水処理した後の脱水残渣は焼却処理される。また、移動脱水車3に堆肥化装置をあわせて搭載し、脱水残渣の堆肥化までを連続して行えるようにしてもよい。脱水濾液は、前処理部21で再利用されたり、分離水処理設備(図示略)で処理されたりする。
【0023】
配車支援装置1は、各廃棄物処理施設2のコンピュータから受信したセンサ20の測定結果から、貯留槽24内の消化液貯留量を算出し、廃棄物処理施設2毎に、移動脱水車3を派遣すべき日程を決定する。
【0024】
移動脱水車3のオペレータ又はドライバーは、配車支援装置1と通信可能なスマートフォン等の通信端末(図示略、以下オペレータ端末と記載する。)を所有しており、配車支援装置1から移動脱水車3を派遣する場所及び日程の指示を受信する。
【0025】
これにより、各廃棄物処理施設2には、貯留槽24が満杯になる前の好適なタイミングに移動脱水車3が派遣され、貯留槽24内の消化液の脱水処理が行われる。廃棄物処理施設2に高価な脱水設備を設ける必要がないため、廃棄物処理施設2の事業採算性を向上させることができる。特に、廃棄物処理量が1トン/日程度、消化液の発生量が1m3/日程度の小型の廃棄物処理施設2の事業採算性向上に好適である。
【0026】
図2は、配車支援装置1の機能を示すブロック図である。配車支援装置1は、CPU(中央演算処理装置)や、フラッシュメモリ、ROM(Read−only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等からなる記憶部10を有したコンピュータである。
【0027】
記憶部10は、配車支援プログラム、施設情報、貯留量データ等を格納している。
【0028】
施設情報には、各廃棄物処理施設2の所在地、貯留槽24のサイズ、容量等が登録されている。
【0029】
貯留量データには、廃棄物処理施設2毎に、貯留槽24の過去の貯留量の変化を示すデータが記録されている。例えば、季節によって廃棄物処理施設2に搬入される廃棄物の量や種類が変わり、消化液の発生量もそれに応じて変動する。
【0030】
配車支援装置1のCPUが配車支援プログラムを実行することで、通信処理部11、貯留量計算部12、貯留量予測部13、及び派遣時期決定部14が実現される。
【0031】
通信処理部11は、各廃棄物処理施設2のコンピュータから、センサ20による測定結果を受信する。また、通信処理部11はオペレータ端末と通信を行い、移動脱水車3を派遣する場所及び日程を通知する。オペレータ端末への通知はEメールでもよいし、専用のアプリケーションソフトウェアを用いたメッセージの通信でもよい。
【0032】
貯留量計算部12は、通信処理部11が廃棄物処理施設2のコンピュータからセンサ20による測定結果を受信すると、その測定結果と、施設情報に登録されている貯留槽24のサイズとに基づいて、現在の消化液貯留量を計算する。貯留量計算部12は、算出した貯留量を貯留量データに登録し、貯留量データを更新する。
【0033】
貯留量予測部13は、廃棄物処理施設2毎に、施設情報に登録されている貯留槽24の容量と、貯留量データとから、貯留槽24内の消化液量が所定値、例えば容量の90%程度に達する時期を予測する。例えば、貯留量予測部24は、現在の貯留量と、過去の貯留量の変動とから、貯留槽24内の消化液量が所定値に達するまでの日数を算出する。
【0034】
派遣時期決定部14は、貯留量予測部13の予測結果に基づいて、所定期間内、例えば1ヶ月以内に貯留槽24内の消化液量が所定値に達する廃棄物処理施設2を特定し、移動脱水車3を派遣する日程を決定する。
【0035】
通信処理部11は、派遣時期決定部14が決定した移動脱水車3の派遣先となる廃棄物処理施設2の名称や所在地と、派遣日程とを、オペレータ端末に通知する。オペレータ端末への通知頻度は任意であり、例えば1〜4回/月程度である。
【0036】
オペレータ端末への通知に基づいて、移動脱水車3が廃棄物処理施設2へ派遣され、貯留槽24内の消化液の脱水処理が行われる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、配車支援装置1は、各廃棄物処理施設2の貯留槽24内の消化液量の情報を収集し、移動脱水車3を派遣する好適な日程を決定する。廃棄物処理施設2に高価な脱水設備を設ける必要がないため、廃棄物処理施設2の事業採算性を向上させることができる。
【0038】
廃棄物処理施設2での消化液発生量は、廃棄物処理施設2に搬入される廃棄物の種類や量によって変わる。廃棄物処理施設2に搬入される廃棄物の排出事業者が変わる場合、廃棄物処理施設2のコンピュータは、処理する廃棄物の種類又は量が変更したことを配車支援装置1へ通知してもよい。配車支援装置1は、この通知を受け取った後、センサ20の測定結果の収集頻度を高め、貯留槽24内の消化液量の変化を詳細に確認し、消化液貯留量の予測精度が低下することを防止するようにしてもよい。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 配車支援装置
2 廃棄物処理施設
3 移動脱水車