(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[蓄電システムの全体構成]
実施形態に係る蓄電制御装置は蓄電システム1の一部として機能する機器である。蓄電システム1は、再生可能エネルギを利用して生成された電気を管理するシステムであり、例えば家庭、オフィス、工場、農場等の様々な場所で利用され得る。
【0013】
蓄電制御装置について説明する前に、蓄電システム1を含む電力システムの全体像を説明する。
図1は、蓄電システム1およびその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。蓄電システム1は発電装置2と電力系統4および負荷5との間に設けられる。蓄電システム1および発電装置2を含む直流系統と、電力系統4および負荷5を含む交流系統とは、PCS(パワーコンディショニングシステム)3を介して電気的に接続される。蓄電システム1、発電装置2、およびPCS3は、直流電流が流れるDC(Direct Current)バス6を介して電気的に接続される。電力系統4、負荷5、およびPCS3は、交流電流が流れるAC(Alternating Current)バス7を介して電気的に接続される。発電装置2により生成された電気、または蓄電システム1に蓄えられた電気は負荷5に供給され、場合によっては、電力系統4側に供給されること(例えば、売電)もあり得る。蓄電システム1は、蓄電池をクッションのように利用することで発電装置2から電力系統4または負荷5への電力供給の変動を緩和する役割も担う。
【0014】
発電装置2は、再生可能エネルギを利用して発電を行う装置である。発電方法および発電装置2の種類は何ら限定されない。例えば、発電装置2は太陽光発電装置でもよいし風力発電機でもよい。
【0015】
電力系統4は、発電、変電、送電、および配電を統合した商用電源の設備であり、例えば電力会社により提供される。
【0016】
負荷5は、電力を消費する1以上の機器または装置の集合であり、例えば、1以上の家庭用または業務用の様々な電気機器の集合である。
【0017】
PCS3は、直流の電気を交流に変換する装置であり、電力変換器の一種である。PCS3は、DCバス6に接続するDC端子と、ACバス7に接続するAC端子とを有する。
【0018】
蓄電システム1は、蓄電装置10、電力変換器20、および統括コントローラ30を備える。一つの蓄電装置10には一つの電力変換器20が対応し、これら二つの装置はDCバスを介して電気的に接続する。対応し合う蓄電装置10および電力変換器20の組を蓄電ユニットということもできる。
図1の例では蓄電システム1は3組の蓄電装置10および電力変換器20(3個の蓄電ユニット)を備えるが、その組数は限定されず、1でも2でも4以上でもよい。複数の蓄電ユニットが存在する場合に、蓄電装置10の性能(例えば、定格容量、応答速度など)および電力変換器20の性能(例えば、定格出力、応答速度など)は統一されてもよいし、統一されなくてもよい。統括コントローラ30は、通信線40を介して各蓄電装置10および各電力変換器20と通信可能に接続される。
【0019】
蓄電装置10は、発電装置2により生成された電気を化学エネルギに変えて蓄える装置であり、充放電が可能である。蓄電装置10は、発電装置2によって生成された直流電力の変動を緩和(平準化)するためにも用いられ得る。蓄電装置10は、直列に接続された複数のセルを含んで構成される鉛蓄電池11を備える。鉛蓄電池11を構成するセルの個数は限定されず、例えば200でも288でもよい。蓄電装置10はさらに、バッテリ・コントロール・ユニット(Battery Control Unit:BCU)などの制御機能を含み、この制御機能により、蓄電装置10に関するデータを統括コントローラ30に送信することができる。
【0020】
電力変換器20は、蓄電装置10の充放電を制御する装置である。電力変換器20は、統括コントローラ30から指示信号(データ信号)を受信し、その指示信号に基づいて蓄電装置10の充放電を制御する。電力変換器20は、充電モードでは、発電装置2から流れてきた電気を蓄電装置10に蓄え、放電モードでは、蓄電装置10を放電させて外部に電力を供給し、停止状態では充放電を行わない。電力変換器20は、例えばDC/DCコンバータであり得る。
【0021】
[統括コントローラの構成]
統括コントローラ30は電力変換器20および蓄電装置10を制御するコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)である。
図2は、統括コントローラ30の機能構成を示す図である。この図に示すように、統括コントローラ30はハードウェア装置としてプロセッサ101、メモリ102、および通信インタフェース103を備える。プロセッサ101は例えばCPUであり、メモリ102は例えばフラッシュメモリで構成されるが、統括コントローラ30を構成するハードウェア装置の種類はこれらに限定されず、任意に選択されてよい。統括コントローラ30の各機能は、プロセッサ101が、メモリ102に格納されているプログラムを実行することで実現される。例えば、プロセッサ101は、メモリ102から読み出したデータまたは通信インタフェース103を介して受信したデータに対して所定の演算を実行し、その演算結果を他の装置に出力することで、該他の装置を制御する。あるいは、プロセッサ101は受信したデータまたは演算結果をメモリ102に格納する。統括コントローラ30は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータの集合(すなわち分散システム)で構成されてもよい。
【0022】
蓄電システム1の特徴の一つは均等充電の制御にあり、この特徴は特に統括コントローラ30により実現される。本実施形態では、本発明に係る蓄電制御装置を統括コントローラ30に適用する。以下では、均等充電に関する統括コントローラ30の機能および構成を説明する。均等充電とは、一つの鉛蓄電池11を構成する複数のセル間で電圧を一定にするための充電である。鉛蓄電池11の個々のセル間で電圧のばらつきが生じると、電位差よる循環電流が発生してセルに悪影響を及ぼし得る。均等充電は、このようなセル間の電圧のばらつきを解消して電池の品質をリセットする処理である。
【0023】
プロセッサ101は取得部31、決定部32、判定部33、選択部34、および指示部35として機能する。取得部31は、鉛蓄電池11に関するデータを取得する機能要素である。決定部32は、鉛蓄電池11の放電状態を判定するための判定期間を決定する機能要素である。判定部33は、決定された判定期間における鉛蓄電池11の放電状態を判定する機能要素である。放電状態とは、鉛蓄電池11が満充電状態と比べてどのくらい電気を放出したかを示す概念であり、様々な指標を用いて表すことができる。選択部34は、判定された放電状態に基づいて、予め定められた複数の均等充電方法の中から一つの均等充電方法を選択する機能要素である。指示部35は、選択された均等充電方法に基づく充電指示を蓄電装置10に向けて送信する機能要素である。充電指示は、蓄電装置10に鉛蓄電池11の均等充電を実行させるためのデータ信号である。このように、プロセッサ101は蓄電装置10の鉛蓄電池11の放電状態に合った方法でその鉛蓄電池11に対して均等充電を実行する。
【0024】
鉛蓄電池11の放電状態は鉛蓄電池11の容量の減少の度合いを知る手掛かりとなる。典型的には、電極に発生する非伝導性の結晶(サルフェーション)により電池内の内部抵抗が増加して鉛蓄電池11の容量が減少し、これは鉛蓄電池11の劣化を意味する。したがって、鉛蓄電池11の放電状態に合った方法で均等充電を実行することは、鉛蓄電池11の劣化の度合いに合った均等充電を実行することであるともいえる。
【0025】
メモリ102はプロセッサ101の動作に必要な情報を記憶する。例えば、メモリ102は選択規則36を記憶する。選択規則36は複数の均等充電方法を定義する情報であり、個々の均等充電方法は、鉛蓄電池11の想定される放電状態と対応付けられる。したがって、選択規則36は、予め用意された複数の均等充電方法の中から、判定された放電状態に対応する一つの均等充電方法を選択するための規則である。選択規則36の記述方法は限定されない。例えば、選択規則36は数式、アルゴリズム、および対応表のいずれかで表されてもよいし、数式、アルゴリズム、および対応表のうちの任意の2以上の組合せで表されてもよい。あるいは、選択規則36は、プロセッサ101により実行されるプログラムの一部であってもよい。
【0026】
選択規則36は書き換え可能であってもよい。例えば、蓄電装置10が別の型のものに交換されたり新しい型の蓄電装置10が追加されたりした場合には、管理者がその構成の変更に応じてメモリ102内の選択規則36を書き換える。この場合、管理者は所定の通信ネットワーク(図示せず)を介して管理用のコンピュータ(図示せず)で統括コントローラ30にアクセスし、構成の変更を反映した新たな選択規則36を統括コントローラ30に転送してもよい。この転送により、メモリ102内の選択規則36が書き換えられる。
【0027】
通信インタフェース103はプロセッサ101と連携してデータの送受信を実行する。例えば、通信インタフェース103は取得部31と連携して、充放電の制御に必要な入力データを受信する。また、通信インタフェース103は指示部35と連携して電力変換器20に充電指示を送信する。
【0028】
[統括コントローラの動作]
図3および
図4を参照しながら、統括コントローラ30の動作を説明するとともに本実施形態に係る蓄電制御方法について説明する。
図3は統括コントローラ30の動作の例を示すフローチャートであり、具体的には、一つの蓄電装置10に対して均等充電を実行する処理を示す。
図4は選択規則36の例を示す図である。
【0029】
ステップS11では、決定部32が判定期間を決定する(決定ステップ)。より具体的には、決定部32は、取得部31により取得されたデータに基づいて、判定期間の始点および終点を決定する。判定期間の始点および終点の双方は、前回の均等充電(第1均等充電)が終了した後から、次の均等充電(第2均等充電)が開始される前までの間の時間帯内に設定される。
【0030】
取得部31は、第1均等充電が終了した後にデータを取得し始める。取得部31は、蓄電装置10または該蓄電装置10に対応する電力変換器20から通信線40経由でデータを受信することで、鉛蓄電池11の充電率(States Of Charge:SOC)を示すデータを取得する。このデータに基づいて特定されるSOCは、一つの鉛蓄電池11を構成する個々のセルのSOCの平均値である平均SOCであってもよい。あるいは、取得されるSOCは、一つの鉛蓄電池11を構成する特定の一部のセルのSOCであってもよい。取得部31は、判定期間の決定のために定期的にデータを取得する。
【0031】
決定部32は、取得されたデータにより特定されるSOCが、予め定められた閾値Taまで下がったか否かを判定する。この閾値Taは予めメモリ102内に記憶され、決定部32はメモリ102を参照することで閾値Taを得ることができる。閾値Taは90%にまたは90%に近い値に設定されてもよい。例えば、閾値Taは85%以上95%未満の範囲内の値であってもよいし、88%以上92%未満の範囲内の値であってもよいし、89%以上91%未満の範囲内の値であってもよい。取得部31が定期的にデータを取得することに対応して、決定部32はこの判定処理を繰り返し実行し得る。
【0032】
特定されたSOCが閾値Taまで下がっていない場合、すなわち、そのSOCが閾値Taより大きい場合には、決定部32は判定期間の始点を設定しない。この場合には、処理はステップS12に進まず、ステップS11の処理が再び実行される。
【0033】
特定されたSOCが閾値Taまで下がった場合、すなわち、そのSOCが閾値Ta以下である場合には、決定部32は現在時点を判定期間の始点として決定する。この処理は、第1均等充電が終了した鉛蓄電池11のSOCが第1均等充電直後の値(例えば100%)から閾値Taまで下がった時点を、判定期間の始点として決定する処理である。
【0034】
第1均等充電が終了した直後の時点ではなく、SOCが閾値Taまで下がった時点を判定期間の始点として決定する技術的意義を説明する。鉛蓄電池11の寿命を短くする要因の一つに、鉛蓄電池11の正極板の伸びがある。極板の伸びは格子の腐食によって進行する。この腐食の形態には、粒界腐食と全面腐食との2種類がある。粒界腐食は格子がヒビ割れを起こすように進行し、格子内部まで腐食が入り込むことで格子伸びが大きくなる。全面腐食の場合には、粒界腐食に比べて格子伸びが小さく、腐食量の増加は緩やかである。粒界腐食は、鉛蓄電池11の過充電により粒界腐食の発生電位での滞在期間が長くなることで生じると考えられている。粒界腐食は電池寿命に著しく影響するため、粒界腐食の発生を未然に防ぐ必要がある。
【0035】
電力供給の変動緩和の運用は自然環境に左右されるため、その運用の開始直後に高レートの充電が行われる可能性がある。すなわち、SOCが100%であるかまたは100%に近い状態で充電を実行すると過充電が発生する可能性がある。SOCが100%である状態で、一定期間、最大許容レートで充電を行うと、端子電圧が大幅に上昇すること(すなわち、過充電)が確認されている。この過充電により、粒界腐食が生じる危険性が高くなる。これに対して、SOCが90%以下である状態で充電を実行すると、電位上昇が小さくなり、電位は、粒界腐食が生じる可能性がある水準まで到達しない。
【0036】
一方、SOCが低い状態で運用を行った場合には、SOCが高い状態での運用と比べて全面腐食量が増加することが知られている。本発明の発明者は、SOCを約30%、約60%、および約90%に維持した三つの場合のそれぞれで、模擬的な変動緩和における鉛蓄電池11の寿命についての試験を行った。その結果、SOCが30%および60%である二つの場合には、全面腐食量の上昇が確認された。これに対して、SOCが90%である場合には腐食量の増加が抑えられた。これらの結果を踏まえて、本発明の発明者は、SOCが60%〜90%の間における腐食量の増加の推移を予測した。その結果、発明者はSOCを約90%に調整することが、鉛蓄電池11の寿命を長く維持することに最も効果的であることを見出した。したがって、閾値Taを90%にまたは90%に近い値に設定した上で、SOCがその閾値Taまで下がった時点を判定期間の始点として設定してもよい。
【0037】
判定期間の始点を決定した後に、決定部32はその判定期間の終点を決定する。例えば、決定部32は、その始点から、予め定められた固定期間Txが経過する時点を、判定期間の終点として決定する。この固定期間Txは予めメモリ102内に記憶され、決定部32はメモリ102を参照することで固定期間Txを得ることができる。固定期間Txは、蓄電装置10または鉛蓄電池11に対応して設定されてもよい。例えば、固定期間Txは、蓄電装置10の種類または性能に応じて設定されてもよいし、鉛蓄電池11の種類または性能に応じて設定されてもよい。固定期間Txの具体的な長さは限定されず、例えば、蓄電装置10または鉛蓄電池11に対応して、2週間であってもよいし、1ヵ月であってもよい。あるいは、固定期間Txは蓄電装置10および鉛蓄電池11にかかわらず一定値であってもよい。判定期間の終点は、次の均等充電(第2均等充電)の直前の時点であり得る。判定期間が決定されると、処理はステップS12に進む。
【0038】
ステップS12では、取得部31が、決定された判定期間における鉛蓄電池11の状態を取得する。より具体的には、取得部31は、判定期間の始点から終点までの間の時間帯における鉛蓄電池11の状態を取得する。取得部31は蓄電装置10または該蓄電装置10に対応する電力変換器20から通信線40経由でデータを受信することで、鉛蓄電池11の状態を示すデータを取得する。鉛蓄電池11の状態を示すデータの種類は限定されず、例えば、鉛蓄電池11の充電量または充電率を示すデータであってもよいし、鉛蓄電池11の放電量を示すデータであってもよい。取得部31がそのデータを取得するタイミングは限定されない。例えば、取得部31は判定期間中に定期的にデータの取得を繰り返してもよい。あるいは、取得部31は、判定期間中における鉛蓄電池11の状態を示すデータを一度に取得してもよい。
【0039】
ステップS13では、判定部33が、取得されたデータに基づいて、判定期間における鉛蓄電池11の放電状態を判定する(判定ステップ)。判定部33は判定期間の決定に応答してこの判定処理を実行する。判定部33は取得されたデータに基づく計算により放電状態を判定してもよいし、取得されたデータをそのまま放電状態として判定してもよい。放電状態の判定に用いられる指標は限定されず、例えば平均SOC、または積算放電量であってもよい。積算放電量とは、判定期間中において鉛蓄電池11から放出された電気量の総和である。
【0040】
ステップS14では、選択部34が選択規則36を参照して、複数の均等充電方法の中から、判定された放電状態に対応する一つの均等充電方法を選択する(選択ステップ)。選択規則36は判定される放電状態の種類に応じて定義され、均等充電方法の選択方法も放電状態の種類により変わる。以下では、放電状態として平均SOCおよび積算放電量のいずれか一つを用いた場合の選択方法を例示する。
【0041】
メモリ102が
図4の例(a)に示す選択規則36を記憶しているとする。例(a)では、選択規則36は第1の方法、第2の方法、および第3の方法という三つの均等充電方法を定義しており、それぞれの均等充電方法は、平均SOCと、充電時の設定電圧との対応を示す。第1の方法は、平均SOCが50%未満であれば設定電圧2.50V/セルで均等充電を行うことを意味する。第2の方法は、平均SOCが50%以上かつ70%未満であれば設定電圧2.45V/セルで均等充電を行うことを意味する。第3の方法は、平均SOCが70%以上かつ90%未満であれば設定電圧2.42V/セルで均等充電を行うことを意味する。平均SOCを用いる場合には、選択部34は、選択規則36を参照して、判定部33により判定された平均SOCに対応する一つの均等充電方法を選択する。
【0042】
平均SOCが相対的に小さい場合には、鉛蓄電池11の容量が低下しているので(言い換えると、鉛蓄電池11の劣化が進んでいるので)、鉛蓄電池11に電気が入りにくい。そのため、第1の方法では、充電の設定電圧を高くすることで鉛蓄電池11に電気が入り易くなるようにしている。これに対して、平均SOCが相対的に大きい場合には、鉛蓄電池11の容量は低下していないので(言い換えると、鉛蓄電池11の劣化は進んでいないので)、鉛蓄電池11に電気が入り易い。そのため、第3の方法では、過充電が起こらないように設定電圧を低くしている。第2の方法は、第1の方法と第3の方法との中間であるといえる。
【0043】
さらに別の態様として、メモリ102が
図4の例(b)に示す選択規則36を記憶しているとする。例(b)では、選択規則36は第1の方法、第2の方法、および第3の方法という三つの均等充電方法を定義しており、それぞれの均等充電方法は、積算放電量と、充電時の設定電圧との対応を示す。第1の方法は、積算放電量が8000Ah以上かつ11000Ah未満であれば設定電圧2.50V/セルで均等充電を行うことを意味する。第2の方法は、積算放電量が5000Ah以上かつ8000Ah未満であれば設定電圧2.45V/セルで均等充電を行うことを意味する。第3の方法は、積算放電量が1000Ah以上かつ5000Ah未満であれば設定電圧2.42V/セルで均等充電を行うことを意味する。積算放電量を用いる場合には、選択部34は、選択規則36を参照して、判定部33により判定された積算放電量に対応する一つの均等充電方法を選択する。
【0044】
積算放電量が相対的に多い場合には、鉛蓄電池11の容量が低下しており、鉛蓄電池11に電気が入りにくい。そのため、第1の方法では、充電の設定電圧を高くすることで鉛蓄電池11に電気が入り易くなるようにしている。これに対して、積算放電量が相対的に少ない場合には、鉛蓄電池11の容量は低下していないので、鉛蓄電池11に電気が入り易い。そのため、第3の方法では、過充電が起こらないように設定電圧を低くしている。第2の方法は、第1の方法と第3の方法との中間であるといえる。
【0045】
図4でのそれぞれの例における基準値および境界値はあくまでも一例である。平均SOCおよび積算放電量のいずれを採用するかにかかわらず、個々の均等充電方法の条件は、鉛蓄電池11の性能等に応じて任意の基準で設定される。
【0046】
均等充電方法は設定電圧以外のパラメータを用いて定義されてもよい。例えば、均等充電方法は充電時間を用いて定義されてもよいし、充電頻度を用いて定義されてもよい。充電時間は、一回の均等充電における鉛蓄電池11の充電の実行時間である。例えば、平均SOCが小さいほど(あるいは、積算放電量が多いほど)充電時間が長くなるように、均等充電方法が規定される。充電頻度は、単位時間(例えば一週間)における均等充電の実行回数である。例えば、平均SOCが小さいほど(あるいは、積算放電量が多いほど)充電頻度が大きくなるように、均等充電方法が規定される。あるいは、均等充電方法は、設定電圧、充電時間、および充電頻度のうちの任意の2種類以上のパラメータの組合せにより定義されてもよい。予め設定される均等充電方法の個数は2でもよいし4以上でもよい。
【0047】
ステップS15では、指示部35が、選択された均等充電方法に基づく充電指示を生成し、蓄電装置10に向けてその充電指示を送信する(指示ステップ)。「蓄電装置に向けて充電指示を送信する」とは、均等充電を実行するために、該蓄電装置10に、または該蓄電装置10に対応する他の装置に、充電指示を送信することをいう。本実施形態では、指示部35は、蓄電装置10に対応する電力変換器20に通信線40を介して充電指示を送信する。充電指示は、電力変換器20のIPアドレスと、選択された均等充電方法に基づくデータとを含む。例えば、選択された均等充電方法が
図4の例(a)に示す第1の方法であれば、充電指示は設定電圧2.50V/セルを示すデータを含む。
【0048】
ステップS16では、充電指示を受信した電力変換器20が充電モードに遷移し、充電指示に従って蓄電装置10に対して第2均等充電を実行する。第2均等充電は、第1均等充電の次に実行される均等充電である。
【0049】
このように、統括コントローラ30は、前回の均等充電(第1均等充電)が終了した後に判定期間の始点および終点を決定し、その判定期間における鉛蓄電池11の放電状態を判定する。そして、統括コントローラ30は、判定された放電状態に対応する均等充電方法を選択し、選択された均等充電方法で次の均等充電(第2均等充電)を開始する。
【0050】
蓄電システム1が複数の蓄電装置10を備える場合には、統括コントローラ30はすべての蓄電装置10についてステップS11〜S16の処理を実行する。一つの蓄電装置10について、ステップS11〜S16の処理は繰り返し(例えば、さらに次の均等充電を実行するために)実行される。
【0051】
[プログラム]
コンピュータを統括コントローラ30として機能させるための蓄電制御プログラムは、該コンピュータを取得部31、決定部32、判定部33、選択部34、および指示部35として機能させるためのプログラムコードを含む。この蓄電制御プログラムは、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、蓄電制御プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供された蓄電制御プログラムは例えばメモリ102に記憶される。プロセッサ101がメモリ102と協働してその蓄電制御プログラムを実行することで、上記の各機能要素が実現する。
【0052】
[効果]
以上説明したように、本発明の一側面に係る蓄電制御装置は、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置であって、第1均等充電が終了した鉛蓄電池のSOCが、予め定められた閾値まで下がった時点を、鉛蓄電池の放電状態を判定するための判定期間の始点として決定する決定部と、判定期間における鉛蓄電池の放電状態を判定する判定部と、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された放電状態に対応する均等充電方法を選択する選択部と、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して第1均等充電の次の第2均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示部とを備える。
【0053】
本発明の一側面に係る蓄電制御方法は、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置により実行される蓄電制御方法であって、第1均等充電が終了した鉛蓄電池のSOCが、予め定められた閾値まで下がった時点を、鉛蓄電池の放電状態を判定するための判定期間の始点として決定する決定ステップと、判定期間における鉛蓄電池の放電状態を判定する判定ステップと、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された放電状態に対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して第1均等充電の次の第2均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示ステップとを含む。
【0054】
本発明の一側面に係る蓄電制御プログラムは、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置としてコンピュータを機能させる蓄電制御プログラムであって、第1均等充電が終了した鉛蓄電池のSOCが、予め定められた閾値まで下がった時点を、鉛蓄電池の放電状態を判定するための判定期間の始点として決定する決定ステップと、判定期間における鉛蓄電池の放電状態を判定する判定ステップと、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された放電状態に対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して第1均等充電の次の第2均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示ステップとをコンピュータに実行させる。
【0055】
このような側面においては、均等充電について複数の方法が予め用意される。そして、鉛蓄電池の放電状態を判定するための判定期間が定められ、この判定期間における放電状態に対応する均等充電方法で次の均等充電が実行される。したがって、鉛蓄電池の状態に応じて均等充電を実行することができる。
【0056】
他の側面に係る蓄電制御装置では、予め定められた閾値が85%以上95%未満の範囲内の値であってもよい。閾値をこのように設定することで、鉛蓄電池の寿命を長く維持しつつ、鉛蓄電池の状態に応じた均等充電を実行することができる。
【0057】
他の側面に係る蓄電制御装置では、決定部が、始点から、鉛蓄電池または蓄電装置に対応して予め定められた固定期間が経過する時点を、判定期間の終点として決定してもよい。このように判定期間を設定することで、鉛蓄電池の放電状態を的確に判定することができる。
【0058】
他の側面に係る蓄電制御装置では、判定部が、判定期間における鉛蓄電池の平均SOCを放電状態として判定し、選択部が、判定された平均SOCに対応する均等充電方法を選択してもよい。平均SOCを見ることで鉛蓄電池の放電状態を的確に判定することができる。
【0059】
他の側面に係る蓄電制御装置では、判定部が、判定期間における鉛蓄電池の積算放電量を放電状態として判定し、選択部が、判定された積算放電量に対応する均等充電方法を選択してもよい。積算放電量を見ることで鉛蓄電池の放電状態を的確に判定することができる。
【0060】
他の側面に係る蓄電制御装置では、均等充電方法が、鉛蓄電池のセル当たりの設定電圧と、充電時間と、充電頻度とのうちの少なくとも一つを用いて定義されてもよい。これらのようなパラメータを用いることで、最適な均等充電を実行することができる。
【0061】
[変形例]
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0062】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される蓄電制御方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正又は削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0063】
蓄電システム1内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。