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エチレン構造単位の含有量が異なる2種以上のエチレン−ビニルアルコール系共重合体における、最もエチレン構造単位の含有量の大きいエチレン−ビニルアルコール系共重合体と、最もエチレン構造単位の含有量の低いエチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるエチレン構造単位の含有量の差が、2モル%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
エチレン構造単位の含有量が異なる2種以上のエチレン−ビニルアルコール系共重合体が、エチレン構造単位の含有量が低いエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A1)と、エチレン構造単位の含有量が高いエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A2)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明のEVOH樹脂組成物に用いられるEVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いることができるが、一般的にはメタノールやエタノール等の低級アルコール、好ましくはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行ない得る。 すなわち、上記EVOHは、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、必要に応じてケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を通常含むものである。
【0019】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物の処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。この他、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0020】
上記EVOHにおけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値であり、通常20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、特に好ましくは25〜35モル%である。かかる含有量が少なすぎると、ガスバリア性用途の場合、高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
【0021】
上記EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液として用いる。)に基づいて測定した値であり、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎるとガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
【0022】
また、上記EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜35g/10分である。かかるMFRが大きすぎると、成膜性が不安定となる傾向があり、小さすぎると、粘度が高くなり過ぎて溶融押出が困難となる傾向がある。
【0023】
また、上記EVOHは、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
【0024】
上記コモノマーは、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類や、そのエステル化物である、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン(特に、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等)、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル等、アシル化物等の誘導体、2−メチレンプロパン−1,3−ジオール、3−メチレンペンタン−1,5−ジオール等のヒドロキシアルキルビニリデン類;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシアルキルビニリデンジアセテート類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0025】
さらに、本発明のEVOHとして、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
【0026】
特に、ヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOHは、二次成形性が良好になる点で好ましく、なかでも側鎖に1級水酸基を有するEVOH、特には、1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOHが好ましい。
【0027】
上記1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOHは、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含むものであり、最も好ましい構造として、下記構造式(1)で示される構造単位を含むEVOHである。
【0029】
特に、1,2−ジオール構造単位を含有する場合、その含有量は通常0.1〜20モル%、さらには0.5〜15モル%、特には1〜10モル%のものが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、以上のようなEVOHから選択される、エチレン構造単位の含有量が異なる2種以上のEVOHを含む。 エチレン構造単位の含有量の異なる2種以上のEVOHにおける、最もエチレン構造単位の含有量の高いEVOHと、最もエチレン構造単位の含有量の低いEVOHにおけるエチレン構造単位の含有量の差が、2モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは2〜25モル%、より好ましくは4〜15モル%、特に好ましくは5〜10モル%である。かかるエチレン含有量の差が小さすぎる場合には、成形性とガスバリア性のバランス保持が困難となる傾向があり、大きすぎる場合には互いの相溶性が低下する傾向がある。
【0031】
かかるエチレン構造単位の含有量の異なる2種以上のEVOHのエチレン含有量の差は、通常、EVOH樹脂組成物における融解ピーク温度を測定することにより算出することができる。なお、かかる融解ピーク温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、−50℃〜230℃まで10℃/分で昇温し、230℃〜−50℃まで10℃/分で降温し、再び−50℃〜230℃まで10℃/分で昇温したときに測定されるピークの温度を意味する。
【0032】
本発明のEVOH樹脂組成物は、かかる測定方法にて得られる融解ピーク温度差が、通常3℃以上であり、好ましくは3℃〜40℃であり、より好ましくは、6℃〜24℃、特に好ましくは8℃〜16℃である。かかる温度差が小さすぎる場合には、成形性とガスバリア性のバランス保持が困難となる傾向があり、大きすぎる場合には互いの相溶性が低下する傾向がある。
【0033】
本発明の樹脂組成物が有するエチレン構造単位の含有量が異なるEVOHの種類数は、通常、2〜4種類であり、好ましくは2〜3種類であり、特に好ましくは2種類である。かかる種類数が大きくなるほど生産性や経済性が低下する傾向がある。
【0034】
以下、エチレン構造単位の含有量が異なるEVOHを2種用いる場合について詳述する。すなわち、エチレン構造単位の含有量が低いEVOH(A1)とエチレン構造単位の含有量が高いEVOH(A2)を用いる。
【0035】
上記EVOH(A1)は、エチレン構造単位の含有量が、ISO14663に基づいて測定した値で通常35モル%未満であり、好ましくは20モル%以上35モル%未満であり、より好ましくは22〜34モル%、特に好ましくは25〜33モル%である。エチレン含有量が低すぎる場合、分解温度と融点が接近しすぎて樹脂組成物の溶融成形が困難になる傾向があり、逆に高すぎる場合は、EVOH(A1)によるガスバリア性付与が不足する傾向がある。
【0036】
また、EVOH(A1)におけるビニルエステル成分のケン化度は、通常90モル%以上、好ましくは95〜99.99モル%、特に好ましくは98〜99.99モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合には、EVOH樹脂(A1)によるガスバリア性付与効果が不足する傾向がある。
【0037】
さらに、EVOH(A1)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、通常1〜100g/10分であり、好ましくは3〜50g/10分、特に好ましくは3〜10g/10分である。MFRが大きすぎる場合には、成形物の機械強度が低下する傾向があり、小さすぎる場合には押出加工性が低下する傾向がある。
【0038】
一方、上記EVOH(A2)のエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値で通常35モル%以上であり、好ましくは35〜60モル%、より好ましくは37〜56モル%である。エチレン含有率が低すぎる場合は、EVOH(A2)による延伸性の改善効果が小さいため、結果として二次成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、エチレン含有率差を所定範囲内にするために、EVOH(A1)のエチレン含有率を高くせざるを得ず、結果として樹脂組成物層のガスバリア性が不足することになる。
【0039】
また、EVOH(A2)におけるビニルエステル成分のケン化度は、通常90モル%以上、好ましくは93〜99.99モル%、特に好ましくは98〜99.99モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはEVOH(A2)のガスバリア性が不足する傾向がある。
【0040】
さらに、EVOH(A2)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、通常1〜100g/10分であり、好ましくは3〜50g/10分、特に好ましくは3〜30g/10分である。MFRが大きすぎる場合には、成形物の機械強度が低下する傾向があり、小さすぎる場合には押出加工性が低下する傾向がある。
【0041】
なお、EVOH(A1)とEVOH(A2)との組み合わせについては、溶融成形時の樹脂流れ性が同程度となるように、MFR(210℃、荷重2160g)の差(ΔMFR)が5g/10分以下とすることが好ましく、より好ましくは1g/10分以下となるように、EVOHのケン化度等を調整することが好ましい。
【0042】
上記EVOH(A1)とEVOH(A2)のエチレン構造単位の含有量差は、上述したEVOH樹脂組成物における融解ピーク温度を測定することにより算出することができる。 ビニルエステル部分のケン化度は、例えば、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に準じて計測することができる。
【0043】
EVOH(A1)とEVOH(A2)の配合比率(A1/A2)(重量比)としては、通常90/10〜50/50であり、好ましくは85/15〜60/40、特に好ましくは80/20〜70/30である。EVOH(A1)の比率が小さすぎる場合には、EVOH樹脂組成物層のガスバリア性が不足する傾向があり、大きすぎる場合には、EVOHによる延伸改善効果が低下する傾向がある。
【0044】
ここで、一般的なEVOHは、通常、その末端構造がラクトン環となっているものや、カルボン酸類となっているものが存在する。本発明のEVOH樹脂組成物は、すでに述べたとおり、EVOHの分子の末端構造における、カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)が従来よりも多く含有させることが第1の特徴である。
【0045】
すなわち、本発明では、EVOH樹脂組成物におけるEVOHの分子の末端構造における、ラクトン環を多く含有させることにより、高温での熱安定性に優れ、高温で加工した場合であっても異臭や着色のないEVOH樹脂組成物を得ることができるのである。
【0046】
本発明において、上記ラクトン環含有割合(Y/Z)は、高温での熱安定性の点から45モル%以上であり、45〜90モル%であることがより好ましい。そして、特には48〜80モル%、殊には50〜70モル%であることが好ましい。かかる含有割合(Y/Z)が小さすぎると熱安定性が低下することとなる。なお、含有割合が大きすぎる場合には、多層構造体としたときの接着性樹脂層との接着性が低下する傾向がある。
【0047】
また、本発明において、熱安定性の点から、EVOH樹脂組成物におけるEVOHの分子の末端構造におけるカルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)がEVOHのモノマーユニットの合計量に対して0.01〜0.3モル%であることが好ましく、特には0.03〜0.28モル%、さらには0.05〜0.25モル%、殊には0.1〜0.24モル%が好ましい。かかる含有量が少なすぎると、多層構造体としたときの接着性樹脂層との接着性が低下する傾向があり、多すぎると熱安定性が低下する傾向がある。
【0048】
ここで、モノマーユニットとは、下記化学式(2)のエチレンユニット、下記化学式(3)のビニルアルコールユニット、下記化学式(4)の酢酸ビニルユニット、その他の共重合されたモノマーユニットを指し、合計量とは、各々のユニットのモル数の合計量を指す。
【0052】
かかるEVOH樹脂組成物のモノマーユニットの合計量に対するカルボン酸類の含有量(X)は、0.01〜0.3モル%であることが熱安定性の点で好ましく、特には0.02〜0.25モル%、さらには0.03〜0.2モル%が好ましい。かかる含有量が少なすぎると、多層構造体としたときの接着性樹脂層との接着性が低下する傾向があり、多すぎると熱安定性が低下する傾向がある。
【0053】
また、かかるEVOH樹脂組成物のモノマーユニットの合計量に対するラクトン環の含有量(Y)は、0.01〜0.3モル%であることが熱安定性の点で好ましく、特には0.02〜0.25モル%、さらには0.03〜0.2モル%、殊には0.05〜0.15モル%が好ましい。かかる含有量が少なすぎると、多層構造体としたときの接着性樹脂層との接着性が低下する傾向があり、多すぎると熱安定性が低下する傾向がある。
【0054】
なお、上記カルボン酸類の含有量(X)、ラクトン環の含有量(Y)、ラクトン環含有割合(Y/Z)は、NMR測定により測定される。上記カルボン酸類にはカルボン酸、カルボン酸塩が含まれ、カルボン酸類の含有量(X)はそれらを合計した含有量として測定される。 上記NMR測定は、例えば下記のようにして行われる。<測定条件> 装置名:(AVANCEIII Bruker社製) 観測周波数:400MHz 溶媒:重水/エタノール−D6(重量比=重水 35:エタノール−D6 65)、DMSO(ジメチルスルホキシド)−D6 ポリマー濃度:5重量% 測定温度:重水/エタノール−D6 70℃、DMSO−D6 50℃ 積算回数:16回 パルス繰り返し時間:4秒 サンプル回転速度:20Hz 添加剤:トリフルオロ酢酸
【0055】
<解析方法>(1−1)末端メチル量の測定 末端メチル量は
1H−NMR測定(DMSO−D6、50℃で測定)を用いて算出する。すなわち、
図1のチャート図に示すように、0.7〜0.95ppmの末端メチルの積分値(I
Me-1)、0.95〜1.85ppmの末端基以外のメチレン(エチレンユニット、ビニルアルコールユニット、酢酸ビニルユニットのメチレンの合計)の積分値(I
CH2)、1.9〜2ppmの酢酸ビニルユニット中の末端メチルの積分値(I
OAc)、3.1〜4.3ppmのビニルアルコールユニット中のメチンの積分値(I
CH)を用いて、下記の(式1)により末端メチル量を算出する。
【0056】
(式1)末端メチル量(モル%)=(I
Me-1/3)/[(I
Me-1/3)+(I
OAc/3)+I
CH +{I
CH2−2×I
CH−2×(I
OAc/3)−2×(I
Me-1/3)}/4]
【0057】
(1−2)カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の測定 重合体末端のカルボン酸類およびラクトン環の含有量は、(1−1)で得られた末端メチル量(モル%)をもとに、
1H−NMR測定(重水/エタノール−D6溶媒、70℃で測定)を用いて算出する。すなわち、
図2のチャート図に示すように、0.7〜1ppmの末端メチルの積分値(I
Me-2)、2.15〜2.32ppmのピークの積分値(I
X)、2.5〜2.7ppmのピークの積分値(I
Y)を用いて、下記の(式2)、(式3)によりカルボン酸類の含有量(X)(モル%)およびラクトン環の含有量(Y)(モル%)をそれぞれ算出する。
【0058】
(式2)カルボン酸類の含有量(X)(モル%)=末端メチル量(モル%)×(I
X/2)/(I
Me-2/3)
【0059】
(式3)ラクトン環の含有量(Y)(モル%)=末端メチル量(モル%)×(I
Y/2)/(I
Me-2/3)
【0060】
(1−3)末端構造における、カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)の算出 上記で得られたカルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)から下記(式4)によりラクトン環含有割合(Y/Z)を算出する。
【0061】
(式4) カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)(モル%)={Y/(X+Y)}×100
【0062】
本発明において、EVOH樹脂組成物における、EVOH分子の末端構造における、カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)を、多くするには、例えば、エチレン−ビニルエステル系共重合体をケン化してEVOH中間体を得るケン化工程[I]、前記EVOH中間体を化学処理液で化学処理する化学処理工程[II]、前記化学処理EVOH中間体を乾燥する乾燥工程[III]を含むEVOHの製造方法において、(1)乾燥工程[III]の乾燥温度を高くする方法、(2)乾燥工程[III]の乾燥時間を長くする方法、(3)前記化学処理工程[II]において、化学処理液中のカルボン酸濃度を高くする方法等があげられる。これら方法(1)〜(3)は単独で採用してもよいし、適宜組み合わせてもよい。
【0063】
特には、(3)の方法において、エチレン−ビニルエステル系共重合体をケン化してEVOH中間体を得るケン化工程[I]、前記EVOH中間体を化学処理液で化学処理する化学処理工程[II]、前記化学処理EVOH中間体を乾燥する乾燥工程[III]を含み、さらに、前記化学処理工程[II]において、化学処理液中のカルボン酸濃度を後述のように高くすることが好ましく、具体的には、化学処理液に用いる化学処理剤としてカルボン酸及びカルボン酸金属塩を併用し、かつ化学処理液中の前記カルボン酸濃度を高くすること、すなわち前記カルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対する前記カルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)を特定数値以上とする方法が高温時の熱安定性の点で好ましい。
【0064】
以下、上記EVOHを得る工程を詳細に説明する。
【0065】
まず、上記ケン化工程[I]は、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させてなるエチレン−ビニルエステル系共重合体を、通常の公知の方法によりケン化する工程である。 なお、上記ケン化されたエチレン−ビニルエステル系共重合体(EVOH中間体)は、その段階で、ペレットに成形して、以下の化学処理工程[II]および乾燥工程[III]に供することができる。
【0066】
上記EVOH中間体をペレット化する方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば、溶融状態のEVOH中間体を吐出口から押出し、溶融状態でカットした後、冷却固化してペレットを作製するホットカット方式や、EVOH中間体の樹脂溶液またはスラリー(EVOH含水組成物)を凝固浴中に押出し、冷却固化により得られたEVOHストランドをカットするストランドカット方式があげられる。
【0067】
上記ペレットの形状は、通常、ペレットの製造方法に依存し、円柱状、球状、ラグビーボール状、立方体、直方体、不定形等、種々の形状のものであって差し支えない。また、上記ペレットのサイズは、使用する押出機のノズルの口径、カッター刃の枚数、カッター刃の回転数等によって、適宜調整することができる。
【0068】
つぎに、上記化学処理工程[II]は、前記EVOH中間体を、化学処理剤を含む化学処理液を用いて化学処理する工程であり、かかる工程は、熱安定性や接着性付与を目的として行うものである。かかる化学処理剤としては、各種化合物を用いることが可能であり、カルボン酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸、およびそれ等カルボン酸、無機酸のエステルおよび金属塩が挙げられ、これらは一般的に水溶性化合物である。上記化学処理液はこれらを含有する水溶液である。 上記化学処理剤として、具体的には例えばカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸などが挙げられ、熱安定性の点から炭素数1〜4の脂肪族カルボン酸が好ましく、さらには炭素数1〜4の脂肪族1価カルボン酸が好ましく、特に好ましくは酢酸である。 無機酸としては、ホウ酸、リン酸、炭酸、硫酸等が挙げられる。
【0069】
上記カルボン酸および無機酸の金属塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、周期律表第4周期dブロック金属塩が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムが挙げられ、周期律表第4周期dブロック金属としては、チタン、マンガン、銅、コバルト、亜鉛等があげられる。好ましくはアルカリ金属塩であり、なかでもナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。 上記カルボン酸金属塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸アルカリ金属塩、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウムなどのプロピオン酸アルカリ金属塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のステアリン酸アルカリ金属塩等のカルボン酸アルカリ金属塩、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ土類金属塩、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウムなどのプロピオン酸アルカリ土類金属塩、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸アルカリ土類金属塩等のカルボン酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。無機酸等の金属塩としては、無機酸アルカリ金属塩としては例えばホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のホウ酸アルカリ金属塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのリン酸アルカリ金属塩が挙げられる。無機酸アルカリ土類金属塩としては例えばホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウムなどのリン酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。なお、リン酸塩においてはリン酸水素塩も含む。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。 そして、上記化学処理剤としては、熱安定性の点でカルボン酸及びカルボン酸金属塩を用いることが好ましく、さらにはカルボン酸、カルボン酸金属塩、無機酸、無機酸金属塩を用いることが好ましい。さらに具体的には、酢酸、酢酸金属塩、ホウ酸、リン酸塩を用いることが好ましい。
【0070】
なお、上記の化学処理剤として用いる化合物等を均一かつ迅速に含有させるには、含水率20〜80重量%のEVOH中間体を用いることが好ましい。そして、かかる化合物の含有量の調整にあたっては、前述の化学処理液とEVOH中間体との接触処理において、かかる化合物の水溶液濃度、接触処理時間、接触処理温度、接触処理時の撹拌速度や処理されるEVOH中間体の含水率等をコントロールすることができる。
【0071】
かかる化学処理工程[II]において、高温時の熱安定性の点から、化学処理液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)が3.7以上であることが好ましく、特には13以上、さらには22以上、更には25以上、殊には30以上が好ましい。かかる比率が小さすぎると熱安定性が低下する傾向がある。なお、かかる比率の上限は通常100であり、好ましくは50である。
【0072】
上記EVOH中間体を化学処理液で化学処理する化学処理工程[II]は、高濃度のカルボン酸を含有する化学処理液を用いた一段階での化学処理工程であってもよいし、カルボン酸濃度の異なる複数の化学処理液をそれぞれの化学処理工程で用いてなる、多段階での化学処理工程であってもよい。なお、前述の化学処理工程[II]において、「化学処理液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)が3.7以上である」とは、上記一段階での化学処理工程においては、使用する高濃度のカルボン酸を含有する化学処理液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)が3.7以上であるという趣旨である。また、上記多段階での化学処理工程においては、後述のとおり、使用する複数の化学処理液のうちカルボン酸濃度が最も高い化学処理液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)が3.7以上であるという趣旨である。
【0073】
熱安定性に優れたEVOHを効率良く製造するという観点から、好ましくは、カルボン酸濃度の異なる複数の化学処理液をそれぞれの化学処理工程で用いてなる、多段階での化学処理工程があげられる。EVOH中間体を化学処理液で化学処理する化学処理工程[II]において、上記多段階での化学処理工程は、つぎのようにして行われる。まず、カルボン酸濃度の異なる複数の化学処理液を準備する。そして、上記複数の化学処理液をそれぞれの化学処理工程(多段階の化学処理工程)で用い、段階的にEVOH中間体を化学処理するという多段階の化学処理工程が行われる。この場合、上記複数の化学処理液のうちカルボン酸濃度が最も高い化学処理液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)が3.7以上であることが好ましい。
【0074】
また、本発明においては、化学処理液中の、カルボン酸濃度を1〜50000ppm、特には10〜10000ppm、殊には400〜5000ppmとし、カルボン酸金属塩の金属イオン濃度を1〜50000ppm、特には10〜10000ppmとすることが処理効率とコストの点で好ましい。
【0075】
なお、本発明において、「カルボン酸濃度」とは、化学処理剤として使用したカルボン酸の、化学処理液中のカルボン酸濃度のことで、例えばカルボン酸として酢酸を含有する場合は化学処理液における酢酸の濃度を意味する。また、「カルボン酸金属塩の金属イオン濃度」とは、化学処理液に用いる化学処理剤として使用したカルボン酸金属塩の金属イオン濃度のことで、例えば化学処理液中に酢酸ナトリウムを含有する場合はナトリウムイオンの濃度を意味する。なお、化学処理剤としてカルボン酸とカルボン酸金属塩を併用する場合であっても、「カルボン酸濃度」にはカルボン酸金属塩が含有するカルボキシルイオンを考慮しない。すなわち、化学処理剤として酢酸と酢酸金属塩を併用する場合、かかる酢酸ナトリウムが含有する酢酸イオンは、上記「カルボン酸濃度」には算入しない。
【0076】
化学処理工程[II]における処理温度は、通常10〜100℃、好ましくは15〜80℃、さらに好ましくは20〜60℃である。かかる処理温度が低すぎると所定量の酸やその塩をEVOH中間体中に含有させることが困難となる傾向があり、高すぎると溶液の取り扱いが難しく生産上不利となる傾向がある。
【0077】
化学処理工程[II]における処理時間は、通常1時間以上、好ましくは1.5〜48時間、さらに好ましくは2〜24時間である。かかる処理時間が短すぎるとEVOH中間体に色ムラが発生したり熱安定性が低下したりする傾向があり、長すぎるとEVOH中間体が着色する傾向がある。
【0078】
つぎに、上記乾燥工程[III]は、化学処理EVOH中間体を乾燥する工程であり、かかる乾燥条件については、乾燥温度80〜150℃であることが好ましく、さらには90〜140℃、特には100〜130℃であることが好ましい。かかる乾燥温度が低すぎると乾燥時間が長くなる傾向があり、高すぎると着色が発生する傾向がある。また、乾燥時間は3時間以上であることが好ましく、さらには5時間以上、特には8時間以上であることが好ましい。かかる乾燥時間が短すぎると乾燥不充分となる傾向がある。なお、乾燥時間の上限は通常1000時間である。
【0079】
乾燥方法としては、種々の乾燥方法を採用することが可能である。例えば、実質的にペレット状の化学処理EVOH中間体を、機械的にもしくは熱風により撹拌分散しながら乾燥する流動乾燥や、実質的にペレット状の化学処理EVOH中間体を、撹拌、分散等の動的な作用を与えることなく乾燥する静置乾燥があげられる。流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等があげられる。また、静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器があげられ、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等をあげることができる。また、流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行うこともでき、本発明においては、化学処理EVOH中間体の融着抑制の点から流動乾燥を行った後、静置乾燥を行うことが好ましい。
【0080】
上記乾燥方法について、より詳しく説明する。 上記流動乾燥処理時に用いられる加熱ガスとしては、空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては、化学処理EVOH中間体の揮発分に応じて40〜150℃の任意の温度を選択できるが、高温で化学処理EVOH中間体が融着することを考慮すれば40〜100℃、さらには40〜90℃が好ましい。さらに、乾燥器内の加熱ガスの速度は、0.7〜10m/秒、さらには0.7〜5m/秒、特には1〜3m/秒とすることが好ましく、かかる速度が遅すぎると化学処理EVOH中間体の融着が起こりやすく、逆に速すぎると化学処理EVOH中間体の欠けや微紛の発生が起こりやすくなる傾向がある。また、流動乾燥の時間としては、化学処理EVOH中間体の処理量にもよるが、通常は5分〜36時間、さらには10分〜24時間が好ましい。上記の条件で化学処理EVOH中間体が流動乾燥処理されるのであるが、該乾燥処理後のEVOHの揮発分は5〜60重量%、さらには10〜55重量%とすることが好ましい。かかる揮発分が高すぎると後の静置乾燥処理時に化学処理EVOH中間体の融着が起こりやすくなる傾向があり、低すぎるとエネルギーロスが大きくなり工業的には好ましくない傾向がある。また、かかる流動乾燥処理において、揮発分を該処理前より5重量%以上、さらには10〜45重量%低くすることが好ましく、該揮発分の低下が小さすぎると得られるEVOH中間体を溶融成形した場合に微小フィッシュアイが発生する傾向にある。
【0081】
上記の条件で化学処理EVOH中間体が乾燥処理されるのであるが、該乾燥処理後のEVOH中間体の含水率は0.001〜5重量%であることが好ましく、特には0.01〜2重量%、さらには0.1〜1重量%であることが好ましい。該含水率が少なすぎるとロングラン成形性が低下する傾向があり、多すぎると押出成形時に発泡が発生する傾向がある。
【0082】
また、このようにして得られる化学処理EVOH中間体のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)については、通常0.1〜100g/10分であり、特に好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは1〜30g/10分である。該メルトフローレートが小さすぎると成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となる傾向にあり、大きすぎると加熱延伸成形時の外観性やガスバリア性が低下する傾向にある。 かかるMFRの調整にあたっては、EVOH中間体の重合度を調整すればよく、さらには架橋剤や可塑剤を添加して調整することも可能である。
【0083】
本発明のEVOH樹脂組成物において、EVOHの末端構造における、カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)を、高くする方法として、下記の方法が挙げられる。(i)エチレン構造単位の含有量の異なる2種以上のエチレン−ビニルエステル系共重合体を有する組成物を用い、上記方法(1)〜(3)に供し、EVOHの末端構造におけるカルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環の含有量(Y)の高いEVOH樹脂組成物を得る。(ii)本発明の樹脂組成物の原料となるEVOHとして、EVOHの末端構造における、カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)が高いEVOHを用いる。 なかでも工業生産性の観点から、(ii)の方法が好ましい。
【0084】
特に、エチレン構造単位の含有量の異なる2種以上のEVOHが、上記エチレン含有量の低いEVOH(A1)及びエチレン含有量の高いEVOH(A2)である場合、EVOH(A1)が上記ラクトン環含有割合(Y/Z)が高いEVOHである場合、本発明の効果がより効率的に得られる傾向がある。この場合、EVOH(A1)における上記ラクトン環含有割合(Y/Z)は、高温での熱安定性の点から通常58モル%以上であり、60〜90モル%であることがより好ましい。そして、特には62〜80モル%、殊には63〜70モル%であることが好ましい。
【0085】
なお、本発明のEVOH樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲において、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、または低分子量ポリプロピレン等)等の滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等)、酸素吸収剤[例えば還元鉄粉類、さらにこれに吸水性物質や電解質等を加えたもの、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等の無機系酸素吸収剤;アスコルビン酸、さらにその脂肪酸エステルや金属塩等、ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノールアルデヒド樹脂等の多価フェノール類、ビス−サリチルアルデヒド−イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト−シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン−コバルト錯体等の含窒素化合物と遷移金属との配位結合体、テルペン化合物、アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質の反応物、トリフェニルメチル化合物等の有機化合物系酸素吸収剤;窒素含有樹脂と遷移金属との配位結合体(例えばMXDナイロンとコバルトの組合せ)、三級水素含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例えばポリプロピレンとコバルトの組合せ)、炭素−炭素不飽和結合含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例えばポリブタジエンとコバルトの組合せ)、光酸化崩壊性樹脂(例えばポリケトン)、アントラキノン重合体(例えばポリビニルアントラキノン)等や、さらにこれらの配合物に光開始剤(ベンゾフェノン等)や過酸化物捕捉剤(市販の酸化防止剤等)や消臭剤(活性炭等)を添加したもの等の高分子系酸素吸収剤]、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填材(例えば無機フィラー等)、他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリアミド等)等を配合してもよい。これらの化合物は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0086】
このようにして得られた本発明のEVOH樹脂組成物は、そのまま、あるいは粉末状や液体状といった、さまざまな形態の樹脂組成物として調製され、各種の成形物の成形材料として提供される。特に本発明においては、溶融成形用の材料として提供される場合、本発明の効果がより効率的に得られる傾向があり好ましい。なお、本発明のEVOH樹脂組成物には、本発明のEVOH樹脂組成物に用いられるEVOH以外の樹脂を混合して得られる樹脂組成物も含まれる。
【0087】
そして、かかる成形物としては、本発明のEVOH樹脂組成物を用いて成形された単層フィルムをはじめとして、本発明のEVOH樹脂組成物を用いて成形された層を少なくとも1層有する多層構造体として実用に供することができる。
【0088】
以下、かかる多層構造体について説明する。 本発明の多層構造体を製造するにあたっては、本発明のEVOH樹脂組成物を用いて成形された層の片面または両面に、他の基材(熱可塑性樹脂等)を積層するのであるが、積層方法としては、例えば、本発明のEVOH樹脂組成物等を用いて成形されたフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に本発明のEVOH樹脂組成物等を溶融押出ラミネートする方法、本発明のEVOH樹脂組成物等と他の基材とを共押出する方法、本発明のEVOH樹脂組成物等を用いてなるフィルム、シート等(層)と他の基材(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等があげられる。上記の溶融押し出し時の溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
【0089】
かかる他の基材としては、熱可塑性樹脂が有用で、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独または共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独または共重合体を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、さらにこれらを還元して得られるポリアルコール類、さらには本発明に用いられるEVOH以外の他のEVOH等があげられる。多層構造体の物性(特に強度)等の実用性の点から、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましく用いられる。
【0090】
さらに、本発明のEVOH樹脂組成物等を用いて成形されたフィルムやシート等の成形物に、他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を、接着剤を用いてラミネートしたりする場合、かかる基材としては、前記の熱可塑性樹脂以外に、任意の基材(紙、金属箔、一軸または二軸延伸プラスチックフィルムまたはシートおよびその無機物蒸着物、織布、不織布、金属綿状、木質等)も使用可能である。
【0091】
本発明の多層構造体の層構成は、本発明のEVOH樹脂組成物を用いて成形された層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、かかるa層を最内層とする構成で、[内側]a/b[外側](以下同様)の二層構造のみならず、例えば、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、a1/b1/a2/b2、a1/b1/b2/a2/b2/b1等任意の組み合わせが可能であり、さらには、少なくとも本発明のEVOH樹脂組成物等と熱可塑性樹脂の混合物からなるリグラインド層をRとするとき、例えば、a/R/b、a/R/a/b、a/b/R/a/R/b、a/b/a/R/a/b、a/b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
【0092】
なお、上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができる。かかる接着性樹脂としては、種々のものを使用することができるが、延伸性に優れた多層構造体が得られる点において、例えば不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られる、カルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体をあげることができる。
【0093】
具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとしてあげられる。このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸またはその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少なすぎると接着性が低下する傾向があり、逆に多すぎると架橋反応を起こし、成形性が低下する傾向がある。
【0094】
また、これらの接着性樹脂には、本発明のEVOH樹脂組成物に由来するEVOH、他の変性EVOH、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、さらにはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
【0095】
多層構造体の各層の厚みは、層構成、b層の種類、用途や成形物の形態、要求される物性等により一概にいえないが、通常は、a層は5〜500μm、好ましくは10〜200μm、b層は10〜5000μm、好ましくは30〜1000μm、接着性樹脂層は5〜400μm、好ましくは10〜150μm程度の範囲から選択される。
【0096】
多層構造体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、上記多層構造体の物性を改善するためには加熱延伸処理を施すことも好ましい。ここで、「加熱延伸処理」とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート、パリソン状の積層体をチャック、プラグ、真空力、圧空力、ブロー等の成形手段により、カップ、トレイ、チューブ、フィルム状に均一に成形する操作を意味する。そして、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラや偏肉、デラミ(delamination:層間剥離)等の生じない、ガスバリア性に優れた延伸成形物が得られる。
【0097】
上記多層構造体の延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は60〜170℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸が終了した後、熱固定を行うことも好ましい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを、緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理することによって、熱固定を行うことができる。
【0098】
また、生肉、加工肉、チーズ等の熱収縮包装用途に用いる場合には、延伸後の熱固定は行わずに製品フィルムとし、上記の生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納した後、50〜130℃、好ましくは70〜120℃で、2〜300秒程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装をする。
【0099】
このようにして得られる多層構造体の形状としては、任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、異型断面押出物等が例示される。また、上記多層構造体は、必要に応じて、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0100】
そして、上記多層構造体から得られるカップ、トレイ、チューブ等からなる容器や、上記多層構造体から得られる延伸フィルムからなる袋や蓋材は、食品、飲料、医薬品、化粧品、工業薬品、洗剤、農薬、燃料等を包装する、各種の包装材料として有用である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。 なお、以下の説明において「部」、「%」、「ppm」とあるのは、いずれも重量基準を意味する。ただし、「モル%」はそのまま「モル%」を示す。 また、各物性については下記の通り測定した。
【0102】
(1)EVOHの一次構造の定量:NMR法<測定条件> 装置名:(AVANCEIII Bruker社製) 観測周波数:400MHz 溶媒:重水/エタノール−D6(重量比=重水 35:エタノール−D6 65)、DMSO−D6 ポリマー濃度:5% 測定温度:重水/エタノール−D6 70℃、DMSO−D6 50℃ 積算回数:16回 パルス繰り返し時間:4秒 サンプル回転速度:20Hz 添加剤:トリフルオロ酢酸
【0103】
<解析方法>(1−1)末端メチル量の測定 末端メチル量は
1H−NMR測定(DMSO−D6、50℃で測定)を用いて算出した(化学シフト値は DMSOのピーク 2.50ppmを基準とした。)。
図1のチャート図に示すように、0.7〜0.95ppmの末端メチルの積分値(I
Me-1)、0.95〜1.85ppmの末端基以外のメチレン(エチレンユニット、ビニルアルコールユニット、酢酸ビニルユニットのメチレンの合計)の積分値(I
CH2)、1.9〜2ppmの酢酸ビニルユニット中の末端メチルの積分値(I
OAc)、3.1〜4.3ppmのビニルアルコールユニット中のメチンの積分値(I
CH)を用いて、下記の(式1)により末端メチル量を算出した。ここで積分値(I
Me-1)、(I
CH2)、(I
OAc)、(I
CH)はそれぞれ、末端メチル、末端基以外のメチレン、酢酸ビニルユニット中の末端メチル、ビニルアルコールユニット中のメチン由来のピークに関するものである。
【0104】
(式1)末端メチル量(モル%)=(I
Me-1/3)/[(I
Me-1/3)+(I
OAc/3)+I
CH +{I
CH2−2×I
CH−2×(I
OAc/3)−2×(I
Me-1/3)}/4]
【0105】
(1−2)カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の測定 重合体末端のカルボン酸類およびラクトン環の含有量は、(1−1)で得られた末端メチル量(モル%)をもとに、
1H−NMR測定(重水/エタノール−D6溶媒、70℃で測定)を用いて算出した(化学シフト値はTMSのピーク0ppmを基準とした。)。 すなわち、
図2のチャート図に示すように、0.7〜1ppmの末端メチルの積分値(I
Me-2)、2.15〜2.32ppmのピークの積分値(I
X)、2.5〜2.7ppmのピークの積分値(I
Y)を用いて、下記の(式2)、(式3)によりカルボン酸類の含有量(X)(モル%)およびラクトン環の含有量(Y)(モル%)をそれぞれ算出した。ここで、積分値(I
Me-2)、(I
X)、(I
Y)はそれぞれ、末端メチル、カルボン酸類および末端ラクトン環由来のピークに関するものである。
【0106】
(式2)カルボン酸類の含有量(X)(モル%)=末端メチル量(モル%)×(I
X/2)/(I
Me-2/3)
【0107】
(式3)ラクトン環の含有量(Y)(モル%)=末端メチル量(モル%)×(I
Y/2)/(I
Me-2/3)
【0108】
(1−3)末端構造における、カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)の算出 上記で得られたカルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)から下記(式4)によりラクトン環含有割合(Y/Z)を算出した。 なお、EVOHとは異なる添加物、不純物等により、上述の計算が不可能な場合は、サンプルの洗浄等を適宜行ってもよい。サンプルの洗浄としては、例えば、以下のような方法を用いることができる。すなわち、試料を凍結粉砕したのち、水に浸けて超音波洗浄を行い、濾過後、濾残を乾燥することで行うことができ、かかる乾燥ののちにNMR測定を行う。
【0109】
(式4) カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)(モル%)={Y/(X+Y)}×100
【0110】
(2)熱安定性の評価 熱安定性は、EVOH樹脂組成物を5mg用い、熱重量測定装置(Pyris 1 TGA、Perkin Elmer社製)により測定される、重量がもとの重量の95%まで減少したときの温度に基づき評価した。ここで、TGAによる測定は、窒素雰囲気下、気流速度:20mL/分、昇温速度:10℃/分、温度範囲:30〜550℃の条件下で行った。
【0111】
(3)着色性の評価 EVOH樹脂組成物を日本電色工業株式会社製 分光色差計 SE6000にてYI値を測定した。
【0112】
[実施例1] EVOH(A1)として、エチレン含有量32モル%、ケン化度99.5モル%、MFR12g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH中間体の水/メタノール混合溶液(水35/メタノール65、重量比、EVOH樹脂濃度40%)を準備した。そして、このEVOH中間体の溶液を、冷水を収容した水槽内にストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断して、円柱状のEVOH中間体ペレットを得た(EVOH中間体100部に対して水100部含有)。
【0113】
そして、上記EVOH中間体ペレットを、350ppmの酢酸、370ppmの酢酸ナトリウム、15ppmのリン酸二水素カルシウム、および57ppmのホウ酸を含有する水溶液中に投入し、30〜35℃で1時間撹拌した後、水溶液を入れ替え、同様に計5回の撹拌処理を施した(一段階目の化学処理工程)。上記一段階目の化学処理工程にて使用した水溶液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)は3.0であった。
【0114】
つぎに、得られたEVOH中間体ペレットを、3500ppmの酢酸、370ppmの酢酸ナトリウム、15ppmのリン酸二水素カルシウム、及び57ppmのホウ酸を含有する水溶液中に投入し、30〜35℃で4時間撹拌することでEVOH中間体ペレット中の酢酸量を調整した(二段階目の化学処理工程)。上記二段階目の化学処理工程にて使用した水溶液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)は33.7であった。得られたEVOH中間体ペレットを121℃で10時間乾燥を行った。得られたEVOH(A1)の末端構造における各種測定結果を、後記の表1に示す。
【0115】
EVOH(A2)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物[エチレン構造単位の含有量38モル%、 MFR 3.9g/10分 (210℃、荷重2160g)]を用いた。かかるEVOH(A2)の末端構造における各種測定結果を、後記の表1に示す。
【0116】
上記EVOH(A1)およびEVOH(A2)を用い、EVOH(A1)75部に対してEVOH(A2)を25部となるよう配合し、ドライブレンドした。これをブラベンダー社製のプラストグラフを用いて、230℃、50rpmの条件で3分間溶融混練することによって、EVOH樹脂組成物を得た。得られたEVOH樹脂組成物の各種測定結果および評価結果を、後記の表1に示す。
【0117】
[比較例1] 実施例1の二段階目の化学処理工程において、水溶液中の酢酸量を350ppmに変え、二段階目の化学処理工程にて使用した水溶液中のカルボン酸金属塩の金属イオン濃度に対するカルボン酸濃度の重量比率(カルボン酸濃度/金属イオン濃度)を3.4にするとともに、乾燥工程において、乾燥温度を121℃から118℃に変えた。それ以外は実施例1と同様に行って、EVOH樹脂組成物を得た。得られたEVOH樹脂組成物の各種測定結果および評価結果を、後記の表1に示す。
【0118】
[参考例1] EVOH(A1)として、比較例1のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いた。かかるEVOH(A1)の各種測定結果および評価結果を、後記の表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
上記の結果より、本発明に規定するラクトン環含有割合(Y/Z)を満足しない比較例1は、熱安定性評価における温度が低く、熱安定性に劣っている。また、YI値が高かったことから、脱水反応等により劣化し、着色したものと推測される。これに対して、EVOH樹脂組成物における、EVOHの分子の末端構造における、カルボン酸類の含有量(X)とラクトン環の含有量(Y)の合計量(Z)に対するラクトン環含有割合(Y/Z)が、本発明の要件を満足する実施例は、熱安定性評価における温度が高く、かつYI値が低いことから、高温での熱安定性に優れていることがわかる。一方で、本発明に規定するラクトン環含有割合(Y/Z)を満足するものの、エチレン含有量の異なる2種以上のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を含有しない参考例1は、熱安定性評価における温度が低く、熱安定性に劣っている。このことから、エチレン含有量の異なる2種以上のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融混合してなり、発明に規定するラクトン環含有割合(Y/Z)を満足することで、熱安定性評価における温度が高く、高温での熱安定性に優れていることがわかる。ここで、樹脂の酸化劣化や熱分解等は化学反応であり、通常、化学反応の反応速度は温度の上昇に伴い指数関数的に上昇するため、特に今回のような高温での差異は、反応速度論の点から、実用時に非常に大きな差異となるものである。すなわち、本発明の樹脂組成物を工業用押出機に適用する場合、アダプターやフィードブロック、ダイ等、機械構造上避けることのできない樹脂の滞留個所が生じるのであり、滞留した樹脂は、上記評価条件と比べて、非常に過酷な条件下に晒されることになる。したがって、上記評価における実施例と比較例の差は、実用上、非常に大きな差となって現れると考えられるからである。