特許第6984501号(P6984501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984501
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】粒子測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/00 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   G01N15/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-45009(P2018-45009)
(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-158558(P2019-158558A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】村上 慎一
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−004537(JP,A)
【文献】 特開2003−314783(JP,A)
【文献】 特開2015−222202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを収容する第一容器と、
希釈用液を収容する第二容器と、
前記スラリーを前記希釈用液で希釈した希釈液を収容する第三容器と、
前記第一容器内の前記スラリーを前記第一容器の外部で循環させる循環管と、を有し、
前記循環管には、少なくとも前記スラリーを前記第三容器内へ供給する第一管が、分岐継手部材である第一管接続部材を用いて接続されており、
前記第一管の前記第一管接続部材よりも下流側には、前記第二容器内の前記希釈用液を前記第一管を介して前記第三容器内へ供給する第二管が、分岐継手部材である第二管接続部材を用いて接続されており、
前記第一管接続部材および前記第二管接続部材は、前記第二管接続部材の高さ位置が前記第一管接続部材の高さ位置より高くなるように、それぞれ設けられている粒子測定装置。
【請求項2】
前記第一管接続部材および前記第二管接続部材は、前記第一管接続部材と前記第二管接続部材との間に位置する前記第一管の配設角度が5〜90°の範囲内となるように、それぞれ設けられている請求項1に記載の粒子測定装置。
【請求項3】
前記第一容器と、前記循環管と、前記第一管と、前記第二管と、前記第一管接続部材と、前記第二管接続部材と、を備える移送部を複数有する請求項1又は2に記載の粒子測定装置。
【請求項4】
複数の前記移送部間において、前記第一管接続部材と前記第二管接続部材との間に位置する前記第一管の配設角度が同じである請求項3に記載の粒子測定装置。
【請求項5】
前記第一管接続部材が装着された第一板状部材と、前記第一板状部材に装着され、被支持面を有する第二板状部材と、を備える支持部材を有し、
前記支持部材は、前記第一板状部材と前記第二板状部材との位置関係を上下方向にスライドさせることで、前記被支持面に対する前記第一管接続部材の高さ位置を調整可能に構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料粒子に関する物理量を測定する粒子測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、粉体製品の開発時や製造時の性状、品質等を確認する場合、粉体である試料粒子に関する物理量(例えば、試料粒子の粒度分布、表面状態、構成元素等)を測定している。例えば、粒度分布の測定では、レーザ散乱・回折方式又は画像解析方式が利用されている。レーザ散乱・回折方式では、試料粒子にレーザ光等の平行光線を照射し、試料粒子によって回折、散乱された光のパターンを測定し且つ解析することによって粒度分布が測定(算出)される。画像解析方式では、試料粒子群をCCD(Charged−coupled devices)カメラ等で撮影して画像解析することにより粒度分布が算出される。
【0003】
画像解析方式の粒度分布測定装置は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、落下する試料粒子群をCCDカメラ等で撮影して画像解析を行い、且つ、統計的手法を用いて粒度分布測定を行う装置が記載されている。このような画像解析方式の粒度分布測定装置は、コンピュータの高速化、画像撮影装置の高解像度化等により、精度の高い測定ができるようになってきている。
【0004】
画像解析方式では、撮影した画像から試料粒子の外径、形状等を測定するため、撮影時に複数の試料粒子が重なり合わないようにする。具体的には、分散質としての試料粒子を含む分散体としての混濁液(スラリー)の粒子濃度が高い場合には、そのスラリーを十分に希釈して測定対象の試料粒子を分散させる必要がある。
【0005】
測定対象の試料粒子の供給方法としては、粉体製造装置から予め取り出したものを粒度分布測定装置に送り込むオフライン方式、及び、粉体製造装置から直接スラリーを取り出し粒度分布測定装置に送り込むインライン方式がある。
【0006】
粒子の製造工程で粒度分布を早期に測定するにはインライン方式が有利である。インライン方式では、粉体製造装置から粒度分布測定装置まで敷設された移送管内に試料粒子を含むスラリーを流して、粒度分布測定装置までスラリーを移送している。インライン方式において、移送管を介して試料粒子を含むスラリーを移送する際、多くの試料粒子が移送管に沈殿する場合がある。このため、試料粒子の物理量の測定値にバラツキが出ることがあり、試料粒子の物理量を正確に測定することができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−258141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、スラリー中の試料粒子の物理量を正確に測定することができる粒子測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
スラリーを収容する第一容器と、
希釈用液を収容する第二容器と、
前記スラリーを前記希釈用液で希釈した希釈液を収容する第三容器と、
前記第一容器内の前記スラリーを前記第一容器の外部で循環させる循環管と、を有し、
前記循環管には、少なくとも前記スラリーを前記第三容器内へ供給する第一管が、分岐継手部材である第一管接続部材を用いて接続されており、
前記第一管の前記第一管接続部材よりも下流側には、前記第二容器内の前記希釈用液を前記第一管を介して前記第三容器内へ供給する第二管が、分岐継手部材である第二管接続部材を用いて接続されており、
前記第一管接続部材および前記第二管接続部材は、前記第二管接続部材の高さ位置が前記第一管接続部材の高さ位置より高くなるように、それぞれ設けられている粒子測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スラリー中の試料粒子の物理量を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る粒子測定装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る粒子測定装置における第一管接続部材および第二管接続部材の周辺の拡大模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る粒子測定装置が有する支持部材を模式的に示す拡大構成図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る粒子測定装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(1)粒子測定装置の構成
図1に、本実施形態に係る粒子測定装置100の概略図を示し、図2に、第一管接続部材および第二管接続部材の周辺の拡大模式図を示す。図1および図2中の円弧状の実線矢印はポンプの回転方向を示している。粒子測定装置100は、試料粒子に関する物理量を測定する装置である。本実施形態では、粒子測定装置100が、試料粒子の粒度分布を測定するインライン方式の粒度分布測定装置である場合を例に説明する。
【0014】
測定対象の試料粒子は、例えば、比較的比重が大きい金属系粒子である。試料粒子は、概ね0.1μm〜数百μmの粒径を有する。試料粒子は、例えばセラミック系素材を含む無機粉体であってもよい。以下では、試料粒子が金属系粒子である場合を例に説明する。試料粒子の測定項目については、特に制限はない。試料粒子の粒度分布、試料粒子の表面状態、試料粒子の構成元素(例えば、構成元素の比)等の試料粒子に関する物理量を測定できる。例えば、試料粒子の粒度分布の測定では、レーザ散乱・回折方式または画像解析方式が利用されている。特に画像解析方式では、粒度分布だけでなく、粒子の外径、面積、輪郭上の突起の角度、重心、周長等を測定することもできる。また、画像解析は、測定に要する時間が比較的短いという利点も有する。そこで、以下では、画像解析方式を用いた粒度分布の測定を例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、粒子測定装置100は、スラリー21を収容する第一容器としての槽38と、希釈用液22を収容する第二容器としての槽39と、スラリー21を希釈用液22で希釈した希釈液23を収容する第三容器としての槽2bと、を有している。粒子測定装置100は、スラリー21から採取した試料粒子の粒度分布を自動的に測定する。
【0016】
スラリー21は、分散質としての金属系粒子に所定量の分散媒等を混合することで得ることができる。希釈用液22としては、例えばスラリー21の分散媒と同じ液体を用いることができる。希釈用液22として純水等を用いてもよい。本実施形態では、希釈用液22として純水を用いる。希釈液23は、スラリー21を希釈用液22で例えば約1/100〜1/40000に希釈することで生成される。
【0017】
槽38内には、スラリー21が攪拌により分散された状態で存在している。槽38には、槽38内のスラリー21を槽38の外部で循環させる循環管(循環チューブ)C10が接続されている。循環管C10は、槽38から汲み出したスラリー21が管内を流れた後、槽38内へ戻るように構成されている。
【0018】
循環管C10には、ポンプ(スラリーポンプ)10が設けられている。ポンプ10としては、例えばチューブポンプを用いることができる。ポンプ10は、一定の回転速度で回転し、一定の吐出流量をもたらすように構成されている。ポンプ10を回転(作動)させることで、槽38内から循環管C10内(槽38の外部)へスラリー21を汲み出すとともに、循環管C10内を流れたスラリー21を槽38内に戻すことができる、すなわち循環管C10内でスラリー21を循環させることができる。
【0019】
スラリー21に含まれる測定対象である金属系粒子(試料粒子)は上述のように比較的比重が大きいことから、ある程度の流速でスラリー21を循環させなければ簡単に沈殿してしまう。また、測定対象の試料粒子は、乾燥により部分的に固化してしまう場合もある。試料粒子の沈殿、固化等を防止するため、粒子測定装置100の稼働中は、ポンプ10を常時回転させ、槽38内のスラリー21を循環管C10内で常時循環させることが好ましい。なお、循環管C10内を循環するスラリー21の流速の調整は、例えばポンプ10の回転速度の調整により行うことができる。
【0020】
循環管C10のポンプ10よりも下流側には、第一管としての管(チューブ)C11が、分岐継手部材である第一管接続部材31(以下、接続子31とも称する)を用いて接続されている。接続子31としては、例えば、三方チーズ継手(T継手)またはY継手を用いることができる。接続子31は、管C11が循環管C10に接続される接続点を構成する。
【0021】
管C11には、ポンプ(供給ポンプ)11が設けられている。ポンプ11としては、例えばチューブポンプを用いることができる。ポンプ11は、一定の回転速度で回転し、一定の吐出流量をもたらすように構成されている。ポンプ11を回転(作動)させることで、循環管C10内を流れるスラリー21を管C11内へ引き込むとともに、引き込んだスラリー21を槽2b内へ供給(移送)することができる。ポンプ11の回転を停止すると、管C11内のスラリー21等の流体の流れが停止し、管C11内の流体は管C11内で完全に閉塞された状態となる。
【0022】
槽39には、第二管としての管(チューブ)C12が接続されている。管C12の下流端は、管C11の接続子31よりも下流側に、分岐継手部材である第二管接続部材32(以下、接続子32とも称する)を用いて接続されている。接続子32としては、例えば、T継手またはY継手を用いることができる。接続子32は、管C12が管C11に接続される接続点を構成する。
【0023】
管C12には、ポンプ(希釈用液ポンプ)12が設けられている。ポンプ12としては、例えばチューブポンプを用いることができる。ポンプ12は、一定の回転速度で回転し、一定の吐出流量をもたらすように構成されている。ポンプ12を回転(作動)させることで、槽39内から管C12内へ希釈用液22を汲み出し、管C11を介して槽2b内へ供給(移送)することができる。ポンプ12の回転を停止すると、管C12内における希釈用液22の流れが停止し、管C12内の希釈用液22は管C12内で完全に閉塞された状態となる。
【0024】
後述のステップ2(サンプリング)で消費されるスラリー21を低減する観点から、接続子31と接続子32との間の距離D1(図2参照)はできるだけ短い方が好ましい。本明細書における距離D1は、接続子31と接続子32との間に位置する管C11(以下、この部分の管C11を管C11aとも称する)の長さ、すなわち、管C11と循環管C10と接続点(管C11の上流端)から管C12と管C11との接続点までの長さを指す。距離D1は、例えば0.05メートル(5cm)以下であることが好ましい。距離D1が5cmである場合、管C11a内に滞留するスラリー21の量は、例えば0.63ミリリットルである。
【0025】
距離D1をできるだけ短くした場合であっても、接続子31の高さ位置と接続子32の高さ位置とが同じである場合、管C11a内にスラリー21が滞留し、スラリー21中の測定粒子が管C11a内に沈殿する。管C11a内に試料粒子が沈殿すると正確な物理量を測定できない場合がある。
【0026】
そこで、本実施形態では、図2に示すように、接続子32は、その高さ位置が接続子31の高さ位置よりも高くなるように設けられている。これにより、ポンプ12の作動により管C11における接続子32よりも下流側にスラリー21が供給されなくなった場合、管C11a内のスラリー21は循環管C10内へ逆流する(排出される)こととなる。このため、管C11a内にスラリー21中の試料粒子が沈殿した場合であっても、沈殿した試料粒子はスラリー21の排出とともに循環管C10内へ排出されることとなり、管C11a内にスラリー21中の試料粒子が残留しにくくなる。その結果、試料粒子の物理量を測定する際、接続子31,32の高さ位置が同じ場合よりも正確な物理量を測定することができる。
【0027】
接続子31と接続子32とが同じ高さ位置に設けられている場合における管C11aの配設角度を0°とした際、管C11aの配設角度が例えば5〜90°(5°以上90°以内)の範囲内となるように、接続子31および接続子32がそれぞれ設けられていることが好ましい。ポンプ12を作動させた際における管C11a内のスラリーを循環管C10内へ排出する観点からは、管C11aの配設角度は90°に近くなるほど好ましく、90°が最も好ましい。しかしながら、接続子31,32の形状等の理由により、上記配設角度を約15〜50°の範囲内とすることが実用的である。上記配設角度を45°程度とすることが最も実用的であり、接続子31および接続子32の配設も容易となる。
【0028】
図3に示すように、接続子31および接続子32は、支持部材40に支持されている。支持部材40は、接続子31が装着された第一板状部材41と、第一板状部材41に装着され、被支持面45を有する第二板状部材42と、を備えている。支持部材40は、被支持面45が載置台(図示せず)に接するように載置台上に配置されている。支持部材40は、第一板状部材41と第二板状部材42との位置関係を上下方向にスライドさせることで、被支持面45に対する接続子31の高さ位置を調整可能に構成されている。図3に例示する支持部材40では、第一板状部材41にねじ穴が形成されており、第二板状部材42に高さ方向に長いねじ挿入用の長穴(長ねじ穴)43が形成されている。そして、第一板状部材41を上下方向にスライドさせることにより接続子31の高さ位置調整を行った後、ねじ44をねじ穴および長穴43に挿通させてねじ止めすることで第一板状部材41を第二板状部材42に固定している。
【0029】
図1に示すように、主に、槽38、循環管C10、管C11、管C12、接続子31、接続子32により、各種流体を移送する機能要素である移送部(循環部)7が構成される。槽39、ポンプ10〜12を移送部7に含めてもよい。ポンプ11及びポンプ12により、サンプリング用ポンプ部が構成される。また、主に、槽2bにより、希釈部2が構成される。
【0030】
槽2bには、槽2b内の希釈液23を槽2bの外部で循環させる循環管(循環チューブ)C1が接続されている。循環管C1は、槽2bから汲み出した希釈液23が管内を流れた後、槽2b内へ戻るように構成されている。
【0031】
循環管C1には、ポンプ(循環ポンプ)3aが設けられている。ポンプ3aとしては、例えばチューブポンプを用いることができる。ポンプ3aは、一定の回転速度で回転し、一定の吐出流量をもたらすように構成されている。ポンプ3aを回転(作動)させることで、槽2b内から循環管C1内(槽2bの外部)へ希釈液23を汲み出すとともに、循環管C1内を流れた希釈液23を槽2b内に戻すことができる、すなわち循環管C1内で希釈液23を循環させることができる。
【0032】
循環管C1のポンプ3aよりも下流側には、フローセル36が設けられている。フローセル36は、希釈液23(試料粒子を含む流体)が流れる光学セルである。本実施形態では、後述のカメラ35に対向する面及び後述の照明装置37に対向する面が光学的に透明となるように構成されている。循環管C1内に引き込まれた希釈液23は、循環管C1内を循環する際、フローセル36内を通過する。
【0033】
フローセル36に対して所定の光を照射する照明装置37が配置されている。照明装置37としては、例えば、面発光タイプの発光ダイオードを用いることができる。照明装置37は、後述する演算部5により発光(ストロボ発光)タイミングが制御されるように構成されている。照明装置37は、定常的に発光するように構成されていてもよい。
【0034】
フローセル36を挟んで、照明装置37と対向する位置には、カメラ35が配置されている。カメラ35は、フローセル36内を流れる希釈液23に含まれる試料粒子を撮影するとともに、撮影した粒子画像を後述の演算部5へ送信(出力)する撮影装置である。例えば、カメラ35は、照明装置37により照射されてフローセル36を透過した光を受光することでフローセル36内の希釈液23中の試料粒子の画像を撮影する。カメラ35は、CCDカメラ、CMOS(Complementary metal−oxide−semiconductor)等の撮影素子で構成されている。カメラ35はレンズ35aを有している。レンズ35aとしては、例えばテレセントリックレンズを用いることが好ましい。これにより、カメラ35の光軸の方向における撮影対象の試料粒子とレンズ35aとの間の距離が変化しても、撮影画像中の試料粒子の画像の大きさが変化しないという効果が得られる。
【0035】
主に、循環管C1、カメラ35、フローセル36、照明装置37により、希釈液23中の試料粒子に関するデータを取得するデータ取得部である測定部3が構成される。ポンプ3aを測定部に含めてもよい。測定部3は、例えば、希釈液23中の試料粒子の粒度分布を測定するために必要なデータを取得する。
【0036】
槽2bには、槽2b内の希釈液23を排出する排出管C2が接続されている。排出管C2は、槽2bから粒子測定装置100の外部へ延びている。排出管C2には、排出装置としてのポンプ(排出ポンプ)4aが設けられている。ポンプ4aを回転(作動)させることで、槽2bから排出管C2内へ希釈液23を引き込むことができる。槽2b内の希釈液23は、排出管C2を通過した後、粒子測定装置100外へ排出される。主に、排出管C2、ポンプ4aにより、排出部4が構成される。
【0037】
主に、希釈部2、測定部3、排出部4により、本体部1が構成される。
【0038】
制御部である演算部5は、CPU(Central Processing Unit)、揮発性記憶装置、不揮発性記憶装置、入出力インタフェース(入出力装置)等を備えたコンピュータとして構成されている。演算部5は、各種演算を実行する機能要素である。演算部5は、本体部1、移送部7等から隔離され、ミスト、粉塵等の影響がない別室6(事務所等)に設置されている。これにより、特別な粉塵等の対策が不要となる。
【0039】
演算部5は、上述のポンプ10〜12,3a,4a、カメラ35、照明装置37等に接続されている。演算部5は、ポンプ10〜12,3a,4aの起動、停止および回転速度、カメラ35の撮影タイミング、照明装置37の発光タイミング等を制御するように構成されている。例えば、演算部5は、カメラ35の撮影タイミングに同期させて照明装置37をストロボ発光させるように、カメラ35の撮影タイミングおよび照明装置37の発光タイミングを制御するように構成されている。
【0040】
演算部5は、例えば、カメラ35が撮影した画像を記録するとともに、画像解析して試料粒子の粒度分布の測定に必要なデータを算出して保存するように構成されている。また、演算部5は、算出したデータに基づいて試料粒子の粒度分布を算出して保存するように構成されている。また、演算部5は、スピーカ、ディスプレイ等の出力装置を用い、算出した粒度分布等を出力するように構成されている。
【0041】
(2)粒子の物理量測定処理
上述の粒子測定装置100を用い、スラリー21中の粒子の物理量(例えば粒度分布)を測定する処理について説明する。以下の説明において、粒子測定装置100を構成する各部の動作は、演算部5により制御される。
【0042】
[ステップ1:スラリーの攪拌]
ポンプ10の回転を開始し、循環管C10内でスラリー21を循環させる。槽38内における試料粒子の沈殿、固化等を防止するために、ポンプ10の回転は、少なくとも後述のステップ2が終了するまでの間は継続して行われる。
【0043】
[ステップ2:サンプリング]
ポンプ10の回転開始から所定時間経過したら、槽2b内にスラリー21と希釈用液22とを供給し、槽2b内で希釈液23を生成する。
【0044】
具体的には、ポンプ12の回転を停止した状態で、ポンプ11の回転を開始し、循環管C10内から管C11における接続子32の下流側までスラリー21を引き込む。ポンプ11の回転開始から所定時間(例えば1〜6秒)経過したら、ポンプ11の回転を維持したままポンプ12の回転を開始し、管C12内へ希釈用液22を引き込む。なお、ポンプ11とポンプ12とがほぼ同じ吐出流量で作動している場合、循環管C10内を循環しているスラリー21は、管C11における接続子32よりも下流側部分にはほとんど引き込まれない。管C12内へ引き込まれた希釈用液22は、接続子32、管C11を介して槽2b内へ移送される。
【0045】
希釈用液22が管C11内を流れる際、希釈用液22は先に管C11内に引き込まれたスラリー21を押しながら管C11内を流れる。これにより、槽2b内にスラリー21が供給され、その後、希釈溶液22が供給される。槽2b内には、スラリー21が希釈用液22によって希釈された希釈液23が溜まる。
【0046】
所定時間が経過し、希釈液23中のスラリー濃度が粒度分布測定に適した濃度となるとともに、槽2b内における希釈液23の量が所望の量に達したら、ポンプ11,12の回転を同時に停止し、槽2bへの希釈用液22の移送を停止する。なお、ポンプ11,12の作動時間は、管C11の内径、長さ等から算出される。
【0047】
上述のように、粒子測定装置100では、接続子32の高さ位置が接続子31の高さ位置よりも高くなるように、接続子31,32がそれぞれ設けられている。このため、ポンプ12の回転を開始し、管C11a内のスラリー21が管C11における接続子32よりも下流側へ引き込まれなくなると、管C11a内のスラリー21は循環管C10内へ逆流する(排出される)。その結果、管C11a内にスラリー21中の試料粒子が沈殿した場合であっても、沈殿した試料粒子はスラリー21の排出とともに循環管C10内へ排出され、管C11a内に試料粒子が残留することを抑制できる。
【0048】
[ステップ3:撮影・粒度分布測定および希釈液排出]
ステップ2が終了したら、ポンプ3aの回転を開始し、槽2b内の希釈液23を循環管C1を介してフローセル36内に移送する。
【0049】
そして、フローセル36内を通過する希釈液23をカメラ35により撮影する。このとき、カメラ35の撮影タイミングに同期させて照明装置37をストロボ発光させる。カメラ35は、所定時間(例えば6分間)にわたって所定間隔(例えば1秒間当たり数回)で撮影を繰り返す。
【0050】
カメラ35は、撮影した画像を演算部5へ送信する。演算部5がカメラ35から画像を受信すると、演算部5は、画像処理によって、撮影画像における各粒子の外径、面積、輪郭上の突起の角度、重心、周長等の粒子測定情報を取得して記録する。確度の高い粒度分布情報を得るため、概ね4000個以上の粒子測定情報を取得するまで継続して行うことが好ましい。
【0051】
所定数の粒子の粒子測定情報の取得が終了したら、ポンプ3aの回転を停止する。その後、ポンプ4aの回転を開始し、槽2b内の全ての希釈液23を、循環管C1、フローセル36、排出管C2を介して粒子測定装置100の外部へ排出する。槽2b内の希釈液23を全て排出したら、ポンプ4aの回転を停止する。
【0052】
[ステップ4:粒度分布結果の閲覧]
ステップ3で得た粒度分布測定結果を演算部5で保存する。パソコン等のユーザ端末は、LAN等のコンピュータネットワーク経由で演算部5と通信し、粒度分布測定結果を利用してグラフを描画したり、平均粒径等の集計値を算出したりすることができる。演算部5はウェブサーバ機能を有していてもよい。この場合、ユーザ端末は、ウェブブラウザで粒度分布測定結果を確認できる。また、演算部5は、所定時間(例えば数時間)にわたる平均粒径の推移等を自動的に更新して提示できるように構成されてもよい。なお、本ステップは、少なくとも上述のステップ3と同時並行で行ってもよい。
【0053】
(3)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0054】
(a)接続子32の高さ位置が接続子31の高さ位置よりも高くなるように接続子31および接続子32をそれぞれ設けることで、ポンプ12の作動により管C11における接続子32よりも下流側にスラリー21が供給されなくなった場合、管C11a内のスラリー21は循環管C10内へ排出されることとなる。このため、管C11a内にスラリー21中の試料粒子が沈殿した場合であっても、沈殿した試料粒子はスラリー21の排出とともに循環管C10内へ排出されることとなり、管C11a内にスラリー21中の試料粒子が残留しにくくなる。その結果、粒度分布等の物理量の測定結果に与える影響を小さくすることができる。本発明者等は、管C11aの配設角度が45°となるように接続子32の高さ位置を接続子31の高さ位置よりも高くして配置した方が、管C11aの配設角度が0°の場合よりも、平均粒径の測定結果のバラツキが小さいことを確認済みである。
【0055】
(b)上述の効果は、試料粒子として、ニッケル(Ni)粒子等の特に粒径が大きく、比較的比重が大きな金属系粒子が用いられる場合にも、同様に得ることができる。このように、本願発明は、試料粒子として比較的比重が大きな金属系粒子を用いる場合に特に有効である。
【0056】
(c)管C11aの配設角度を5〜90°の範囲内とすることで、物理量の測定結果に与える影響を確実に小さくすることができる。
【0057】
(d)接続子31を上述の支持部材40に支持することで、接続子31の高さ位置の調整を容易に行うことが可能となる。
【0058】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。但し、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
上述の実施形態では、粒子測定装置100が1つの移送部7を有する場合について説明した。しかしながら、粒子測定装置は、図4に示すように複数の移送部7を有していてもよい。なお、図4に示す粒子測定装置100Aは、複数の移送部7を有することを除くその他の点は、上述の実施形態と同様である。そのため、以下では、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
粒子測定装置100Aは、2つの移送部7、すなわち、第一移送部7fおよび第二移送部7sを有している。粒子測定装置100Aでは、3つ以上の移送部7を有していてもよい。粒子測定装置100Aは、希釈用液22を収容する槽39、本体部1(すなわち希釈部2、測定部3、排出部4)、および演算部5は、第一移送部7fと第二移送部7sと共有である。
【0061】
第一移送部7fおよび第二移送部7sは、それぞれ、槽38、循環管C10、管C11、管C12、接続子31、接続子32を有している。第一移送部7fおよび第二移送部7sでは、それぞれ、接続子32の高さ位置が接続子31の高さ位置よりも高くなるように、接続子31および接続子32が設けられている。これにより、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、第一移送部7fおよび第二移送部7s間で、管C11aの配設角度を揃えることが好ましい。これにより、第一移送部7fおよび第二移送部7s間で測定条件を揃えることができる。本発明者等は、第一移送部7fおよび第二移送部7sのそれぞれの槽38に同一の試料粒子を有するスラリー21収容し、試料粒子の平均粒径の測定を行った際、平均粒径の測定結果は、複数の移送部7間でほぼ同一となることを確認済みである。本発明者等は、支持部材40を用いれば、第一移送部7fおよび第二移送部7s間で、管C11aの配設角度を容易に揃えることができる。
【0063】
また、本実施形態のように第一移送部7fと第二移送部7sとで槽39および希釈部2を共有する場合、槽39および槽2bは、第一移送部7fと第二移送部7sが有する管C11および管C12の合計長さができるだけ短くなる位置に設けられていることが好ましい。例えば、槽39および槽2bは、第一移送部7fが有する槽38と第二移送部7sが有する槽38とのほぼ中間位置に設けられることが好ましい。これにより、粒子測定装置100Aが大型になることを抑制できる。
【0064】
なお、槽39および槽2bは移送部7毎に複数設けられてもよい。しかしながら、粒子測定装置100Aの小型にする観点からは、槽39および槽2bは複数の移送部7で共有することが好ましい。
【0065】
以下では、粒子測定装置100Aを用いたスラリー21中の試料粒子の物理量を測定する処理について、第一移送部7fの槽38内から移送されたスラリー21の物理量を測定した後、第二移送部7sの槽38内から移送されたスラリー21の物理量を測定する場合を例に、説明する。なお、以下の説明においても、上述の実施形態と同一の手順等についてはその説明を省略する。
【0066】
[ステップ1:スラリーの攪拌]
まず、第一移送部7fおよび第二移送部7sが有するそれぞれのポンプ10の回転を開始する。第一移送部7fおよび第二移送部7sの各ポンプ10の回転は、少なくともステップ3Bが終了するまでの間は継続して行われる。第一移送部7fおよび第二移送部7sが有する各循環管C10内でのスラリー21の循環を維持し、各槽38内における試料粒子の沈殿、固化等を防止するためである。
【0067】
[ステップ2A:第一サンプリング]
ポンプ10の回転開始から所定時間経過したら、第一移送部7fのポンプ12および第二移送部7sのポンプ11,12の回転を停止した状態で、第一移送部7fのポンプ11の回転を開始し、循環管C10内から管C11における接続子32の下流側まで第一移送部7fの槽38内のスラリー21を引き込む。ポンプ11の回転開始から所定時間(例えば1〜6秒)経過したら、ポンプ11の回転を維持したまま第一移送部7fのポンプ12の回転を開始し、管C12内へ希釈用液22を引き込む。そして、槽2b内に、スラリー21が希釈用液22によって希釈された希釈液23を溜める。所定時間が経過し、希釈液23中のスラリー濃度が粒度分布測定に適した濃度となるとともに、槽2b内における希釈液23の量が所望の量に達したら、第一移送部7fのポンプ11,12の回転を同時に停止し、槽2bへの希釈用液22の移送を停止する。
【0068】
[ステップ3A:撮影・粒度分布測定および希釈液排出]
ステップ2Aが終了したら、上述のステップ3と同様のステップを行う。
【0069】
[ステップ2B:第二サンプリング]
ステップ3Aが終了したら、第一移送部7fのポンプ11,12および第二移送部7sのポンプ12の回転を停止した状態で、第二移送部7sのポンプ11の回転を開始し、循環管C10内から管C11における接続子32の下流側まで第二移送部7sの槽38内のスラリー21を引き込む。ポンプ11の回転開始から所定時間(例えば1〜6秒)経過したら、ポンプ11の回転を維持したまま第二移送部7sのポンプ12の回転を開始し、管C12内へ希釈用液22を引き込む。そして、槽2b内に、スラリー21が希釈用液22によって希釈された希釈液23を溜める。所定時間が経過し、希釈液23中のスラリー濃度が粒度分布測定に適した濃度となるとともに、槽2b内における希釈液23の量が所望の量に達したら、第二移送部7sのポンプ11,12の回転を同時に停止し、槽2bへの希釈用液22の移送を停止する。
【0070】
[ステップ3B:撮影・粒度分布測定および希釈液排出]
ステップ2Bが終了したら、上述のステップ3と同様のステップを行う。
【0071】
[ステップ4:粒度分布結果の閲覧]
上述のステップ4と同様のステップを行う。
【0072】
粒子測定装置100Aでは、槽2b内へ移送されるスラリー21および希釈用液22の移送経路の切り替えを、移送経路を切り替えるためのバルブを設けることなく、移送部7f,7sがそれぞれ有するポンプ11,12の回転および回転停止を制御することにより行っている。これにより、測定手順の煩雑化を抑制することができ、装置コストも低減できる。
【0073】
また、本実施形態では、ステップ3Aを行った後ステップ2Bを行う前に、槽2b、循環管C1、フローセル36等の洗浄を行ってもよい。これにより、以前に測定したスラリーサンプルの混入を抑制することができ、試料粒子の物理量をより正確に測定することができる。
【0074】
また、本実施形態では、スラリー21中の試料粒子の物理量を測定する処理を、ステップ1→ステップ2B→ステップ3B→ステップ2A→ステップ3A→ステップ4の順に行ってもよい。この場合、ステップ3Bを行った後ステップ2Aを行う前に上述の洗浄を行ってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、ポンプ11,12は、本体部1内に設置される場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、ポンプ11,12が本体部1の外部に設置されていてもよい。
【0076】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0077】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
スラリーを収容する第一容器と、
希釈用液を収容する第二容器と、
前記スラリーを前記希釈用液で希釈した希釈液を収容する第三容器と、
前記第一容器内の前記スラリーを前記第一容器の外部で循環させる循環管と、を有し、
前記循環管には、少なくとも前記スラリーを前記第三容器内へ供給する第一管が、分岐継手部材である第一管接続部材を用いて接続されており、
前記第一管の前記第一管接続部材よりも下流側には、前記第二容器内の前記希釈用液を前記第一管を介して前記第三容器内へ供給する第二管が、分岐継手部材である第二管接続部材を用いて接続されており、
前記第一管接続部材および前記第二管接続部材は、前記第二管接続部材の高さ位置が前記第一管接続部材の高さ位置より高くなるように、それぞれ設けられている粒子測定装置が提供される。
【0078】
(付記2)
付記1の粒子測定装置であって、好ましくは、
前記第一管接続部材および前記第二管接続部材は、前記第一管接続部材と前記第二管接続部材との間に位置する前記第一管の配設角度が5〜90°の範囲内となるように、それぞれ設けられている。
【0079】
(付記3)
付記1又は2の粒子測定装置であって、好ましくは、
前記第一容器と、前記循環管と、前記第一管と、前記第二管と、前記第一管接続部材と、前記第二管接続部材と、を備える移送部を複数有する。
【0080】
(付記4)
付記3の粒子測定装置であって、好ましくは、
複数の前記移送部間において、前記第一管接続部材と前記第二管接続部材との間に位置する前記第一管の配設角度が同じである。
【0081】
(付記5)
付記1〜4のいずれかの粒子測定装置であって、好ましくは、
前記第一管接続部材が装着された第一板状部材と、前記第一板状部材に装着され、被支持面を有する第二板状部材と、を備える支持部材を有し、
前記支持部材は、前記第一板状部材と前記第二板状部材との位置関係を上下方向にスライドさせることで、前記被支持面に対する前記第一管接続部材の高さ位置を調整可能に構成されている。
【符号の説明】
【0082】
2b 槽(第三容器)
7,7f,7s 移送部
21 スラリー
22 希釈用液
23 希釈液
31 接続子(第一管接続部材)
32 接続子(第二管接続部材)
C10 循環管
C11 管(第一管)
C12 管(第二管)
38 槽(第一容器)
39 槽(第二容器)
100,100S 粒子測定装置
図1
図2
図3
図4