特許第6984511号(P6984511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984511
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】アフターヒーター
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/14 20060101AFI20211213BHJP
   C01G 35/00 20060101ALI20211213BHJP
   C30B 29/30 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C30B15/14
   C01G35/00 C
   C30B29/30 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-54099(P2018-54099)
(22)【出願日】2018年3月22日
(65)【公開番号】特開2019-167253(P2019-167253A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】東風谷 敏男
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−181146(JP,A)
【文献】 特開平07−187880(JP,A)
【文献】 特開2017−193469(JP,A)
【文献】 特開2017−114725(JP,A)
【文献】 特開2018−2568(JP,A)
【文献】 特開平10−338594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 15/14
C01G 35/00
C30B 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリジウム製またはイリジウム合金製の第1円筒部と、
イリジウム製またはイリジウム合金製の第2円筒部と、を備え、
前記第2円筒部の下端部は、前記第1円筒部の上端部に載置され、
前記第1円筒部の内周面と前記第2円筒部の内周面が面一であり、
前記第1円筒部の外周面と前記第2円筒部の外周面が面一であ
前記第1円筒部の円筒の高さと、前記第2円筒部の円筒の高さとの比が、95:5〜70:30である、アフターヒーター。
【請求項2】
前記第1円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であり、前記第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であり、前記第1円筒部の円筒厚みおよび前記第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下である、請求項1に記載のアフターヒーター。
【請求項3】
前記第2円筒部の下端部は、凹部または凸部を有し、前記第1円筒部の上端部は、前記第2円筒部の下端部にある凹部または凸部に対応する凸部または凹部を有する、請求項1または2に記載のアフターヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱方式による単結晶育成に用いられるアフターヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の単結晶の育成方法としては、結晶引き上げ法が挙げられる、例えば、原料を充填したルツボを高周波誘導加熱方式により加熱して原料を溶融した後に、原料融液の表面へ、ある結晶方位に従って切り出された種結晶と呼ばれる単結晶の先端を接触させ、続いて種結晶を回転させつつ上昇させながら原料融液を引き上げると共に固化させることで、種結晶の性質を伝播しながら大口径化して単結晶の育成を行うチョクラルスキー法が広く普及している。
【0003】
単結晶の育成では、投入した原料からできるだけ長尺の単結晶を育成して固化率(投入した原料重量に対する育成された単結晶の重量比)を大きくした方が経済的である。しかし、長尺の単結晶を育成すると、多結晶化しやすい課題がある。
【0004】
多結晶化の原因として、育成中の結晶内部の温度差に起因した熱ひずみが考えられる。また、結晶育成中の結晶と融液の固液界面形状が不安定となり、育成中の結晶内部に欠陥が導入されることが、多結晶化の原因として考えられる。
【0005】
育成中の結晶内部の温度差を低減させるためには、引上げられた結晶が位置する原料融液の上方の温度差(温度勾配)を小さくすることが有効である。しかし、結晶育成中の固液界面では、結晶化に伴う固化潜熱が発生するため、固化潜熱を結晶成長界面から放出することが、結晶育成を進行させるためには重要である。そのため、原料融液の上方は、温度差が均一の場合には固化潜熱が放出されにくいおそれがあるため、ある程度の温度勾配が必要となる。
【0006】
また、固液界面の形状は、熱が逃げる方向(熱流速ベクトル)に垂直方向に形成される。そのため、結晶の外周方向に熱が逃げた場合には、固液界面の形状は融液下方に対して凹形状となり、結晶成長に伴い伝播する転位が結晶内で集積し多結晶化するおそれがある。そこで、育成中の結晶の外周部を加熱し、外周方向へ熱が逃げることを抑制し、熱流束ベクトルを結晶の引上げ方向に一致させるような温度分布とすることが重要である。
【0007】
そこで、チョクラルスキー法に代表される結晶引上げ法においては、原料融液上方の空間の温度勾配を制御するために、アフターヒーターが使用されるのが一般的である(例えば、特許文献1)。そして、アフターヒーター形状をドーム状やテーパー形状とすることで、結晶育成に適した温度勾配を作り込むことが行われている(例えば、特許文献2)。また、アフターヒーターとルツボの直径比を規定する方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−50390号公報
【特許文献2】特開昭54−128987号公報
【特許文献3】特開平7−187880号公報
【特許文献4】特開2014−055325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの方法により、アフターヒーターが原料融液上方の空間の温度勾配を制御することで、多結晶化を抑制することができ、単結晶の育成が可能となった。しかしながら、イリジウム製またはイリジウム合金製のアフターヒーターを用いて単結晶の育成を繰り返すと、イリジウムの酸化と昇華によりアフターヒーターが徐々に消耗する場合がある。この消耗に伴うアフターヒーター上部の板厚の減滅に伴い、高周波誘導加熱方式によるアフターヒーターの発熱挙動が変わることで徐々に原料融液上方の空間の温度勾配が変化し、単結晶化率(歩留まり)が低下する現象が見られた。
【0010】
歩留まりを回復させるためには、消耗したアフターヒーターを交換することが有効であり、これにより原料融液上方の空間の温度分布を元に戻すことで、歩留まりを元に戻すことが出来る。しかしながら、イリジウムやイリジウム合金で形成されているアフターヒーターは高価であり、歩留まり向上と比較すると費用対効果が悪いという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、単結晶化率の低下を安価に防止することで、安価に単結晶を供給できるアフターヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のアフターヒーターは、イリジウム製またはイリジウム合金製の第1円筒部と、イリジウム製またはイリジウム合金製の第2円筒部と、を備え、前記第2円筒部の下端部は、前記第1円筒部の上端部に載置され、前記第1円筒部の内周面と前記第2円筒部の内周面が面一であり、前記第1円筒部の外周面と前記第2円筒部の外周面が面一である。
【0013】
前記第1円筒部の円筒の高さと、前記第2円筒部の円筒の高さとの比が、95:5〜70:30であってもよい。
【0014】
前記第1円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であり、前記第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であり、前記第1円筒部の円筒厚みおよび前記第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であってもよい。
【0015】
前記第2円筒部の下端部は、凹部または凸部を有し、前記第1円筒部の上端部は、前記第2円筒部の下端部にある凹部または凸部に対応する凸部または凹部を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、単結晶化率の低下を安価に防止することで、安価に単結晶を供給できるアフターヒーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のアフターヒーターの概略斜視断面図である。
図2】第2円筒部の下端部の形状と第1円筒部の上端部の形状の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明のアフターヒーターを備える単結晶育成装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかるアフターヒーターについて説明する。
【0019】
本発明のアフターヒーターは、イリジウム製またはイリジウム合金製の第1円筒部と、イリジウム製またはイリジウム合金製の第2円筒部とを備え、第2円筒部の下端部は、第1円筒部の上端部に載置される。すなわち、第1円筒部の上に第2円筒部が乗せられて、アフターヒーターとなる。
【0020】
例えば、タンタル酸リチウム等の単結晶を育成する際には、育成中の単結晶はタンタル酸リチウムの融点(1650℃)に近い温度であるため、アフターヒーターとしてはより融点が高い耐熱金属材料が用いられる。具体的には、イリジウム製や、イリジウムと白金との合金製のアフターヒーターが用いられる。イリジウムは、融点が2443℃と高く、不活性ガス雰囲気では高温でも安定である。
【0021】
ただし、高周波誘導加熱方式により加熱する場合、対象物の端部に発熱が集中しやすく、特にアフターヒーターの場合は上端部に発熱が集中する。この状態で、タンタル酸リチウムを育成するために単結晶育成装置の炉内の雰囲気が酸化雰囲気である場合、イリジウムはより蒸気圧が高い酸化物へ酸化され、やがて昇華してしまう。例えば、高温酸化雰囲気では、イリジウム酸化物が生成し、1096℃以上で生成したIrOが主にIrOとなって揮発する場合がある(例えば、特許文献4)。
【0022】
そのため、単結晶の育成を繰り返すごとに昇華がおこり、特に発熱が集中するアフターヒーターの上端部が優先して消耗してしまい、薄膜化してしまう。高周波誘導加熱方式では、誘導電流の電気抵抗によりアフターヒーターを発熱させるため、昇華により薄くなった上端部の電気抵抗が上昇し、発熱が促進されより昇華が起こることになる。つまり、アフターヒーターの上端部は、単結晶の育成を繰り返すごとに薄くなる。
【0023】
このような状態でアフターヒーターを使い続けると、アフターヒーター上端部の発熱量がますます増加していく方向に変化し、融液上方の温度勾配は小さくなっていく。そのため、当初設計した温度勾配からずれが生じる。このずれを補正するために、例えば高周波誘導コイルと、発熱体であるルツボ、リフレクター、アフターヒーター等の位置関係を変化させる方法が有効である。発熱体中の磁場分布を変化させるべく発熱分布を操作することで、発熱体の形状変化に伴う温度勾配の変化を極小として、育成中の単結晶への影響を抑えることが出来る。
【0024】
しかし、この方法でも調整の限界が生じ、単結晶の育成が出来なくなる。そのため、従来はアフターヒーターを交換し、発熱分布を当初の状態に戻すことで歩留まりの確保が行われている。ただし、イリジウム製やイリジウム合金製のアフターヒーターは高価であるため、アフターヒーターの交換には非常に大きなコストがかかり経済的ではない。
【0025】
アフターヒーターを交換すること以外に、単結晶育成装置の耐火物の構成を変更することで、融液上方の温度勾配を制御することが考えられる。しかしながら、耐火物の構成の変更により急激な温度勾配の変化が生じる場合があるため、構成の変更後の単結晶育成が困難となるおそれがある。
【0026】
本発明者らは、アフターヒーターの上端部が消耗して優先的に薄くなることにより、上端部の発熱量がより大きくなって、融液上方の温度勾配が変化することに着目した。すなわち、本発明のアフターヒーターであれば、第1円筒部の上に第2円筒部が乗せられる構成となっているため、消耗した上端部を有する第2円筒部のみを交換し、第1円筒部はそのまま利用することができる。このようにすることで、アフターヒーターの部分的な交換で足りるため経済的であり、かつ、融液上方の温度分布を常に調整可能な範囲内に収めることができる。
【0027】
本発明のアフターヒーターにおいて、第1円筒部の内周面と第2円筒部の内周面が面一である。高周波誘導加熱方式によりアフターヒーターを加熱する場合、アフターヒーターの端部に発熱が集中しやすくなる。そこで、内周面において端部があることで発熱が集中しないよう、第1円筒部の内周面と第2円筒部の内周面を面一とする。
【0028】
また、本発明のアフターヒーターにおいて、上記した内周面の場合と同様に、外周面においても端部があることで発熱が集中しないよう、第1円筒部の外周面と第2円筒部の外周面を面一とする。
【0029】
本発明のアフターヒーターにおいて、第1円筒部の円筒の高さと、第2円筒部の円筒の高さとの比が、95:5〜70:30であることが好ましい。アフターヒーターの上端部が消耗するために、融液上方の温度勾配を調整可能な限度を超える段階まで単結晶の育成の繰り返し数が達した前後において、第2円筒部は交換することが前提となる。また、第1円筒部は、交換した新品の第2円筒部が載置されることで継続して使用される。そのため、第2円筒部の円筒の高さが低いほど、交換するイリジウムの量が少なくなるため、経済的である。
【0030】
すなわち、単結晶の育成条件にもよるが、アフターヒーターの消耗する領域は、最も消耗する上端部から、円筒の高さ方向において下へ向かって円筒の高さの5%〜30%程度である。つまり、第1円筒部の円筒の高さと、第2円筒部の円筒の高さとの比が、95:5〜70:30であることにより、アフターヒーターの消耗部分を確実に交換できると共に、交換するイリジウム量が少なくなるため、経済的である。かかる比が、95:5〜70:30の範囲内とならない場合には、アフターヒーターの消耗部分を全て交換できないことで、融液上方の温度勾配に不具合が生じて単結晶が育成できないおそれや、アフターヒーターの消耗していない部分まで交換することとなって不経済となるおそれがある。第1円筒部の円筒の高さと、第2円筒部の円筒の高さとの比が、90:10〜80:20であれば、単結晶の種々の育成条件に柔軟に対応でき、経済的であるため、より好ましい。
【0031】
本発明のアフターヒーターにおいて、前記第1円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であり、前記第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であり、前記第1円筒部の円筒厚みおよび前記第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下であることが好ましい。単結晶の育成回数が増えることでイリジウムが消耗していくことにより、アフターヒーターの円筒厚みが変わることで融液上方の温度勾配が変わってしまう。ただし、厚みの差がこれらの範囲内であれば、高周波誘導コイル、ルツボ、リフレクターおよびアフターヒーター等の位置関係を変化させることで発熱分布を操作することにより、単結晶を問題なく育成することができる。
【0032】
また、本発明の新品のアフターヒーターの円筒厚みは、ワークコイルとアフターヒーターの距離により発熱量は変化するが、例えば通常の育成条件を考慮すれば、0.5mm〜1.5mmであればよく、単結晶の育成の連続数やイリジウムの原料費、アフターヒーターの交換コストを考慮すると、0.8mm〜1.2mmの円筒厚みのものを使用することが好ましい。
【0033】
本発明のアフターヒーターにおいて、第2円筒部の下端部は、第1円筒部の上端部に載置するところ、第2円筒部の下端部と第1円筒部の上端部のいずれも円筒高さ方向と直交する方向において平滑な円筒断面であっても、載置のズレにより発熱が集中する端部が生じなければ、単結晶を問題なく育成することができる。ただし、本発明のアフターヒーターにおいて、第2円筒部の下端部は、凹部または凸部を有し、第1円筒部の上端部は、第2円筒部の下端部にある凹部または凸部に対応する凸部または凹部を有することが好ましい。第2円筒部の下端部と第1円筒部の上端部とが対応した形状となっていることにより、載置のズレがより発生し難くなるため、より安定して単結晶の育成を繰り返すことができる。
【0034】
なお、第2円筒部の下端部や第1円筒部の上端部が凹部形状または凸部形状である場合には、これらの端部があることにより、第1円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差や、第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差、第1円筒部の円筒厚みおよび第2円筒部の円筒厚みの最大値と最小値との差が0.5mm以下とならない場合がある。ただし、第1円筒部へ第2円筒部が載置された状態で、融液上方の温度勾配に不具合が生じることがなく、単結晶の育成を安定して繰り返すことができるように、アフターヒーター全体として上記したこれらの0.5mm以下の差であれば足りる。
【0035】
以下、本発明の一実施形態にかかるアフターヒーターについて、図面を参照しつつ、より具体的に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
【0036】
図1は、本発明のアフターヒーターの概略斜視断面図であり、アフターヒーター100の中心軸を通るように高さHの方向に切断したものを図示している。イリジウム製またはイリジウム合金製のアフターヒーター100は、円筒形状の第1円筒部110と、円筒形状の第2円筒部120を備えており、第2円筒部120の下端部121が、第1円筒部110の上端部111に載置されている。
【0037】
酸化雰囲気において高周波誘導加熱方式によりアフターヒーター100を加熱すると、第2円筒部120の上端部122に発熱が集中しやすく、イリジウムが酸化物となって昇華してしまい、上端部122から下端部121へ向かって第2円筒部120が徐々に薄膜化する。
【0038】
一方で、第1円筒部110は、第2円筒部120の上端部122から離れているため、発熱の集中の影響を受けにくく、単結晶の育成条件にもよるが、薄膜化し難い。なお、第1円筒部110の下端部112は、未図示のリフレクターに乗せられることで、アフターヒーター100はリフレクターに載置される。
【0039】
従来のアフターヒーターであれば、融液上方の温度勾配のずれを回復させるべく、アフターヒーターをそっくり交換するところ、本発明のアフターヒーター100であれば、消耗により薄膜化した第2円筒部120を新品に交換すれば、引き続き単結晶を育成することができる。
【0040】
アフターヒーター100は、第1円筒部110の内周面113と第2円筒部120の内周面123の間に段差が無くフラットな状態、すなわち面一である。同様に、第1円筒部110の外周面114と第2円筒部120の外周面124が面一である。
【0041】
また、アフターヒーター100の円筒の高さHにおいて、第1円筒部110の円筒の高さH1と第2円筒部120の円筒の高さH2との比は、H1:H2=70:30である。
【0042】
次に、第1円筒部110の上端部111と第2円筒部120の下端部121の形状について説明する。図1に示すように、上端部111と下端部121のいずれも、円筒の高さHの方向と直交する方向において平滑な円筒断面形状であってもよい。
【0043】
また、図1の領域Aを拡大した図である、上端部111と下端部121の形状の一例を示す概略断面図(図2)のように、上端部111の形状が下端部121の形状と対応する凹凸形状であってもよい。例えば、図2(a)に示すように、115a〜cの3枚のイリジウム製の板を板115aと115cとの間に挟まれる板115bが凹部となるように隙間なく重ね併せて第1円筒部110を形成し、125a〜cの3枚のイリジウム製の板を板125aと125cとの間に挟まれる板125bが凹部と隙間なく密着可能な凸部となるように隙間なく重ね併せて第2円筒部120を形成することができる。なお、上記と同様の凹部を第2円筒部120の下端部121に形成してもよく、この場合には、上記と同様の凸部を第1円筒部110の上端部111に形成してもよい。
【0044】
また、図2(b)に示すように、115dおよび115eの2枚のイリジウム製の板を板115eが板115dよりも突出するように隙間なく重ね併せて第1円筒部110を形成し、125dおよび125eの2枚のイリジウム製の板を板125eが板125dよりも凹むことで板115eと板115dにより形成される突出形状と隙間なく密着可能なように隙間なく重ね併せて第2円筒部120を形成することができる。なお、板115dが板115eよりも突出するように上端部111を形成してもよく、この場合には、板125dが板125eよりも凹むように下端部121を形成してもよい。
【0045】
図2(a)、(b)に例示するように、下端部121が凹部または凸部を有し、上端部111が下端部121の凹部または凸部に対応する凸部または凹部を有することで、単結晶育成中の第2円筒部120載置のズレを防止することができる。
【0046】
(単結晶育成装置)
次に、アフターヒーター100の使用例として、アフターヒーター100を設置した単結晶育成装置1000について、図3の断面模式図を参照して説明する。
【0047】
単結晶育成装置1000は、第1円筒部110と第2円筒部120を備える円筒状のアフターヒーター100およびドーナツ板状のリフレクター150を備える装置であり、さらに、高周波誘導加熱方式の加熱手段として加熱コイル200、イリジウム製ルツボ300、ルツボ300を載置するアルミナ製の載置台400、耐火物500、回転機構を備えた引き上げ軸600、炉体700、単結晶育成装置1000の動作を制御する不図示の制御手段、および高周波誘導コイルに高周波電力を供給するための電源を備える。なお、図3においては、タンタル酸リチウムの種結晶をA、タンタル酸リチウムの原料融液をBの符号で示している。
【0048】
(タンタル酸リチウム単結晶の育成方法)
次に、アフターヒーター100を備える単結晶育成装置1000の使用例として、タンタル酸リチウム単結晶の育成方法を説明する。
【0049】
まず、イリジウム製ルツボ300に、原料融液Bの原料を充填して、高温酸化雰囲気にて加熱コイル200によりルツボ300を加熱して、ルツボ300内の原料を融点以上に加熱して融解することにより、原料融液Bを得る。次に、引き上げ軸600の種結晶保持治具に取り付けられた、タンタル酸リチウムの種結晶Aを、ルツボ300内の原料融液Bの上面に接触させる。これを、シーディングという。その後、引き上げ軸600の引き上げ軸駆動手段(未図示)により、種結晶Aを回転させながら徐々に上方へ引き上げ軸600を引き上げる。単結晶の育成中は、加熱コイル200によるルツボ300、アフターヒーター100およびリフレクター150の加熱温度や、引き上げ軸600の回転数および引き上げ速度等を制御手段等により制御することにより、単結晶に肩部および直胴部を育成する。直胴部が所定の長さになったところで、引き上げ軸600の引き上げ速度等を制御して、原料融液Bの上面と育成した単結晶の下端とを切り離し、その後冷却してタンタル酸リチウム単結晶が完成する。なお、単結晶の育成方法は特に限定されず、チョクラルスキー法等の公知の技術を利用できる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例1および比較例1では、一例としてアフターヒーター100を備える単結晶育成装置1000を用いて、タンタル酸リチウムの単結晶を育成した場合についての実験内容を説明する。
【0051】
[実施例1]
イリジウム製のルツボ300に、タンタル酸リチウムの原料を充填し、ルツボ300を銅製の高周波誘導コイル(加熱コイル200)によって加熱して原料融液Bを得た。次に、タンタル酸リチウムの種結晶Aを、原料融液Bの上面に接触させてシーディングを行い、その後、イリジウム製の引上げ軸600を1〜20rpmで回転させながら、1〜5mm/hの速度で垂直に引き上げることによって、種結晶Aから連続的にタンタル酸リチウムの単結晶を得た。
【0052】
ここで、単結晶を育成するにあたり、ルツボ300の上部にはリフレクター150を設置し、その上にさらにアフターヒーター100を設置した。アフターヒーター100は、高さHが160mm、外径140mm、厚みT1およびT2が1.0mmであり、重量は3300gである。そして、第1円筒部110(重量は2310g)および第2円筒部120(重量は990g)からなる2分割可能な構造とし、分割位置はアフターヒーター100の上端部122から円筒の高さH方向において下へ向かって円筒の高さHの30%の位置とした。すなわち、H1:H2=70:30とした。また、アフターヒーター100としては、上端部111と下端部121のいずれも、円筒の高さHの方向と直交する方向において平滑な円筒断面形状のものを使用した。
【0053】
単結晶育成装置1000の各部材は、新品のものを使用して炉内を構成した。アフターヒーター100についても新品を使用して単結晶の育成を開始し、アフターヒーター100を交換せずに連続的に単結晶の育成を行った。育成回数が増えることに応じて、融液Bの上方、すなわちアフターヒーター100の内部の温度勾配が緩くなるに従い、加熱コイル200、アフターヒーター100、リフレクター150、ルツボ300の位置を適宜調整して単結晶の育成を継続した。
【0054】
単結晶の育成回数が300回を超えると、加熱コイル200の位置調整では、温度勾配が調整できなくなったために、多結晶化した。多結晶化したときのアフターヒーター100の円筒厚みT1およびT2を測定したところ、円筒厚みT1の最大値と最小値との差が0.5mm以下であったものの、円筒厚みT2の最大値と最小値との差が0.5mmを越えており、結果として円筒厚みT1および円筒厚みT2の最大値と最小値との差が0.5mmを越えた。そこで、連続の育成を中断し、アフターヒーター100の上部である第2円筒部120のみを交換し、第1円筒部110に新品の第2円筒部120を載置して単結晶の育成を再開したところ、再び単結晶を育成することができた。すなわち、第2円筒部120のみを交換したことにより、交換費用はアフターヒーターそのもの全てを交換する場合の30%程度に留まり、単結晶を育成するためのランニングコストを低く抑えられた。
【0055】
[比較例1]
アフターヒーター100に代えて、高さ160mm、外径140mm、厚みが1.0mmの円筒状で一体型であり、重量は3300gの既知のアフターヒーターの新品を使用した。アフターヒーターの他は、実施例1と同様の条件により単結晶の育成操作を行った。
【0056】
単結晶の育成回数が300回を超えると、加熱コイル200の位置調整では、温度勾配が調整できなくなり、多結晶化した。多結晶化したときの比較例1のアフターヒーターの円筒厚みを測定したところ、最大値と最小値との差が0.5mmを越えた。そこで、アフターヒーターを交換して単結晶の育成を再開したところ、再び単結晶を育成することができた。しかしながら、使用したアフターヒーターは一体型であり分割できないために、アフターヒーターそのもの全てを新品のものに交換したため、単結晶を育成するためのランニングコストを抑えることはできず、通常通りのコストが必要となった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、分割可能な第1円筒部と第2円筒部を備えることで、単結晶の育成に応じて消耗する第2円筒部のみを交換すれば単結晶の育成を再開可能であり、アフターヒーターの維持費を削減可能である。そのため、表面弾性波素子等に用いられるタンタル酸リチウム単結晶等の育成に利用することができ、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0058】
100 アフターヒーター
110 第1円筒部
111 上端部
112 下端部
113 内周面
114 外周面
115a 板
115b 板
115c 板
115d 板
115e 板
120 第2円筒部
121 下端部
122 上端部
123 内周面
124 外周面
125a 板
125b 板
125c 板
125d 板
125e 板
150 リフレクター
200 加熱コイル
300 ルツボ
400 載置台
500 耐火物
600 引き上げ軸
700 炉体
1000 単結晶育成装置
A 種結晶
B 原料融液
H 高さ
H1 円筒の高さ
H2 円筒の高さ
T1 円筒厚み
T2 円筒厚み
図1
図2
図3