特許第6984519号(P6984519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984519
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20211213BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20211213BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20211213BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20211213BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J11/06
   C09J5/06
   C09J7/38
   C08F299/00
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-60188(P2018-60188)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-172748(P2019-172748A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】今泉 早織
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/123030(WO,A1)
【文献】 特開2003−201267(JP,A)
【文献】 特開2009−096857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂の側鎖にヘミアセタール化反応により得られるエチレン性不飽和基含有構造部位(α)を含有するエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)および光重合開始剤(B)を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
上記エチレン性不飽和基含有構造部位(α)が下記一般式(1)で示される構造であることを含有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【化1】
【請求項3】
上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)におけるエチレン性不飽和基含有構造部位(α)の含有量が30〜500mmol/100gである請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が活性エネルギー線照射により架橋された粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を含有する粘着剤組成物、それを用いた粘着シートに関するものであり、とりわけ、エージングレスで微粘着性の粘着剤または粘着シートとすることができ、リワーク性に優れ、また、その後加熱することによって、粘着力が上昇し被着体との接着性に優れるものとすることができる粘着剤組成物および粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の微細化、高機能化の要求に対応すべく、半導体チップ(半導体素子)主面の全域に配置された電源ラインの配線幅や信号ライン間の間隔が狭くなってきている。この為、インピーダンスの増加や、異種ノードの信号ライン間での信号の干渉が生じ、半導体チップの動作速度、動作電圧余裕度、耐静電破壊強度等において、充分な性能の発揮を阻害する要因となっている。これらの問題を解決する為、特許文献1では、半導体素子を積層したパッケージ構造が提案されている。
【0003】
上記パッケージ構造においては、半導体素子と基板、リードフレームとの接着に際し粘着シートまたは粘着剤が使用されており、特許文献2では、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂を粘着シートに用いることが記載されている。
【0004】
一般的に、半導体素子と基板等とを粘着シートまたは粘着剤で圧着させた後は、粘着シートまたは粘着剤を加熱することにより硬化させて接着を行う。この半導体素子と基板等と圧着の際に半導体素子の位置がずれることがあり、粘着シートまたは粘着剤には、位置がずれた場合に半導体素子を再利用するためのリワーク性が求められている。
また、このリワークの際、薄膜化が進む半導体素子に負荷がかかると反りの原因となるため、粘着シートまたは粘着剤は、非常に低い粘着力で半導体素子と基板等とを仮固定できることが望ましい。
【0005】
さらに、上記パッケージ構造は、その後、半導体素子と基板を電気的に接続するためにワイヤーボンディングを行い、その後に封止樹脂でモールドした後、封止樹脂を硬化させて封止を行う。この加熱工程を経てワイヤーボンディングを行う際、超音波振動や加熱により基板上の半導体素子が動くため、半導体素子と基板とを強い粘着力で固定できる粘着シートまたは粘着剤が求められている。
また、上記の工程で使用される粘着剤の多くはエージング期間を必要としており、作業性向上のためにエージングレスで作製できる粘着剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−261233号公報
【特許文献2】特開2005−183703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2での開示技術では、仮固定の際の粘着力が高いため半導体素子に負荷がかかってしまう問題があり、さらにエージング期間を必要としていた。
【0008】
そこで、本発明ではこのような背景下において、加熱することなく半導体素子を低粘着力で仮固定させる工程と、加熱によって粘着力を上昇させて半導体素子を固定させる工程において、エージングレスで作製でき、仮固定させる工程ではリワーク性に優れ、その後の加熱により粘着力が上昇して被着体との粘着性に優れる粘着剤組成物および粘着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、本発明者は、特定構造のエチレン性不飽和基を含有するアクリル系樹脂を用いる場合に、活性エネルギー線を照射することによりエージングレスで作製でき、かつ粘着力が低く(微粘着性)、リワーク性に優れ、その後、加熱により粘着力が上昇し、被着体との接着性に優れた粘着剤組成物および粘着シートを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、アクリル系樹脂の側鎖にヘミアセタール化反応により得られるエチレン性不飽和基含有構造部位(α)を含有するエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)および光重合開始剤(B)を含有する粘着剤組成物を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、上記第1の要旨の粘着剤組成物が活性エネルギー線照射により架橋された粘着剤層を有する粘着シートを第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂の側鎖にヘミアセタール化反応により得られるエチレン性不飽和基含有構造部位(α)を含有するエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)および光重合開始剤(B)を含有する。そのため、この粘着剤組成物が活性エネルギー線照射により架橋された粘着剤、または、粘着剤層を有する粘着シートは、エージングレスで微粘着性の粘着剤または粘着シートとすることができリワーク性に優れ、また、その後加熱することによって、粘着力が上昇し被着体との接着性に優れるものとすることができる。
【0013】
また、本発明のなかでも、特に、上記エチレン性不飽和基含有構造部位(α)が下記一般式(1)で示される構造であると、よりエージングレスで微粘着性の粘着剤または粘着シートとすることができ、また、その後加熱することによって、粘着力が上昇し被着体との接着性に優れるものとすることができる。
【化1】
【0014】
また、本発明のなかでも、特に、上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)におけるエチレン性不飽和基含有構造部位(α)の含有量が30〜500mmol/100gであると、よりエージングレスで微粘着性の粘着剤または粘着シートとすることができ、リワーク性に優れるものとなり、また、その後加熱することによって、粘着力が上昇し被着体との接着性に優れるものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、「アクリル系樹脂」とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
なお、本発明において、「シート」とは、特に「フィルム」、「テープ」と区別するものではなく、これらも含めた意味として記載するものである。
【0016】
本発明の粘着剤組成物は、活性エネルギー線照射によって、エージングレスで微粘着性を発揮し、さらにその後加熱することにより、粘着力が上昇するものであり、半導体素子、基板等の被着体の固定用として好適に用いられる。
【0017】
上記粘着剤組成物は、エチレン性不飽和基含有構造部位(α)を含有するエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)および光重合開始剤(B)を含有する。以下、本発明の粘着剤組成物の各構成成分について説明する。
【0018】
〔エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)〕
本発明で用いるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)は、例えば、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)とビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)とをヘミアセタール化反応させて得られるものである。
【0019】
[カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)]
上記カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)およびアルキル(メタ)アクリレート(a2)、必要に応じて官能基含有モノマー(a3)(ただし、カルボキシル基含有モノマー(a1)を除く。)、およびその他の共重合性モノマー(a4)を重合させて得られるものである。
【0020】
上記カルボキシル基含有モノマー(a1)が有するカルボキシル基は、重合後のカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)において、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)との反応点となるものである。
【0021】
上記カルボキシル基含有モノマー(a1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。なかでも共重合性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0022】
また、上記カルボキシル基含有モノマー(a1)の含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常1〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。かかる含有量が少なすぎると、充分な量のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)と反応させることが難しく、活性エネルギー線照射によって充分に粘着剤が硬化せず、粘着力が高くなりすぎてリワーク性が低下する傾向がある。また、含有量が多すぎると、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)と未反応のカルボキシル基が多くなり、被着体を変質させやすくなる傾向がある。
【0023】
上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)を得る重合成分の主成分である。また、上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)は、アルキル基の炭素数が、通常1〜20であり、好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4である。炭素数が大きすぎると、粘着剤組成物中でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)が均一に混合せず、活性エネルギー線照射による硬化性や塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0024】
上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)として、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)のなかでも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさおよび原料入手しやすさの点で、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
また、上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)の含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常30〜99重量%であり、好ましくは40〜97重量%、特に好ましくは50〜95重量%である。かかる含有量が少なすぎると、加熱前の粘着力が高くなりすぎる傾向があり、多すぎると加熱後の粘着力が低くなりすぎる傾向がある。
【0026】
上記官能基含有モノマー(a3)(ただし、カルボキシル基含有モノマー(a1)を除く。)の有する官能基は、加熱後の粘着力に優れるようになることから、官能基含有モノマー(a3)を重合成分として含有させてもよい。
【0027】
上記官能基含有モノマー(a3)としては、前記カルボキシル基含有モノマー(a1)を除くものであり、例えば、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー等を挙げることができる。なかでも、粘着物性に優れる点で、水酸基含有モノマーが好ましい。また、これらの官能基含有モノマー(a3)は、単独でもしくは2種類以上を併用することができる。
【0028】
上記水酸基含有モノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーであることが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマー等を挙げることができる。
上記水酸基含有モノマーのなかでも、反応性が高い点で、1級水酸基含有モノマーが好ましく、特には2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
上記水酸基含有モノマーの含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常20重量%以下であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の保存安定性が低下する傾向がある。
【0030】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記アミノ基含有モノマーの含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の保存安定性が低下する傾向がある。
【0032】
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等が挙げられる。
【0033】
上記アミド基含有モノマーの含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の保存安定性が低下する傾向がある。
【0034】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記グリシジル基含有モノマーの含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の保存安定性が低下する傾向がある。
【0036】
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチロールプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等が挙げられる。
【0037】
上記スルホン酸基含有モノマーの含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の保存安定性が低下する傾向がある。
【0038】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0039】
上記アセトアセチル基含有モノマーの含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。かかる含有量が多すぎると、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の保存安定性が低下する傾向がある。
【0040】
上記その他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルモノマー;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環を含有するモノマー;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記その他の共重合性モノマー(a4)の含有量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重合成分の通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。その他の共重合性モノマー(a4)が多すぎると粘着特性が低下しやすくなる傾向がある。
【0042】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)、アルキル(メタ)アクリレート(a2)、必要に応じて、官能基含有モノマー(a3)(ただし、カルボキシル基含有モノマー(a1)を除く。)、およびその他の共重合性モノマー(a4)を重合成分として重合することにより得られる。かかる重合法としては通常、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法により適宜行うことができる。なかでも溶液ラジカル重合で製造することが、安全に、安定的に、任意のモノマー組成でカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)を製造できる点で好ましい。
【0043】
上記溶液ラジカル重合は、例えば、有機溶剤中に、カルボキシル基含有モノマー(a1)、アルキル(メタ)アクリレート(a2)、官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)等のモノマー成分および重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは通常50〜98℃で0.1〜20時間程度重合すればよい。
【0044】
上記重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0045】
上記重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0046】
上記の重合方法によって得られるカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量は、通常10万〜200万、好ましくは15万〜150万、特に好ましくは20万〜120万、殊に好ましくは、30万〜100万である。重量平均分子量が小さすぎるとリワークする際に糊残りしやすくなる傾向があり、大きすぎると架橋時の分子の絡み合いが大きくなり、加熱した際に粘着力が上昇しにくくなる傾向がある。
【0047】
さらに、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には10以下が好ましく、さらには7以下が好ましく、殊には5以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると低分子成分が多くなり凝集力が低下することとなり、粘着力が高くても被着体の位置がずれやすくなる傾向がある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
【0048】
上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列にして用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で得ることができる。
【0049】
また、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の25℃での粘度は、5〜50,000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは10〜10,000mPa・sである。かかる粘度が上記範囲外では塗工性が低下する傾向がある。なお、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0050】
また、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)のガラス転移温度(Tg)は、通常40℃以下であり、好ましくは20℃以下であることが好ましく、特に好ましくは−5℃以下、さらに好ましくは−10℃以下である。ガラス転移温度が高すぎると粘着性が低下する傾向がある。なお、ガラス転移温度の下限は通常−80℃である。
【0051】
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を、下記のFoxの式に当てはめて算出した値である。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121−1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0054】
[ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)]
本発明で用いるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)は、ラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基とカチオン重合性を有するビニルエーテル基を有する化合物である。
【0055】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)としては、例えば、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0056】
【化2】
【0057】
上記一般式(2)のR2で表される有機基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基、炭素数2〜20のアルコキシアルキレン基、炭素数2〜20のアミド基、アリーレン基が挙げられる。なかでも炭素数2〜20のアルコキシアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜10のアルコキシアルキレン基である。
【0058】
上記一般式(2)で示される具体的な化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル等が挙げられる。これらのビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)は、単独でもしくは2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0059】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)のビニルエーテル基とカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)のカルボキシル基とをヘミアセタール化反応させることにより、下記一般式(1)で示されるヘミアセタール結合を有するエチレン性不飽和基含有構造部位(α)を含有するエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)を得ることができる。
【0060】
【化3】
【0061】
上記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和基含有構造部位(α)は、アクリル系樹脂の側鎖末端であればよく、例えば、アクリル系樹脂の主鎖に上記エチレン性不飽和基含有構造部位(α)が側鎖として直接結合していてもよいし、側鎖を有するアクリル系樹脂の側鎖末端に上記エチレン性不飽和基含有構造部位(α)が結合していてもよい。
【0062】
上述のとおり、本発明で用いるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)とビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)とをヘミアセタール化反応させることにより得られるものである。
上記カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)とビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)との反応は、例えば、反応器にカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)とビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(b)とを一括または別々に仕込み公知の反応手段で行うことができる。
【0063】
上記カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)とビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル(b)との仕込み量は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)中のカルボキシル基含有モノマー(a1)100mol%に対して、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル(b)が通常20〜150mol%、好ましくは30〜125mol%、特に好ましくは40〜120mol%である。
【0064】
上記ヘミアセタール化反応の反応温度は、通常30〜95℃、好ましくは40〜90℃であり、反応時間は、通常2〜40時間、好ましくは5〜30時間である。
【0065】
上記ヘミアセタール化反応においては、有機溶剤を用いてもよく、例えば、酢酸エチル等のエステル系溶剤、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を用いることができる。
【0066】
また、上記ヘミアセタール化反応においては、反応を促進するために酸触媒を用いてもよい。上記酸触媒としては、例えば、シュウ酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、マロン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、リン酸エステル、ポリリン酸等の鉱酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併用してもよい。これらのなかでも好ましくは、塩酸、リン酸、リン酸エステルであり、特に好ましくはリン酸エステルである。ただし、被着対象である被着体が半導体素子等である場合は、粘着剤組成物に残存する酸触媒が、半導体素子等を変質させやすくする傾向があるため酸触媒を用いないことが好ましい。
【0067】
また、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル(b)によるエチレン性不飽和基導入率(ヘミアセタール化率)は、通常20%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。また、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル(b)の反応率の上限は、通常100%である。ヘミアセタール化率が低すぎると、加熱前の粘着力が低くなりすぎる傾向がある。なお、ヘミアセタール化率は、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)とエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)の酸価を測定することにより求めることができる。
【0068】
上記酸価は、例えば、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)またはエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)1.0gを硝子瓶に採取し、トルエンとメタノールを3:1の割合(重量比)で混合した溶液30ml、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴添加して、30秒間持続する淡紅色を呈するまで0.1mol/L水酸化カリウムメタノール溶液で滴定する。
酸価は、滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウムメタノール溶液の液量から、下式により算出する。
酸価=a×F×5.611/試料量(g)
a:0.1mol/L水酸化カリウムメタノール溶液の量(mL)
F:0.1mol/L水酸化カリウムメタノール溶液の力価
【0069】
また、ヘミアセタール化率は、ヘミアセタール化前後で減少した酸価の量をビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル(b)と反応した量とみなし、下記式から求める。
ヘミアセタール化率(%)={1−(エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)
の酸価/カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a)の酸価)}×100
【0070】
かくして、本発明で用いるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)を得ることができる。
【0071】
上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)は、エチレン性不飽和基の含有量が、通常30〜500mmol/100gであり、好ましくは40〜400mmol/100gであり、特に好ましくは50〜300mmol/100gである。エチレン性不飽和基の含有量が少なすぎると、活性エネルギー線照射によって充分に硬化せずリワーク性が低下する傾向があり、エチレン性不飽和基の含有量が多すぎると、活性エネルギー線照射後にタックが低すぎて加熱して粘着力を上げる前に被着体から剥がれやすくなる傾向がある。
【0072】
上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)のエチレン性不飽和基の含有量は、下記の式から求めることができる。
エチレン性不飽和基含有量(mmol/100g)
=(Nca×Rhe/100)/〔Me×(Nca×Rhe/100)+100〕×100
ca:カルボキシル基含有アクリル系樹脂におけるカルボキシル基含有モノマー量(mmol/100g)
he:ヘミアセタール化率(%)
e:ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル(b)の分子量
【0073】
〔光重合開始剤(B)〕
本発明の粘着剤組成物は、活性エネルギー線照射することによりエージングレスで微粘着性を発揮させるために、光重合開始剤(B)を配合するものである。上記光重合開始剤(B)としては、光の作用によりラジカルを発生するものであればよく、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3',4,4'−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;
2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;
等が挙げられる。なかでも、好ましくは、アセトフェノン類、とりわけ1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンや、チオキサントン類、とりわけ2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドである。
なお、これら光重合開始剤(B)は、単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0074】
上記光重合開始剤(B)の含有量としては、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜15重量部、殊に好ましくは0.5〜10重量部である。
光重合開始剤(B)の含有量が少なすぎると活性エネルギー線照射による硬化が不充分となりリワーク性が低下する傾向があり、多すぎると可塑効果により加熱後の粘着力が低下する傾向がある。
【0075】
また、これら光重合開始剤(B)の助剤として、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらの助剤も単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0076】
〔その他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の架橋剤を用いてもよい。
【0077】
上記架橋剤の含有量は、通常、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは3重量部以下である。
【0078】
また、本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、エチレン性不飽和化合物、帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘着付与樹脂等の添加剤をさらに含有していてもよい。これらの添加剤は単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。特に酸化防止剤は、粘着剤または粘着剤層の安定性を保つのに有効である。酸化防止剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.01〜5重量%である。なお、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されていてもよい。
【0079】
かくして、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)および光重合開始剤(B)および、必要に応じてその他の成分を混合することにより、本発明の粘着剤組成物が得られる。
【0080】
本発明の粘着剤組成物は、活性エネルギー線を照射することにより架橋され、微粘着性を発揮するのであるが、その後、加熱することにより、ヘミアセタール結合が解離し、粘着力が上昇するものである。
【0081】
本発明の粘着剤組成物は、上記の特性からリワーク性と強い粘着力が求められる用途、例えば、半導体素子と基板等を固定する際の粘着剤または粘着シートの粘着剤層として好適に用いることができる。
以下、上記粘着シートについて説明する。
【0082】
上記粘着シートは、本発明の粘着剤組成物が活性エネルギー線照射により硬化された粘着剤層を有するものである。具体的には、上記粘着剤組成物を、酢酸エチル等の溶媒に溶解させて、固形分濃度が10〜70重量%になるように塗工用の粘着剤組成物溶液を調液し、この溶液を離型シートまたは基材に塗工、乾燥し、その後活性エネルギー線を照射することにより粘着シートの粘着剤層とすることができる。
【0083】
かかる粘着シートの製造方法については、公知一般の粘着シートの製造方法を用いればよく、例えば、基材シートの一方の面に粘着剤組成物溶液を塗工、乾燥させた後、反対側の粘着面に離型シートを貼り合せ、活性エネルギー線を照射する方法、または離型シートの一方の面に粘着剤組成物溶液を塗工、乾燥させた後、反対側の粘着面に基材シートを貼り合せ、活性エネルギー線を照射する方法等によって製造することができる。また、離型シートの一方の面に粘着剤組成物溶液を塗工、乾燥させた後、反対側の粘着面に離型シートを貼り合わせ活性エネルギー線を照射することにより、基材レスの両面粘着シートを作製することもできる。
【0084】
なお、両面粘着シートにおいては、作業性の向上のために、両面に積層される離型シートの剥離力が異なるようにすることが好ましい。例えば、両面粘着シートの被着体に初めに貼着する面側の離型シートの剥離力は、次に貼着する面側の離型シートの剥離力より軽剥離であると作業性が向上する。
【0085】
上記基材シートとしては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂シート、アルミニウム、銅、鉄の金属箔、上質紙、グラシン紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材シートは、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。これらのなかでも、軽量化等の点から、合成樹脂シートが好ましい。
【0086】
さらに、上記離型シートとしては、例えば、上記基材シートで例示した各種合成樹脂シート、紙、織物、不織布等に離型処理したものを使用することができる。
【0087】
また、上記粘着剤組成物の塗工方法としては、一般的な塗工方法であれば特に限定されることなく、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0088】
上記粘着シートの乾燥後の粘着剤層の厚みは、通常、10〜200μmであることが好ましく、さらには15〜100μmがあることが好ましい。
【0089】
また、乾燥条件は、乾燥時に粘着剤中の溶媒や残留モノマーが乾燥し除去される条件であればよく、例えば、60〜120℃、1〜10分間程度が好ましい。
【0090】
本発明の粘着シートは、活性エネルギー線を照射することにより、架橋されて微粘着性を発揮するものであるが、上記活性エネルギー線としては、通常、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できる。なかでも、硬化速度、照射装置の入手のしやすさ、価格等から紫外線が好ましい。
【0091】
上記紫外線を照射する場合の積算照射量は、通常50〜3,000mJ/cm2、好ましくは100〜1,000mJ/cm2である。また、照射時間は、光源の種類、光源と粘着剤層との距離、粘着剤層の厚み、その他の条件によっても異なるが、通常は数秒間、場合によっては数分の1秒間でもよい。
【0092】
かくして、本発明の粘着シートが得られる。上記粘着シートは、上述のとおり活性エネルギー線を照射することにより、微粘着性を発揮するため、従来、粘着物性のバランスをとるためのエージングに係る時間が不要であり、作業性に優れるものである。
【0093】
上記粘着シートの粘着剤層のゲル分率は、粘着性の点から10〜99重量%であることが好ましく、特に好ましくは20〜99重量%であり、さらに好ましくは25〜95重量%である。ゲル分率が低すぎると被着体に対する粘着力が低下する傾向にあり、高すぎても被着体に対する粘着力が低下する傾向にある。
【0094】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。粘着シートをSUS製メッシュシート(200メッシュ)に貼合して、粘着シートを包み込んだ後、酢酸エチルの入った密封容器にて24時間浸漬した際の、酢酸エチル浸漬前後の粘着剤層の重量変化から下記式によりゲル分率を求める。
ゲル分率(重量%)=酢酸エチル浸漬後の粘着剤層の重量(g)
/酢酸エチル浸漬前の粘着剤層の重量(g)×100
【0095】
なお、粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、エチレン性不飽和基含有構造部位(α)の含有量および活性エネルギー線照射量を調整すること等により達成される。
【0096】
上記粘着シートの粘着力は、基材シートの種類、被着体の種類等によっても異なるが、加熱前の粘着力(活性エネルギー線照射後の粘着力)は、0.01〜1N/25mmが好ましく、さらには0.05〜0.5N/25mmが好ましい。
【0097】
また、本発明の粘着シートは、上述のように加熱することにより、ヘミアセタール結合部分が解離して粘着力が上昇し、被着体と強固に接着するものである。上記加熱の条件としては、温度は通常120〜200℃、好ましくは150〜180℃であり、時間は通常1〜90分間、好ましくは5〜60分間である。上記加熱条件を適宜変更することにより、粘着シートの粘着力を調整することができる。
【0098】
上記加熱後の粘着シートの粘着力は、基材シートの種類、被着体の種類等によっても異なるが、150℃で30分間加熱した時の粘着力が、0.1〜30N/25mmであることが好ましく、さらには0.5〜20N/25mmであることが好ましい。
【0099】
本発明の粘着剤組成物を粘着剤層として用いた粘着シートは、例えば、半導体素子と基板とを低い接着力で仮固定でき、その後強い接着力での固定が必要になった場合は、加熱することで粘着力が上昇し、半導体素子と基板とを固定することができる。また、本発明の粘着剤組成物は、活性エネルギー線を照射することにより粘着剤組成物が架橋され、微粘着性を発揮するため、長いエージング期間を必要としないものである。
【0100】
また、本発明の粘着剤組成物を粘着剤として用いる場合は、粘着剤組成物をそのまま、または、必要に応じて、有機溶剤を配合し、粘度を調整して使用すればよい。さらには、上記有機溶剤に代えてエチレン性不飽和基を含有する不飽和化合物を反応性希釈剤として配合し、粘度を調整して使用することも可能である。また、粘着剤として使用する場合の塗工方法、活性エネルギー線、加熱の条件等は、前記粘着シートに準じて行えばよい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」とあるのは、重量基準を意味する。
【0102】
<カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a−1)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル110部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部を仕込み還流温度まで加熱し、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)0.2部、アクリル酸(a1)15部、n−ブチルアクリレート(a2)84.8部の混合モノマーを2時間滴下後1時間加熱し、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)酢酸エチル溶液を滴下しながら還流温度で1時間反応させた。その後、酢酸エチルにて希釈してカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a−1)溶液(固形分33.9重量%、粘度5,000mPa・s/25℃、重量平均分子量58万、分散度4.9、ガラス転移温度(Tg)−41.1℃)を得た。
【0103】
<水酸基含有アクリル系樹脂(a’−1)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル62部、トルエン9部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.032部を仕込み還流温度まで加熱し、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)10部、n−ブチルアクリレート(a2)90部の混合モノマーを2時間滴下後1時間加熱し、さらにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)酢酸エチル溶液を適宜追加しながら還流温度で5.5時間反応させた。その後、酢酸エチルにて希釈して水酸基含有アクリル系樹脂(a’−1)溶液(固形分34.9重量%、粘度5100mPa・s/25℃、重量平均分子量78万、分散度5.4、ガラス転移温度(Tg)−52.5℃)を得た。
【0104】
<水酸基含有アクリル系樹脂(a’−2)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル62部、トルエン9部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.032部を仕込み還流温度まで加熱し、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)28部、n−ブチルアクリレート(a2)62部、メチルメタクリレート(a2)10部の混合モノマーを2時間滴下後1時間加熱し、さらにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)酢酸エチル溶液を適宜追加しながら還流温度で5.5時間反応させた。その後、酢酸エチルにて希釈して水酸基含有アクリル系樹脂(a’−2)溶液(固形分39.7重量%、粘度5500mPa・s/25℃、重量平均分子量60万、分散度5.0、ガラス転移温度(Tg)−35.3℃)を得た。
【0105】
<エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A−1)の調製>
上記カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a−1)中のアクリル酸(a1)100mol%に対して、ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類(b)としてアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(以下、「VEEA」と称する)(日本触媒社製)を50mol%追加し、80℃で20時間反応させ、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A−1)を得た。また酸価測定によって得たカルボキシル基含有アクリル系樹脂(α−1)中のアクリル酸に対するヘミアセタール化率は49%(VEEAのカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a−1)に対するエチレン性不飽和基導入率は98%)、エチレン性不飽和基の含有量は86mmol/100gであった。
【0106】
<エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A−2)の調製>
上記カルボキシル基含有アクリル系樹脂(a−1)中のアクリル酸100mol%に対して、ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類(b)としてVEEAを100mol%追加し、80℃で20時間反応させ、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A−2)を得た。また、酸価測定によって得たカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a−1)中のアクリル酸に対するヘミアセタール化率は73%(VEEAのカルボキシル基含有アクリル系樹脂(a−1)に対するエチレン性不飽和基導入率は73%)、エチレン性不飽和基の含有量は118mmol/100gであった。
【0107】
<エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A’−1)の調製>
上記水酸基含有アクリル系樹脂(a’−1)中の2−ヒドロキシエチルアクリレート100mol%に対して、40mol%の2−メタクリロイルオキシエチルアクリレート(以下、「MOI」と称する)(昭和電工社製)とウレタン化触媒としてジブチル錫ジラウレートを適宜追加し、50℃で18時間反応させ、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A’−1)を得た。MOIによるウレタン化率は40%、エチレン性不飽和基の含有量は33mmol/100gであった。
【0108】
<エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A’−2)の調製>
上記水酸基含有アクリル系樹脂(a’−2)中の2−ヒドロキシエチルアクリレート100mol%に対して、75mol%のMOIとウレタン化触媒としてジブチル錫ジラウレートを適宜追加し、50℃で18時間反応させ、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A’−2)を得た。MOIによるウレタン化率は75%、エチレン性不飽和基の含有量は59mmol/100gであった。
【0109】
<エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A’−3)の調整>
上記水酸基含有アクリル系樹脂(a’−2)中の2−ヒドロキシエチルアクリレート100mol%に対して、80mol%のMOIとウレタン化触媒としてジブチル錫ジラウレートを適宜追加し、50℃で18時間反応させ、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A’−3)を得た。MOIによるウレタン化率は80%、エチレン性不飽和基の含有量は148mmol/100gであった。
【0110】
<光重合開始剤(B)>
光重合開始剤(B−1)として以下のものを用意した。
・Omnirad184(アセトフェノン類、IGM RESINS社製)
【0111】
<実施例1〜2、比較例1〜3>
上記のようにして調製、準備したエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A−1、A−2)及び(A’−1、A’−2)100部に対して、光重合開始剤(IGM RESINS社製「Omnirad184」)を1部を混合し、活性エネルギー線硬化性の粘着剤組成物を調製した。
また、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A’−3)100部に対して光重合開始剤(IGM RESINS社製「Omnirad184」)を3.71部を混合した。これを酢酸エチルにて固形分濃度を30重量%に調液し、粘着剤組成物溶液を得た。
更に、得られた粘着剤組成物溶液を重剥離38μmポリエステル系離型シート(三井化学東セロ社製:ルミラーSP03−38BU)に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、80℃で5分間乾燥した後、軽剥離38μmポリエステル系離型シート(三井化学東セロ社製:ルミラーSP01−38BU)に貼合した後、80Wの高圧水銀灯を1灯用いて、重剥離38μmポリエステル系離型シート側から紫外線照射(積算照射量250mJ/cm2)を施し粘着シートを得た。
得られた粘着シートについて、以下の通り評価を行った。評価結果を後記表1に示す。
【0112】
<ゲル分率>
得られた粘着シートを40mm×40mmに裁断した後、軽剥離38μmポリエステル系離型シートを剥がし、粘着剤層側を50mm×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、重剥離38μmポリエステル系離型シートを剥がし、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、酢酸エチル250gの入った密封容器にて24時間浸漬した際の、酢酸エチル浸漬前後の粘着剤層の重量変化から下記式によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(重量%)=酢酸エチル浸漬後の粘着剤層の重量(g)
/酢酸エチル浸漬前の粘着剤層の重量(g)×100
【0113】
<加熱前の粘着力>
上記で得られた粘着シートから25mm×100mmの試験片を作製し、ステンレス板(SUS304BA板)に23℃、50%RHの雰囲気下にて重量2kgのゴムローラーを2往復させて加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、直ちに剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・0.5N/25mm未満
×・・・0.5N/25mm以上
【0114】
<加熱後の粘着力>
上記で得られた粘着シートから25mm×100mmの試験片を作製し、セパレータを剥がしたうえで、ステンレス板(SUS304BA板)に23℃、50%RHの雰囲気下にて重量2kgのゴムローラーを2往復させて加圧貼付し、150℃に加熱したオーブンジェット乾燥機に30分間投入した。乾燥機から取り出し、30分間23℃、50%RHの雰囲気下で冷却した後、直ちに剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
(評価基準)
◎・・・5.0N/25mm以上
○・・・2.0N/25mm以上、5.0N/25mm未満
×・・・2.0N/25mm未満
【0115】
【表1】
【0116】
上記表1の結果より、特定のエチレン性不飽和基含有構造部位(α)を含有するエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A)を含有する実施例1および2品は、加熱前の粘着力が低く、さらに加熱後は、粘着力が上昇し、高い粘着力を示すものであった。一方、特定のエチレン性不飽和基含有構造部位(α)を含有しない比較例1〜3品は、加熱前の粘着力は低いものの、加熱しても粘着力は上昇せず、粘着力は低いままであった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の粘着剤組成物は、半導体素子、電子基板等の被着体を固定する際の粘着シートとして好適に用いることができる。