(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0014】
また、本発明において「全固形分」とは、アクリル系粘着剤組成物に含まれる、溶剤以外の全成分を意味する。
【0015】
また本発明における活性エネルギー線とは遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等の波長400nm以下の光線を言う。
【0016】
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化性部位を有する(A)アクリル系樹脂と、スクアリリウム系化合物である(B)色素を含むものである。本発明のアクリル系粘着剤組成物は、必要に応じて、(C)光重合開始剤等をさらに含んでいてもよい。
【0017】
<メカニズム>
本発明において、活性エネルギー線硬化性部位を有する(A)アクリル系樹脂を用いることで、(B)色素としてスクアリリウム系化合物を含有するアクリル系粘着剤組成物の耐熱性が良好となり、色再現性を長期に亘り維持できるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。
【0018】
アクリル系粘着剤組成物において、スクアリリウム系化合物は分子間会合体状態で樹脂中に存在していると考えられる。スクアリリウム系化合物は分子間会合体として存在して初めて高吸収極大を示し、この分子間会合が崩れると吸収極大の吸収強度が小さくなると考えられる。
【0019】
しかしながら、アクリル系粘着剤組成物は非常に柔軟であるため、構成する材料の分子運動が激しく、高温条件下に曝されると分子間会合が崩れやすいという問題があった。
【0020】
ここでアクリル系粘着剤組成物は、それに含まれるイソシアネート系化合物やエポキシ系化合物によってアクリル系樹脂を架橋させて粘着剤層として使用されることが一般的である。しかし、このような化合物を用いて架橋度を向上させ、分子運動を抑制しようとした場合には、このような化合物やそれによって形成された架橋部がスクアリリウム系化合物の分子間会合体と相互作用を起こして会合が崩れ、更には、スクアリリウム系化合物自体も不安定化されてスクアリン酸への分解反応も起こり、これらの要因が重なってスクアリリウム系化合物本来の吸収極大の吸収強度が低下することとなる。そのため、耐熱性が十分なディスプレイ用フィルターを得ることが困難になると考えられる。
【0021】
これに対して、活性エネルギー線によって架橋可能なアクリル系樹脂を用いることで、アクリル系樹脂が単独で架橋することが可能となり、その結果、スクアリリウム系化合物の会合体に影響を与えることなく拘束することができるため、耐熱性に優れたディスプレイ用フィルターを得ることができると考えられる。
【0022】
<(A)アクリル系樹脂>
本発明で用いられる活性エネルギー線硬化性部位を有する(A)アクリル系樹脂(以下、「(A)アクリル系樹脂」と略記する場合がある。)は、活性エネルギー線硬化性部位を必須の構造部位として含有するものである。例えば、活性エネルギー線硬化性部位を有する部分構造を含むものが挙げられ、その他に(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)由来の構造部位を含むことが好ましく、更に官能基含有モノマー(a2)由来の構造部位、(a1)及び(a2)以外のその他の共重合性モノマー(a3)由来の構造部位を含んでいてもよい。
【0023】
上記の(A)アクリル系樹脂の活性エネルギー線硬化性部位は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより(A)アクリル系樹脂同士を硬化(架橋)させることができる部位である。
【0024】
これらの中でもベンゾフェノン構造やエチレン性不飽和基が効率よく架橋できる点で好ましく、従って、(A)アクリル系樹脂の活性エネルギー線硬化性部位としては、ベンゾフェノン構造及びエチレン性不飽和基から選ばれる少なくとも1つが好ましく用いられる。
【0025】
ベンゾフェノン構造とは、少なくともベンゾフェノン骨格を有する基を意味し、例えば、置換基を有していてもよい1価のベンゾフェノン基や、置換基を有していてもよい2価のジベンゾフェノン基が挙げられる。置換基を有していてもよい1価のベンゾフェノン基の具体例としては、1個の遊離原子価を有する4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1個の遊離原子価を有する4−メチルベンゾフェノンが挙げられる。
【0026】
一方で、エチレン性不飽和基は、置換基を有していてもよいエテニル基を意味する。置換基を有していてもよいエテニル基の具体例としては、エテニル基、1−メチルエテニル基が挙げられる。
【0027】
上記活性エネルギー線硬化性部位は、(A)アクリル系樹脂を製造する際にモノマーとして共重合することにより導入してもいいし、アクリル系樹脂を製造した後に付加反応等を用いて導入することで(A)アクリル系樹脂としてもよい。
【0028】
共重合により導入する場合のモノマーとしては、エチレン性不飽和基及び活性エネルギー線硬化性部位を有するモノマー(α)を使用すればよく、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーや、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生基を有するモノマー等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも重合時の安定性に優れる点でエチレン性不飽和基及び光ラジカル発生基を有するモノマーが好ましく、更には反応性の点でエチレン性不飽和基及びベンゾフェノン構造を有するモノマーが好ましい。
上記エチレン性不飽和基とベンゾフェノン構造を有するモノマーとして、具体的には例えば、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0030】
上記エチレン性不飽和基及び活性エネルギー線硬化性部位を有するモノマー(α)由来の構造単位の(A)アクリル系樹脂中の含有割合としては、重合成分全体に対して0.001〜50重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましく、0.02〜5重量%がさらに好ましく、0.1〜4重量%がよりさらに好ましく、0.5〜3重量%が特に好ましい。上記エチレン性不飽和基及び活性エネルギー線硬化性部位を有するモノマー(α)由来の構造単位の(A)アクリル系樹脂中の含有割合が上記範囲にあれば、活性エネルギー線によって充分な架橋構造を形成でき、粘着剤とした時の粘着物性に優れる傾向にある。
【0031】
また、アクリル系樹脂を製造した後に付加反応させる方法としては、アクリル系樹脂中に官能基を有せしめ、かかる官能基と反応する部位と活性エネルギー線硬化性部位を有する化合物を、官能基を有するアクリル系樹脂と反応させることにより導入する方法が挙げられる。
例えば、水酸基含有アクリル系樹脂に、活性エネルギー線硬化性部位とイソシアネート基を有する化合物をウレタン化反応させて付加させる方法や、活性エネルギー線硬化性部位とカルボキシル基を有する化合物をエステル化反応させて付加させる方法等が挙げられる。また、カルボキシル基含有アクリル系樹脂に、活性エネルギー線硬化性部位とエポキシ基を有する化合物や、活性エネルギー線硬化性部位とオキセタニル基を有する化合物を反応させる方法、活性エネルギー線硬化性部位と水酸基を有する化合物をエステル化反応させて付加する方法等が挙げられる。
【0032】
これらの方法の中でも、付加時の安定性や付加効率に優れる点で活性エネルギー線硬化性部位とイソシアネート基を有する化合物を、水酸基を有するアクリル系樹脂に付加させる方法が好ましい。
【0033】
上記付加させる化合物の使用量は、官能基を有するアクリル系樹脂100重量部に対して0.001〜50重量部であることが好ましく、0.01〜20重量部であることがより好ましく、0.05〜10重量部であることがさらに好ましい。上記付加させる化合物の使用量が、上記範囲であれば付加反応が効率よく進み、また、活性エネルギー線により充分な架橋構造を形成できるため粘着剤とした時の粘着物性に優れる傾向がある。
【0034】
一方で、粘着剤とした際の粘着物性に優れる点から、(A)アクリル系樹脂は(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)由来の部分構造を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、汎用性や粘着物性の観点から、例えば、アルキル基の炭素数が通常1以上であり、また通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下のものが挙げられる。
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらの中でも、汎用性、粘着物性に優れる点で、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)由来の構造単位の含有割合は、重合成分全体に対して20重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上が更に好ましく、また、99.9重量%以下が好ましく、99.5重量%以下がより好ましく、98重量%以下がさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)由来の構造単位の含有割合を上記下限値以上とすることで、粘着物性のバランスを取りやすくなる傾向があり、上記上限値以下とすることで、活性エネルギー線硬化性部位の含有割合を十分なものとすることが可能となる。
【0037】
また、粘着剤としたと際の凝集力や被着体との密着性に優れる点から、(A)アクリル系樹脂が官能基含有モノマー(a2)由来の構造単位を含むことも好ましい。
官能基含有モノマー(a2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、窒素含有モノマー、グリシジル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種類が挙げられる。
【0038】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーが挙げられる。
【0039】
上記水酸基含有モノマーの中でも粘着剤とした際の凝集力に優れる点で1級水酸基含有モノマーが好ましく、さらには、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが製造時の安定性に優れる点で好ましい。
【0040】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、(メタ)アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸トリマー、(メタ)アクリル酸テトラマー、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステル(例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等)等が挙げられ、中でも重合時の安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0041】
窒素含有モノマーとしては、アミノ基含有モノマーやアミド基含有モノマー、その他の窒素原子含有モノマー等が挙げられる。
【0042】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有モノマー、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有モノマー、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有モノマーが挙げられる。
【0043】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等の水酸基含有アミド系モノマー;(メタ)アクリロイルモルホリン;等が挙げられる。
【0044】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0045】
上記の中でも、色素の耐久性や粘着剤とした時の凝集力を向上させる点で水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましい。
【0046】
かかる官能基含有モノマー(a2)由来の構造単位の含有割合は、重合成分全体に対して30重量%以下、特には15重量%以下とすることが、(A)アクリル系樹脂の保存安定性と、粘着剤とした際の凝集力のバランスに優れる点で好ましい傾向がある。一方で、粘着剤とした際の被着体への密着性や保持力を向上させる点では、官能基含有モノマー(a2)の含有割合は、重合成分全体に対して1重量%以上、特には2重量%以上、とりわけ3重量%以上であることが好ましい。かかる官能基含有モノマー(a2)由来の構造単位の含有割合が上記範囲であれば(A)アクリル系樹脂の保存安定性と粘着剤とした時の凝集力のバランスに優れる傾向にある。
【0047】
上記以外のその他の共重合性モノマー(a3)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有モノマー;
シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマー;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエーテル鎖含有モノマー等が挙げられる。
【0048】
上記その他の共重合性モノマー(a3)由来の構造単位の含有割合は、重合成分全体に対して35重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。その他の共重合性モノマー(a3)由来の構造単位の含有割合が上記上限値以下であれば、得られるアクリル系粘着剤組成物の安定性や粘着物性が低下しない傾向にある。
【0049】
上記モノマー(α)、(a1)、(a2)、(a3)はそれぞれ単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明で用いる(A)アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和基及び活性エネルギー線硬化性部位を有するモノマー(α)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)や官能基含有モノマー(a2)、及びその他の共重合性モノマー(a3)の中から含有させる重合成分を適宜選択して用いて、例えば、有機溶剤中に、かかる重合成分と重合開始剤を混合あるいは滴下して重合することにより製造することができる。
【0051】
上記重合反応は、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の重合方法により行なうことができるが、これらの中でも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、特に好ましくは溶液ラジカル重合である。
【0052】
上記重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0053】
これらの有機溶剤の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘着剤塗工時の乾燥のしやすさ、安全性の高さから、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく用いられ、さらに好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。
これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
また、色素の安定性の点で、ケトン系溶剤の含有割合は有機溶剤全体に対して50重量%以下であることが好ましい。
【0054】
また、上記重合反応に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明において、上記(A)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、20万以上であることが好ましく、より好ましくは30万以上、特に好ましくは40万以上である。一方、好ましくは250万以下、より好ましくは200万以下、さらに好ましくは150万以下である。
【0056】
(A)アクリル系樹脂の重量平均分子量を上記下限値以上とすることで、粘着剤とした際の粘着力や保持力が良好となり、また、全体的な凝集力が向上する事でスクアリリウム系化合物の分子間会合体の安定性が良好となる傾向にある。また、(A)アクリル系樹脂の重量平均分子量を上記上限値以下とすることで、アクリル系粘着剤組成物製造時の希釈溶剤の使用量を抑えることができ、乾燥性を高めると共に、粘着剤層中の残溶剤を低減でき、耐熱性が向上する傾向がある。
【0057】
上記(A)アクリル系樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、15以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下である。
(A)アクリル系樹脂の分散度を上記上限値以下とすることでリワーク性や耐久性を高めることができる傾向がある。なお、かかる分散度の下限は通常1である。
【0058】
なお、(A)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10
7、分離範囲:100〜2×10
7、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
【0059】
(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが好ましく、より好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下であり、一方で、−80℃以上であることが好ましく、より好ましくは−70℃以上であり、さらに好ましくは−60℃以上である。(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度を上記上限値以下とすることでタックの低下を抑制しやすい傾向があり、上記下限値以上とすることで色素の耐久性や粘着剤層の耐熱性の低下を抑制しやすい傾向がある。
【0060】
なお、(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度は示差走査型熱量計により測定されるものであり、具体的な測定方法は後掲の実施例の項に記載される通りである。
【0061】
本発明のアクリル系粘着剤組成物における(A)アクリル系樹脂の含有割合は特に限定されないが、アクリル系粘着剤組成物中に含まれる全固形分に対して1重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、70重量%以上がよりさらに好ましく、80重量%以上が特に好ましい。アクリル系粘着剤組成物中の(A)アクリル系樹脂の含有割合は、通常99.99重量%以下である。(A)アクリル系樹脂の含有割合を上記下限値以上とすることで(B)色素の析出が抑制できる傾向があり、一方、上記上限値以下とすることで(B)色素等の成分の必要量を確保することができる。
【0062】
<(B)色素>
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、さらにスクアリリウム系化合物である(B)色素を必須成分として含有する。スクアリリウム系化合物は波長380〜450nmの短波長領域における副吸収が少なく、波長570〜620nmにおいて吸収極大を有するため、(B)色素としてスクアリリウム系化合物を用いることにより、色純度が良好なディスプレイ用フィルターを得ることができる。
【0063】
スクアリリウム系化合物とは、少なくとも2つのカルボニル基からなる四員環を有する化合物である。例えば、中央に四員環を有し、その左右に環を有するものが挙げられる。左右の環は同一のものでも異なるものでもよい。即ち、本発明で用いるスクアリリウム系化合物は対称スクアリリウム系化合物であっても非対称スクアリリウム系化合物であってもよい。
【0064】
スクアリリウム系化合物の中でも、可視領域に吸収極大を持たせる観点から下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【0066】
式(I)中、A
1及びA
2は各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
前記式(I)で表されるスクアリリウム系化合物は、以下のように共鳴構造を複数とることができるが、これらは特に限らない限り同義である。
【0068】
A
1,A
2の芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基と芳香族複素環基が挙げられる。芳香族環基の炭素数は特に限定されないが2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、5以上がよりさらに好ましく、6以上が特に好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましい。炭素数を上記下限値以上とすることで電子供与性基の導入が容易となる傾向があり、また、上記上限値以下とすることで芳香族環の副吸収が抑えられる傾向がある。
【0069】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
このように、芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環は5員環でも、6員環でもよく、また、単環でも、縮合環でもよいが、副吸収を抑えるためには単環であることが好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0070】
一方で芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
【0071】
芳香族環基が有していてもよい置換基とは任意の置換基であるが、好ましくは、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20アルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、炭素数2〜20のPEG型ヒドロキシエチル基、トリフルオロメチル基、炭素数1〜20の置換基を有していてもよいシリル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20の置換基を有していてもよいアミノ基、フッ素原子を有するアルキル基、水酸基などが挙げられる。
【0072】
これらのスクアリリウム系化合物は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明のアクリル系粘着剤組成物中の(B)色素であるスクアリリウム系化合物の含有割合は特に限定されないが、アクリル系粘着剤組成物中の全固形分に対して0.001重量%以上が好ましく、0.005重量%以上がより好ましく、0.01重量%以上がさらに好ましく、また、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましく、0.5重量%以下が特に好ましい。スクアリリウム系化合物の含有割合を上記下限値以上とすることで組成物が安定になり、また、所望の色再現性を達成しやすい傾向があり、また、上記上限値以下とすることでスクアリリウム系化合物の析出を抑制できる傾向がある。
【0074】
<(C)光重合開始剤>
また、本発明のアクリル系粘着剤組成物は、後述するように活性エネルギー線照射処理を行なうことで硬化(架橋)して粘着剤とすることができるが、(A)アクリル系樹脂の活性エネルギー線硬化性部位がラジカル発生基を有さない場合には活性エネルギー線照射時の反応を安定化させることができる点で(C)光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0075】
かかる(C)光重合開始剤としては、光の作用によりラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アシルフォスフィンオキサイド系等の光重合開始剤が挙げられるが、分子間または分子内で効率的に架橋できる点から水素引き抜き型のベンゾフェノン系の光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0076】
ベンゾフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0077】
また、これら(C)光重合開始剤と共に、助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらの助剤も単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0078】
かかる(C)光重合開始剤の含有割合については、(A)アクリル系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。(C)光重合開始剤の含有割合を上記下限値以上とすることで硬化速度が向上したり、硬化が充分となる傾向があり、上記上限値以下とすることで(A)アクリル系樹脂や(B)色素の含有割合を十分に確保しやすい傾向がある。
【0079】
<(D)溶剤>
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、さらに(D)溶剤を含有していてもよい。
本発明で用いることができる(D)溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ウンデカノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール類;アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶剤類等が挙げられる。
これらの(D)溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0080】
本発明のアクリル系粘着剤組成物が(D)溶剤を含有する場合、アクリル系粘着剤組成物の固形分濃度は特に限定されないが、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、また、90重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましく、40重量%以下が特に好ましい。固形分濃度を上記下限値以上とすることで溶液安定性が良好となる傾向があり、また、上記上限値以下とすることで得られる塗膜の性能が向上する傾向がある。
【0081】
<その他の成分>
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、さらにその他の成分を含有していてもよい。
例えば、本発明のアクリル系粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂等の粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、過酸化物、架橋剤、ウレタン化触媒等の架橋促進剤、アセチルアセトン等の架橋遅延剤、機能性色素等の各種添加剤を配合することができる。
また、上記添加剤の他にも、アクリル系粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
【0082】
[粘着剤層]
本発明の粘着剤層は、本発明のアクリル系粘着剤組成物により形成されたものである。
本発明の粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤組成物を樹脂フィルム等の基材に塗布し活性エネルギー線を照射することによって得られる。
【0083】
アクリル系粘着剤組成物の塗布は、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷などの慣用の方法によって行うことができる。
【0084】
活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線などの光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手しやすさ、価格などから紫外線照射による硬化が有利である。
【0085】
上記紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトなどが用いられる。上記高圧水銀灯の場合は、例えば5〜3000mJ/cm
2、好ましくは10〜1000mJ/cm
2の条件で行われる。また、上記無電極ランプの場合は、例えば2〜1500mJ/cm
2、好ましくは5〜500mJ/cm
2の条件で行われる。照射時間は、光源の種類、光源と塗工面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。
【0086】
本発明の粘着剤層の厚みは特に制限はなく、その用途に応じて適宜設計されるが、通常1〜500μm程度である。積層体の薄膜化と粘着物性のバランスの点で5〜50μm程度が好ましい。
【0087】
[ディスプレイ用フィルター及びディスプレイ]
本発明のディスプレイ用フィルターは、本発明の粘着剤層を有する。
本発明のディスプレイ用フィルターとしては、例えばディスプレイ構成外部においてバンドパスフィルターとして使用するものや、ディスプレイ構成内部において色再現や色域拡大のために使用するものが挙げられる。
【0088】
本発明のディスプレイ用フィルターの構成の具体例としては、例えば、樹脂フィルムの粘着剤層が本発明の粘着剤層となる態様が挙げられる。
【0089】
本発明のディスプレイ用フィルターの1つの態様は、ディスプレイに用いられる色補正フィルター、つまり、色純度改善フィルターである。
特に、色純度の観点から、白色LEDを光源とするディスプレイに好適に使用できる。中でもオレンジ光を除く観点から、白色LEDが、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせにより白色光を得る方式や、青色LED、緑色蛍光体及び赤色蛍光体の組み合わせにより白色光を得る方式の光源を有するディスプレイが好ましい。
【0090】
色補正フィルターの設置位置は、バックライトとしての光源と視認者との間に配置されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ディスプレイのガラス板、偏光板等に塗布された色補正粘着剤層であってもよい。
【0091】
また、ディスプレイ内に設けられる板状の高分子成形体の表面に塗布された色補正粘着剤層であってもよい。高分子成形体としては、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート等が挙げられる。
色補正フィルターの位置は、ガラス板や高分子成形体の表裏のうち、光源側であってもよく、視認者側であってもよい。
【0092】
本発明のフィルターの他の態様として、照明装置に用いられる色補正フィルターが挙げられる。光源としては、ディスプレイに関して挙げたものと同じものが挙げられる。
この場合、色補正フィルターの設置位置は、光源と視認者との間に配置されるものであれば特に限定されるものではない。
【0093】
なお、筐体とは光が出る部位であり、カバー、フード等とも呼ばれる。筐体の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート等の高分子成形体が挙げられる。
【0094】
照明装置としては、白色LEDを光源として用いる電球型照明、直管型照明、シーリングライト、スポットライト、ダウンライト、投光灯、街路灯、デスクライト等が挙げられる。
【0095】
また、照明装置の白色の種類は特に限定されるものではなく、電球色(色温度2600〜3250K)、温白色(色温度3250〜3800K)、白色(色温度3800〜4500K)、昼白色(色温度4600〜5500K)、昼光色(色温度5700〜7100K)といった色の照明装置が使用される。上記色温度の区分はJIS Z 9112の基準に拠っている。
【0096】
本発明のフィルターの他の態様として、外光補正フィルターが挙げられる。本発明の外光補正フィルターは、本発明の粘着剤層を含有し、自然光、環境光等の外光と視認者の間に配置されるものであればよく、その形態、配置場所は特に限定されるものではない。
【0097】
例えば、樹脂フィルムの粘着剤層が本発明の粘着剤層である外光補正フィルムが挙げられる。
【0098】
本発明の外光補正フィルムは、外光を取り込む取込口、例えば、眼鏡、自動車等の輸送用機械のフロントガラス、建設用重機のガラス、建築物における窓ガラス等に好適に用いることができる。本発明の外光補正フィルムを、外光を取り込む取込口等に適用することで、外光の差し込む環境下で作業する作業者の視認性の向上を図ることができる。外光補正フィルターの位置は、ガラスや窓ガラスの表裏のうち、外光側であってもよく、視認者側であってもよい。
【0099】
本発明の粘着剤層を用いたフィルターを構成する基材としての樹脂フィルムとしては、透明性を有する各種のプラスチック材料が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。
【0100】
本発明のアクリル系粘着剤組成物を樹脂フィルム等(筐体、ガラス板、偏光板、高分子成形体等をも含む)に塗布する場合、スピンコート、スプレー、バーコート、フローコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート、ダイコーター等の公知の塗布方法により塗工する方法を用いることができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」、「%」とあるのは、重量(質量)基準を意味する。
【0102】
〔(A)アクリル系樹脂〕
以下の実施例及び比較例で用いたアクリル系樹脂(A−1)〜(A−4)は、以下のようにして製造した。
製造した(A)アクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度は、前述の方法に従って測定した。
粘度は、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて25℃で測定した。
ガラス転移温度は、後述の方法で測定した。
【0103】
[アクリル系樹脂(A−1)の製造]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、n−ブチルアクリレート99部、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MBP エチレン性不飽和基及び活性エネルギー線硬化性部位を有するモノマー(α))1部、酢酸エチル62.9部、アセトン42部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.013部を仕込み、反応を開始し、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)の酢酸エチル溶液を滴下しながら反応を継続させ、還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈して活性エネルギー線硬化性アクリル系樹脂(A−1)溶液(固形分24.5%、粘度4,770mPa・s、アクリル系樹脂(A−1);重量平均分子量(Mw)115万、分散度(Mw/Mn)3.3、ガラス転移温度(Tg)−33℃)を得た。
【0104】
[アクリル系樹脂(A−2)〜(A−4)の製造]
前記[アクリル系樹脂(A−1)の製造]に記載の方法に準じて、下記表1の配合割合で重合し、活性エネルギー線硬化性アクリル系樹脂(A−2)〜(A−3)溶液及びアクリル系樹脂(A−4)溶液を得た。得られたアクリル系樹脂(A−2)〜(A−4)溶液及びアクリル系樹脂(A−2)〜(A−4)の物性は表1に示す通りである。
【0105】
[ガラス転移温度の測定]
各アクリル系樹脂(A−1)〜(A−4)溶液をガラス基材上に塗布し、100℃で2分間乾燥させてアクリル系樹脂膜を得た。このアクリル系樹脂膜を基材から掻き取り、アルミパンへ封入して測定サンプルを作成した。この測定サンプルについて、示差走査型熱量計(DSC220CU/セイコーインスツルメンツ社製)を用い、−120℃で10分間保持した後、10℃/minで30℃まで昇温させてガラス転移温度を測定した。
【0106】
表1中の略称は以下のとおりである。
BA:n−ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
t−BA:tert−ブチルアクリレート
MBP:4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
AAc:アクリル酸
【0107】
【表1】
【0108】
〔スクアリリウム系化合物〕
以下の実施例及び比較例で(B)色素として用いたスクアリリウム系化合物(B−1)〜(B−4)は以下のようにして合成した。
【0109】
[スクアリリウム系化合物(B−1)〜(B−3)の合成]
特開2002−363434号公報の実施例3に記載の方法により、以下の化学構造のスクアリリウム系化合物(B−1)〜(B−3)の混合物を合成した。
【0110】
【化3】
【0111】
[スクアリリウム系化合物(B−4)の合成]
特開2001−192350号公報の実施例1において、2,4,6−トリヒドロキシトルエンを1,3,5−トリヒドロキシベンゼンに変更することで、以下の化学構造のスクアリリウム系化合物(B−4)を合成した。
【0112】
【化4】
【0113】
〔アクリル系粘着剤組成物の製造・評価〕
以下のようにしてアクリル系粘着剤組成物及び粘着剤試験片を製造し、その評価を行った。
【0114】
[アクリル系粘着剤組成物及び粘着剤試験片の製造]
上記のようにして調製、準備した各配合成分を下記表2の通りの組み合わせにて、(A)アクリル系樹脂100部(固形分量)、(B)色素0.1部(固形分量)の割合で配合し、これをテトラヒドロフランにて固形分濃度を20%に調液し、アクリル系粘着剤組成物1〜6(それぞれ実施例1〜6)を得た。
【0115】
得られたアクリル系粘着剤組成物1〜6を、ベーカー式アプリケータを用い、厚さ50μmの剥離型ポリエチレンテレフタレート製フィルム上に塗布し、100℃で2分間乾燥し、厚さ20μmの色素含有粘着剤層を形成した。次いで、色素含有粘着剤層側に厚さ50μmの剥離型ポリエチレンテレフタレート製フィルムをローラーで圧着して色素含有粘着剤層を挟んだ。このポリエチレンテレフタレート製フィルム面に対して、高圧水銀灯を用いて、積算露光量400mJ/cm
2となるように光照射し、試験片1〜6を得た。
【0116】
次に、(A)アクリル系樹脂としてアクリル系樹脂(A−4)100部(固形分量)、(B)色素としてスクアリリウム系化合物(B−1)〜(B−3)の混合物0.1部(固形分量)、架橋剤としてイソシアネート系硬化架橋剤(東ソー株式会社、コロネートL55E:有効成分55%)0.1部(固形分量)を配合し、これをテトラヒドロフランにて固形分濃度を15%に調液し、アクリル系粘着剤組成物7(比較例1)を得た。
【0117】
得られたアクリル系粘着剤組成物7を、ベーカー式アプリケータを用い、厚さ50μmの剥離型ポリエチレンテレフタレート製フィルム上に塗布し、100℃で2分間乾燥し、厚さ20μmの色素含有粘着剤層を形成した。次いで、色素含有粘着剤層側に厚さ50μmの剥離型ポリエチレンテレフタレート製フィルムをローラーで圧着して色素含有粘着剤層を挟み、試験片7を得た。
【0118】
<粘着性評価>
得られた試験片1〜7の一方の剥離型ポリエチレンテレフタレート製フィルムを剥がし、露出した色素含有粘着剤層をローラーを使ってガラス基板に圧着した。次に、もう一方の剥離型ポリエチレンテレフタレート製フィルムを剥がし、その際にガラス基板に色素含有粘着剤層が残るかどうかを目視観察し、以下の基準で粘着性能を評価した。
○:ガラス基板に色素含有粘着剤層が残った(粘着性能あり)
×:ガラス基板から色素含有粘着剤層が剥がれた(粘着性能なし)
【0119】
<耐熱性評価>
試験片1〜7を80℃恒温槽に入れ、250時間暴露した。分光光度計U−4100(日立製作所製)にて暴露前後の試験片の吸収スペクトルを測定し、波長500〜620nmにおける吸収極大の最大吸収強度の変化率(=暴露後の最大吸収強度÷暴露前の最大吸収強度×100(%))を以下の基準で評価することで耐熱試験を行った。結果を表2に示す。
◎:吸収極大の最大吸収強度の変化率が80%以上
○:吸収極大の最大吸収強度の変化率が60%以上80%未満
×:吸収極大の最大吸収強度の変化率が0%以上60%未満
【0120】
【表2】
【0121】
表2から明らかなように、実施例1〜6のアクリル系粘着剤組成物は、粘着性能があり、耐熱性に優れている。これに対して比較例1のアクリル系粘着剤組成物は、粘着性能があるものの、耐熱性能が不十分である。
実施例1〜3のアクリル系粘着剤組成物と、実施例4〜6のアクリル系粘着剤組成物との比較から、(B)色素がスクアリリウム系化合物であれば、その置換基の種類等によらずに、耐熱性に優れることがわかる。