特許第6984550号(P6984550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6984550エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984550
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20211213BHJP
   C09J 133/14 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
   C08F220/18
   !C09J133/14
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-116930(P2018-116930)
(22)【出願日】2018年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-218474(P2019-218474A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2021年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】布谷 昌平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晃宏
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025808(JP,A)
【文献】 特開2017−066372(JP,A)
【文献】 特開平08−259623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
C08F6/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、下記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で反応させることを特徴とするエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【化1】
【請求項2】
上記一般式(1)で表される化合物(C)が二炭酸ジ−t−ブチルであることを特徴とする請求項1記載のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、上記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で反応させる際、さらに、1種以上のマグネシウム化合物(D)と1種以上のアルカリ金属化合物(E)の存在下で反応させることを特徴とする請求項1または2記載のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項4】
上記アルカリ金属化合物(E)を構成するアルカリ金属がリチウムであることを特徴とする請求項記載のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項5】
上記エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)に対して、前記マグネシウム化合物(D)0.001〜1000mol%、前記アルカリ金属化合物(E)0.001〜1000mol%の存在下で反応させることを特徴とする請求項3または4に記載のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項6】
上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)を構成する水酸基含有モノマー(a1)の含有量が、重合成分全体に対して0.1〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項7】
エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂のエチレン性不飽和基の含有量が、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂に対して0.1〜500mmol/100gであることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項に記載のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項8】
上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)の酸価が10mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜7いずれか一項に記載のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法に関し、更に詳しくは、効率的にエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得るための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することで硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂が知られており、接着剤、粘着剤、塗料、インク、コーティング材、光造形材等の用途に用いられている。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂自体にエチレン性不飽和基を含有させたエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が知られている。
【0003】
従来、アクリル系樹脂にエチレン性不飽和基を含有させる手法として、水酸基含有アクリル系樹脂にイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させて、ウレタン化させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、ウレタン結合を含まないエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法として、カルボキシル基含有アクリル樹脂にエポキシ基含有モノマーを付加させる方法(例えば、特許文献2参照)や、水酸基含有アクリル系樹脂に塩化アクリロイルを反応させる方法(例えば、特許文献3参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−053346号公報
【特許文献2】特開2016−060797号公報
【特許文献3】特開2011−184678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、ポリマー側鎖にウレタン結合を有するため、高温下に晒される用途においては、ウレタン結合が解離してしまい、硬化不良や糊残りの原因となり改良が求められている。
【0007】
また、上記特許文献2の開示技術においては、カルボキシル基にエポキシ基を反応させるには、70℃以上の高温が必要であり、反応温度が高いと、付加反応中にエチレン性不飽和基が重合を起こしやすい点や、反応率が低いため未反応のエポキシ基含有モノマーを除去する工程が加わる点等から、生産性の面で改良が求められている。
【0008】
さらに、上記特許文献3の開示技術においては、水酸基に塩化アクリロイルを付加する反応は、低温でも進行するものの、上記特許文献2の開示技術と同様、反応率が低い点や、塩素化合物を除去する工程が加わる点等から、生産性の面で改良が求められている。
【0009】
そこで、本発明はこのような背景下において、高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を反応させることにより、ウレタン結合を有さず、低温でも高収率でアクリル系樹脂にエチレン性不飽和基を付加できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、下記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で反応させることを特徴とするエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法をその要旨とするものである。
【0012】
【化1】
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によると、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で反応させるため、高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。また、この製造方法は、反応後に副産物を除去するための煩雑な操作をすることなく、高温下に晒される用途においても好適なエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。
【0014】
また、本発明のなかでも、特に、上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で反応させる際、さらに、1種以上のマグネシウム化合物(D)と1種以上のアルカリ金属化合物(E)の存在下で反応させると、より高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。
【0015】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記アルカリ金属化合物(E)を構成するアルカリ金属がリチウムであると、より高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。
【0016】
そして、本発明のなかでも、特に、一般式(1)で表される化合物(C)が二炭酸ジ−t−ブチルであると、より高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。
【0017】
また、本発明のなかでも、特に、上記エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)に対して、前記マグネシウム化合物(D)0.001〜1000mol%、前記アルカリ金属化合物(E)0.001〜1000mol%の存在下で反応させると、より高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。
【0018】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)を構成する水酸基含有モノマー(a1)の含有量が、重合成分全体に対して0.1〜50質量%であると、得られたエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた場合に、活性エネルギー線を照射することにより硬化して、より良好な剥離性を有することができる。
【0019】
また、本発明のなかでも、特に、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂のエチレン性不飽和基の含有量が、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂に対して0.1〜500mmol/100gであると、得られたエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた場合に、活性エネルギー線を照射することにより硬化して、より良好な剥離性を有することができる。
【0020】
そして、本発明のなかでも、特に、上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)の酸価が10mgKOH/g以下であると、反応中にゲル化することなく、より高収率で効率的にエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0022】
本発明の製造方法は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で反応させることにより、効率的にエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができる。
【0023】
本発明の製造方法によって得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、通常、粘着剤として好適に用いることができる。また、上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和基を含有するため、活性エネルギー線を照射することにより硬化して粘着力が低下し、剥離性を有する。このような特性から、上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、通常、粘着剤組成物として、金属板、プラスチック板、半導体ウエハ等の被加工部材と貼り合せた後に剥離することを前提とする、粘着シートの粘着剤層に主として用いられる。
以下、本発明について説明する。
【0024】
[水酸基含有アクリル系樹脂(A)]
本発明で用いる水酸基含有アクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマー(a1)、アルキル(メタ)アクリレート(a2)、好ましくは官能基含有モノマー(a3)(但し、水酸基含有モノマー(a1)を除く。)、さらに必要に応じて、その他の共重合性モノマー(a4)を重合させて得られるものである。以下、これらの重合成分について説明する。
【0025】
上記水酸基含有モノマー(a1)が有する水酸基は、重合後の水酸基含有アクリル系樹脂(A)において、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)との反応点となるものである。
また、水酸基は、後述する架橋剤との反応点ともなるものであり、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)との反応で消費される量以上を含有させることが好ましい。
【0026】
上記水酸基含有モノマー(a1)は、水酸基含有アクリレート系モノマー、または水酸基含有アクリルアミド系モノマーであり、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、8−ヒドロキシオクチルアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のヒドロキシアルキルアクリルアミド、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチルアクリレート等の3級水酸基含有モノマー等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種類以上を併用することができる。
上記水酸基含有モノマー(a1)のなかでも、後述のエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)との反応性に優れる点で、1級水酸基含有モノマーが好ましく、特には2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0027】
上記水酸基含有モノマー(a1)の含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常0.1〜50質量%であり、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜35質量%である。かかる含有量が多すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向があり、少なすぎると充分な量のエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)と反応させることができず、活性エネルギー線照射後の剥離性が低下する傾向がある。
【0028】
上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)を得る重合成分の主成分である。また、上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)は、アルキル基の炭素数が、通常1〜24であり、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜8である。炭素数が大きすぎると、重合性が低くなるため、水酸基含有アクリル系樹脂(A)中に未反応モノマーとして残存しやすく、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着シートに用いた際に、被加工部材への汚染や糊残りが生じやすくなる傾向がある。
【0029】
上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)として、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)のなかでも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさおよび原料入手のしやすさの点で、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
また、上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)の含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常30〜99質量%であり、好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。かかる含有量が少なすぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、活性エネルギー線照射前の粘着力が低下しやすくなる傾向があり、多すぎると活性エネルギー線照射前の粘着力が高くなりすぎる傾向がある。
【0031】
本発明に用いられる水酸基含有アクリル系樹脂(A)においては、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)および、後述する架橋剤との反応に優れる点からアクリル系樹脂に水酸基を含有させるが、水酸基含有モノマー(a1)の他にも後述する架橋剤と反応する官能基含有モノマー(a3)を重合成分として含有させることも好ましい。
【0032】
上記官能基含有モノマー(a3)は、前記の水酸基含有モノマー(a1)を除くものであり、例えば、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー等を挙げることができる。また、これらの官能基含有モノマー(a3)は、単独でもしくは2種類以上を併用することができる。
【0033】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。なかでも反応性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0034】
上記カルボキシル基含有モノマーの含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下であり、とりわけ含有させないほうが好ましい。上記範囲を超えると、製造中にゲル化が生じる傾向にある。
【0035】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
上記アミノ基含有モノマーの含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。かかる含有量が多すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0037】
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等が挙げられる。
【0038】
上記アミド基含有モノマーの含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常30質量%以下であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有量が多すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0039】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0040】
上記グリシジル基含有モノマーの含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。かかる含有量が多すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0041】
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチロールプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等が挙げられる。
【0042】
上記スルホン酸基含有モノマーの含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。かかる含有量が多すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0043】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0044】
上記アセトアセチル基含有モノマーの含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。かかる含有量が多すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、乾燥工程前に架橋が進行し、塗工性に問題が生じやすくなる傾向がある。
【0045】
上記その他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルモノマー;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環を含有するモノマー;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記その他の共重合性モノマー(a4)の含有量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。その他の共重合性モノマー(a4)が多すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、粘着特性が低下しやすくなる傾向がある。
【0047】
本発明で用いる水酸基含有アクリル系樹脂(A)は、これらの上記重合成分を重合することにより得られる。かかる重合法としては通常、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法により適宜行うことができる。なかでも溶液ラジカル重合で製造することが、安全に、安定的に、任意のモノマー組成で水酸基含有アクリル系樹脂(A)を製造できる点で好ましい。
【0048】
上記溶液ラジカル重合は、例えば、有機溶剤中に、水酸基含有モノマー(a1)、アルキル(メタ)アクリレート(a2)、官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)等のモノマー成分および重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは通常50〜98℃で0.1〜20時間程度重合すればよい。
【0049】
上記重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0050】
上記重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0051】
上記重合法によって得られる水酸基含有アクリル系樹脂(A)は、通常、溶液の状態で得られる。上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)溶液の25℃での粘度は、5〜50,000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは10〜20,000mPa・sである。かかる粘度が上記範囲外では、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基カルボン酸化合物(B)とを反応させる際に、反応遅延を起こしたり、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、塗工性が低下する傾向がある。なお、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0052】
また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、通常10万〜200万、好ましくは15万〜150万、特に好ましくは20万〜120万、殊に好ましくは30万〜100万である。重量平均分子量が小さすぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着シートとして用いた際に、被加工部材に対する汚染性が高くなる傾向があり、大きすぎると塗工性が低下しやすくなり、またコストの面で不利となる傾向がある。
【0053】
さらに、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には10以下が好ましく、さらには7以下が好ましく、殊には5以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着シートとして用いた際に、被加工部材に対する汚染性が増大する傾向がある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
【0054】
上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列にして用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で得ることができる。
【0055】
また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、通常40℃以下であり、好ましくは−70〜20℃であることが好ましく、特に好ましくは−65〜0℃、さらに好ましくは−60〜−10℃である。ガラス転移温度が高すぎると、得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、粘着性が低下する傾向があり、低すぎると被加工部材に対する汚染性が増大する傾向がある。
【0056】
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を、下記のFoxの式に当てはめて算出した値である。
【0057】
【数1】
【0058】
ここで、水酸基含有アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K 7121−1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0059】
また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の酸価は10mgKOH/g以下が好ましく、特には5mgKOH/g以下、更には2mgKOH/g以下、特に1mgKOH/g以下が好ましい。上記範囲を超えると、製造中にゲル化を生じる傾向にある。
【0060】
上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)の酸価は、以下のようにして求めることができる。
即ち、ビーカーに固形分α質量%の水酸基含有アクリル系樹脂(A)溶液をYg採取し、トルエン:メタノール=7:3(質量比)の混合溶媒中に溶解させる。溶解後、フェノールフタレインを適量加え、スターラーで撹拌しながら、水酸化カリウム(KOH)溶液で滴定を行い、溶液が薄いピンク色となった時点のKOH溶液量XmLを終点として読み取り、下記式1によって酸価を算出する。なお、通常、KOH溶液は、0.1mol/Lを使用するが、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の酸価が低い場合には、精度を上げるため0.01mol/LのKOH溶液を使用してもよい。
〔式1〕
酸価(mgKOH/g)=X×(f×M×56.11)/(Y×α/100)
・f:KOH溶液のファクター
・M:KOH溶液のモル濃度(mol/L)
・X:KOH溶液量(mL)
・Y:水酸基含有アクリル系樹脂(A)の採取量(g)
・α:水酸基含有アクリル系樹脂(A)の固形分(質量%)
【0061】
[エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)]
本発明において、上記水酸基含有アクリル系樹脂(A)と共に用いるエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)は、「R3−COOH」と表すことができ、R3はエチレン性不飽和基を有する置換基である。エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。なかでも反応性の点で(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独でもしくは2種類以上を併用することができる。
【0062】
[化合物(C)]
本発明において、前記水酸基含有アクリル系樹脂(A)、上記エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)と共に用いる化合物(C)としては、一般式(1)で表される化合物を用いることができる。なお、一般式(1)で表される化合物(C)は、反応によってその化合物由来の成分を含む中間体を生成するが、最終的に得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂には、化合物(C)由来の成分は含まれない。
【0063】
【化2】
【0064】
一般式(1)で表される化合物において、R1とR2は、それぞれ炭化水素基を表す。また、上記炭化水素基の炭素数は、入手容易性の観点から、1〜20であり、好ましくは2〜10であり、特に好ましくは3〜7である。
【0065】
一般式(1)において、R1とR2は炭化水素基であれば、その種類および構造は限定されない。上記炭化水素基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。これらは、直鎖、分岐、環状のいずれの構造でもよい。また、上記炭化水素基としては、アリール基も挙げられる。さらに、これらの炭化水素基は、その構造中にエーテル結合を含んでいてもよく、また、R1とR2とが結合して、環状構造を形成していてもよい。
【0066】
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、二炭酸ジアリル、二炭酸ジ−t−ブチル、二炭酸ジ−t−アミル、二炭酸ジベンジル等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を効率よく製造できることから、R1とR2がt−ブチル基である二炭酸ジ−t−ブチルが好ましい。
【0067】
一般式(1)で表される化合物(C)としては、市販されているものを使用することができるが、公知の方法等で製造して得られたものを使用してもよい。また、化合物(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
<エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法>
本発明では、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で反応させることによりエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を製造することができる。
以下、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法について詳述する。
【0069】
本発明のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法における反応条件は、特には限定されず、反応過程で反応条件を適宜変更することもできる。
【0070】
上記反応に用いる反応容器の形態は、特に限定されない。また、反応に用いる原料〔水酸基含有アクリル系樹脂(A)、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)、化合物(C)〕、後述する触媒〔マグネシウム化合物(D)、アルカリ金属化合物(E)〕等を反応容器に導入する方法についても特に限定されず、例えば、すべての原料および触媒等を一度に反応容器に導入する方法、一部または、すべての原料および触媒等を段階的に反応容器に導入する方法、一部または、すべての原料および触媒等を連続的に反応容器に導入する方法等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0071】
本発明のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法におけるエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)の使用量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)中の水酸基含有モノマー(a1)の合計100mol%に対して、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)が通常10〜100mol%、好ましくは15〜95mol%、特に好ましくは20〜90mol%である。エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)の使用量が少なすぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の収率が低くなる傾向があり、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)の使用量が多すぎると、反応後の後処理工程での負荷が高くなる傾向があり、経済的ではない。
【0072】
また、上記エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)の使用量は、化合物(C)100mol%に対して、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)が通常10〜1000mol%、好ましくは20〜500mol%、特に好ましくは50〜200mol%である。エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)の使用量が少なすぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の収率が低くなる傾向があり、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)の使用量が多すぎると、反応後の後処理工程での負荷が高くなる傾向があり、経済的ではない。
【0073】
反応温度は特には、限定されないが、本発明の製造方法は、比較的低温で反応させることができる。反応温度としては、通常0〜180℃であり、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜70℃である。反応温度が低すぎると反応効率が低下する傾向があり、反応温度が高すぎると副生成物が多くなる傾向があり、またエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が着色する傾向がある。
【0074】
また、反応時間も特には限定されないが、通常0.5〜72時間であり、好ましくは2〜48時間である。反応時間が短すぎると、反応が充分に進行しなくなる傾向があり、反応時間が長すぎても、収率の向上が見られない傾向があり、経済的ではない。
【0075】
さらに、本発明のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法においては、反応時の雰囲気、および圧力も特には限定されない。
【0076】
なお、本発明のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法において、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を、化合物(C)の存在下で反応させる際、触媒として、マグネシウム化合物(D)と1種以上のアルカリ金属化合物(E)を含むことが好ましく、これらの触媒の存在下で反応させると、より高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が得られる。ここで、本発明において「触媒の存在下」とは、触媒が反応過程の少なくとも一部の段階で存在していればよく、反応過程のすべての段階で常に存在している必要はない。本発明のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法においては、触媒が反応系内に加えられれば、「触媒の存在下」という要件は満たされる。例えば、触媒を反応系内に加えた後、反応過程で触媒に何らかの変化が生じたとしても、「触媒の存在下」という要件は満たされる。
【0077】
[マグネシウム化合物(D)]
マグネシウム化合物(D)としては、例えば、マグネシウムの、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、ハロゲン化水素酸塩等の無機酸との塩;カルボン酸塩、過カルボン酸塩、スルホン酸塩等の有機酸との塩;アセチルアセトン塩、ヘキサフルオロアセチルアセトン塩、ポルフィリン塩、フタロシアニン塩、シクロペンタジエン塩等の錯塩等が挙げられる。これらのマグネシウムの塩は、水和物および無水物のいずれでもよい。そのなかでも、マグネシウムの、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、硝酸塩、ハロゲン化水素酸塩、カルボン酸塩、および錯塩が好ましい。
【0078】
マグネシウム化合物(D)としては、より詳細には、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水酸化マグネシウム(別名:塩基性炭酸マグネシウム)、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムマグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、アセチルアセトンマグネシウムが挙げられる。なかでも水酸化マグネシウムが好ましい。
【0079】
これらのマグネシウム化合物(D)は、市販されているものを使用することができるが、公知の方法等で製造して得られたものを使用してもよい。また、マグネシウム化合物(D)は単独でもしくは2種類以上を併用することができる。
【0080】
上記マグネシウム化合物(D)の使用量は、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を製造できる限り、特には限定されないが、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)に対して、通常0.001〜1000mol%であり、好ましくは0.005〜500mol%であり、特に好ましくは0.01〜250mol%である。マグネシウム化合物(D)の使用量が少なすぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の収率をさらに高める効果が得られにくくなる傾向があり、マグネシウム化合物(D)の使用量が多すぎても、収率のそれ以上の向上は見られない傾向があり、経済的ではない。
【0081】
[アルカリ金属化合物(E)]
上記アルカリ金属化合物(E)としては、例えば、アルカリ金属の、水素化塩、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、ハロゲン化水素酸塩、チオシアン酸塩等の無機酸との塩;アルコキシド塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等の有機酸との塩;アミド塩、スルホンアミド塩等の有機塩基との塩;アセチルアセトン塩、ヘキサフルオロアセチルアセトン塩、ポルフィリン塩、フタロシアニン塩、シクロペンタジエン塩等の錯塩等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩は、水和物および無水物のいずれでもよい。そのなかでも、アルカリ金属の、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ハロゲン化水素酸塩、カルボン酸塩、アミド塩、および錯塩が好ましい。
【0082】
また、上記アルカリ金属化合物(E)を構成するアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが好ましく、触媒活性が高く、高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が得られることからリチウムがより好ましい。
【0083】
上記リチウム化合物としては、具体的には、例えば、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、(メタ)アクリル酸リチウム、リチウムアミド、リチウムトリフルイミド、アセチルアセトンリチウム等が挙げられる。なかでも水酸化リチウムが好ましい。
【0084】
上記アルカリ金属化合物(E)は、市販されているものを使用するができるが、公知の方法等で製造して得られたものを使用することもできる。また、アルカリ金属化合物(E)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
アルカリ金属化合物(E)の使用量は、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を製造できる限り、特には限定されないが、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)に対して、通常0.001〜1000mol%であり、好ましくは0.005〜500mol%であり、特に好ましくは0.01〜250mol%である。アルカリ金属化合物(E)の使用量が少なすぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の収率をさらに高める効果が得られにくくなる傾向があり、アルカリ金属化合物(E)の使用量が多すぎても、収率のそれ以上の向上は見られない傾向があり、経済的ではない。
【0086】
[その他の任意成分]
さらに、本発明のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造方法においては、その他の任意成分として、溶剤を用いることもできる。上記溶剤としては、前記水酸基含有アクリル系樹脂(A)の製造で列挙した有機溶剤と同じものを用いることができる。溶剤は、1種を単独で用いてもでもよく、2種以上の混合溶剤でもよい。溶剤の使用量も特に限定されず、適宜選択することができる。溶剤の反応容器内への導入方法については、特には制限されないが、すべての溶剤を一度に一括で導入してもよく、一部またはすべての溶剤を段階的に導入してもよく、一部またはすべての溶剤を連続的に導入してもよい。また、これらの方法を組み合わせた導入方法でもよい。
【0087】
[エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂]
かくして、本発明の製造方法によって、例えば、下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を効率的に得ることができる。なお、下記一般式の「R3」は、前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)で説明した、エチレン性不飽和基を含有する置換基である。
【0088】
【化3】
【0089】
上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を含有するため、活性エネルギー線を照射することにより硬化し、剥離性を有する。そして、このエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を含有する粘着剤組成物を、粘着シートの粘着剤層として用いた場合は、活性エネルギー線照射前の粘着力および活性エネルギー線照射後の剥離性に優れるものとすることができる。また、上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和基含有構造部位にカルバメート基を有していないため、耐熱性に優れ、高温で加熱した後でも、活性エネルギー線を照射した後の剥離性に優れる。
【0090】
本発明の製造方法により得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂のエチレン性不飽和基導入率(エステル化率)は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)中の水酸基含有モノマー(a1)全体のうち通常10%以上、好ましくは20%以上、特に好ましくは30%以上である。なお、上限値は通常100%であり、水酸基含有モノマー(a1)由来の水酸基を後述の架橋剤との反応に用いる場合においては、95%を上限値とすることが好ましい。エチレン性不飽和基導入率が低すぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、活性エネルギー線照射後の剥離性が低下する傾向がある。なお、エステル化率は、13C−NMR測定によるエステル化反応前後の水酸基含有モノマー(a1)の積分値比から、以下の式により算出される。
【0091】
【数2】
【0092】
上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和基の含有量が、通常0.1〜500mmol/100gであり、好ましくは30〜450mmol/100gであり、より好ましくは40〜400mmol/100gであり、特に好ましくは50〜300mmol/100gである。エチレン性不飽和基の含有量が少なすぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、活性エネルギー線照射後の剥離性が低下する傾向があり、エチレン性不飽和基の含有量が多すぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着シートとして用いた際に、剥離後の被加工部材に対する耐汚染性が低下する傾向がある。
【0093】
上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂のエチレン性不飽和基の含有量は、以下の計算により求めることができる。
【数3】
【0094】
また、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が水酸基を含有すると、後述する架橋剤と反応し、架橋構造を形成することにより、活性エネルギー線照射前の粘着力が向上するため好ましい。
【0095】
エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂における水酸基の含有量は、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂全体に対して、通常0.01〜35質量%、好ましくは0.01〜25質量%である。水酸基の含有量が少なすぎると、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際に、粘着剤の凝集力が低下し、糊残りの原因となる傾向があり、水酸基の含有量が多すぎると、粘着剤の柔軟性および粘着力が低下し、被加工部材との間に浮きが生じる傾向がある。なお、上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が含有する水酸基とは、水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)とのエステル化後における未反応の水酸基含有モノマー(a1)由来の水酸基を意味する。
【0096】
また、上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いる場合は、溶液の状態が好ましい。上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂溶液の25℃での粘度は、5〜50,000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは10〜10,000mPa・sである。かかる粘度が上記範囲外では、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を粘着剤として用いた際の塗工性が低下する傾向がある。なお、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0097】
前述のように本発明の製造方法によって得られるエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、通常、粘着剤組成物として、金属板、プラスチック板、半導体ウエハ等の被加工部材と貼り合せた後に剥離することを前提とする、粘着シートの粘着剤層として好適に用いることができる。上記粘着シートは、粘着剤組成物を基材シート上に塗工して、粘着剤層が形成されてなるものであり、被加工部材と貼り合せた後、活性エネルギー線を照射することにより粘着剤層が硬化して粘着力が低下し、容易に被加工部材から剥離することができるものである。
【0098】
上記粘着剤組成物は、通常、上記エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を含み、好ましくは架橋剤、光重合開始剤、さらに必要に応じてその他の成分を含有するものである。以下、粘着剤組成物について説明する。
【0099】
〔架橋剤〕
粘着剤組成物には、活性エネルギー線照射前の粘着力を向上させるために、架橋剤を含有させることが好ましい。前述のように架橋剤は、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂中の官能基と反応し、架橋構造を形成するものであり、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。これらのなかでも、被着体との接着性を向上させる点やエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂との反応性の点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0100】
上記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を少なくとも2個以上含むものであり、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート等、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等が挙げられる。これらのなかでも薬剤耐性や官能基との反応性の点で芳香族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体が好ましく、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体が特に好ましい。
【0101】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0102】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0103】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるアミノ基含有メチロールメラミン、イミノ基含有メチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン誘導体、メチロールメラミン誘導体にメチルアルコールやブチルアルコール等の低級アルコールを反応させて部分的または完全にエーテル化した、部分または完全アルキル化メチロールメラミン、イミノ基含有部分または完全アルキル化メチロールメラミン等のアルキル化メチロールメラミン等が挙げられる。
【0104】
上記アルデヒド系架橋剤とは、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2−イミダゾリジン、ジメチロール尿素、N−メチロールアクリルアミド、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂等の水溶液中でアルデヒドを遊離するアルデヒド系化合物、または、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド系化合物が挙げられる。
【0105】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、変性4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。
【0106】
上記金属キレート系架橋剤には、例えば、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等のキレート化合物があげられ、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0107】
上記架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
上記架橋剤の含有量は、通常、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.2〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜15質量部である。架橋剤が少なすぎると、粘着剤の凝集力が低下し、糊残りの原因となる傾向があり、多すぎると、粘着剤の柔軟性および粘着力が低下し、被加工部材との間に浮きが生じる傾向がある。
【0109】
〔光重合開始剤〕
また、上記粘着剤組成物には、活性エネルギー線照射後の剥離性が向上する点から、光重合開始剤を配合させることが好ましい。上記光重合開始剤としては、光の作用によりラジカルを発生するものであればよく、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプ ロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;
2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;
等が挙げられる。なかでも、好ましくは、アセトフェノン類、とりわけ1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンや、チオキサントン類、とりわけ2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドである。
なお、これら光重合開始剤は、単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0110】
上記光重合開始剤の含有量としては、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜15質量部、殊に好ましくは0.5〜10質量部である。
光重合開始剤の含有量が少なすぎると活性エネルギー線照射において、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の硬化性が低く、活性エネルギー線照射後の剥離性が低下しやすくなる傾向があり、多すぎると被加工部材に対する汚染性が増大する傾向がある。
【0111】
また、これら光重合開始剤の助剤として、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらの助剤も単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0112】
〔その他の成分〕
本発明の製造方法によって得られたエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を用いた粘着剤組成物は、さらに例えば、エチレン性不飽和化合物を配合することも活性エネルギー線照射後の剥離性の点で好ましく、また、帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘着付与樹脂等の添加剤をさらに含有していてもよい。これらの添加剤は単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。特に酸化防止剤は、粘着剤層の安定性を保つのに有効である。酸化防止剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.01〜5質量%である。なお、添加剤の他にも、樹脂組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されていてもよい。
【0113】
かくして、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂、好ましくは架橋剤、光重合開始剤および、必要に応じてその他の成分を混合することにより、粘着剤組成物が得られる。
【0114】
上記粘着剤組成物は、上記架橋剤により架橋され粘着剤としての性能を発揮するのであるが、その後、活性エネルギー線照射することにより、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が有するエチレン性不飽和基が重合して粘着剤が硬化し、粘着力の低下が起こることで剥離性を発揮することとなる。
【0115】
上記粘着剤組成物は、通常、電子基板、半導体ウエハ、ガラス加工品、金属板、プラスチック板等の被加工部材を加工する際、一時的に表面を保護するための粘着シートの粘着剤層として好ましく用いられる。また、上記粘着シートは、耐熱性に優れることから、被加工部材の表面に貼り付けた後に100℃以上の加熱工程に付された場合であっても、活性エネルギー線照射することにより、優れた剥離性を発揮する。
以下、上記粘着シートについて説明する。なお、上記「シート」とは、特に「フィルム」、「テープ」と区別するものではなく、これらも含めた意味として記載するものである。
【0116】
上記粘着シートは、通常、基材シート、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層、離型フィルムを有する。かかる粘着シートの作製方法としては、まず上記粘着剤組成物をそのまま、または適当な有機溶剤により濃度調整し、剥離フィルム上または基材シート上に直接塗工する。その後、例えば80〜105℃、0.5〜10分間加熱処理等により乾燥させ、これを基材シートまたは離型フィルムに貼付することにより粘着シートを得ることができる。また、粘着物性のバランスをとるために、乾燥後にさらにエージングを行ってもよい。
【0117】
上記基材シートとしては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂シート、アルミニウム、銅、鉄の金属箔、上質紙、グラシン紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材シートは、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。これらのなかでも、軽量化等の点から、合成樹脂シートが好ましい。
【0118】
さらに、上記離型フィルムとしては、例えば、上記基材シートで例示した各種合成樹脂シート、紙、織物、不織布等に離型処理したものを使用することができる。
【0119】
また、上記樹脂組成物の塗工方法としては、一般的な塗工方法であれば特に限定されることなく、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0120】
上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、通常、10〜200μmであることが好ましく、さらには15〜100μmがあることが好ましい。
【0121】
上記エージングの条件としては、温度は通常、常温(23℃)〜70℃、時間は通常、1〜30日間であり、具体的には、例えば23℃で1〜20日間、23℃で3〜10日間、40℃で1〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0122】
上記粘着シートは、活性エネルギー線を照射することにより、粘着力が低下するものであるが、上記活性エネルギー線としては、通常、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線が好ましい。
【0123】
上記紫外線を照射する場合の積算照射量は、通常50〜3,000mJ/cm2、好ましくは100〜1,000mJ/cm2である。また、照射時間は、光源の種類、光源と粘着剤層との距離、粘着剤層の厚み、その他の条件によっても異なるが、通常は数秒間、場合によっては数分の1秒間でもよい。
【0124】
上記粘着シートの粘着力は、基材シートの種類、被加工部材の種類等によっても異なるが、活性エネルギー線照射前は、0.1〜30N/25mmが好ましく、さらには0.5〜20N/25mmが好ましい。また、活性エネルギー線照射後の粘着力は、1N/25mm以下が好ましく、さらには0.5N/25mm以下が好ましい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0126】
〔製造例1〕
水酸基含有アクリル系樹脂(A)の調製
2L丸底4ツ口フラスコに、酢酸エチルとアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を仕込み、還流させながら、ブチルアクリレート(BA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を2時間かけて滴下した後、適宜酢酸エチルとAIBNを追加し、7.5時間反応させ、水酸基含有アクリル系樹脂(A)溶液を得た。
なお、水酸基含有アクリル系樹脂(A)のモノマー組成は、BA/2HEA=72/28(質量比)であり、重量平均分子量は47万、ガラス転移温度は−23.7℃、固形分は45.7質量%、粘度は12,600mPa・s/25℃であった。また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の酸価は0.09mgKOH/gであった。
【0127】
〔製造例2〕
カルボキシル基含有アクリル系樹脂(A’)の調製
2L丸底4ツ口フラスコに、酢酸エチルとアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を仕込み、還流させながら、ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AAc)を2時間かけて滴下した後、適宜酢酸エチルとAIBNを追加し、7.5時間反応させ、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(A’)溶液を得た。
なお、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(A’)のモノマー組成は、BA/AAc=80/20(質量比)であり、重量平均分子量は71万、ガラス転移温度は−35.7℃、固形分は35.0質量%、粘度は15,000mPa・s/25℃であった。また、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(A’)の酸価は156mgKOH/gであった。
【0128】
<実施例1>
〔エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造〕
2L丸底4ツ口フラスコに、上記で調製した水酸基含有アクリル系樹脂(A)と、水酸基含有アクリル系樹脂(A)中の水酸基含有モノマー100mol%に対して80mol%のアクリル酸(AAc)(B)と、アクリル酸に対して水酸化マグネシウム(D)0.50mol%、水酸化リチウム(E)0.50mol%をそれぞれ仕込み、撹拌させながら60℃まで昇温した。次いで、仕込んだアクリル酸と同molの二炭酸ジ−t−ブチル(C)50%トルエン溶液を6時間かけて滴下し、さらに60℃で10時間反応させ、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得た。反応中、目立った粘度上昇は見られず、良好に反応が進行した。
得られたエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂は、固形分34.4質量%、粘度2,300mPa・s/25℃であり、13C−NMR測定の結果から算出したエステル化率は76.9%(反応率は96.1%)であり、エチレン性不飽和基含有量は165mmol/100gであった。
【0129】
<比較例1>
〔エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂の製造〕
2L丸底4ツ口フラスコに、上記で調製したカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A’)と、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(A’)中のカルボキシル基含有モノマー100mol%に対して80mol%の2HEAと、2HEAに対して水酸化マグネシウム0.50mol%、水酸化リチウム0.50mol%をそれぞれ仕込み、撹拌させながら60℃まで昇温した。次いで、仕込んだ2HEAと同molの二炭酸ジ−t−ブチルの50%トルエン溶液を6時間かけて滴下した。滴下開始直後から徐々に粘度上昇が見られ、反応継続が困難となったため途中で反応を停止した。
【0130】
【表1】
【0131】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(B)を化合物(C)の存在下で反応させた実施例1は、高収率でエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を得ることができた。
一方、カルボキシル基含有アクリル系樹脂(A’)と水酸基含有アクリルモノマーとを化合物(C)の存在下で反応させた比較例1は、エステル化反応中にゲル化し、目的とするエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂が得られなかった。
【0132】
また、上記で得られた実施例1のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を用いて、下記のとおり粘着シートを作製した。
【0133】
〔粘着シートの作製〕
上記実施例1のエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製「コロネートL−55E」)を1.0質量部と光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア184」)を3質量部混合した溶液をポリイミドフイルム(膜厚50μm)(東レ・デュポン社製「カプトン200H」)上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布・乾燥した後、厚み38μmのセパレータ(三井化学東セロ社製、「SP−PET 38 01−BU」)に貼り合わせ、40℃で3日間エージングすることにより、セパレータ付き粘着シートを作製した。得られたセパレータ付き粘着シートについて、下記の評価を行った。評価結果を後記表2に示す。
【0134】
<活性エネルギー線照射前粘着力>
上記で得られたセパレータ付き粘着シートから25mm×100mmの試験片を作製し、セパレータを剥がしたうえで、コーニングガラス板に23℃、50%RHの雰囲気下にて質量2kgのゴムローラーを2往復させて加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・3.0N/25mm以上
×・・・3.0N/25mm未満
【0135】
<活性エネルギー線照射後粘着力>
上記で得られたセパレータ付き粘着シートから25mm×100mmの試験片を作製し、セパレータを剥がしたうえで、コーニングガラス板に23℃、50%RHの雰囲気下にて質量2kgのゴムローラーを2往復させて加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、80Wの高圧水銀灯を1灯用いて、ガラス板側から紫外線照射(積算照射量250mJ/cm2)を施し、直ちに剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・0.5N/25mm以下
×・・・0.5N/25mmより大きい
【0136】
<加熱・活性エネルギー線照射後粘着力>
上記で得られたセパレータ付き粘着シートから25mm×100mmの試験片を作製し、セパレータを剥がしたうえで、コーニングガラス板に23℃、50%RHの雰囲気下にて質量2kgのゴムローラーを2往復させて加圧貼付し、150℃に加熱したオーブンジェット乾燥機に1時間投入した。乾燥機から取り出し、30分間23℃、50%RHの雰囲気下で冷却した後、さらに80Wの高圧水銀灯を1灯用いて、ガラス板側から紫外線照射(積算照射量250mJ/cm2)を施し、直ちに剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・0.5N/25mm以下
×・・・0.5N/25mmより大きい
【0137】
<耐汚染性>
加熱・活性エネルギー線照射後粘着力の評価において、剥離後の被着体表面の糊残り状態を目視で確認し、耐汚染性を評価した。
(評価基準)
○・・・糊残り無
×・・・糊残り有
【0138】
【表2】
【0139】
実施例1で得られたエチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を用いて得た粘着シートは、活性エネルギー線照射前の粘着力が良好であり、活性エネルギー線照射後の剥離性に優れ、更に、耐熱性に優れ、加熱後においても活性エネルギー線照射後の剥離性(耐汚染性、微粘着性)に優れた粘着シートとなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の製造方法は、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂を効率よく製造することができる。