(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出部は、前記押圧部と前記押圧部に押圧力を伝える押圧力伝達部との間に配置されており、前記押圧部から伝えられる反力に応じて前記押圧部の相対移動方向に変形する変形部と、前記変形部の変形量に対応する前記押圧部の押圧力を表示する表示部と、を有する請求項1に記載の偏心バルーンカテーテルの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バルーンの膨張を規制する膨張規制部材をバルーンの上から貼りつけるタイプの偏心バルーンカテーテルは、従来の製造方法で製造する限りにおいては、膨張規制部材の接合強度にばらつきが生じやすく、良品率を高めることが難しいという課題を有している。また、完成品における膨張規制部材の接合強度を所定の範囲内にするためには、接着剤のような連結剤の塗布位置や塗布量を厳密に管理する必要があったり、接着部分における接着剤の広がりを厳密にチェックする必要があったりするため、製造作業の難易度が高く、また、効率的な生産が難しいという問題を有している。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、バルーンの膨張を規制する膨張規制部材の接合強度が安定している偏心バルーンカテーテルを製造可能な偏心バルーンカテーテルの製造装置および、そのような偏心バルーンカテーテルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る偏心バルーンカテーテルの製造装置は、
バルーンがカテーテルチューブの軸心に対して偏芯して膨らむ偏心バルーンカテーテルの製造装置であって、
前記カテーテルチューブと、前記カテーテルチューブが挿通および接合した前記バルーンと、少なくとも一部が前記バルーンに重なるように前記カテーテルチューブおよび前記バルーンの上に配置されており前記バルーンが膨張する際において前記バルーンの周方向の一部が前記カテーテルチューブから離間することを規制する膨張規制部材と、を収容する溝部が形成されているクランプ台と、
前記溝部の開口側から前記溝部に対して近接および離間するように相対移動可能であって、前記膨張規制部材を前記カテーテルチューブに向かって押圧する押圧部と、
前記押圧部による押圧力を検出する検出部と、を有する。
【0008】
本発明に係る偏心バルーンカテーテルの製造装置は、クランプ台に配置された膨張規制部材をカテーテルチューブに向かって押圧する際の押圧力を検出する検出部を有しているため、製造された偏心バルーンカテーテルにおける膨張規制部材の接合強度を安定させることができる。すなわち、このような製造装置によれば、検出結果に基づき押圧力を適切な範囲に調整することにより、膨張規制部材と接合対象であるバルーンまたはカテーテルとの間に形成された隙間の広さや、膨張規制部材と接合対象との間に形成される連結部の広がりを安定させることが可能であるため、製造された偏心バルーンカテーテルにおける膨張規制部材の接合強度を安定させることができる。また、検出部で押圧力を検出しているため、作業者が熟練者でなくても、膨張規制部材をカテーテルチューブに向かって押圧する際の押圧力を適切に調整することが可能であり、このような偏心バルーンカテーテルの製造装置を用いることにより効率的な製造が可能である。
【0009】
また、例えば、前記押圧部は、前記溝部の延びる方向に沿って所定の間隔を空けて配列されており、前記バルーンより遠位端側において前記膨張規制部材を前記カテーテルチューブに向かって押圧する第1押圧部と、前記バルーンより近位端側において前記膨張規制部材を前記カテーテルチューブに向かって押圧する第2押圧部と、を有していてもよい。
【0010】
押圧部が第1押圧部と第2押圧部とを有することにより、バルーンを軸方向に跨ぐ2箇所で、膨張規制部材をカテーテルチューブに対して効率的に接合することができる。すなわち、このような製造装置によれば、膨張規制部材をカテーテルチューブに対して確実に接合することができ、かつ、2箇所同時に押圧できるため作業性も良好である。
【0011】
また、例えば、前記検出部は、前記押圧部と前記押圧部に押圧力を伝える押圧力伝達部との間に配置されており、前記押圧部から伝えられる反力に応じて前記押圧部の相対移動方向に変形する変形部と、前記変形部の変形量に対応する前記押圧部の押圧力を表示する表示部と、を有してもよい。
【0012】
押圧部の相対移動方向に変形する変形部と、押圧部の押圧力を表示する表示部とを有する製造装置は、製造作業者がより容易に膨張規制部材に対する押圧力を適切な範囲に調整することができるため、製造された偏心バルーンカテーテルにおける膨張規制部材の接合強度を、より安定させることができる。
【0013】
また、前記変形部は、圧縮バネを有してもよく、空気圧バネを有してもよく、油圧バネを有してもよい。
【0014】
変形部は、押圧部から伝えられる反力に応じて変形するものであれば特に限定されないが、例えば圧縮バネ、空気圧バネまたは油圧バネ等を有してもよく、このような変形部により、膨張規制部材に対する押圧力を、より正確に調整することができる。
【0015】
本発明に係る偏心バルーンカテーテルの製造方法は、バルーンがカテーテルチューブの軸心に対して偏芯して膨らむ偏心バルーンカテーテルの製造方法であって、
前記カテーテルチューブと、前記カテーテルチューブが挿通および接合した前記バルーンと、少なくとも一部が前記バルーンに重なるように前記カテーテルチューブおよび前記バルーンの上に配置されており前記バルーンが膨張する際において前記バルーンの周方向の一部が前記カテーテルチューブから離間することを規制する膨張規制部材とを、クランプ台に形成された溝部に配置する工程と、
前記膨張規制部材とカテーテルチューブとの間に接着剤を塗布する工程と、
前記溝部の開口側から前記クランプ台の前記溝部に対して近接および離間するように相対移動可能な押圧部によって、前記膨張規制部材を前記カテーテルチューブに向かって押圧する工程と、
前記押圧部による押圧力を検出部が検出する工程と、
前記検出部による検出結果に基づき前記押圧部による押圧力を調整する工程と、を有する。
【0016】
本発明に係る偏心バルーンカテーテルの製造方法によれば、安定した接着強度で接着された膨張規制部材を有する偏心バルーンカテーテルを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る製造装置によって製造される偏心バルーンカテーテル1の一例を表す概略図である。偏心バルーンカテーテル1は、カテーテルチューブ5と、バルーン2と、膨張規制部材としての帯状体20とを有している。
図1に示すように、偏心バルーンカテーテル1は、バルーン2がカテーテルチューブ5の軸心に対して偏芯して膨らむ。
【0020】
カテーテルチューブ5は、可撓性材料によって形成されたチューブであって、体内に挿入される側の端部であるチューブ遠位端部7と、その他端側に位置する近位端部(図示省略)とを有している。カテーテルチューブ5の外径d1は、例えば1〜3mm程度であり、全長は500〜2500mm程度とすることができるが特に限定されず、カテーテルチューブ5のサイズは、偏心バルーンカテーテル1の用途等に応じて適宜変更される。また、カテーテルチューブ5の材料は、可撓性を有する材料であれば特に限定されないが、高分子材料であることが好ましく、なかでも、ポリアミド樹脂あるいはポリアミド系エラストマーであることが特に好ましい。
【0021】
カテーテルチューブ5の内部には、
図2に示すように、バルーンルーメン8と、造影剤ルーメン9と、ガイドワイヤルーメン10とが形成されている。バルーンルーメン8は、バルーン2を膨張させるために用いる空気等の流体をバルーン2の内部空間24に送るための流路となるルーメンである。このバルーンルーメン8は、カテーテルチューブ5の近位端から、カテーテルチューブ5の遠位端部であるチューブ遠位端部7の途中まで延びており、バルーン2の内部空間24に開口するように設けられた流体導出口11と導通している。
【0022】
造影剤ルーメン9は、結石の位置を確認する等の目的で、体内のX線造影を行う場合に、造影剤の流路として用いるルーメンである。この造影剤ルーメン9は、カテーテルチューブ5の近位端から、カテーテルチューブ5のチューブ遠位端部7の噴出口12まで貫通している。噴出口12は、バルーン2より近位端側に位置するように設けられた開口である。なお噴出口は、バルーン2より遠位端側に位置するように設けられた開口であってもよい。
【0023】
ガイドワイヤルーメン10は、偏心バルーンカテーテル1をガイドワイヤに沿わせて体内に挿入する際に、ガイドワイヤを挿通させるルーメンであり、カテーテルチューブ5の近位端から遠位端開口10aまで貫通している。なお、カテーテルチューブ5において、造影剤ルーメンおよびガイドワイヤルーメン10は必ずしも設ける必要はなく、また、上記した機能以外の機能を有する他のルーメンが形成されていてもよい。
【0024】
バルーンルーメン8、造影剤ルーメン9およびガイドワイヤルーメン10の断面形状は、いずれも限定されず、それぞれをカテーテルチューブ5内に効率的に配置できる形状とすればよい。但し、ガイドワイヤルーメン10については、断面形状が円形であることが好ましい。また、バルーンルーメン8の断面積は例えば0.03〜0.3mm2、造影剤ルーメン9の断面積は例えば0.08〜0.8mm2、ガイドワイヤルーメン10の断面積は例えば0.5〜1.0mm2とすることができるが、各ルーメンの断面積は特に限定されず、カテーテルチューブの外径等に応じて適宜変更される。
【0025】
偏心バルーンカテーテル1のバルーン2は、カテーテルチューブ5のチューブ遠位端部7付近に、カテーテルチューブ5に形成された流体導出口11を覆うように取り付けられている。このバルーン2は、伸縮性材料により形成されていて、カテーテルチューブ5のバルーンルーメン8を介して、内部空間24に流体が導入されることにより膨張されるようになっている。この膨張したバルーン2によって、
図2に示すような結石50を掻き出したり、押し出したりして、体内の結石の除去を行うことができる。
【0026】
バルーン2を形成する伸縮性材料としては、100%モジュラス(JIS K 6251に準拠して測定した値)が、0.1〜10Mpaであるものが好ましく、1〜5Mpaであるものが特に好ましい。100%モジュラスが小さすぎると、バルーン2の強度が不足するおそれがあり、大きすぎると、バルーン2を十分な大きさに膨張できなくなるおそれがある。また、バルーン2を形成するために好適な伸縮性材料の具体例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。
【0027】
図1〜
図3に示すように、バルーン2は、全体として筒状であってカテーテルチューブ5が挿通しており、その両端部にカテーテルチューブ5の外周面と接合される接合部4a、4bが形成されている。バルーン2の膨張部3の両端側に位置する接合部4a、4bの形状は、カテーテルチューブ5の外周面に接合可能な形状であれば特に限定されないが、円筒形であることが好ましい。
【0028】
バルーン2の接合部4a、4bが円筒形である場合、その内径はカテーテルチューブ5の外径とほぼ等しいことが好ましく、その長さは、0.5〜5mmであることが好ましい。また、バルーン2の接合部4a、4bの肉厚は、特に限定されず、例えば、膨張部3と実質的に等しくすれば良い。なお、バルーン2の接合部4a、4bとカテーテルチューブ5の外周面とを接合する手法は、特に限定されず、例えば、接着剤による接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着などを挙げることができる。
【0029】
バルーン2において、接合部4a、4bの間には、内部空間24に流体が導入されることにより膨張する膨張部3が形成されている。
図1〜
図3では、膨張されたバルーン2が示されている。バルーン2の膨張部3は、膨らんだ状態での最大外径が、萎んだ状態での最小外径の110〜200%であることが好ましい。この比率が小さすぎると、バルーン2が十分な大きさに膨張しないおそれがあり、大きすぎると、偏心バルーンカテーテル1を体内に挿入する際にバルーン2が邪魔になるおそれがある。また、バルーン2における膨張部3の長さ(カテーテルチューブ5の軸方向に沿った長さ)は、5〜20mmが好ましく、肉厚は、0.10〜0.50mmであることが好ましい。バルーン2の肉厚は、周方向に沿って均一であることが好ましい。
【0030】
上記したような形状を有するバルーン2を製造する方法は特に限定されず、伸縮性材料の製膜方法として公知の方法を用いればよいが、ディッピング成形法を用いることが好ましい。ディッピング成形法では、伸縮性材料と必要に応じて各種添加剤を溶剤に溶解して溶液あるいは懸濁液とし、この溶液(懸濁液)に所望するバルーンの形状と略等しい外形を有する型を浸漬させて型の表面に溶液(懸濁液)を塗布し、溶剤を蒸発させて型の表面に被膜を形成させる。この浸漬と乾燥を繰り返すことにより所望の肉厚を有するバルーンを製膜することができる。なお、伸縮性材料の種類により、必要に応じて、製膜後、架橋を行う。
【0031】
図1に示すように、偏心バルーンカテーテル1は、膨張規制部材としての帯状体20を有している。膨張規制部材としての帯状体20は、少なくとも一部がバルーン2に重なるようにカテーテルチューブ5およびバルーン2の上に配置されており、バルーン2が膨張する際においてバルーン2の周方向の一部がカテーテルチューブ5から離間することを規制する。帯状体20は、カテーテルチューブ5の軸方向に沿って、バルーン2を跨ぐように伸びており、帯状体20の軸方向長さは、バルーン2の軸方向長さよりも長い。帯状体20の近位端部である帯状体近位端部22bは、バルーン2より近位端側でカテーテルチューブ5の外周面に固定してあり、帯状体20の遠位端部である帯状体遠位端部22aは、バルーン2より遠位端側でカテーテルチューブ5の外周面に固定してある。
【0032】
帯状体20の材質としては、特に限定されず、例えばカテーテルチューブ5を構成する樹脂と同様な樹脂で構成される。ただし、バルーン2が膨張する際に、帯状体20がバルーン2の膨張を規制し、膨張したバルーン2の中心がカテーテルチューブ5の中心に比べて、帯状体20から離間できるように、帯状体20は、バルーン2より伸縮性の小さい材料で構成されることが好ましい。また、帯状体近位端部22bおよび帯状体遠位端部22aと、その接合対象であるカテーテルチューブ5との接合方法は、特に限定されず、接着、熱融着、高周波融着などを挙げることができる。
【0033】
帯状体20の幅は、カテーテルチューブ5の外周における円周方向長さの1/2以下の幅であり、好ましくは1/3〜1/5の幅である。この幅が小さすぎると、バルーン2の上から当該バルーン2の周方向の一部がカテーテルチューブ5から離間することを規制する機能が小さくなり、幅が大きすぎると、バルーン2を十分に膨らませることが困難になる。
【0034】
偏心バルーンカテーテル1では、バルーン2が膨張する際においてバルーン2の周方向の一部がカテーテルチューブ5から離間することを規制する帯状体20がカテーテルチューブ5に接合されているため、
図3に示すように、バルーン2の膨張部3がカテーテルチューブ5の軸心に対して偏心して膨張する。カテーテルチューブ5の軸心に対する膨張部3の膨張中心の偏心量h1は、膨張部3の膨張半径Rに対して、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは75〜100%である。なお、バルーン2は、その横断面において、完全に円形に膨張する必要はなく、楕円形、その他の形状に膨張しても良い。
【0035】
図1および
図2に示すように、偏心バルーンカテーテル1では、カテーテルチューブ5における外周面の2箇所に、造影リング26a、26bが設けられている。造影リング26aは、バルーン2の内部空間24に配置されており、造影リング26bは、バルーン2の外部であって、バルーン2における近位端側の接合部4bに近接する位置に配置されているが、造影リング26a、26bの配置、形状および数は特に限定されない。造影リング26a、26bは、例えばX線不透過材料である金、プラチナ、プラチナイリジウム合金等の金属や、X線造影物質の粉末を含有する樹脂組成物を用いて作製される。
【0036】
図4は、偏心バルーンカテーテル1の製造装置であり、クランプ台61に配置された対象物である帯状体20をカテーテルチューブ5に対して押圧する押圧装置60を表す概略図である。押圧装置60は、台座64と、台座64から上方に延びる支柱66と、支柱から水平方向に延びており支柱66に片持ち支持される梁67とを有している。また、押圧装置60は、梁67の下方において台座64の上に設置されるクランプ台61と、梁67に対して相対移動可能に連結されている押圧力伝達部材68と、押圧力伝達部材68に対して変形部71を間に挟んで接続されており、クランプ台61の溝部62に対して近接および離間するように相対移動可能な押圧部69とを有している。さらに、押圧装置60は、押圧力伝達部材68および押圧部69を上下方向に移動させるためのレバー65と、押圧部69による押圧力を検出する検出部70とを有している。
【0037】
押圧装置60は、レバー65を手前側へ回転させると押圧力伝達部材68および押圧部69がクランプ台61へ向かって下降し、レバー65を奥側へ回転させると押圧力伝達部材68および押圧部69が上昇してクランプ台61から離間するようになっている。クランプ台61の拡大図である
図6に示すように、クランプ台61には上方に開口する溝部62が形成されている。
【0038】
図7は、クランプ台61およびクランプ台61の溝部62に収容されたカテーテルチューブ5等を上方から見た概念図である。クランプ台61の溝部62には、カテーテルチューブ5におけるチューブ遠位端部7の近傍と、カテーテルチューブ5に接合されたバルーン2と、カテーテルチューブ5に対して接合される前の帯状体20が収容されている。帯状体20は、カテーテルチューブ5の軸方向に沿ってバルーン2を跨ぐように、カテーテルチューブ5およびバルーン2の上方に配置されている。
【0039】
帯状体20の近位端部である帯状体近位端部22bとカテーテルチューブ5の外周面の間、および帯状体20の遠位端部である帯状体遠位端部22aとカテーテルチューブ5の外周面の間には、帯状体20をカテーテルチューブ5に接合するための接着剤が塗布される。
図6に示すように、クランプ台61には、後述する押圧装置60における押圧動作中において、カテーテルチューブ5、バルーン2および帯状体20が位置ずれを起こしたり、溝部62から逸脱したりすることを防止するための固定板63が設けられている。
【0040】
押圧装置60の部分拡大図である
図5に示すように、押圧部69は、押圧部69に対して押圧力を伝える押圧力伝達部材68の下方先端に、押圧力伝達部材68との間に変形部71を挟んで接続されている。変形部71は、押圧部69の相対移動方向である上下方向に弾性変形する圧縮バネで構成されており、押圧部69を下方へ付勢している。押圧部69は、操作者が
図1に示すレバー65を操作することにより、クランプ台61における溝部62に対して、その開口側から近接および離間するよう相対移動する。
【0041】
また、押圧部69は、押圧力伝達部材68に対して上下方向に相対移動可能であり、押圧部68が押圧対象である帯状体20等から反力を受けた場合、変形部71が収縮することにより、押圧部69が押圧力伝達部材68に対して上方に相対移動する。
【0042】
押圧部69は、クランプ台61における溝部62の延びる方向に沿って所定の間隔を空けて配列されている第1押圧部69aと第2押圧部69bとを有している。遠位端側に配置される第1押圧部69aは、
図7に示す帯状体遠位端部22aをカテーテルチューブ5に向かって押圧し、近位端側に配置される第2押圧部69bは、
図7に示す帯状体近位端部22bをカテーテルチューブ5に向かって押圧する。
【0043】
図5に示すように、押圧装置60は、押圧部69による押圧力を検出する検出部70を有している。検出部70は、押圧部69と押圧力伝達部材68との間に配置されており、押圧部69から伝えられる反力に応じて変形する変形部71と、変形部71の変形量に対応する押圧力を表示する表示部としての目盛り72とを有している。
【0044】
検出部70の目盛り72は押圧部69の表面に形成されており、変形部71の変形量に応じて相対移動する押圧力伝達部材68の下端68aと目盛り72との位置関係により、押圧部69による押圧力が表示される。
【0045】
押圧装置60に含まれる各部材の材質は特に限定されないが、台座64、支柱66、押圧力伝達部材68及び押圧部69等は、耐久性および安定性等の観点から鉄やステンレスのような金属材料で作製されることが好ましい。また、変形部71を構成する圧縮バネは、たとえば高炭素鋼やステンレス鋼線のような硬質金属により作製されるが、特に限定されない。また、クランプ台61についても、金属や樹脂等の材料を用いて作製することができ、材質は特に限定されないが、たとえばPTFEで作製されることが、余剰の接着剤がクランプ台61に付着した場合にも、これを容易に除去可能であるため好ましい。
【0046】
図9は、
図4に示す押圧装置60を用いた偏心バルーンカテーテル1の製造工程の一例を表すフローチャートである。以下、
図9等を用いて偏心バルーンカテーテル1の製造工程を説明する。
【0047】
図9に示すステップS001では、
図2に示すカテーテルチューブ5のチューブ遠位端部7近傍にバルーン2を接合する。具体的には、バルーン2の接合部4a、4bを、カテーテルチューブ5の外周面に対して接着剤等を用いて、または熱融着により固定する。なお、偏心バルーンカテーテル1が造影リング26a、26bを有する場合は、ステップS001の前後において、造影リング26a、26bをカテーテルチューブ5の所定位置に、接着剤等により固定する。
【0048】
図9に示すステップS002では、ステップS001でバルーン2を接合したカテーテルチューブ5と、帯状体20とを、クランプ台61の溝部62にセットする。この際、まずクランプ台61の溝部62に、バルーン2を接合したカテーテルチューブ5を配置し、次に、
図7に示すようにバルーン2の上に重ねて帯状体20を配置する。この際、帯状体20の両端部である帯状体遠位端部22aおよび帯状体近位端部22bが、バルーン2の遠位端側および近位端側にはみ出すように、帯状体20がカテーテルチューブ5に対して配置される。溝部62に配置されたカテーテルチューブ5、バルーン2および帯状体20は、
図6に示す固定板63を用いて溝部62に固定される。
【0049】
図9に示すステップS003では、帯状体20をカテーテルチューブ5に接合するための接着剤を塗布する。具体的には、帯状体20の帯状体遠位端部22aを持ち上げ、帯状体遠位端部22aの下方に位置するカテーテルチューブ5の外周面に接着剤を塗布した後、帯状体遠位端部22aを塗布した接着剤の上に重ねる。帯状体近位端部22bについても、帯状体遠位端部22aと同様に行う。ただし、
図7に示すように、帯状体近位端部22bの一部は、造影リング26bの上に位置しているため、帯状体近位端部22bを固定する接着剤の一部は、造影リング26bの上にも塗布される。
【0050】
図8は、
図7における帯状体遠位端部22aおよび帯状体近位端部22bの周辺を表す断面図である。帯状体近位端部22bをカテーテルチューブ5に固定する接着剤78bは、バルーン2に対して所定の間隔を空けて配置されており、バルーン2に接触しないようにすることが好ましい。バルーン2の膨張を必要以上に規制することを防止し、また、バルーン2の膨張に伴い接着部分が剥離することを防止するためである。帯状体遠位端部22aをカテーテルチューブ5に固定する接着剤78aについても同様である。
【0051】
図9に示すステップS004では、クランプ台61の溝部62にセットされた帯状体20をカテーテルチューブ5に向かって押圧する。具体的には、
図4に示すように、ステップS003で接着剤を塗布したカテーテルチューブ5がセットされたクランプ台61を、押圧装置60における押圧部69の下方に固定する。次に、押圧装置60の操作者は、
図4に示すレバー65を手前側に回転させることにより、押圧力伝達部材68および押圧力伝達部材68の下端に接続されている押圧部69を下方に移動させる。これに伴い、
図5に示す押圧部69の第1押圧部69aおよび第2押圧部69bが、溝部62に対して溝部62の開口側から近づいていく。さらに、
図8に示すように、第1押圧部69aおよび第2押圧部69bが、それぞれ帯状体20の帯状体遠位端部22aおよび帯状体近位端部22bに接触することにより、帯状体20およびカテーテルチューブ5に対する押圧が開始される。
【0052】
図9に示すステップS005では、
図5に示す押圧装置60の検出部70が押圧力を検出し、検出結果を見ながら操作者が押圧力を調整する。
図5に示す変形部71は、押圧部69による押圧が開始されると、押圧部69が受ける反力が変形部71に伝えられることにより上下方向に収縮し、押圧部69による押圧力を検知する。また検出部70は、変形部71が変形することにより押圧力伝達部68の下端68aと目盛り72との相対位置が変化し、下端68aと目盛り72との位置関係により押圧部69による押圧力を表示する。
【0053】
押圧装置60の操作者は、目盛り72による押圧力の表示内容を見ながら、押圧装置60のレバー65を操作することにより、押圧部69が帯状体20をカテーテルチューブ5に向かって押圧する押圧力を調整する。なお、ステップS004またはステップS005では、所定の押圧力で押圧部69が帯状体20をカテーテルチューブ5に向かって押圧する状態が、一定の時間継続されてもよい。所定の押圧力が維持される時間は、塗布された接着剤等に応じて適宜調整される。
【0054】
図9に示すステップS006では、帯状体20とカテーテルチューブ5とを接着する接着剤を硬化させる。たとえば、ステップS003で塗布した接着剤が湿気硬化型や溶剤揮発型である場合は、ステップS005を終えた後のカテーテルチューブ5及び帯状体20を、室内等の所定環境に放置することにより、接着剤を硬化させる。このように、
図9に示す一連の工程により、
図1〜
図3に示す偏心バルーンカテーテル1を得ることができる。
【0055】
このように、
図4に示すような押圧装置60を用いて偏心バルーンカテーテル1を製造することにより、帯状体20とカテーテルチューブ5との接合強度を安定させることができるため、適切な強度と信頼性を有する偏心バルーンカテーテル1を効率的に製造することができる。すなわち、押圧装置60の検出部70による押圧力の検出結果に基づき、帯状体20とカテーテルチューブ5との接合工程における押圧力を適切な範囲に調整することにより、帯状体20とカテーテルチューブ5との間に形成された隙間の広さや、帯状体20とカテーテルチューブ5とを接合する接着剤硬化層の広がりを安定させることができるため、帯状体20とカテーテルチューブ5との接合信頼性を高めることができる。
【0056】
また、押圧装置60は、押圧力を正確に調整可能であるため、第1押圧部69aと第2押圧部69bにより2箇所同時に押圧した場合にでも、押圧力およびこれに関連する接合強度のばらつきを抑制することができるため、偏心バルーンカテーテル1を効率的に製造することができる。また、押圧装置60は、
図8に示すように、第1押圧部69aによる接合部分と第2押圧部69bによる接合部分とで、造影リング26bの有無などにより形状が異なる場合であっても、接合面間に適切に接着剤78a、78bを介在させ、偏心バルーンカテーテル1における帯状体20の接合信頼性を高めることができる。
【0057】
図4〜
図6に示す押圧装置60および押圧装置60を用いた偏心バルーカテーテル1の製造方法は、本発明の一実施形態にすぎず、本発明には多くの他の実施形態が含まれることは言うまでもない。例えば、上述した偏心バルーンカテーテル1の製造方法では、帯状体20をカテーテルチューブ5の外周面に接着したが、帯状体20の接合方法はこれに限定されず、帯状体20の一部又は全部がバルーン2に接合されていてもよい。また、上述の実施形態では、バルーン2の膨張を規制する膨張規制部材が帯状体20であるが、膨張規制部材は帯状の帯状体20に限定されず、線状、チューブ状等、他の形状であってもかまわない。
【0058】
また、実施形態で示した押圧装置60の検出部70は、変形部71としての圧縮バネを有するが、検出部70が有する変形部71としてはこれに限定されず、空気圧バネ、油圧バネのような他のバネを採用することができる。また、表示部は、
図2に示すような目盛り72を有するものに限定されず、ランプや液晶パネルのような電気的な表示手段や、圧力ゲージのような機械式の表示手段であってもよい。なお、押圧装置は、機械的な変形量を電気信号に変換する圧力センサを、検出部70の変形部として採用してもよい。
【0059】
また、押圧装置60及びこれを用いた製造方法によって製造される偏心バルーンカテーテル1は、胆管から胆石を除去する胆石除去用の偏心バルーンカテーテルに限定されず、胆石以外の結石その他を移動させたり、除去したりする偏心バルーンカテーテルや、その他の偏心バルーンカテーテルであってもよい。
【0060】
以下、実施例を示して、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0061】
図4に示す押圧装置60を用いて、
図9に示すフローチャートに従って偏心バルーンカテーテル1を作製したのち、接着後の帯状体20をカテーテルチューブ5から引き剥がす引き剥がし試験を行い、接着強度のばらつきを調査した。引き剥がし試験を行った試料No.1〜No.20は、カテーテルチューブ5、バルーン2、帯状体20の材質及び寸法、カテーテルチューブ5に帯状体20を固定する接着剤の種類及び塗布量については同様である。すべての試料で共通の条件を以下に示す。
【0062】
カテーテルチューブ:材質 ナイロン系エラストマー、外径1.80〜1.90mm、長さ1950〜2150mm
バルーン:材質 天然ゴムラテックス 、収縮時外径2.14〜2.30mm、長さ10.5〜11.5mm、膜厚0.17〜0.25mm
帯状体:材質 ナイロン系エラストマー、長さ13.5〜14.5mm、幅1.3〜1.7mm、厚み0.15〜0.25mm
接着剤:種類 シアノアクリレート系接着剤、塗布量1〜2滴(帯状体遠位端部22aまたは帯状体近位端部22b1カ所あたり)
【0063】
引き剥がし試験のために作製した試料No.1〜No.20は、
図9におけるステップS005で行われる帯状体20のカテーテルチューブ5への押圧力を、表1に示す三水準で変化させて作製した。なお、各試料の製造において、ステップS005では、表1に示す水準に押圧力を調整したのち、30〜50秒程度その押圧力を維持した。
【表1】
【0064】
引き剥がし試験では、まず、帯状体20を中央で切断することにより、1つの偏心バルーンカテーテル1から、接着位置が帯状体遠位端部22aである試料と、接着位置が帯状体近位端部22bである試料の2つを作製した。さらに、切断した帯状体20の端部をロードセルに固定し、カテーテルチューブ5を可動テーブルに固定したうえで可動テーブルを動かすことで帯状体20を引っ張り、帯状体20の引張距離と加重の関係を測定した。引き剥がし試験には、レオメータ(株式会社レオテック社製)を用いた。
【0065】
図10は、押圧装置60による押圧力が水準1(4.89N)である試料No.1〜No.6までの引き剥がし試験の結果を表すグラフである。この水準では、6試料中1試料(試料No.1)で、破断前に帯状体20が引き伸ばされる過程が見られず、接合不良が確認された。
【0066】
図11は、押圧装置60におる押圧力が水準2(6.94N)である試料No.7〜No.12までの引き剥がし試験の結果を表すグラフである。この水準では、いずれの試料でも接合不良は確認されなかった。
【0067】
図12は、押圧装置60による押圧力が水準3(9.03N)である試料No.13〜
No.20までの引き剥がし試験の結果を表すグラフである。この水準では、8試料中4試料(試料No.15、No.18〜No.20)で、破断前に帯状体20が引き伸ばされる過程が見られず、接合不良が確認された。
【0068】
図10〜
図12に示す引き剥がし試験の結果から、帯状体20をカテーテルチューブ5に接着する工程において、押圧装置60を用いて押圧力が所定の範囲(たとえば、水準2の周辺や、または水準1から水準2の範囲)になるように管理しながら偏心バルーンカテーテル1の製造を行うことにより、帯状体20とカテーテルチューブ5との接合強度を、十分な強度を確保できる水準で安定させられることを確認できた。また、押圧装置60を用いて押圧力を管理しながら偏心バルーンカテーテル1の製造を行うことにより、帯状体20とカテーテルチューブ5との接合不良に伴う不良品の発生を抑制し、効率的な製造が可能になると考えられる。