【実施例】
【0050】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0051】
〔数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)〕
(1)ベースポリマー(カチオン性基を有しないポリエーテル化合物)の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定した。なお、測定器としてはHLC−8320(東ソー社製)を用い、カラムはTSKgel SuperMultiporeHZ−H(東ソー社製)4本を直列に連結して用い、検出器は示差屈折計RI−8320(東ソー社製)を用いた。
(2)カチオン性基を有するポリエーテル化合物の数平均分子量(Mn)は、次のように求めた。すなわち、まず、ベースポリマー(カチオン性基を有しないポリエーテル化合物)の繰り返し単位の平均分子量と、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の平均分子量、および下記(3)により求めたカチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率とから、カチオン性基を有するポリエーテル化合物を構成する、全ての繰り返し単位の平均分子量を求めた。そして、ベースポリマー(カチオン性基を有しないポリエーテル化合物)の繰り返し単位数と、カチオン性基を有するポリエーテル化合物を構成する、全ての繰り返し単位の平均分子量とを乗じることにより得られた値を、カチオン性基を有するポリエーテル化合物の数平均分子量とした。
(3)カチオン性基を有するポリエーテル化合物の構造、およびカチオン性基を有するポリエーテル化合物中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、以下のように測定した。すなわち、まず、試料となるカチオン性基を有するポリエーテル化合物30mgを、1.0mLの重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドに加え、1時間振蕩することにより均一に溶解させた。そして、得られた溶液についてNMR測定を行って、
1H−NMRスペクトルを得て、定法に従いポリエーテル化合物の構造を帰属した。
また、カチオン性基を有するポリエーテル化合物中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率は、次の方法により算出した。すなわち、まず、主鎖のオキシラン単量体単位に由来するプロトンの積分値から全オキシラン単量体単位のモル数B1を算出した。次に、カチオン性基に由来するプロトンの積分値から、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位のモル数B2を算出した。そして、B1に対するB2の割合(百分率)を、カチオン性基を有するポリエーテル化合物中の、カチオン性基を有するオキシラン単量体単位の含有率として求めた。
【0052】
〔融点、ガラス転移点〕
イオン性組成物および架橋物について、示差走査熱量計(DSC)により、−80℃から100℃の間において、5℃/分の速度で冷却・加熱した。本実施例では、融解熱量の最も大きくなる点を融点とした。なお、測定器としてはX−DSC7000(日立ハイテクサイエンス社製)を用いた。
【0053】
〔形状保持性〕
架橋物を、23℃、湿度40%の環境にて24時間静置し、自重でイオン液体がブリードアウトしないか確認することで、形状保持性の評価を行った。
【0054】
〔製造例1〕
(エピクロロヒドリンとグリシジルメタクリレートとのリビングアニオン共重合)
アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド0.032gおよびトルエン5mlを添加し、これを0℃に冷却した。次いで、トリエチルアルミニウム0.029g(テトラノルマルブチルアンモニウムブロミドに対して2.5当量)をノルマルヘキサン0.25mlに溶解したものを添加して、15分間反応させることで触媒組成物を得た。得られた触媒組成物に、エピクロロヒドリン9.5gおよびグリシジルメタクリレート0.5gを添加し、0℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。1時間反応後、重合反応液に少量の2-プロパノールを添加し、反応を停止した。次いで、得られた重合反応液をトルエンで希釈した後2-プロパノールに注ぎ、白色のゴム状物質8.3gを得た。得られたゴム状物質のGPC測定による数平均分子量(Mn)は57,000、分子量分布は1.58であった。さらに得られたゴム状物質について、
1H‐NMR測定を行ったところ、このゴム状物質は、エピクロロヒドリン単位97.0モル%およびグリシジルメタクリレート単位3.0モル%を含むものであることが確認できた。以上より、得られたゴム状物質は、重合開始末端にブロモメチル基を持ち、重合停止末端に水酸基を持つ、エピクロロヒドリン単位およびグリシジルメタクリレート単位により構成されたポリエーテル化合物A(平均でエピクロロヒドリン単位588個とグリシジルメタクリレート単位18個とからなる606量体)であるといえる。
【0055】
〔製造例2〕
(ポリエーテル化合物A中のエピクロロヒドリン単位の1−メチルイミダゾールによる4級化)
製造例1で得られたポリエーテル化合物A 8.0gと、1−メチルイミダゾール22.0gと、N, N−ジメチルホルムアミド16.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で144時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止し、得られた反応溶液を一部抜き取り、50℃で120時間減圧乾燥をしたところ、赤褐色の樹脂状の物質15.0gを得た。この樹脂状物質について、
1H‐NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料の製造例1で得られたポリエーテル化合物A中の全てのエピクロロヒドリン単位におけるクロロ基が、1−メチルイミダゾリウムクロリド基に、全ての重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基が、1−メチルイミダゾリウムブロミド基に、それぞれ置換された、1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Bであると同定された。得られたポリエーテル化合物Bの数平均分子量(Mn)は108,000であった。
【0056】
〔製造例3〕
(1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Bのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドによるアニオン交換)
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド26.0gを溶解させた蒸留水300mlを攪拌機付きガラス反応器に添加した。これとは別に、製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物B 5.0gを蒸留水50mlに溶解し、これを、上記ガラス反応器に滴下し室温で30分間反応させた。反応後、沈殿したゴム状物質を回収し、アセトンに溶解させた後、そのアセトン溶液を蒸留水300mlに滴下し、ポリマー凝固により無機塩を除去した。凝固により得られたゴム状物質を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄褐色のゴム状物質11.5gを得た。得られたゴム状物質について
1H‐NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料である製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Bの繰り返し単位中の1−メチルイミダゾリウムクロリド基の塩化物イオンと重合開始末端の1−メチルイミダゾリウムブロミド基の臭化物イオンの全てがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Cであると同定された。得られたポリエーテル化合物Cの数平均分子量(Mn)は259,000であった。
【0057】
〔製造例4〕
(1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Bのヘキサフルオロリン酸カリウムによるアニオン交換)
ヘキサフルオロリン酸カリウム9.7gを溶解させたアセトニトリル50mlを攪拌機付きガラス反応器に添加した。これとは別に、製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物B 5.0gをメタノール100mlに溶解し、これを、上記ガラス反応器に滴下し室温で30分間反応させた。反応後、沈殿した薄褐色ゴム状物質を回収し、アセトンに溶解させた後、そのアセトン溶液を蒸留水300mlに滴下し、ポリマー凝固により無機塩を除去した。凝固により得られたゴム状物質を50℃で12時間減圧乾燥したところ、褐色のゴム状物質8.0gが得られた。得られたゴム状物質について
1H‐NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料である製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Bの繰り返し単位中の1−メチルイミダゾリウムクロリド基の塩化物イオンと重合開始末端の1−メチルイミダゾリウムブロミド基の臭化物イオンの全てがヘキサフルオロフォスフェートアニオンに交換された、対アニオンとしてヘキサフルオロフォスフェートアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Dであると同定された。得られたポリエーテル化合物Dの数平均分子量(Mn)は175,000であった。
【0058】
〔製造例5〕
(ポリエーテル化合物A中のエピクロロヒドリン単位の1−メチルピロリジンによる4級化)
製造例1と同様にして得られたポリエーテル化合物A 4.0gと、1−メチルピロリジン11.4gと、N, N−ジメチルホルムアミド8.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で144時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止した。得られた反応溶液を一部抜き取り、50℃で120時間減圧乾燥をしたところ、薄褐色の樹脂状の物質7.7gが得られた。この樹脂状物質について、
1H‐NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料のポリエーテル化合物A中の全てのエピクロロヒドリン単位におけるクロロ基が、1−メチルピロリジニウムクロリド基に、全ての重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基が、1−メチルピロリジニウムブロミド基に、それぞれ置換された、1−メチルピロリジニウムハライド基を有するポリエーテル化合物Eであると同定された。得られたポリエーテル化合物Eの数平均分子量(Mn)は110,000であった。
【0059】
〔製造例6〕
(1−メチルピロリジニウムハライド基を有するポリエーテル化合物Eのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドによるアニオン交換)
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド26.0gを溶解させた蒸留水300mlを攪拌機付きガラス反応器に添加した。これとは別に、製造例5で得られた1−メチルピロリジニウムハライド基を有するポリエーテル化合物E 7.7gを蒸留水100mlに溶解し、これを、上記ガラス反応器に滴下し室温で30分間反応させた。反応後、沈殿した薄褐色ゴム状物質を回収し、アセトンに溶解させた後、そのアセトン溶液を蒸留水300mlに滴下し、ポリマー凝固により無機塩を除去した。凝固により得られたゴム状物質を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄褐色ゴム状物質18.0gが得られた。得られた薄褐色ゴム状物質について
1H‐NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料である製造例5で得られた1−メチルピロリジニウムハライド基を有するポリエーテル化合物Eの繰り返し単位中の1−メチルピロリジニウムクロリド基の塩化物イオンと重合開始末端の1−メチルピロリジニウムブロミド基の臭化物イオンの全てがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するピロリジニウム構造含有ポリエーテル化合物Fであると同定された。得られたポリエーテル化合物Fの数平均分子量(Mn)は261,000であった。
【0060】
〔製造例7〕
(エピクロロヒドリンのリビングアニオン重合)
アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド3.22gとトルエン100mlを添加し、これを0℃に冷却した。次いで、トリエチルアルミニウム1.370gをノルマルヘキサン10mlに溶解したものを添加して、15分間反応させて、触媒組成物を得た。得られた触媒組成物に、エピクロロヒドリン35.0gを添加し、0℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。12時間反応後、重合反応液に少量の水を注いで反応を停止した。得られた重合反応液を0.1Nの塩酸水溶液で洗浄することにより触媒残渣の脱灰処理を行い、さらにイオン交換水で洗浄した後に、有機相を50℃で12時間減圧乾燥した。これにより得られたオイル状物質の収量は34.6gであった。また、得られたオイル状物質のGPC測定による数平均分子量(Mn)は3,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。さらに得られたオイル状物質について、
1H‐NMR測定を行ったところ、このオイル状物質は、繰り返し単位数(オキシラン単量体単位数)は37であった。以上より、得られたオイル状物質は、重合開始末端にブロモメチル基を持ち、重合停止末端に水酸基を持つ、エピクロロヒドリン単位により構成されたポリエーテル化合物Gであると同定された。
【0061】
〔製造例8〕
(ポリエーテル化合物G中のエピクロロヒドリン単位の1−メチルイミダゾールによる4級化)
製造例7で得られたポリエーテル化合物G 5.0gと、1−メチルイミダゾール12.1gと、アセトニトリル10.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で48時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止した。得られた反応物をトルエン/メタノール/水の等重量混合溶液にて洗浄した後、1−メチルイミダゾールおよびトルエンを含む有機相を除去して、水相を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄赤色の固体9.4gが得られた。この固体について、
1H−NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料の製造例7で得られたポリエーテル化合物G(ポリエピクロロヒドリン)の、繰り返し単位におけるクロロ基全てが1−メチルイミダゾリウムクロリド基に、重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基全てが1−メチルイミダゾリウムブロミド基に、それぞれ置換された、1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Hであると同定された。得られたポリエーテル化合物Hの数平均分子量(Mn)は6,500であった。
【0062】
〔製造例9〕
(1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Hのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドによるアニオン交換)
製造例8にて得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物H 2.5gと、リチウム(ビストリフルオロメタンスルホニル)イミド4.1gと、イオン交換水20mLとを攪拌機付きガラス反応器に添加した。室温で30分間反応させた後、50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固液混合物を水で洗浄して無機塩を除去した後、トルエンで液相を抽出した。得られたトルエン溶液を50℃で12時間減圧乾燥したところ、粘性液状物質5.7gが得られた。得られた粘性液状物質について
1H−NMRスペクトル測定と元素分析を行ったところ、出発原料である製造例8にて得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Hの、塩化物イオンおよび臭化物イオンの全てが、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Iであると同定された。得られたポリエーテル化合物Iの数平均分子量(Mn)は15,500であった。
【0063】
〔製造例10〕
(ポリエーテル化合物G中のエピクロロヒドリン単位の1−メチルイミダゾールによる4級化)
製造例7で得られたポリエーテル化合物G 5.0gと、1−メチルイミダゾール6.1gと、アセトニトリル10.0gとを、アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に添加し、80℃に加熱した。80℃で48時間反応させた後、室温に冷却し反応を停止した。得られた反応物をトルエン/メタノール/水の等重量混合溶液にて洗浄した後、1−メチルイミダゾールおよびトルエンを含む有機相を除去して、水相を50℃で12時間減圧乾燥したところ、薄赤色の固体6.4gが得られた。この固体について、
1H−NMR測定および元素分析を行ったところ、出発原料のポリエーテル化合物G(ポリエピクロロヒドリン)の、繰り返し単位におけるクロロ基のうち一部(30モル%)が1−メチルイミダゾリウムクロリド基に、重合開始末端のブロモメチル基のブロモ基が1−メチルイミダゾリウムブロミド基に、それぞれ置換された、1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Jであると同定された。得られたポリエーテル化合物Jの数平均分子量(Mn)は4,300であった。また、1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ30モル%であり、クロロメチル基を有するオキシラン単量体単位の含有率は70モル%であった。
【0064】
〔製造例11〕
(1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Jのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドによるアニオン交換)
製造例10にて得られたポリエーテル化合物J 2.5gと、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4.1gと、イオン交換水20mLとを攪拌機付きガラス反応器に添加した。室温で30分間反応させた後、50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固液混合物を水で洗浄して無機塩を除去した後、トルエンで液相を抽出した。得られたトルエン溶液を50℃で12時間減圧乾燥したところ、粘性液状物質4.2gが得られた。得られた粘性液状物質について
1H−NMRスペクトル測定と元素分析を行ったところ、出発原料である製造例10にて得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するポリエーテル化合物Jの、塩化物イオンおよび臭化物イオンの全てが、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンに交換された、対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Kであると同定された。得られたポリエーテル化合物Kの数平均分子量(Mn)は7,300であった。また、1−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド基を有するオキシラン単量体単位の含有率を測定したところ30モル%であり、クロロメチル基を有するオキシラン単量体単位の含有率は70モル%であった。
【0065】
〔実施例1〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃における粘度:34mPa・s、分子量:391.31)100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 25部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0066】
〔実施例2〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 25部と、架橋剤としての2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(商品名「Irgcure(R) 379EG」、BASF社製)0.5部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。得られたイオン性組成物に、UV照射を行ったところ、液状であったイオン性組成物はゲル状の架橋物となった。そして、得られた架橋物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たない架橋物が得られたことが確認できた。また、得られた架橋物について、上記した形状保持性試験を行ったところ、23℃、湿度40%の環境にて24時間静置した後においても、自重でのイオン液体のブリードは観測されず、形状保持性に優れたものであった。
【0067】
〔実施例3〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例4で得られた対アニオンとしてヘキサフルオロフォスフェートアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物D 25部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Dに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0068】
〔実施例4〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例6で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するピロリジニウム構造含有ポリエーテル化合物F 25部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Fに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0069】
〔実施例5〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(25℃における粘度:38mPa・s、分子量:197.97)100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 25部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0070】
〔実施例6〕
イオン液体としての1−ブチル―1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃における粘度:71mPa・s、分子量:422.41)100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 25部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−ブチル―1−メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0071】
〔実施例7〕
イオン液体としてのN−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃における粘度:55mPa・s、分子量:416.36)100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 25部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、N−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0072】
〔実施例8〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 5部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0073】
〔実施例9〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 10部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0074】
〔実施例10〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 100部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0075】
〔実施例11〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 400部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0076】
〔実施例12〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例9で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物I 25部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Iに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0077】
〔実施例13〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例11で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物K 100部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。そして、得られたイオン性組成物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Kに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たないイオン性組成物が得られたことが確認できた。
【0078】
〔実施例14〕
イオン液体としての1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃における粘度:51mPa・s、分子量:419.36)100部と、製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物C 25部と、架橋剤としての2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン0.5部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。得られたイオン性組成物に、UV照射を行ったところ、液状であったイオン性組成物はゲル状の架橋物となった。そして、得られた架橋物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たない架橋物が得られたことが確認できた。また、得られた架橋物について、上記した形状保持性試験を行ったところ、23℃、湿度40%の環境にて24時間静置した後においても、自重でのイオン液体のブリードは観測されず、形状保持性に優れたものであった。
【0079】
〔実施例15〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド100部と、製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物B 25部と、架橋剤としての2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン0.5部とを、アセトン中で混合した。次いで、溶媒を留去し、透明なイオン性組成物を得た。得られたイオン性組成物に、UV照射を行ったところ、液状であったイオン性組成物はゲル状の架橋物となった。そして、得られた架橋物について、DSC測定を行ったところ、−80℃から100℃の間において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点は観測されず、またポリエーテル化合物Bに由来するガラス転移点も観測されず、融点とガラス転移点を持たない架橋物が得られたことが確認できた。また、得られた架橋物について、上記した形状保持性試験を行ったところ、23℃、湿度40%の環境にて24時間静置した後においても、自重でのイオン液体のブリードは観測されず、形状保持性に優れたものであった。
【0080】
〔比較例1〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドについて、ポリエーテル化合物を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点が−16.5℃に観測された。
【0081】
〔比較例2〕
イオン液体としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートについて、ポリエーテル化合物を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートに由来する融点が14.1℃に観測された。
【0082】
〔比較例3〕
イオン液体としての1−ブチル―1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドについて、ポリエーテル化合物を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、1−ブチル―1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点が−7.5℃に観測された。
【0083】
〔比較例4〕
イオン液体としてのN−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドについて、ポリエーテル化合物を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、N−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点が−16.0℃に観測された。
【0084】
〔比較例5〕
製造例3で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Cについて、イオン液体を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、ポリエーテル化合物Cに由来するガラス転移点が−11.3℃に観測された。
【0085】
〔比較例6〕
製造例4で得られた対アニオンとしてヘキサフルオロフォスフェートアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Dについて、イオン液体を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、ポリエーテル化合物Dに由来するガラス転移点が63.1℃に観測された。
【0086】
〔比較例7〕
製造例6で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するピロリジニウム構造含有ポリエーテル化合物Fについて、イオン液体を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、ポリエーテル化合物Fに由来するガラス転移点が−10.4℃に観測された。
【0087】
〔比較例8〕
製造例9で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Iについて、イオン液体を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、ポリエーテル化合物Iに由来するガラス転移点が−12.7℃に観測された。
【0088】
〔比較例9〕
製造例11で得られた対アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Kについて、イオン液体を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、ポリエーテル化合物Kに由来するガラス転移点が−33.5℃に観測された。
【0089】
〔比較例10〕
イオン液体としての1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドについて、ポリエーテル化合物を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに由来する融点が−1.1℃に観測された。
【0090】
〔比較例11〕
製造例2で得られた1−メチルイミダゾリウムハライド基を有するイミダゾリウム構造含有ポリエーテル化合物Bについて、イオン液体を混合せず、そのままの状態にて、−80℃から100℃の間においてDSC測定を行ったところ、ポリエーテル化合物Bに由来するガラス転移点が90℃に観測された。
【0091】
表1に、実施例1〜15、比較例1〜11の結果をまとめて示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、イオン液体と、カチオン性基を有するポリエーテル化合物とを含むイオン性組成物、およびこれを用いて得られる架橋物は、−80℃から100℃の間において、いずれもイオン液体に由来する融点は観測されず、さらには、カチオン性基を有するポリエーテル化合物に由来するガラス転移点も観測されず、いずれも低温特性に優れている(低温とした場合でも、大きな特性の変化が起こらない)ことが確認できる(実施例1〜15)。