(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記左眼用画像領域の領域中心と前記右眼用画像領域の領域中心との距離と、前記左眼用光学ユニットの光軸と前記右眼用光学ユニットの光軸との距離との少なくとも一方の距離を可変する距離可変部を含み、
前記表示部は、前記距離可変部によって前記少なくとも一方の距離が可変された状態で前記左眼用画像領域及び前記右眼用画像領域を提示する
請求項1に記載の画像表示装置。
前記距離可変部は、前記両眼に生じさせる輻輳角を大きくする場合、前記左眼用画像領域の領域中心と前記右眼用画像領域の領域中心との距離を、現在の第1距離から前記第1距離より大きい第2距離に変更する
請求項2に記載の画像表示装置。
前記距離可変部は、前記左眼用画像領域の領域中心と前記右眼用画像領域の領域中心との距離が大きくなるに従って輻輳角が大きくなるように、前記左眼用画像領域の領域中心と前記右眼用画像領域の領域中心との距離を可変する
請求項2に記載の画像表示装置。
前記輻輳角調整機構は、前記光学素子によってリレーされる前記射出瞳の瞳面に対する前記光学ユニットの光軸の入射角が変わるように、前記表示部及び前記光学ユニットを移動させることによって前記輻輳角を調整する
請求項10から請求項14の何れか一項に記載の画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
開示の技術は、画像を表示する装置であれば開示の技術に係る画像表示装置は適用可能であり、また、画像を表示する装置を備えたシステムであれば開示の技術に係る画像表示システムは適用可能である。本実施形態では、以下の説明を簡単にするため、画像を表示する画像表示装置を備えた画像表示システムの一例として、眼科における眼の診断及び眼への外科的処置を目的として患者等の眼(以下、被検眼という。)及び被検眼周辺を医師等の観察者が観察する眼科装置に適用した眼科システムを説明する。
【0014】
なお、以下の説明では画像表示システムの一例を説明するが、開示の技術は、眼科装置に適用した眼科システムに限定されるものではない。すなわち、眼科用に被検眼及び被検眼周辺を撮影する撮影装置による撮影画像を表示する画像表示装置に限定されず、眼科用に限定されない対象物を撮影して、撮影した画像を表示する画像表示装置、及び画像表示システムに適用可能である。例えば、医学の分野で言えば、医学の何れかの分科に用いられる画像表示装置及び画像表示システムにも適用可能である。そして、開示の技術は、医学の何れかの分科に用いられる画像表示装置及び画像表示システムにも限定されるものでもなく、画像を表示することが可能な画像表示装置及び画像表示システムへの適用が可能であることは言うまでもない。
【0015】
また、本実施形態では、被検眼及び被検眼周辺を撮影装置により撮影した画像を撮影画像として用い、その撮影画像を表示する場合に、開示の技術を適用した場合の一例を説明するが、撮影画像は静止画像であってもよく、また動画像であってもよい。また、本実施形態で用いる画像は、撮影画像に限定されるものでない。すなわち、撮影装置により撮影した画像を撮影画像として用いることは開示の技術の一例である。例えば、予め準備した画像を表示する画像表示装置及び画像表示システムに対しても開示の技術は適用可能である。
【0016】
さらに、眼科システムの適用例としては、被検眼及び被検眼周辺を医師等の観察者が観察しながら施術する際に用いる眼科手術用顕微鏡が挙げられる。この眼科手術用顕微鏡の適用も、開示の技術に係る画像表示システムの一例であり、医学の分野で言えば、医学の何れかの分科に用いられる手術用顕微鏡にも適用可能である。そして、開示の技術に係る画像表示システムは、医学の分野に用いられる手術用顕微鏡にも限定されるものでもなく、対象物を観察するための顕微鏡を含む他の光学装置への適用が可能であることは言うまでもない。
【0017】
図1に、本実施形態に係る眼科システム10の構成の一例を示す。
図1に示すように、眼科システム10は、生物の組織を含む対象物OBとしての被検眼及び被検眼周辺を撮影する撮影部20と、撮影部20で撮影した撮影画像を表示するディスプレイ等の表示部30と、表示部30の撮影画像を観察者OP用に表示する表示装置40を含む。眼科システム10は、観察対象者の被検眼及び被検眼周辺を撮影部20で撮影し、撮影した撮影画像を表示部30に形成し、当該撮影画像を観察者OP用に表示装置40で表示する。表示装置40にはディスプレイ等の表示部30が着脱可能に取り付けられており、表示部30を備えた表示装置40が形成されている。
【0018】
撮影部20は、顕微鏡22、カメラ24、及びカメラコントローラ26を備える。顕微鏡22は、対象物OBである被検眼及び被検眼周辺を観察させるための光学系である。カメラ24は、対象物OBである被検眼及び被検眼周辺の顕微鏡22による像を映像信号に変換する電子機器である。カメラコントローラ26は、映像信号をディスプレイ信号に変換して出力する電子機器である。カメラコントローラ26は、液晶モニタ等で代表される表示部30に接続されており、ディスプレイ信号を表示部30へ出力する。これにより、表示部30にはカメラ24で撮影された画像が撮影画像Imとして形成される。観察者OPは、表示装置40により表示された画像を目視しながら、顕微鏡22を操作して対象物OBである被検眼及び被検眼周辺の観察位置を設定する。
【0019】
表示装置40は、光学ユニット42及び反射部44を備える。光学ユニット42は、開示の技術の光学ユニットの一例であり、入射された撮影画像Imからの光を少なくとも屈折させて射出する対物レンズとして機能する(詳細は後述)。反射部44は、筐体46及び反射部材48を含む。表示装置40は、図示を省略した台座に取り付けられており、撮影部20から独立して形成され、かつ観察者OPに対して非接触に形成される。表示装置40が観察者OPに対して非接触に形成されることによって、表示装置40への観察者OPの接触により生じる観察者OPの違和感が抑制される。
【0020】
また、眼科システム10では、撮影部20と、表示部30を備えた表示装置40とが独立して形成され、各々別々に移動可能になっている。従って、観察者OPが対象物OB(例えば被検眼及び被検眼周辺)を表示装置40で目視しながら観察位置変更のために撮影部20を移動した場合であっても、表示装置は移動しないので、観察者OPは頭部を移動することなく撮影画像Imを目視可能である。このことは、撮影部20に眼科手術用顕微鏡を適用した場合等に有効に作用する。例えば、術野を移動しながら施術する場合に、医者等の観察者OPは、目視する位置を変更することなく、術野を視認しつつ施術に集中できる。また、撮影部20と、表示部30を備えた表示装置40とを独立形成可能とすることで、撮影部20は対象物OBを撮影できればよく、撮影部自体の形状の自由度が増加される。
【0021】
なお、撮影部20及び表示部30は、有線接続による有線通信により情報を授受してもよく、無線接続による無線通信により情報を授受してもよい。撮影部20と表示部30との間で授受する情報は、アナログ信号の信号劣化に起因する画質劣化を抑制するため、デジタルの情報であることが好ましい。デジタルの情報の一例には、撮影画像Imを示すデジタル信号、デジタルデータ、及び画像データが挙げられる。例えば、撮影部20と表示部30との間で授受する情報の一例がディスプレイ信号であり、ディスプレイ信号としてデジタル信号を用いることが好ましい。また、撮影部20と表示部30との間で情報を授受するタイミングは、リアルタイムによるタイミング、断続的なタイミング、及び不定期のタイミングの何れでもよい。リアルタイムにより、デジタル情報を授受することで、例えば、観察者OPは、顕微鏡22により撮影した画像を表示部30で実時間で参照可能になる。また、断続的なタイミングで情報を授受する一例には、顕微鏡22により撮影した画像を示す画像データを、分割して授受することが挙げられる。このようにすることで、授受するデジタルデータの情報量を抑制可能になる。また、不定期のタイミングで情報を授受する一例には、撮影済の画像を示す画像データを授受することが挙げられる。撮影済みの画像を示す画像データを授受する場合、図示しない記録装置に画像データを格納しておき、格納された画像データを読み取るようにすればよい。
【0022】
また、撮影部20と表示部30との間で授受する情報は、撮影部20から表示部30へ出力されるデジタルのディスプレイ信号に限定されるものではない。例えば、撮影部20の動作情報を含めてもよい。動作情報の一例には、撮影部20に含まれる顕微鏡22の光学倍率等、カメラ24の電気倍率、及びカメラコントローラ26のビットレート等の少なくとも1つの機器の動作状況を示す情報が挙げられる。また、撮影部20と表示部30との間で授受する情報は、表示部30から撮影部20へ出力する情報でもよい。表示部30から撮影部20へ出力する情報の一例には、顕微鏡22の光学倍率変更指示等、カメラ24の電気倍率変更指示等、及びカメラコントローラ26のビットレート変更指示等のコマンドを示す命令情報が挙げられる。
【0023】
なお、以下の説明では、眼科システム10が地面に平行な水平面に設置された場合に観察者OPの眼幅方向を「Y方向」、眼科システム10が設置された水平面に対する垂直方向を「X方向」とし、対象物OBの画像を観察者OPが目視する際の光が観察者OPに向かう方向を「Z方向」とする。
【0024】
本実施形態に係る眼科システム10は、観察者OPが対象物OBである眼(被検眼)及び被検眼周辺を、観察者OPの両眼にて目視(立体視)する場合を一例として説明する。
観察者OPの両眼にて立体視させる場合、視差を有する2枚の画像の各々を左眼用及び右眼用に提示する場合が考えられる。本実施形態では、カメラ24は、視差を有する2枚の画像の各々を得るために、独立した左眼用のカメラ24Lと右眼用のカメラ24Rとを備えている。左眼用のカメラ24Lは左眼用の映像信号をカメラコントローラ26へ出力し、右眼用のカメラ24Rは右眼用の映像信号をカメラコントローラ26へ出力する。
【0025】
左眼用のカメラ24Lと右眼用のカメラ24Rとによる立体視用の画像を表示部30に形成する場合、複数の手法が挙げられる。例えば、表示部30に左眼用画像と右眼用画像を独立して撮影画像Imを形成する場合、及び表示部30に左眼用画像と右眼用画像を合成して撮影画像Imを形成する場合が挙げられる。
【0026】
図2A、
図2B、
図2Cに、立体視用の撮影画像と表示装置との関係の一例を示す。
図2Aは左眼用画像及び右眼用画像の各々を独立した表示部で表示する場合を模式的に示している。
図2Bは、左眼用画像及び右眼用画像の各々を1つの表示部で表示する場合を模式的に示している。
図2Cは、左眼用画像の成分と右眼用画像の成分とを含ませた1枚の画像を1つの表示部で表示する場合を模式的に示している。
【0027】
図2Aに示す例では、表示部30は、左眼用の表示部30L及び右眼用の表示部30Rを備え、左眼用表示機能として、撮影部20のカメラ24Lによる画像が撮影画像ImLとして表示部30Lに形成された場合を示している。撮影画像ImLは、左眼用の光学ユニット42L及び反射部材48を介して観察者OPの左眼へ至る。同様に、右眼用表示機能として、撮影部20のカメラ24Rによる画像が撮影画像ImRとして表示部30Rに形成され、撮影画像ImRは、右眼用の光学ユニット42R及び反射部材48を介して観察者OPの右眼へ至る。
また、
図2Aに示す例では、左眼用の撮影画像ImLの画像中心GoLと右眼用の撮影画像ImRの画像中心GoRとの間の距離Lwが眼幅に対応するように、左眼用の撮影画像ImLと右眼用の撮影画像ImRとの各々位置が設定される。
【0028】
図2Bに示す例では、カメラ24Lによる撮影画像ImLと、カメラ24Rによる撮影画像ImRとが、表示部30に形成された場合を示している。
図2Bに示す例では、左眼用の撮影画像ImLの画像中心GoLと右眼用の撮影画像ImRの画像中心GoRとの間の距離Lwが眼幅(例えば、観察者OPの左眼の瞳孔中心と、右眼の瞳孔中心との距離)に対応するように、左眼用の撮影画像ImLと右眼用の撮影画像ImRとの各々位置が設定される。
【0029】
図2Cに示す例では、カメラ24Lによる画像成分と、カメラ24Rによる画像成分とを合成した撮影画像Imが、表示部30に形成された場合を示している。ここでいう画像成分とは、撮影画像Imの一部を形成するための情報であり、例えば、カメラからの画像信号である。すなわち、カメラ24Lの画像信号による撮影画像ImLと、カメラ24Rの画像信号による撮影画像ImRとが左右に配置されるように合成されることで、1つの撮影画像Imが形成される。
図2Cに示す例では、左眼用の撮影画像ImLに対応して、左眼用の撮影画像が支配的な左眼用領域ImaLに左眼用の撮影画像が形成される。左眼用の撮影画像が支配的な左眼用領域ImaLとは、カメラ24Lの画像信号による撮影画像ImLを配置するために、撮影画像Imの一部に予め定めた領域である。また、右眼用の撮影画像ImRに対応して、右眼用の撮影画像が支配的な右眼用領域ImaRに右眼用の撮影画像が形成される。なお、
図2Cに示す例では、撮影画像Imの画像中心は画像中心Goになるが、左眼用の撮影画像ImLが支配的な左眼用領域ImaLの領域中心GoaLと右眼用の撮影画像ImRが支配的な右眼用領域ImaRの領域中心GoaRとの間の距離Lwが眼幅に対応するように、左眼用領域ImaLと右眼用領域ImaRとの各々位置が設定された撮影画像Imが形成される。
【0030】
なお、本実施形態では、以下の説明を簡単にするため、観察者OPの右眼用の光路と、左眼用の光路とを独立して形成する眼科システム10を一例として説明する。すなわち、眼科システム10は、観察者OPの左眼用の光路と、右眼用の光路とを独立して形成する。例えば、撮影部20は右眼用のカメラ24R及び左眼用のカメラ24を含み、表示部30は右眼用の表示部30R及び左眼用の表示部30Lを含み(
図3A〜
図3Cも参照)、表示装置40は表示部30Rに表示された右眼用の撮影画像ImRを観察者OPの右眼に提示する右眼用表示機能と、表示部30Lに表示された左眼用の撮影画像ImLを観察者OPの左眼に提示する左眼用表示機能を含む。なお、以下の説明では、右眼用と左眼用とに区別して説明する必要がない場合には、R,Lの符号を省略して説明する。
【0031】
図3A、
図3B、
図3Cに、表示装置40の構成の一例を示す。
図3Aは表示装置40の側面図を示し、
図3Bは正面図を示し、
図3Cは上面図を示している。なお、
図3に示す例では、反射部44は、右眼用及び左眼用に共通の反射部(この場合、1つの反射部44)を用いた場合の例を示している。
図3A〜
図3Cに示すように、表示装置40は、右眼用表示機能として、カメラ24Rによる画像として表示部30Rに形成された撮影画像ImRを、右眼用の光学ユニット42L及び反射部44の反射部材48を介して観察者OPの右眼用として観察者OPと反射部44との間の空間に表示する。また、表示装置40は、左眼用表示機能として、カメラ24Lによる画像として表示部30Lに形成された撮影画像ImLを、左眼用の光学ユニット42L及び反射部44の反射部材48を介して観察者OPの左眼用として観察者OPと反射部44との間の空間に表示する。
【0032】
また、
図3Bに示すように、表示装置40は、右眼用の射出瞳(右眼瞳)ExpRと、左眼用の射出瞳(左眼瞳)ExpLを、表示装置40の光の射出側、すなわち、観察者OPの前方(例えば、表示装置40の外部空間であって、観察者OPの眼と反射部44との間の光路を含む空間)に形成する。なお、以下の説明では、右眼用の射出瞳ExpRと、左眼用の射出瞳ExpLとについて、左右を区別して説明する必要がない場合には、総称して「射出瞳Exp」という。
【0033】
本実施形態に係る眼科システム10は、視差に対応する右眼用のカメラ24Rにより撮影した画像を表示部30Rに撮影画像ImRとして形成し、光学ユニット42R及び反射部材48を介して表示する。また、視差に対応する左眼用のカメラ24Lにより撮影した画像を表示部30Lに撮影画像ImLとして形成し、光学ユニット42L及び反射部材48を介して表示する。従って、視差に対応して相違する右眼用の撮影画像ImR及び左眼用の撮影画像ImLの各々を観察者OPが所定の空間において右眼及び左眼で目視することにより、対象物OBを立体像として視認することができる。このように、本実施形態における眼科システム10は、表示装置40の外部空間において上記の射出瞳Expを形成することによって、接眼レンズや3Dメガネが無い構成であっても、観察者OPが所定の位置において対象物OBを立体像として視認できる構成である。
【0034】
図4に、反射部材48を介して被検眼へ光を射出する光学ユニット42の構成の一例を示す。なお、本実施系形態では、左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rは、同一構成のため、光学ユニット42として説明し、左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rの個別の説明を省略する。
図4に示すように、光学ユニット42は、撮影画像Imから順に、面番号P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10、P11の光学面を備えたレンズ系を形成している。光学面は、光学面を境界とした一方側の媒質の屈折率と他方側の媒質の屈折率とが相違する場合には屈折面となる。
【0035】
次の表1に、光学ユニット42の諸元の値を示す。
表1において、面番号mは
図4に示す光学面の面番号に対応する。また、曲率半径rは各光学面の曲率半径を示し、面間隔dは各光学面から次の光学面までの光軸上の距離を示し、屈折率ndはd線に対する屈折率を示し、分散νdはアッベ数を示している。表1に示す諸元では、曲率半径r、及び面間隔dの単位として「mm」を採用したが、光学ユニット42は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることはなく、他の単位を用いることもできる。
【0037】
なお、表1は、光学ユニット42の光軸CLを軸とした球面形状の光学面の一例であり、光学面が球面形状に限定されるものではなく、非球面形状であってもよい。
【0038】
光学ユニット42は、表示部30側の焦点距離fの焦点位置に表示部30による撮影画像ImLが位置するように設定される。これにより、光学ユニット42から射出される光は、アフォーカル系の光、すなわち、平行光となる。この光学ユニット42から射出された平行光は、表示装置40の反射部材48を通過して観察者OPの眼に到達し、観察者OPの網膜上に結像し、撮影画像Imが観察者OPに知覚される。
【0039】
光学ユニット42から射出された光は、表示装置40を介して観察者OPへ向かうが、平行光であるので、見かけの大きさ、すなわち、観察者OPが目視する撮影画像Imの大きさは変化しない。換言すれば、光学ユニット42は、撮影画像Imの大きさが変化しないように平行光を射出している。このように、平行光を射出するように光学ユニット42を形成することで、見かけの大きさが変化しない。これは、例えば、反射部44と観察者OPの眼との距離が変化しても、像の大きさが変化しないことに対応する。
【0040】
光学ユニット42により見かけの大きさが変化しないようにすることで、観察者OPが表示装置40への接近方向又は離間方向に位置(観察者OPの観察位置、観察者OPの眼の位置)が変化しても、例えば、観察者OPが頭部を光軸方向に前後に移動しても、観察する撮影画像Imの大きさが変化しない。これによって、観察者OPは、撮影画像Imの大きさに合わせて撮影画像Imを目視する姿勢を定めることに比べて、大きな姿勢の許容度が生じる。
【0041】
ところで、光学ユニット42は、瞳及び画角を最大化するため、1群のレンズで形成することは困難であり、2群以上で形成することが好ましい。しかし、光学ユニット42を構成するレンズ群を、増加するにしたがってフレアが増加する可能性が増大する。
そこで、本実施形態では、有効径の増大を抑制しつつ、瞳を大きくして観察画像範囲を大きくすることが可能な最適なレンズ構成として、3群4枚のレンズ構成を採用した。
図4に示す例では、第1群のレンズは、面番号P1、P2の光学面により形成される負パワーのメニスカスレンズであり、第2群のレンズは、面番号P3、P4の光学面により形成される正パワーの凸レンズである。そして、第3群のレンズは、面番号P5、P6、P7の光学面により形成され、負パワーのメニスカスレンズと正パワーの凸レンズとを張り合わせたレンズ群である。
【0042】
第1群のレンズと第2群のレンズは、合成焦点が正となることが好ましい。また、第3群のレンズは、張り合わせレンズが好ましい。これは、軸上色収差補正機能を有するようにするためであり、また第3群では凸レンズのアッベ数は凹レンズに比べて大きいことが好ましい。また、第1群のレンズと第2群のレンズは、倍率色収差補正機能を有するようにするため、第1群のレンズと第2群のレンズとの間の距離を、第2群のレンズと第3群のレンズとの間の距離より小さくすることが好ましい。
【0043】
また、光学ユニット42は、光が入射される最初の入射面(
図4に示す面番号P1の光学面)を光の入射側に凸面を向けた屈折面で形成されていることが好ましい。光学ユニット42は、入射光の主光線を光軸と平行に近づけることで、周辺減光が抑制され、また、デフォーカス時の倍率変動も抑制される。
【0044】
また、光学ユニット42は、光の射出側の最外面以降の位置に射出瞳Expが位置するように形成される。光の射出側の最外面以降の位置に射出瞳Expが位置する場合、左眼用の光学ユニット42Lの大型化が抑制される。
図4の例では、光が射出される最終レンズである面番号P7の光学面を含むレンズ以降の位置に射出瞳Expが位置するように形成されている。また、光学ユニット42からの光の射出側に位置する反射部44に最も近いレンズ以降の位置に射出瞳Expが位置するように形成するようにしてもよい。
【0045】
光学ユニット42は射出側の最外面(面番号P7の光学面と光軸CLとの交点を含む光軸CLと直交する平面)に射出瞳Expが位置した場合の一例である。しかし、射出瞳の位置は光学ユニット42の射出側の最外面に限定されるものではなく、最外面近傍に射出瞳が位置する場合であっても、光学ユニット42の大型化が抑制される。
【0046】
このように、光学ユニット42の射出側の最外面以降の位置に射出瞳Expが位置するように形成することで、射出瞳を光学ユニット42のレンズ径に対応する大きさに形成することが可能となる。
【0047】
なお、光学ユニット42Rと光学ユニット42Lとの間には、光学ユニット42R及び光学ユニット42Lの一方から他方へ至る迷光を抑制する仕切り部として機能する光抑制部を設けることができる。光抑制部は、光吸収部材を含むことが好ましい。
【0048】
また、立体視等のように観察者OPが両眼にて目視する場合、観察者OPの両眼の眼幅(Pupil Distance)PDに対応して、左右の画像を分離して表示することが好ましい。このため、左眼用の光学ユニット42Lと右眼用の光学ユニット42Rの各々のレンズ径は、眼幅PD以下にすることが好ましい。例えば、眼幅PDが65mmである観察者を標準とした場合、各々のレンズ径を65mm以下にすることが好ましい。また、眼幅PDが65mmである観察者OPに対して、ピクセルサイズが15μm以上の表示部30により撮影画像Imを形成する場合、光学ユニット42の焦点距離fは、25mm以上で100mm以下とすることが好ましい。
【0049】
また、
図1に示すように、反射部44は、筐体46及び反射部材48を含む。筐体46には、光学ユニット42が取り付けられており、筐体46の内部に光学ユニット42から射出された光が入射される。また、光学ユニット42の光の射出側には、反射部材48の入射面(反射面)が光学ユニット42の射出光軸(射出光の光軸)と交差する方向(観察者OPに向う方向)に光を反射するように筐体46に取り付けられている。反射部44は、光学ユニット42から射出された光を光学ユニット42の射出光軸と交差する方向に反射し、かつ光学ユニット42の射出瞳と共役関係にある位置を反射側に形成する。すなわち、反射部44は、光学ユニット42の射出瞳を観察者OPに向う方向である反射側に再形成することで、射出瞳をリレーする。
【0050】
本実施形態では、反射部材48の一例として、複数の反射面による複数回の反射によって、等倍の像を結像する光学結像素子48Aを用いる。
【0051】
例えば、光学結像素子48Aは、反射面が複数積層され、一方の積層端面から入射された光が反射面で反射されて他方の積層端面から出射される反射部材を複数備える。そして、複数の反射部材が、1つの反射部材の反射面と他の反射部材の反射面とが交差した向きとなり、かつ1つの反射部材の積層端面から出射された光が他の反射部材の積層端面に入射するように配置される。
【0052】
すなわち、光学結像素子48Aに入射された入射光は、複数の反射面のうち第1反射面で反射され、その反射光が第2反射面で反射されて、光学結像素子48Aから出射される。一方、光学結像素子48Aでは、第1反射面及び第2反射面が、互いの反射面が交差(直交)した向きに配置される。このように、第1反射面、及び第2反射面が平面視して直交させて配置されている場合、光学結像素子48Aへの入射光と光学結像素子48Aから出射光は、光学結像素子48Aを平面視した状態において平行になる。このため、光学結像素子48Aの入射側の物点である複数の光点の各々は、光学結像素子48Aの出射側に集束されて像点として結像される。従って、本実施形態では、反射部44は、光学ユニット42の射出瞳と共役関係にある位置に、射出瞳を再形成する。
【0053】
なお、光学結像素子48Aは、再帰素子、さらに詳細には再帰透過素子と扱うことができる。再帰反射は、直交する複数の反射面で、素子へ入射された光の方向と逆方向に光を反射する。一方、本実施形態における光学結像素子48Aは、入射光を、入射面とは反対側の面へ透過させ、その際、方向を変えて射出させる性質を有し、光束が光学結像素子の法線に直交する平面を基準として面対称に折り返される。このことは、光学結像素子が空間を折り返す際に、光学結像素子48Aの垂直方向に関しては光束の進行方向を変えない、再帰的に作用させることに対応するので、再帰透過素子と考えることができる。このように、複数の反射面を備えた再帰透過素子を用いることにより、光の減衰を抑制して光学ユニット42から射出された光を有効に利用可能である。
【0054】
光学結像素子48Aの他例には、交差する複数の反射面を単位光学系とし、その単位光学系を前記複数の反射面と交差する平面方向に複数配列した光制御パネルが挙げられる。具体的には所定の平面に略垂直な2つの鏡面を相互に略直交させた構成の単位光学系、例えば、2面コーナーリフレクタを複数並べて光制御パネルを形成する。
【0055】
図5に、表示装置40の光路の一例を示す。
図5に示すように、表示部30による対象物OBの撮影画像Imの各画素は、光学ユニット42の射出瞳Expから平行光束で射出され、光学結像素子48Aにより折り返されて射出瞳が形成されることで、瞳が再形成される。表示装置40では、光学ユニット42の射出瞳Expが光学ユニット42の光の射出側の最外面の位置に射出瞳Expが形成され、アイポイントEptを形成している。アイポイントEptとは、光学ユニット42から射出される光の全ての画角を網羅して目視可能な範囲である。
図5に示す例では、光軸方向に射出瞳Expから距離Lzの範囲がアイポイントEptになっている。
【0056】
一方、光学結像素子48Aにより折り返されて共役な射出瞳Expが形成されることで、瞳が再形成される。従って、光学ユニット42の光の射出側のアイポイントEptと共役なアイポイントEpt1が形成され、さらに、光の進行方向にアイポイントEpt2が形成される。これにより、観察者OPが観察可能なアイポイントがアイポイントEpt1及びアイポイントEpt2になり、アイポイントEptと比べて2倍の範囲にアイポイントを形成できる。すなわち、空間に射出瞳Expを形成することで、射出瞳Expの内側(観察者OPより離間する方向のアイポイントEpt1)と外側(射出瞳Expから観察者OPに向うアイポイントEpt2)に、アイポイントが形成され、射出瞳Expの外側にアイポイントが形成される一般的な観察装置と比べて、2倍の範囲にアイポイントを形成できる。従って、観察者OPの眼の位置、すなわち観察者OPの頭部の位置を移動できる範囲を、2倍の範囲に拡張することができる。これにより、観察者OPの頭部の位置を定める許容範囲を拡大でき、観察者OPの頭部位置設定の自由度を向上させることができる。
【0057】
図5に示す例では、光軸CLを含む平面における表示装置40の光路を示し、光学ユニット42から射出される光の全ての画角を網羅して目視可能な範囲をアイポイントEptとして示した。一方、光学ユニット42から射出される光は、光軸CLを軸とする回転対称の光束である。従って、上記のアイポイントEptは、光軸CLを軸とする略円錐形状の領域であるアイボックスとみなすことができる。
【0058】
また、本実施形態では、光学ユニット42における光の射出側の最外面の位置に射出瞳Expが位置するように形成される。すなわち、表示装置40における射出瞳Expは、右眼用の射出瞳と、左眼用の射出瞳とが形成される。これにより、光学ユニット42の射出瞳を光学ユニット42のレンズ径に対応する大きさに形成することが可能となり、右眼用の射出瞳及び左眼用の射出瞳の各々の直径は、光学ユニット42のレンズ径に対応する大きさまで拡張することができる。所定の空間において、これらの射出瞳内に観察者OPの各々の眼を位置するようにすれば、観察者OPの左眼用の撮影画像ImL及び右眼用の撮影画像ImRの各々を観察者OPは視認することができる。従って、本実施形態の眼科システム10では、従来の両眼視の顕微鏡に装備されている眼幅PDを調整する機構は不要である。
【0059】
ところで、上述のように、光学ユニット42によるアイポイントEptと共役なアイポイントEpt1とアイポイントEpt2とからなるアイボックスにより、観察者OPの観察可能範囲が拡張されて、観察者OPの眼の位置、すなわち観察者OPの頭部の位置を移動できる範囲が拡張される。
ところが、観察者OPは、対象物を観察可能である限り観察者OPの頭部を表示装置40、特に反射部44へ接近する可能性がある。観察者OPが頭部を反射部44へ接近させた場合には、観察者OPの頭部が反射部44に接触する可能性が増大する。
そこで、反射部44と、アイボックスとの間の距離を適正に設定することが好ましい。具体的には、反射部材48(光学結像素子48A)により折り返されて再形成される瞳の位置は、
d
0 >(1+tanθ/tanΨ)
2・(φ/2tanθ)
の条件式に適合することが好ましい。
なお、Ψは、設置された反射部材48と光軸CLと成す角度であり、θは視野角の半角であり、φは瞳の直径であり、d
0 は、瞳から光軸CLと反射部材48との交点までの距離である。
【0060】
具体的には、反射部材48が等倍(1:1)の大きさで瞳を再形成する場合、瞳と反射部材48との距離をd
0 に設置することを希望する際、光学ユニット42の射出瞳と反射部材48との距離をd
0 にすればよい。この場合、角度θ、角度Ψの範囲は、0度<θ<90度、 0度<Ψ<90度の範囲である。
【0061】
次に、上記条件式で示した再形成される瞳の位置に関して、反射部材48(光学結像素子48A)と瞳との関係を用いて検証する。
図6に、反射部材48と、瞳とに関する光路の一例を示す。
図6に示すように、反射部材48により折り返されて共役な射出瞳Expが形成されることで、瞳が再形成される。
図6に示す例では、射出瞳Expの瞳面が示されている。また、
図6に示す例では、反射部材48を、光軸CLと成す角度を角度Ψで設置した場合が示されている。
【0062】
この場合に、視野角の半角を角度θ、瞳の直径を瞳径φとし、瞳中心に、観察者OPの眼Eyeの瞳孔を位置させた場合(
図6に示す位置Pz
0 に)、光軸CLと反射部材48の交点を点A
0 、最大画角θと反射部材48との交点を点B
0 とする。また、Z方向に瞳面から点A
0 までの距離を距離d
0 とし、Z方向に瞳面から点B
0 までの距離を距離a
0 とする。
点B
0 から光軸CLまでの距離h
0 は、角度Ψに基づいて、次に示す(1)式で表すことができる。
h
0 =(d
0 −a
0 )tanΨ ・・・(1)
また、角度θに基づくと、次に示す(2)式で表すことができる。
h
0 =a
0 ・tanθ ・・・(2)
(1)式と(2)式から、瞳から点A
0 までの距離d
0 は、次に示す(3)式で表すことができる。
d
0 =(1+tanθ/tanΨ)・a
0 ・・・(3)
【0063】
瞳の上端の位置Pz
1 に瞳孔を設置したとき、瞳面から最も近い位置までの距離a
1 は距離a
0 を用いて、次に示す(4)式で表すことができる。
a
1 =a
0 −φ/2tanΨ ・・・(4)
(4)式を、距離a
0 で書き直すと、次に示す(5)式で表すことができる。
a
0 =a
1 +φ/2tanΨ ・・・(5)
このことから、瞳面から点A
0 までの距離d
0 と、瞳面から最も近い位置までの距離a
1 との関係は、(5)式を(3)式に代入し、次に示す(6)式で表すことができる。
d
0 =(1+tanθ/tanΨ)・(a
1 +φ/2tanΨ)
・・・(6)
【0064】
次に、アイボックスの反射部材48側の限界値(前方限界値)について説明する。
アイボックスの反射部材48側の限界値(前方限界値)は、Z軸方向(光軸方向)に射出瞳Expからの距離Lzである。したがって、距離Lzは、視野角の半角である角度θ、及び瞳の直径である瞳径φを用いて、次に示す(7)式で表すことができる。
Lz=φ/2tanθ ・・・(7)
【0065】
ここで、上述したように、観察者OPの眼の位置は、瞳面を中心として、光軸方向に距離Lzの範囲で前後することが可能である。ところで、上述の瞳面から最も近い位置までの距離a
1 が、距離Lzと一致または距離Lzより短い場合(a
1 ≦Lz)、観察者OPの頭部が反射部材48に接近し、接触する虞がある。
そこで、瞳面から最も近い位置までの距離a
1 は、次の(8)式に示すように、距離Lzより長く設定することが好ましい。
a
1 >Lz ・・・(8)
【0066】
次に、視野角の半角である角度θ及び瞳径φと、距離Lzとの関係について説明する。
距離Lzは、視野角の半角である角度θ及び瞳径φによって定まるので、瞳面から最も近い位置までの距離a
1 及び瞳面から最も近い位置までの距離d
0 の範囲を定めることができる。次の表2に、反射部材48と瞳との位置関係の一例を示す。
【0068】
なお、表2では、a
1=Lzを条件とした場合を示したが、a
1>Lzの場合には、上記(6)式から、次の(9)式により距離a
1 及び距離d
0 の範囲を定めることができる。
d
0 >(1+tanθ/tanΨ)
2・(φ/2tanθ) ・・・(9)
【0069】
すなわち、a
1>Lzの場合、Lz=(φ/2tanθ)であるので、上記(6)は、次に示すように展開できる。
d
0 >(1+tanθ/tanΨ)・(a
1 +φ/2tanΨ)
=(1+tanθ/tanΨ)・{(φ/2tanθ)+(φ/2tanΨ)}
=(1+tan θ/tanΨ)・(1+tanθ/tanΨ)・(φ/2tanθ)
=(1+tanθ/tanΨ)
2・(φ/2tanθ)
【0070】
次に、反射部材48を、光軸CLとの成す角度Ψを45度に設定した場合の具体的な一例を説明する。
上記の(1)式は、(10)式で表すことができる。
h
0 =d
0 −a
0 ・・・(10)
この(10)式と、角度θに基づく上記の(2)式を用いて、瞳から点A
0 までの距離d
0 を示す(3)式は、次に示す(11)式で表すことができる。
d
0 =(1+tanθ)・a
0 ・・・(11)
【0071】
また、上記の(4)式は、次に示す(12)式で表すことができ、(5)式は、次に示す(13)式で表すことができる。
a
1 =a
0 −φ/2 ・・・(12)
a
0 =a
1 +φ/2 ・・・(13)
このことから、上記(6)式は、次に示す(14)式に簡略化できる。
d
0 =(1+tanθ)・(a
1 +φ/2) ・・・(14)
【0072】
次に、角度Ψを45度に設定した場合における距離a
1 及び距離d
0 の範囲について説明する。次の表3に、反射部材48と瞳との位置関係の一例を示す。
【0074】
なお、表3では、a
1=Lzを条件とした場合を示したが、a
1>Lzの場合には、上記(14)式から、次の(15)式により距離a
1 及び距離d
0 の範囲を定めることができる。
d
0 >(1+tanθ)
2・(φ/2tanθ) ・・・(15)
また、上記の一例は、視野角の半角である角度θ=24度、及び瞳径φ=50の場合の一例であり、d
0 =150になるため、a
1>Lzを満たしている。
【0075】
上記の条件式に適合するように、反射部材48により折り返されて再形成される瞳の位置を設定することで、反射部材48に観察者OPの頭部が接触することを抑制しつつ、観察者OPの頭部の位置を定める許容範囲を拡大でき、観察者OPの頭部位置設定の自由度を向上させることができる。
【0076】
なお、射出瞳Expの大きさ、すなわち直径は、光学ユニット42のレンズ径によって制限される。射出瞳Expの大きさを、より大きくして観察者OPが視認可能な範囲を拡張することが要求される場合、光学ユニット42のレンズ径を眼幅PDより大きくして、光学ユニット42の一部が重複する部分について、左眼用及び右眼用の光学ユニット42の少なくとも一方を削って形成すればよい。
【0077】
また、観察者OPは、観察中において対象物OBの撮影画像Imを目視する視線の変更を望む場合がある。この場合、観察者OPへ向けて表示する対象物OBの撮影画像Imの光軸を調整可能に構成すればよい。例えば、光学ユニット42の射出光軸と交差する方向の軸を中心として、アクチュエータ等を用いて反射部材48を回転可能に形成する。眼科システム10が設置された地面に平行な水平方向(例えばZ方向)に、反射部材48から射出される光の光軸が設定されている場合に、反射部材48を反時計方向に所定角度だけ回転させると、反射部材48から射出される光の光軸は2倍の角度で反時計方向に回転する。従って、観察者OPが撮影画像Imを目視する視線方向を、水平方向から下方へ変更することができる。一方、反射部材48を逆方向に回転させると、観察者OPが撮影画像Imを目視する視線方向を、水平方向から上方へ変更することができる。
【0078】
また、観察者OPが遠視眼又は近視眼である場合、眼科システム10で目視した対象物OBの撮影画像Imに焦点を合わせることが困難な場合、すなわち、撮影画像Imがぼやけて目視される場合がある。この場合、観察者OPの眼の状況に合せて視度を調整する視度調整機構を備えればよい。視度調整機構の一例は、観察者OPに対して平行光を射出させることから発散光又は収束光を射出するように形成する構成が挙げられる。例えば、観察者OPに対して平行光を射出させることから発散光又は収束光を射出するようにするため、撮影画像Imを形成する表示部30及び光学ユニット42の少なくとも一方の位置を光軸方向に沿って変更可能に視度調整機構を形成する。すなわち、視度調整機構は、撮影画像Imを形成する表示部30の位置を移動させること、光学ユニット42の位置を移動させることの少なくとも一方の移動を可能とするようにアクチュエータなどを用いて構成すればよい。なお、光学ユニット42の位置を変更すると、射出瞳の位置も変更されるので、視度調整機構は、表示部30の位置を変更する構成を含むことが好ましい。観察者OPに対して平行光から発散光に変更された光を射出させる場合(表示部30と光学ユニット42とを離間)には近視眼に対して視度が調整され、表示部30を光学ユニット42に接近させることで、遠視眼に対して視度が調整される。
【0079】
ところで、観察者OPが対象物OBである眼(被検眼)及び被検眼周辺を、観察者OPの両眼にて目視(立体視)する場合、観察者OPの眼精疲労等を招く不快感を抑制するため、観察者OPに対して所定の条件下で画像を提供できることが好ましい。
所定の条件とは、両眼視可能な輻輳角が生じるように画像を提供することである。所定の条件の一例には、第1条件として、理想的な輻輳角として焦点位置を目視する場合における左眼の視軸(視線方向の光軸)と右眼の視軸とがなす角とすること、第2条件として、立体視をするためにはそれぞれ視差を持った像を両眼で観察することが挙げられる。
そこで、本実施形態に係る眼科システム10は、反射部材48(光学結像素子48A)の光学的性質を用いて、所定の条件に適合するように、観察者OPの両眼に輻輳角を生じさせるべく画像Imを表示する。
【0080】
例えば、反射部材48は光を経由させる素子であるが、上記光学結像素子48Aを用いた場合、光学結像素子48Aの構造に起因して、光学結像素子48Aを経由する光線は、一方向の角度が維持され、一方向と直交する他方向の角度が反転される。すなわち、
図5に示す例では、観察者OP側から見てx軸方向の光線の角度は維持され、y軸方向の光線の角度は反転される。
本実施形態では、反射部材48の構造に起因する反射部材48を経由する光線の角度維持及び角度反転の光学的性質を用いて、眼幅方向であるy軸方向の光線の光路に角度を有するようにすることで、観察者OPの両眼に輻輳角を生じさせる画像Imを表示する。
【0081】
図7A、
図7Bに、観察者OPの両眼に輻輳角を生じさせる画像Imの光路の一例を模式的に示す。
図7Aは左眼用の光学ユニット42Lの光軸CLLと右眼用の光学ユニット42Rの光軸CLRとを平行にし、かつ観察者OPの眼幅に対応する距離Lwを隔てて左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rを配置した場合を示している。
【0082】
図7Aでは左眼用の光軸CLLと表示部30Lとも交点の位置に撮影画像ImLの中心が位置するようになっている。また、右眼用の光軸CLRと表示部30Rとも交点の位置に撮影画像ImRの中心が位置するようになっている。
図7Aに示すように、観察者OPが撮影画像Imを両眼で目視する光路は、平行になる。すなわち、観察者OPの左眼EyeLの目視光路は、撮影画像ImLの中心に向かい、右眼EyeRの目視光路は、撮影画像ImRの中心に向かうことで、平行になり、観察者OPの両眼に輻輳角を生じさせることが困難な状態となる。
【0083】
一方、
図7Bは、本実施形態に係る眼科システム10の表示装置40の一例を示している。
図7Bに示す例は、左眼用の光学ユニット42Lの光軸CLLから離れた位置に撮影画像ImLの中心を配置し、右眼用の光学ユニット42Rの光軸CLRから離れた位置に撮影画像ImRの中心を配置した場合を示している。本実施形態では、左眼用の表示部30L、及び右眼用の表示部30Rは、表示部用の輻輳角調整機構31によって、観察者OPの眼幅方向であるy軸方向に移動可能に形成される。左眼用の表示部30L、及び右眼用の表示部30Rの各々は、
図7Aに示す位置から互いに離間する方向に距離Lyを移動した位置に配置される。これによって、左眼用の表示部30L、及び右眼用の表示部30Rの間の距離は、距離Lwから距離Luに広げられる(Lw<Lu)。
【0084】
なお、輻輳角調整機構31は、左眼用の表示部30L及び右眼用の表示部30Rの各々を観察者OPの眼幅方向(y軸方向)に移動可能に構成すればよく、手動で移動させる機構で構成してもよい。また、輻輳角調整機構31は、コンピュータを含んで構成した制御装置(
図9参照)による制御信号に応じて移動されるように構成してもよい。
【0085】
図7Bに示すように、光学ユニット42L、42Rの間の距離が距離Lwから距離Luに広げられることによって、撮影画像ImLの中心からの光路と撮影画像ImRの中心からの光路とは光学ユニット42の射出側で交差するように内側に向う。そして、反射部材48を経由して観察者OPの両眼へ至る。ところが、反射部材48ではy軸方向の光線の角度は反転されて射出されるので、各々の光路は外側へ向かう。これによって、観察者OPが撮影画像Imを両眼で目視する光路は、観察者OPの前方で交差するように輻輳角を生じさせることが可能な状態となる。すなわち、恰も、光学ユニット42L、42Rの光軸CLL,CLRの内側に撮影画像ImL、ImRの各々を配置した状態を形成することができ、輻輳角ACを生じさせることが可能となる。
【0086】
図8に、
図7Bの状態で、観察者OPの目視状態の一例を模式的に示す。なお、
図8では、左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rの各々を単純化して描画している。
図8に示すように、観察者OPの前方で交差するように輻輳角ACを生じることが可能な状態では、光学ユニット42L、42Rの各々が内側で重なり合うような観察者OPの目視状態となり、観察者OPの焦点と輻輳角ACとに整合性を有するようになる。従って、上記第1条件と第2条件との双方を満たす眼科システム10を提供できる。
【0087】
このように、視差を有する撮影画像ImL、ImRの各々を表示するので、画像の解像度が低下することはない。また、本実施形態では、観察者OPは、無限遠に焦点を合わせ、表示部30を観察する一般に明視の距離(例えば、250mm)の像を知覚するので、輻輳角ACは不変となる。
【0088】
上記の輻輳角調整機構31は、コンピュータを含んで構成した制御装置による制御信号に基づいて駆動することができる。
【0089】
図9に、輻輳角調整機構31の駆動を制御する制御装置を、コンピュータにより実現する構成の一例を示す。
図9に示すように、制御装置として動作するコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)31A、RAM(Random Access Memory)31B、およびROM(Read Only Memory)31Cを備えた装置本体31Xを含んで構成されている。ROM31Cは、輻輳角を可変する制御を実行する輻輳角制御プログラム31Pを含んでいる。装置本体31Xは、入出力インタフェース(I/O)31Dを備えており、CPU31A、RAM31B、ROM31C、及びI/O31Dは各々コマンド及びデータを授受可能なようにバス31Eを介して接続されている。また、I/O31Dには、輻輳角調整機構31、及び観察者OPからの指示等が入力される操作部31Fが接続されている。
【0090】
装置本体31Xは、輻輳角制御プログラム31PがROM31Cから読み出されてRAM31Bに展開され、RAM31Bに展開された輻輳角制御プログラム31PがCPU31Aによって実行されることで、輻輳角を可変する制御を行う制御装置として動作する。
【0091】
図10には、コンピュータにより実現した輻輳角を可変する制御を行う制御装置における輻輳角制御プログラム31Pによる処理の流れの一例が示されている。
装置本体31Xでは、輻輳角制御プログラム31PがROM31Cから読み出されてRAM31Bに展開され、RAM31Bに展開された輻輳角制御プログラム31PをCPU31Aが実行する。
【0092】
輻輳角制御プログラム31Pの実行タイミング、すなわち、輻輳角可変のタイミングは、撮影部20の倍率変更時、術式の変更時、及び術者の変更時等が挙げられる。撮影部20の倍率変更時には、撮影部20の顕微鏡22の光学倍率が変更された場合が一例として挙げられる。また、術式の変更時には、被検眼の前眼部に対する施術から後眼部に対する施術に変更された等の術野が変更されたとき、またはその逆に術野が一例として挙げられる。さらに、術者の変更時には、施術を担当する施術者が変更された場合が挙げられる。
【0093】
まず、ステップS100では、輻輳角の変更を示す指示情報を取得する。指示情報は、観察者OPによる操作部31Fの操作によってなされる指示を示す情報である。次のステップS102では、ステップS100で取得された指示情報に基づいて、輻輳角調整機構31を駆動する制御信号を出力する。すなわち、輻輳角調整機構31によって変更される左眼用の表示部30L及び右眼用の表示部30Rの間の距離を示す制御信号が出力される。次のステップS104では、観察者OPによる操作部31Fの操作による指示が終了したか否かを判断し、肯定判断の場合はそのまま本処理ルーチンを終了する。一方、ステップS104で否定判断の場合はステップS100へ処理を戻す。
【0094】
ステップS100からステップS104の処理では、次の2つのモードの何れかを採用することが可能である。
第1モードは、観察者OPの操作部31Fによる指示毎に、例えばボタンの押下毎に、予め定めた所定量だけ左眼用の表示部30L及び右眼用の表示部30Rの間の距離が移動されるように制御信号を出力するモードである。この第1モードによって、例えば、観察者OPの両眼に生じさせる輻輳角を大きくする場合、操作部31Fによる指示毎に、現在の第1距離から前記第1距離より所定量だけ大きい第2距離に、段階的に変更される。
第2モードは、観察者OPの操作部31Fによる指示が継続されている間、例えばボタンの押下中に、左眼用の表示部30L及び右眼用の表示部30Rの間の距離が連続して移動されるように制御信号を出力するモードである。この第2モードによって、観察者OPは画像Imを目視しながら、両眼に生じさせる輻輳角を変更することが可能になる。
【0095】
ところで、反射部材48(光学結像素子48A)は、面対称に光線を集光する性質を有し、その性質に起因して、反射部材48を経由した光は、一方向の角度が維持され、一方向と直交する他方向の角度が反転される。このため、観察者OPにより目視される画像が反転し、実際と逆方向の画像が目視されてしまう場合がある。
【0096】
図11に、観察者OPの左眼用の撮影画像ImL及び右眼用の撮影画像ImRと、それらの画像を、反射部材48を介して目視した場合における観察者OPの網膜上に結像される画像との関係の一例を模式的に示す。
図11に示す例では、左眼用の表示部30Lに表示された撮影画像ImLは観察者OPの左眼EyeLの網膜上に結像されるが、上下左右が反転される。左眼用の撮影画像ImRも同様に、観察者OPの右眼EyeRの網膜上では上下左右が反転される。このため、例えば、ヘッドマウントディスプレイ装置(HMD)に用いられる画像をそのまま利用することが困難である。
そこで、本実施形態では、表示部30に表示する撮影画像Imを、観察者OPに対して適切に知覚されるように表示する。
【0097】
図12に、本実施形態に係る眼科システム10において被検眼の前眼部を撮影する場合に、表示部30に表示する撮影画像Imの一例を示す。なお、
図12では、撮影画像ImL,ImRの各々を、表示部30に表示した場合を示している。
図12に示すように、本実施形態では、表示部30に表示する撮影画像ImL,ImRの各々を、HMDの表示形式を基準として、予め反転(すなわち、180度回転)させる。なお、表示部30に表示する撮影画像ImL,ImRの各々を、予め反転(すなわち、180度回転)させる処理は、カメラコントローラ26で実行することができる。また、撮影画像ImL,ImRの各々を、表示部30L,30Rの各々に対応させて表示する場合には、表示部30L,30Rの各々を予め180度回転させてもよい。
【0098】
このように、表示部30に表示する撮影画像ImL,ImRの各々を、予め反転(すなわち、180度回転)させることによって、観察者OPに対して適切に知覚されるように撮影画像ImL,ImRの各々が表示される。
【0099】
また、被検眼を観察する場合、同一の顕微鏡22を用いて、被検眼に対する前眼部の観察と後眼部の観察との切り替えが要求される場合がある。例えば、後眼部の観察は、前眼部を観察する顕微鏡22の構成で、観察光の光路に前置レンズを挿入することで実現可能である。すなわち、顕微鏡22の観察光の光路への前置レンズの挿抜によって前眼部の観察と後眼部の観察との切り替えが可能である。前置レンズは、後眼部(例えば眼底)の一次像を顕微鏡22の光路上に形成し、2次像を再結像させるための光学系である。
【0100】
図13に、
図12に示す被検眼の前眼部を観察する顕微鏡22の被検眼側に前置レンズ25を配置して、被検眼の後眼部を観察するようにした場合に、表示部30に表示される撮影画像Imの一例を示す。
図13に示すように、
図12に示す被検眼の前眼部を観察する顕微鏡22の被検眼側に、一次像を形成するように前置レンズ25を配置して、被検眼の後眼部を観察する場合、撮影画像ImL,ImRの各々は、反転(すなわち、180度回転)された状態で撮影される。そして、撮影画像ImL,ImRの各々による視差は反転されない。このように、顕微鏡22の被検眼側に前置レンズ25を配置して被検眼の後眼部を観察する場合、表示部30に表示する撮影画像ImL,ImRの各々は、予め反転(すなわち、180度回転)させることなく、撮影画像ImL,ImRを入れ替える処理を、カメラコントローラ26で実行する。
【0101】
このように、表示部30に表示する撮影画像ImL,ImRを、入れ替えることによって、観察者OPに対して適切に知覚されるように撮影画像ImL,ImRの各々が表示される。
【0102】
なお、上記では一次像を形成する前置レンズ25を配置して被検眼の後眼部を観察する場合を説明したが、一次像を形成しない前置レンズ25を配置する場合には、前眼部の観察時と同様に、すなわち撮影画像ImL,ImRの各々を、予め反転(すなわち、180度回転)させればよい。
【0103】
上記のカメラコントローラ26は、コンピュータを含む構成で実現することができる。
図14に、カメラコントローラ26を、コンピュータにより実現する構成の一例を示す。
図14に示すように、カメラコントローラ26として動作するコンピュータは、CPU26A、RAM26B、およびROM26Cを備えた装置本体26Xを含んで構成されている。ROM26Cは、撮影画像Imを観察者OPに適切に知覚させるための画像処理を実行するが画像処理プログラム26Pを含んでいる。装置本体26Xは、入出力インタフェース(I/O)26Dを備えており、CPU26A、RAM26B、ROM26C、及びI/O26Dは各々コマンド及びデータを授受可能なようにバス26Eを介して接続されている。また、I/O26Dには、カメラ24、及び観察者OPからの指示等が入力される操作部26Fが接続されている。
【0104】
装置本体26Xは、画像処理プログラム26PがROM26Cから読み出されてRAM26Bに展開され、RAM26Bに展開されたが画像処理プログラム26PがCPU26Aによって実行されることで、撮影画像Imを観察者OPに適切に知覚させるための画像処理を行うカメラコントローラ26として動作する。
【0105】
図15には、コンピュータにより実現したカメラコントローラ26における画像処理プログラム26Pによる処理の流れの一例が示されている。
装置本体26Xでは、画像処理プログラム26PがROM26Cから読み出されてRAM26Bに展開され、RAM26Bに展開された画像処理プログラム26PをCPU26Aが実行する。
画像処理プログラム26Pの実行タイミングは、前置レンズ25の挿抜等の術式の変更時等が挙げられる。
【0106】
まず、ステップS200では、前置レンズ25の挿抜状態を示す顕微鏡情報を取得する。顕微鏡情報は、観察者OPによる操作部26Fの操作によってなされる指示を示す情報を取得してもよく、顕微鏡22に前置レンズ25の挿抜を検出するセンサを設けて、前置レンズ25の挿抜に対応するセンサ出力を顕微鏡情報として取得してもよい。次のステップS202では、撮影画像ImL,ImRの各々を取得する。次のステップS204では、ステップS200で取得された顕微鏡情報に基づいて、前置レンズ25の挿抜状態を判断する。ステップS204では、前置レンズ25が取り外されている状態の場合、前眼部の観察であるとして、肯定判断し、ステップS206へ処理を移行する。ステップS206では、前眼部の観察用の画像を表示するため、撮影画像ImL,ImRの各々を、反転(すなわち、180度回転)させる画像処理を実行し、次のステップS208で、画像処理された画像を示す映像信号を表示部30へ出力する。
【0107】
一方、前置レンズ25が装着されている状態の場合、ステップS204では、後眼部の観察であるとして、否定判断し、ステップS210へ処理を移行する。ステップS210では、後眼部の観察用の画像を表示するため、撮影画像ImL,ImRの各々の反転処理を行うことなく、撮影画像ImL,ImRを入れ替える画像処理を実行し、次のステップS212で、画像処理された画像を示す映像信号を表示部30へ出力する。
【0108】
上記では、左眼用の表示部30L、及び右眼用の表示部30Rの間の距離を広げることによって観察者OPの両眼に輻輳角ACを生じさせる状態を形成した(
図7B参照)。しかし、開示の技術は、左眼用の表示部30L及び右眼用の表示部30Rの間の距離を広げて輻輳角ACを生じさせる状態を形成することに限定されるものではない。すなわち、左眼用では、表示部30Lと光学ユニット42Lとの相対関係、そして左眼用では、表示部30Rと光学ユニット42Rとの相対関係を変更、すなわち光学ユニットの光軸から離れた位置に画像中心が配置されればよい。従って、左眼用の表示部30L、及び右眼用の表示部30Rに対して、光学ユニット42L及び光学ユニット42Rを移動するようにしてもよい。
【0109】
図16に、表示部30を備えた表示装置40の変形例として、光学ユニット42L、42Rの各々を移動させることで観察者OPの両眼に輻輳角ACを生じさせる画像Imの光路の一例を模式的に示す。
図16に示す例では、左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rは、光学ユニット用の輻輳角調整機構43によって、観察者OPの眼幅方向であるy軸方向に移動可能に形成される。左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rの各々は、眼幅の距離Lzの位置から互いに接近する方向に距離Lyを移動した位置に配置される。これによって、左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rの光軸間の距離は、距離Lwから距離Lvに狭くされる(Lv<Lw)。
図16に示す例のように眼科システム10を形成しても、
図7Bに示す例のように形成した眼科システム10と同様の効果が得られる。
【0110】
なお、光学ユニット42L、42Rの各々を移動させる場合、光学ユニット42L、42Rの各々の全体を移動させることに限定されるものではなく、光学ユニット42L、42Rの各々の少なくとも一部を移動させるようにしてもよい。
【0111】
また、上記では、表示部30または光学ユニット42を眼幅方向に移動させる場合を説明したが、表示部30及び光学ユニット42の各々を相対的に移動させるようにしてもよい。
【0112】
上記では、表示部30及び光学ユニット42の少なくとも一方を眼幅方向に移動させる場合を説明したが、開示の技術は、輻輳角ACを生じさせる状態を形成することにあるので、眼幅方向への移動に限定されるものではない。例えば、左眼用の光学ユニット42L及び右眼用の光学ユニット42Rの各々の光軸を回転、すなわち、光学ユニット42の射出側で交差するように回転する構成としてもよい。
【0113】
図17に、表示部30を備えた表示装置40の他の変形例として、表示部30及び光学ユニット42の表示セットを回転させることで観察者OPの両眼に輻輳角ACを生じさせる画像Imの光路の一例を模式的に示す。
図17に示す例では、左眼用の表示部30L及び光学ユニット42Lからなる左眼用の表示セットは、左眼用の輻輳角調整機構32Lによって、光軸が射出側で内側に向う方向(
図17では反時計回り方向)に回転可能に形成される。同様に、右眼用の表示部30R及び光学ユニット42Rからなる右眼用の表示セットは、右眼用の輻輳角調整機構32Rによって、光軸が射出側で内側に向う方向(
図17では時計回り方向)に回転可能に形成される。このように表示セットを回転することで、輻輳角ACを生じさせることが可能となる。
【0114】
ここで、表示部30と光学ユニット42との位置関係について説明する。
観察者OPが光を目視する場合、平行光は網膜上に結像することができ、発散光は眼の調節力によって網膜上に結像される。ところが、収束光は眼の調節力を用いても網膜上への結像は困難である。例えば、光学ユニット42が像面湾曲を有する場合、光学ユニット42の焦点に画像を配置すると、光軸近傍では、レンズ系から平行光が射出され、その平行光を目視する観察者OPの眼では、画像が網膜上に結像される。一方、光軸から離れた位置では、像面湾曲が作用し、光学ユニット42から収束光が射出され、観察者OPがその収束光を目視しても、画像は、網膜上に結像されない。
【0115】
一方、本実施形態に係る眼科システム10では、光学ユニット42からの射出光は、反射部材48を介して観察者OPへ到達するので、観察者OPは、目の調節によって画像を網膜上に結像させることが可能になる。
【0116】
図18に、表示部30と光学ユニット42との位置関係の一例を模式的に示す。
上述のように、反射部材48(光学結像素子48A)は光を経由させる素子であるが、構造に起因して反射部材48を経由する光線は、一方向の角度が維持され、一方向と直交する他方向の角度が反転される。すなわち、
図18に示すように、像面湾曲の作用によって反射部材48に収束光が入射された場合、射出光は発散光になる。従って、観察者OPは、目の調節によって画像を目視することが可能になる。このように、反射部材48によって収束光が発散光に逆転するので、光学ユニット42が像面湾曲を有する場合であっても、観察者OPによる画像の目視が可能になり、光学ユニット42の像面湾曲を抑止する光学設計の処理負荷を軽減できる。また、表示部30に表示される画像Imの中心を光学ユニット42の焦点位置に設定するのみの単純な作業によって眼科システム10の表示装置40を形成することが可能になる。
【0117】
次に、観察者OPが画像を目視することを支援する反射部材48の駆動について説明する。
上述のように、反射部材48は光を反射して経由させる複数の素子を有するが、その構造に起因して、例えば反射面で散乱する光を観察者OPが目視し、反射部材48の素子又は素子の一部に観察者OPが目視する焦点を合わせることで、反射部材48の素子又は素子の一部が画像目視の妨げになる場合がある。
そこで、本実施形態に係る眼科システム10は、反射部材48に観察者OPが目視する焦点を合わせることを抑制する抑制機構を備える。本実施形態では、抑制機構の一例として反射部材48を所定方向に移動させることにより観察者OPによる反射部材48への目視を抑制する。ここで、光を経由させる反射部材48における光の経由とは反射面で光を反射すること、光が通過すること、媒質を光が透過すること、屈折により光路が偏向されて光が進行することの少なくとも1つの作用により光が進む状態をいう。
【0118】
図19A、
図19Bに、抑制機構49の一例を模式的に示す。
図19Aは抑制機構49の構成の一例を示し、
図19Bは反射部材48の駆動の一例を示している。抑制機構49は、反射部材48が同じ位置に停止しないように周期的又は非周期に反射部材48を駆動させる。
【0119】
図19Aに示すように、抑制機構49は反射部材48の面の法線方向(矢印VB方向)、及び当該法線方向と交差する異なる方向(矢印VA及びVC方向)、それらの軸回りの方向のうちの少なくとも1つの方向に反射部材48が移動するように駆動させる駆動部である。なお、抑制機構49は、反射部材48の射出角が維持されるように反射部材48を駆動させることが好ましい。すなわち、抑制機構49は、反射部材48が、反射光の射出角を維持しつつ、反射部材48に対して直交する少なくとも1つの方向に移動及び中心位置オフセットを含む回転の少なくとも一方の駆動を行う。また、観察者OPが対象物を特定する際の視認周期を考慮して、周期的に反射部材48を駆動させることが好ましい。例えば、駆動周期は30Hz以上の周期に設定することが好ましい。また、反射部材48は、所定ピッチ(例えば、0.2mm)で反射面が積層されている場合、所定ピッチ(例えば、0.2mm)以下の移動量で駆動されることが好ましい。
【0120】
図19Bには、射出光が平行状態を維持しつつ反射部材48から射出可能に反射部材48の駆動の一例が示されている。
図19Bの例では、反射部材48を構成する所定ピッチのピッチ幅の偏心量を持ちながら駆動する反射部材48の駆動順序が示されている。第1状態J1は、所定のピッチ幅方向の移動に応じて変位にする反射面を維持するべく反射部材48を移動するように駆動する状態を示し、第2状態J2は、次の反射面について所定のピッチ幅方向の移動に応じて変位にする反射面を維持するべく反射部材48を移動するように駆動する状態を示す。そして、同様に第3状態J3及び第4状態J4の状態の駆動を行った後、再び第1状態J1へ戻る。これら第1状態J1から第4状態J4で反射部材48を鼓動することで、反射部材48に観察者OPが目視する焦点を合わせることが抑制される。
【0121】
抑制機構49により反射部材48を駆動させることで、反射部材48に観察者OPが目視する焦点を合わせることが抑制される。
なお、抑制機構49は、振動及び回転の少なくとも一方の駆動を行う装置の一例として、直線駆動、曲線駆動及び回転駆動の少なくとも1つの駆動を行う駆動装置が挙げられる。
【0122】
上記では、反射部材48を駆動させて反射部材48への観察者OPによる目視を抑制する一例を説明した。次に、観察者OPが目視する方向で、反射部材48を経由する先に、視認物47を配置し、反射部材48への目視を積極的に抑制する構成の一例を説明する。
光学ユニット42から射出された光は、反射部材48を通過して観察者OPの眼に到達し、観察者OPの網膜上に結像し、撮影画像Imが観察者OPに知覚される。この光学ユニット42から射出された光を遮らない位置で、観察者OPが目視可能な位置に枠などの視認物47を配置する。
【0123】
図20に、視認物47を配置した表示装置40の一例を示す。
図20は光学ユニット42から射出された光が反射部材48で反射して観察者OPの眼に到達する、反射部材48が反射型である場合の構成の一例を示している。
図20に示す例では、観察者OPの視線は、光学ユニット42へ向かう(
図20で矢印でも示した)。従って、観察者OPは、光学ユニット42の光の射出側を目視可能である。そこで、光学ユニット42の周辺で、光学ユニット42から射出された光を遮らない位置、例えば、光学ユニット42の外郭部分に枠などの視認物47を配置する。観察者OPは反射部材48の反射によって視認物47を目視することで、反射部材48への目視が抑制される。これにより、視認物47は、観察者OPの注視ターゲットとして機能する。なお、視認物47は、観察者OPが目視可能な構造物であってもよく、画像及び点光源による光点であってもよい。
また、
図21に、視認物47を配置した表示装置40のその他の例を示す。
図21は反射部材48が透過性を有する場合の構成の一例を示している。反射部材48が透過性を有する場合、観察者OPの視線は、反射部材48を通過してそのまま直進する(
図20で矢印でも示した)。そこで、観察者OPの視線方向の先で、光学ユニット42から射出された光を遮らない位置、例えば、筐体46の内側の所定位置に枠などの視認物47を配置する。観察者OPは透過型の反射部材48を通過して視認物47を目視することで、反射部材48への目視が抑制される。
【0124】
ところで、表示装置40には筐体46の内部に進入した外乱光(例、装置の漏れ光、室内光、自然光等)の光の散乱によって撮影画像Imのコントラストが低下して目視される場合がある。このため、表示装置40、特に筐体46の内部では、撮影画像Imのコントラスト低下を引き起こす光を排除することが好ましい。そこで、本実施形態に係る表示装置40には、外乱光等の光の散乱を抑制する外乱光抑制部50を、筐体46の内部に設けることができる。
【0125】
図22に、表示装置40に配置した外乱光抑制部50の一例を示す。
図22に示すように、外乱光抑制部50は、表示装置40の筐体46の内部で、かつ光学ユニット42から射出された光を遮らない位置に配置される。例えば、反射部材48を通過する観察者OPの視線の延長線上の筐体46の内面と、反射部材48で反射する観察者OPの視線の延長線上の筐体46の内面と、に外乱光抑制部50を配置する。なお、反射部材48で反射する観察者OPの視線の延長線上の筐体46の内面に配置する外乱光抑制部50には、光学ユニット42から射出される光を通過させるために、開口が設けられる。この外乱光抑制部50は、外乱光によって生じる筐体46の内部における散乱光を少なくとも抑制できればよく、遮光可能であることは更に好ましい。また、外乱光抑制部50は、光吸収部材を含むことが好ましく、外乱光抑制部50が光吸収部材を含むことで、外乱光によって生じる筐体46の内部における散乱光の抑制のみならず、外乱光抑制部50における光の反射が抑制される。
【0126】
ここで、光学ユニット42から反射部材48へ向けて射出される撮影画像Imによる光の画角が、撮影画像Imを目視可能な観察者OPの視野の角度範囲(視野角)になる。従って、射出瞳を基準として撮影画像Imを目視可能な観察者OPの視野角範囲以外の領域は、観察者OPが撮影画像Imを目視(知覚)する際に影響することはない。そこで、観察者OPの視野角範囲以外の領域、例えば、筐体46の外部に遮光部材を設けることで、外乱光をさらに抑制可能である。
【0127】
図23A、及び
図23Bに、上記の外乱光をさらに抑制する外乱光抑制部の他の一例を示す。例えば、表示装置40の反射部材48に入射した上記外乱光が該反射部材48の表面において反射してその反射光が観察者OPの視野に入射することによって、観察者OPにおける撮影画像Imの視認性が悪くなる可能性がある。
そこで、
図23A、及び
図23Bに示す例では、
図22に示す外乱光抑制部50に加えて、表示装置40の筐体46に設けられ、筐体46の下方(−x軸方向)に板状の遮光部材50Aを配置している。遮光部材50Aは、撮影画像Imを知覚するための観察者OPの視野を遮らず、かつ撮影画像Imを知覚するための観察者OPの最大視野の角度範囲(最大視野角)を通る光線と平行に配置される。また、遮光部材50Aの表示装置40側の一端から観察者OP側の他端までの距離は、観察者OPが目視位置を変更可能な範囲で、観察者OPが遮光部材50Aに接触しないように適宜設定される。
なお、
図23Aでは、筐体46の下方に板状の遮光部材50Aを配置した一例を示したが、遮光部材50Aの配置位置及び形状は
図23Aに示す一例に限定されるものではない。例えば、遮光部材50Aは、撮影画像Imを知覚するための観察者OPの視野を遮らない位置であれば何れの位置でもよく、また何れの形状(例えば、正方形や長方形などの多角形、円形、板状など)でもよい。また、
図23Aの例では、1個の遮光部材50Aを筐体46の下方に配置した例を示したが、2個以上配置してもよい。
【0128】
また、
図23Bは、遮光部材50Aが配置される位置の一例を示す図である。
図23Bにおいて、光軸CLに対して上記した瞳の上端Pz
1 と対称な位置に瞳の下端の位置Pz
2 を設定し、瞳の下端の位置Pz
2 における視野角の下方側(−x軸方向)の半角(図中の−θ)と反射部材48との交点をB
2 とする。そして、瞳の下端の位置Pz
2 に瞳孔を設置した場合、遮光部材50Aは、瞳孔が位置する瞳の下端の位置Pz
2 と交点B
2 とを結ぶ線(又はその線を含む面)を基準(基準線、基準面)にして瞳の下端の位置Pz
2 の下側(−x軸方向側)に配置される。特に、遮光部材50Aは、瞳面、位置Pz
2 と交点B
2 とを結ぶ基準(基準線、基準面)、交点B
2 を通る(z軸方向の)水平線(又はその線を含む面)による領域Area内に配置することが効果的である。このように、遮光部材50Aは、該基準に沿うように又は該基準より下方(例、位置Pz
2 、筐体46、又は反射部材48の下方(−x軸方向))であり、表示装置40において反射部材48における外乱光の表面反射を低減しつつ上記アイボックスを遮らない位置に配置される。
【0129】
本実施形態では、反射部材48の一例として、再帰透過素子と扱うことができる光学結像素子48Aを用いた眼科システム10の一例を説明したが、反射部材48は光学結像素子48Aに限定されるものではない。例えば、空間を折り返す際に光束の進行方向を変えない機能を有する反射型の再帰素子を用いてもよい。以下に一例を説明する。
【0130】
図24A、
図24Bに、眼科システム10の表示装置40の一例を模式的に示す。
図24Aは本実施形態に係る再帰透過素子と扱うことができる光学結像素子48Aを用いた眼科システム10の表示装置40の一例を示している。
図24Bは、反射型の再帰素子を用いた眼科システム10の表示装置40に関する第1の変形例を示している。
図24Aに示すように、光学結像素子48Aを用いた表示装置40は、光学ユニット42から射出された光が反射部材48で反射して観察者OPの眼に到達する。
一方、
図24Bに示すように、第1の変形例では、表示装置40に含む反射部44は、筐体46、直交する反射面を複数備えたコーナキューブを複数2次元平面状に配列した反射アレイ等の再帰反射部材47A、及びハーフミラー48Bを含む。第1の変形例の表示装置40は、光学ユニット42から射出された光をハーフミラー48Bで反射する。ハーフミラー48Bで反射された光は、再帰反射部材47Aへ射出されて、再帰反射し、ハーフミラー48Bを透過して、観察者OPへ向けて射出される。このように、
図24Bに示す第1の変形例は、ハーフミラー48Bによる反射光を用いるので、
図24Aに示す表示装置40の光学結像素子48Aと比べて、再帰反射部材47Aを小さくすることができる。
【0131】
図25に、眼科システム10の表示装置40に関する第2の変形例を示す。
図25に示すように、第2の変形例では、表示装置40に含む反射部44は、筐体46、直交する反射面を複数備えたコーナキューブを複数2次元平面状に配列した反射アレイ等の再帰反射部材47A,47B、及びハーフミラー48Bを含む。第2の変形例の表示装置40は、光学ユニット42から射出された光をハーフミラー48Bで反射する。ハーフミラー48Bで反射された光は、再帰反射部材47Aへ射出されて、再帰反射し、ハーフミラー48Bを透過して、観察者OPへ向けて射出される。また、光学ユニット42から射出された光のうちハーフミラー48Bを透過した光は、再帰反射部材47Bへ射出されて、再帰反射し、ハーフミラー48Bで反射されて、観察者OPへ向けて射出される。
第2の変形例は、第1の変形例に比べて、ハーフミラー48Bを透過した光を利用できるため、観察者OPが目視する撮影画像Imの光量を増加することができる。
【0132】
図26に、眼科システム10の表示装置40に関する第3の変形例を示す。
図26に示すように、第3の変形例では、表示装置40に含む反射部44は、筐体46、直交する反射面を複数備えたコーナキューブを複数2次元平面状に配列した反射アレイ等の再帰反射部材47C、及びハーフミラー48Bを含む。再帰反射部材47C及びハーフミラー48Bは、ハーフミラー48Bの反射面と再帰反射部材47Cの反射面とが直交するように、ハーフミラー48Bの一端側が再帰反射部材47Cの中央付近に配置される。第3の変形例の表示装置40は、光学ユニット42から射出された光をハーフミラー48Bで反射する。ハーフミラー48Bで反射された光は、再帰反射部材47Cへ射出されて、再帰反射し、ハーフミラー48Bを透過して、観察者OPへ向けて射出される。また、光学ユニット42から射出された光のうちハーフミラー48Bを透過した光も、再帰反射部材47Cへ射出されて、再帰反射し、ハーフミラー48Bで反射されて、観察者OPへ向けて射出される。
第3の変形例は、第2の変形例に比べて、ハーフミラー48Bの反射光及び透過光を共通して再帰反射部材47Cで再帰反射できるため、再帰反射部材の素子数を減少して表示装置を形成することができる。
【0133】
なお、反射部44の反射部材は、2面コーナーリフレクタを一方向に配列したプリズムシートミラーを用いてもよい。
以上、眼科システム10の表示装置40に関する第1の変形例から第3の変形例を説明したが、第1の変形例から第3の変形例の各々において、反射部材48は光学結像素子48Aを用いた場合と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0134】
なお、本実施形態では、反射部材48の一例として、等倍の像を結像する光学結像素子48Aを用いた場合を説明したが、反射部材48は等倍の像を結像する光学結像素子48Aに限定されるものではない。反射部材48は非等倍の像を結像する素子を用いてもよい。
【0135】
図27A、
図27Bに、反射部材48による像の結像に関する光路を模式的に示す。
図27Aは等倍の像を結像する反射部材48を示し、
図27Bは非等倍の像を結像する反射部材48を示している。
図27Aに示す反射部材48は、面対称に光線を集光する性質を有し、物点Q1から反射部材48までの距離Lkと、像点Q2から反射部材48までの距離Lmとは、一致する(Lk=Lm)。従って、反射部材48は、例えば、等倍(1:1)の大きさで瞳を再形成することができる。
一方、
図27Bに示す反射部材48も、面対称に光線を集光する性質を有し、物点Q1から反射部材48までの距離Lkと、像点Q2から反射部材48までの距離Lmとは、不一致になる(
図27Bの例では、Lk<Lm)。従って、反射部材48は、例えば、等倍(1:m)の大きさで瞳を再形成することができる。なお、反射部材48として適用可能な非等倍の像を結像する素子は、特開2017−067933号公報等に記載されているように周知の技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0136】
また、本実施形態に係る反射部材48は、屈折力を付加することが可能である。例えば、反射部材48は所謂ロブスターアイとして知られている反射素子と捉えることができ、反射部材48をまげて曲率を付与することで、屈折力を付加することが可能である。
【0137】
図28に、屈折力を付加することが可能な反射部材48を模式的に示す。
図28では、反射部材48の一例として、等倍の像を結像する光学結像素子48Aを用いた場合を示している。すなわち、
図28に示すように平面状の反射部材48は、面対称に光線を集光する性質を有し、物点から反射部材48までの距離Laと、像点Q2から反射部材48までの距離Lbとは、一致する(La=Lb)。
図28に示すように、平面状の反射部材48を、半径rの曲率を有するように形成することで、2/rの屈折力を付与することが可能になる。
【0138】
次に、2/rの屈折力が付与された反射部材48の倍率βについて説明する。
便宜的に、
図28に示す平面状(r=∞)の反射部材48の焦点距離をfoとすると、次に示す(16)式と、La=Lbの関係とを用いて、焦点距離foは、次の(17)式で表すことができる。
1/La+1/Lb=1/fo ・・・(16)
fo=La/2 ・・・(17)
【0139】
一方、ロブスターアイとして知られる光学素子において曲率r=Rとした場合、焦点距離f
Lob は、次の(18)式で表される。
f
Lob =R/2 ・・・(18)
従って、曲率Rを持つ反射部材48の焦点距離f
R は、次の(19)式で表され、整理すると、(20)式で表すことができる。
f
R =1/fo+1/f
Lob ・・・(19)
f
R =2{La・R/(La+R)}La ・・・(20)
【0140】
この場合、結像位置までの距離Lb’は、次に示す(21)式を用いて、次の(22)式で表すことができる。
1/La+1/Lb=1/f
R ・・・(21)
Lb’={La・R/(2La+R)}La ・・・(22)
【0141】
従って、倍率βは、次の(23)式で表される。
β=R/(2La+R) ・・・(23)
(23)式で示される倍率βのとき、瞳の大きさはβ倍になり、見込み画角は1/β倍になる。このように2/rの屈折力が付与された反射部材48であっても、開示の技術は有効である。
【0142】
本実施形態に係る眼科システム10では、ディスプレイ等の表示部30を表示装置40の上部に取り付けて表示部30に形成された撮影画像Imを、光学ユニット42及び反射部材48を介して観察者OPに向けて表示する構成とした(
図1、及び、
図3A〜
図3C参照)。
しかし、開示の技術に係る画像表示システムは、表示部30を表示装置40の上部に取り付けることに限定されるものではない。例えば、表示部30を表示装置40の下部に取り付け、表示部30に形成された撮影画像Imを、表示装置40の下方から上方に向う光軸で光学ユニット42及び反射部材48を介して観察者OPに向けて表示する構成としてもよい。すなわち、表示装置40に取り付ける表示部30の位置は、表示装置40における何れの位置であってもよく、また表示装置40への光軸方向は表示装置40に対して何れの方向に向かうように構成してもよい。
【0143】
なお、本実施形態では、眼科装置に適用した眼科システムを開示の技術に係る画像表示システムの一例として説明したが、開示の技術に係る画像表示システムは、眼科装置に適用した眼科システムに限定されるものではない。すなわち、開示の技術は、画像を表示する装置であれば開示の技術に係る画像表示装置は適用可能であり、また、画像を表示する装置を備えたシステムであれば開示の技術に係る画像表示システムは適用可能である。
【0144】
次に、開示の技術が適用可能な画像表示装置、及び画像表示装置を備えた画像表示システムの応用例を例示する。
【0145】
第1の応用例には、双眼鏡及び潜望鏡等の光学機器によって遠方の対象物を観察する観察システムの表示装置への適用が挙げられる。特に、双眼鏡には、開示の技術に係る画像表示装置、又は画像表示システムは有効に機能する。
【0146】
図29に、一般的な双眼鏡300の構成を模式的に示す。また、
図30に、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した第1例の双眼鏡310の構成を模式的に示す。
図29に示すように、一般的な双眼鏡300は、両眼で遠方の対象物を拡大して観察するため、左眼用及び右眼用に対物レンズ302L,302R及び接眼レンズ308L,308Rを備えている。また、
図29には双眼鏡300の左右の瞳EL,ERも示されている。双眼鏡300は、対物レンズ302L,302Rにより拡大された対象物の一次像306L,306Rの各々を接眼レンズ308L,308Rによりさらに拡大する。しかし、対物レンズ302L,302R及び接眼レンズ308L,308Rで拡大される像は倒立像として知覚されるため、ポロプリズム又はダハプリズム等の光学素子304を用いて倒立像を正立像に変換する。
【0147】
一方、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した双眼鏡310は、反射部材48により像が反転されるので、ポロプリズム又はダハプリズム等の光学素子304は省略可能である。
【0148】
また、
図31に、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した第2例の双眼鏡320の構成を模式的に示す。
図31に示す第2例の双眼鏡320は、一般的な双眼鏡300の接眼レンズ308L,308Rに代えて反射部材48を配置した構成である。双眼鏡320は、光学素子304から収束光が射出されるが、反射部材48により発散光になり、観察者OPの眼の調節によって像を目視することが可能になる。
【0149】
また、
図32に、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した第3例の双眼鏡330の構成を模式的に示す。
図32に示す第3例の双眼鏡330は、第2例の双眼鏡320で、対物レンズ302L,302Rと、光学素子304L,304Rとを交換した構成である。双眼鏡330も、光学素子304(304L,304R)から収束光が射出されるが、反射部材48により発散光になり、観察者OPの眼の調節によって像を目視することが可能になる。
【0150】
このように、遠方の対象物を観察する双眼鏡に、開示の技術に係る画像表示装置、又は画像表示システムを適用することで、観察者OPは、双眼鏡に非接触の状態で遠方の対象物を観察でき、接触により生じる観察者OPの違和感が抑制される。また、双眼鏡により目視する画像の見かけの大きさは変化しないので、観察者OPの頭部がアイポイント(アイボックス)内で移動可能になる。従って、双眼鏡の操作に大きな許容度が生じる。
【0151】
第2の応用例は、一般的な両眼視の光学顕微鏡への適用が挙げられる。
図33に、一般的な光学顕微鏡400の構成を模式的に示す。また、
図34に、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した第1例の光学顕微鏡410の構成を模式的に示す。
図33に示すように、一般的な両眼視の光学顕微鏡400は、両眼で対象物を拡大して観察するため、第1対物レンズ401、左眼用及び右眼用に第2対物レンズ402L,402R及び接眼レンズ408L,408Rを備えている。また、
図33には光学顕微鏡400の左右の瞳EL,ERも示されている。光学顕微鏡400は、第1対物レンズ401、第2対物レンズ402L,402Rにより拡大された対象物の一次像406L,406Rの各々を接眼レンズ408L,408Rによりさらに拡大する。しかし、第1対物レンズ401、第2対物レンズ402L,402R及び接眼レンズ408L,408Rで拡大される像は倒立像として知覚されるため、ポロプリズム又はダハプリズム等の光学素子404L,404Rを用いて倒立像を正立像に変換する。
【0152】
一方、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した光学顕微鏡410は、反射部材48により像が反転されるので、ポロプリズム又はダハプリズム等の光学素子404L,404Rは省略可能である。
【0153】
また、
図35に、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した第2例の光学顕微鏡420の構成を模式的に示す。
図35に示す第3例の光学顕微鏡420は、一般的な光学顕微鏡400の接眼レンズ408L,408Rに代えて反射部材48を配置した構成である。光学顕微鏡420は、光学素子304から収束光が射出されるが、反射部材48により発散光になり、観察者OPの眼の調節によって像を目視することが可能になる。
【0154】
また、
図36に、開示の技術に係る画像表示装置又は画像表示システムを適用した第3例の光学顕微鏡430の構成を模式的に示す。
図32に示す第3例の光学顕微鏡430は、第2例の光学顕微鏡420で、第2対物レンズ402L,402Rと、光学素子404L,404Rとを交換した構成である。光学顕微鏡430も、光学素子404から収束光が射出されるが、反射部材48により発散光になり、観察者OPの眼の調節によって像を目視することが可能になる。
【0155】
このように、両眼視の光学顕微鏡に、開示の技術に係る画像表示装置、又は画像表示システムを適用することで、観察者OPは、両眼視の光学顕微鏡に非接触の状態で対象物を観察でき、接触により生じる観察者OPの違和感が抑制される。また、両眼視の光学顕微鏡で目視する画像の見かけの大きさは変化しないので、観察者OPの頭部がアイポイント(アイボックス)内で移動可能になる。従って、両眼視の光学顕微鏡の操作に大きな許容度が生じる。
【0156】
上述の表示部は、画像提示部と捉えることが可能である。
本実施形態における別の一態様は、入射側に左眼用画像を示す左眼用画像領域が配置され、かつ射出側の最も外側のレンズの外側に左眼用射出瞳が形成された左眼用光学ユニットと、入射側に右眼用画像を示す右眼用画像領域が配置され、かつ射出側の最も外側のレンズの外側に右眼用射出瞳が形成された右眼用光学ユニットと、前記左眼用光学ユニットの焦点面であって前記左眼用光学ユニットの光軸から離れた位置に領域中心が配置されるように前記左眼用画像領域を提示し、かつ前記右眼用光学ユニットの焦点面であって前記右眼用光学ユニットの光軸から離れた位置に領域中心が配置されるように前記右眼用画像領域を提示することによって、前記左眼用光学ユニットを通して前記左眼用画像領域を目視し、かつ前記右眼用光学ユニットを通して前記右眼用画像領域を目視した際に、両眼に輻輳角を生じさせる画像提示部と、前記左眼用光学ユニットを射出した光を反射して前記左眼用射出瞳と共役関係にある位置に左眼瞳を形成し、かつ前記右眼用光学ユニットを射出した光を反射して前記右眼用射出瞳と共役関係にある位置に右眼瞳を形成する反射部と、を備えた画像表示装置である。
【0157】
また、本実施形態における別の一態様は、入射側に左眼用画像を示す左眼用画像領域が配置され、かつ射出側の最も外側のレンズの外側に左眼用射出瞳が形成された左眼用光学ユニットと、入射側に右眼用画像を示す右眼用画像領域が配置され、かつ射出側の最も外側のレンズの外側に右眼用射出瞳が形成された右眼用光学ユニットと、前記左眼用光学ユニットの焦点面であって前記左眼用光学ユニットの光軸上に領域中心が配置されるように前記左眼用画像領域を提示し、かつ前記右眼用光学ユニットの焦点面であって前記右眼用光学ユニットの光軸上に領域中心が配置されるように前記右眼用画像領域を提示すると共に、前記左眼用光学ユニットの光軸と前記右眼用光学ユニットの光軸とを、前記左眼用光学ユニット及び前記右眼用光学ユニットの射出側で交差させることによって、前記左眼用光学ユニットを通して前記左眼用画像領域を目視し、かつ前記右眼用光学ユニットを通して前記右眼用画像領域を目視した際に、両眼に輻輳角を生じさせる画像提示部と、前記左眼用光学ユニットを射出した光を反射して前記左眼用射出瞳と共役関係にある位置に左眼瞳を形成し、かつ前記右眼用光学ユニットを射出した光を反射して前記右眼用射出瞳と共役関係にある位置に右眼瞳を形成する反射部と、を備えた画像表示装置である。
【0158】
なお、開示の技術に関する実施形態を説明したが、開示の技術の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。開示の技術の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も開示の技術の技術的範囲に含まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。