(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アスペクト比1.0〜2.0、一次粒子短径30〜100nmであり、更にCuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折において、2θ=6.7±0.5°の範囲内で最大回折強度を示すピークAの半値幅からシェラーの式により算出される結晶子径が15.0nm以上である、C.I.ピグメントイエロー180。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらY180は水性顔料分散液、水性顔料インクに用いた際の分散性が非常に悪いといった問題点があり、分散性に優れた易分散性のY180の開発およびY180の分散性に優れた水性顔料分散液、水性顔料インクが希求されている。更にY180自体もIJ用水性顔料インクとして印刷濃度(OD)、耐光性、貯蔵安定性に優れたものが希求されている。
【0007】
本発明の課題は、分散性に優れ、特にIJ用水性顔料インク用途に適したIJインク用水性顔料分散液を提供することである。また、本発明の課題は、印刷濃度(OD)、耐光性、及び貯蔵安定性に優れたY180を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、Y180に対して特定のブロック共重合体をY180の表面処理用樹脂もしくは分散樹脂として用いることで分散性を向上することができることを見出し、本発明を完成させた。更に、鋭意検討の結果、Y180に従来にはない処理を施すことにより貯蔵安定性などの顔料物性を大幅に向上することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明者らは、更にY180をIJ用水性顔料インク用途に適したものとするために鋭意検討の結果、顔料一次粒子におけるアスペクト比及び短径と、結晶子径に着目し、これらを特定の範囲とすることで、印刷濃度(OD)、耐光性、及び貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち本発明は、
『項1. C.I.ピグメントイエロー180と、酸価10以上20以下かつアミン価20以下であるブロック共重合体と、水と、を含むインクジェットインク用水性顔料分散液。
項2. 前記ブロック共重合体の重量平均分子量が600〜15000である項1に記載のインクジェットインク用水性顔料分散液。
項3. 前記ブロック共重合体が、櫛型(グラフト共重合体)であり、主鎖としてスチレン骨格とマレイン酸骨格、側鎖としてポリエチレングリコール(PEG)骨格を有している項1又は2に記載のインクジェットインク用水性顔料分散液。
項4. 項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散液を含むインクジェット用水性顔料インク。』に関する。なお、本段落に記載の上記発明(項1〜4)を「第一の発明」と称することとする。
【0011】
即ち本発明は、
『項5. アスペクト比1.0〜2.0、一次粒子短径30〜100nmであり、更にCuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折において、2θ=6.7±0.5°の範囲内で最大回折強度を示すピークAの半値幅からシェラーの式により算出される結晶子径が15.0nm以上である、C.I.ピグメントイエロー180。
項6. 項5に記載のC.I.ピグメントイエロー180を含むインクジェットインク用水性顔料分散液。
項7. 項5に記載のC.I.ピグメントイエロー180と、酸価10以上20以下かつアミン価20以下であるブロック共重合体と、水と、を含むインクジェットインク用水性顔料分散液。
項8. 項6又は7に記載のインクジェットインク用水性顔料分散液を含むインクジェット用水性顔料インク。』に関する。なお、本段落に記載の上記発明(項5〜8)を「第二の発明」と称することとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液は、顔料の粒子径が非常に小さく、分散性に優れ、また着色力と耐光性のバランスに優れる。そのため、IJインク用途に適している。
【0013】
また本発明のIJ用水性顔料インクは、高精細な印刷を目的としたSiO
2製の無機酸化物製IJヘッドを用いたIJプリンターで好適に使用できるという副次的な効果も有する。これは、高精細な印刷を目的としたIJプリンターでは、微細な構造のIJヘッドを得るためにMEMS加工されたSiO
2等の無機酸化物を使用することがあるが、従来のIJインク用水性顔料分散液に含まれる、分散樹脂を溶解させるためのアルカリ金属水酸化物が、SiO
2製のIJヘッドを劣化させる恐れがあるところ、本発明の水性顔料インクは基本的に上記アルカリ金属水酸化物を使用する必要がなく、IJヘッドに使用されているSiO
2等の無機酸化物を劣化させる恐れがないためである。
【0014】
本発明の「第二の発明」のY180は、特にIJインク用水性顔料分散液として用いたときに貯蔵安定性に優れるだけなく、印刷濃度(OD)や耐光性といったIJ用インクとして求められる全ての物性を満たす。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明においてY180とは、単に下記[化1]で示される化合物を意味するのではなく、当該化合物から構成される顔料を意味する。当該顔料は、その結晶構造だけでなく、これが凝集や集合をした一次粒子、さらにその表面状態などから生じる凝集・集合体としての物理的性質をも含む概念である。
まず、本発明の「第一の発明」について記載する。
【0016】
[IJインク用水性顔料分散液]
本発明の「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液は、Y180と酸価10以上20以下かつアミン価20以下であるブロック共重合体と水とを含んでいればよい。当該ブロック共重合体は、顔料と分散樹脂からなる顔料組成物を製造する段階で混合してもよいし、その後の水性顔料分散液を製造する段階で混合してもよい。いずれの場合においてもY180と当該ブロック共重合体の混合状態は特に制限されることはなく、単に分散している状態でもよいし、当該ブロック共重合体がY180に吸着している状態でもよいし、当該ブロック共重合体がY180を一部または完全に被覆していてもよい。
【0017】
本発明のIJインク用水性顔料分散液は、上記のようにIJヘッドの素材であるSiO
2を劣化する恐れがあるアルカリ金属水酸化物を実質的に含まないことが好ましい。本発明において「実質的」とは、意図的に含まないということであり、その含有量は例えば1質量%未満である。
【0018】
Y180は、CAS No.77804−81−0であり、下記化学式で表される黄色顔料である。本発明のIJインク用顔料分散液は、着色剤としてY180を含めばよく、本発明の効果を損なわない範囲でY180以外の顔料や染料を含んでいてもよい。
【化1】
【0019】
Y180は、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタンを強酸存在下、氷冷状態で亜硝酸ソーダ水溶液を加え、ジアゾ化反応して得られたビスジアゾニウム塩溶液と5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロンとをカップリングすることによって得ることができる。本発明の「第一の発明」のY180としては、市販品をそのまま用いてもよく、市販品としては「SYMULER FAST YELLOW BY 2000GT」(DIC株式会社製)などを使用することができる。
【0020】
本発明の「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液には、Y180以外のイエロー顔料や染料を含んでも良い。このようなイエロー顔料としては、アゾ系、ジスアゾ系、アゾメチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、キナクリドン系、ペリノン系顔料等が挙げられ、具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、23、24、34、35、37、53、55、73、74、75、81、83、86、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、185、213等が挙げられる。また、上記イエロー顔料以外の染料や顔料を含んでいてもよい。本発明の「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液では、Y180が全顔料中50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
【0021】
「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液中の顔料の含有量(2種以上含む場合は合計含有量)は、例えば8〜50質量%、好ましくは10〜20質量%である。
【0022】
「第一の発明」の上記ブロック共重合体は、酸価8以上25以下(好ましくは10以上20以下)かつアミン価25以下(好ましくはアミン価0以上20以下)であり、本発明のIJインク用顔料分散液において、Y180を分散させるための分散樹脂として作用する。これらのブロック共重合体はY180に対して分散樹脂が吸着しやすい性質を有しており、分散安定化するものと考えられる。当該ブロック共重合体は、櫛型(グラフト共重合体)であり、主鎖としてスチレン骨格とマレイン酸骨格、側鎖としてポリエチレングリコール(PEG)骨格を有していることが好ましい。
【0023】
「第一の発明」のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は例えば600〜15000であり、好ましくは600〜12000である。重量平均分子量が上記範囲であると、濡れ性及び分散安定性を向上させることが可能である。重量平均分子量(Mw)は、GPC装置を用い標準物質としてポリスチレンを使用して換算することで算出することができる。
【0024】
「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液において、上記ブロック共重合体(不揮発成分)の含有量は、顔料100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。また、上記当該ブロック共重合体(不揮発成分)の含有量は、IJインク用顔料分散液全量(不揮発成分)に対して、3〜40質量%が好ましく、より好ましくは5〜35質量%である。当該ブロック共重合体の含有量が上記範囲であるとY180の分散性をより向上することができる。
【0025】
「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液には、上記当該ブロック共重合体以外の分散剤(分散樹脂)を用いてもよく、このような分散剤としては、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマル酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミドなど単量体から選択される少なくとも2つの単量体からなる共重合体(例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合)が挙げられる。
【0026】
「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液には、必要に応じて顔料誘導体(シナジスト)を用いてもよい。このような顔料誘導体としては、前記有機顔料を骨格としてなり、前記顔料の骨格に置換基を付加した顔料誘導体が挙げられる。具体的には、アゾ系顔料誘導体、ジスアゾ系顔料誘導体、アゾメチン系顔料誘導体、アントラキノン系顔料誘導体、キノフタロン系顔料誘導体、ベンズイミダゾロン系顔料誘導体、イソインドリン系顔料誘導体、キナクリドン系顔料誘導体、ペリノン系顔料誘導体を使用することができる。誘導体部としては、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、等がある。これら誘導体は、異なる種類のものを二種以上併用することも出来る。
【0027】
IJインク用水性顔料分散液に含まれる、上記ブロック共重合体は、顔料組成物を製造する段階で混合されてもよいし、顔料分散体を製造する段階で混合されてもよい。前者の場合は上述のとおりである。
【0028】
上記ブロック共重合体を水性顔料分散液の製造段階で混合する場合、当該ブロック共重合体の形態や混合方法について特に制限はなく、当業者が公知の形態の当該ブロック共重合体を公知の混合方法で混合することができる。
【0029】
上記ブロック共重合体は通常液体状であり、そのまま使用してもよいし、さらに溶媒に希釈したものを使用してもよい。
【0030】
上記ブロック共重合体は、顔料分散前に添加混合する方法や顔料分散後に添加混合する方法等従来公知の方法で混合することができる。中でも顔料分散前に添加混合する方法が好ましい。
【0031】
「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液において、上記ブロック共重合体(不揮発成分)の含有量は、顔料100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。また、上記当該ブロック共重合体(不揮発成分)の含有量は、水性顔料分散液全量に対して、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜8質量%である。当該ブロック共重合体の含有量が上記範囲であるとY180の分散性をより向上することができる。
【0032】
「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液は、水とともに水溶性有機溶剤を用いてもよい。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類、N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0033】
「第一の発明」のIJインク用水性顔料分散液の総質量中における、水溶性有機溶剤の含有量は0〜60%程度、好ましくは0〜45%であり、IJインク用顔料分散液(不揮発成分)以外の残部は水である。
【0034】
[IJ用水性顔料インク]
本発明の「第一の発明」のIJ用水性顔料インクには、Y180以外のイエロー顔料や染料を含んでも良い。このようなイエロー顔料としては、アゾ系、ジスアゾ系、アゾメチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、キナクリドン系、ペリノン系顔料等が挙げられ、具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、23、24、34、35、37、53、55、73、74、75、81、83、86、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、185、213等が挙げられる。また、上記イエロー顔料以外の染料や顔料を含んでいてもよい。また、Y180以外のイエロー顔料や染料を混合する場合、混合方法について特に制限はない。水性顔料分散液を製造する段階で顔料組成物として混合しても良いし、IJ用水性顔料インクを製造する段階で顔料分散液として混合しても良い。本発明の「第一の発明」のIJインク用水性顔料インクでは、Y180が全顔料中10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。
【0035】
IJ用水性顔料インクは、必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、防腐剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、酸化防止剤、水分散性樹脂、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン、カチオン、ノニオン、両性、シリコーン系、及びフッ素系等の界面活性剤が挙げられる。また、水性顔料インクは、さらに水や水溶性有機溶剤を加えてインク濃度を調整してもよい。
【0036】
一方でIJ用水性顔料インクは、アルカリ金属水酸化物を実質的に含まないことが好ましい。その含有量は1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがさらに好ましく、0.01質量%未満であることが特に好ましく、不含有であることが最も好ましい。
【0037】
「第一の発明」のIJ用水性顔料インクの総質量中における添加剤の含有量(2種以上含む場合は総量)は、0〜30%程度、好ましくは0〜15%である。水性顔料インク中の顔料の含有量は、例えば1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%である。
【0038】
「第一の発明」のIJ用水性顔料インクの粘度(25℃)は、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは1〜30mPa・sであり、より好ましくは2〜20mPa・sである。水性顔料インクのpHは、インクの保存安定性を更に向上させる観点から、例えば7.0以上、好ましくは7.5以上である。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、例えば11.0以下であり、好ましくは10.0以下である。
【0039】
本発明の「第一の発明」のIJ用水性顔料インクは、公知のIJ記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像等を記録することができる。IJ記録装置としては、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等があるが、本発明の水性顔料インクは、いずれの方式においても使用することができる。
【0040】
次に、本発明の「第二の発明」について記載する。
【0041】
[C.I.ピグメントイエロー180]
本発明の「第二の発明」のY180は、アスペクト比1.0〜2.0、一次粒子短径30〜100nmであり、更にCuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折において、2θ=6.7±0.5°の範囲内で最大回折強度を示すピークAの半値幅からシェラーの式により算出される結晶子径が15.0nm以上である。
【0042】
通常、顔料では粒子径が大きいほど耐光性に優れ、粒子径が小さいほど印刷濃度(OD)に優れるため、印刷濃度(OD)と耐光性の両立には粒子径に関する相反する2つの条件が要求されるため、印刷濃度(OD)と耐光性はトレードオフの関係となる。しかし、本発明の「第二の発明」のY180は、上記のように顔料粒子のサイズにおいてアスペクト比と一次粒子短径、更に粒子の結晶性に関係する結晶子径を特定の範囲にすることで、印刷濃度(OD)と耐光性の両立という問題を解決している点に特徴がある。更に、極微粒子の消失が達成されたため、貯蔵安定性にも優れる。
【0043】
上記アスペクト比は、1.0〜2.0であるが、好ましくは1.0〜1.7、より好ましくは1.0〜1.5である。アスペクト比がこの範囲であると、顔料粒子同士の凝集を小さくすることができ、結果としてIJインク用水性顔料分散液・インクとして用いたときに貯蔵安定性に優れる。
【0044】
上記一次粒子短径は、30〜100nmであるが、好ましくは30〜80nm、より好ましくは30〜50nmである。一次粒子短径がこの範囲であると、分散液・インク中の顔料の粒子径を小さくすることができ、結果としてIJインク用水性顔料分散液・インクとして用いたときに印刷濃度(OD)に優れる。
【0045】
また、上記一次粒子における長径は、アスペクト比と短径が上記の範囲となることが好ましいが、例えば30〜150nm、好ましくは30〜100nm、より好ましくは30〜80nmである。一次粒子における短径及び長径、これらから算出するアスペクト比は、顔料の一次粒子を電子顕微鏡などで観測し、例えば100個測定した長さの平均値から求めることができる。
【0046】
上記のピークAの半値幅からシェラーの式により算出される結晶子径は、15.0nm以上(例えば15.0〜100nm)であるが、好ましくは18.0nm以上、より好ましくは20.0nm以上であり、一次粒子径(短径)に近いほど好ましい。結晶子径がこの範囲であると、一次粒子の結晶性が良好であり、結果としてIJインク用水性顔料分散液・インクとして用いたときに耐光性に優れる。
【0047】
上記のピークAと同様に2θ=19.4±0.5°の範囲内で最大回折強度をピークBとしたとき、ピークBの半値幅からシェラーの式により算出される結晶子径は、例えば6.0nm以上、好ましくは8.0nm以上、より好ましくは10.0nm以上であるが、ピークAと同様に、値が大きいほど、IJインク用水性顔料分散液・インクとして用いたときに耐光性に優れる。
【0048】
上記シェラーの式とは、D= Kλ / Bcosθ であり、D:結晶子径(nm)、K:シェラー定数、λ:X線の波長(nm)、B:回析線幅の広がり(rad)、θ:ブラッグ角(rad)である。上記のとおりCuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折において、2θ=6.7±0.5°の範囲内で最大回折強度をピークAとし、その半値幅より6.7°の結晶子径(D)は、シェラーの式より求めることができる。X線回折装置(XRD)としては、特に制限されないが、全自動多目的X線回折装置Empyrean(Malvern Panalytical株式会社製)などを用いることができる。
【0049】
本発明の「第二の発明」のY180は、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタンを強酸存在下、氷冷状態で亜硝酸ソーダ水溶液を加え、ジアゾ化反応して得られたビスジアゾニウム塩溶液と5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロンとをカップリングすることによって得られる通常の合成品、若しくは「SYMULER FAST YELLOW BY 2000GT」(DIC株式会社製)などの市販品について、特有の処理を施すことにより製造することができる。
【0050】
上記の特有の処理とは、例えば顔料(粗顔料)100質量部に対して、無機塩を200〜1000質量部用いて、溶媒の存在下で加熱をしながら磨砕(ソルベントソルトミリング)を行うことである。溶媒の存在下で加熱をしながら磨砕を行うことで、顔料の結晶化度を向上させながら一次粒子径を特定の範囲とすることができる。
【0051】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。無機塩の使用量は、顔料100質量部に対して、例えば200〜1000質量部、好ましくは300〜800質量部である。顔料粒子を微細化する観点からは、無機塩は多い方が好ましいが、本発明では結晶化度とのバランスをとる観点から上記の範囲が好ましい。
【0052】
上記溶媒としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましく、このような有機溶媒としては水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール(DEG)、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を用いることができる。なかでも適度な加熱温度にでき、顔料との濡れ性にも優れるためジエチレングリコール(DEG)が特に好ましい。溶媒の使用量は、磨砕時に適度な粘度とする点から顔料100質量部に対して、例えば10〜500質量部、好ましくは50〜300質量部である。
【0053】
上記磨砕(ソルベントソルトミリング)は、顔料と無機塩と、それを溶解しない溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練することにより行う。この際の混練機としては、例えばニーダーやトリミックス、ミックスマーラー等が使用できる。磨砕(ソルベントソルトミリング)時の加熱温度は、例えば50〜100℃であり、好ましくは60〜90℃である。加熱温度は、混練機に備えられた温度調節装置にて適宜変更可能である。また、磨砕(ソルベントソルトミリング)を行う時間は、例えば2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0054】
[IJインク用水性顔料分散液]
本発明の「第二の発明」のIJインク用水性顔料分散液は、上記「第二の発明」のY180を含む限り特に制限されない。本発明の「第二の発明」のIJインク用水性顔料分散液は、Y180以外に酸価10以上20以下かつアミン価20以下であるブロック共重合体と水とを含むことが好ましい。当該ブロック共重合体は、上記「第一の発明」にて述べたとおりである。顔料としては「第二の発明」のY180とともに、通常のY180やその他の黄色顔料を用いてもよい。
【0055】
「第二の発明」のIJインク用水性顔料分散液において、上記ブロック共重合体(不揮発成分)の含有量は、顔料100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。また、上記当該ブロック共重合体(不揮発成分)の含有量は、IJインク用顔料分散液全量(不揮発成分)に対して、3〜40質量%が好ましく、より好ましくは5〜35質量%である。当該ブロック共重合体の含有量が上記範囲であるとY180の分散性をより向上することができる。
【0056】
「第二の発明」のIJインク用水性顔料分散液は、上記「第一の発明」と同様にブロック共重合体以外の分散剤(分散樹脂)を用いてもよい。また、必要に応じて顔料誘導体(シナジスト)を用いてもよい。「第二の発明」のIJインク用水性顔料分散液は、上記「第一の発明」と同様に水とともに水溶性有機溶剤を用いてもよい。「第二の発明」のIJインク用水性顔料分散液の総質量中における、水溶性有機溶剤の含有量は0〜60%程度、好ましくは0〜45%であり、IJインク用顔料分散液(不揮発成分)以外の残部は水である。
【0057】
[IJ用水性顔料インク]
本発明の「第二の発明」のIJ用水性顔料インクは、上記「第二の発明」のインクジェットインク用水性顔料分散液を含む。「第二の発明」のIJ用水性顔料インクは、上記「第一の発明」にて述べたY180以外のイエロー顔料や染料を含んでも良い。「第二の発明」のIJインク用水性顔料インクでは、「第二の発明」のY180が全顔料中10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。
【0058】
「第二の発明」のIJ用水性顔料インクは、上記「第一の発明」と同様に必要に応じて添加剤を含有することができる。「第二の発明」のIJ用水性顔料インクの粘度(25℃)は、上記「第一の発明」と同様にインクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは1〜30mPa・sであり、より好ましくは2〜20mPa・sである。「第二の発明」のIJ用水性顔料インクも、上記「第一の発明」と同様に公知のIJ記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像等を記録することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
まず、本発明の「第一の発明」について記載する。
下記配合Aの方法で作製したIJインク用水性顔料分散液(実施例1−4、比較例1−7)、及び下記配合Bの方法で作製したIJインク用水性顔料分散液(参考例1−3)について、下記分散粒子径測定を行い分散性の評価を行った。本実施例の概要及び分散性の結果を下記表1に示す。
【0060】
(配合A:アルカリ金属水酸化物なし)
下記表1に示す顔料4.0gに対して、下記表1に示す分散樹脂及びイオン交換水を加え、水性顔料分散液の全量が20.0gになるようにした。用いた分散樹脂は、樹脂に相当する不揮発成分とともに水や水性溶媒を含むため、分散樹脂中における不揮発成分が0.8gとなるようにしたうえで、加えるイオン交換水の量を調整した。そして、水性顔料分散液に1mmガラスビーズを加え、ペイントコンディショナーを用いて90分間分散させた。その後、不揮発分が15質量%となるようイオン交換水を加えた。
【0061】
(配合B:アルカリ金属水酸化物あり)
下記表1に示す顔料4.0gに対して、下記表1に示す分散樹脂1.9g、水酸化カリウム水溶液0.5g、イソプロピルアルコール0.9g及びイオン交換水12.7gを加え、水性顔料分散液の全量が20.0gになるようにした。そして、水性顔料分散液に1mmガラスビーズを加え、ペイントコンディショナーを用いて90分間分散させた。その後、不揮発分が15質量%となるようイオン交換水を加えた。
【0062】
[分散粒子径測定]
IJインク用水性分散液を粒度分布測定装置(Nanotrac UPA−EX150、マイクロトラック・ベル株式会社製)で測定し、平均分散粒子径Mvを算出した。
【0063】
【表1】
【0064】
・顔料
Y180 ‥商品名:PV FAST YELLOW HG 01(CLARIANT株式会社製)
Y74 ‥商品名:FAST YELLOW 7426(山陽色素株式会社製)
Y155 ‥商品名:INK JET YELLOW 4GC(CLARIANT株式会社製)
Y180磨砕品 ‥上記Y180について、塩化ナトリウムを顔料の5倍質量を用いて磨砕処理を行った(下記「第二の発明」における実施例5で得た顔料)。
・分散樹脂
共重合体(1) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−190(Mw:約11,000、ビック・ケミー株式会社製)
共重合体(2) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−2015(Mw:約9,000、ビック・ケミー株式会社製)
共重合体(3) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−2010(Mw:約700、ビック・ケミー株式会社製)
共重合体(4) ‥スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体(不揮発分45%、Mw:約5,600)
共重合体(5) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−192(Mw:約1,000、ビック・ケミー株式会社製)
共重合体(6) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−2012(Mw:約8,500、ビック・ケミー株式会社製)
共重合体(7) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−191(Mw:約500、ビック・ケミー株式会社製)
共重合体(8) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−194N(Mw:約1,800ビック・ケミー株式会社製)
共重合体(9) ‥ブロック共重合体、商品名:DISPERBYK−2055(Mw:約2,700ビック・ケミー株式会社製)
上記重量平均分子量(Mw)は、GPC装置[HLC−8320GPC(東ソー株式会社製)]を用い、カラム[TSKgelguardcolumnHxL−H(ガードカラム)+TSKgelGMHxL+TSKgelGMHxL+TSKgelGMHxL+TSKgelGMHxL(東ソー株式会社製)]にて標準物質としてポリスチレンを使用して換算した値である。
【0065】
実施例1は、Y180に対して酸価10かつアミン価0であるブロック共重合体を配合している。一方、比較例1はY74に対して、比較例2はY155に対して同じブロック共重合体を配合している。実施例1と比較例1及び2の分散性(Mv)を比較すると、実施例1の方が比較例1及び2より良いことが分かる。これより本発明におけるブロック共重合体は、Y180に対して分散性を向上させるのに有効であることが分かる。さらに、実施例3より、酸価20かつアミン価20であるブロック共重合体を配合しても分散性を向上させるのに有効であることが分かる。また、比較例3−7より、酸価10以上20以下かつアミン価20以下を満たさない共重合体を用いると分散性が悪いことが分かる。これらの結果より、Y180に対して酸価10以上20以下かつアミン価20以下であるブロック共重合体を組み合わせて用いることで特異的に分散性を向上させることができることが分かる。また実施例1と実施例4の分散性を比較すると、Y180磨砕品を用いることでさらに分散性を向上させるのに有効であることがわかる。なお、当該Y180磨砕品は、「第二の発明」のY180である。
【0066】
また、参考例1−3では、実施例1−3と同等の分散性を実現しているが、配合Bはアルカリ金属水酸化物を含んでおり、上記のようにIJヘッドの素材であるSiO
2を侵すリスクがある。よって、参考例1−3のIJインク用水性分散液は、この点より好ましくないと言える。
【0067】
次に、本発明の「第二の発明」について記載する。
下記製造例1の方法でY180顔料(粗顔料)を得た後に、実施例5−7及び比較例8の方法で処理を行った。処理後及び処理前の顔料の物性は、下記表2に示すとおりであった。更に、処理後及び処理前の顔料を含むIJインク用水性顔料分散液を作製し、評価を行った。IJインク用水性顔料分散液及び水性IJインクの評価結果は下記表3に示すとおりである。
【0068】
(結晶子径の測定方法)
製造例・実施例により得られたサンプルの結晶子径は、以下の方法にて算出された。測定用のセルにサンプル粉末を充填し、測定面の反対側から指で粉末を押し固めて測定面を平滑にした後、X線回折装置にセットし、2θ/秒=0.02の速度でスキャンすることにより回折パターンを得た。X線回折装置に付属の解析ソフト「HighScore」を用い、ピークサーチ(最小有意度:1.00、最小ピークチップ:0.20、最大ピークチップ:1.00、ピークベース幅:2.00)、フィッティングを行うことにより、各回折ピークの回折角と半値幅を得た。ここで、各回折ピークの左半分、右半分からそれぞれ得られる値の和を2分の1とした値を各ピークの半値幅とした。上述のシェラーの式において、シェラー定数Kを0.90、X線の波長λを0.154nmとして、各ピークの回折角から算出したθ、半値幅Bより、各ピークの結晶子径を算出した。
【0069】
[製造例1:顔料の合成]
1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタン225部を水3300部に分散後、35%塩酸538.5部を加え、氷を加えて5℃以下に保ちながら、40%亜硝酸ソーダ水溶液337部を滴下しジアゾ成分を作製した。次に5−アセトアセチルアミノ−ベンズイミダゾロン455部を水3400部に分散後、25%水酸化ナトリウム水溶液595部を加えて溶解し、カップラー成分を得た。ジアゾ成分およびカップラー成分は、水および氷を加えてそれぞれ液量を6500部および4500部に調整した。90%酢酸30.6部を水6500部に加えた後、この溶液の温度を20℃に調整する。、カップラー成分を滴下しpHを6.0に調整後、ジアゾ成分を一定速度で滴下を開始した。酢酸溶液中に過剰のジアゾニウム塩が存在し得ないように、ジアゾ液の滴下と同時にカップラー成分の滴下を開始し、カップラー成分の滴下速度調整により酢酸溶液のpHを6.0に合わせながらカップリングを行った。カップリング中温度が20℃、またpHが6.0を維持するよう適時氷または5%水酸化ナトリウム溶液を添加しながら、カップリングを約3時間で終了後、90℃に加熱し1時間保持した。次いで、ろ過、水洗して得られたウェットケーキを90℃で乾燥した。得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕し、Y180顔料(粗顔料)として黄色の粉末を得た。
【0070】
[実施例5:磨砕処理]
製造例1にて得られた黄色粉末500部、塩2500部、ジエチレングリコール500部を15Lトリミックス(TM;井上製作所株式会社製)に仕込み、内温が80℃〜100℃を維持するように温調を設定の上、5時間磨砕した。磨砕後の顔料組成物を50℃の温水に投入、攪拌し、十分にリスラリー後、ろ過、水洗して得られたウェットケーキを90℃で乾燥した。得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕し、黄色の粉末を得た。
【0071】
[実施例6:磨砕処理]
実施例5による製造法で、黄色粉末を750部、塩を2250部、ジエチレングリコールを750部に変更した以外は同様にして、黄色の粉末を得た。
【0072】
[実施例7:磨砕処理]
実施例5による製造法で、2Lトリミックスを2Lニーダー(KN;吉田製作所株式会社製)に変更し、製造例1の黄色粉末を150g、塩を750g、ジエチレングリコールを150gに変更した以外は同様にして、黄色の粉末を得た。
【0073】
[比較例8:溶剤処理]
製造例1の工程途中のウェットケーキ160部、イソブタノール180部、水240部を、1Lのオートクレーブ容器に仕込み、130℃で5時間加熱した。得られたスラリーをろ過、十分に水洗して得られたウェットケーキを90℃で乾燥した。得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕し、黄色の粉末を得た。
【0074】
【表2】
【0075】
次に、上記製造例1、実施例5−7、及び比較例8の顔料を含むIJインク用水性顔料分散液を、下記配合A’又は配合B’に記載の方法で作製した(配合A’か配合B’かは表3に記載)。作製した分散液を実施例8−11、及び比較例9−11とし、以下の評価を行った。
【0076】
(配合A’:アルカリ金属水酸化物なし)
顔料4.0gに対して、分散樹脂として、ブロック共重合体[商品名:DISPERBYK−190(Mw:約11,000、酸価:10、有効成分40質量%、ビック・ケミー株式会社製)]2.0g及びイオン交換水14.0gを加え、水性顔料分散液の全量が20.0gになるようにした。用いた分散樹脂は、樹脂に相当する不揮発成分とともに水や水性溶媒を含むため、分散樹脂中における不揮発成分が0.8gとなるようにしたうえで、加えるイオン交換水の量を調整した。そして、水性顔料分散液に1mmガラスビーズを加え、ペイントコンディショナーを用いて90分間分散させた。その後、不揮発分が15質量%となるようイオン交換水を加えた。
【0077】
(配合B’:アルカリ金属水酸化物あり)
顔料4.0gに対して、分散樹脂としてスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体(酸価:167、有効成分45質量%)1.78g、25質量%水酸化カリウム水溶液0.43g、イソプロピルアルコール1.02g及びイオン交換水22.77gを加え、水性顔料分散液の全量が30.0gになるようにした。そして、水性顔料分散液に1mmガラスビーズを加え、ペイントコンディショナーを用いて90分間分散させた。その後、不揮発分が15質量%となるようイオン交換水を加えた。
【0078】
[評価:貯蔵安定性]
上記の方法で得たIJインク用水性顔料分散液の粘度を、E型粘度計TV−25形(東機産業株式会社製)を用いて測定した。当該分散液を60℃の恒温槽内に1週間静置した後に、同様に粘度を測定し、加熱前の粘度の変化(粘度比)から、貯蔵安定性を判定した。
【0079】
[評価:印刷濃度(OD)]
上記の方法で得たIJインク用水性顔料分散液9.6gに、商品名:サーフィノール465(日信化学工業株式会社製)0.3g、グリセリン3.0g、1,2−ヘキサンジオール1.5g、イオン交換水15.6gを加え、全量が30.0gになるようにし、水性IJインクを作製した。この水性IJインクを、市販のビジネスプリンターPX−105(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに充填し、キヤノン写真用紙・光沢ゴールド(A4サイズ、型番:GL−101A4100、キヤノン株式会社製)に印刷した。そして、測色機X−Rite eXact(エックスライト株式会社製)を用いて、印字率100%で印刷した部分のY値を測定し、印刷濃度(OD)とした。
【0080】
[評価:耐光性]
上記印刷濃度(OD)での印字物のうち、印字率75%で印刷した部分について、紫外線フェードメーターU48H(スガ試験機株式会社製)を用いて、100時間紫外線曝露し、照射前後のΔEより耐光性の良否を判定した。
【0081】
【表3】
【0082】
上記表3より、実施例8−11の「第二の発明」のY180(実施例5−7)を用いた分散液では、加熱前後で粘度変化が小さく貯蔵安定性が高く、長期間保存できることが分かる。一方、製造例9及び10の合成品(製造例1)を用いた分散液では、加熱後にゲル化してしまったことから顔料の貯蔵安定性が悪く、容易に凝集してしまうことが分かる(ゲル化のため加熱前後粘度比は算出不可)。印刷物においては、実施例8−11の「第二の発明」のY180(実施例5−7)を用いた方が比較例9−10の合成品(製造例1)に比べて、印刷濃度(OD)が高く、更に耐光性にも優れることが分かる。また、実施例8−11の「第二の発明」のY180(実施例5−7)を用いた分散液と比較例11のイソブタノールで顔料化したもの(比較例8)を比較すると、加熱前後粘度比に大きな差はないが、印刷物としたときに実施例8−11の方が印刷濃度(OD)と耐光性のバランスに優れていることが分かる。
本発明は、C.I.ピグメントイエロー180と、酸価10以上20以下かつアミン価20以下であるブロック共重合体と、水と、を含むインクジェットインク用水性顔料分散液を提供する。また、本発明は、アスペクト比1.0〜2.0、一次粒子短径30〜100nmであり、更にCuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折において、2θ=6.7±0.5°の範囲内で最大回折強度を示すピークAの半値幅からシェラーの式により算出される結晶子径が15.0nm以上である、C.I.ピグメントイエロー180を提供する。