【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願はブロック共重合体に関するものである。本出願で用語ブロック共重合体は、互いに異なる2個の高分子セグメントが共有結合によって連結されている形態の共重合体である。
【0006】
本出願において、ある2種の高分子セグメントが同一であるということは、次の3つの場合のうちいずれか一つのケースに該当する場合である。まず(1)ある2種の高分子セグメントが主成分として含む単量体単位の種類が互いに同じである場合、または(2)ある2種の高分子セグメントが含む単量体単位の種類が50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上または90%以上共通し、各高分子セグメントの前記共通単量体単位の重量比率の偏差が30%以内、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内である場合に、両高分子セグメントは同一であるものと取り扱われ得る。前記において、共通する単量体単位の比率は、両高分子セグメントモードに対して満足するものが適切であり得る。例えば、ある高分子セグメント1がA、B、C、DおよびFの単量体単位を有し、他の高分子セグメント2がD、F、GおよびHの単量体単位を有する場合には、高分子セグメント1と2で共通する単量体単位はDおよびFであるが、高分子セグメント1の立場としては全5種の単量体のうち2種が共通しているので共通比率は40%(=100×2/5)であるが、高分子セグメント2の立場としては前記比率は50%(=100×2/4)である。したがって、このような場合には、共通比率が高分子セグメント2でのみ50%以上であるので、両高分子セグメントは同一でないものと認められ得る。一方、前記で共通単量体の重量比率の偏差は、大きい重量比率から小さい重量比率を差し引いた数値を小さい重量比率で割った数値の百分率である。例えば、前記の場合において、セグメント1のD単量体単位の重量比率がセグメント1の全単量体単位の重量比率の合計100%基準で約40%であり、セグメント2のD単量体単位の重量比率がセグメント2の全単量体単位の重量比率の合計100%基準で約30%であるとすると、前記重量比率の偏差は約33%(=100×(40−30)/30)程度となり得る。2個のセグメント内に共通する単量体単位が二種以上であると、同じセグメントとするためには、前記重量比率の偏差30%以内がすべての共通する単量体に対して満足するか、あるいは主成分である単量体単位に対して満足すると、共通する単量体とみなされ得る。
【0007】
他の例示において、ある2個のセグメントの溶解度パラメーター(solubility)の偏差が30%以内、25%以内、20%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内である場合にも、両セグメントは同一であるものとみなされ得る。前記偏差は、前記重量比率の偏差の場合のように、大きい溶解度パラメーターから小さい溶解度パラメーターを差し引いた数値を小さい重量比率で割った数値の百分率である。
【0008】
前記のような基準によって同一であるものと認められる各高分子セグメントは互いに異なる形態の重合体であり得るが(例えば、いずれか一つのセグメントはブロック共重合体の形態であり、他の一つのセグメントはランダム共重合体の形態)、好ましくは同じ形態の重合体であり得る。
【0009】
本出願では前記3つの基準のうちいずれか一つの基準だけを満足すると、同一であるものとみなされ得る。例えば、前記溶解度パラメーターの偏差が30%を超過しても、共通単量体の比率が50%以上であり、重量比率の偏差が30%以下であると、同一セグメントであり得、反対の場合も同じである。その反対に、前記三つの基準をいずれも満足できない場合は、互いに異なるセグメントとみなされ得る。
【0010】
本明細書において、ある成分がある対象内に主成分として含まれるということは、前記含まれる成分の重量比率が前記対象の全体の重量を基準として55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上または90%以上である場合を意味し、この場合、前記比率の上限は特に制限されず、例えば、約100%であり得る。
【0011】
本出願のブロック共重合体は、第1高分子セグメント、第2高分子セグメントおよび第3高分子セグメントを少なくとも含む。前記3個のセグメントは、互いに同一または異なるセグメントであり得るが、3個のセグメントがいずれも同じである場合は含まれない。一例示において、前記3個の高分子セグメントが一つの連結点に共有しながら共有結合している星状の構造(star−like structure)を有することができる。このようなブロック共重合体は、業界でいわゆるミクトアーム(miktoarm)ブロック共重合体としても公知にされている。本出願のブロック共重合体は、前記3個のセグメントを少なくとも含む限り、さらなる高分子セグメントを有してもよい。一例示において、本出願のブロック共重合体の高分子セグメントは、3個〜10個、3個〜8個、3個〜6個、3個または4個であり得る。
【0012】
前記ブロック共重合体において、前記3個の高分子セグメントのうち少なくとも一つの高分子セグメントは、前記連結点にいわゆる切断性リンカー(cleavable linker)で連結され得る。本出願では前記切断性リンカーは、熱の印加または光の照射のような外部の作用によって切断され得るリンカーを意味する。このようなリンカーは多様に公知にされている。
【0013】
本出願人は、前記のような星状の構造を有するブロック共重合体において、高分子セグメントのうち少なくとも一つを切断性リンカーで連結することによって、後述するように、自己組織化構造を形成した後に該当自己組織化構造を変更することができるということを確認した。例えば、理論に制限される訳ではないが、3個のセグメントを含むブロック共重合体を適用して自己組織化構造を形成した後に、外部の作用を通じて前記切断性リンカーを切断する場合に、切断されたセグメントと残存するブロック共重合体のブレンドが形成され、形成されたブレンドによる相分離構造から分離した相の界面での曲率が変更されることによって、前記相分離構造が変更されるものと考えられる。
【0014】
前記のような作用をより効果的に達成するために、前記ブロック共重合体において、前記第1〜第3高分子セグメントのうちいずれか一つは他の2個の高分子セグメントとは異なり得る。一例示で、前記ブロック共重合体において、前記第1〜第3高分子セグメントのうち2個の高分子セグメントは互いに同一であり、他の一つの高分子セグメントは前記2個の高分子セグメントとは異なり得る。このような構造において、前記切断性リンカーによって連結されるセグメントは前記互いに同じである2個の高分子セグメントのうちいずれか一つであり得る。このような場合に、切断によって形成された前記ブレンドから切断されたセグメントは、相分離構造を具現する残存のブロック共重合体のセグメントのうちいずれか一つのセグメントと混和し、他のセグメントとは混和せず、かつ新しい構造の相分離構造が具現され得る。
【0015】
前記のようなブロック共重合体の各セグメントの具体的な種類は特に制限されない。例えば、前記第1〜第3高分子セグメントは、それぞれ、ポリビニルピロリドンセグメント、ポリ乳酸(polylactic acid)セグメント、ポリビニルピリジンセグメント、ポリスチレンまたはポリトリメチルシリルスチレン(poly trimethylsilylstyrene)などのようなポリスチレン(polystyrene)セグメント、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)のようなポリアルキレンオキシドセグメント、ポリブタジエン(poly butadiene)セグメント、ポリイソプレン(poly isoprene)セグメントまたはポリエチレン(poly ethylene)等のポリオレフィンセグメントまたはポリメチルメタクリレ−トなどのポリ(アルキル(メタ)アクリレート)セグメントからなる群から前記条件を満足できるようにそれぞれ選択され得る。
【0016】
一方、本出願で前記高分子セグメントを連結する前記切断性リンカーの種類は特に制限されず、公知の切断性リンカーを適用することができる。例えば、前記リンカーとしては、光切断性リンカー(photocleavable linker)として公知にされているものとして、2−ニトロベンジル基、クマリニル基、ピレニルアルキル基などを含むリンカーであり得る。このような種類のリンカーは多様に公知にされており、そのようなリンカーを適用してセグメントを連結する方式もやはり公知にされている。本出願ではこのような公知のリンカーのうち適切なリンカーを制限なく選択して使うことができる。
【0017】
ブロック共重合体の数平均分子量(Mn(Number Average Molecular Weight))は、例えば、1000〜1000000の範囲内にあり得る。本明細書で用語数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を使って測定した標準ポリスチレンに対する換算数値であり、本明細書で用語分子量は特に別途に規定しない限り数平均分子量を意味する。分子量(Mn)は他の例示においては、例えば、5000以上、10000以上、50000以上、100000以上、300000以上、400000以上または500000以上であり得る。分子量(Mn)はさらに他の例示において、900000以下、800000以下または700000以下程度であり得る。ブロック共重合体は、1.01〜2の範囲内の分散度(polydispersity、Mw/Mn)を有することができる。分散度は他の例示において、約1.05以上または約1.1以上であり得る。前記分散度は他の例示において、約1.5以下であり得る。
【0018】
このような範囲でブロック共重合体は、適切な自己組織化特性を示すことができる。ブロック共重合体の数平均分子量などは、目的とする自己組織化構造などを勘案して調節され得る。
【0019】
ブロック共重合体が前記第1〜第3セグメントを少なくとも含む場合に、前記ブロック共重合体内で各セグメントの比率は特に制限されず、目的とする自己組織化の特性を考慮して適切に選択することができる。例えば、前述した通り、第1〜第3セグメントのうちある2個が同じセグメントであり、他の一つが異なるセグメントである場合に、前記ブロック共重合体において、前記一つの異なるセグメントの比率は10モル%〜90モル%の範囲内にあり得る。
【0020】
本出願の前記ブロック共重合体を製造する方法は特に制限されず、公知の方式を適用することができる。
【0021】
例えば、ブロック共重合体は、各セグメントを形成する単量体を用いたCLP(Controlled/Living Polymerization)方式によって製造することができる。例えば、有機希土類金属複合体を重合開始剤として使うか、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として使って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの無機酸塩の存在下に合成する陰イオン重合、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として使って有機アルミニウム化合物の存在下に合成する陰イオン重合方法、重合制御剤として原子移動ラジカル重合剤を利用する原子移動ラジカル重合法(ATRP)、重合制御剤として原子移動ラジカル重合剤を利用するものの、電子を発生させる有機または無機還元剤下で重合を遂行するARGET(Activators Regenerated by Electron Transfer)原子移動ラジカル重合法(ATRP)、ICAR(Initiators for continuous activator regeneration)原子移動ラジカル重合法(ATRP)、無機還元剤可逆付加−開裂連鎖移動剤を利用する可逆付加−開裂連鎖移動による重合法(RAFT)または有機テルル化合物を開始剤として利用する方法などがあり、このような方法のうち適切な方法が選択されて適用され得る。
【0022】
このような過程で星状の構造を形成するために、保護基(protecting group)等が適用された開始剤や鎖伝達物質またはブロック共重合体が適用され得、切断性リンカーを導入するための公知の工程も遂行され得る。
【0023】
本出願はまた、前記ブロック共重合体を含む高分子膜に関するものである。前記高分子膜は多様な用途に使われ得、例えば、多様な電子または電子素子、前記パターンの形成工程または磁気保存記録媒体、フラッシュメモリーなどの記録媒体またはバイオセンサなどに使用され得る。
【0024】
一つの例示において、前記高分子膜で前記ブロック共重合体は、自己組織化を通じてスフィア(sphere)、シリンダー(cylinder)、ジャイロイド(gyroid)またはラメラ(lamella)等を含む周期的構造を具現していてもよい。
【0025】
例えば、ブロック共重合体で第1または第2セグメントまたはそれと共有結合した他のセグメント内で他のセグメントがラメラ形態またはシリンダー形態などのような規則的な構造を形成していてもよい。
【0026】
一つの例示において、前記ブロック共重合体内の相分離構造は、前述した構造のうち2個以上が共に存在する構造であり得る。このような構造は、前述した通り、本出願のブロック共重合体を適用して自己組織化構造を一旦形成した後、前記切断性リンカーを切断する過程を通じて形成することができる。したがって、このような場合、前記高分子膜内には、前記第1〜第3高分子セグメントのうち一つのセグメントが切断された状態で他の2個のセグメントを含むブロック共重合体と混合されていてもよい。
【0027】
本出願はまた、前記ブロック共重合体を使って高分子膜を形成する方法に関するものである。前記方法は、前記ブロック共重合体を含む高分子膜を自己組織化された状態で基板上に形成することを含むことができる。例えば、前記方法は、前記ブロック共重合体またはそれを適正な溶媒に希釈したコーティング液層を塗布などによって基板上に形成し、必要であれば、前記層を熟成したり熱処理する過程を含むことができる。
【0028】
前記熟成または熱処理は、例えば、ブロック共重合体の相転移温度またはガラス転移温度を基準として行われ得、例えば、前記ガラス転移温度または相転移温度以上の温度で行われ得る。このような熱処理が行われる時間は特に制限されず、例えば、約1分〜72時間の範囲内で行われ得るが、これは必要に応じて変更され得る。また、高分子薄膜の熱処理温度は、例えば、100℃〜250℃程度であり得るが、これは使われるブロック共重合体を考慮して変更され得る。
【0029】
前記形成された層は、他の例示においては常温の非極性溶媒および/または極性溶媒内で、約1分〜72時間の間、溶媒熟成されてもよい。
【0030】
一つの例示において、前記高分子膜の形成方法は、前述したブロック共重合体を使って第1相分離構造を具現する段階;および前記第1相分離構造を具現しているブロック共重合体の切断性リンカーを切断する段階を含むことができ、前述した通り、前記切断段階によって前記第1相分離構造とは異なる第2相分離構造が高分子膜内に形成され得る。この場合、前記切断性リンカーを切断する方式は特に制限されず、適用されたリンカーの種類を考慮して適切な方式を選択することができる。
【0031】
このような切断は、高分子膜全体で行われてもよく、マスキング等を通じて一部に対してのみ行われてもよい。また、前記第1および第2相分離構造のそれぞれは、スフィア(sphere)、シリンダー(cylinder)、ジャイロイド(gyroid)およびラメラ(lamella)構造からなる群から選択されたいずれか一つに選択され得る。
【0032】
本出願はまた、パターンの形成方法に関するものである。前記方法は、例えば、基板および前記基板の表面に形成されており、自己組織化されたブロック共重合体を含む前記高分子膜を有する積層体から前記ブロック共重合体のいずれか一つのセグメントを選択的に除去する過程を含むことができる。前記方法は、前記基板にパターンを形成する方法であり得る。例えば前記方法は、前記ブロック共重合体を含む高分子膜を基板に形成し、前記膜内に存在するブロック共重合体のいずれか一つまたはそれ以上のブロックを選択的に除去した後、基板を食刻することを含むことができる。このような方式によって、例えば、ナノスケールの微細パターンの形成が可能である。また、高分子膜内のブロック共重合体の形態に応じて前記方式を通じてナノロッドまたはナノホールなどのような多様な形態のパターンを形成することができる。必要であれば、パターンの形成のために前記ブロック共重合体と異なる共重合体あるいは単独重合体などが混合され得る。このような方式に適用される前記基板の種類は特に制限されず、必要に応じて選択することができ、例えば、酸化ケイ素などが適用され得る。
【0033】
例えば、前記方式は高い縦横比を示す酸化ケイ素のナノスケールのパターンを形成することができる。例えば、酸化ケイ素上に前記高分子膜を形成し、前記高分子膜内のブロック共重合体が所定の構造を形成している状態でブロック共重合体のいずれか一つのブロックを選択的に除去した後に酸化ケイ素を多様な方式、例えば、反応性イオン食刻等によってエッチングしてナノロッドまたはナノホールのパターンなどを含む多様な形態を具現することができる。
【0034】
前記方法においてブロック共重合体のいずれか一つのセグメントを選択的に除去する方式は特に制限されず、例えば、高分子膜に適正な電磁気波、例えば、紫外線などを照射して相対的にソフトなブロックを除去する方式を用いることができる。この場合、紫外線照射条件はブロック共重合体のブロックの種類によって決定され、例えば、約254nm波長の紫外線を1分〜60分の間照射して行うことができる。
【0035】
また、紫外線照射に引き続き、高分子膜を酸などで処理して紫外線によって分解されたセグメントをさらに除去する段階を遂行することもできる。
【0036】
また、選択的にブロックが除去された高分子膜をマスクとして基板をエッチングする段階は特に制限されず、例えば、CF
4/Arイオンなどを使用した反応性イオン食刻の段階を通じて行うことができ、この過程に引き続き酸素プラズマ処理などによって高分子膜を基板から除去する段階をさらに行うことができる。