(54)【発明の名称】スイッチドリラクタンスモータおよび発電機などの回転電力機械のセンサレス駆動装置、並びに該センサレス駆動装置および回転電力機械を備えた回転システム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁性材からなる複数の突極を有するロータと、前記ロータを囲うように配置された第1の電磁石、第2の電磁石、および第3の電磁石を少なくとも含む複数の電磁石を有するステータとを備えた回転電力機械を駆動するためのセンサレス駆動装置であって、
前記電磁石に電流を間欠的に流して前記電磁石を励磁させ、前記ロータの突極と前記電磁石との間に磁気力を発生させることで前記ロータを回転させるドライバと、
前記電磁石に流れるリップル電流の大きさを測定する電流測定装置と、
前記電流測定装置で測定された前記リップル電流の大きさを記憶するリップル電流記憶装置と、
前記電磁石への励磁開始タイミングと励磁終了タイミングを決定する転流タイミング決定部を備えたセンサレス駆動装置において、
前記リップル電流記憶装置は、前記ロータがフリーラン状態にあるときに、前記リップル電流の大きさを、前記ロータの角度の少なくとも一周期分を記憶し、
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流の大きさに基づいて前記電磁石への励磁開始タイミングと励磁終了タイミングを決定することを特徴とするセンサレス駆動装置。
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流の大きさが第1の閾値となった時点である励磁開始タイミングを決定し、前記記憶されたリップル電流の大きさが第2の閾値となった時点である励磁終了タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載のセンサレス駆動装置。
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流のうち、前記第1の電磁石に流れたリップル電流の最大値と最小値との差を算出し、前記差を予め定められた第1の内分点および第2の内分点で内分し、前記第1の内分点での前記リップル電流の大きさに相当する第1の閾値を決定し、前記第2の内分点での前記リップル電流の大きさに相当する第2の閾値を決定することを特徴とする請求項2に記載のセンサレス駆動装置。
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流のうち、前記第2の電磁石に流れたリップル電流の大きさに乗算される第1の係数パラメータを決定するように構成され、前記第1の係数パラメータは、該第1の係数パラメータが乗算された前記リップル電流の大きさと、前記第1の電磁石に流れた前記リップル電流の大きさが同時に前記第1の閾値に一致するような数値を有することを特徴とする請求項3に記載のセンサレス駆動装置。
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流のうち、前記第2の電磁石および前記第3の電磁石に流れた2つの前記リップル電流の大きさにそれぞれ乗算される2つの第2の係数パラメータを決定するように構成され、前記2つの第2の係数パラメータは、該2つの第2の係数パラメータがそれぞれ乗算された前記2つのリップル電流の大きさが同時に前記第2の閾値に一致するような数値をそれぞれ有することを特徴とする請求項4に記載のセンサレス駆動装置。
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流のうち、前記第1の電磁石に流れたリップル電流の大きさが前記第2の閾値に一致したときに前記第2の電磁石に流れたリップル電流の大きさを第3の閾値として決定することを特徴とする請求項2または3に記載のセンサレス駆動装置。
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流のうち、前記第2の電磁石に流れたリップル電流の大きさに乗算される第1の係数パラメータを決定するように構成され、前記第1の係数パラメータは、該第1の係数パラメータが乗算された前記リップル電流の大きさと、前記第1の電磁石に流れた前記リップル電流の大きさが同時に前記第1の閾値に一致するような数値を有することを特徴とする請求項6に記載のセンサレス駆動装置。
前記転流タイミング決定部は、前記記憶されたリップル電流のうち、前記第3の電磁石に流れたリップル電流の大きさに乗算される第2の係数パラメータを決定するように構成され、前記第2の係数パラメータは、該第2の係数パラメータが乗算された前記リップル電流の大きさと、前記第2の電磁石に流れた前記リップル電流の大きさが同時に前記第3の閾値に一致するような数値を有することを特徴とする請求項7に記載のセンサレス駆動装置。
前記ドライバは、フリーラン状態にある前記ロータが停止する前に、前記決定された励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを使用して、前記電磁石に電流を間欠的に流して前記電磁石を励磁させ、前記ロータの突極と前記電磁石との間に磁気力を発生させることで前記ロータを回転させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のセンサレス駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、スイッチドリラクタンスモータのセンサレス駆動装置であるが、本発明は発電機のセンサレス駆動装置にも適用することができる。
【0016】
図1は、スイッチドリラクタンスモータを示す断面図である。
図1に示すスイッチドリラクタンスモータ1は、6極ステータ2と4極ロータ10を備えた3相スイッチドリラクタンスモータである。ステータ2およびロータ10は、ケイ素鋼板などの磁性材で構成される。ロータ10には4つの突極11があり、ステータ2には6つの突極3がある。ステータ2はロータ10を囲うように配置されている。ステータ2のそれぞれの突極3にコイル(巻線)6が取り付けられ、それぞれ磁極U1,U2,V1,V2,W1,W2を形成している。コイル6に電流を流すことで磁極U1,U2,V1,V2,W1,W2は電磁石となり、これら電磁石がロータ10の突極11を引き寄せる磁力を発生させる。
【0017】
図2は、磁極U1,U2,V1,V2,W1,W2の接続例を説明する図である。磁極U1のコイル6と磁極U2のコイル6は直列に接続されており、U相の電磁石を形成する。U相に電流iUを流すことで、磁極U1がN極に、磁極U2がS極となるようコイル6の巻き方向を決定している。同様に、磁極V1と磁極V2、磁極W1と磁極W2もそれぞれV相の電磁石およびW相の電磁石を形成する。
【0018】
ロータ10が1回転するとき、ロータ10の4つの突極11は各磁極(例えば、磁極U1)を4回通過することになる。すなわち、各相のコイル6に4回電流を流し、ロータ10の突極11を磁力で引き寄せることでロータ10は360度回転する。
図3に各相の磁極の励磁タイミングの一例を示す。この例では、磁極U1とロータ10の突極11の1つが、直線的に最も近づく時のロータ10の角度(機械角)を0度としている。U相の電磁石(磁極U1,U2)を励磁している時は、V相の電磁石(磁極V1,V2)およびW相の電磁石(磁極W1,W2)は非励磁としている。同様に、V相の電磁石を励磁している時は、W相の電磁石およびU相の電磁石は非励磁であり、W相の電磁石を励磁している時は、U相の電磁石およびV相の電磁石は非励磁としている。
【0019】
図3に示すように、U相の電磁石、V相の電磁石、およびW相の電磁石を順次励磁させる通電サイクルは、6つの制御区間E1,E2,E3,E4,E5,E6から構成される。制御区間E1は、U相の電磁石(磁極U1,U2)が励磁される区間である。V相の電磁石(磁極V1,V2)およびW相の電磁石(磁極W1,W2)は非励磁である。制御区間E2は、U相の電磁石(磁極U1,U2)、V相の電磁石(磁極V1,V2)、およびW相の電磁石(磁極W1,W2)のすべてを非励磁とする区間である。制御区間E3は、V相の電磁石(磁極V1,V2)が励磁される区間である。U相の電磁石(磁極U1,U2)およびW相の電磁石(磁極W1,W2)は非励磁である。制御区間E4は、U相の電磁石(磁極U1,U2)、V相の電磁石(磁極V1,V2)、およびW相の電磁石(磁極W1,W2)のすべてを非励磁とする区間である。制御区間E5は、W相の電磁石(磁極W1,W2)が励磁される区間である。U相の電磁石(磁極U1,U2)およびV相の電磁石(磁極V1,V2)は非励磁である。制御区間E6は、U相の電磁石(磁極U1,U2)、V相の電磁石(磁極V1,V2)、およびW相の電磁石(磁極W1,W2)のすべてを非励磁とする区間である。つまり、制御区間E1,E3,E5は、U相、V相、W相の電磁石の励磁区間であり、制御区間E2,E4,E6は非励磁区間である。これら6つの制御区間E1,E2,E3,E4,E5,E6が順次繰り返されることにより、ロータ10は回転することができる。
【0020】
図1では、6極ステータ2および4極ロータ10を有する3相モータの構成を示しているが、例えば、12極ステータ、8極ロータで、U相,V相,W相それぞれの磁極を4つとしてもよい。また、4相など相の数を変えることもできることは言うまでもない。
【0021】
図4は、回転システムの一実施形態を示す模式図である。回転システムは、スイッチドリラクタンスモータ1と、センサレス駆動装置20とから構成される。このセンサレス駆動装置20は、目標電流生成器21、PWMコントローラ30、ドライブ回路40、電流センサ50、ロータ角検出器60、およびロータ角速度決定部90を備えている。
【0022】
電流センサ50は、ドライブ回路40からスイッチドリラクタンスモータ1に流れる三相(U相,V相,W相)の電流を測定する電流測定装置である。PWMコントローラ30は、目標電流i
U*,i
V*,i
W*がスイッチドリラクタンスモータ1に流れるように、ドライブ回路40のU相,V相,W相のPWMゲート信号G
U,G
V,G
Wを生成する。より具体的には、減算器31は、電流センサ50からフィードバックされた電流の測定値を目標電流値i
U*,i
V*,i
W*から減算し、減算して得られた信号をPID補償器32に入力する。比較器33は、PID補償器32で適度に調整された信号を三角波のPWMキャリアと比較することで、ドライブ回路40のU相,V相,W相のPWMゲート信号G
U,G
V,G
Wを生成する。PWMキャリアは三角波に限らず、例えばノコギリ波であってもよい。
【0023】
ドライブ回路40は、駆動電圧V
DCを生成する直流電圧生成器42と、この直流電圧生成器42に接続された複数のスイッチング素子44を有している。これらのスイッチング素子44は、PWMゲート信号G
U,G
V,G
Wに従って開閉(ON/OFF)する。ドライブ回路40はスイッチドリラクタンスモータ1に接続されている。U相,V相,W相それぞれのコイル6には、PWMゲート信号がONの時は駆動電圧V
DC、OFFの時は−V
DCが印加される。このようにして各相のコイル6に目標の電流が流れ、電磁石が励磁される。PWMコントローラ30およびドライブ回路40は、ステータ2の電磁石に電流を間欠的に流して電磁石を励磁させ、ロータ10の突極11と電磁石との間に磁気力を発生させることでロータ10を回転させるドライバ55を構成する。このタイプのドライバ55は、PWMドライバである。
【0024】
ロータ角検出器60は、電流センサ50で測定したリップル電流の大きさに基づいてロジック信号P
U,P
V,P
Wを生成する。ロジック信号P
U,P
V,P
Wは、各相の電磁石に通電するタイミングおよび通電を止めるタイミングを示す信号であり、ON信号とOFF信号とから構成される。ON信号は、各相の電磁石への電流供給を開始させるための指令信号であり、OFF信号は、各相の電磁石への電流供給を停止させるための指令信号である。ロータ1回転当たり、各相の電磁石への電流供給と電流供給の停止は、それぞれ4回繰り返される。より具体的には、ロジック信号P
U,P
V,P
Wは、それぞれ「1」と「0」から構成され、「1」はON信号、すなわち電流供給の開始を表し、「0」はOFF信号、すなわち電流供給の停止を表す。ロジック信号が1の時は電磁石を励磁し、0の時は電磁石は非励磁となる。
【0025】
ロータ角検出器60は、さらに、ロジック信号のON/OFF周期あるいは復調信号(後述する)からロータ10の位置、すなわち角度θを推定する。例えば、ロータ角検出器60は、ON信号からOFF信号へ(またはOFF信号からON信号へ)のロジック信号の切り換えタイミングの間隔から角度θを推定する。推定されたロータ10の角度θは、およびロータ角速度決定部90に送られる。このロータ角速度決定部90は、ロータ10の角度θの時間的変化を計算することで、ロータ10の角速度ωを決定する。
【0026】
ロータ10の角速度ωは、目標電流生成器21にフィードバックされる。目標電流生成器21は、減算器22、PID補償器23、電流リミッタ26、および乗算器25を備えている。減算器22は、角速度ωを目標角速度ω
*から減算して目標角速度ω
*と角速度ωとの差を求め、PID補償器23は上記差に基づいて目標電流信号i
*を生成する。さらに、乗算器25は、目標電流信号i
*をロジック信号P
U,P
V,P
Wに乗算することで、目標電流値i
U*,i
V*,i
W*を生成する。電流リミッタ26は、目標電流信号i
*を制限するためのものである。
【0027】
このようなセンサレス駆動装置20によれば、ロータ10に負荷が加わった時は角速度ωが目標角速度ω
*よりも遅くなるため、目標電流信号i
*が大きくなる。つまり、ロータ10の負荷に応じてステータ2の電磁石が励磁される。このように、ステータ2の電磁石は、角速度ωが目標角速度ω
*に追従するように磁気力、すなわちトルクを発生する。
【0028】
各相のコイル6に流れる電流には、PWMキャリアの周波数(キャリア周波数という)に同期したリップル電流が重畳する。このリップル電流は、PWMコントローラ30およびドライブ回路40によって生成される。リップル電流の大きさは、コイル6のインダクタンスに反比例する。つまり、ロータ10の突極11がステータ2の突極3に接近するとリップル電流が小さくなり、離れると大きくなる。したがって、このリップル電流の脈動を検出することでロータ10の角度θを推定することができる。ロータ角検出器60は、リップル電流の大きさ(振幅)に基づいてロータ10の位置、すなわち角度θを検出する。
【0029】
図5は
図4に記載のロータ角検出器60の一例の詳細を示す。ロータ角検出器60は、汎用または専用のコンピュータから構成してもよい。ロータ角検出器60は、復調部70と、ロジック信号生成部80と、転流タイミング決定部95と、電流センサ50により測定されたリップル電流を記憶するリップル電流記憶装置98とを備えている。まず復調部70について説明する。復調部70は、バンドパスフィルタ(AM変調波抽出器)71、絶対値回路73、ノッチフィルタ75、およびローパスフィルタ77を備えている。バンドパスフィルタ71、絶対値回路73、ノッチフィルタ75、およびローパスフィルタ77は、この順に直列に接続されている。
【0030】
上述したように、各相のコイル6に流れる電流には、キャリア周波数に同期したリップル電流が重畳する。電流センサ50で検出した電流値i
U,i
V,i
Wは、PWMキャリアの周波数を通過帯域の中心周波数とするバンドパスフィルタ71に通される。これによりロータ10の角度に応じて振幅が変動する正弦波信号、すなわちAM変調波を抽出できる。すなわち、ロータ10の突極11がステータ2の突極3に接近すると波高値が小さくなり、ロータ10の突極11がステータ2の突極3から離れると波高値が大きくなるようなAM変調波を抽出できる。
【0031】
AM変調波は次に絶対値回路73に送られる。絶対値回路73は、AM変調波のマイナス側成分をプラス側に折り返す。すなわち、絶対値回路73は、AM変調波のマイナス側成分をプラス側成分に変換する。そうすることでAM変調波はプラス側成分のみから構成され、AM変調波の周波数はPWMキャリアの周波数の2倍となる。このプラス側成分のみを持つAM変調波は、キャリア周波数の2倍の周波数を阻止帯域の中心周波数に持つノッチフィルタ75に通され、ノッチフィルタ75によってAM変調波の波高値のみが抽出される。そしてわずかに残るキャリア周波数ノイズを除去するため、AM変調波を、キャリア周波数の1/10程度にカットオフ周波数を設定したローパスフィルタ77に通過させる。このようにしてリップル電流から抽出したAM変調波の復調信号S
U,S
V,S
Wを得る。ノイズが小さければローパスフィルタ77は不要である。また、絶対値回路73は省略してもよい。
【0032】
図6は、U相電流と、AM変調波と、AM変調波の復調信号の一例を示す図である。ステータ2のコイル6の直流抵抗やスイッチング損失が存在しない理想的な状態では、PWMのデューティ比が50%のときにドライブ回路40から出力される平均電流は一定となる。ドライブ回路40は、デューティ比が50%より大きいときは電流が上昇し、50%未満のときは下降するよう動作する。実際には、ステータ2のコイル6の直流抵抗やスイッチング損失が存在するため、デューティ比を50%に固定した場合でも電流は一定とならず下降傾向となる。
【0033】
ドライブ回路40の特性上、電流の流れる方向は一方向のみである。すなわち、必ず
図2の端子U+からコイル6に電流が流入し、端子U−に戻ってくる。電流0近辺ではマイナスの電流が流せないため、
図6に示すようにステータ2の磁極が非励磁状態であってもリップル電流の平均値は0近辺である。このことから、ステータ2の磁極が非励磁の時はPWMのデューティ比を50%近辺あるいは50%以下に固定してもよい。デューティ比を所定の値に固定することで安定したリップル電流が得られ、ノイズの少ないAM変調波や復調信号が得られる。
【0034】
上述した復調部70は、AM変調波のピーク(波高値)を抽出する包絡線検波方式であるが、これに代えて、復調部70はPWMコントローラ30のキャリア周波数と同期した参照波を用いてAM変調波を復調する同期検波方式であってもよい。また、リップル電流をPWMキャリア周波数と同期したサンプリングでモニタしてリップル電流の大きさを抽出してもよい。
【0035】
リップル電流の波高値は通常インダクタンスに反比例する。しかしながら、励磁開始時および励磁終了時はPWMのデューティ比がそれぞれ100%、0%となり、PWMスイッチングをやめてしまうため、リップル電流が発生しなくなる。また、励磁中は電流が大きいほどステータ2およびロータ10は磁気飽和していき、インダクタンスが低下する。このようにインダクタンスと励磁電流には非線形な関係が成立している。つまり非励磁状態では安定したインダクタンスの検出、つまりロータ10の角度検出を行うことができるが、励磁状態では励磁電流と共にインダクタンスが変化するため精度が良いロータ10の角度検出ができない。
【0036】
また、スイッチドリラクタンスモータの機械加工の精度や組立誤差、さらには磁性材料の磁気特性差や電磁石の磁気特性差に起因して、インダクタンスはモータごと、さらには電磁石ごとに異なる。このインダクタンスのばらつきは、電磁石への励磁タイミングのずれを生み、その結果、トルク脈動が増大し、効率が低下する。
【0037】
そこで、本実施形態では、非励磁相のコイル6に流れるリップル電流から生成された復調信号を用いてロータ10の角度検出が行われ、さらに各相の転流タイミングが決定される。以下、各相の転流タイミング(すなわち、励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミング)について、説明する。ここでは説明の簡略化のためU相の転流タイミングについてのみ説明するが、V相およびW相の転流タイミングも同様にして決定される。
【0038】
本実施形態では、まず、スイッチドリラクタンスモータ1を公知の駆動方法で始動させ、ロータ10をある回転速度まで上昇させる。その後、全ての相の電磁石への励磁を停止することで、ロータ10をフリーランの状態にする。
図5に示すように、電流センサ50で測定されたリップル電流の大きさ(波高値)を記憶するリップル電流記憶装置98は、復調部70に接続されている。復調部70は、転流タイミング決定部95に接続されている。リップル電流記憶装置98は揮発性メモリまたは不揮発性メモリなどから構成される。このリップル電流記憶装置98は、ロータ10がフリーラン状態にあるときに、リップル電流の大きさを、ロータ10の角度θの少なくとも一周期分を記憶するように構成されている。リップル電流の大きさは、リップル電流の波高値またはピーク値で表される。
【0039】
転流タイミング決定部95は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流の大きさに基づいて電磁石への励磁開始タイミングと励磁終了タイミングを決定する。より具体的には、転流タイミング決定部95は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流の大きさが第1の閾値となった時点である励磁開始タイミングを決定し、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流の大きさが第2の閾値となった時点である励磁終了タイミングを決定するように構成されている。
【0040】
復調部70は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流の大きさを示す復調信号(包絡線)を生成する。
図7は、U相の電磁石に流れたリップル電流の復調信号(包絡線)S
Uを示す図である。
図7の縦軸はリップル電流の大きさを表し、横軸はロータ10の角度θを表している。
図7に示す復調信号S
Uは、ロータ10がフリーラン状態のときに(すなわち、全ての電磁石が非励磁のときに)測定されたリップル電流の大きさ(波高値またはピーク値)を表している。
【0041】
転流タイミング決定部95は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流の最大値Sumaxと最小値Suminとの差Dを算出し、差Dを予め定められた第1の内分点I1および第2の内分点I2で内分する。第1の内分点I1および第2の内分点I2の位置は、差Dを予め定められた比に内分する位置である。例えば、最小値Suminを0%、最大値Sumaxを100%とすると、第1の内分点I1は85%に相当する位置であり、第2の内分点I2は10%に相当する位置である。
【0042】
転流タイミング決定部95は、さらに、第1の内分点I1でのリップル電流の大きさに相当する第1の閾値H
U1を決定し、第2の内分点I2でのリップル電流の大きさに相当する第2の閾値H
U2を決定する。第1の閾値H
U1でのロータ10の角度θ1は、U相の電磁石の励磁開始タイミングであり、第2の閾値H
U2でのロータ10の角度θ2は、U相の電磁石の励磁終了タイミングである。図示しないが、転流タイミング決定部95は、同じようにして、V相の電磁石の励磁開始タイミングに相当する第1の閾値H
V1、V相の電磁石の励磁終了タイミングに相当する第2の閾値H
V2、W相の電磁石の励磁開始タイミングに相当する第1の閾値H
W1、W相の電磁石の励磁終了タイミングに相当する第2の閾値H
W2を決定する。
【0043】
図8は、第1の閾値H
U1を用いてU相の電磁石の励磁開始タイミングを決定する工程を説明するための図である。転流タイミング決定部95は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流のうち、V相の電磁石に流れたリップル電流の大きさ(復調信号S
V)に乗算される第1の係数パラメータ(以下、第1の係数パラメータC
U1という)を決定する。この第1の係数パラメータC
U1は、第1の係数パラメータC
U1が乗算された上記リップル電流の大きさと、ロータ10のフリーラン時にU相の電磁石に流れたリップル電流の大きさ(復調信号S
U)が同時に第1の閾値H
U1に一致するような数値を有する。
図8では、第1の係数パラメータC
U1が乗算された上記リップル電流の大きさは、記号S
V’で表されている。
図8から分かるように、リップル電流の大きさS
Uおよびリップル電流の大きさS
V’は、同時に(すなわち同じロータ角度で)第1の閾値H
U1に一致する。転流タイミング決定部95は、このような第1の係数パラメータC
U1を決定する。
【0044】
図9は、第2の閾値H
U2を用いてU相の電磁石の励磁終了タイミングを決定する工程を説明するための図である。転流タイミング決定部95は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流のうち、V相の電磁石およびW相の電磁石に流れた2つのリップル電流の大きさにそれぞれ乗算される2つの第2の係数パラメータ(以下、第2の係数パラメータC
U2という)を決定する。これら2つの第2の係数パラメータC
U2は、該2つの第2の係数パラメータC
U2がそれぞれ乗算された上記2つのリップル電流の大きさが同時に第2の閾値H
U2に一致するような数値をそれぞれ有する。
図9では、第2の係数パラメータC
U2が乗算された上記リップル電流の大きさは、記号S
V”,S
W”で表されている。
図9から分かるように、リップル電流の大きさS
V”およびリップル電流の大きさS
W”は、同時に(すなわち同じロータ角度で)第2の閾値H
U2に一致する。転流タイミング決定部95は、このような第2の係数パラメータC
U2を決定する。
【0045】
上述した第1の係数パラメータC
U1および第2の係数パラメータC
U2は、U相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを決定するために使用される。同様にして、転流タイミング決定部95は、V相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを決定するための第1の係数パラメータC
V1および第2の係数パラメータC
V2と、W相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを決定するための第1の係数パラメータC
W1および第2の係数パラメータC
W2を決定する。
【0046】
ロータ10のフリーラン終了後、通常の運転が開始される。具体的には、転流タイミング決定部95は、U相の電磁石およびV相の電磁石が非励磁のときにV相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに第1の係数パラメータC
U1を乗算し、第1の係数パラメータC
U1が乗算されたリップル電流の大きさと、非励磁であるU相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるU相の電磁石の励磁開始タイミングを決定し、U相の電磁石の励磁開始タイミングを示す信号P
UONを生成する。さらに、転流タイミング決定部95は、非励磁であるV相の電磁石およびW相の電磁石に流れる2つのリップル電流の大きさに前記2つの第2の係数パラメータC
U2をそれぞれ乗算し、2つの第2の係数パラメータC
U2が乗算された前記2つのリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるU相の電磁石の励磁終了タイミングを決定し、U相の電磁石の励磁終了タイミングを示す信号P
UOFFを生成する。
【0047】
同様に、転流タイミング決定部95は、V相の電磁石およびW相の電磁石が非励磁のときにW相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに第1の係数パラメータC
V1を乗算し、第1の係数パラメータC
V1が乗算されたリップル電流の大きさと、非励磁であるV相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるV相の電磁石の励磁開始タイミングを決定し、V相の電磁石の励磁開始タイミングを示す信号P
VONを生成する。さらに、転流タイミング決定部95は、非励磁であるW相の電磁石およびU相の電磁石に流れる2つのリップル電流の大きさに前記2つの第2の係数パラメータC
V2をそれぞれ乗算し、2つの第2の係数パラメータC
V2が乗算された前記2つのリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるV相の電磁石の励磁終了タイミングを決定し、V相の電磁石の励磁終了タイミングを示す信号P
VOFFを生成する。
【0048】
同様に、転流タイミング決定部95は、W相の電磁石およびU相の電磁石が非励磁のときにU相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに第1の係数パラメータC
W1を乗算し、第1の係数パラメータC
W1が乗算されたリップル電流の大きさと、非励磁であるW相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるW相の電磁石の励磁開始タイミングを決定し、W相の電磁石の励磁開始タイミングを示す信号P
WONを生成する。さらに、転流タイミング決定部95は、非励磁であるU相の電磁石およびV相の電磁石に流れる2つのリップル電流の大きさに前記2つの第2の係数パラメータC
W2をそれぞれ乗算し、2つの第2の係数パラメータC
W2が乗算された前記2つのリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるW相の電磁石の励磁終了タイミングを決定し、W相の電磁石の励磁終了タイミングを示す信号P
WOFFを生成する。
【0049】
このようにして、転流タイミング決定部95は、U相の電磁石、V相の電磁石、およびW相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを順次決定する。ドライバ55は、フリーラン状態にあるロータ10が停止する前に、上記決定された励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを使用して、3相の電磁石に電流を間欠的に流して3相の電磁石を励磁させ、ロータ10の突極11と3相の電磁石との間に磁気力を発生させることでロータ10を回転させる。
【0050】
第1の閾値H
U1および第2の閾値H
U2は、予め設定された固定値ではなく、ロータ10のフリーラン時にU相の電磁石に流れたリップル電流の大きさに基づいて決定される。リップル電流は、リラクタンスに反比例する。上述したように、リラクタンスおよびリップル電流は、スイッチドリラクタンスモータの機械加工の精度や組立誤差、さらには磁性材料の磁気特性差や電磁石の磁気特性差に起因して、モータ間で変わりうる。結果として、リップル電流の最大値S
Umaxと最小値S
Uminから決まる第1の閾値H
U1および第2の閾値H
U2もモータ間で変わりうる。第1の閾値H
U1および第2の閾値H
U2は、このようなモータ間のリラクタンスおよびリップル電流のばらつきを反映した値である。言い換えれば、第1の閾値H
U1および第2の閾値H
U2は、モータ間のリップル電流のばらつきとともに変わるので、モータ間のリラクタンスおよびリップル電流のばらつきによらず、リップル電流と閾値H
U1,H
U2との比較結果に基づいて、U相の電磁石の正確な励磁開始タイミングと励磁終了タイミングを決定することができる。V相の電磁石、およびW相の電磁石についても同様である。
【0051】
図10は、第2の閾値H
U2を用いてU相の電磁石の励磁終了タイミングを決定する工程の他の実施形態を説明するための図である。転流タイミング決定部95は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流のうち、U相の電磁石に流れたリップル電流の大きさS
Uが第2の閾値H
U2に一致したときにV相の電磁石に流れたリップル電流の大きさS
Vを第3の閾値H
U3として決定する。さらに、転流タイミング決定部95は、リップル電流記憶装置98に記憶されたリップル電流のうち、W相の電磁石に流れたリップル電流の大きさS
Wに乗算される第2の係数パラメータC
U2を決定する。第2の係数パラメータC
U2は、該第2の係数パラメータC
U2が乗算された上記リップル電流の大きさと、V相の電磁石に流れたリップル電流の大きさが同時に第3の閾値H
U3に一致するような数値を有する。
図10では、第2の係数パラメータC
U2が乗算された上記リップル電流の大きさは、記号S
W”で表されている。
図10から分かるように、リップル電流の大きさS
Vおよびリップル電流の大きさS
W”は、同時に(すなわち同じロータ角度で)第3の閾値H
U3に一致する。転流タイミング決定部95は、このような第2の係数パラメータC
U2を決定する。第1の係数パラメータC
U1は、先に述べた実施形態と同じようにして決定される。
【0052】
上述した第1の係数パラメータC
U1および第2の係数パラメータC
U2は、U相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを決定するために使用される。同様にして、転流タイミング決定部95は、V相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを決定するための第1の係数パラメータC
V1および第2の係数パラメータC
V2と、W相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを決定するための第1の係数パラメータC
W1および第2の係数パラメータC
W2を決定する。
【0053】
ロータ10のフリーラン終了後、通常の運転が開始される。具体的には、転流タイミング決定部95は、U相の電磁石およびV相の電磁石が非励磁のときにV相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに第1の係数パラメータC
U1を乗算し、第1の係数パラメータC
U1が乗算されたリップル電流の大きさと、非励磁であるU相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるU相の電磁石の励磁開始タイミングを決定し、U相の電磁石の励磁開始タイミングを示す信号P
UONを生成する。さらに、転流タイミング決定部95は、非励磁であるW相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに前記第2の係数パラメータC
U2を乗算し、第2の係数パラメータC
U2が乗算された前記リップル電流の大きさと、非励磁であるV相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるU相の電磁石の励磁終了タイミングを決定し、U相の電磁石の励磁終了タイミングを示す信号P
UOFFを生成する。
【0054】
同様に、転流タイミング決定部95は、V相の電磁石およびW相の電磁石が非励磁のときにW相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに第1の係数パラメータC
V1を乗算し、第1の係数パラメータC
V1が乗算されたリップル電流の大きさと、非励磁であるV相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるV相の電磁石の励磁開始タイミングを決定し、V相の電磁石の励磁開始タイミングを示す信号P
VONを生成する。さらに、転流タイミング決定部95は、非励磁であるU相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに前記第2の係数パラメータC
V2を乗算し、第2の係数パラメータC
V2が乗算された前記リップル電流の大きさと、非励磁であるW相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるV相の電磁石の励磁終了タイミングを決定し、V相の電磁石の励磁終了タイミングを示す信号P
VOFFを生成する。
【0055】
同様に、転流タイミング決定部95は、W相の電磁石およびU相の電磁石が非励磁のときにU相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに第1の係数パラメータC
W1を乗算し、第1の係数パラメータC
W1が乗算されたリップル電流の大きさと、非励磁であるW相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるW相の電磁石の励磁開始タイミングを決定し、W相の電磁石の励磁開始タイミングを示す信号P
WONを生成する。さらに、転流タイミング決定部95は、非励磁であるV相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに前記第2の係数パラメータC
W2を乗算し、第2の係数パラメータC
W2が乗算された前記リップル電流の大きさと、非励磁であるU相の電磁石に流れるリップル電流の大きさが互いに一致した時点であるW相の電磁石の励磁終了タイミングを決定し、W相の電磁石の励磁終了タイミングを示す信号P
WOFFを生成する。
【0056】
このようにして、転流タイミング決定部95は、U相の電磁石、V相の電磁石、およびW相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを順次決定する。ドライバ55は、フリーラン状態にあるロータ10が停止する前に、上記決定された励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを使用して、3相の電磁石に電流を間欠的に流して3相の電磁石を励磁させ、ロータ10の突極11と3相の電磁石との間に磁気力を発生させることでロータ10を回転させる。
【0057】
上述した各実施形態においては、第1の電磁石は、U相の電磁石、V相の電磁石、およびW相の電磁石うちのいずれかであり、第2の電磁石は、U相の電磁石、V相の電磁石、およびW相の電磁石うちの残りの2つのうちの一方であり、第3の電磁石は、U相の電磁石、V相の電磁石、およびW相の電磁石うちの残りの1つである。ただし、本発明は、3相のスイッチドリラクタンスモータのセンサレス駆動装置に限らず、4相以上のスイッチドリラクタンスモータのセンサレス駆動装置にも適用することができる。
【0058】
図11は、各相の電磁石の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを示す図である。復調信号S
UはU相の電磁石(磁極U1,U2)が励磁されている時は、本来であれば前述の通り非線形性の影響で精度よく検出できないが、
図11では簡略化のために常に非励磁状態として記載する。V相、W相についても同様である。
【0059】
U相のインダクタンスは、ロータ10の角度θが0度の時に最も大きくなる。従って、ロータ10の角度θが0度の時、リップル電流の振幅は小さくなり、復調信号S
Uも小さくなる。ロータ10の角度θが45度の時はインダクタンスが最小となるため、復調信号S
Uは最大となる。このように、復調信号S
Uは45度毎に最小、最大を繰り返す。V相の復調信号S
VはU相の復調信号S
Uから30度遅れで、W相の復調信号S
WはU相の復調信号S
Uから60度遅れで最小、最大を繰り返す。
【0060】
U相の電磁石(磁極U1,U2)の励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングを正確に決定するため、非線形性の影響がない非励磁相の復調信号を使う。すなわち、U相の電磁石の励磁開始タイミングを決定するために、非励磁のU相の復調信号S
Uおよび非励磁のV相の復調信号S
Vが使用される。U相の電磁石の励磁終了タイミングを決定するために、非励磁のW相の復調信号S
Wおよび非励磁のV相の復調信号S
Vが使用される。ロジック信号P
Uは、U相の電磁石の励磁開始タイミングを示すP
UON信号と、U相の電磁石の励磁終了タイミングを示すP
UOFF信号から構成される。V相、W相のロジック信号P
V,P
Wについても同様である。
【0061】
ロジック信号P
U,P
V,P
Wは、
図5に示すロジック信号生成部80にて生成される。すなわち、比較器81Aは、P
UON信号とP
UOFF信号とを加算してロジック信号P
Uを生成し、比較器81Bは、P
VON信号とP
VOFF信号とを加算してロジック信号P
Vを生成し、比較器81Cは、P
WON信号とP
WOFF信号とを加算してロジック信号P
Wを生成する。
【0062】
ロジック信号P
UのP
UON信号とP
UOFF信号とが切り替わるタイミングは、ロータ10の角度θに依存して変わる。したがって、ロジック信号P
Uからロータ10の角度θを算出することができる。例えば、ロータ10の角度θが60度のときに、ロジック信号P
UがP
UOFF信号からP
UON信号に切り替わることが既知であれば、ロジック信号P
UがP
UOFF信号からP
UON信号に切り替わった時のロータ10の角度θが60度であると決定できる。
図5に示すロジック信号生成部80に設けられた角度計算器85は、ロジック信号P
Uからロータ10の角度θを算出するように構成されている。一実施形態では、角度計算器85は、ロジック信号P
Vあるいはロジック信号P
Wからロータ10の角度θを計算してもよい。
【0063】
ロータ10の角度θが分かれば、ロータ角速度決定部90は、CPU(中央処理装置)やDSP(デジタル信号処理装置)などの演算器と、タイマーカウンターとを用いることにより、角度θの時間的な変化、すなわち角速度ωを算出することができる。ロジック信号生成部80全体をCPUやDSPで構成してもよい。
また、前述のように第1の係数パラメータと第2の係数パラメータを決定した後に、それらの係数パラメータを図示しないメモリまたはリップル電流記憶装置98に記憶してもよく、以降のモータ運転は記憶された係数パラメータで行うことができる。
【0064】
上述した実施形態は、3相のスイッチドリラクタンスモータのセンサレス駆動装置であるが、本発明は、4相以上のスイッチドリラクタンスモータのセンサレス駆動装置にも適用することができる。さらに、本発明は発電機のセンサレス駆動装置にも適用することができる。すなわち、
図1に示すスイッチドリラクタンスモータは、発電機としても機能する。さらに上述の実施形態における励磁開始タイミングおよび励磁終了タイミングは、発電機にも適用することができる。
【0065】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。