(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、繊維試料の評価方法及び繊維試料評価システムを具体化した一実施形態を
図1〜
図16にしたがって説明する。
まず、繊維試料について説明する。繊維試料は、繊維で構成されている。繊維試料としては、多数の単繊維から構成される繊維束、繊維束をカバーリング糸でカバーした繊維束、多数の単繊維を撚って形成された撚糸、織布、編紐、不織布などがある。単繊維は、有機繊維又は無機繊維でもよいし、異なる種類の有機繊維、異なる種類の無機繊維、又は有機繊維と無機繊維を混繊した混繊繊維でもよい。有機繊維としては、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等が挙げられ、無機繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、メタリック繊維等が挙げられる。
【0012】
次に、繊維試料を評価する繊維試料評価システムについて説明する。以下の説明では、繊維試料を、多数の単繊維から構成された繊維束に具体化する。繊維試料は、多数の単繊維から構成される繊維束以外に、上記に列記した繊維試料であってもよい。
【0013】
図1(a)に示すように、繊維試料となる繊維束13は、製造装置10によって製造される。その後、繊維束13は、複数のバックアップローラ11によってテンションが加えられた状態で搬送されてから、コイラ12に巻き取られる。製造ラインでは、繊維束13は、製造装置10からコイラ12に向かう搬送方向Yに搬送される。また、繊維束13は円柱状である。
【0014】
本実施形態の繊維試料評価システム14は、繊維束13が製造装置10で製造されてからコイラ12に巻き取られるまでの間に、繊維束13の繊度を評価する。「繊度」は、繊維束13の一定の長さに対する繊維質量の割合である。
【0015】
繊維試料評価システム14は、繊維束13の搬送方向Yに並ぶ一対のバックアップローラ11の間に配置されている。繊維束13が製造装置10で製造されてからコイラ12に巻き取られるまでの間に繊維束13の繊度を評価できれば、繊維試料評価システム14の位置は、適宜変更してもよい。
【0016】
図1(b)に示すように、繊維試料評価システム14は、X線源15と、イメージセンサ16と、繊維束13の繊度を評価する評価部20と、評価部20による評価結果を表示する表示装置21とを有する。X線源15及びイメージセンサ16は、X線源15とイメージセンサ16との間に繊維束13が配置されるように、対向配置されている。よって、繊維束13は、搬送方向Yへ搬送されるとともに、X線源15とイメージセンサ16の間を通過する。したがって、繊維束13の通過方向は、搬送方向Yと一致する。
【0017】
繊維試料評価システム14は、X線源15から照射されたX線Lを、搬送される繊維束13に照射する。また、繊維試料評価システム14は、X線透過像をイメージセンサ16に記録するとともに、X線透過像に含まれるX線透過輝度をイメージセンサ16に記録する。X線透過輝度は、露光時間内にイメージセンサ16が受光面で受光したX線量を電荷量に変換し更に数値に変換した無次元の数値である。X線源15から照射されるX線Lの種類は、特に限定されず、軟X線、X線、硬X線のいずれのX線であってもよい。
【0018】
イメージセンサ16には、フラットパネル型又はライン型のいずれも用いることができる。一般的に、フラットパネル型のイメージセンサ16では、受光データの読み出し速度が遅い。このため、フラットパネル型のイメージセンサ16を用いた場合、繊維束13を間欠搬送することによって、受光データを連続的に得ることができる。ただし、繊維束13の搬送速度よりも受光データの読み出し速度が速い場合は、間欠搬送をしなくてもよい。
【0019】
また、一般的に、ライン型のイメージセンサ16では、受光データの読み出し速度が、フラットパネル型のイメージセンサ16と比較して高速である。このため、ライン型のイメージセンサ16を用いた場合、繊維束13を連続搬送しながら、受光データを得ることができる。
【0020】
イメージセンサ16は、繊維束13のX線透過輝度を、RAWデータ又は画像形式ファイルとして記録する。画像形式ファイルとしては、Bitmap(.bmp)、Tagged Image File Format(.tiff)、Join Photographic Experts Group(.jpg)が挙げられる。
【0021】
また、イメージセンサ16は、X線透過輝度を8ビット(256階調)以上でかつ32ビット(4294967296階調)以下のグレースケールで記録する。1ビットの2階調のグレースケールや、2ビットの4階調のグレースケールは、後述する繊維束13の繊度を評価し難いため、好ましくない。また、8ビット未満でも、繊維束13の繊度を評価し難いため、好ましくない。一方、32ビットより大きいビット数でグレースケールの階調を表現した場合、繊維束13の繊度は評価できるものの、イメージセンサ16で記録するデータ量が大きくなりすぎるため、好ましくない。
【0022】
ただし、X線透過輝度に黒つぶれや白飛びしたデータが含まれていると、繊維束13の繊度の評価精度が低下する。このため、X線透過輝度に含まれる黒つぶれや白飛びを自動検出する機構およびそれをもとにX線の強度や検出器の感度、搬送速度等の調整できる機構を、繊維試料評価システム14の評価部20に組込んでおくことが好ましい。
【0023】
評価部20は、イメージセンサ16に信号接続されている。評価部20は、イメージセンサ16から得られるX線透過輝度に関する情報を用いて、繊維束13の繊度を評価する。具体的には、評価部20は、X線透過輝度を用いて、繊維束13の良否を判定する。繊維束13の繊度の評価方法は、後述する。評価部20は、表示装置21に信号接続されている。表示装置21は、評価部20によって評価された繊維束13の良否の判定結果を表示する。
【0024】
次に、繊維試料評価システム14による繊維束13の評価方法について、
図2を用いて説明する。
繊維束13の評価方法では、まず、繊維試料である繊維束13を撮像する(ステップS11)。このとき、X線源15から射出されたX線Lが、搬送方向Yに搬送される繊維束13、つまり、X線源15とイメージセンサ16の間を通過する繊維束13に照射される。イメージセンサ16には、繊維束13のX線透過像が記録される。X線透過輝度が8ビットの場合、繊維束13のX線透過像は、256階調のグレースケールによってイメージセンサ16に記録される。
【0025】
X線透過輝度は、X線Lが繊維束13に全く吸収されずイメージセンサ16に受光された場合、白色(8ビットの場合は輝度255)となる。一方、X線透過輝度は、X線Lが繊維束13に全て吸収されイメージセンサ16がX線を受光しなかった場合、黒色(8ビットの場合は輝度0)となる。このため、
図3(a)に示すように、イメージセンサ16によって撮像された繊維束13のX線透過像において、理論上は、繊維束13の部分が黒やグレーとなり、繊維束13の無い部分が白くなる。白色(輝度255)と黒色(輝度0)との間におけるX線透過輝度は、ランベルト・ベールの法則に従い、繊維束13の繊度によって変化する。
【0026】
図2に示すように、ステップS11の次にX線透過輝度の反転処理を行う(ステップS12)。
繊維試料評価システム14による繊維束13の繊度の評価には、X線透過輝度を用いる。具体的には、X線透過輝度と繊維束13の幅との積から得られる輝度面積を用いて、繊維束13の繊度を評価する。輝度面積を得るには、繊維束13が存在しない部分から繊維束13が存在する部分を輝度に基づいて並べ替える必要がある。よって、イメージセンサ16に記録されたX線透過輝度を反転させる。
【0027】
図3(b)に示すように、X線透過輝度を反転させると、得られるX線透過像は、繊維束13の部分と、繊維束13の無い部分とで白と黒が反転する。また、反転処理を行うことで、繊維束13のX線透過輝度が数値化される。X線透過輝度を反転させる方法として、X線透過輝度がRAWデータとして記録されている場合は数値計算ソフトウェアを用い、X線透過輝度が画像形式ファイルとして記録されている場合は画像処理ソフトウェアを用いる。そして、反転処理によって得られたX線透過輝度を、繊維束13の幅に対応付けることにより、繊維束13のX線透過輝度プロファイルが形成される。
【0028】
図4は、繊維束13のX線透過輝度を繊維束13の幅に対応付けて生成されたX線透過輝度プロファイルを示す。
図4の縦軸は、X線透過輝度に対応し、横軸は、繊維束13の幅に対応する。ここで、繊維束13の幅について説明する。イメージセンサ16の受光面は、複数の画素によって構成されている。受光面を構成する最小単位が画素(pixel)である。また、繊維束13の搬送方向Yに直交する方向が幅方向である。つまり、繊維束13の幅とは、繊維束13がイメージセンサ16上に投影された投影部分において繊維束13の幅方向に並ぶ画素の数である。
【0029】
図4に示すように、円柱状の繊維束13のX線透過輝度プロファイルは半楕円形となる。繊維束13の形状が円柱状から変化すると、図示しないが、X線透過輝度プロファイルの形状は半楕円形から変化する。例えば、X線源15とイメージセンサ16とが対向する方向及び繊維束13の搬送方向Yの両方と直交する方向に繊維束13が扁平であれば、X線透過輝度プロファイルの形状は半円形と類似する。また、X線源15とイメージセンサ16とが対向する方向に繊維束13が扁平であれば、X線透過輝度プロファイルは、円柱状の繊維束13のときよりも扁平な半楕円形と類似する。よって、繊維束13のX線透過輝度プロファイルの形状から、繊維束13の形状を評価することが可能である。
【0030】
X線透過輝度プロファイルにおいて、繊維束13が存在しない部分の輝度は、理論上は0である。輝度0の部分を幅方向に繋いだラインが、ベースラインBLとなる。しかし、X線Lが空気中の水分によって吸収されたり、イメージセンサ16が製造公差を有することによって、繊維束13周辺のX線透過輝度が0以外の場合がある。この場合は、ベースラインBLが一次関数や二次関数で表され、上述した輝度面積の算出の際、輝度面積の精度が低下する虞がある。そこで、繊維束13周辺のX線透過輝度が繊維束13のX線透過輝度の1/100以上となる場合(ステップS13でYES)、ベースラインBLの補正を行う(ステップS14)。
【0031】
ベースラインBLを一次関数で表すことができれば、ベースラインBLの補正には、一次関数を用いたフィッティングが行われる。ベースラインBLを二次関数で表すことができれば、ベースラインBLの補正には、二次関数を用いたフィッティングが行われる。ベースラインBL補正が必要ない場合(ステップS13でNO)、処理がステップS15に移行する。ベースラインBLのフィッティング範囲は、あらかじめ範囲を指定するか、繊維の位置の揺らぎ等に応じて範囲を変更しておこなう。
【0032】
図2に示すように、ステップS15では、輝度面積を算出する。上記したように、X線透過輝度は、ランベルト・ベールの法則に従い、繊維束13の繊度によって変化する。繊維束13の繊度が高くなれば、つまり、繊維束13の一定の長さに対する繊維質量が大きくなれば、X線透過輝度は大きくなる。一方、繊維束13の繊度が低くなれば、つまり、繊維束13の一定の長さに対する繊維質量が小さくなれば、X線透過輝度は小さくなる。
【0033】
繊維束13の繊度は、繊維束13のX線透過輝度(単位は無次元であり(−)と表記)と、イメージセンサ16上における繊維束13の幅(単位はpixel)との積を「輝度面積(単位はpixel・−)」と定義することによって、定量的に評価される。輝度面積は、以下の式1によって算出される。
【0034】
輝度面積=X線透過輝度・繊維束の幅…式1
X線透過輝度プロファイルには、各画素のX線透過輝度が表されている。X線透過輝度と繊維束13の幅との積は、X線透過輝度プロファイルで囲まれる部分の面積である。この面積が輝度面積となる。したがって、輝度面積が大きくなるほど、繊維束13の繊度が高くなることを示している。このように、繊維束13の輝度面積を定義することにより、繊維束13の繊度を定量的に評価することができる。
【0035】
また、輝度面積に繊維束13の長さ(単位はpixel)を加味した輝度体積(単位はpixel
2・−)を用いて、繊維束13の繊度を評価してもよい。
輝度体積は、以下の式2によって算出される。
【0036】
輝度体積=X線透過輝度・繊維束の幅・繊維束の長さ…式2
さらに、繊維束13の単位長さ当たりのX線透過輝度である平均輝度面積(単位は−)を用いて、繊維束13の繊度を、長さの情報を含んだ繊度として評価してもよい。平均輝度面積は、以下の式3によって算出される。
【0037】
平均輝度面積=単位長さ当たりのX線透過輝度・繊維束の幅…式3
また、繊維束13の繊度をより定量的に評価するには、X線源15の揺らぎを補正することが好ましい。このため、繊度が既知である標準試料のX線透過輝度を、常に繊維束13と同じ視野に入れて記録し、繊維束13の繊度を、標準試料の繊度の割合として評価してもよい。
【0038】
そして、評価部20がステップS15の処理を行う。つまり、評価部20は、輝度面積、輝度体積、及び平均輝度面積をそれぞれ算出する。
ステップS16では、評価部20が、算出した輝度面積、輝度体積、及び平均輝度面積を、予め設定された閾値と比較して、繊維束13の良否を判定する。評価部20は、繊維束13の良否の判定結果に関する信号を、表示装置21に出力する。表示装置21は、繊維束13の良否の判定結果を表示する。
【0039】
また、評価部20は、繊維束13の搬送方向Y(通過方向)の異なる複数の箇所で輝度面積を算出し、複数の輝度面積から、繊維束13の搬送方向Yに沿った繊度のばらつき、即ち、繊維束13の長手方向に沿った繊度のばらつきを評価してもよい。
【0040】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)繊維束13の搬送中、まず、繊維束13に向けてX線源15からX線Lが照射される。そして、イメージセンサ16で撮像されたX線透過像から得られるX線透過輝度を用いて、繊維束13の繊度が評価される。このため、繊維束13の一部を評価試料として切り出すことなく、しかも、製造ライン上で、繊維束13の繊度を定量的に評価できる。また、本方法は、イメージセンサ16によって得られるX線透過輝度と繊維束13の幅との積から求められる輝度面積を用いて繊維束13を評価する方法である。このため、繊維束13に化学物質を含ませる必要がなく、評価できる繊維束13が限定されることもない。また、X線透過輝度はX線透過像から得られる値であり、繊維束13の幅もイメージセンサ16上の寸法である。このため、輝度面積を得るために多くの処理を必要としない。よって、繊維束13の評価を容易に、しかも繊維束13の製造ライン上で行うことができる。
【0041】
(2)輝度面積を、繊維束13の搬送方向(通過方向)の異なる複数の箇所で得ることで、繊維束13の搬送方向Yに沿った繊度のばらつき、即ち、繊維束13の長手方向に沿った繊度のばらつきを評価できる。
【0042】
(3)X線透過輝度プロファイルは、X線透過輝度を繊維束13の幅に対応付けてグラフ化したものである。また、X線透過輝度は、繊維の量に応じて変動する値である。このため、X線透過輝度プロファイルの形状によって、繊維束13の幅方向の形状を非接触で評価できる。
【0043】
(4)X線透過輝度を、例えば、8ビットの256階調のグレースケールで記録することで、繊維束13の繊度を、輝度面積として定量化することができる。よって、繊維束13の繊度の評価がより一層容易となる。
【実施例】
【0044】
以下、上記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
[X線透過輝度プロファイル及び輝度面積による評価]
繊維試料評価システム14((株)ビームセンス製:FLEX−M345)を用いて、3つの繊維束(長さ23.2mm)を繊維試料として用いた。3つの繊維束のうち、
図5に示す繊維束を第1繊維束S1、
図6に示す繊維束を第2繊維束S2、
図7に示す繊維束を第3繊維束S3とする。
【0045】
そして、第1〜第3繊維束S1〜S3にX線源15からX線Lを照射し、イメージセンサ16でバッチ撮像した。X線透過像は8ビットのBitmap(.bmp)形式でイメージセンサ16に保存した。このとき、X線透過像に黒つぶれおよび白飛びを生じないようにX線の強度と露光時間を調節した。
【0046】
画像解析ソフトウェアであるImageJを用いて、X線透過像(長さ1400pixelの画像)のX線透過輝度を反転させた。次に、第1〜第3繊維束S1〜S3における長手方向中央の位置(長さ700pixel)のX線透過輝度プロファイルを手動によりベースライン補正した。ベースライン補正したX線透過輝度プロファイルを、
図8〜
図10に示す。
図8は、第1繊維束S1のX線透過輝度プロファイルを示す。
図9は、第2繊維束S2のX線透過輝度プロファイルを示す。
図10は、第3繊維束S3のX線透過輝度プロファイルを示す。
【0047】
次に、グラフ作成及びデータ分析ソフトウェアであるOriginを用いて、ベースライン補正を行ったX線透過輝度プロファイル(
図8〜
図10)を数値積分することで、輝度面積を求めた。
【0048】
第1繊維束S1の輝度面積は1725(pixel・−)であり、第2繊維束S2の輝度面積は3706(pixel・−)であり、第3繊維束S3の輝度面積は1149(pixel・−)であった。第1繊維束S1の重量は17mgであり、第2繊維束S2の重量は35mgであり、第3繊維束S3の重量は7mgであった。
【0049】
図8〜
図10に示すように、X線透過輝度プロファイルは、第1〜第3繊維束S1〜S3の形状を表している。X線透過輝度プロファイルを比較すれば、繊維束の形状の違いを評価できる。また、第1〜第3繊維束S1〜S3の輝度面積を比較しても、繊維束の形状の違いを評価できる。これらの比較から、最も太い第2繊維束S2の繊度が最も高いことが示され、最も細い第3繊維束S3の繊度が最も低いことが示された。
【0050】
[輝度体積による評価]
第1〜第3繊維束S1〜S3の輝度面積(pixel・−)に、長さ1400pixelを乗じることによって、輝度体積(pixel
2・−)を求めた。第1繊維束S1の輝度体積は2415000(pixel
2・−)であり、第2繊維束S2の輝度体積は5188400(pixel
2・−)であり、第3繊維束S3の輝度体積は1608600(pixel
2・−)であった。
【0051】
よって、第1〜第3繊維束S1〜S3の輝度体積を比較しても、繊維束の形状の違いを評価できる。これらの比較から、最も太い第2繊維束S2の繊度が最も高いことが示され、最も細い第3繊維束S3の繊度が最も低いことが示された。
【0052】
[平均輝度面積による評価]
第1〜第3繊維束S1〜S3の長手方向にX線透過輝度を平均化し、手動によりベースライン補正を行った。ベースライン補正を行ったX線透過輝度プロファイルを、
図11〜
図13に示す。
図11は、第1繊維束S1のX線透過輝度プロファイルを示す。
図12は、第2繊維束S2のX線透過輝度プロファイルを示す。
図13は、第3繊維束S3のX線透過輝度プロファイルを示す。
【0053】
グラフ作成及びデータ分析ソフトウェアであるOriginを用いて、ベースライン補正を行った
図11〜
図13に示すX線透過輝度プロファイルを数値積分することで、平均輝度面積(−)を求めた。
【0054】
第1繊維束S1の平均輝度面積(−)は1475であり、第2繊維束S2の平均輝度面積(−)は2987であり、第3繊維束S3の平均輝度面積(−)は612であった。よって、平均輝度面積の比較によって、繊維束の形状の違いを評価できる。これらの比較から、最も太い第2繊維束S2の繊度が最も高いことが示され、最も細い第3繊維束S3の繊度が最も低いことが示された。
【0055】
(実施例2)
[形状変化させた場合の平均輝度面積による評価]
実施例1と同じ方法を用いて、繊維束1〜5のX線透過輝度プロファイルを形成するとともに、平均輝度面積(−)を算出した。
【0056】
5つの繊維束1〜5をそれぞれ、緩めない第1状態、少し緩めた第2状態、及び第2状態よりも緩めた第3状態として、各平均輝度面積(−)を求めた。その結果を
図14に示す。
【0057】
(実施例3)
[数を変化させた場合の平均輝度面積による評価]
実施例2の繊維束1〜5をそれぞれ2つ又は3つ用意しそれらを平行に並べたこと以外は、実施例2と同じように、第1状態、第2状態、及び第3状態として、各平均輝度面積(−)を求めた。繊維束を2つ並べた場合の結果を
図15に示し、繊維束を3つ並べた場合の結果を
図16に示す。
【0058】
図14、
図15、及び
図16から、繊維束1〜5は繊維束の状態に関わらず、平均輝度面積がほぼ一定である。この結果から繊維束の間の空間の量に平均輝度面積が依存しないことが分かった。また、繊維束1〜5の数の増加に伴い、平均輝度面積(−)が2倍、3倍と増加していることを示している。この結果から、X線透過輝度から評価した繊度と繊維束の重量との間に正の相関性があることが分かった。
【0059】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
繊度の評価は、評価部20ではなく、人が行ってもよい。
繊維試料評価システム14から、表示装置21を省略してもよい。
【0060】
製造ライン上の繊維試料ではなく、繊維試料を製造ライン外で検査する場合に、繊維試料の評価方法及び繊維試料評価システム14を採用してもよい。