特許第6985006号(P6985006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985006
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】具材入り成形食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20211213BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20211213BHJP
   A23L 7/126 20160101ALI20211213BHJP
【FI】
   A23L5/00 A
   A23L33/17
   A23L7/126
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-228966(P2016-228966)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-82670(P2018-82670A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年11月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 出願人が平成28年8月31日、同年11月17日に具材入り成形食品の試供品を商談先に配付した事実
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宏之
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆将
(72)【発明者】
【氏名】諸田 広一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 耕平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克亮
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−500094(JP,A)
【文献】 特開2007−267737(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0186306(US,A1)
【文献】 特開2001−352927(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/116819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G1/00−9/52,
A23L5/00−7/25,29/00−33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白含量が30〜90質量%である蛋白素材からなる具材を含む粒状及び/又はフレーク状の具材と、前記具材の表面に油脂及び/又は粘調剤としての機能を有する溶媒を介して付着した、蛋白含量が30〜95質量%である蛋白粉と、前記蛋白粉が付着した前記具材の該各具材どうしを該蛋白粉とともに結着させる糖液とを含み、非焼成で所定形状に成形されており、前記蛋白粉の含有量が1〜20質量%、かつ、前記蛋白素材からなる具材及び前記蛋白粉を含めた全体の蛋白含量が20〜40質量%であり、前記蛋白粉が長径200μm以上の塊を有することなく前記具材表面に分布していることを特徴とする具材入り成形食品。
【請求項2】
前記粘調剤としての機能を有する溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、及びエタノールから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1記載の具材入り成形食品。
【請求項3】
前記油脂を含有する場合の該油脂の含有量は0.5質量%以上5質量%未満であり、前記粘調剤としての機能を有する溶媒を含有する場合の該溶媒の含有量は1〜5質量%である、請求項1又は2記載の具材入り成形食品。
【請求項4】
前記具材として、前記蛋白素材からなるものの他に、ドライフルーツ・ドライベジタブル、穀物加工品、種実類、焼菓子粉砕物、チョコチップ、キャラメルチップ、及びマシュマロからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の具材入り成形食品。
【請求項5】
水分活性が0.70以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の具材入り成形食品。
【請求項6】
蛋白含量が30〜90質量%である蛋白素材からなる具材を含む粒状及び/又はフレーク状の具材の表面に油脂及び/又は粘調剤としての機能を有する溶媒を介して、蛋白含量が30〜95質量%である蛋白粉を付着させる、具材と蛋白粉を混合する工程(1)と、前記工程(1)で得られた混合物と糖液を混合する工程(2)と、前記工程(2)で得られた混合物を非焼成で所定形状に成形する工程(3)を含み、前記工程(1)において、前記蛋白粉の含有量が1〜20質量%、前記蛋白素材からなる具材及び前記蛋白粉を含めた全体の蛋白含量が20〜40質量%となるように配合し、前記蛋白粉が長径200μm以上の塊を有することなく前記具材表面に分布している具材入り成形食品を得ることを特徴とする具材入り成形食品の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)において、前記油脂を含有させる場合の該油脂の含有量は0.5質量%以上5質量%未満、前記粘調剤としての機能を有する溶媒を含有させる場合の該溶媒の含有量は1〜5質量となるように配合する、請求項6記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項8】
前記粘調剤としての機能を有する溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、及びエタノールから選ばれる1種又は2種以上の溶媒である、請求項6又は7記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項9】
前記具材として、前記蛋白素材からなるものの他に、ドライフルーツ・ドライベジタブル、穀物加工品、種実類、焼菓子粉砕物、チョコチップ、キャラメルチップ、及びマシュマロからなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いる、請求項6〜8のいずれか1項に記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項10】
水分活性が0.70以下となるようにする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の具材入り成形食品の製造方法。
【請求項11】
前記工程(3)における成形をバー成形機により行う、請求項6〜10のいずれか1項に記載の具材入り成形食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白成分を多く含有し、手軽に栄養補給するのに適した、具材入り成形食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物類やドライフルーツなどの素材・具材を使用して手軽に栄養補給できるようにした、シリアルバーやグラノーラバーなどの具材入り成形食品が知られている。具材がないものは単一食感で飽きてしまうが、具材が含まれていると様々な食感が付与され、単なる栄養補給を目的とするだけではなく、食行為自体を楽しむことにもつながっている。また、穀物類やドライフルーツなどの種々の具材を含みながら、さらに蛋白成分をも十分に補給できるようにした製品への要望も高まりつつある。
【0003】
蛋白成分を配合した具材入り成形食品の技術に関し、例えば、下記特許文献1には、a)約1重量%以上がナゲットの形態である、10重量%以上の大豆および/または米タンパク質、b)少なくとも1つの遷移金属または遷移金属化合物、およびc)ポリオールからなる群から選択される2重量%以上の湿潤剤を含む栄養バーが開示されている。
【0004】
また、例えば、下記特許文献2には、少なくとも15重量%以上の完全穀粒と、約35重量%以上のバインダーと、約5重量%以上の配合コーティング剤とを含むシリアルバーであって、前記シリアルバーは、少なくとも約5重量%以上のタンパク質、約5重量%以上の繊維、およびバー28グラムあたり少なくとも120カロリー以下を提供するのに有効であり、前記シリアルバーは、約0.4から約0.6のAwを有することを特徴とするシリアルバーが開示されている。
【0005】
一方、例えば、下記特許文献3には、食感が改善されたシリアルバーの作製方法が開示されている。その方法によれば、シリアルと結合剤とが一緒になったシリアルマトリックスを形成し、その外側部分の水分活性が低下すると共にそのシリアルマトリックスの内側部分がより高い第2の水分活性で維持されるような時間および温度でこのマトリックスを加熱する、熱硬化ステップを含むので、より少ない圧縮力でシリアルバーを作製することができ、優れた保存寿命、小片の一体性、および食感を有する、粘着性が高品質で密度がより低いシリアルバーを提供することができると記載されている。
【0006】
また、例えば、下記特許文献4〜6には、グラノーラや穀物フレークなどの粒状食品及び/又はフレーク状食品に、乾燥果実を結着させた食品を製造する方法が開示されている。その方法によれば、粒状食品及び/又はフレーク状食品にバインダーを添加し、これを一次加圧して、結着物を得、その結着物を乾燥して乾燥物を得、得られた乾燥物と乾燥果実とを集合し二次加圧することで、加熱等の製造工程に起因した乾燥果実の変色や風味劣化が極力抑えられた果実含有乾燥食品が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−508803号公報
【特許文献2】特開2007−130018号公報
【特許文献3】特開2007−275066号公報
【特許文献4】特開2016−21909号公報
【特許文献5】特開2016−21910号公報
【特許文献6】特開2016−21911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、単に蛋白成分を多く配合したシリアルバーやグラノーラバーを製造するだけであれば、一般に大豆ハプやホエイパフあるいは上記特許文献1、2で使用されている大豆蛋白粒状物など、乾燥粒状の蛋白素材が知られているので、そのような素材を糖液で固めるなどすればよいが、穀物類やドライフルーツなどの具材を更に配合したいような場合には、その分量に競合して、全体の蛋白含量を減量せざるを得ないという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献3のように加熱を行う工程を経るとバー製品の保形性が向上する傾向があるが、この場合、素材本来の風味が変化したり、劣化したり、ビタミンなどの熱に弱い栄養成分が分解してしまうという問題があった。
【0010】
一方、上記特許文献4〜6の技術では、粒状食品及び/又はフレーク状食品からなる結着物を得るため一次加圧し、その結着物を乾燥し、得られた乾燥物と乾燥果実とを集合して二次加圧する、といった煩雑な工程を経なければならず、生産効率が悪いという問題があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、保形性向上のための加熱の工程を経ずともバー成形機による成形等が可能であって、穀物類やドライフルーツなどの種々の具材を含みながら、さらに蛋白成分をも十分に補給できるようにした、具材入り成形食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意研究した結果、バー製品等のバインダー液として用いられる糖液に合わせる素材としては、ダマになったり、煮詰めるときに焦げが発生したりと、不利な側面も多いと考えられていた蛋白粉を蛋白素材として使用することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の具材入り成形食品は、粒状及び/又はフレーク状の具材と、前記具材の表面に付着した蛋白粉と、前記蛋白粉が付着した前記具材の該各具材どうしを該蛋白粉とともに結着させる糖液とを含み、非焼成で所定形状に成形されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の具材入り成形食品によれば、各具材どうしを結着させる成分として糖液とともに蛋白粉を含むので、その蛋白粉により、粒状及び/又はフレーク状の具材の分量にあまり競合することなく、全体の蛋白含量を高めることができる。また、その蛋白粉により保形性が向上するので、バー成形機等により効率よく製造することができる。更に、非焼成で所定形状に成形されているので、素材本来の風味や熱に弱い栄養成分が良好に保持される。
【0015】
本発明の具材入り成形食品においては、前記具材の表面に前記蛋白粉が油脂を介して付着していることが好ましい。これによれば、具材の表面に蛋白粉をより均一に分散して付着させることができ、保形性が向上する。
【0016】
また、前記具材の少なくとも一部は蛋白素材からなり、全体の蛋白含量が15質量%以上であることが好ましい。これによれば、蛋白含量が高められた具材入り成形食品を提供することができる。
【0017】
また、前記具材として、前記蛋白素材からなるものの他に、ドライフルーツ・ドライベジタブル、穀物加工品、種実類、焼菓子粉砕物、チョコチップ、キャラメルチップ、及びマシュマロからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むことが好ましい。これによれば、バラエティに富む食感や風味を伴う具材入り成形食品を提供することができる。
【0018】
また、前記油脂の含有量が5質量%未満であることが好ましい。これによれば、油脂成分を多く含まない具材入り成形食品を提供することができる。
【0019】
また、水分活性が0.70以下であることが好ましい。これによれば、保存性の良好な具材入り成形食品を提供することができる。
【0020】
一方、本発明の具材入り成形食品の製造方法は、粒状及び/又はフレーク状の具材と蛋白粉を混合する工程(1)と、前記工程(1)で得られた混合物と糖液を混合する工程(2)と、前記工程(2)で得られた混合物を非焼成で所定形状に成形する工程(3)を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の具材入り成形食品の製造方法によれば、粒状及び/又はフレーク状の具材と蛋白粉を混合する工程(1)の後、前記工程(1)で得られた混合物と糖液を混合する工程(2)を行うようにしたので、蛋白粉が具材の表面に付着した状態で糖液と混合されることとなり、蛋白粉がダマになりにくくすることができる。また、各具材どうしを結着させる成分として糖液とともに蛋白粉を用いたので、その蛋白粉により、粒状及び/又はフレーク状の具材の分量にあまり競合することなく、全体の蛋白含量を高めることができる。また、その蛋白粉により保形性が向上するので、バー成形機等により効率よく製造することができる。更に、非焼成で所定形状に成形されているので、素材本来の風味や熱に弱い栄養成分が良好に保持される。
【0022】
本発明の具材入り成形食品の製造方法においては、前記工程(1)において、前記具材に予め油脂を混合した後、該具材に前記蛋白粉を混合することが好ましい。これによれば、具材の表面に蛋白粉をより均一に分散させて付着させることができ、保形性が向上する。
【0023】
また、前記具材の少なくとも一部として蛋白素材からなるものを用い、全体の蛋白含量が15質量%以上となるようにすることが好ましい。これによれば、蛋白含量が高められた具材入り成形食品を提供することができる。
【0024】
また、前記具材として、前記蛋白素材からなるものの他に、ドライフルーツ・ドライベジタブル、穀物加工品、種実類、焼菓子粉砕物、チョコチップ、キャラメルチップ、及びマシュマロからなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましい。これによれば、バラエティに富む食感や風味を伴う具材入り成形食品を提供することができる。
【0025】
また、前記油脂の含有量が5質量%未満となるようにすることが好ましい。これによれば、油脂成分を多く含まない具材入り成形食品を提供することができる。
【0026】
また、水分活性が0.70以下となるようにすることが好ましい。これによれば、保存性の良好な具材入り成形食品を提供することができる。
【0027】
また、前記工程(2)において、更にグリセロール、プロピレングリコール、エタノールから選ばれる1種又は2種以上を含有させることが好ましい。これによれば、水分活性をあまり上昇させずに糖液の粘度を抑えることができるので、バー成形機等による成形時に、成形適性がより良好となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、具材入り成形食品において、各具材どうしを結着させる成分として糖液とともに蛋白粉を利用したので、その蛋白粉により、粒状及び/又はフレーク状の具材の分量にあまり競合することなく、全体の蛋白含量を高めることができる。また、保形性が良好で、バー成形機等により効率よく製造することができる。更に、非焼成で所定形状に成形されているので、素材本来の風味や熱に弱い栄養成分が良好に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1で得られた具材入り成形食品の切断断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を示す顕微鏡写真である。
図2】実施例4で得られた具材入り成形食品の切断断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に使用可能な粒状及び/又はフレーク状の具材としては、例えば、ドライフルーツ・ドライベジタブル、穀物加工品、種実類、焼菓子粉砕物、チョコチップ、キャラメルチップ、マシュマロなどが挙げられる。
【0031】
ドライフルーツ・ドライベジタブルとしては、レーズン、クランベリー、カレンズ、ブルーベリー、プルーン、イチジク、アプリコット、オレンジピール、イチゴ、キウイ、リンゴ、マンゴー、パイナップル、パパイヤ、バナナ、ニンジン、カボチャ、オニオン、サツマイモ、ジャガイモ等、種々のものを用いることができ、特に制限はないが、例えば、糖類の含有量が40〜90質量%となるように、ドライフルーツ・ドライベジタブルの製造時に糖類を添加することが好ましい。これにより、菌類の繁殖速度を遅らせて常温での十分な日持ちを付与したり、果実・野菜類の良好な風味を増したりすることができる。また、ドライフルーツ・ドライベジタブルは、例えば、果実・野菜類からの採取部分をそのままの大きさで用いてもよく、あるいは適当な細断手段で長径およそ1〜10mm程度にカットして用いてもよい。
【0032】
穀物加工品としては、小麦、オーツ麦、ライ麦、大麦、大豆、玄米、精米、トウモロコシ等、種々のものを用いることができ、特に制限はないが、例えば、穀物全粒及び/又はその粉砕物を膨化したり(例えば、パフ状にしたり)、焙煎したりして用いることが好ましい。また、コーンフレーク、ブランフレーク、米フレーク等、穀物全粒の粉状物や粒状物に加水して、加熱・圧扁してフレーク状にして用いてもよい。これにより、菌類の繁殖速度を遅らせて常温での十分な日持ちを付与したり、穀物の香ばしい風味を増したりすることができる。また、穀物加工品は、例えば、穀物全粒をそのままの大きさで用いてもよく、あるいは適当な粉砕手段で長径およそ1〜10mm程度にカットして用いてもよい。
【0033】
種実類としては、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、クルミ、ヘイゼルナッツ、ピスタチオ、クリ、ヒマワリの種、カボチャの種等、種々のものを用いることができ、特に制限はないが、例えば、種実全粒及び/又はその粉砕物を乾燥したり、焙煎したりして用いることが好ましい。これにより、菌類の繁殖速度を遅らせて常温での十分な日持ちを付与したり、種実類の香ばしい風味を増したりすることができる。また、種実類は、例えば、種実全粒をそのままの大きさで用いてもよく、あるいは適当な細断手段で長径およそ1〜10mm程度にカットして用いてもよい。
【0034】
焼菓子粉砕物としては、ビスケット、クラッカー、ワッフル、ウエハース等の粉砕物や、ビスケットクラム、クッキークラム等、種々のものを用いることができ、特に制限はない。
【0035】
上記具材は、1種類を用いてもよいが、2種類以上を用いることがより好ましい。これによれば、1つの菓子において、よりバリエーションに富む食感と風味を味わうことができる。その大きさとしては、長径が1〜10mm程度であることが好ましい。また、その含有量としては、具材入り成形食品の全体中に、具材全量として40〜75質量%含有することが好ましく、50〜70質量%含有することがより好ましい。
【0036】
本発明の好ましい態様においては、上記具材の少なくとも一部が蛋白素材からなることが好ましい。これによれば、その蛋白素材による食感や風味を味わうことができるとともに、菓子全体の蛋白含量を高めることができる。
【0037】
そのような目的に用いられる蛋白素材としては、例えば、大豆パフ、大豆蛋白粒状物、ホエイパフ等が挙げられる。これら素材としては、蛋白含量が30〜90質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。これによれば、効果的に蛋白含量を高めることができる。また、水分含量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。これによれば、菌類の繁殖速度を遅らせて常温での十分な日持ちを付与することができるとともに、カリカリとした食感を付与することができる。なお、大豆パフとは、大豆の全粒及び/又はその粉砕物を膨化してパフ状に調製された大豆加工食品であり、例えば、不二製油株式会社製の「ソヤパフ30」、「ソヤパフ40」等を用いることができる。また、大豆蛋白粒状物とは、脱脂大豆を押出成型して長径1〜10mmの粒状に調製された大豆蛋白素材であり、例えば、昭和産業株式会社製の「昭和ミーテックスK−13」等を用いることができる。また、ホエイパフとは、例えば、乳性蛋白を、澱粉原料と膨張剤とともに、押出し成形したり、または、蒸練して乾燥してペレットにした後、膨化して長径1〜10mmの粒状に調製された乳蛋白素材であり、例えば、Body360 Nutritionals製の「BodyCrunch Whey Protein Puffs」等を用いることができる。蛋白素材は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0038】
上記蛋白素材を上記具材の少なくとも一部として用いる場合には、その含有量は、上記具材全体中の含有量として(複数種類含む場合はその合量として)、20〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましい。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として(複数種類含む場合はその合量として)、10〜65質量%であることが好ましく、35〜55質量%であることがより好ましい。
【0039】
本発明に使用可能な糖液としては、上記に説明した具材どうしを結着させることができるバインダーとしての機能を有しているものであればよく、特に制限はないが、例えば、単糖、二糖、異性化糖、糖アルコール、オリゴ糖、デキストリン、多糖類、澱粉等を含有する、例えば、コーンシロップ、シロップ、水飴、それら糖類を溶解した水溶液など、あるいはそれらの混合物などである。また、そのBrix値が75〜85程度になるよう煮詰めて調製されたものなどを用いることが好ましい。糖液には、本発明の構成を損なわない範囲であれば、糖質以外にも、油脂、ビタミン、ミネラル等の成分が含有されていてもよいし、また、香料、乳化剤、粘調剤等を添加・配合してもよい。なお、求める具材の硬さや食感によっては、その具材は、事前に糖液に添加しておいてもよい。
【0040】
上記糖液は、上記具材の全体量100質量部に対し、35〜80質量部配合することが好ましく、40〜65質量%配合することがより好ましい。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として25〜45質量%であることが好ましく、30〜40質量%であることがより好ましい。
【0041】
本発明に使用可能な蛋白粉としては、例えば、大豆パウダー、グルテンパウダー、ホエイパウダー、脱脂粉乳、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、ミルクプロテインパウダー等が挙げられる。これら素材としては、蛋白含量が30〜95質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることがより好ましい。これによれば、効果的に蛋白含量を高めることができる。また、水分含量が7質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。更に、粒度として、粒径100μm以下のものが80質量%以上含まれていることが好ましく、60μm以下のものが90質量%以上含まれていることがより好ましい。なお、大豆パウダーとしては、例えば、不二製油株式会社製の「フジプロAL」、「フジプロSEH」、「プロリーナ800」等を用いることができる。また、グルテンパウダーとしては、例えば、熊本製粉株式会社製の「小麦グルテンFX−75」等を用いることができる。また、ホエイパウダーとしては、例えば、フォンテラ社製の「WPC392」、「WPC472」、「WPI894」等を用いることができる。また、カゼインカルシウムとしては、例えば、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Calcium Caseinate S」等を用いることができる。また、カゼインナトリウムとしては、例えば、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Sodium Caseinate S」等を用いることができる。また、ミルクプロテインパウダーとしては、例えば、FrieslandCampina Domo社製の「Refit MPC80」等を用いることができる。蛋白粉は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0042】
上記蛋白粉は、上記具材の全体量100質量部に対し、2〜45質量部配合することが好ましく、4〜35質量部配合することがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、具材入り成形食品の切断断面を顕微鏡下に観察したとき、1000μm以上の塊が存在しないことが好ましく、500μm以上の塊が存在しないことがより好ましく、200μm以上の塊が存在しないことがさらに好ましい。このような塊があると、粉っぽさのある食感となる傾向があるので好ましくない。
【0043】
本発明の好ましい態様においては、上記具材の少なくとも一部が上記蛋白素材からなり、具材入り成形食品の全体の蛋白含量が15質量%以上とされていることが好ましく、15〜50質量%とされていることがより好ましく、20〜40質量%とされていることが更により好ましい。また、油脂の含有量が5質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%未満であることがより好ましく、0.5〜3質量%であることが更により好ましい。
【0044】
本発明の具材入り成形食品は、上記具材が、上記に説明した糖液及び蛋白粉を介して、その各具材どうしが結着して、非焼成で所定形状に成形されているものである。以下、その調製方法について更に詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する調製方法に限定されるものではない。
【0045】
まず、糖液を準備する。このとき、具材等との混合を考慮して、その糖液の流動性が損なわれない程度の温度に調整されることが好ましく、例えば、典型的には90〜110℃程度に調整されることがより好ましい。
【0046】
別途、具材と蛋白粉とを混合する。混合は、具材に蛋白粉をまぶすようにして行ってもよい。このときの混合においては、本発明の構成を損なわない範囲であれば、具材と蛋白粉以外にも、油脂、甘味料、香料、調味料、粘調剤等を添加・配合してもよい。例えば、油脂を添加・配合することによって、シットリとした食感を付与することができる。また、蛋白粉を具材の表面により均一に分散させ、付着させる作用もあると考えられる。更に、油脂の添加は、蛋白粉を混合する前の具材に対して行うことが好ましく、油脂を液状にして具材にコーティングするようにして行うことがより好ましい。これによれば、蛋白粉を具材の表面に、より均一に分散させ、付着させる効果が高い。
【0047】
そのような目的に用いられる油脂としては、一般的な食用油脂であればよく、例えば粉末油脂や半固形もしくは液状油脂を用いることができるが、より好ましくは、具材をコーティングするように添加する態様に適した、例えば、20℃以下で液状をなすパーム油、なたね油、ナッツ油などが挙げられる。油脂は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0048】
上記油脂は、上記具材の全体量100質量部に対し、1〜10質量部配合することが好ましく、1.5〜5質量部配合することがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として0.5質量%以上5質量%未満であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。上記範囲未満では、油脂を配合したことによる作用効果を発揮できない場合がある。また、上記範囲を超えると、油脂の含有量が多くなり、消費者に好まれない傾向となる。
【0049】
次いで、糖液と、具材と蛋白粉の混合物とを混合する。このとき、糖液の流動性を考慮して、その糖液の流動性が損なわれない程度の温度に調整して混合することが好ましく、例えば、典型的には50〜75℃程度に混合物を調整することがより好ましい。
【0050】
また、このときの混合においても、上記同様に、本発明の構成を損なわない範囲であれば、糖液と具材と蛋白粉以外にも、油脂、甘味料、香料、調味料、乳化剤、粘調剤等を添加・配合してもよい。例えば、粘調剤としての機能を有する溶媒を添加・配合することによって、水分活性をあまり上昇させずに糖液の粘度を抑えることができる。これにより、バー成形機等による成形時に、より成形適性が良好となる。
【0051】
そのような目的に用いられる溶媒としては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0052】
上記溶媒は、上記具材の全体量100質量部に対し、1〜10質量部配合することが好ましく、1〜5質量部配合することがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。また、具材入り成形食品の全体中の含有量として1〜5質量%であることが好ましく、1〜2.5質量%であることがより好ましい(複数種類含む場合はその合量として)。上記範囲を超えると、アルコール類の持つ特有の甘味や臭気が強くなり、風味を損なう傾向となる。
【0053】
上記アルコール類を添加・配合するタイミングとしては、生地の流動性を向上させる観点で言えば、例えば、上記糖液に含有せしめてもよく、上記具材と蛋白粉を混合するときに添加・配合してもよく、上記糖液と、上記具材と蛋白粉の混合物とを混合する際に添加してもよく、特に制限はないが、生地の流動性の向上と併せて、蛋白粉の分散性をも向上させる観点からは、上記記具材と蛋白粉を混合する際に、事前に具材にアルコール類を添加してから蛋白粉と混合することがより好ましい。
【0054】
最後に、具材と糖液と蛋白粉を含む混合物を、焼成せずに非焼成で所定形状に成形する。ここで、非焼成とは、焼成工程や乾燥工程を含まないことを意味し、好ましくは60℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは35℃以上に加熱しないことを意味する。成形は、バー成形機、シート成型機、おにぎり成型機などの手段で行えばよいが、特にバー成形機であれば生産効率が良いので、好ましい。このような成形装置としては、例えば本出願人による特許第5379322号公報に記載された装置などが挙げられる。成形物の形状としては、棒形状、直方体形状、板形状、球形状、不定形状など、種々の形状にすることができるが、例えば棒形状(バー製品)であれば、手に持って食べやすいので、好ましい。その大きさは、厚さが10〜20mm、幅が20〜35mm、長さが50〜130mmのとなるようにすることが好ましい。大きすぎると、保形性が悪くなったり、包装から取り出しにくくなったり、手に持って食べづらくなったりするので、好ましくない。
【0055】
本発明の具材入り成形食品は、上記のようにして得られた成形物からなる。その水分含量は、15質量%以下であることが好ましく、10〜13質量%であることがより好ましい。また、その水分活性が、0.70以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましい。
【0056】
また、この具材入り成形食品は、水分透過性の低い包装材で包装して、保管中における吸湿を抑制することが好ましい。そのような包装材としては、例えばアルミニウム等の金属箔と、合成樹脂フィルムとのラミネートフィルムや、片面にアルミニウム等の金属を蒸着した合成樹脂フィルム等が用いられる。
【0057】
なお、本明細書における「蛋白含量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、ケルダール法で測定した値を意味している。
【0058】
また、本明細書における「油脂の含有量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、酸分解法で測定した値を意味している。
【0059】
また、本明細書における「水分活性」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、重量平衡法で測定した値を意味している。
【0060】
また、本明細書における「水分含量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、常圧加熱乾燥助剤法(99℃、4時間)で測定した値を意味している。
【実施例】
【0061】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0062】
(実施例1)
表1に示す配合で、具材入り成形食品を製造した。具体的には、砂糖と水飴を含む糖液を煮詰めてバインダー液(Brix値:82)を調製し、別途予め具材にショートニング(油脂)及びグリセロール(溶媒)を混合しておき、これに更に蛋白粉を混合しておき、これらを合わせて、香料とともにニーダーで混合し、得られた混合物を、バー成形機を使用して、およそ15mm×33mm×110mmの略直方体に成形した。バー成型機としては、特許第5379322号公報に記載された装置を用いた。
【0063】
【表1】
【0064】
その結果、蛋白粉のダマや焦げが生じることがなく、流動性が良好で均一な糖液を調製することができ、また、バー成形機による成形時には、生地の途切れがなく、保形性も良好であった。そして、粉っぽさがなく、具材のカリカリ感が良好な、全体の蛋白含量が35質量%である具材入り成形食品が得られた。
【0065】
(比較例1)
実施例1において、蛋白粉をバインダー液の調製時に添加して煮詰めたところ、粘性が上がり、焦げが発生して、バインダー液を調製することができなかった。
【0066】
(比較例2)
実施例1において、蛋白粉を具材に混合せずに、バインダー液に混合しようとすると、ダマが発生してしまい、均一なバインダー液を調製することができなかった。
【0067】
(実施例2〜5)
表2に示す配合で、実施例1と同様にして、具材入り成形食品を製造した。
【0068】
【表2】
【0069】
その結果、実施例2〜5の具材入り成形食品は、成形時の保形性や食感等の点で実施例1のものと遜色がなく、大豆パフ、粒状大豆タンパク、ドライフルーツ、オーツ麦等の具材の配合をさまざま変え、更に蛋白粉の配合量を調整することによって、全体の蛋白含量が35質量%であってバラエティに富む配合の具材入り成形食品を得ることができた。なお、グリセロールを配合すると、生地の流動性があがり、成形適正が向上する傾向があった。また、油脂を配合すると、粒状大豆タンパクの有する本来のサクサク感が維持される傾向があった。更に、蛋白粉が比較的多く配合されても、グリセロールや油脂の存在により粉っぽさが気にならない食感であった。
【0070】
(実施例6〜8)
表3に示す配合で、実施例1と同様にして、具材入り成形食品を製造した。
【0071】
【表3】
【0072】
その結果、実施例6〜8の具材入り成形食品は、成形時の保形性や食感等の点で実施例1のものと遜色がなく、大豆パフ、粒状大豆タンパク、ドライフルーツ、オーツ麦等の具材の配合をさまざま変え、更に蛋白粉の配合量を調整することによって、全体の蛋白含量が16〜40質量%の範囲でバラエティに富む配合の具材入り成形食品を得ることができた。
【0073】
<試験例1>
実施例1、4で得られた具材入り成形食品について、その切断断面を走査電子顕微鏡(KEYENCE VE−7800)により観察した。図1、2に示されるように、配合した蛋白粉(粉末大豆タンパク)からなる構造体は、塊なく、長径およそ5〜50μmの粒状に具材表面に分布していた。また、蛋白粉(粉末大豆タンパク)の一部は、具材表面から離れバインダー液中に分散している様子が見られた。
【0074】
この結果から、蛋白粉が塊として存在しないことにより、粉っぽさを感じないと考えられた。また、蛋白粉の一部は、バインダー液からなる構造部分に分散・溶解することにより、その蛋白粉の粘着性により、あるいは結果的にそのバインダー液の粘性が上昇することにより、具材どうしの結着に寄与し、保形性を向上させることができるものと考えられた。更に、具材が吸湿性を有する素材の場合は、蛋白粉がその表面に存在していることにより、吸湿を抑制し、カリカリとした食感を保持し、その食感の耐久性が向上させることが可能となったものと考えられた。
図1
図2