(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、研削加工による方法は、研削砥石を第1の方向に複数回移動させ、更に、第1の方向に交差する第2の方向に複数回移動させることを必要とする。そのため、研削加工では、原版の製造には多くの時間が掛かる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、短い時間で原版を製造することを可能にする、針状突起を有する原版の製造方法、及びマイクロニードルアレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様の針状突起を有する原版の製造方法は
、針状突起の外形に倣う少なくとも1枚の刃を備える切削工具、及び基材を準備する準備工程と、切削工具を、切削工具の工具軸線を中心に自転させ、かつ切削工具を、基材に形成する針状突起の軸線を中心に公転させ、基材を切削し、切削工具の形状に倣う形状の針状突起を形成する切削工程と、を有する。第1の態様によれば、針状突起を有する原版を短い時間で製造できる。
【0009】
第2の態様の針状突起を有する原版の製造方法において、切削工程を複数回繰り返すことにより、複数の針状突起を形成する。第2態様によれば、複数の針状突起を有する原版を短い時間で製造できる。
【0010】
第3の態様の針状突起を有する原版の製造方法において、前記切削工程において、工具軸線と軸線との距離を調整する。第3態様によれば、針状突起の形状を制御することができる。
【0011】
第4の態様の針状突起を有する原版の製造方法において、少なくとも1枚の刃を備える切削工具は複数枚の刃を備える。第4態様によれば、製造される針状突起の形状に応じて、切削工具の刃の数を選択できる。
【0012】
第5の態様の針状突起を有する原版の製造方法において、切削工程において、切削工具は段階的に基材の内部に向かって工具軸線に平行に移動す
る。第5の態様によれば、基材に針状突起を容易に形成できる。
【0013】
第6の態様の針状突起を有する原版の製造方法において、切削工具の段階的な移動は連続的な移動である。第6の態様によれば、より短い時間で針状突起を形成できる。
【0014】
第7の態様の針状突起を有する原版の製造方法において、切削工具の段階的な移動は間欠的な移動である。第7の態様によれば、切削中に針状突起が変形することを抑制することができる。
【0015】
第8の態様の針状突起を有する原版の製造方法において、工具軸線を傾けることにより、切削工具を第1姿勢から第2姿勢に変化させて、切削工具により基材を切削す
る。第8の態様によれば、切削加工の自由度を向上させ、より好ましい形状の針状突起を製造することができる。
【0016】
第9の態様のマイクロニードルアレイの製造方法は、上述の針状突起を有する原版の製造方法により製造された原版を準備する工程と、原版から針状凹部を有する樹脂製原
版を作製する工程と、樹脂製原
版から電鋳により針状突起を有する複製金型を作製する工程と、複製金型から針状凹部を有する樹脂製モールドを作製する工程と、樹脂製モールドに液状材料を供給する工程と、樹脂製モールドの液状材料を乾燥により固化し、マイクロニードルアレイを形成する工程と、マイクロニードルアレイを樹脂製モールドから分離する工程と、を備える。第9の態様によれば、短い時間でマイクロニードルアレイを製造することができる。
【0017】
第10の態様のマイクロニードルアレイの製造方法は、上述の針状突起を有する原版の製造方法により製造された原版を準備する工程と、原版から針状凹部を有する樹脂製モールドを作製する工程と、樹脂製モールドに液状材料を供給する工程と、樹脂製モールドの液状材料を乾燥により固化し、マイクロニードルアレイを形成する工程と、マイクロニードルアレイを樹脂製モールドから分離する工程と、を備える。第10の態様によれば、樹脂製原
版、及び複製金型を作製する工程を不要にする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の原版の製造方法によれば、短い時間で針状突起を有する原版を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0021】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0022】
<マイクロニードルアレイ>
マイクロニードルアレイ(経皮吸収シート)の一例について説明する。
【0023】
図1は、後述の原版を利用して製造されるマイクロニードルアレイ100の一例を示す斜視図である。実施形態のマイクロニードルアレイ100は、1投与分のパッチ(1パッチ)に相当する。マイクロニードルアレイ100は、対向する第1面102A及び第2面102Bを有するシート状の基部102と、凸状パターン110と、を備えている。
【0024】
シート状とは、面積の広い2つの対向する第1面102A及び第2面102Bに対して厚みの薄い、全体として平たい形状を意味し、第1面102A及び第2面102Bが完全に平坦である必要はない。また、
図1に示す基部102は平面視で円形であるが、矩形、多角形、楕円形等でもよい。
【0025】
凸状パターン110は、薬剤を含んで構成される複数の針状突起112(マイクロニードル)により構成される。針状突起112は、第1面102Aに設けられる。針状突起112は、ニードル部114と錐台部116とを含んでいる。針状突起112を構成するニードル部114と錐台部116とは、基部102から錐台部116、ニードル部114の順で配置される。
【0026】
マイクロニードルアレイ100の第1面102Aには、複数の錐台部116が配置される。錐台部116は、2つの底面を有し、錐体面で囲まれた立体構造を有している。錐台部116の2つの底面のうち面積の広い底面(下底面)が基部102と接続される。錐台部116の2つの底面のうち面積の狭い底面(上底面)がニードル部114と接続される。錐台部116の2つの底面のうち、基部102と離れる方向にある底面の面積が小さい。第1面102Aに対する錐台部116の面の傾斜角(錐台部角度)と、第1面102Aに対するニードル部114の面の傾斜角(ニードル部角度)とは異なる。
図1では、ニードル部角度は錐台部角度より大きい。但し、形成しようとする針状突起112の形状に応じて、ニードル部角度及び錐台部角度は適宜決定される。
【0027】
ニードル部114は、面積の広い底面と、底面から離れた先端が最も狭い面積となる形状を有している。ニードル部114の面積の広い底面が、錐台部116の上底面と接続されているので、ニードル部114は錐台部116と離れる方向に先細り形状となる。ニードル部114と錐台部116とで構成される針状突起112は、全体として基部102から先端に向けて先細り形状を有している。基部102の上には4〜2500本の複数の針状突起112が設けられる。但し、この本数に限定されない。
【0028】
図1において、錐台部116は円錐台の形状を有し、ニードル部114は円錐の形状を有している。ニードル部114の皮膚への挿入の程度に応じて、ニードル部114の先端の形状は、0.01μm以上50μm以下の曲率半径の曲面、又は平坦面等に適宜変更できる。
【0029】
<原版>
図2は、マイクロニードルアレイ100を製造(成形)するために利用される原版の斜視図である。
図2に示されるように、原版10は、直方体形状の基部12を有する。基部12は、少なくとも対向する第1面12Aと第2面12Bとを有する。複数の針状突起14が基部12の第1面12Aの上に設けられる。針状突起14は、ニードル部16と錐台部18とを含んでいる。針状突起14を構成するニードル部16と錐台部18とは、基部12から錐台部18、ニードル部16の順で配置される。複数の針状突起14により凸状パターン20が構成される。
【0030】
原版10の針状突起14は、製造しようとするマイクロニードルアレイ100の針状突起112の大きさ、形状、及び配列においてに一致する。一致には略一致する場合を含む。マイクロニードルアレイ100の製造事業者にとって、まず、製造される針状突起112(マイクロニードル)の形状に全体的に一致する針状突起14を有する原版10を短い時間で製造することが重要となる。
【0031】
<原版の製造方法>
次に、本実施形態の針状突起14を有する原版10の製造方法について、図面を参照して説明する。
図3は、針状突起14を有する原版10の製造方法のフローチャートである。
図3に示されるように、針状突起14を有する原版10の製造方法は、準備工程(ステップS1)、及び切削工程(ステップS2)を、少なくとも備える。
【0032】
準備工程(ステップS1)では、基材、及び切削工具を準備する。切削工程(ステップS2)では、切削工具を自転、及び公転させることにより、基材を切削し、針状突起を形成する。以下、各工程について説明する。
【0033】
<準備工程(ステップS1)>
準備工程(ステップS1)について、
図4から
図7に基づいて説明する。
図4に示されるように、針状突起14を有する原版10(
図2参照)を製造するための基材が準備される。基材30は直方体の形状を有している。基材30は、切削される平坦面30Aを有する。基材30の素材として、金属、超硬合金、又はセラミックが好適に適用できる。金属として、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、Niメッキ、Cuメッキ、真鍮、及びチタン等が好適に適用できる。但し、基材30の素材は、上記の素材に限定されない。
【0034】
図5、及び
図6に示されるように、切削工具が準備される。切削工具40は、刃42と、刃42を保持するホルダー44とを備える。ホルダー44は、円柱形状の部分と円錐台形状の部分とから構成され、刃42はホルダー44の先端の側の円錐台部分に保持される。切削工具40は、スピンドル(不図示)に取り付けられ、工具軸線TAを中心に自転することができる。
【0035】
切削工具40の素材として、超硬金属、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CBN(Cubic boron nitride:立方晶窒化ホウ素)、又はPCD(Poly crystalline diamond:焼結ダイヤモンド)が好適に適用できる。
【0036】
図7は、
図5の状態における切削工具40の部分拡大図である。
図7で刃42は実線で示される。刃42は、針状突起14(
図2参照)の外形に倣う形状を有している。
図7に示されるように、刃42は針状突起14の錐台部18に倣う錐台刃42Aと、針状突起14のニードル部16に倣うニードル刃42Bとを備える。刃42は、先端に底面刃42Cを備える。底面刃42Cは原版10の第1面12Aを形成する。第1面12Aは針状突起14の高さを決定する基準面になる。なお、二点鎖線は、工具軸線TAを中心に刃42を自転させた際の、刃42の軌跡を示す。
【0037】
<切削工程(ステップS2)>
切削工程(ステップS2)の第1実施形態について、
図8から
図12に基づいて説明する。
図8に示されるように、切削工具40と基材30とが位置合わせされる。位置合わせでは、切削工具40の工具軸線TAと、基材30に形成予定の針状突起14の軸線NAとの距離r1が調整される。
【0038】
図9に示されるように、工具軸線TAと軸線NAとが平行(または、工具軸線TAと平坦面30Aの法線とが平行)となる状態を維持しながら、切削工具40と基材30とが接触する位置まで相対的に移動される。切削工具40は工具軸線TAを中心に自転する。また、切削工具40は、距離r1を公転半径として、軸線NAを中心に公転する。切削工具40の刃42が基材30の平坦面30Aを切削する。切削工具40は、予め定められた深さd1まで、基材30の内部に移動する。
図9では、切削工具40は針状突起14の先端加工を実行する。
【0039】
図10に示されるように、切削工具40は、工具軸線TAと軸線NAとの距離r2になるまで、軸線NAから離れる方向に移動する。切削工具40は工具軸線TAを中心に自転する。切削工具40は、距離r2を公転半径として、軸線NAを中心に公転する。切削工具40の刃42が基材30の内部を切削する。切削工具40は、予め定められた深さd2(針状突起14の高さ)まで、段階的に基材30の内部に向かって工具軸線TAに平行に移動する。
図10に示されるように、切削工具40の形状に倣う形状の針状突起14が形成される。刃42の錐台刃42Aが針状突起14の錐台部18の形状を形成する。刃42のニードル刃42Bが針状突起14のニードル部16の形状を形成する。刃42の底面刃42Cが原版10の第1面12Aの形状を形成する。
【0040】
第1実施形態の切削工程では、切削工具40は軸線NAを中心として螺旋状、すなわち連続的に基材30の内部に移動する。切削工具40は、基材30に接触した際の工具軸線TAの角度を維持しながら、すなわち工具軸線TAに平行に移動する。
【0041】
図11に示されるように、切削工具40は、針状突起14の形成を終えると、基材30から離間する方向に移動する。切削工具40は、次に形成される針状突起14の軸線NAと工具軸線TAとが距離r1となる位置に移動する。切削工具40は必要な数の針状突起14を形成するまで、上述の
図9及び
図10の動作を繰り返す。
【0042】
本実施形態において、切削工具40の使用が、針状突起14を有する原版10を短い時間で製造することを可能にする。
【0043】
図12は基材30に形成される針状突起14の切削工程を示す顕微鏡写真である。12Aは、針状突起を形成する途中の顕微鏡写真である。12Aは上述の
図9に対応する。12Bは針状突起の顕微鏡写真である。12Bは上述の
図10に対応する。
図12に示されるように、切削工具により基材に針状突起を形成できることが理解できる。
【0044】
次に、切削工程(ステップS2)の第2実施形態について、
図13から
図17に基づいて説明する。
図13に示されるように、切削工具40と基材30とが位置合わせされた後、工具軸線TAと軸線NAとが平行となる状態を維持しながら、切削工具40と基材30とが接触する位置まで相対的に移動される。切削工具40は工具軸線TAを中心に自転する。また、切削工具40は、距離r1を公転半径として、軸線NAを中心に公転する。切削工具40の刃42が基材30の平坦面30Aを切削する。切削工具40は、予め定められた深さd1まで、基材30の内部に移動する。第2実施形態の
図13は第1実施形態の
図9と同じである。
【0045】
図14に示されるように、切削工具40は、工具軸線TAと軸線NAとの距離r2になるまで、軸線NAから離れる方向に移動する。切削工具40は工具軸線TAを中心に自転する。切削工具40は、深さd1から予め定められた深さd2まで、基材30の内部に直進移動する。切削工具40は、深さd2まで、段階的に基材30の内部に移動する。深さd2は針状突起14の高さ未満である。
【0046】
深さd2の位置で、切削工具40は、距離r2を公転半径として、軸線NAを中心に公転する。切削工具40の刃42が基材30の内部を切削する。
図14において、切削工具40は、深さd2で、基材30の内部への移動を中断する。
【0047】
図15に示されるように、切削工具40は、深さd2から予め定められた深さd3まで、基材30の内部に直進移動する。切削工具40は、深さd3まで、段階的に基材30の内部に移動する。深さd3は針状突起14の高さ未満である。
【0048】
深さd3の位置で、切削工具40は、距離r2を公転半径として、軸線NAを中心に公転する。切削工具40の刃42が基材30の内部を切削する。
図15において、切削工具40は、深さd3で、基材30の内部への移動を中断する。
【0049】
図16に示されるように、切削工具40は、深さd3から予め定められた深さd4まで、基材30の内部に直進移動する。切削工具40は、深さd4まで、段階的に基材30の内部に移動する。深さd4は針状突起14の高さに一致する。
【0050】
深さd4の位置で、切削工具40は、距離r2を公転半径として、軸線NAを中心に公転する。切削工具40の刃42が基材30の内部を切削する。
【0051】
図16に示されるように、切削工具40の形状に倣う形状の針状突起14が形成される。刃42の錐台刃42Aが針状突起14の錐台部18の形状を形成する。刃42のニードル刃42Bが針状突起14のニードル部16の形状を形成する。刃42の底面刃42Cが原版10の第1面12Aの形状を形成する。
【0052】
第2実施形態の切削工程では、切削工具40の段階的な移動は間欠的な移動になる。切削工具40の間欠的な移動は、切削中における針状突起14の変形を抑制できる。
【0053】
図17は基材に形成される針状突起の切削工程を示す顕微鏡写真である。17A、17B、及び17Cは、針状突起を形成する途中の顕微鏡写真である。17Aは上述の
図13に対応する。17Bは上述の
図14に対応する。17Cは上述の
図15に対応する。17Dは針状突起の顕微鏡写真である。17Dは上述の
図16に対応する。
図17に示されるように、切削工具により、基材に針状突起を形成できることが理解できる。
【0054】
図18は基材に形成される複数の針状突起14の顕微鏡写真である。複数の針状突起は、上述の切削工程(ステップS2)を複数回繰り返すことにより、形成できる。切削工具の使用が、複数の針状突起を有する原版を短い時間で製造することを可能にする。針状突起は、刃の錐台部に倣う錐台部と、刃のニードル刃に倣うニードル部とを有している。針状突起を除く基部の第1面は、刃の底面刃に倣い平坦に加工される。
【0055】
図19から
図21は、針状突起の先端を拡大した顕微鏡写真である。
図19は、工具軸線TAと軸線NAとの距離r2(
図10、
図14から
図16参照)を公転半径として切削した際の針状突起の先端の拡大写真である。
図20は、
図19と比較して、公転半径を距離r2より短くして、切削した際の針状突起の先端の拡大写真である。
図21は、
図19と比較して、公転半径を距離r2より長くして、切削した際の針状突起の先端の拡大写真である。針状突起の先端の直径は、
図20、
図19、及び
図21の順で大きくなる。
図19から
図21に示されるように、工具軸線TAと前記軸線NAとの距離を調整することにより、針状突起の形状を制御できることが理解できる。
【0056】
次に、基材に削り残しが発生する場合について
図22を参照して説明する。
図22に示されるように、切削工具40は、1本ずつ針状突起14を形成する。隣接する針状突起14のピッチPが、刃42の自転軌跡と比較して大きい場合、丸印で囲むように、切削工具40の軌跡上から外れる位置で削り残し50が形成される。削り残し50は、製造しようとするマイクロニードルアレイ100(
図1参照)の形状に影響を与える。
【0057】
図23に示されるように、切削工具40は針状突起14の間に移動され、次いで、切削工具40の底面刃42Cが削り残し50を切削する。原版10の基部12の第1面12Aが平坦に加工される。
【0058】
なお、切削工具40の刃42は、上記構造に限定されない。
図24に示されるように、切削工具40は複数枚の刃42を備えることができる。24Aは2枚刃の切削工具40を示す。24Aでは2枚の刃42がホルダー44に保持されている。24Bは3枚刃の切削工具40を示す。24Bでは、3枚の刃42がホルダー44に保持されている。24Cは4枚刃の切削工具40を示す。24Cでは、4枚の刃42がホルダー44に保持されている。製造される針状突起の形状に応じて、切削工具が選択される。
【0059】
次に、切削工具の姿勢について
図25を参照して説明する。
図25に示されるように、工具軸線TAを傾けることにより、二点鎖線で示す切削工具40の第1姿勢が、実線で示す切削工具40の第2姿勢に変化する。第2姿勢の切削工具40が、基材30を切削する。切削工具40の姿勢の変更は、切削加工の自由度を向上させ、より好ましい形状の針状突起を製造することを可能にする。
【0060】
切削工具による基材を切削する条件は、例えば、1mm/min〜500mm/minの送り速度、0.01mm〜2mmの切り込み量、及び1000rpm〜80000rpmの回転速度の範囲から適宜設定される。但し、切削条件は、こられに限定されない。
【0061】
<マイクロニードルアレイの製造方法>
次に、上述の製造方法により製造された原版を利用した第1のマイクロニードルアレイの製造方法について説明する。
【0062】
図26に示されるように、上述の製造方法により製造された原版10を準備する。原版10はマイクロニードルアレイの1パッチに相当する大きさである。原版10は、基部12と複数の針状突起14とを有する。針状突起14は錐台部18とニードル部16と有する。原版10が、複数の凹部202を有する樹脂製原
版200に、インプリント方式で、押圧される。原版10の針状突起14の反転形状である複数の針状凹部204が樹脂製原
版200に形成される。インプリント方式では、加熱された原版10が樹脂製原
版200に押圧される。次いで、原版10が樹脂製原
版200から分離される。樹脂製原
版200が冷却され、針状凹部204が形成される。
【0063】
次に、
図27に示されるように、針状凹部204を有する樹脂製原盤200から、電鋳により複数の針状突起212を有する複製金型210が作製される。
【0064】
電鋳においては、樹脂製原
版200に、導電化処理が施される。樹脂製原
版200に、金属(例えば、ニッケル)がスパッタリングされ、樹脂製原
版200の表面及び針状凹部204に金属が付着する。
【0065】
次いで、導電化処理された樹脂製原
版200が電鋳処理装置(不図示)の陰極に保持される。金属ペレットを保持する金属製のケースが陽極になる。樹脂製原
版200を保持する陰極と金属ペレットを保持する陽極とを電鋳液中に浸漬する。次いで、通電することにより、樹脂製原
版200の針状凹部204に金属が埋め込まれる。樹脂製原
版200から剥離すること
により複数の針状突起212を有する複製金型210が製作される。
【0066】
次に
図28に示されるように、複製金型210から、複数の針状凹部222を有する樹脂製モールド220が作製される。樹脂製モールド220は、例えば、複製金型210に医療グレードのシリコーン材料(例えば、ダウ・コーニング社製MDX4−4210)を流し込み、150℃で加熱処理し硬化した後に、複製金型210から樹脂製モールド220を剥離することにより作製できる。
【0067】
また、別の方法としては、樹脂製モールド220は、紫外線を照射することにより硬化するUV硬化樹脂を複製金型210に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、複製金型210から樹脂製モールド220を剥離することにより作製できる。
【0068】
さらに、別の方法として、樹脂製モールド220は、ポリスチレン及びPMMA(ポリメチルメタクリレート:polymethyl methacrylate)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された複製金型210に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、複製金型210から樹脂製モールド220を剥離することにより作製できる。したがって、複製金型210の複数の針状突起212に対応する複数の針状凹部222が形成された樹脂製モールド220が作製される。
【0069】
次に
図29に示されるように、樹脂製モールド220が、マイクロニードルアレイの1パッチに相当する複数の針状凹部222毎に、切断される。樹脂製モールド220の針状凹部222は原版10の針状突起14(不図示)の反転型になる。
【0070】
図30に示されるように、液状材料300が樹脂製モールド220に供給される。液状材料300は樹脂製モールド220の段差部224に弾かれ、表面張力により収縮する。液状材料300は、段差部224の内径の側の角部の位置で固定(ピニングとも称する)される。針状凹部222に液状材料300を充填するため、液状材料300
を充填する側と反対の側から、吸引することが好ましい。
【0071】
図31に示されるように、液状材料300(不図示)が乾燥され、樹脂製モールド220にマイクロニードルアレイ100が形成される。
図31において、液状材料300が角部に固定されているので、乾燥後においても、所望形状のマイクロニードルアレイ100が形成できる。
【0072】
図32に示されるように
、マイクロニードルアレイ100が樹脂製モールド220から分離される。分離する方法は、特に限定されない。例えば、マイクロニードルアレイ100の第2面102Bを吸着パッド(不図示)により吸着し、吸着パッドを樹脂製モールド220と離間する方向に移動することにより、マイクロニードルアレイ100が樹脂製モールド220から分離される。
【0073】
実施形態では、液状材料300を樹脂製モールド220の段差部224に囲まれた領域に供給し、針状凹部222に充填し、乾燥することによりマイクロニードルアレイ100を形成する場合を説明したが、これに限定されない。
【0074】
例えば、液状材料300を供給する前に、針状凹部222の先端の側に薬剤層を形成することができる。薬剤層の形成後、薬剤を含まない液状材料300を供給し、乾燥させることにより、二層構造のマイクロニードルアレイ100を製造できる。固化された薬剤層であれば、薬剤層が液状材料300に拡散することを抑制できる。
【0075】
液状材料300としてポリマー溶解液が好ましい。ポリマー溶解液の材料としては、水溶性材料を用いることが好ましい。ポリマー溶解液の樹脂ポリマーの素材としては、生体適合性のある樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、グルコース、マルトース、プルラン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルデンプンなどの糖類、ゼラチンなどのタンパク質、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体などの生分解性ポリマーを使用することが好ましい。マイクロニードルアレイ100を樹脂製モールド220から離型する際、基材(不図示)を用いてマイクロニードルアレイ100を離型することができるので、好適に利用することができる。濃度は材料によっても異なるが、薬剤を含まないポリマー溶解液の中に樹脂ポリマーが10質量%以上50質量%以下含まれる濃度とすることが好ましい。また、ポリマー溶解液に用いる溶媒は、水以外であっても揮発性を有するものであればよく、エタノール等のアルコールなどを用いることができる。
【0076】
薬剤層を形成する液状材料として、所定量の薬剤を含有した上記のポリマー溶解液を適用できる。所定量の薬剤を含むか否かは、体表に穿刺した際に薬効を発揮できるか否かで判断される。したがって、所定量の薬剤を含むとは、体表に穿刺した際に薬効を発揮する量の薬剤を含むことを意味する。
【0077】
薬剤としての機能を有するものであれば限定されない。特に、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、又は化粧品成分から選択することが好ましい。
【0078】
次に、上述の製造方法により製造された原版を利用した第2のマイクロニードルアレイの製造方法について説明する。第2のマイクロニードルアレイの製造方法が、原版から樹脂製モールドを作製する点が、第1のマイクロニードルアレイの製造方法と異なる。以下、異なることのみ説明する。
【0079】
図33に示されるように、マイクロニードルアレイの複数パッチに相当する大きさの大型原版60が準備される。大型原版60は、マイクロニードルアレイの1パッチに相当する大きさ毎に複数の針状突起14を備える。大型原版60から、複数の針状凹部222を有する樹脂製モールド220が作製される。樹脂製モールド220は、例えば、複製金型210に医療グレードのシリコーン材料(例えば、ダウ・コーニング社製MDX4−4210)を流し込み、150℃で加熱処理し硬化した後に、大型原版60から樹脂製モールド220を剥離することにより作製できる。
図28で説明した他の方法を用いて大型原版60から樹脂製モールド220を作製できる。
【0080】
実施形態では、大型原版60が、切削工具40を使用することにより、短い時間で作製できる。第2のマイクロニードルアレイの製造方法では、樹脂製原
版、及び複製金型を作製する工程を省くことができる。