特許第6985265号(P6985265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985265
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】水性系から水を分離する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/22 20060101AFI20211213BHJP
   B01D 1/26 20060101ALI20211213BHJP
   C02F 1/08 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B01D1/22 A
   B01D1/26 Z
   C02F1/08
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-522767(P2018-522767)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公表番号】特表2018-534137(P2018-534137A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2016075993
(87)【国際公開番号】WO2017076755
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】15193474.2
(32)【優先日】2015年11月6日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スジャンディ スジャンディ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィ マイトロ−フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ニート
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ グラーデ
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第01519512(GB,A)
【文献】 米国特許第03715307(US,A)
【文献】 特表2015−500922(JP,A)
【文献】 特公昭54−029994(JP,B1)
【文献】 特表2014−527561(JP,A)
【文献】 特表2005−521557(JP,A)
【文献】 特表2015−516486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−30、3/00
C02F 1/02−18、5/00
C07B 63/00
C11D 1/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とその他の成分との混合物から水を分離する方法であって、以下の工程:
A)糖の溶液、塩水、汽水、またはブラインと、供給材料FMに対して0.1質量ppm〜1000質量ppmの量の少なくとも1種の500g/mol〜6000g/molのモル質量を有する非イオン性界面活性剤Sとを含む供給材料FMを準備する工程、ここで、前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤Sは、ポリアルキレンオキシドPAOであり、前記ポリアルキレンオキシドPAOは、少なくとも2種の異なる種類の2個から100個までのアルキレンオキシド単位を重合形で含むアルキレンオキシドのコポリマーを含み、及び、前記ポリアルキレンオキシドPAOは、その末端ヒドロキシル(OH)位で任意に官能化されており、
B)前記供給材料FMを、流下液膜型蒸発器を使用した蒸留工程に供する工程、
を含む方法であって、
工程A)で準備される前記供給材料FMは、アクリル酸のような少なくとも1種のエチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはマレイン酸のような少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸のポリマーである少なくとも1種のポリマーAを、供給材料FMに対して0.1質量ppm〜1000質量ppmの量でさらに含む、前記方法。
【請求項2】
前記蒸留工程は、多重効用蒸留(MED)として実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程A)で準備される前記供給材料FMは、500g/mol〜1000g/molのモル質量を有する少なくとも1種のポリオレフィンブロックおよび2個から100個までのアルキレンオキシド単位を含む少なくとも1個のポリアルキレンオキシドブロックを重合形で含むブロックコポリマーFを、供給材料FMに対して0.01質量ppm〜100質量ppmの量でさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤Sは、直鎖状または分枝鎖状のC4〜C26−アルコールのアルコキシレート、ならびにポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのブロックを含むブロックコポリマーから選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤Sは、構造PEO−PPO−PEO、PPO−PEO−PPO、PEO−PBO−PEO、またはPEO−pTHF−PEOを有するポリアルキレンオキシドPAOである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、多重効用蒸留(MED)として実施され、かつ該方法で使用される管材料は、アルミ黄銅、チタン、ステンレス鋼、銅/ニッケル合金またはアルミニウム/マグネシウム合金、セラミックコーティングを備えた金属、ならびに黒鉛および少なくとも1種の有機ポリマーを含むポリマー複合物から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水とその他の成分との混合物から水を分離する方法であって、以下の工程:
A)水と、供給材料FMに対して0.1質量ppm〜1000質量ppmの量の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤Sとを含む供給材料FMを準備する工程、
B)前記供給材料FMを、流下液膜型蒸発器を使用した蒸留工程に供する工程
を含む方法に関する。
【0002】
水性混合物または水溶液からの水の分離は、最も工業的な関連性のある方法である。
【0003】
特に、水の熱的脱塩化は、極めて重要である。水の熱的脱塩化のための標準的方法としては、多重効用蒸留(MED)および多段効用蒸留(MSF)が挙げられる。これらの方法は長い間使用されているが、これらの方法は、依然としてその効率に関して改善を必要としている。
【0004】
MEDの一実施形態は、水平管式流下液膜型蒸発器を使用する。水平な管束を備えた流下液膜型蒸発器は、清浄表面条件下では比較的高い伝熱係数を示す。しかしながら、該蒸発器は、伝熱の低下および被膜破壊を伴うスケール形成を受けやすい。
【0005】
MEDの一実施形態は、垂直管式流下液膜型蒸発器を使用する。
【0006】
一実施形態において、前記供給材料は、蒸発器の管束へのノズルを使用した散布により供給される。供給材料の供給は、表面を均一に濡らし、管上を安定的に流れる水膜を形成するのに十分でなければならない。
【0007】
よりエネルギー効率の高い運転のためには、該蒸発器をMEDプラントにおいて層流方式で運転することが好ましい。その条件のもとでは、より少量の供給材料が管全体に分配される必要があり、あるいは言い換えれば、層流方式には、より低い濡れ膜流量が必要とされる。層流方式において、高い濡れ膜流量は、多すぎる水の供給または水の過剰供給のため流下水膜の厚さの不所望な増加をもたらすこととなり、それは、伝熱係数を低下させ、蒸発器のポンピングまたはフラッディングのためのエネルギーの浪費を引き起こす。
【0008】
したがって、MEDプラントを層流方式で運転することが好ましい。しかしながら、低い濡れ膜流量では、管表面には、供給材料の不均等分布のためドライスポットの発生が起こりやすい。加熱された管表面上のドライスポットは、本質的に熱を伝達せず、そのため蒸発器の熱的性能を下げる。さらに、スケールの形成は、非常に薄い液膜内に局所的な高い溶液濃度が生ずるドライスポットの縁から優先的に始まる。工業的実施において、すべての加熱された管は、完全に濡れた状態で維持される必要があること、ドライスポットは回避されるべきであること、そして濡れ膜流量はスケール形成に影響を及ぼすことが知られている。
【0009】
今日使用される熱的脱塩化法の効率に対する1つの制限要因は、多くのその他の水性プロセスでも同様に、スケールの形成である。もう1つの要因は、流下液膜が中断されないことを保証することである。
【0010】
本発明の課題は、高い効率および低減されたスケール形成を伴う水性系から水を分離する方法、特に水を熱的脱塩化する方法を提供することであった。
【0011】
前記課題は、請求項1に記載の方法により解決された。
【0012】
本発明による方法は、水を水性系、例えば水溶液または水性混合物から分離する方法である。
【0013】
本発明による方法は、例えば、糖の溶液から水を除去するために適している。そのような方法は、例えば食品加工に関連している。食品加工の場合には、対象となる製品は、溶液から除去された水ではなく、むしろ濃縮された溶液の方である。
【0014】
本発明による方法はさらに、廃水処理作業において得られたブラインを濃縮するために適している。ブラインの濃縮が行われる廃水処理作業の例には、プラント排液に関するコンプライアンス、冷却塔のブローダウン、排煙脱硫の廃水、石炭化学の廃水、石炭ガス化複合発電の廃水が含まれる。
【0015】
本発明による方法は、海水または汽水のような塩含有水の熱的脱塩化のために特に適している。
【0016】
本発明による方法はさらに、工業プロセス用水および廃水処理、廃水再利用および随伴水処理のため(例えば、非在来型原油およびガス抽出のため)に適している。工業プロセス用水には、例えばボイラー給水、加熱水および冷却水、プロセス蒸気生成、石油化学用水および精油用水、在来型原油およびガス抽出、発電用水、採鉱用水が含まれる。廃水再利用および随伴水処理法には、例えばスチーム補助重力廃油法の生成水、水圧破砕法のフローバック水および生成水、冷却塔のブローダウン、ボイラーのブローダウン、排煙脱硫の廃水、石炭ガス化複合発電の廃水、および製油所排水が含まれる。
【0017】
脱塩化は、原水から塩のようなミネラルまたはその他のミネラルを除去することにより、そのような原水よりも人間による消費または灌がいのためにより適した淡水を生成する方法である。
【0018】
熱的脱塩化は、原水から水を蒸発させる蒸留工程を用いる。この蒸留工程は、減圧(大気圧未満)および室温よりも高められた温度の条件下で真空蒸留として実施される。
【0019】
もう一つの実施形態においては、本発明による方法は、工業法または廃水処理において得られた水溶液または水性混合物から水を除去して、ブライン中の塩またはその他の成分の濃度を高めるために使用される。本発明による方法は、好ましくは、MED法で適用される。
【0020】
MED法において、供給材料FM(留去された水が、「原水」RWとも呼ばれる対象の生成物である方法について)は、水の蒸発に供され、こうして残留濃縮物またはブラインから純水が留去される。これは、本発明の工程B)に相当する。
【0021】
MEDは、多段または多重「効用」を用いる。それぞれの段階において、供給材料(給水とも呼ばれる)は、管内のスチームによって加熱される。その水の幾らかは蒸発し、このスチームは後続段階の管中に流入し、原水からより多くの水を加熱および蒸発させる。各々の段階は、本質的に前段階からのエネルギーを再利用する。
【0022】
本発明を実施するための好ましい一実施形態においては、供給材料FMは、水平管配列の最上部に散布され、その後に、ステージの底部に集められるまで管から管へと滴らせる。
【0023】
本発明を実施するためのもう一つの実施形態においては、供給材料FMは、垂直管群の頂部に散布される。
【0024】
本発明による方法で使用されるMEDプラントは、層流方式で運転することが好ましく、その際、薄い水膜の形成が好ましい。
【0025】
一実施形態においては、本発明による方法は、水平管式流下液膜型蒸発器を用いたMEDを使用する。水平な管束を備えた流下液膜型蒸発器は、清浄表面条件下では比較的高い伝熱係数を示す。
【0026】
一実施形態において、前記供給材料FMは、蒸発器の管束へのノズルを使用した散布により供給される。供給材料FMの供給は、表面を均一に濡らし、管上を安定的に流れる水膜を形成するのに十分でなければならない。
【0027】
工程B)は、一般的に、45℃〜180℃の温度、好ましくは50℃〜95℃の温度で行われる。工程B)は、一般的に、0.09bar〜0.9barの圧力で行われる。
【0028】
一実施形態においては、本発明による方法に供される原水は、3.0質量%〜4.5質量%の塩含量を有する。一実施形態においては、本発明による方法に供される原水は、3.5質量%〜4.2質量%の塩含量を有する。
【0029】
一実施形態においては、本発明による方法に供される原水は、0.1質量%〜3質量%の塩含量を有する。一実施形態においては、本発明による方法に供される原水は、0.3質量%〜2.7質量%の塩含量を有する。
【0030】
本発明によれば、非イオン性界面活性剤Sは、蒸発(蒸留)前に工程A)で供給材料FMに添加される。
【0031】
非イオン性界面活性剤Sの表面張力は、好ましくは、25mN/mから40mN/mまでである。表面張力は、DIN 14370に従って室温で1g/Lで分析され得る。
【0032】
一実施形態においては、非イオン性界面活性剤Sは、EN 1772(蒸留水、1リットル当たり2gのソーダ灰、23℃、1リットル当たり0.5gの界面活性剤)による最大50sの濡れを有する。
【0033】
好ましくは、非イオン性界面活性剤Sは、20mPas〜1000mPasの粘度(含水量0%、EN 12092、ブルックフィールドLVT、23℃)を有する。
【0034】
好ましくは、非イオン性界面活性剤Sは、塩水の管材料表面での接触角(45g/kgの塩度を有する水中0.1g/Lおよび70℃、実験部のセクションIVに示される手順に従って測定される)を1°〜40°だけ減らす非イオン性界面活性剤から選択される。接触角は、DIN 55660−2に従って分析することができる。
【0035】
非イオン性界面活性剤Sは、好ましくは低起泡性の非イオン性界面活性剤である。前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤Sは、一実施形態においては、少なくとも1種のポリアルキレンオキシドPAOである。
【0036】
ポリアルキレンオキシドPAOは、その末端位で官能化されておらず、こうしてOH基をその末端位に有するポリアルキレンオキシドを含むものとする。PAOはさらに、その末端位の1つ以上において脂肪族基でエーテル化されているポリアルキレンオキシドを含むものとする。
【0037】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、モノアルコールのアルコキシレートである。好ましくは、ポリアルキレンオキシドPAOは、C4〜C30−モノアルコール、好ましくはC5〜C26−アルコールのアルコキシレートである。適切なアルコールは、直鎖状または分枝鎖状であってよい。適切なアルコールとしては、n−デカノール、イソデカノール、2−プロピルヘプタノール、トリデカノール、オクタデカノール、ブタノール、ヘキサノール、ノナノール、ウンデカノール、およびオキソアルコール、例えば2−エチルヘキサノール、イソデカノールおよびイソノニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、少なくとも2種の異なる種類のアルキレンオキシドを含むコポリマーである(本明細書においてアルキレンオキシド「を含む」ポリアルキレンオキシドが参照される場合に、これは、前記ポリアルキレンオキシドが前記アルキレンオキシドを重合形で、つまり開環形で含むことを意味すると解釈されるものとする)。
【0039】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、少なくとも2種の異なる種類のアルキレンオキシドを含むブロックコポリマーである。
【0040】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、少なくとも2種の異なる種類のアルキレンオキシドを含むランダムコポリマーである。
【0041】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、本質的にオキシアルキレン単位から構成される。前記オキシアルキレン単位は、特に、−(CH22−O−、−(CH23−O−、−(CH24−O−、−CH2−CH(R2)−O−、−CH2−CHOR3−CH2−O−であってよく、ここで、R2は、アルキル基、特にC1〜C24−アルキル基またはアリール基、特にフェニル基であり、かつR3は、水素またはC1〜C24−アルキルからなる群から選択される基である。
【0042】
ポリアルキレンオキシドPAOのためのモノマーとして適したアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)、そしてまた1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、2−メチル−1,2−プロピレンオキシド(イソブチレンオキシド)、1−ペンテンオキシド、2,3−ペンテンオキシド、2−メチル−1,2−ブチレンオキシド、3−メチル−1,2−ブチレンオキシド、2,3−ヘキセンオキシド、3,4−ヘキセンオキシド、2−メチル−1,2−ペンテンオキシド、2−エチル−1,2−ブチレンオキシド、3−メチル−1,2−ペンテンオキシド、デセンオキシド、4−メチル−1,2−ペンテンオキシド、スチレンオキシドを含み、または工業的に得られるラフィネート流の酸化物の混合物から形成されてもよい。環状エーテルの例は、テトラヒドロフランを含む。もちろん、種々のアルキレンオキシドの混合物を使用することも可能である。当業者は、ブロックの所望の特性に従って、モノマーおよび更なる成分の中から適切な選択を行う。
【0043】
ポリアルキレンオキシドPAOは、分岐型または星形であってもよい。この種類のブロックは、少なくとも3つの腕部を有する開始分子を使用することによって得ることができる。適切な開始分子の例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたはエチレンジアミンを含む。
【0044】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、末端位にポリエチレンオキシド(PEO)のブロックを含み、その一方で、エチレンオキシドとは異なるポリアルキレンオキシドのブロック、例えばポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリブチレンオキシド(PBO)およびポリ−THF(pTHF)が中央位に含まれている。
【0045】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、構造PEO−PPO−PEO、PPO−PEO−PPO、PEO−PBO−PEOまたはPEO−pTHF−PEOを有する。その他の実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、構造PEO−PPO−pTHF−PPO−PEOを有する。もう一つの実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、PEO−PPO/PBO/pTHF−PEOの構造であり、つまり、1つ以上の中央セグメントは、該セグメント中に統計的に分布した、または部分セグメントの形のブチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランから選択される少なくとも2個のアルキレンオキシドを含む。
【0046】
適切なポリアルキレンオキシドPAOは、通常は、1.1個〜100個の、好ましくは5個〜50個の数平均のアルキレンオキシド単位を含む。
【0047】
一実施形態においては、非イオン性界面活性剤Sは、500g/mol〜6000g/molのモル質量を有する。
【0048】
好ましい一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、構造PEO−PPO−PEOのブロックコポリマーであって、その末端位でエーテル化されていない(したがって、その末端位にOH基を有する)2000g/mol〜3000g/molのモル質量MW(本明細書で挙げられるPAOのすべてのMWは、DIN 53240−1:2013−06に従って測定されるOH価から計算される)を有するブロックコポリマーである。好ましい一実施形態においては、PAOは、3000g/mol〜4000g/molのモル質量MWを有するブロックコポリマーPEO−PPO−PEOである。好ましい一実施形態においては、PAOは、4000g/mol〜5000g/molのモル質量MWを有するブロックコポリマーPEO−PPO−PEOである。好ましい一実施形態においては、PAOは、5000g/mol〜6000g/molのモル質量MWを有するブロックコポリマーPEO−PPO−PEOである。
【0049】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、一方の側でまたは両方の側で、アルキル基またはアリール基で末端封鎖されている(すなわち、相応のアルコールでエーテル化されている)。
【0050】
ポリアルキレンオキシドPAOは、一実施形態においては、一般式
1−(AO)n−OR2
[式中、R1は、5個〜30個の炭素原子を有するアルコールの炭化水素残基であり、nは、構造中のアルキレンオキシ(AO)単位の平均数を表し、AOは、2個〜5個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基であり、かつR2は、水素、1個〜18個の炭素原子を有するアルキル基、1個〜20個の炭素原子を有するアルカノイル基、ヒドロキシアルキル基またはそれらの混合物である]によって表されるアルコールアルコキシレートである。R1基としては、飽和または不飽和であってよい、炭素原子および水素原子の直鎖状、分枝鎖状、および/または環状の鎖が挙げられ得る。しかしながら、該炭化水素基は、一般的に、直鎖状の炭化水素基である。R1基としては、好ましくは、6個から16個までの炭素原子を有し、より好ましくは8個から13個までの炭素原子を有する。適切なアルキレンオキシオキシド(alkyleneoxy oxide)基としては、エチレンオキシ基(2個の炭素原子)、プロピレンオキシ基(3個の炭素原子)、ブチレンオキシ基(4個の炭素原子)、ペンテンオキシおよびそれらの組み合わせが挙げられる。一般的には、アルキレンオキシドは、複数のアルキレンオキシ基の組み合わせである。しかしながら、エチレンオキシ基は、一般的に、アルコールアルコキシレート中に存在するすべてのアルキレンオキシ基の少なくとも40%の、あるいは少なくとも60%の、あるいは少なくとも70%の量で存在する。変数nは、広い範囲の値をとり得る。例えば、有用な界面活性剤は、nが30未満またはそれと等しい場合に得られると判明した。nが約20未満であることがより好ましく、nが約10未満であることは最も好ましい。R2は、好ましくは水素である。
【0051】
ポリアルキレンオキシドPAOは、一実施形態においては、一般式
1−(AO1)a−(AO2)b−OR2
によって表される2ブロックのアルコールアルコキシレートである。
【0052】
もう一つの実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、一般式
1−(AO1)a−(AO2)b−(AO3)c−OR2
によって表される3ブロックのアルコールアルコキシレートである。
【0053】
アルコールアルコキシレートのこれらの式中で、R1は、好ましくは5個〜30個の炭素原子を有するアルコールの炭化水素残基であり、a、b、およびcはそれぞれ、構造中のアルケンオキシ単位の平均数を表し、それぞれ1から35までであり、AO1、AO2、およびAO3はそれぞれ、エチレンオキシ基(2個の炭素原子)、プロピレンオキシ基(3個の炭素原子)、ブチレンオキシ基(4個の炭素原子)、ペンテンオキシおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルキルオキシ基を表すが、ただし、AO2の相対アルキレンオキシ基組成は、AO1およびAO3のそれとは異なり、かつR2は、水素、1個〜18個の炭素原子を有するアルキル基、1個〜20個の炭素原子を有するアルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、またはそれらの混合物である。
【0054】
有用なアルコールブロックアルコキシレートの例は、該ブロックのほぼすべてがエチレンオキシであるか、またはほぼすべてがプロピレンオキシである2ブロックのアルコキシレートである。これらのアルコキシレートは、一般式
1−(EO)a−(PO)b−OR2
または
1−(PO)a−(EO)b−OR2
[式中、R1は、5個〜30個の炭素原子を有するアルコールの炭化水素残基であり、aおよびbはそれぞれ、1から30までであり、EOは、エチレンオキシ単位を表し、POは、プロピレンオキシ単位を表し、かつR2は、水素、1個〜18個の炭素原子を有するアルキル基、1個〜20個の炭素原子を有するアルカノイル基、ヒドロキシアルキル基またはそれらの混合物である]により表され得る。
【0055】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、一般式
3−(EO)a−(PO)b−(EO)c−R4
または
3−(PO)a−(EO)b−(PO)c−R4
[式中、a、b、およびcはそれぞれ、ブロックのそれぞれにおけるエチレンオキシ単位またはプロピレンオキシ単位の数を表し、かつR3およびR4は、独立して、水素、1個〜18個の炭素原子を有するアルキル基、1個〜18個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基、またはそれらの混合物である]により表される3ブロックの界面活性剤である。
【0056】
好ましいポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック型の界面活性剤は、約400から約6000までの、より好ましくは500から2000までの数平均分子量を有する。一実施形態においては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック型の界面活性剤は、500g/mol〜1000g/molの数平均分子量を有する。もう一つの実施形態においては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック型の界面活性剤は、2000〜約4000の数平均分子量を有する。前記ブロック型の界面活性剤は、好ましくは、約20質量%〜約60質量%の、より好ましくは約25%から約50%までのポリオキシエチレンブロックから構成されている。
【0057】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、一般式
1−AOn−OR2
[式中、R1は、5個〜30個の炭素原子を有するアルコールの炭化水素残基であり、nは、構造中のポリアルキレンオキシドAO単位の平均数を表し、かつR2は、水素、1個〜18個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基または−CO−R3(式中、R3は、1個〜20個の炭素原子を有するカルボン酸の炭化水素残基である)またはそれらの混合物である]のポリアルキレンオキシドPAOである。R1基としては、飽和または不飽和であってよい、炭素原子および水素原子の直鎖状、分枝鎖状、および/または環状の鎖が挙げられる。しかしながら、該炭化水素基は、好ましくは、直鎖状の炭化水素基である。R1基は、好ましくは、6個から16個までの炭素原子を有し、より好ましくは8個から13個までの炭素原子を有する。
【0058】
エチレンオキシドおよびエチレンオキシドとは異なる少なくとも1種のアルキレンオキシドのブロックコポリマーである適切なポリアルキレンオキシドPAOは、一実施形態においては、エチレンオキシドブロック当たりに1個〜40個の数平均のエチレンオキシド単位を含み、エチレンオキシドブロック当たりに、好ましくは1.5個〜30個の、より好ましくは2個〜25個の、さらにより好ましくは5個〜10個の数平均のエチレンオキシド単位を含む。
【0059】
エチレンオキシドならびにプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンテンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランから選択される少なくとも1種のアルキレンオキシドのブロックコポリマーである適切なポリアルキレンオキシドPAOは、一実施形態においては、通常、0.1個〜40個の、好ましくは1個〜10個の、さらにより好ましくは1.0個〜5個の数平均のプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンテンおよび/またはテトラヒドロフラン単位を含む。
【0060】
一実施形態においては、適切なポリアルキレンオキシドPAOは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのみを含み、かつ0.1個〜40個の、好ましくは1個〜10個の、さらにより好ましくは1.5個〜5個の数平均のプロピレンオキシド単位を含み、かつプロピレンオキシド対エチレンオキシドの数平均モル比は、40:1から1:400まで、好ましくは40:1から1:300まで、より好ましくは5:1から1:100まで、特に好ましくは5:1から1:50までである。もう一つの実施形態においては、プロピレンオキシド対エチレンオキシドの数平均モル比は、1:40から1:1まで、または1:35から1:1までである。
【0061】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、エチレンオキシドおよびブチレンオキシドのみを含み、0.1個〜40個の、好ましくは1個〜10個の、さらにより好ましくは1.5個〜5個のブチレンオキシド単位を含み、かつブチレンオキシド対エチレンオキシドの数平均モル比は、40:1から1:400まで、好ましくは40:1から1:300まで、より好ましくは5:1から1:100まで、特に好ましくは5:1から1:50までである。もう一つの実施形態においては、ブチレンオキシド対エチレンオキシドの数平均モル比は、1:40から1:1まで、または1:35から1:1までである。
【0062】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、エチレンオキシドおよびペンテンオキシドのみを含み、0.1個〜40個の、好ましくは1個〜10個の、さらにより好ましくは1.5個〜5個の数平均のペンテンオキシド単位を含み、かつペンテンオキシド対エチレンオキシドの数平均モル比は、40:1から1:400まで、好ましくは40:1から1:300まで、より好ましくは5:1から1:100まで、特に好ましくは5:1から1:50までである。もう一つの実施形態においては、ペンテンオキシド対エチレンオキシドの数平均モル比は、1:40から1:1まで、または1:35から1:1までである。
【0063】
一実施形態においては、ポリアルキレンオキシドPAOは、エチレンオキシドおよびテトラヒドロフランのみを含み、0.1個〜40個の、好ましくは1個〜10個の、より好ましくは1.5個〜5個の、さらにより好ましくは1.0個〜5個の数平均のテトラヒドロフラン単位を含み、かつテトラヒドロフラン対エチレンオキシドの数平均モル比は、40:1から1:400まで、好ましくは40:1から1:300まで、より好ましくは5:1から1:100まで、特に好ましくは5:1から1:50までである。もう一つの実施形態においては、テトラヒドロフラン対エチレンオキシドの数平均モル比は、1:40から1:1まで、または1:35から1:1までである。
【0064】
ポリアルキレンオキシドの合成は、当業者に公知である。詳細は、例えばウルマンの工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)、第6版、電子版の「ポリオキシアルキレン(Polyoxyalkylenes)」に示されている。
【0065】
ポリアルキレンオキシドPAOは、好ましくは、塩基触媒によるアルコキシル化によって製造され得る。この目的のために、アルコールR1−OHは、加圧された反応器中でアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化カリウムと、またはアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメチレートと混合され得る。減圧(例えば、100mbar未満)を用いて、および/または温度を高める(30℃から150℃へ)ことによって、混合物中にまだ存在している水またはメタノールを除去することができる。該アルコールは、その際、相応のアルコキシドとして存在する。その後に、不活性条件が不活性ガス(例えば窒素)により達成され、そして1種以上のアルキレンオキシドは、60℃から180℃までの温度で10bar以下の圧力まで段階的に加えられる。反応の終わりに、触媒を、酸(例えば、酢酸またはリン酸)の添加によって中和してよく、所望であれば濾別することができる。触媒はまた、ケイ酸マグネシウムを基礎とするイオン交換体を使用して除去することもできる。この方法を使用して、1.04から1.2までの好ましい多分散性を有するポリアルキレンオキシドPAOを容易に得ることができる。
【0066】
しかしながら、アルコールのアルコキシル化はまた、その他の方法を使用して、例えば酸触媒によるアルコキシル化を使用して行うこともできる。さらに、例えば、独国特許出願公開第4325237号明細書(DE4325237A1)に記載される複水酸化物クレイを使用することができ、または複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)を使用することもできる。適切なDMC触媒は、例えば独国特許出願公開第10243361号明細書(DE10243361A1)の、特に段落[0029]〜[0041]に、かつそこで引用される文献に開示されている。例えば、Zn−Co型の触媒を使用することができる。反応の実施のために、該触媒は、アルコールR1−OHに添加することができ、そして該混合物を、前記のように脱水し、記載されるようにアルキレンオキシドと反応させることができる。通常、該混合物に対して1000ppm以下の触媒が使用され、この少量のため、該触媒は生成物に残留してもよい。触媒の量は、一般的に、1000ppm未満であってよく、例えば250ppm以下であってよい。
【0067】
一実施形態においては、前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤Sは、6個〜30個の炭素原子を含む少なくとも1種の長鎖脂肪族アルコールAAである。一実施形態においては、前記脂肪族アルコールAAは、モノオール、例えばn−デカノール、イソデカノール、2−プロピルヘプタノール、トリデカノール、オクタデカノール、ブタノール、ヘキサノール、ノナノール、ウンデカノール、およびオキソアルコール、例えば2−エチルヘキサノール、イソデカノールおよびイソノニルアルコール、ならびにそれらの混合物である。
【0068】
一実施形態においては、前記脂肪族アルコールAAは、ジオールである。
【0069】
一実施形態においては、前記脂肪族アルコールAAは、アルキンジオールである。
【0070】
アルキンジオールである好ましい脂肪族アルコールAAは、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールである。
【0071】
供給材料FMは、一般的に、非イオン性界面活性剤Sを、供給材料中の溶液に対して、0.1質量ppm〜1000質量ppmの量で、好ましくは0.5質量ppm〜100質量ppmの量で、より好ましくは1質量ppm〜10質量ppmの量で含む。
【0072】
本発明の一実施形態においては、供給材料FMは,少なくとも1種のポリマーAをさらに含んでよい。ポリマーAは、少なくとも30質量%の、好ましくは少なくとも50質量%の、より好ましくは少なくとも70質量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸および/または少なくとも1種のエチレン性不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸を重合形で含むポリマーである。本明細書でアクリル酸のようなエチレン性不飽和酸が参照された場合に、このエチレン性不飽和酸は、相応の酸のポリマーだけでなく、相応の酸の塩、例えばそのナトリウム塩を含むポリマーを含むものとする。
【0073】
ポリマーAは、通常は、500g/mol〜10000g/molの、好ましくは1000g/mol〜5000g/molの分子量MWを有する。
【0074】
一実施形態においては、ポリマーAは、アクリル酸のホモポリマーである。一実施形態においては、そのようなアクリル酸のホモポリマーは、500g/mol〜10000g/molの、好ましくは1000g/mol〜5000g/molの分子量MWを有する。好ましい一実施形態においては、ポリマーAのMWは、3000g/mol〜4000g/molである。
【0075】
一実施形態においては、ポリマーAは、アクリル酸およびその他のエチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばメタクリル酸のコポリマーである。一実施形態においては、ポリマーAは、アクリル酸およびエチレン性不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸のコポリマーである。一実施形態においては、そのようなアクリル酸のコポリマーは、500g/mol〜20000g/molの、好ましくは800g/mol〜10000g/molの、より好ましくは1000g/mol〜5000g/molの分子量MWを有する。
【0076】
一実施形態においては、供給材料FMは、アクリル酸のホモポリマーと、アクリル酸およびマレイン酸のコポリマーとのブレンドを含む。
【0077】
一実施形態においては、ポリマーAは、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸およびポリマレイン酸のコポリマー、ならびにマレイン酸のコポリマー、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0078】
一実施形態においては、ポリマーAは、国際公開第2013/020937号パンフレット(WO2013/020937)の第3頁第37行〜第12頁第25行に開示されるポリマーA1およびポリマーA2ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである。
【0079】
一実施形態においては、ポリマーA1は、1000g/mol〜20000g/molの質量平均分子量を有し、かつ
(a1−1)20質量%〜80質量%の、C2〜C8−オレフィン、アリルアルコール、イソプレノール、C1〜C4−アルキルビニルエーテル、およびC1〜C4−モノカルボン酸のビニルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(a1−2)20質量%〜80質量%の、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、その無水物または塩、
(a1−3)0質量%〜50質量%のスルホン酸基を含む1種以上のモノマー
からなる水溶性または水分散性のポリマーである。
【0080】
ポリマー(A2)は、好ましくは、1000g/mol〜50000g/molの質量平均分子量を有し、かつ
(a2−1)30質量%〜100質量%の、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、その無水物または塩、
(a2−2)0質量%〜70質量%のスルホン酸基を含む1種以上のモノマー、
(a2−3)0質量%〜70質量%の、式
2C=C(R1)(CH2xO[R2−O]o−R3
[式中、R1は、水素またはメチルであり、R2は、ブロック状またはランダムに配置されていてよい、同一または異なる直鎖状または分枝鎖状のC2〜C6−アルキレン基であり、かつR3は、水素または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C4−アルキル基であり、xは、0、1または2であり、かつoは、3から50までの数である]の1種以上の非イオン性モノマー
からなる水溶性または水分散性のポリマーである。
【0081】
ポリマー(A1)および(A2)の混合物は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび塩基性マグネシウム塩の沈殿の抑制に高い活性を有する。1種以上の異なるポリマー(A1)を、1種以上の異なるポリマー(A2)と混合してよい。
【0082】
一実施形態においては、ポリマーAは、20質量%〜80質量%の、C2〜C8−オレフィン、アリルアルコール、イソプレノール、C1〜C4−アルキルビニルエーテルおよびC1〜C4−モノカルボン酸のビニルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(a1−1)、ならびに20質量%〜80質量%の、不飽和C3〜C8−カルボン酸、その無水物または塩から選択される少なくとも1種のモノマー(a1−2)、そしてまた任意に0質量%〜50質量%の、スルホン酸基を含む1種以上のモノマー(a1−3)の水溶性または水分散性のポリマー(A1)を5質量%〜95質量%含む。
【0083】
一実施形態においては、ポリマーAは、30質量%〜100質量%の、モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、その無水物または塩から選択される少なくとも1種のモノマー(a2−1)、そしてまた任意に0質量%〜70質量%の、スルホン酸基を含む1種以上のモノマー(a2−2)の水溶性または水分散性のポリマー(A2)を5質量%〜95質量%含む。
【0084】
モノマー(a1−1)として使用することができる適切なC2〜C8−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよびジイソブテン、好ましくはイソブテンおよびジイソブテンである。
【0085】
モノマー(a1−1)として使用することができる適切なアルキルビニルエーテルは、アルキル鎖中に1個〜4個の炭素原子を含む。例は、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルn−プロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、およびビニルイソブチルエーテルである。
【0086】
モノマー(a1−1)として使用することができるC1〜C4−モノカルボン酸のビニルエステルは、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、および酪酸ビニルである。
【0087】
好ましいモノマー(a1−1)は、イソブテン、ジイソブテン、酢酸ビニル、ビニルメチルエーテルアリルアルコール、およびイソプレノールである。特に好ましくは、イソブテン、ジイソブテン、およびイソプレノールが挙げられる。
【0088】
モノマー(a1−2)および(a2−1)として使用することができる適切なモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、およびイタコン酸、そしてまたそれらの水溶性塩である。前記不飽和C3〜C8−カルボン酸が無水物を形成することができるのであれば、これらの無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水メタクリル酸はまた、モノマー(a1−1)としても適している。
【0089】
好ましいモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびフマル酸、そしてまたそれらの無水物および水溶性塩である。これらは、モノマー(a1−2)およびモノマー(a1−1)の両方として好ましい。水溶性塩は、特に該酸のナトリウム塩およびカリウム塩である。
【0090】
スルホン酸基を含むモノマー(a1−3)および(a2−2)は、好ましくは、式(a)および(b)
2C=CH−X−SO3H (a)
2C=C(CH3)−X−SO3H(b)
[式中、Xは、−(CH2−(式中、n=0〜4)、−C64、−CH2−O−C64−、−C(O)−NH−C(CH32−、−C(O)−NH−CH(CH2CH3)−、−C(O)NH−CH(CH3)CH2−、−C(O)NH−C(CH32CH2−、−C(O)NH−CH2CH(OH)CH2−、−C(O)NH−CH2−、−C(O)NH−CH2CH2−および−C(O)NH−CH2CH2CH2−から選択することができる任意に存在するスペーサー基である]のモノマーである。
【0091】
スルホン酸基を含む特に好ましいモノマーは、この場合に、1−アクリルアミド−1−プロパンスルホン酸(式(a)においてX=−C(O)NH−CH(CH2CH3)−)、2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸(式(a)においてX=−C(O)NH−CH(CH3)CH2−)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS、式(a)においてX=−C(O)NH−C(CH32CH2−)、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(式(b)においてX=−C(O)NH−C(CH32CH2−)、3−メタクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(式(b)においてX=−C(O)NH−CH2CH(OH)CH2−)、アリルスルホン酸(式(IIa)においてX=CH2)、メタリルスルホン酸(式(b)においてX=CH2)、アリルオキシベンゼンスルホン酸(式(IIa)においてX=−CH2−O−C64−)、メタリルオキシベンゼンスルホン酸(式(b)においてX=−CH2−O−C64−)、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニルオキシ)プロパン−スルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸(式(b)においてX=CH2)、スチレンスルホン酸(式(a)においてX=C6H=)、ビニルスルホン酸(式(a)においてXは存在しない)、3−スルホプロピルアクリレート(式(a)においてX=−C(O)O−CH2CH2CH2−)、2−スルホエチルメタクリレート(式(b)においてX=−C(O)O−CH2CH2−)、3−スルホプロピルメタクリレート(式(b)においてX=−C(O)O−CH2CH2CH2−)、スルホメタクリルアミド(式(b)においてX=−C(O)NH−)、スルホメチルメタクリルアミド(式(b)においてX=−C(O)NH−CH2−)、そしてまた前記酸の塩である。適切な塩は、一般的に、水溶性塩、好ましくは前記酸のナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩である。
【0092】
特に好ましくは、1−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−メタクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニルオキシ)プロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸(AMPS)およびメタリルスルホン酸、そしてまた前記酸の塩が挙げられる。これらは、モノマー(a1−3)としても、モノマー(a2−2)としてもその両方として好ましい。
【0093】
スルホン酸基を含むさらに特に好ましモノマーは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)およびアリルスルホン酸、そしてまたそれらの水溶性塩、特にそれらのナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩である。これらは、モノマー(a1−3)およびモノマー(a2−2)の両方として好ましい。
【0094】
成分(a2−3)としては、前記コポリマーは、0質量%〜70質量%の、式
2C=C(R1)(CH2xO(R2−O)o−R3
[式中、R1は、水素またはメチルであり、R2は、同一または異なる、直鎖状または分枝鎖状であり、かつブロック状および/またはランダムに配置されていてよいC2〜C6−アルキレン基であり、かつR3は、水素または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C4−アルキル基であり、xは、0、1または2であり、かつoは、3から50までの自然数である]の少なくとも1種の非イオン性モノマーを含む。
【0095】
該アルキレン基はまた、ブロック状およびランダムに配置されていてもよく、すなわち、同一のアルキレンオキシド基の1個以上のブロックにおいてブロック状に、そしてさらに2個以上の異なるアルキレンオキシド基の1個以上のブロックにおいてランダムに配置されていてもよい。これはまた、「ブロック状またはランダムに配置されている」という文言によっても包含される。
【0096】
好ましい非イオン性モノマー(a2−3)は、アリルアルコールを基礎とするモノマー(R1=H、x=1)、およびイソプレノールを基礎とするモノマー(R1=メチル、x=2)である。
【0097】
非イオン性モノマー(a2−3)は、好ましくは、平均で8個〜40個の、特に好ましくは10個〜30個の、特に10個〜25個のアルキレンオキシド単位を含む。式(I)の係数oは、アルキレンオキシド単位の中央値に関連する。
【0098】
好ましいアルキレンオキシド単位R2−Oは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、および1,2−ブチレンオキシドであり、特に好ましくは、エチレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドが挙げられる。
【0099】
具体的な一実施形態においては、非イオン性モノマー(a2−3)は、エチレンオキシド単位のみを含む。さらなる具体的な一実施形態においては、非イオン性モノマー(a2−3)は、ブロック状またはランダムに配置されていてよいエチレンオキシド単位および1,2−プロピレンオキシド単位を含む。好ましくは、R3は、水素またはメチルである。
【0100】
一般的にコポリマー(A1)の質量平均分子量は、1000g/mol〜20000g/mol、好ましくは1500g/mol〜15000g/mol、特に好ましくは2000g/mol〜10000g/mol、特に2000g/mol〜8000g/molである。
【0101】
該分子量は、ポリアクリル酸標準と比較してゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0102】
一般的に、ポリマー(A1)の多分散性指数Mw/Mnは、3.0以下であり、好ましくは2.5以下である。
【0103】
ポリマー(A1)は、好ましくは二元コポリマーまたはターポリマーである。前記ポリマーが二元コポリマーである場合に、該ポリマーは、好ましくは20質量%〜60質量%のモノマー(a1−1)および40質量%〜80質量%のモノマー(a1−2)を含み、特に好ましくは25質量%〜50質量%のモノマー(a1)および50質量%〜75質量%のモノマー(a1−2)を含む。
【0104】
前記ポリマーがターポリマーである場合に、該ポリマーは、好ましくは25質量%〜50質量%のモノマー(a1−1)、30質量%〜60質量%のモノマー(a1−2)、および10質量%〜30質量%のモノマー(a1−3)を含む。
【0105】
複数の異なるモノマー(a1−1)および/または複数の異なるモノマー(a1−2)が、ポリマー(A1)中に存在してもよい。例えば、ターポリマーおよびクアテルポリマーは、モノマー(a1−1)および(a1−2)だけを、好ましくは二元コポリマーについて記載した量で含んでよい。
【0106】
本発明の好ましい実施形態においては、ポリマー(A1)は、イソブテンおよびマレイン酸の、好ましくは二元コポリマーについて上述した量比のコポリマーである。
【0107】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、ポリマー(A1)は、イソプレノールおよびマレイン酸の、好ましくは二元コポリマーについて上述した量比のコポリマーである。
【0108】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、ポリマー(A1)は、イソプレノール、マレイン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の、好ましくはターポリマーについて上述した量比のターポリマーである。さらなる好ましい一実施形態においては、アリルスルホン酸が、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の代わりに使用される。
【0109】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、ポリマー(A1)は、イソプレノール、マレイン酸およびアクリル酸の、好ましくは上述の量比のターポリマーである。
【0110】
ポリマー(A2)は、ホモポリマーまたはコポリマーである。コポリマーは、モノマー(a2−1)、モノマー(a2−1)および(a2−2)、モノマー(a2−1)および(a2−3)、ならびにモノマー(a2−1)、(a2−2)および(a2−3)を含んでよい。モノマー(a2−1)および(a2−2)のコポリマーが考慮される場合に、該コポリマーは、好ましくは50質量%〜90質量%のモノマー(a2−1)および10質量%〜50質量%のモノマー(a2−2)を含み、特に好ましくは60質量%〜85質量%のモノマー(a2−1)および15質量%〜40質量%のモノマー(a2−2)を含む。
【0111】
モノマー(a2−1)および(a2−3)のコポリマーが考慮される場合に、該コポリマーは、好ましくは50質量%〜95質量%のモノマー(a2−1)および5質量%〜50質量%のモノマー(a2−3)を含み、特に好ましくは60質量%〜90質量%のモノマー(a2−1)および10質量%〜40質量%のモノマー(a2−3)を含む。
【0112】
モノマー(a2−1)、(a2−2)および(a2−3)のコポリマーが考慮される場合に、該コポリマーは、好ましくは30質量%〜80質量%のモノマー(a2−1)、10質量%〜50質量%のモノマー(a2−2)、および5質量%〜50質量%のモノマー(a2−3)を含み、特に好ましくは40質量%〜75質量%のモノマー(a2−1)、15質量%〜40質量%のモノマー(a2−2)および5質量%〜40質量%のモノマー(a2−3)を含む。好ましくは、二元コポリマーが挙げられるが、それらはターポリマーであってもよい。
【0113】
本発明の好ましい一実施形態においては、ポリマー(A2)は、アクリル酸ホモポリマーである。
【0114】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、ポリマー(A2)は、アクリル酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の、好ましくは上述した量比でのコポリマーである。
【0115】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、ポリマー(A2)は、アクリル酸およびアリルスルホン酸の、好ましくは上述した量比でのコポリマーである。
【0116】
一般的にポリマー(A2)の質量平均分子量は、1000g/mol〜50000g/mol、好ましくは1000g/mol〜30000g/mol、特に好ましくは1500g/mol〜20000g/mol、特に1500g/mol〜10000g/molである。
【0117】
該分子量は、ポリアクリル酸標準と比較してゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0118】
一般的に、ポリマー(A2)の多分散性指数Mw/Mnは、2.5以下であり、好ましくは2.0以下である。
【0119】
一実施形態においては、ポリマーAは、
(A1)3質量%〜95質量%の1000g/mol〜20000g/molの質量平均分子量を有する水溶性または水分散性ポリマーであって、
(a1−1)20質量%〜80質量%の、C2〜C8−オレフィン、アリルアルコール、イソプレノール、C1〜C4−アルキルビニルエーテル、およびC1〜C4−モノカルボン酸のビニルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(a1−2)20質量%〜80質量%の、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、その無水物または塩、
(a1−3)0質量%〜50質量%のスルホン酸基を含む1種以上のモノマー
のポリマー、
(A2)3質量%〜95質量%の1000g/mol〜50000g/molの質量平均分子量を有する水溶性または水分散性ポリマーであって、
(a2−1)30質量%〜100質量%の、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸、その無水物または塩、
(a2−2)0質量%〜70質量%のスルホン酸基を含む1種以上のモノマー、
(a2−3)0質量%〜70質量%の、式
2C=C(R1)(CH2xO[R2−O]o−R3
[式中、R1は、水素またはメチルであり、R2は、ブロック状またはランダムに配置されていてよい、同一または異なる直鎖状または分枝鎖状のC2〜C6−アルキレン基であり、かつR3は、水素または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C4−アルキル基であり、xは、0、1または2であり、かつoは、3から50までの数である]の1種以上の非イオン性モノマー、
のポリマー
(A3)0質量%〜80質量%のホスホネート、
(A4)0質量%〜90質量%の水、
(A5)0質量%〜50質量%の添加剤、例えばポリホスフェート、亜鉛塩、モリブデン酸塩、有機腐食防止剤、殺生物剤、錯化剤、界面活性剤または消泡剤
を含む組成物である。
【0120】
ポリマー(A1):(A2)の質量比は、一般に1:20から20:1までである。
【0121】
ポリマーAは、任意に、80質量%までのホスホネート(A3)を含んでよい。ホスホネートは、該ポリマーの堆積防止活性をさらに補助し得る。さらに、ホスホネートは、腐食防止剤として作用する。
【0122】
ホスホネートの例は、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)およびエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、そしてまたそれらの水溶性塩、特にそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩である。
【0123】
さらに、本発明による組成物は、90質量%までの水を含んでよい。さらに、該配合物は、本発明によるポリマー混合物、任意にホスホネート、および任意に水の他に、要求に応じて、50質量%までのさらなる添加剤(A5)、例えばポリホスフェート、亜鉛塩、モリブデン酸塩、有機腐食防止剤、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ベンゾイミダゾールまたはエチニルカルビノールアルコキシレート、殺生物剤、錯化剤および/または界面活性剤を含んでもよい。
【0124】
前記少なくとも1種のポリマーAは、一般的に、供給材料FM中に、供給材料FM中の溶液に対して、0質量ppm〜1000質量ppmの量で、好ましくは0.1質量ppm〜20質量ppmの量で、より好ましくは0.1質量ppm〜10質量ppmの量で含まれている。
【0125】
本発明の一実施形態においては、供給材料FMは,少なくとも1種のポリマーFをさらに含む。ポリマーFは、好ましくは500g/molから1000g/molまでのモル質量を有する少なくとも1個のポリオレフィンブロック、および2個から100個までの、好ましくは5個から50個までのアルキレンオキシド単位を含む少なくとも1個のポリアルキレンオキシドブロックを重合形で含むコポリマーである。
【0126】
一実施形態においては、ポリマーFの一般式は、
5−(AO)n
であり、その式中、R5は、500g/mol〜1000g/molの分子量MWを有するエチレン、プロピレン、ブチレンまたはそれらの混合物のポリマーから選択されるポリオレフィンであり、AOは、少なくとも1種のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを示し、かつnは、2から100までの、好ましくは5から50までの数である。
【0127】
ポリマーFは、一般的に、供給材料FM中に、供給材料FM中の溶液に対して、0質量ppm〜100質量ppmの量で、好ましくは0.01質量ppm〜50質量ppmの量で、より好ましくは0.05質量ppm〜10質量ppmの量で含まれている。
【0128】
本発明の一実施形態においては、供給材料FMは、0.1質量ppm〜1000質量ppmの非イオン性界面活性剤Sを含み、ポリマーAもポリマーFも含まない。
【0129】
本発明の一実施形態においては、供給材料FMは、0.1質量ppm〜1000質量ppmの非イオン性界面活性剤S、0.1質量ppm〜1000質量ppmのポリマーAを含み、ポリマーFを含まない。
【0130】
本発明の一実施形態においては、供給材料FMは、0.1質量ppm〜1000質量ppmの非イオン性界面活性剤S、0.01質量ppm〜100質量ppmのポリマーFを含み、ポリマーAを含まない。
【0131】
本発明の一実施形態においては、供給材料FMは、0.1質量ppm〜1000質量ppmの非イオン性界面活性剤S、0.1質量ppm〜1000質量ppmのポリマーA、および0.01質量ppm〜100質量ppmのポリマーFを含む。
【0132】
一実施形態においては、非イオン性界面活性剤S、ポリマーAおよびポリマーFは、連続的に原水に添加される。
【0133】
一実施形態においては、非イオン性界面活性剤S、ならびに該当する場合はポリマーAおよびポリマーFは、供給材料FMに1つの配合物で添加される。
【0134】
本発明による方法は、様々な種類の熱的脱塩化法のために適している。
【0135】
それらは、特にMED法のために適しており、特に水平に配置された複数の加熱管を使用するMED法のために適している。
【0136】
本発明による方法は、原則的に、管材料にかかわらずMED装置に利用することができる。
【0137】
好ましい一実施形態においては、MED装置における管材料は、アルミ黄銅、チタン、ステンレス鋼、銅/ニッケル合金、アルミニウム/マグネシウム合金、黒鉛およびポリプロピレンのような少なくとも1種の有機ポリマーを含むポリマー複合物から選択される。MED装置中の金属管は、さらにセラミック被覆されていてよい。
【0138】
本発明による方法は、実施が簡単であり、かつ経済的である。該方法は、高い効率で脱塩水を提供する。
【0139】
本発明による方法は、スケール形成の低下をもたらす。熱的脱塩化および特にMEDのプロセス条件下で、非イオン性界面活性剤Sの存在が、スケール形成を効果的に減らすとともに、ポリマーAのようなその他のスケール防止剤と組み合わせた場合に相乗効果を示したことは、本発明の予想外の結果であった。
【0140】
本発明による方法はさらに、MED条件下で加熱管上で原水の非常に薄い液膜厚さでも、液膜破壊を伴うことなく液膜を維持しつつ脱塩化法を実行可能にする。
【0141】
本発明による方法はさらに、MED条件下で脱塩化法を、該方法の間に管上にドライスポットを生ずることなく実行可能にする。
【0142】
本発明による方法はさらに、非常に好ましい、すなわち非常に均一でかつ一様な、供給材料FMによる管表面の濡れ挙動を示した。
【0143】
本発明による方法は、非常にエネルギー的に効率が良く、非常に高い全伝熱で運転することができる。本発明による方法は、MED法を、管の低い濡れ膜流量でも実施可能にする。本発明による方法は、MED法を、MED装置中の管上にドライスポットを生成することなく実施可能にする。
【0144】
本発明による方法は、供給材料FMをポンピングするためにわずか少量のエネルギーしか必要としない。
【0145】
本発明のもう一つの態様は、
a)0.1質量%〜99質量%の、ポリアルキレンオキシドPAOから選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤S、
b)0.1質量%〜99質量%の少なくとも1種のポリマーA、
c)0質量%〜50質量%の、ポリオレフィンブロックおよび少なくとも1個のポリアルキレンオキシドブロックを含むブロックコポリマーである少なくとも1種のポリマーF、
d)0質量%〜80質量%の水
を含む配合物B(ブレンドBとも呼ばれる)である。
【0146】
好ましい一実施形態においては、配合物Bにおける成分a)〜d)は、足し合わせて100%となる。
【0147】
一実施形態においては、配合物Bは、
a)0.1質量%〜99質量%の、ポリアルキレンオキシドPAOから選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤S、
b)0.1質量%〜99質量%の少なくとも1種のポリマーA、
c)0質量%〜50質量%の、ポリオレフィンブロックおよび少なくとも1個のポリアルキレンオキシドブロックを含むブロックコポリマーである少なくとも1種のポリマーF、
d)0質量%〜80質量%の水、
e)0質量%〜50質量%のホスホネートおよび/またはポリホスフェート
を含む。
【0148】
好ましい一実施形態においては、配合物Bにおける成分a)〜e)は、足し合わせて100%となる。
【0149】
一実施形態においては、配合物Bは、
a)0.1質量%〜99質量%の、ポリアルキレンオキシドPAOから選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤S、
b)0.1質量%〜99質量%の少なくとも1種のポリマーA、
c)0質量%〜50質量%の、ポリオレフィンブロックおよび少なくとも1個のポリアルキレンオキシドブロックを含むブロックコポリマーである少なくとも1種のポリマーF、
d)0質量%〜80質量%の水、
e)0.1質量%〜50質量%のホスホネートおよび/またはポリホスフェート
を含む。
【0150】
好ましい一実施形態においては、配合物Bにおける成分a)〜e)は、足し合わせて100%となる。
【0151】
一実施形態においては、配合物Bは、
a)0.1質量%〜99質量%の、ポリアルキレンオキシドPAOから選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤S、
b)0.1質量%〜99質量%の少なくとも1種のポリマーA、
c)0.1質量%〜50質量%の、ポリオレフィンブロックおよび少なくとも1個のポリアルキレンオキシドブロックを含むブロックコポリマーである少なくとも1種のポリマーF、
d)0質量%〜80質量%の水、
e)0.1質量%〜50質量%のホスホネートおよび/またはポリホスフェート
を含む。
【0152】
好ましい一実施形態においては、配合物Bにおける成分a)〜e)は、足し合わせて100%となる。
【0153】
配合物Bの成分は、前記規定と同じ意味を有し、かつ同じ好ましい実施形態を包含するものとする。
【0154】
実施例
使用される材料:
非イオン性界面活性剤1: モル平均で7のEO単位および1.5のブチレンオキシド単位を有するアルコキシル化されたC9〜C11−オキソアルコール(示された順序でアルコキシル化されたブロックコポリマー)。
【0155】
非イオン性界面活性剤2: 高級アルケンオキシドおよびエチレンオキシドを含む、末端OH基を有するアルコキシル化された脂肪アルコール。
【0156】
非イオン性界面活性剤3: 国際公開第03/090531号パンフレット(WO03/090531)の第34頁第24行〜第36行(比較例3)に示される手順に従って製造される、モル平均で10のEO単位および1.5モルのペンテンオキシドを有するアルコキシル化されたC10−オキソアルコール。
【0157】
非イオン性界面活性剤4:国際公開第2005/37757号パンフレット(WO2005/37757)の第13頁第6行〜第23行(実施例1)に示される手順と同様にして製造される、モル平均で5.7のEOおよび4.7のPOを有するアルコキシル化された2−プロピルヘプチルアルコール。
【0158】
非イオン性界面活性剤5:国際公開第2005/37757号パンフレット(WO2005/37757)の第13頁第6行〜第23行(実施例1)に示される手順と同様にして製造される、モル平均で5.7のEO、4.7のPOおよび2.3のEOを有するアルコキシル化された2−プロピルヘプチルアルコール。
【0159】
非イオン性界面活性剤6: 国際公開第06/097435号パンフレット(WO06/097435)の第20頁第20行〜第21頁第8行(実施例1)に示される手順に従って製造される、モル平均で27のEO単位および1のPO単位を有し、かつC8〜C18−脂肪酸でエステル化された、アルコキシル化されたC13−オキソアルコール。
【0160】
非イオン性界面活性剤7: 中央ポリプロピレングリコール基の両端に2個のポリエチレングリコール基を有するブロックコポリマーであって、該中央ポリプロピレンブロックが、1750g/molのモル質量を有し、かつ該ポリマー中のポリエチレングリコールの質量パーセントが、20%であり、該非イオン性界面活性剤のモル質量が、2450g/mol(OH価から計算した)であり、粘度(EN 12092、23℃、ブルックフィールド、60rpm)が、500mPasであり、濡れ(EN 1772、23℃、2g/lのソーダ灰、1g/lの界面活性剤)が、300s超であり、かつ表面張力(EN 14370、1g/l、23℃、Harkins−Jordanの補正の適用下)が、41mN/mである、ブロックコポリマー。
【0161】
非イオン性界面活性剤8: 中央ポリプロピレングリコール基の両端に2個のポリエチレングリコール基を有するブロックコポリマーであって、該中央ポリプロピレンブロックが、1750g/molのモル質量を有し、かつ該ポリマー中のポリエチレングリコールの質量パーセントが、40%であり、該非イオン性界面活性剤のモル質量が、2900g/mol(OH価から計算した)であり、粘度(EN 12092、23℃、ブルックフィールド、60rpm)は、1000mPasであり、濡れ(EN 1772、23℃、2g/lのソーダ灰、1g/lの界面活性剤)が、300s超であり、かつ表面張力(EN 14370、1g/l、23℃、Harkins−Jordanの補正の適用下)が、41mN/mである、ブロックコポリマー。
【0162】
非イオン性界面活性剤9: 中央ポリプロピレングリコール基の両端に2個のポリエチレングリコール基を有するブロックコポリマーであって、該中央ポリプロピレンブロックが、2750g/molのモル質量を有し、かつ該ポリマー中のポリエチレングリコールの質量パーセントが、20%であり、該非イオン性界面活性剤のモル質量が、3650g/mol(OH価から計算した)であり、粘度(EN 12092、23℃、ブルックフィールド、60rpm)が、900mPasであり、濡れ(EN 1772、23℃、2g/lのソーダ灰、1g/lの界面活性剤)が、100sであり、かつ表面張力(EN 14370、1g/l、23℃、Harkins−Jordanの補正の適用下)が、35mN/mである、ブロックコポリマー。
【0163】
非イオン性界面活性剤10: 中央ポリエチレングリコール基の両端に2個のポリプロピレングリコール基を有するブロックコポリマーであって、該中央ポリエチレンブロックが、430g/molのモル質量を有し、かつ該ポリマー中のポリエチレングリコールの質量パーセントが、20%であり、該非イオン性界面活性剤のモル質量が、2150g/mol(OH価から計算した)であり、粘度(EN 12092、23℃、ブルックフィールド、60rpm)が、450mPasであり、濡れ(EN 1772、23℃、2g/lのソーダ灰、1g/lの界面活性剤)が、300s超であり、かつ表面張力(EN 14370、1g/l、23℃、Harkins−Jordanの補正の適用下)が、38mN/mである、ブロックコポリマー。
【0164】
非イオン性界面活性剤11: 中央ポリプロピレングリコール基の両端に2個のポリエチレングリコール基を有するブロックコポリマーであって、該中央ポリプロピレンブロックが、930g/molのモル質量を有し、かつ該ポリマー中のポリエチレングリコールの質量パーセントが、30%であり、該非イオン性界面活性剤のモル質量が、3100g/mol(OH価から計算した)であり、粘度(EN 12092、23℃、ブルックフィールド、60rpm)が、600mPasであり、濡れ(EN 1772、23℃、2g/lのソーダ灰、1g/lの界面活性剤)が、300s超であり、かつ表面張力(EN 14370、1g/l、23℃、Harkins−Jordanの補正の適用下)が、40mN/mである、ブロックコポリマー。
【0165】
非イオン性界面活性剤12: モル平均で20のEO単位、OH価81〜96、けん化価(ISO 3657)45〜55を有する、アルコキシル化されたソルビタンモノステアレート。
【0166】
スケール防止剤1: 1.26g/cm3の密度(DIN 51757、23℃)および200mPasの粘度(DIN 53018、ブルックフィールド、60rpm、23℃)を有する変性ポリカルボン酸ナトリウム塩。
【0167】
I. 試験装置
パイロットプラント規模の水平管式流下液膜型蒸留を使用することで、海水の流下液膜の液膜流動特性、および加熱された管表面のスケール形成を、工業的な多重効用蒸留器(MED)で一般的な条件下で試験した。
【0168】
パイロットプラント規模の試験装置の概略図を、図1に示す(A=真空ポンプ、B=収集タンク、C=凝縮物、D=蒸留物、E=ブライン、F=収集タンク、G=再循環ポンプ、H=試料採取、I=海水、J=蒸気、K=凝縮器、L=電気式スチーム発生器、M=スチーム)。
【0169】
パイロット規模の試験装置は、図2に示されるように、s=50mmの管のピッチで互いに上下に配置された6本の水平管配列を備えた水平管式流下液膜型蒸発器を備えていた。電気式スチーム発生器からの飽和スチームを、それらの管中に導入し、そして真空条件下で凝縮させる一方で、熱を蒸発側に移動させた。試験液体を、歯付きオーバーフロー堰によって最初の管上に一様に分配させ、重力によりトリクルダウンさせ、水平管全体にわたり薄い液膜流を形成させた。凝縮のエンタルピーを使用することで、試験液体を上方の管上で沸点にまで予熱し、次いでその一部を、下方の管上で蒸発させた。生成された蒸気を、プレート型熱交換器中で凝縮させた。蒸発器を出た後に、試験液体は、収集タンク中に流れ込み、蒸留物と混合された。次いで、試験液体を、ポンプによって再循環させた。
【0170】
蒸発する海水および蒸発器中に入り込む可能性がある周囲空気から放出される二酸化炭素を、蒸発器シェル中に飽和圧力を維持する真空ポンプによって抽出した。該パイロットプラントは、工業的な多重効用蒸留器(MED)中の条件と非常に類似した海水からのCO2放出のための条件を備えていた。二酸化炭素の放出は、海水のpH値をより高い値にずらし、カーボネート系に影響を及ぼした。
【0171】
試験装置は、図1に示されるようにプロセスを監視および制御するために、様々な温度測定装置、圧力測定装置、および流速測定装置を備えていた。装置の制御は、再現的なスケール形成結果を得るために必須である長い期間にわたり連続的な定常的な運転を維持するために完全に自動的であった。
【0172】
前記管は、管を取り替え、種々の管材料を試験し、そして付着性スケールを分析するために、管板から取り外すことができた。蒸発器の両方の側に、濡れ挙動の視覚的観察を可能にする検査ガラスを取り付けた。
【0173】
II. 試験材料
スケール形成を調査するための試験系列において人工海水を使用した。種々の管材料の濡れ挙動と、管の濡れ挙動に対する非イオン性界面活性剤Sの影響を調査するための試験系列において脱イオン水を使用した。
【0174】
人工海水の調製は、Kesterら(Kester, D.R.;Duedall,I.W.;Connors,D.N.;Pytkowicz,R.M.,Preparation of artificial seawater,Limnology and Oceanography,12(1967)176−179)による配合において示唆される標準的人工海水に関する塩モル分率に基づくものであった。
【0175】
管材料表面は、70℃の温度で45g/kgの塩度を有する人工海水の接触角を測定することによって特徴付けられた。接触角に対する非イオン性界面活性剤Sの影響は、45g/kgの塩度を有する人工海水中の非イオン性界面活性剤Sの希釈溶液で測定した。非イオン性界面活性剤Sの濃度は、該溶液に対して100質量ppmであった。
【0176】
スケール形成実験を、1.3から1.6の間の典型的な濃度係数を考慮して、工業的なMEDプラント中の最も下の管上で、凝縮された海水を模した65g/kgの塩度を有する人工海水を用いて実施した。65g/kgの塩度を有する海水は、1.39mol/kgのイオン濃度を有する。
【0177】
第1表は、65g/kgの塩度を有する人工海水を調製するために使用された種々の塩の量を示し、第2表は、人工海水中に存在する種々のイオンの濃度を示す。塩を混合し、溶液を撹拌した後に、人工海水をエアレーションした。そのエアレーションは、該溶液を周囲ガスと平衡化させることにつながり、HCO3-からCO32-への転化から得られる過剰のCO2を除去した。エアレーション後の人工海水のpHは、8.1から8.3の間であった。
【0178】
第1表. 45g/kgおよび65g/kgの塩度を有する1kgの人工海水のための処方
【表1】
【0179】
第2表. 45g/kgおよび65g/kgの塩度を有する人工海水中のイオンの組成
【表2】
【0180】
III. 管材料
実験で使用される水平管は、銅−ニッケル90/10製、アルミニウム合金AlMg2.5(2.4%〜2.8%のマグネシウムを含有する)製、またはアルミ黄銅製であった。
【0181】
管の外径は、d0=25mmであった。有効長さは、L=453mmであった。濡れ挙動およびスケール形成を調べるために、特に記載がない限り、管は、管供給業者によって配送されたままの典型的な表面トポロジーで使用した。幾つかの特定の濡れ試験およびスケール形成試験のために、銅−ニッケル90/10管は、その管を65g/kgの塩度を有する人工海水中に浸漬することによって8週間にわたり前処理してから、試験に使用した。この前処理は、銅−ニッケル90/10管表面上に亜酸化銅から主として構成される複雑な多層型の薄い付着性の保護表面被膜の形成を生じた。前処理された銅−ニッケル90/10管を、CuNi 90/10−PTとして表す。表面粗さは、DIN EN ISO 4288に従って接触式スタイラスユニット(perthometer)を使用して測定した。管材料、熱伝導率、外径、壁厚、および表面粗さを第3表にまとめる。
【0182】
【表3】
第3表. 水平管の物理化学データ/Mueller−Steinhagen,H.,Fouling of Heat Exchanger Surfaces,VDI Heat Atlas,VDI−Gesellschaft(編),Springer−Verlag,ベルリン−ハイデルベルク,2013, 第91頁〜第121頁に示される手順に従って測定された熱伝導率;UNS番号:金属合金に関する統一ナンバリングシステム
【0183】
IV. 管表面の特性評価
管材料表面を、実験部のセクションIIに示される手順に従って調製された45g/kgの塩度を有する人工海水の接触角を、70℃の温度でDataphysics社によって製造されたOCA 15 Pro型の接触角測定および輪郭分析機器を使用してDIN 55660−2に従って測定することによって特性評価した。接触角に対する非イオン性界面活性剤Sの影響は、人工海水中の非イオン性界面活性剤Sの希釈溶液を用いて測定した。非イオン性界面活性剤Sの濃度は、該溶液に対して100質量ppmであった。接触角を測定する前に、表面をイソプロピルアルコールで入念に清浄化し、あらゆる堆積物、グリース、油等を除去した。前進接触角を、DIN 55660−2による液滴法を使用して測定した。液滴を表面上に注射針によって形成させ、液滴の容量をゆっくりと増大させた。そうすると、界面は外側に移行する。液滴が表面上に置かれた1秒後に、液滴の画像をCCDカメラおよびデータ処理システムによってデジタル化した。輪郭認識をまず最初に行い、その後に液滴の形状をその輪郭に合わせた。液体/固体界面の間および液体/蒸気界面の間に形成される角度を、接触角として取った。第4表は、種々の管表面における、70℃の温度で45g/kgの塩度を有する人工海水の接触角に対する非イオン性界面活性剤Sの影響を示している。
【0184】
第4表. 種々の管表面における、70℃の温度で45g/kgの塩度を有する人工海水の接触角に対する非イオン性界面活性剤Sの影響
【表4】
*接触角の差(Δ°)=45g/kgの塩度を有する人工海水中での100ppmの非イオン性界面活性剤S溶液の接触角−45g/kgの塩度を有する人工海水の接触角
【0185】
V. 管の濡れの実験
種々の管材料の種々の非イオン性界面活性剤による濡れ挙動を、前記の試験装置を使用して調査した。各々の試験前に、管表面を、石鹸溶液で入念に清浄化し、脱イオン水ですすぎ、イソプロピルアルコールで再び清浄化して、あらゆる堆積物、グリース、油等を除去した。濡れの実験は、第5表に示されるように、溶液に対して1質量ppmから100質量ppmの間の濃度で非イオン性界面活性剤Sを含む脱イオン水を使用して行った。濡れの実験は、以下の通りに実施した:完全に乾燥した管表面から開始して、濡れ膜流量を、約0.005kg/(s m)〜0.01kg/(s m)の増分で段階的に増加させた。各々の濡れ膜流量で、10分間の緩和時間後に上から5本の管にわたる膜流の写真を撮影した。管表面上の濡れた表面積のパーセンテージを、画像処理ソフトウェアを用いて評価した。最も上の管は、写真解析において考慮に入れなかった。それというのも、最も上の管は、液流のためのある種の分配管として働くからである。管長の約63%を超える液膜流が、写真解析において考察された。隣接管の間の非該当領域を、画像編集ソフトウェア(Adobe Photoshop、Adobe Systems社、米国)を用いて切り取った。その後に、ドライスポットに、画像処理ソフトウェア(ImageJ、National Institutes of Health、米国)で印を付け、濡れた表面積のパーセンテージを計算した。濡れ試験を、検査ガラスを用いずに周囲圧力および27℃〜34℃の温度で実施した。試験条件、および種々の管材料の種々の界面活性剤Sによる濡れ挙動の試験結果を、第5表に表す。
【0186】
第5表. 種々の管材料上での濡れ試験の結果
【表5】
【0187】
*濡れ膜流量は、単位管長当たりの片側または両側の水平管における流下液膜の質量流量として定義される。ここでは、濡れ膜流量は、単位管長当たりの両側の水平管における質量流量として表現される。臨界濡れ膜流量は、管表面上を完全に濡れた状態に至らしめるのに必要とされる濡れ膜流量である。
【0188】
VI. スケール形成実験
すべてのスケール形成実験は、実験部のセクションIIに示される手順に従って調製された65g/kgの塩度を有する人工海水240リットルで、50時間の試験期間にわたり行われた。240リットルの試験溶液および50時間の試験期間での実験は、その期間が、スケール形成の差を見出すのに十分に長く、かつ超飽和レベルも依然として十分に高いため、好ましいことが分かった。スケール形成実験は、MEDプラントにおける現行の最高のブライン温度を表す蒸発温度(tEV)=65℃で実施した。さらに、多重効用蒸留器の運転範囲の、より高い最高ブライン温度への可能性のある拡張を考慮するために、実験を、工業的なMED蒸留器において現在使用されている最高ブライン温度を超える蒸発温度(tEV)=75℃で実施した。すべての実験のために、管内の凝縮温度tCOおよび管外の蒸発温度tEVの間の差は、tCO−tEV=5℃であった。
【0189】
蒸発器の管の外側に形成される結晶性スケール層を、様々な方法により特性評価して、化学的情報、構造的情報および定量的情報を取得した。管配列の最も上から5番目の管上に形成されるスケールを、走査型電子顕微鏡法(SEM)と組み合わせてエネルギー分散型X線分析(EDXS)および広角X線回折法(XRD)を使用することで分析して、スケールの構造的および化学的な特徴/特性についての定性的情報、特に組成、結晶構造、結晶サイズおよび配向、ならびに結晶完全性についての情報を得た。該スケール中のカルシウムおよびマグネシウムの量は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP−AES)によって検出した。このために、4番目の管のスケールを、高温の酢酸溶液中で溶解させ、該溶液中のCa2+イオンおよびMg2+イオンの濃度を、ICP−AESを使用して測定した。Ca2+およびMg2+の濃度に基づいて、スケール含量を計算し、総管面積当たりのCaおよびMgの質量(g/m2)として表した。さらに、スケール厚さを、3番目の管の外側で測定した。スケール厚さは、管の周りの4箇所の異なる位置および管に沿った9箇所の異なる位置でそれぞれ10回にわたり、非破壊的かつ正確なコーティング厚さの測定のために設計された計器(MiniTest 2100、ElektroPhysik社、ドイツ)を用いて測定した。
【0190】
スケール形成実験の試験条件および試験結果を、第6表に表す。管表面のSEM画像は、図3図6に表される。
【図面の簡単な説明】
【0191】
図1】パイロットプラント規模の試験装置の概略図。
図2】パイロットプラント規模の試験装置を示す図。
図3】濡れ膜流量=0.02kg/(s m)で、非イオン性界面活性剤SおよびポリマーAを用いない場合のAlMg2.5管表面上に形成されたスケールのSEM画像。
図4】濡れ膜流量=0.02kg/(s m)で、非イオン性界面活性剤7(2.5ppm)およびスケール防止剤1(4ppm)を用いた場合の清浄なAlMg2.5管表面のSEM画像。
図5】濡れ膜流量=0.04kg/(s m)で、非イオン性界面活性剤Sおよびスケール防止剤を用いない場合のAlMg2.5管表面上に形成されたスケールのSEM画像。
図6】濡れ膜流量=0.04kg/(s m)で、非イオン性界面活性剤7(2.5ppm)およびスケール防止剤1(4ppm)を用いた場合の清浄なAlMg2.5管表面のSEM画像。
【0192】
【表6-1】
【0193】
【表6-2】
【符号の説明】
【0194】
A 真空ポンプ、 B 収集タンク、 C 凝縮物、 D 蒸留物、 E ブライン、 F 収集タンク、 G 再循環ポンプ、 H 試料採取、 I 海水、 J 蒸気、 K 凝縮器、 L 電気式スチーム発生器、 M スチーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6