(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、透明又は半透明のマイクロニードルアレイにおいて、光沢が有すると、光源とカメラとを用いる針形状、及び異物の外観検査において撮像時にハレーションを起こしやすく、視認性が低下し、検査が困難となる懸念がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、マイクロニードルアレイの外観検査の視認性を向上できる、マイクロニードルアレイ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様のマイクロニードルアレイは、対向する第1面と第2面とを有するシート部と、シート部の第1面に配置された複数の針部と、を備えるマイクロニードルアレイであって、シート部の第2面は、山部と谷部とを有する粗面で構成され、300nm以上740nm以下の範囲の波長域におけるシート部の平均透過率は75%以下である。
【0008】
第1の態様によれば、マイクロニードルアレイの外観検査の視認性を向上できる。
【0009】
第2の態様のマイクロニードルアレイにおいて、平均透過率が60%以下である。第2の態様によれば、マイクロニードルアレイの外観検査において、より視認性を向上できる。
【0010】
第3の態様のマイクロニードルアレイにおいて、シート部が、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含む。第3の態様は、シート部として好ましい材料を規定し、かつシート部の第2面に山部と谷部との形成を可能にする。
【0011】
第4の態様のマイクロニードルアレイにおいて、針部が薬剤を含む。第4の態様によれば、薬剤を皮膚内に投与できる。
【0012】
第5の態様のマイクロニードルアレイの製造方法は、針部の少なくとも先端部分を形成するため、モールドに形成された複数の凹部に第1液を充填し、次いで乾燥する針部形成工程と、針部の配置される第1面と第1面に対向する第2面とを有するシート部を形成するため、針部の少なくとも先端部分が形成された複数の凹部に第2液を充填し、次いで乾燥することにより、第2面に山部と谷部とを有する粗面を形成し、300nm以上740nm以下の範囲の波長域における、シート部の平均透過率を75%以下にする、シート部形成工程と、を有する。
【0013】
第5の態様によれば、外観検査の視認性を向上できるマイクロニードルアレイを製造できる。
【0014】
第6の態様のマイクロニードルアレイの製造方法において、シート部形成工程において、第2液の固形分濃度が80wt%に達するまでの間、50g/(hr・m
2)以下の速度で乾燥する。第6の態様によれば、第2液の乾燥条件を上述の範囲とすることにより、シート部の第2面に山部と谷部とを形成できる。
【0015】
第7の態様のマイクロニードルアレイの製造方法において、第2液がコンドロイチン硫酸ナトリウムを含む。第7の態様によれば、第3の態様と同様に、シート部として好ましい材料を規定し、かつシート部の第2面に山部と谷部との形成を可能にする。
【0016】
第8の態様のマイクロニードルアレイの製造方法において、第1液が薬剤を含む。第8の態様によれば、薬剤を針部に含ませることができる。
【0017】
第9の態様のマイクロニードルアレイの製造方法において、シート部形成工程において、第2液を開口の形成されたキャップで覆うことを含む。第9の態様によれば、乾燥速度を低速にすることを可能にする。
【0018】
第10の態様のマイクロニードルアレイの製造方法は、針部の少なくとも先端部分を形成するため、モールドに形成された複数の凹部に第1液を充填し、次いで乾燥する針部形成工程と、針部の配置される第1面と第1面に対向する第2面とを有するシート部を形成するため、針部の少なくとも先端部分が形成された複数の凹部に第2液を充填し、次いで乾燥するシート部形成工程と、シート部の第2面を化学的又は物理的に処理することにより、第2面に山部と谷部とを有する粗面を形成し、300nm以上740nm以下の範囲の波長域における、シート部の平均透過率を75%以下にする、加工工程と、を有する。
【0019】
第10の態様によれば、第5の態様と同様に、外観検査の視認性を向上できるマイクロニードルアレイの製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マイクロニードルアレイの外観検査の視認性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0023】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0024】
<マイクロニードルアレイ>
マイクロニードルアレイ(経皮吸収シート)の一例について説明する。
【0025】
図1は、マイクロニードルアレイ100の一例を示す斜視図である。実施形態のマイクロニードルアレイ100は、1投与分のパッチに相当する。マイクロニードルアレイ100は、対向する第1面102A及び第2面102Bを有するシート部102と、シート部102の第1面102Aに配置された針部112と、を備える。
【0026】
シート部102は、面積の広い2つの対向する第1面102A及び第2面102Bに対して厚みの薄い、全体として平たい形状を有している。
図1に示すシート部102は、平面視で円形であるが、矩形、多角形、又は楕円形等であってもよい。ここで、平面視とは、第1面102Aに直交する方向から、第1面102Aを観察した状態を意味する。
【0027】
複数の針部112が、シート部102の第1面102Aに、予め決定されたパターンで配置される。配置された複数の針部112がアレイパターン110を構成する。アレイパターン110は、例えば、複数の針部112を同心円状に配置することにより構成でき、また、複数の針部112を格子状に配置することにより構成できる。アレイパターン110は、特に限定されず、適宜変更することが可能である。
【0028】
アレイパターン110は、例えば、4本〜2500本の針部112で構成される。但し、針部112の本数は、この本数に限定されない。
【0029】
針部112は、シート部102に接する根元と比較して、細い先端を有する形状で構成される。針部112の形状の例としては、円錐形状、多角錐形状(四角錐形状など)、又は紡錘形状などが挙げられる。針部112の全体の形状が、円錐形状又は多角錐形状(四角錐形状など)であってもよいし、針部側面の傾き(角度)を連続的に変化させた構造であってもよい。また、針部側面の傾き(角度)が非連続的に変化する、二層又はそれ以上の多層構造をとることもできる。
【0030】
図2は、マイクロニードルアレイ100を拡大した部分断面図である。針部112は、先端側のニードル部114と、根元側の錐台部116と、含んでいる。針部112は、外観上において、ニードル部114の側面の傾きと、錐台部116の側面の傾きとが非連続的に変化する、いわゆる二段構造である。
【0031】
錐台部116は、2つの底面を有し、錐体面で囲まれた立体構造を有している。錐台部116の2つの底面のうち面積の広い底面(下底面)がシート部102と接続される。錐台部116の2つの底面のうち面積の狭い底面(上底面)がニードル部114と接続される。錐台部116の2つの底面のうち、シート部102と離れる方向にある底面の面積が小さい。
【0032】
ニードル部114は、面積の広い底面と、底面から離れた先端が最も狭い面積となる形状を有している。ニードル部114の面積の広い底面が、錐台部116の上底面と接続されているので、ニードル部114は錐台部116と離れる方向に先細り形状となる。
【0033】
図1及び
図2の形態では、ニードル部114は円錐形状で、錐台部116は円錐台形状である。但し、ニードル部114及び錐台部116は、これら形状に限定されない。ニードル部114の皮膚への挿入の程度に応じて、ニードル部114の先端の形状は、曲面、又は平坦面等に適宜変更できる。
【0034】
針部112の高さ(長さ)は、針部112の先端から、シート部102へ下ろした垂線の長さで表す。針部の高さ(長さ)は特に限定されないが、好ましくは50μm以上3000μm以下であり、より好ましくは100μm以上1500μm以下であり、さらに好ましくは100μm以上1000μm以下である。
【0035】
針部112の間隔は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.2mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
マイクロニードルアレイ100は、薬剤を含有する第1ポリマーP1と、薬剤を含有しない第2ポリマーとにより構成される。ニードル部114は、第1ポリマーP1で構成される先端部分と、第2ポリマーP2で構成される根元部分とを有している。錐台部116及びシート部102は、第2ポリマーP2で構成される。
【0037】
薬剤を含むとは、体表に穿刺した際に薬効を発揮する量の薬剤を含むことを意味する。また、薬剤を含まないとは、薬効を発揮する量の薬剤を含んでいないことを意味する。薬剤を含まない場合、薬剤の量の範囲は、全く含まない0から薬効を発揮しない量までの範囲となる。
【0038】
薬剤は、薬剤としての機能を有するものであれば限定されない。特に、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物から選択することが好ましい。
【0039】
第1ポリマーP1は、特に限定されないが、多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、タンパク質(例えば、ゼラチンなど)を挙げることができる。上記の多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、デキストラン、デキストリン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、セルロースを部分的に変性した水溶性セルロース誘導体)、ヒドロキシエチルデンプン、アラビアゴム等が挙げられる。上記の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0040】
上記の中でも、第1ポリマーP1は、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0041】
第2ポリマーP2は、特に限定されないが、多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、タンパク質(例えば、ゼラチンなど)を挙げることができる。上記の多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、デキストラン、デキストリン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、セルロースを部分的に変性した水溶性セルロース誘導体)、ヒドロキシエチルデンプン、アラビアゴム等が挙げられる。上記の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0042】
上記の中でも、第2ポリマーP2は、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0043】
第1ポリマーP1と第2ポリマーP2とは、同一の材料であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
図3は、マイクロニードルアレイ100の第2面102Bを拡大した部分断面図である。シート部102の第2面102Bは、高さH(又は深さ)、及び間隔の異なる複数の山部102Cと谷部102Dとが連続する粗面で構成される。複数の山部102Cと谷部102Dとは第2面102Bの全面に設けることが好ましい。山部102Cと谷部102Dの高さH、間隔等の形状的な特性は、後述する製造方法により制御できる。
【0045】
マイクロニードルアレイ100は、上述した第1ポリマーP1及び第2ポリマーP2により、製造される。第1ポリマーP1及び第2ポリマーP2は透明又は半透明な素材である。そのため、一般的に、マイクロニードルアレイ100は、全体として透明又は半透明に形成される。しかしながら、上述のマイクロニードルアレイ100では、光沢があるので、光源とカメラとを用いる外観検査において、撮像時にハレーションを起こしやすくなる。
【0046】
実施形態のマイクロニードルアレイ100は、複数の山部102Cと谷部102Dとにより粗面化されたシート部102を備える。このような、マイクロニードルアレイ100のシート部102は白濁して見え、結果として、300nm以上740nm以下の範囲の波長域におけるシート部102の平均透過率は75%以下になる。マイクロニードルアレイ100において、少なくともシート部102の光沢を抑えることができる。マイクロニードルアレイ100の外観検査では、撮像時のハレーションが抑制される。なお、平均透過率が小さい程、ハレーションが抑制されるので、平均透過率は60%以下であることがより好ましい。
【0047】
実施形態のマイクロニードルアレイ100は、着色剤などの添加物を用いたり、又は針部112を着色したりすることなく、光沢を抑えることができる。マイクロニードルアレイ100は医療用であるため、着色剤の添加及び着色は施さないことが好ましい。
【0048】
ここで、平均透過率は、300nm以上740nm以下の間で、10nmごと透過率の平均値である。シート部102に平均透過率は、以下の手順で測定できる。
【0049】
測定対象であるマイクロニードルアレイ100のサンプルが準備される。サンプルのマイクロニードルアレイ100は、16mmの直径、かつ0.3mm以上0.5mm以下のシート部102を備える。紫外可視分光光度計(品名「UV−2100」、株式会社島津製作所製)に多用途大型試料室(品名「MPC−3100」、株式会社島津製作所製)を接続した装置が準備され、この装置がシート部102の針部112の形成されていない領域を測定する。この装置で、300nm以上740nm以下の間の各波長光(10nmごと)の透過率を測定する。300nm以上740nm以下の範囲の波長域におけるシート部102の平均透過率を求めることができる。
【0050】
<マイクロニードルアレイの検査方法>
図4を参照して、マイクロニードルアレイの検査方法について説明する。
図4に示されるように、検査装置200は、マイクロニードルアレイ100を支持する支持台210と、マイクロニードルアレイ100に照明光を照射する照明ユニット220と、マイクロニードルアレイ100を撮像する撮像ユニット240と、撮像ユニット240で撮像された画像に基づいてマイクロニードルアレイ100を検査する画像処理装置250と、を備える。
【0051】
支持台210は、マイクロニードルアレイ100を支持する。支持台210は、マイクロニードルアレイ100を支持するための平坦な搭載面を備える。マイクロニードルアレイ100は、粗面化された第2面102Bの側を搭載面に対向させて載置される。
【0052】
支持台210は、図示しない駆動装置を備えてもよい。駆動装置は、支持台210を、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動でき、Z軸方向を中心に回転できる。
【0053】
照明ユニット220は、図示しない光源とレンズとを備える。光源は、例えば、白色発光ダイオードで構成される。照明ユニット220は、針部112の側から、シート部102の法線NLに対して所定の角度傾けた方向から、マイクロニードルアレイ100に光を照射する。照明ユニット220の光軸は、法線NLに対して所定の角度傾いている。照明ユニット220は、図示しない駆動機構を備えてもよい。駆動機構は、マイクロニードルアレイ100に照射する角度を変更できる。
【0054】
撮像ユニット240は、カメラ242、及びレンズ244を備える。カメラ242は、いわゆるデジタルカメラであり、光を撮像素子で受け、デジタル信号に変換して出力する。撮像ユニット240は、針部112の側から、シート部102の法線NLに対して所定の角度傾けた方向から、マイクロニードルアレイ100を撮像する。撮像ユニット240の光軸は、法線NLに対して所定の角度傾いている。撮像ユニット240は、図示しない駆動機構を備えてもよい。駆動機構は、マイクロニードルアレイ100を撮像する角度を変更できる。照明ユニット220と撮像ユニット240とは、法線NLを中心に、ほぼ線対称に配置される。
【0055】
画像処理装置250は、撮像ユニット240で撮像されたマイクロニードルアレイ100の画像データを解析し、マイクロニードルアレイ100に備えられた個々の針部112及びシート部102を検査する。画像処理装置250は、針部112及びシート部102の形状の良否、異物の有無等を検査する。
【0056】
画像処理装置250は、たとえば、コンピュータで構成される。コンピュータは、演算装置を備え、所定の検査プログラムを実行する。検査プログラムが、コンピュータを画像処理装置250として機能さえる。コンピュータには、ディスプレイ、入力デバイス、記録デバイス等が接続させる。画像処理装置250は、検査プログラムだけでなく、検査装置200の全体の制御を実行できる。
【0057】
検査は、支持台210に載置したマイクロニードルアレイ100を針部112の側から光を照射し、その反射した光を針部112の側から撮像ユニット240で撮像し、得られた画像データを画像処理装置250で解析することにより行われる。
【0058】
マイクロニードルアレイ100のシート部102の第2面102Bが粗面化されているので、マイクロニードルアレイ100の撮像時のハレーションが抑制される。マイクロニードルアレイ100の外観検査の視認性が向上できる。
【0059】
<マイクロニードルアレイの製造方法>
次に、マイクロニードルアレイの製造方法を、
図5から
図10に基づいて説明する。
図5に示されるように、マイクロニードルアレイ100の作製するため、複数の凹部310の形成されたモールド300が準備される。凹部310は、マイクロニードルアレイ100の針部112の反転形状を有している。モールド300は、凹部310の開口面に対し、一定の高さを有し、複数の凹部310の周囲を囲む堰320を備える。モールド300は、例えば、シリコーン樹脂で作製できる。凹部310と堰320との間には平坦面330が設けられる。
【0060】
モールド300は、マイクロニードルアレイ100の複製である原版(不図示)を用いて作製できる。原版は、金属基板をダイヤモンドバイト等の切削工具等を用いて機械加工することにより作製される。金属基板としては、ステンレス、アルミニウム合金、Ni等が使用できる。
【0061】
複数の凹部310の形成されたモールド300は、原版に硬化前のシリコーン樹脂を滴下し、その後にシリコーン樹脂を硬化し、原版から硬化されたシリコーン樹脂を剥離することにより作製される。
【0062】
マイクロニードルアレイの製造では、
図6に示されるように、第1ポリマーP1及び薬剤を含む第1液PL1を、複数の凹部310に充填し、次いで、乾燥させることにより、マイクロニードルアレイ100(不図示)の針部112の少なくとも、薬剤を含む第1ポリマーP1の先端部分が形成される。針部形成工程は、針部112の、少なくとも第1ポリマーP1で構成される先端部分を形成する。なお、針部形成工程は、針部112のニードル部114(根元部分と先端部分)全体を形成してもよいし、針部112の全体(ニードル部114と錐台部116)を形成してもよい。針部形成工程で形成され針部112の大きさは、第1液の供給量で決定される。
【0063】
特に限定されないが、第1液PL1は、スリットノズルの先端部をモールド300に接触させることにより、凹部310のみに充填できる。また、第1液PL1は、モールド300の上に第1液をノズル、又はディスペンサー等で供給し、次いで、ブレードをモールド300に接触させることにより、凹部310に第1液を充填できる。第1液PL1は、ノズルから凹部310のみに吐出することにより充填できる。
【0064】
図7、及び
図8に示されるシート部形成工程について説明する。
図7に示されるように、針部112の配置される第1面102Aと第1面102Aに対向する第2面102Bとを有するシート部102(不図示)を形成するため、針部112の少なくとも先端部分(第1ポリマーP1)が形成された複数の凹部310に第2ポリマーP2を含む第2液PL2を充填する。第2ポリマーP2は、薬剤を含んでいない。第2液PL2は、凹部310を超えて充填され、堰320と同程度の高さになるまで充填される。
【0065】
特に限定されないが、第2液PL2は、スペンサーにより供給することにより充填される。第2液PL2は、スピン塗布、又はスプレー塗布などを適用することにより充填できる。
【0066】
図8に示されるように、モールド300に充填された第2液PL2が乾燥される。乾燥を終えると、第2液PL2が第2ポリマーP2となり、モールド300にシート部102と針部112とを有するマイクロニードルアレイ100が製造される。特に、第2液PL2が多糖類水溶液を含む場合、乾燥速度(水分蒸発速度)を制御し、多糖類の結晶性を制御することにより、シート部102の第2面102Bに山部102Cと谷部102Dとが形成され、第2面102Bが粗面化される。シート部102が白濁して見える。
【0067】
乾燥速度は小さいことが好ましく、乾燥速度の制御が、第2面102Bに山部102Cと谷部102Dとを有する粗面を形成し、300nm以上740nm以下の範囲の波長域における、シート部102の平均透過率を75%以下にすることができる。乾燥速度は、第2液PL2の固形分濃度が重量百分率で80wt%に達するまでの間、50g/(hr・m
2)以下の速度であることが好ましい。固形分濃度は、厚み方向及び面内方向で異なり、濃度分布が存在するため、第2液PL2の全体の平均固形分濃度を用いることができる。例えば、固形分濃度の変化は、乾燥工程における重量変化を測定することにより、算出することが好ましい。乾燥速度とは、単位時間、及び単位面積当たりに蒸発する水の質量である。
【0068】
特に、多糖類水溶液がコンドロイチン硫酸ナトリウムの場合、小さい乾燥速度の条件で乾燥を行うことにより、300nm以上740nm以下の範囲の波長域における、シート部102の平均透過率を75%以下、さらに60%以下にすることができる。
【0069】
次に、別のシート部形成工程について
図9及び
図10を参照して説明する。例えば、
図9に示されるように、第2液PL2の乾燥速度の制御は、乾燥環境の温湿度制御、及びモールド300の直上に複数の開口410が形成されキャップ400を設置することにより行うことができる。
【0070】
モールド300及びキャップ400は支持台420の上に載置される。キャップ400は、少なくともモールド300に充填された第2液PL2を覆う位置に配置される。開口410は第2液PL2に対向する場所に位置する。
図9において、キャップ400はモールド300の全体を覆う。第2液PL2は乾燥速度を遅くするために低温及び高湿度で乾燥される。開口410を設ける位置は、特に限定されない。
【0071】
図10に示されるように、乾燥を終えると、第2液PL2が第2ポリマーP2となり、モールド300にシート部102と針部112とを有するマイクロニードルアレイ100が製造される。シート部102の第2面102Bに山部102Cと谷部102Dとが形成され、第2面102Bが粗面化される。第2液PL2を覆うキャップ400は、第2液PL2の表面に風が当ることを抑制し、さらに、キャップ400の内部の相対湿度を上昇させる。その結果、乾燥速度を遅くすることが可能になる。
【0072】
乾燥速度の制御が、マイクロニードルアレイ100のシート部102の第2面102Bを粗面化する方法として説明された。乾燥速度の制御以外の粗面化の方法として、シート部形成工程の後に、シート部102の第2面102Bをドライエッチング等の化学的、又はサンドペーパーの研磨等の物理的な処理を実行する加工工程を含ませてもよい。
【0073】
なお、乾燥速度の制御は、化学的、又は物理的に第2面102Bを粗面化する方法に比べ、マイクロニードルアレイ100に対するダメージが少なく、追加の工程が不要であるので好ましい。
【0074】
(実施例)
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0075】
(試験1)
マイクロニードルアレイの形状の反転型を有するモールドが準備される。モールドは、シリコーンゴム(「SIL−5930」、Nusil社製)で製造され、20mmの直径である。モールドは、周囲に2mmの幅と高さ0.5mmの堰を備える。
【0076】
モールドにシート部となる、第2液を充填した。第2液となる多糖類水溶液として40wt%の固形分濃度のコンドロイチン硫酸ナトリウムを250mg〜300mgをモールドに滴下し、充填した。
【0077】
23℃/45%RH(相対湿度)の環境で、75g/(hr・m
2)の乾燥速度で第2液の固形分濃度が80wt%になるまで第2液を乾燥した。その後、モールドからマイクロニードルアレイを剥離し、マイクロニードルアレイを作製した。
【0078】
(試験2)
第2液の乾燥条件を変更した以外、試験1と同様の条件でマイクロニードルアレイを作製した。24℃/40%RH(相対湿度)の環境で、56g/(hr・m
2)の乾燥速度で第2液の固形分濃度が80wt%になるまで第2液を乾燥した。
【0079】
(試験3)
第2液の乾燥条件を変更した以外、試験1と同様の条件でマイクロニードルアレイを作製した。23℃/45%RH(相対湿度)の環境で、50g/(hr・m
2)の乾燥速度で第2液の固形分濃度が80wt%になるまで第2液を乾燥した。
【0080】
(試験4)
第2液の乾燥条件を変更した以外、試験1と同様の条件でマイクロニードルアレイを作製した。23℃/45%RH(相対湿度)の環境で、開口の形成されたキャップで第2液を覆い、20g/(hr・m
2)の乾燥速度で固形分濃度が80wt%になるまで第2液を乾燥した。
【0081】
なお、各試験の乾燥速度は、
図11に示されるように、重量減少(揮発水分量)(mg)を縦軸とし、乾燥時間(hr)を横軸とするグラフに基づいて、乾燥工程途中の重量減少が線形の領域の範囲となる勾配から乾燥速度を算出した。第2液の固形分濃度が80wt%以下の範囲で、重量減少が線形を示した。
【0082】
(評価方法)
紫外可視分光光度計(品名「UV−2100」、株式会社島津製作所製)に多用途大型試料室(「MPC−3100」、株式会社島津製作所製)を接続した装置で、300nm以上740nm以下の範囲の波長域におけるマイクロニードルアレイのシート部の平均透過率を測定した。
図12に示されるように、試験1から試験4の透過率を、透過率(%)を縦軸とし、波長(nm)を横軸とするグラフにプロットした。
【0083】
(評価結果)
図12のグラフに示されるように、試験1のマイクロニードルアレイのシート部の平均透過率は80.0%であった。試験2のマイクロニードルアレイのシート部の平均透過率は75.6%であった。試験3のマイクロニードルアレイのシート部の平均透過率は66.3%であった。試験4のマイクロニードルアレイのシート部の平均透過率は55.0%であった。試験3及び試験4は、シート部の平均透過率を75%以下にすることができた。
【0084】
図13は試験1のマイクロニードルアレイの画像であり、
図14は試験3のマイクロニードルアレイの画像である。
図13に示されるように、試験1のマイクロニードルアレイでは、針部及びシート部が光沢を有していた。一方、
図14に示されるように、針部及びシート部は白濁化し、ほとんど光沢を有していなかった。試験1と比較すると、試験3では針部の外形形状が明確に確認できた。
【0085】
<その他>
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。