(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マーカーの前記初期形状における前記ウェブ幅方向の前記マーカーの初期長さをd1[mm]、前記搬送方向の前記マーカーの初期長さをd2[mm]、前記マーカー検知部の検知範囲の直径をc[mm]、前記ウェブに前記テンションが加わることによって前記ウェブが変形した状態における前記マーカーの変形後の形状における前記ウェブ幅方向の前記マーカーの変形後長さをd1A[mm]、前記マーカーの前記変形後の形状における前記搬送方向の前記マーカーの変形後長さをd2A[mm]とした場合に、c≦dを満たす特定のd[mm]に対して、次式、
d1>d
d2≦d
d1A>d
d2A>d
を満たす請求項4又は5に記載のクリーニング装置。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0037】
《クリーニング装置の構成例》
図1は、クリーニング装置の構成を概略的に示す正面断面図である。
図1に例示すクリーニング装置1は、ウェブ10を用いてインクジェットヘッド50のノズル面52を払拭するノズル面清掃装置である。インクジェットヘッド50は、クリーニングを受ける対象物であり、被クリーニング対象物の一例である。ノズル面52は、被クリーニング対象物の表面の一例である。
【0038】
インクジェットヘッド50は、例えば、ラインヘッドであってよい。クリーニング装置1は、移動するインクジェットヘッド50のノズル面52にウェブ10を押圧当接させて、ノズル面52を払拭する。インクジェットヘッド50は、
図1において、右から左へと移動する。
図1に示したインクジェットヘッド50の移動方向は、インクジェットヘッド50の長手方向に沿った方向である。
【0039】
クリーニング装置1は、ウェブ10と、ウェブ10を収容するケース12と、ウェブ10を繰り出す供給軸14と、ウェブ10を巻き取る巻取軸16と、押圧ローラ18と、前段ガイド部20と、後段ガイド部22と、フィードローラ24と、を備える。また、クリーニング装置1は、巻取軸16を回転駆動する供給軸回転駆動モータ32と、巻取軸16を回転駆動する巻取軸回転駆動モータ34と、フィードローラ24を回転駆動するフィードローラ回転駆動モータ36と、各モータの駆動を制御する制御回路38と、を備えてもよい。
【0040】
ウェブ10は、吸収性を有する帯状のシート材で構成される。ウェブ10として、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ナイロン(NY:nylon)、アクリル等の極微細繊維を用いた編み又は織りからなるシート材を用いることができる。
【0041】
ウェブ10の幅は、特に限定されないが、例えば、インクジェットヘッド50のノズル面52の短手方向の幅に対応しており、ノズル面52の短手方向の幅と同じ幅、又はノズル面52の短手方向の幅よりも大きい幅である。「同じ幅」とは、厳密に等しい場合に限らず、実質的に同じ幅と見做せる許容範囲を含む。インクジェットヘッド50のノズル面52の短手方向の幅とは、ノズル面52におけるインクジェットヘッド50の移動方向(長手方向)と直交する方向の幅である。
【0042】
供給軸14は、ケース12に備えられた軸受(不図示)に回転自在に支持される。供給軸14には、リール(不図示)が着脱自在に装着される。ウェブ10は、このリールにロール状に巻かれて、供給軸14に装着される。供給軸14は、供給軸回転駆動モータ32に駆動されて回転する。
【0043】
巻取軸16は、ケース12に備えられた軸受(不図示)に回転自在に支持される。巻取軸16には、リール(不図示)が着脱自在に装着される。巻取軸16は、巻取軸回転駆動モータ34に駆動されて回転する。ウェブ10は、巻取軸16に装着されたリールにロール状に巻き取られる。
【0044】
押圧ローラ18は、ウェブ10をノズル面52に押圧当接させるローラである。押圧ローラ18は、ケース12に備えられた軸支持部(不図示)に回転自在かつ上下動自在に支持される。押圧ローラ18は、
図1の上方向に、すなわち、ノズル面52に押圧当接させる方向に付勢された状態で軸支持部に支持される。ウェブ10は、押圧ローラ18の上側の周面に巻き掛けられるように、その走行経路が設定される。ウェブ10は、押圧ローラ18を介してインクジェットヘッド50のノズル面52に押圧当接される。
【0045】
前段ガイド部20は、供給軸14と押圧ローラ18との間でウェブ10の走行をガイドする。前段ガイド部20は、ガイド部材としての複数のガイドローラ20A、20B、20Cを含んで構成される。複数のガイドローラ20A、20B、20Cの各々は、ケース12の所定位置に配設されている。各ガイドローラ20A、20B、20Cは、ケース12に備えられた軸受(不図示)に回転自在に支持される。ウェブ10は、各ガイドローラ20A、20B、20Cに巻き掛けられて、供給軸14と押圧ローラ18との間を走行する。
【0046】
後段ガイド部22は、押圧ローラ18とフィードローラ24との間でウェブ10の走行をガイドする。後段ガイド部22は、複数のガイドローラ22A、22Bを含んで構成される。複数のガイドローラ22A、22Bの各々は、ケース12の所定位置に配設されている。各ガイドローラ22A、22Bは、ケース12に備えられた軸受(不図示)に回転自在に支持される。
【0047】
なお、前段ガイド部20及び後段ガイド部22の各々を構成するガイドローラの数や設置位置等は、供給軸14及び巻取軸16及び押圧ローラ18等の設置位置等に応じて適宜調整される。
【0048】
フィードローラ24は、ウェブ10に送りを与える。フィードローラ24は、ケース12に備えられた軸受(不図示)に回転自在に支持される。フィードローラ24は、フィードローラ回転駆動モータ36に駆動されて回転する。これにより、フィードローラ24に巻き掛けられたウェブ10に送りが与えられる。なお、フィードローラ24と対向する位置にニップローラ(不図示)が配置される。
【0049】
供給軸回転駆動モータ32は、供給軸14を回転させる動力源である。供給軸回転駆動モータ32は、ケース12に備えられていてもよいし、ケース12の外に配置されてもよい。供給軸14は、供給軸回転駆動モータ32を駆動することにより回転する。また、供給軸14は、この供給軸回転駆動モータ32の駆動を停止することにより、回転が止められる。これにより、ウェブ10の繰り出しが止められる。すなわち、供給軸回転駆動モータ32は、制動手段としても機能し、押圧ローラ18の上流側でウェブ10の走行を制動する。
【0050】
巻取軸回転駆動モータ34は、巻取軸16を回転させる動力源である。巻取軸回転駆動モータ34は、ケース12に備えられていてもよいし、ケース12の外に配置されてもよい。
【0051】
フィードローラ回転駆動モータ36は、フィードローラ24を回転させる動力源である。フィードローラ回転駆動モータ36は、ケース12に備えられていてもよいし、ケース12の外に配置されてもよい。
【0052】
制御回路38は、供給軸回転駆動モータ32、巻取軸回転駆動モータ34、及び、フィードローラ回転駆動モータ36の駆動を制御して、ウェブ10の走行を制御する。
【0053】
また、クリーニング装置1は、ウェブ10に設けられたマーカーを検知するマーカー検知部42を備える。
図1においてマーカーの図示は省略されている。マーカー検知部42には、例えば、反射型フォトセンサ、若しくは透過型フォトセンサが採用される。マーカー検知部42は、制御回路38に接続されている。
【0054】
マーカー検知部42は、ウェブ10に向けて光を投射し、その反射光、若しくは、透過光を受け取ってマーカーの有無を検知する。マーカー検知部42は、マーカーの有無を表す検知信号を制御回路38に送る。制御回路38は、マーカー検知部42から得られた検知信号を基に、ウェブ10の残量を判定し、その判定結果に応じた処理を行うことができる。例えば、制御回路38は、図示せぬ報知部と接続されており、報知部の動作を制御することにより、ユーザに対してウェブ10の交換時期を知らせる情報を提供することができる。報知部は、例えば、表示装置、警告ランプ、若しくは、音声出力装置又はこれらの組み合わせを含んで構成される。
【0055】
本明細書において、マーカー検知部42を単に「センサ」と呼ぶ場合がある。マーカー検知部42からウェブ10に対して投射される光を「センサ光」と呼ぶ場合がある。
【0056】
ウェブ10は、供給軸14側のリールから、巻取軸16側のリールに向かってロールツーロール方式によって搬送される。ウェブ10は、伸縮性を有しており、搬送時に加わるテンションによって変形し得る。
【0057】
《課題の説明》
図2は、マーカー検知部42の構成例を概略的に示した斜視図である。ここでは、
図1に示したウェブ10として、
図2から
図4に示すウェブ10を用いた例を示して、マーカー検知部42の構成例と技術的課題を説明する。
【0058】
ウェブ10は、
図2において、下から上に向かって搬送される。
図2中の白抜き矢印は、ウェブ10の搬送方向を示している。ウェブ10の搬送方向は、供給軸14から巻取軸16へと向かうウェブ10の「進行方向」若しくは「送り方向」と同義である。ウェブ10には、マーカー60A、60Bが設けられている。マーカー60A、60Bは、例えば、貫通穴である。
図2に例示したマーカー60A、60Bは、ウェブ10の残量が終端に近いこと残り少なくなっていることを示す、いわゆる終端末検知用のマーカーである。マーカー60A、60Bは、ウェブ10の終端末からウェブ10の搬送方向に所定距離だけ離れた手前の位置に設けられている。
【0059】
クリーニング装置1は、マーカー60A、60Bを検知する手段としてマーカー検知部42A、42Bを備える。マーカー検知部42Aは、マーカー60Aを検知するためのセンサである。マーカー検知部42Bは、マーカー60Bを検知するためのものである。マーカー検知部42A、42Bの各々は、例えば、反射型フォトセンサを用いて構成される。反射型フォトセンサは、発光部と受光部とを含む。発光部には発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられ、受光部にはフォトトランジスタが用いられる。
【0060】
図2の例では、より確実な残量検知を行う観点から、マーカー検知部が冗長化されており、ウェブ10には、2つのマーカー60A、60Bが設けられ、クリーニング装置1は、2つのマーカー検知部42A、42Bを備えている。
【0061】
マーカー検知部42Aとマーカー60Aの関係、並びに、マーカー検知部42Bとマーカー60Bの関係は共通しており、2つのマーカー検知部42A、42Bの構成も共通している。
【0062】
マーカー検知部42A、42Bは、ウェブ10の残量が十分に残っている通常の使用状態ではウェブ10から反射してくる光を受け取って、「マーカーなし」と検知する、つまり「ウェブあり」と検知する。ウェブ10を使い切る直前若しくは規定量手前に配置されているマーカー60A、60Bがマーカー検知部42A、42Bの正面に到来すると、マーカー検知部42A、42Bに光が反射してこないため、マーカー検知部42A、42Bは、「マーカーあり」と検知する、つまり「ウェブなし」と検知する。なお、マーカー検知部42A、42Bの「正面」とは、マーカー検知部42A、42Bから投射される光のウェブ上における照射位置に相当する。
【0063】
図3は、比較例に係るウェブ10の一部を示した平面図である。
図3は、ウェブ10にテンションが加わっていない初期状態のウェブ10を示している。
図3に示したウェブ10に設けられたマーカー60A、60Bは貫通穴である。マーカー60A、60Bの形状は、マーカー検知部42A、42Bの検知範囲の形状に合わせて円形状である。マーカー検知部42A、42Bに用いられるフォトセンサの検知範囲は、一般に円形状である。各マーカー検知部42A、42Bの検知範囲を「センサの検知範囲」と表記する場合がある。センサの検知範囲は、ウェブ上に投射されるセンサ光の照射範囲と、受光部の視野範囲(受光範囲)とによって規定される。ウェブ上におけるセンサ光の照射範囲と、ウェブ上における受光部の視野範囲とは、概ね一致しているため、センサの検知範囲は、ウェブ上におけるセンサ光の照射範囲と見做してもよいし、ウェブ上における受光部の視野範囲と見做してもよい。
【0064】
各マーカー60A、60Bの直径は、センサの検知範囲の直径以上であり、好ましくは、センサの検知範囲の直径に対して適度なマージンを含む。
【0065】
図4は、
図3に示したウェブ10にテンションが加わった状態を示している。ウェブ搬送時には、ウェブ10に対して搬送方向と平行な方向にテンションが加わり、ウェブ10は搬送方向と平行な方向に伸び、かつ、ウェブ幅方向に縮む。すなわち、ウェブ10を搬送する際の抵抗により、搬送方向と平行な方向にウェブ10を伸ばす力が働き、ウェブ幅方向は縮む。その結果、マーカー60A、60Bの幅も初期状態と比べて小さくなり、センサ光の一部がマーカー60A、60Bの貫通穴を透過せずに、ウェブ10の表面で反射してしまうため、ウェブ10の表面で反射した光がマーカー検知部42A、42Bに受光され、誤検知する。
【0066】
《第1実施形態》
図5は、本発明の第1実施形態に係るクリーニング装置1に用いられるウェブ10の一部を示す平面図である。
図5は、ウェブ10にテンションが加わっていない初期状態のウェブ10を示している。
図6は、
図5に示したウェブ10にテンションが加わった状態を示している。
【0067】
図5に示したように、第1実施形態に係るクリーニング装置1に用いられるウェブ10は、初期状態において楕円形状のマーカー70A、70Bを備えている。すなわち、マーカー70A、70Bの初期形状は、ウェブ搬送時にウェブ10に加わるテンションによる変形を見越して、ウェブ10の搬送方向と平行な方向を短軸、ウェブ幅方向を長軸とする楕円形状となっている。初期形状とは、ウェブ10にテンションが加わっていない初期状態での形状を意味する。初期形状が楕円形状であるマーカー70A、70Bは、ウェブ搬送時にウェブ10にテンションが加わることによって、
図6に示すように、搬送方向と平行な方向に伸ばされ、変形後は、真円になり得る。ここでいう「真円」は、厳密な真円に限らず、実質的に真円と見做せる程度の許容範囲を含む。なお、本明細書において、ウェブ10にテンションが加わっていない初期状態を「変形前」、ウェブ10にテンションが加わった状態を「変形後」と表記する場合がある。また、ウェブ幅方向を、単に「幅方向」と表記する場合がある。
【0068】
〈マーカーの形状の設計例1〉
ウェブに加わるテンションを考慮したマーカーの形状を設計する際の考え方として、次のような計算方法を適用することができる。
【0069】
計算に用いる座標軸として、ウェブ幅方向をx軸方向、ウェブの搬送方向と平行な方向をy軸方向とする。ウェブに加わるテンションをF[N]、ウェブの厚さをt[mm]、ウェブの初期幅をw[mm]、ウェブのヤング率をE[N/mm
2]、ウェブのポアソン比をνとする。Fの単位はニュートン[N]である。tとwの単位はミリメートル[mm]である。ヤング率の単位は、ニュートン毎平方ミリメートル[N/mm
2]である。ウェブの初期幅とは、ウェブにテンションが加わる前の初期状態におけるウェブの幅を指す。
【0070】
テンションが加わった時のウェブのx軸方向のひずみε
xと、y軸方向のひずみε
y、テンションFによる垂直応力σ
yは、次式で表される。
【0071】
ε
y=σ
y/E [式1]
ε
x=−ν・σ
y/E ・・・[式2]
σ
y=F/(w・t) ・・・[式3]
ここで、ウェブにテンションF[N]が加わった状態にてマーカーの形状を直径d[mm]の円形状にする場合、テンションが加わる前の楕円のx軸直径d1[mm]と、y軸直径d2[mm]と、dとの関係は、以下の式となる。楕円のx軸直径とは、x軸方向の長軸の長さを意味しており、長径と同義である。楕円のy軸直径とは、y軸方向の短軸の長さを意味しており、短径と同義である。
【0072】
d1+d1・ε
x=d ・・・[式4]
d2+d2・ε
y=d ・・・[式5]
よって、d1とd2を次式のように設定すればよい。
【0073】
d1=d/(1+ε
x) ・・・[式6]
d2=d/(1+ε
y) ・・・[式7]
また、マーカーを検出するセンサの検知範囲を直径c[mm]の円形状とすると、d≧cとなるように、より好ましくは、
d>c ・・・[式8]
となるように設定すれば、センサの誤検知を抑制することができる。
【0074】
d1は、ウェブ幅方向のマーカーの初期長さの一例である。d2は、搬送方向のマーカーの初期長さの一例である。
【0075】
図7は、テンションが加わる前の初期状態のウェブの平面図である。
図8は、テンションが加わった状態(変形後)のウェブの平面図である。なお、
図7及び
図8では、説明を簡単にするために、マーカー70をウェブ10の幅方向中心位置に1つだけ設けた例を示した。
【0076】
マーカー70を検知するセンサの検知範囲を直径c[mm]の円形状とすると、d≧cを満たすd、より好ましくは、式8を満たすdに対して、マーカー70のd1とd2について、式6と式7を満たすように設定すれば、センサの誤検知を抑制することができる。
【0077】
〈マーカーの形状の設計例2〉
上記した設計例1では、変形後のマーカー形状を直径d[mm]の真円とする例について計算したが、変形後のマーカー形状は楕円でもよい。
【0078】
変形後の楕円のx軸直径d1A[mm]、y軸直径d2A[mm]とすると、d1とd1Aの関係、並びに、d2とd2Aの関係は、それぞれ以下の式となる。
【0079】
d1+d1・ε
x=d1A ・・・[式9]
d2+d2・ε
y=d2A ・・・[式10]
よって、変形後のマーカー形状を楕円とするには、d1とd2を次式のように設定すればよい。
【0080】
d1=d1A/(1+ε
x) ・・・[式11]
d2=d2A/(1+ε
y) ・・・[式12]
この設計例2を採用する場合には、d1A>cかつ、d2A>cとなるように設定すれば、センサの誤検知を抑制することができる。また、変形後の楕円は、センサの検知範囲に対してx軸方向とy軸方向のそれぞれにマージンを持っている。すなわち、変形後の楕円は、センサの検知範囲に対して、x軸方向に「d1A−c」だけマージンを持っており、かつ、y軸方向に「d2A−c」だけマージンを持っている。このため、例えばウェブに加わるテンションの変化(変動)によって当初の計算の変形量からずれが発生した場合でも、直ちに誤検知が発生することはない。
【0081】
d1Aは、ウェブ幅方向のマーカーの変形後長さの一例である。d2Aは、搬送方向のマーカーの変形後長さの一例である。
【0082】
《マーカーの形状に関する計算の具体例》
例えば、クリーニング装置の構成が下記の表1に示したパラメータを持つとする。
【0084】
〈参考例1〉
表1に示したパラメータを持つ条件の場合、初期状態のマーカー形状をx軸直径D1とy軸直径D2が同一、つまり円形状であるとすると、変形後の楕円は下記表2に示す寸法の形状になる。
【0086】
表2に示す参考例1の場合、変形後の楕円のx軸直径D1Aがセンサの検知範囲の直径cよりも小さくなることから(D1A<c)、誤検知が発生し得る。
【0087】
〈実施例1〉
一方、本発明を適用した実施形態に係るクリーニング装置において、例えば、下記の表3に示したパラメータを持たせた場合を考える。
【0089】
この実施例1の場合、変形後の楕円のx軸直径d1Aが、センサの検知範囲の直径cよりも大きく(d1A>c)、かつ、変形後の楕円のy軸直径d2Aが、センサの検知範囲の直径cよりも大きい(d2A>c)ものとなり、誤検知は発生しない。
【0090】
《マーカーの初期形状についての条件》
マーカーの初期形状が楕円形状である場合の好ましい条件は、次の式にまとめることができる。
【0091】
d1>d2 ・・・[式13]
d1>c/(1+ε
x)・・・[式14]
d2>c/(1+ε
y)・・・[式15]
式13から式15を満たすことにより、誤検知を抑制できる。
【0092】
《マーカーの大きさの上限について》
マーカーの形状の設計例1及び設計例2のそれぞれに示した数式によれば、マーカーの大きさを、センサの検知範囲より大きくすればするほど有利に見えるが、マーカーの大きさには限界がある。例えば、マーカーを貫通穴とした場合、貫通穴の開口面積を大きくしすぎると、貫通穴の周囲のウェブ領域であるウェブ幅方向の両端部が細くなり、ウェブにテンションが加わった際にウェブが破断するおそれがある。また、マーカーを大きくしすぎると、クリーニングに使用できる部分の面積が減る。したがって、マーカーの大きさを必要以上に大きくすることは、避けることが好ましい。
【0093】
マーカーの大きさは、ウェブにテンションが加わった状態での変形後のマーカー形状がセンサの検知範囲に対して妥当なマージンを含む直径dの目標円を包含する形状となるという条件を満たして、できるだけ小さいサイズとすることが望ましい。
【0094】
《マーカーの初期形状の好ましい条件》
マーカーの大きさをできるだけ小さいサイズにするという観点も加え、マーカーの初期形状に関する好ましい条件を整理すると、センサの検知範囲の直径c以上となる目標円の直径dとして、次式を満たすことにより、誤検知を抑制できる。
【0095】
d1>d2 ・・・[式16]
d1>d ・・・[式17]
d2≦d ・・・[式18]
d1A>d ・・・[式19]
d2A>d ・・・[式20]
このことは、c≦dを満たす特定のdの値に対して、式16から式20が満たされることを意味している。
【0096】
なお、特定のdの値は、1つに限らない。言い換えると、式16から式20の5つの不等式を満たし、かつ、c≦dを満たすdの値が存在することを意味している。例えば、d=cとして、式18から更に、d2<cであってもよい。
【0097】
《ウェブに加わるテンションF[N]の大きさの目安》
ウェブに加わるテンションF[N]は、例えば、0.1〜2[N]である。インクジェットヘッドのノズル面を払拭する用途のクリーニング装置など、様々な用途のクリーニング装置について、通常使用される状況にてウェブに加わるテンションF[N]は、0.1〜2[N]の範囲が一般的である。
【0098】
《ウェブのヤング率の目安》
ウェブのヤング率は、例えば、7〜60[N/mm
2]である。クリーニング装置の用途に応じて、様々な種類のウェブが用いられることが想定されるが、クリーニング装置に用いられる各種ウェブのヤング率は、7〜60[N/mm
2]の範囲が一般的である。
【0099】
《ウェブに設けられたマーカーの形態例1》
図9は、ウェブに設けられたマーカーの形態例1を示す説明図である。
図9には、
図5及び
図6で説明した終端末検知用のマーカー70A、70Bの例が示されている。
【0100】
マーカー70A、70Bは、ウェブ10の供給軸側の終端末から搬送方向に所定距離だけ離れた位置に設けられている。
図5で説明したとおり、マーカー70A、70Bの初期形状は、ウェブ幅方向を長軸とする楕円形状を有する。ウェブ10の幅の範囲内に、2つのマーカー70Aとマーカー70Bを、ウェブ幅方向に並べて配置する形態の場合、2つのマーカー70A、70Bは、ウェブ10の幅の中心線を挟んで対称の位置に設けられていることが好ましい。
【0101】
また、ウェブ10の幅の範囲内に、2つのマーカー70Aとマーカー70Bを、ウェブ幅方向に並べて配置する形態の場合、
図6のように、ウェブ10にテンションが加わった状態において、2つのマーカー70Aとマーカー70Bの間のウェブ領域の幅が、インクジェットヘッド50のノズル面52の短手方向の幅以上であることが好ましい。このような形態によれば、仮に、2つのマーカー70A、70Bが共に、「マーカーなし」と誤検知されてウェブ10を搬送したとしても、マーカー70Aとマーカー70Bの間のウェブ領域を用いてノズル面52を払拭することができる。
【0102】
《第2実施形態》
ウェブ上におけるマーカーの位置がウェブの幅の中心位置からずれている場合に、ウェブにテンションが加わると、マーカーの形状が変化(変形)するだけでなく、マーカーの位置が移動する。第2実施形態では、ウェブにテンションが加わった際のマーカーの移動を見越して、初期状態において予めセンサの検知位置と、マーカーの位置とをずらしておく。
【0103】
マーカーの位置とは、マーカーの中心位置を指す。ウェブの幅の中心位置とは、ウェブの幅を2等分する中心線の位置を指す。本明細書において、ウェブの幅の中心位置を「ウェブの中心」と表記する場合がある。センサの検知位置とは、ウェブ上におけるセンサの検知範囲の中心位置を指す。
【0104】
ここでは、ウェブの幅方向についてのマーカーの位置とセンサの検知位置を問題にしている。マーカーの位置とセンサの検知位置のそれぞれの位置は、例えば、ウェブの幅の中心位置を基準(原点)として、ウェブの幅の中心位置からの距離で表すことができる。
【0105】
ここで、ウェブにテンションが加わった際のマーカーの移動による誤検知の可能性について、参考例2を用いて説明する。
【0106】
〈参考例2〉
図10は、ウェブにテンションが加わる前(変形前)のマーカーの位置とセンサの検知位置との位置関係の参考例を示す平面図である。
図10では、図示の簡略化のために、1つのマーカー72と、これを検知するためのセンサの検知範囲44を示したが、ウェブ10の中心線C
Lを挟んで対称位置に、もう1つの図示せぬマーカーが設けられていてもよい。マーカー72は、例えば、貫通穴である。マーカー72の初期形状は、第1実施形態で説明した条件を満たす楕円形状である。
【0107】
マーカー72の位置は、ウェブ10の中心から幅方向にe[mm]の距離にある。ウェブ10の中心から幅方向にe[mm]の距離の位置を「位置e」と表記する。この位置eをマーカーの初期位置と呼ぶ。
【0108】
一方、センサの検知範囲44の中心位置、つまりセンサの検知位置は、ウェブ10の中心から幅方向にf[mm]の距離にある。ウェブ10の中心から幅方向にf[mm]の距離の位置を「位置f」と表記する。
図10に示した参考例は、e=fの場合である。
【0109】
図11は、
図10に示したウェブにテンションが加わった状態(変形後)のマーカーの位置とセンサの検知位置との位置関係の示す平面図である。
【0110】
図11に示したように、ウェブ10が変形することによって、マーカー72の位置が移動する。つまり、ウェブ10にテンションが加わることによってウェブ10が変形する分、マーカー72の位置が、ウェブ10の中心に向かって幅方向にずれる。変形後のマーカー72の位置は、ウェブ10の中心から幅方向にe
A[mm]の距離にある。e
Aは、eよりも小さい値である(e
A<e)。
【0111】
ウェブ10の中心から幅方向にe
A[mm]の距離の位置を「位置e
A」と表記する。この位置e
Aを変形後のマーカーの位置と呼ぶ。
【0112】
一方で、センサの検知位置は固定(不動)であるため、センサの検知範囲44に、変形後のマーカー72のエッジが入り、誤検知する可能性がある。
【0113】
〈第2実施形態の概要〉
図10及び
図11を用いて説明したような誤検知を抑制するために、第2実施形態では、センサの検知位置fについて第1実施形態で説明したウェブの縮み量の半分だけ、オフセットした位置に、マーカーを設ける。
【0114】
図12及び
図13は、第2実施形態の概要を示す説明図である。
図12は、ウェブにテンションが加わる前(変形前)のマーカーの位置とセンサの検知位置との位置関係の示す平面図である。
図12では、図示の簡略化のために、1つのマーカー74と、これを検知するためのセンサの検知範囲44を示したが、ウェブ10の中心線C
Lを挟んで対称位置に、もう1つの図示せぬマーカーが設けられていてもよい。マーカー74は、例えば、貫通穴である。
【0115】
マーカー74の初期形状は、第1実施形態で説明した条件を満たす楕円形状である。マーカー74の位置は、ウェブ10の中心から幅方向にe[mm]の距離にある。一方、センサの検知範囲44の中心位置、つまりセンサの検知位置は、ウェブ10の中心から幅方向にf[mm]の距離にある。
【0116】
図12に示した第2実施形態では、予めセンサの検知位置と、マーカー74の初期位置をずらしておく。すなわち、初期状態におけるマーカー74の位置は、センサの検知位置よりも、ウェブ10の中心から遠い距離にある(e>f)。
【0117】
図13は、
図12に示したウェブにテンションが加わった状態(変形後)のマーカーの位置とセンサの検知位置との位置関係の示す平面図である。
【0118】
図13に示したように、ウェブ10が変形することによって、マーカー74の位置が移動する。つまり、ウェブ10にテンションが加わることによってウェブ10が変形する分、マーカー74の位置が、ウェブ10の中心に向かって移動する。
【0119】
図13では、変形後のマーカー74は、センサの検知範囲44を包含する形状に変形し、かつ、変形後のマーカー74の位置e
Aがセンサの検知位置fと一致する。
【0120】
このように、変形後のマーカー74の移動を見越して、予めマーカー74の初期位置とセンサの検知位置と相対的にずらしておくことにより、誤検知を抑制することができる。
【0121】
《マーカーの位置の計算例》
ここで、第2実施形態に関して、マーカーの位置の計算例を説明する。
【0122】
ウェブに加わるテンションをF[N]、ウェブの厚さをt[mm]、ウェブの初期幅をw[mm]、ウェブのヤング率をE[N/mm
2]、ウェブのポアソン比をνとする。
【0123】
テンションが加わった時のウェブのx軸方向のひずみε
xと、y軸方向のひずみε
y、テンションFによる垂直応力σ
yは、次式で表される。
【0124】
ε
y=σ
y/E ・・・[式1]
ε
x=−ν・σ
y/E ・・・[式2]
σ
y=F/(w・t) ・・・[式3]
ここで変形前のマーカーの位置をeとすると、変形後のマーカーの位置e
Aは、次式で表される。
【0125】
e
A=e+(e・ε
x) ・・・[式21]
よって、変形後のマーカーの位置e
Aを、センサの検知位置fと同じにしたい場合、
f=e
A=e+(e・ε
x) ・・・[式22]
となり、変形前のマーカーの位置eは、
e=f/(1+ε
x) ・・・[式23]
に設定すればよい。
【0126】
なお、変形前のマーカーの位置eとセンサの検知位置fの相対的なずれ量は、次式で表される。
【0127】
|e−f|=|−(ε
x・f)/(1+ε
x)| ・・・[式24]
《マーカーの位置に関する計算の具体例》
例えば、クリーニング装置の構成が下記の表4に示したパラメータを持つとする。
【0129】
〈参考例3〉
表4に示したパラメータを持つ条件の場合、変形前の状態(初期状態)でセンサの検知位置fとマーカーの位置eを同じに設計すると、変形後のマーカーは表5に示すとおりになり、変形後のマーカーの位置とセンサの検知位置に1mmの差が生じる。
【0131】
この場合、
図11の参考例2で説明したように、誤検知が発生し得る。
【0132】
〈実施例2〉
一方、本発明の第2実施形態の内容を適用すると、各パラメータは、下記の表6に示した通りになり、変形後のマーカーの位置と、センサの検知位置は一致する。
【0134】
《第3実施形態》
ウェブに設けられるマーカーは、終端末検知用のマーカーに限らず、ウェブの送り量を検知するためのマーカーであってもよい。
【0135】
図14は、ウェブに設けられるマーカーの他の形態例2を示す説明図である。
図14に例示したウェブ10には、送り量検知用のスケールとして用いられる複数のマーカー76A、76Bが搬送方向に沿って一定の間隔で並んで配置されている。マーカー76A、76Bは、ウェブ10の巻取軸側の使用開始位置から供給軸側の使用終了位置までのウェブ10の使用可能区間に渡って多数設けられている。
【0136】
マーカー76A、76Bの初期形状に関して、第1実施形態で説明したマーカー70A、70Bと同様に設計される。また、マーカー76A、76Bの初期位置に関して、第2実施形態で説明したマーカー74と同様に設計される。
【0137】
第1実施形態及び第2実施形態で説明した終端末検知用のマーカーに代えて、又は、これと組み合わせて、
図14のような送り量検知用のマーカー76A、76Bを備えたウェブ10を採用する形態が可能である。なお、送り量検知用のマーカー76A、76Bは、ウェブ10の残量を検知するマーカーとしても機能し得る。ウェブに設けられるマーカーは、ウェブの残量を示すマーカー、及び、ウェブの送り量を示すマーカーのうち少なくとも一方のマーカーであってよい。
【0138】
《実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例》
クリーニング装置を備えた画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置の例を説明する。
【0139】
図15は、インクジェット記録装置の全体の概略構成を示す全体構成図である。インクジェット記録装置110は、記録媒体としての用紙Pにインクジェット方式でカラー印刷を行うカラーインクジェット印刷機である。
【0140】
インクジェット記録装置110は、給紙部112と、処理液塗布部114と、処理液乾燥処理部116と、描画部118と、後処理部120と、排紙部122と、を備える。
【0141】
〈給紙部〉
給紙部112は、記録媒体である用紙Pを1枚ずつ処理液塗布部114に給紙する。給紙部112は、給紙台130と、給紙装置132と、給紙ローラ対134と、フィーダボード136と、前当て138と、給紙ドラム140と、を備える。
【0142】
給紙台130は、用紙Pを載せる台である。用紙Pは多数枚が積層された束(用紙束)の状態で給紙台130に載置される。給紙台130には、図示しない給紙台昇降装置が備えられる。給紙台昇降装置は、最上位に位置する用紙Pが、常に一定の高さの位置に位置するように、用紙Pの増減に連動して給紙台130を昇降させる。
【0143】
給紙装置132は、給紙台130に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対134に給紙する。給紙ローラ対134は、給紙装置132から給紙された用紙Pをフィーダボード136に向けて送り出す。
【0144】
フィーダボード136は、給紙ローラ対134から送り出された用紙Pを受け、給紙ドラム140に向けて搬送する。前当て138は、フィーダボード136の終端位置に備えられ、フィーダボード136によって搬送されてくる用紙Pの姿勢を矯正する。
【0145】
給紙ドラム140は、前当て138によって姿勢が矯正された用紙Pをフィーダボード136から受け取り、処理液塗布部114へと搬送する。給紙ドラム140は、グリッパ140Aを備え、このグリッパ140Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを処理液塗布部114へと搬送する。
【0146】
〈処理液塗布部〉
処理液塗布部114は、用紙Pに処理液を塗布する。処理液は、インク中の色材成分を凝集、不溶化ないし増粘させる機能を備えた液体である。処理液塗布部114は、処理液塗布ドラム142と、処理液塗布装置144と、を備える。
【0147】
処理液塗布ドラム142は、給紙ドラム140から用紙Pを受け取り、所定の搬送経路に沿って用紙Pを搬送する。処理液塗布ドラム142はグリッパ142Aを備え、このグリッパ142Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて、用紙Pを搬送する。
【0148】
処理液塗布装置144は、処理液塗布ドラム142によって搬送される用紙Pに処理液を塗布する。用紙Pは、処理液塗布ドラム142によって搬送される過程で用紙表面に塗布ローラが押圧当接され、塗布ローラを介して用紙Pに処理液が塗布される。
【0149】
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部116は、処理液が塗布された用紙Pを乾燥処理する。処理液乾燥処理部116は、処理液乾燥処理ドラム146と、用紙ガイド148と、処理液乾燥処理ユニット150と、を備える。
【0150】
処理液乾燥処理ドラム146は、処理液塗布ドラム142から用紙Pを受け取り、所定の搬送経路に沿って用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム146は、グリッパ146Aを備え、このグリッパ146Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。
【0151】
用紙ガイド148は、処理液乾燥処理ドラム146による用紙Pの搬送経路に沿って配設されて、用紙Pをガイドする。
【0152】
処理液乾燥処理ユニット150は、処理液乾燥処理ドラム146の内側に設置され、用紙ガイド148に向けて熱風を送風する。これにより、処理液乾燥処理ドラム146によって搬送される用紙Pの表面(処理液が塗布された面)に熱風が吹き当てられる。
【0153】
用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム146によって搬送される過程で処理液乾燥処理ユニット150から送風される熱風が表面に吹き当てられて乾燥処理される。この乾燥処理により、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
【0154】
〈描画部〉
描画部118は、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインクを打滴して、用紙Pにカラー画像を描画する。描画部118は、描画ドラム152と、用紙押さえローラ154と、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kと、スキャナ160と、を備える。
【0155】
描画ドラム152は、処理液乾燥処理ドラム146から用紙Pを受け取り、所定の搬送経路に沿って用紙Pを搬送する。描画ドラム152は、グリッパ152Aを備え、このグリッパ152Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて用紙Pを搬送する。また、描画ドラム152は、周面に多数の吸着穴(図示せず)を備え、この吸着穴から用紙Pを吸引して、周面に巻き付けられた用紙Pを吸着保持する。
【0156】
用紙押さえローラ154は、描画ドラム152に受け渡された用紙Pの表面を押圧して、用紙Pを描画ドラム152の周面に押し付け、用紙Pを描画ドラム152の周面に密着させる。
【0157】
インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kは、用紙Pにシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kは、用紙Pの幅に対応したラインヘッドで構成される。インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kは、用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔で配置され、それぞれ用紙Pの搬送方向に対して直交して配置される。インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのそれぞれには、対応する色のインク供給源である不図示のインクタンクから不図示の配管経路を介して、インクが供給される。
【0158】
図15に示したインクジェット記録装置110では、用紙Pが描画ドラム152によって回転搬送されるため、各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kは、描画ドラム152の周囲に傾斜して配置される。このため、各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの先端に備えられるノズル面は、水平面に対して傾斜して配置される。
【0159】
用紙Pは、描画ドラム152によって搬送される過程で各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kからインク滴が打滴されて、表面に画像が描画される。
【0160】
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特色インクなどを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成や、緑色やオレンジ色などの特色のインクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、また、各色のインクジェットヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0161】
スキャナ160は、用紙Pに記録された画像を読み取る。スキャナ160は、画像読取部の一例であり、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kによって用紙Pに記録された画像を光学的に読み取り、その読取画像を示す電子画像データを生成する光学読取装置である。スキャナ160は、用紙P上に記録された画像を撮像して画像情報を示す電気信号に変換する撮像デバイスを含む。スキャナ160は、撮像デバイスの他、読み取り対象を照明する照明光学系及び撮像デバイスから得られる信号を処理してデジタル画像データを生成する信号処理回路を含んでよい。スキャナ160を用いて読み取られた読取画像のデータを基に、画像の濃度やインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの吐出不良などの情報が得られる。
【0162】
〈後処理部〉
後処理部120は、画像が描画された用紙Pの後処理を行う。本例の後処理には、乾燥処理、及び紫外線照射処理が含まれる。後処理部120は、乾燥処理を行うインク乾燥処理部120Aと、乾燥処理された用紙Pに紫外線を照射して画像を定着させる紫外線照射部120Bと、用紙Pを搬送するチェーングリッパ164と、を備える。
【0163】
チェーングリッパ164は、描画部118から用紙Pを受け取り、所定の搬送経路に沿って用紙Pを搬送する。チェーングリッパ164は、無端状のチェーン164Aに備えられたグリッパ164Bによって用紙Pの先端を把持して、用紙Pを搬送する。
【0164】
用紙Pは、チェーングリッパ164に搬送されて、平坦な第1区間と、一定の登り勾配を有する第2区間と、平坦な第3区間と、を通って、排紙部122に搬送される。
【0165】
第1区間及び第2区間には、用紙Pの搬送をガイドするガイドプレート172が配設される。ガイドプレート172は、用紙Pの摺動面に多数の吸着穴(不図示)を有し、この吸着穴から用紙Pを吸引する。これにより、チェーングリッパ164によってガイドプレート172上を搬送される用紙Pにバックテンションが付与される。
【0166】
インク乾燥処理部120Aは、描画後の用紙Pを加熱して乾燥させ、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部120Aは、熱風を送風するドライヤ168を備える。ドライヤ168は、チェーングリッパ164の内部に設置され、第1区間を搬送される用紙Pに向けて熱風を送風する。
【0167】
紫外線照射部120Bは、画像表面に紫外線を照射する。インクに紫外線硬化型のインクを使用する場合、紫外線照射部120Bにおいて画像表面に紫外線が照射される。紫外線照射部120Bは、紫外線を照射する紫外線照射装置174を備える。紫外線照射装置174は、チェーングリッパ164の内部に設置され、第2区間を搬送される用紙Pに紫外線を照射する。なお、紫外線硬化型ではない通常のインクを使用する装置構成の場合、紫外線照射部120Bの構成を省略することができる。
【0168】
〈排紙部〉
排紙部122は、画像が描画された用紙Pを回収する。排紙部122は、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台176を備える。チェーングリッパ164は、排紙台176の上で用紙Pを開放し、排紙台176の上に用紙Pをスタックさせる。
【0169】
〈メンテナンス部〉
図15には示されていないが、インクジェット記録装置110は、メンテナンス部124(
図16参照)を備える。メンテナンス部124は、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのメンテナンスを行う。メンテナンス部124は、描画部118に隣接して配置される。インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kは、このメンテナンス部124に移動して、各種メンテナンスを受ける。メンテナンス部124は、本発明の実施形態に係るクリーニング装置260を含んで構成される。メンテナンス部124の構成については、後に詳述する。
【0170】
《制御系》
図16は、インクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置110は、システムコントローラ200、通信部202、記憶部204、操作部206、表示部208等を備える。
【0171】
システムコントローラ200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Member)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータを含んで構成され、所定の制御プログラムを実行することにより、各種機能を実現する。システムコントローラ200は、所定の制御プログラムを実行することにより、搬送制御部210、給紙制御部212、処理液塗布制御部214、処理液乾燥制御部216、描画制御部218、インク乾燥制御部220A、紫外線照射制御部220B、排紙制御部222、メンテナンス制御部224等として機能する。
【0172】
また、システムコントローラ200は、所定の画像処理プログラムを実行することにより、画像処理部として機能する。ROMには、このシステムコントローラ200が、実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0173】
通信部202は、所要の通信インターフェースを備え、通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0174】
記憶部204は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ200を通じてデータの読み書きが行われる。
【0175】
操作部206は、所要の入力装置を備え、入力装置から入力された情報をシステムコントローラ200に出力する。入力装置は、例えば、操作ボタンやキーボード、マウス、タッチパネル、若しくは、音声入力装置、又はこれらの適宜の組み合わせであってよい。システムコントローラ200は、操作部206から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0176】
表示部208は、液晶パネル等の表示装置を備え、システムコントローラ200からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0177】
搬送制御部210は、用紙Pの搬送系111を制御する。搬送系111には、
図15に示したフィーダボード136、給紙ドラム140、処理液塗布ドラム142、処理液乾燥処理ドラム146、描画ドラム152、及び、チェーングリッパ164が含まれる。搬送制御部210は、給紙部112から給紙される用紙Pが、排紙部122まで滞りなく搬送されるように、各部の用紙搬送機構を制御する。
【0178】
給紙制御部212は、給紙部112の動作を制御する。給紙制御部212は、給紙台130に積載された用紙Pが1枚ずつ順に給紙されるように、給紙装置132と給紙台昇降装置の駆動を制御する。
【0179】
処理液塗布制御部214は、処理液塗布部114の動作を制御する。処理液塗布制御部214は、処理液塗布ドラム142によって搬送される用紙Pに処理液が塗布されるように、処理液塗布装置144の駆動を制御する。
【0180】
処理液乾燥制御部216は、処理液乾燥処理部116の動作を制御する。処理液乾燥制御部216は、処理液乾燥処理ドラム146によって搬送される用紙Pが乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット150の駆動を制御する。
【0181】
描画制御部218は、描画部118の動作を制御する。描画制御部218は、描画ドラム152によって搬送される用紙Pに所望の画像が記録されるように、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの駆動を制御する。また、記録された画像が読み取られるように、スキャナ160の動作を制御する。
【0182】
インク乾燥制御部220Aは、インク乾燥処理部120Aの動作を制御する。インク乾燥制御部220Aは、チェーングリッパ164によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるように、ドライヤ168の駆動を制御する。
【0183】
紫外線照射制御部220Bは、紫外線照射部120Bの動作を制御する。紫外線照射制御部220Bは、チェーングリッパ164によって搬送される用紙Pに紫外線が照射されるように、紫外線照射装置174の駆動を制御する。
【0184】
排紙制御部222は、排紙部122の動作を制御する。排紙制御部222は、排紙台176に用紙Pがスタックされるように、排紙台昇降装置等の駆動を制御する。
【0185】
メンテナンス制御部224は、メンテナンス部124の動作を制御する。メンテナンス制御部224は、所定のメンテナンスが実行されるように、メンテナンス部124を制御する。メンテナンス部124は、本発明の実施形態に係るクリーニング装置260を含んで構成される。クリーニング装置260のマーカー検知部42が検知した情報は、メンテナンス制御部224及び/又はシステムコントローラ200に送られる。メンテナンス制御部224及び/又はシステムコントローラ200は、
図1で説明した制御回路38の役割を果たす。例えば、システムコントローラ200は、マーカー検知部42から得られる情報を基に、ユーザに対してウェブ10の交換時期をユーザに知らせる警告情報を表示部208に表示させることができる。
【0186】
画像記録に係るジョブは、ホストコンピュータから通信部202を介してインクジェット記録装置110に取り込まれる。ジョブには、用紙Pに印刷する画像の画像データの他、印刷する枚数の情報など、印刷に必要な各種情報が含まれる。ジョブに含まれる画像データの情報は、記憶部204に格納される。
【0187】
システムコントローラ200は、記憶部204に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。システムコントローラ200は、生成したドットデータに従って描画部118の各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの駆動を制御し、画像データが表す画像を用紙Pに記録する。
【0188】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理及びハーフトーン処理を行うことにより、生成される。色変換処理は、RGBなどの表色系で表現された画像データをインクジェット記録装置110で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である。本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換される。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して、ディザ法、又は、誤差拡散等の処理を用いて各色のドットデータに変換する処理である。
【0189】
《インクジェットヘッドの構成例》
本実施形態のインクジェット記録装置110には4本のインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kが備えられているが、各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの構成は同じなので、ここでは、共通の符号156を用いて、その構成の説明を行う。
【0190】
図17は、インクジェットヘッドの概略構成を示す斜視図である。本実施形態に用いられるインクジェットヘッド156は、ライン型のインクジェットヘッドで構成される。インクジェットヘッド156は、複数のヘッドモジュール156−iを繋ぎ合わせて1つのバー状のインクジェットヘッドが構成される。ヘッドモジュール156−iの符号表記における「i」は、ヘッドモジュールの番号を表している。
図17の例では、17個のヘッドモジュールを繋ぎ合わせているため、「i」は、1から17までの整数を表している。
【0191】
各ヘッドモジュール156−iは、バーフレーム158に取り付けられて一体化される。各ヘッドモジュール156−iは個別に交換できる。
【0192】
図18は、インクジェットヘッドのノズル面の概略構成を示す平面図である。インクジェットヘッド156のノズル面157は、全体として概ね矩形状を有し、長手方向と直交する方向の中央部分にノズル配置領域157Aを含んでいる。インクの液滴を吐出する吐出口であるノズルは、ノズル配置領域157Aに備えられる。
【0193】
図19は、ノズル面の一部である1つのヘッドモジュールのノズル面を拡大した平面図である。
図19において、X軸の方向が、インクジェットヘッド156の長手方向である。X軸の方向をヘッド長手方向という。ヘッド長手方向は、主走査方向に相当する。
図19のY軸の方向は、描画時における用紙Pの搬送方向に沿う方向である。Y軸の方向を用紙搬送方向という。用紙搬送方向は、副走査方向に相当する。なお、
図19に示したX軸の方向は、ウェブの搬送方向として説明したy軸方向であり、
図19に示したY軸の方向は、ウェブ幅方向として説明したx軸方向である。
【0194】
インクジェットヘッド156のノズル面157には、複数のノズルNがマトリクス状に配列される。例えば、ノズル面157には、X軸に対して所定角度(γ)傾斜する直線X1に沿ってノズルNが一定のピッチで配列され、かつ、Y軸に対して所定角度(α)傾斜した直線Y1に沿ってノズルNが一定のピッチで配列される。このようにノズルNを配列することにより、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズルNの間隔を狭めることができ、ノズルNを高密度に配置できる。なお、この場合におけるノズルNの実質的な配列方向はX軸の方向となる。すなわち、ノズルNは実質的にインクジェットヘッド156の長手方向に沿って配置されることになる。
【0195】
ノズル配置領域157Aには、撥液処理が施される。これにより、ノズルNの周辺に汚れが付着するのを抑制することができる。
【0196】
《メンテナンス部の構成例》
図20は、メンテナンス部124及び描画部118の平面図である。メンテナンス部124は、描画部118に隣接して配置される。インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのメンテナンスを行う場合は、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kをメンテナンス部124に移動させて行う。インクジェット記録装置110には、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kを描画位置とメンテナンス位置との間で移動させるための移動機構として、ヘッド移動装置238が備えられる。描画位置とは、描画時におけるインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの設置位置である。描画位置は、描画ドラム152による用紙Pの搬送経路上に設定される。メンテナンス位置とは、描画待機時、電源オフ時、及び、メンテナンス時におけるインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの設置位置である。メンテナンス位置は、描画ドラム152による用紙Pの搬送経路外に設定される。
【0197】
〈ヘッド移動装置〉
ヘッド移動装置238は、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kを搭載するためのヘッド搭載フレーム240と、ヘッド搭載フレーム240を水平に移動させるためのヘッド搭載フレーム移動装置242と、を備える。
【0198】
ヘッド搭載フレーム240は、ヘッド搭載フレーム本体240aを有する。ヘッド搭載フレーム本体240aは、各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kを装着するためのヘッド装着部240bを有する。ヘッド装着部240bは、一対のヘッド支持部240cを有し、一対のヘッド支持部240cで各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの両端部を支持して、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kを水平に支持する。
【0199】
ヘッド装着部240bには、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kを昇降させるための図示しないヘッド昇降機構が備えられる。ヘッド昇降手段は、ヘッド装着部240bに装着されたインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの各々を描画ドラム152の径方向に沿って、それぞれのノズル面に対して垂直な方向に昇降させる。
【0200】
ヘッド搭載フレーム移動装置242は、一対のガイドレール246と、送り装置248と、を含んで構成される。
【0201】
一対のガイドレール246は、描画ドラム152の回転軸に沿って平行、かつ、水平に配設される。ヘッド搭載フレーム240は、スライダ247を介してガイドレール246にスライド自在に支持される。
【0202】
送り装置248は、ネジ棒248Aと、ネジ棒248Aに螺合されるナット部材248Bと、ネジ棒248Aを回転させるモータ248Cと、を含んで構成される。ネジ棒248Aは、ガイドレール246に沿って配設される。ナット部材248Bは、ヘッド搭載フレーム240に連結される。
【0203】
モータ248Cを正回転させると、ヘッド搭載フレーム240が、ガイドレール246に沿って、描画部118からメンテナンス部124に向かって移動する。また、モータ248Cを逆回転させると、ヘッド搭載フレーム240が、ガイドレール246に沿って、メンテナンス部124から描画部118に向かって移動する。
【0204】
〈メンテナンス部〉
メンテナンス部124は、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのノズル面をワイピングするワイピングユニット258と、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのノズル面をキャッピングするキャップユニット256と、廃液トレイ254と、を備える。
【0205】
[ワイピングユニット]
ワイピングユニット258は、描画位置とメンテナンス位置との間を移動するインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの移動経路上に配置される。ワイピングユニット258は、各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのノズル面を個別にクリーニングするクリーニング装置260C、260M、260Y、260Kを有する。クリーニング装置260C、260M、260Y、260Kは、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kが描画位置とメンテナンス位置との間を移動する過程でインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのノズル面をクリーニングする。
【0206】
各クリーニング装置260C、260M、260Y、260Kの構成として、第1実施形態〜第3実施形態にて説明したクリーニング装置1と同様の構成が採用され得る。
【0207】
図21は、クリーニング装置の概略構成図である。各クリーニング装置260C、260M、260Y、260Kの基本構成は同じなので、ここでは符号260を用いて、クリーニング装置の構成について説明する。
図21において、
図1で説明した構成と同一又は類似する部材には同一の符号を付した。
【0208】
クリーニング装置260は、ヘッド長手方向に沿って移動するインクジェットヘッド156のノズル面157にウェブ10を押し当てて、インクジェットヘッド156のノズル面157をワイピングする。クリーニング装置260は、ケース261に、供給リール262と、ウェブ10を巻き取る巻取リール263と、押圧ローラ18と、複数のガイドローラ20A、20B、20C、22A、22Bと、フィードローラ24と、洗浄液供給ノズル267と、昇降装置268と、を備えて構成される。
【0209】
供給リール262は、ウェブ10を供給する側のリールである。ウェブ10は、供給リール262にロール状に巻かれる。巻取リール263は、供給リール262から繰り出されたウェブ10を巻き取る。ケース261は、
図1において説明したケース12に対応する部材である。供給リール262は、
図1において説明した供給軸14に対応する部材である。巻取リール263は、
図1において説明した巻取軸16に対応する部材である。
【0210】
押圧ローラ18は、供給リール262と巻取リール263との間を走行するウェブ10をノズル面157に当接させる。押圧ローラ18は、例えば、ゴムローラで構成され、インクジェットヘッド156のノズル面157の傾斜に合わせて傾斜して配置される。
【0211】
洗浄液供給ノズル267は、ウェブ10の搬送方向に対して押圧ローラ18の上流側に配置され、ウェブ10に洗浄液を供給する。洗浄液供給ノズル267は、図示しない洗浄液供給装置から洗浄液の供給を受け、ウェブ10に洗浄液を供給する。
【0212】
昇降装置268は、例えば、シリンダを用いて構成され、ケース261を鉛直方向に昇降移動させる。昇降装置268を用いてケース261を昇降移動させることにより、押圧ローラ18は、ウェブ10をノズル面157に当接させる当接位置と、ウェブ10がノズル面157に非接触となる退避位置との間を移動する。
【0213】
押圧ローラ18を当接位置に位置させた状態でインクジェットヘッド156をメンテナンス位置から描画位置に移動させると、又は、描画位置からメンテナンス位置に移動させると、インクジェットヘッド156のノズル面157にウェブ10が当接する。これにより、ノズル面157がクリーニングされる。
【0214】
一方、押圧ローラ18を退避位置に位置させた状態でインクジェットヘッド156を移動させた場合は、ノズル面157にウェブ10を接触させることなくインクジェットヘッド156を移動させることができる。
【0215】
[ウェブカセット]
クリーニング装置260は、ウェブ10が収容されたケース261ごと、取り外しが可能である。つまり、ウェブ10が収容されたケース261は、ウェブカセットとして機能しており、ウェブカセットの単位で交換可能である。ウェブカセットは、ケース261と、ウェブ10と、供給リール262と、巻取リール263と、を含む。また、ウェブカセットは、押圧ローラ18と、複数のガイドローラ20A、20B、20C、22A、22Bと、フィードローラ24とを含んでよい。
【0216】
マーカー検知部42、洗浄液供給ノズル267及び昇降装置268の一部、又は全部は、ウェブカセットの構成から外して、クリーニング装置260のフレームに設けられていてもよい。
【0217】
[キャップユニット]
キャップユニット256は、各インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのノズル面をキャッピングするキャップ300C、300M、300Y、300Kを有する。各キャップ300C、300M、300Y、300Kは、メンテナンス位置に位置したときのインクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの配置位置に対応して配置される。
【0218】
各キャップ300C、300M、300Y、300Kは、上部が開口した有底の箱形状を有し、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kの吐出側の先端部分を収容してノズル面をキャッピングする。本実施形態のインクジェット記録装置110では、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kが水平面に対して傾斜して設置されているため、キャップ300C、300M、300Y、300Kも傾斜して配置される。
【0219】
インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kは、メンテナンス位置に移動することにより、キャップ300C、300M、300Y、300Kの直上に配置される。インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kは、キャップ300C、300M、300Y、300Kに向けて移動することにより、ノズル面がキャッピングされる。
【0220】
各キャップ300C、300M、300Y、300Kの内側には、保湿液を溜める保湿液貯留部が設けられており、図示せぬ保湿液供給路を介して保湿液貯留部に保湿液が供給される。また、各キャップ300C、300M、300Y、300Kには、図示せぬ吸引ポンプが接続されている。
【0221】
予備吐出、加圧パージ、及びノズル吸引のうち少なくとも1種のメンテナンス動作は、インクジェットヘッド156C、156M、156Y、156Kのノズル面がキャップ300C、300M、300Y、300Kにキャッピングされた状態で行われる。
【0222】
〈各処理部及び制御部のハードウェア構成について〉
図16で説明したシステムコントローラ200の搬送制御部210、給紙制御部212、処理液塗布制御部214、処理液乾燥制御部216、描画制御部218、インク乾燥制御部220A、紫外線照射制御部220B、排紙制御部222、メンテナンス制御部224などの各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
【0223】
各種のプロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0224】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。例えば、1つの処理部は、複数のFPGA、或いは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第一に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第二に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0225】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0226】
《本開示による実施形態の利点》
(1)上述した各実施形態によれば、ウェブに加わるテンションによるマーカーの変形を見越して、変形後のマーカー形状がセンサの検知範囲を包含する形状となるように、予め初期状態におけるマーカーの形状が定められているため、マーカーの変形による誤検知を抑制することができる。これにより、ウェブの残量検知機構を確実に動作させることができる。
【0227】
(2)また、第2実施形態によれば、ウェブに加わるテンションによるマーカーの移動を考慮して、変形後のマーカーの位置と、センサの検知位置とが一致するように、予め初期状態におけるマーカーの位置と、センサの検知位置とをずらしておく構成となっているため、変形後のマーカーの移動による誤検知を抑制することができる。
【0228】
(3)上述した各実施形態によれば、発光部にLEDを用いた比較的安価なフォトセンサを用いてマーカーを精度よく検知することができる。
【0229】
《変形例1》
マーカーは、貫通穴に限らず、ウェブに付された黒色の塗りつぶしなど、光の反射を抑制するマーカーであってもよい。つまり、マーカーの形態は、マーカーの領域と、マーカー以外の領域(非マーカー領域)とで、マーカー検知部が受け取る光に量に明確な差異が生じるものであればよい。
【0230】
《変形例2》
マーカーの初期形状は、楕円形状に限らず、楕円形状に類する形状、例えば、直線部を含む長丸の形状であってもよい。また、マーカーの初期形状は、四角形状であってもよい。例えば、マーカーの初期形状は、ウェブの幅方向を長辺、搬送方向を短辺とする長方形であってよい。また、例えば、マーカーの初期形状は、ウェブ幅方向を第1の対角線、搬送方向を第2の対角線とする菱形であってもよい。この場合、第1の対角線の長さは、第2の対角線の長さよりも大きいものとする。
【0231】
マーカーの初期形状は、ウェブ幅方向のマーカー長さに比べて、搬送方向のマーカー長さが大きいものであればよく、様々な形状を採用し得る。
【0232】
《変形例3》
マーカーは、ウェブ10の幅方向の縁部に設けられた切欠き部であってもよい。切欠き部は、貫通穴と同様の役割を果たす。切欠り部の初期形状は、ウェブの幅方向を長軸とする楕円の一部(例えば、半楕円)であってもよい。なお、切欠り部の初期形状が半楕円形状である場合、半楕円の半長軸の長さ(長半径)がウェブ幅方向のマーカーの初期長さに相当し、半楕円の短軸の長さ(短径)が搬送方向のマーカーの初期長さに相当する。
【0233】
《変形例4》
図1に示したクリーニング装置1の構成から供給軸回転駆動モータ32を省略する形態も可能である。また、供給軸回転駆動モータ32、巻取軸回転駆動モータ34、フィードローラ回転駆動モータ36及び制御回路38のうちの一部又は全部をクリーニング装置1の構成から外して、インクジェット印刷装置側に搭載する形態も可能である。
【0234】
《変形例5》
上述の実施形態にて説明したクリーニング装置は、被クリーニング対象物であるインクジェットヘッドをクリーニング装置に対して移動させながらクリーニングを行う例を説明したが、被クリーニング対象物に対してクリーニング装置を移動させながらクリーニングを行ってもよい。被クリーニング対象物とクリーニング装置とを相対的に移動させる機構については、特に限定されず、様々な構造を採用し得る。
【0235】
《変形例6》
上述した各実施形態では、インクジェットヘッドのノズル面を払拭するクリーニング装置を例示したが、本発明の適用範囲は例示したクリーニング装置に限らず、各種用途のクリーニング装置に適用できる。
【0236】
例えば、感熱プリンタのサーマルヘッドの汚れを拭き取るクリーニング装置、若しくは、電子写真装置などの定着ローラからオフセットトナーを回収するクリーニングローラの汚れを拭き取るクリーニング装置、などにも本発明を適用することができる。もちろん、本発明のクリーニング装置は、画像形成装置に限らず、各種の装置に適用できる。
【0237】
《用語について》
「ウェブ」は、払拭ウェブ、或いは、クリーニングウェブと同義である。
【0238】
「画像形成装置」という用語は、印刷機、プリンタ、印字装置、印刷装置、画像記録装置、画像出力装置、或いは、描画装置などの用語の概念を含む。また、「画像形成装置」という用語は、複数の装置を組み合わせた印刷システムの概念を含む。
【0239】
「画像」は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像、均一濃度(ベタ)画像なども含まれる。「画像」は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様、その他の各種パターン、若しくはこれらの適宜の組み合わせを含む包括的な用語として用いる。
【0240】
本明細書における「直交」又は「垂直」という用語には、90°未満の角度、又は90°を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90°の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。本明細書における「平行」という用語には、厳密には非平行である態様のうち、平行である場合と概ね同様の作用効果が得られる実質的に平行とみなし得る態様が含まれる。
【0241】
《実施形態及び変形例等の組み合わせについて》
上述の実施形態で説明した構成や変形例で説明した事項は、適宜組み合わせて用いることができ、また、一部の事項を置き換えることもできる。
【0242】
[その他]
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、又は削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で同等関連分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。