特許第6985516号(P6985516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985516固体電解質組成物、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法、並びに、粒子状バインダーの製造方法
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  • 特許6985516-固体電解質組成物、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法、並びに、粒子状バインダーの製造方法 図000046
  • 特許6985516-固体電解質組成物、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法、並びに、粒子状バインダーの製造方法 図000047
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985516
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】固体電解質組成物、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法、並びに、粒子状バインダーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20211213BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20211213BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20211213BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/052
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01B1/06 A
【請求項の数】18
【全頁数】74
(21)【出願番号】特願2020-532352(P2020-532352)
(86)(22)【出願日】2019年7月19日
(86)【国際出願番号】JP2019028425
(87)【国際公開番号】WO2020022205
(87)【国際公開日】20200130
【審査請求日】2020年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2018-139152(P2018-139152)
(32)【優先日】2018年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(72)【発明者】
【氏名】三村 智則
(72)【発明者】
【氏名】菅▲崎▼ 敦司
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/030154(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 4/13
H01M 4/62
H01B 1/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、
下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満である構成成分と、質量平均分子量1000以上のマクロモノマーに由来する構成成分であって側鎖に下記式(H−21)又は式(H−22)で表わされる結合部を有する構成成分とを有するポリマーを含む、平均粒径が5nm〜10μmの粒子状バインダーと、
分散媒とを含む固体電解質組成物。
【化1】
式中、X11、X12、X13及びX15は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X14はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示す。L11は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【化2】
式中、X41、X42、X43及びX45は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X44はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示す。L41は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【請求項2】
前記分子量が1000未満である構成成分が下記式(R−1)又は式(R−2)で表わされる、請求項1に記載の固体電解質組成物。
【化3】
式中、X21、X22、X23及びX25は各々独立にイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を示す。X24はヒドロキシ基又はスルファニル基を示す。R11〜R13及びR15〜R17は各々独立に水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。R14及びR18は各々独立に水素原子又は置換基を示す。L21〜L23及びL25は各々独立に炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数2〜16のアルケニレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、リン酸連結基若しくはホスホン酸連結基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。L24は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【請求項3】
前記分子量が1000未満である構成成分が下記式(R−21)又は式(R−22)で表わされる、請求項1又は2に記載の固体電解質組成物。
【化4】
式中、X31、X32及びX35は各々独立にイミノ基又は酸素原子を示す。X33は酸素原子を示す。X34はヒドロキシ基を示す。Y11及びY12は各々独立にイミノ基又は酸素原子を示す。R21〜R23及びR25〜R27は各々独立に水素原子、シアノ基又はアルキル基を示す。R24及びR28は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はカルボキシ基を示す。L31〜L33及びL35は各々独立に炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。L34は炭素数2以下のアルキレン基を示す。
【請求項4】
前記式(H−1)において、前記X11及びX12が各々独立にイミノ基を示し、かつX13が酸素原子を示し、又は、
前記式(H−2)において、前記X14がアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示し、X15がイミノ基を示し、L11が炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す、請求項1に記載の無機固体電解質組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、前記分子量が1000未満である構成成分を20質量%以上90質量%未満含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項6】
前記ClogP値が2.5以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、側鎖に炭素数6以上の基を有する構成成分を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項8】
前記粒子状バインダーが、分散媒中で温度20℃、回転数100000rpmで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する成分と、この遠心分離処理に付しても沈降しない成分とを含み、
前記沈降する成分の含有量Xと前記沈降しない成分の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
Y/(X+Y)≦0.10
【請求項9】
前記ポリマーが下記官能基群(a)から選択される少なくとも1つの官能基を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
官能基群(a)
カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、イソシアナート基、オキセタン基、エポキシ基、シリル基
【請求項10】
前記無機固体電解質が下記式(1)で表される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
a1b1c1d1e1 式(1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示す。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。
【請求項11】
前記分散媒が、ケトン化合物、エステル化合物、芳香族化合物及び脂肪族化合物から選択される少なくとも1種の分散媒を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項12】
周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物で構成した層を有する固体電解質含有シート。
【請求項14】
請求項12に記載の固体電解質組成物で構成した活物質層を有する全固体二次電池用電極シート。
【請求項15】
正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記固体電解質層の少なくとも1つの層が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物で構成した層である、全固体二次電池。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を製膜する、固体電解質含有シートの製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の製造方法を介して全固体二次電池を製造する、全固体二次電池の製造方法。
【請求項18】
下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満である構成成分と、質量平均分子量1000以上のマクロモノマーに由来する構成成分であって側鎖に下記式(H−21)又は式(H−22)で表わされる結合部を有する構成成分とを有するポリマーを含む、平均粒径が5nm〜10μmの粒子状バインダーの製造方法であって、
側鎖に官能基を有する官能性ポリマーと、前記官能基と反応して前記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を形成する反応性基を有する側鎖形成化合物とを反応させる工程を有する、製造方法。
【化5】
式中、X11、X12、X13及びX15は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X14はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示す。L11は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【化6】
式中、X41、X42、X43及びX45は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X44はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示す。L41は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質組成物、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、固体電解質含有シートの製造方法及び全固体二次電池の製造方法、並びに、粒子状バインダーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、負極及び正極の間に挟まれた電解質とを有し、両極間にリチウムイオンを往復移動させることにより充放電を可能とした蓄電池である。リチウムイオン二次電池には、従来、電解質として有機電解液が用いられてきた。しかし、有機電解液は液漏れを生じやすく、また、過充電又は過放電により電池内部で短絡が生じ発火するおそれもあり、安全性と信頼性の更なる向上が求められている。
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の安全性及び信頼性を大きく改善することができる。
【0003】
このような全固体二次電池において、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層等の構成層を形成する材料として、無機固体電解質、活物質及びバインダー(結着剤)等を含有する材料が、提案されている。
例えば、特許文献1には、無機固体電解質、反応性基を有するポリマーで構成されたバインダー粒子、及び分散媒を含み、かつ、架橋剤及び架橋促進剤から選択される少なくとも1種の成分を含む固体電解質組成物が記載されている。この固体電解質組成物は、使用に際して、無機固体電解質若しくは活物質の粒子に固着したバインダー粒子を架橋剤又は架橋促進剤により硬化する。また、特許文献2には、無機固体電解質及び平均粒径30〜300nmの粒子状ポリマーからなる結着剤を含有するスラリーが記載されている。特許文献3には、無機固体電解質と、特定のマクロモノマー由来の構成成分を含み、かつ2環以上の環構造を含むポリマーで構成されたバインダーとを含有する固体電解質組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/129427号
【特許文献2】国際公開第2012/173089号
【特許文献3】国際公開第2017/131093号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全固体二次電池の構成層は、通常、無機固体電解質、バインダー粒子、更には活物質等の固体粒子で形成される。この場合、構成層を形成する材料は、固体粒子を分散媒等に分散させることにより、優れた分散性を示すことが望ましい。しかし、分散性のよい材料を用いても、構成層は固体粒子で形成されるため、固体粒子同士の界面接触が十分ではなく、界面抵抗が高くなる(イオン伝導度が低下する。)。一方、固体粒子同士の結着性が弱いと、集電体表面に形成された構成層が集電体から剥がれやすく、また、全固体二次電池の充放電(リチウムイオンの放出吸収)に伴う構成層、とりわけ活物質層の収縮膨張による固体粒子同士の接触不良が起こり、電気抵抗の上昇、更には電池性能の低下を招く。
【0006】
本発明は、優れた分散性を示す固体電解質組成物であって、全固体二次電池の構成層を形成する材料として用いることにより、得られる全固体二次電池において、固体粒子間の界面抵抗の上昇を抑えて固体粒子を強固に結着させ、優れた電池性能を実現できる固体電解質組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、この固体電解質組成物で構成した層を有する、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池を提供することを課題とする。更に、本発明は、上記固体電解質組成物を用いた固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、上記固体電解質組成物に用いられる粒子状バインダーの好適な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、固体電解質組成物において、後述する式(H−1)又は式(H−2)で表される結合部を側鎖に有する構成成分であって、更にClogP値が4以下で分子量が1000以下である構成成分を有する特定のポリマーを含んでなる粒子状バインダーを、無機固体電解質及び分散媒と併用することにより、優れた分散性を示すことを見出した。更に、この固体電解質組成物を全固体二次電池の構成層を形成する材料として用いることにより、固体粒子間の界面抵抗を抑制しつつ、固体粒子を強固に結着させた構成層を形成でき、全固体二次電池に優れた電池性能を付与できること、を見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0008】
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、
下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満である構成成分を有するポリマーを含む、平均粒径が5nm〜10μmの粒子状バインダーと、
分散媒とを含む固体電解質組成物。
【化1】
式中、X11、X12、X13及びX15は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X14はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示す。L11は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【0009】
<2>上記構成成分が下記式(R−1)又は式(R−2)で表わされる、<1>に記載の固体電解質組成物。
【化2】
式中、X21、X22、X23及びX25は各々独立にイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を示す。X24はヒドロキシ基又はスルファニル基を示す。R11〜R13及びR15〜R17は各々独立に水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。R14及びR18は各々独立に水素原子又は置換基を示す。L21〜L23及びL25は各々独立に炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数2〜16のアルケニレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、リン酸連結基若しくはホスホン酸連結基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。L24は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【0010】
<3>上記構成成分が下記式(R−21)又は式(R−22)で表わされる、<1>又は<2>に記載の固体電解質組成物。
【化3】
式中、X31、X32及びX35は各々独立にイミノ基又は酸素原子を示す。X33は酸素原子を示す。X34はヒドロキシ基を示す。Y11及びY12は各々独立にイミノ基又は酸素原子を示す。R21〜R23及びR25〜R27は各々独立に水素原子、シアノ基又はアルキル基を示す。R24及びR28は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はカルボキシ基を示す。L31〜L33及びL35は各々独立に炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。L34は炭素数2以下のアルキレン基を示す。
【0011】
<4>式(H−1)において、X11及びX12が各々独立にイミノ基を示し、かつX13が酸素原子を示し、又は、
式(H−2)において、X14がアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示し、X15がイミノ基を示し、L11が炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す、<1>に記載の無機固体電解質組成物。
<5>ポリマーが、上記構成成分を20質量%以上90質量%未満含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<6>ClogP値が2.5以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<7>ポリマーが、側鎖に炭素数6以上の基を有する構成成分を有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<8>ポリマーが、質量平均分子量1000以上のマクロモノマーに由来する構成成分を有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
【0012】
<9>マクロモノマーに由来する構成成分が、側鎖に下記式(H−21)又は式(H−22)で表わされる結合部を有する<8>に記載の固体電解質組成物。
【化4】
式中、X41、X42、X43及びX45は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X44はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示す。L41は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【0013】
<10>粒子状バインダーが、分散媒中で温度20℃、回転数100000rpmで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する成分と、この遠心分離処理に付しても沈降しない成分とを含み、
沈降する成分の含有量Xと沈降しない成分の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
Y/(X+Y)≦0.10
<11>ポリマーが下記官能基群(a)から選択される少なくとも1つの官能基を有する、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
官能基群(a)
カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、イソシアナート基、オキセタン基、エポキシ基、シリル基
<12>無機固体電解質が下記式(1)で表される、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
a1b1c1d1e1 式(1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示す。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。
<13>分散媒が、ケトン化合物、エステル化合物、芳香族化合物及び脂肪族化合物から選択される少なくとも1種の分散媒を含む、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<14>周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有する、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<15>上記<1>〜<14>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物で構成した層を有する固体電解質含有シート。
<16>上記<14>に記載の固体電解質組成物で構成した活物質層を有する全固体二次電池用電極シート。
<17>正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層が、<1>〜<14>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物で構成した層である、全固体二次電池。
<18>上記<1>〜<14>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を製膜する、固体電解質含有シートの製造方法。
<19>上記<18>に記載の製造方法を介して全固体二次電池を製造する、全固体二次電池の製造方法。
【0014】
<20>下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満である構成成分を有するポリマーを含む、平均粒径が5nm〜10μmの粒子状バインダーの製造方法であって、
側鎖に官能基を有する官能性ポリマーと、この官能基と反応して上記結合部を形成する反応性基を有する側鎖形成化合物とを反応させる工程を有する、製造方法。
【化5】
式中、X11、X12、X13及びX15は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X14はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示す。L11は炭素数4以下のアルキレン基若しくはアルケニレン基を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、優れた分散性を示す固体電解質組成物であって、全固体二次電池の構成層を形成する材料として用いることにより、得られる全固体二次電池において、固体粒子間の界面抵抗の上昇を抑えて固体粒子を強固に結着させ、優れた電池性能を実現できる固体電解質組成物を提供できる。この固体電解質組成物で構成した層を有する、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池を提供できる。更に、本発明は、上記固体電解質組成物を用いた固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法を提供できる。また、本発明は、上記固体電解質組成物に用いられる粒子状バインダーの好適な製造方法を提供できる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池を模式化して示す縦断面図である。
図2図2は実施例で作製した全固体二次電池(コイン電池)を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の説明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換又は無置換を明記していない置換基、連結基等(以下、置換基等という。)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。よって、本明細書において、単に、YYY基と記載されている場合であっても、このYYY基は、置換基を有しない態様に加えて、更に置換基を有する態様も包含する。これは置換又は無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
本明細書において、特定の符号で示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
【0018】
[固体電解質組成物]
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質と、後述するポリマーを含む、5nm〜10μmの粒子状バインダーと、分散媒とを含有する。この固体電解質層組成物は後述する無機固体電解質を含有する点で無機固体電解質含有組成物ともいう。
この固体電解質組成物においては、無機固体電解質及び粒子状バインダーが固体状態で分散媒中に分散された分散状態(サスペンジョン)にある。この固体電解質組成物は、このような分散状態にあればよいが、好ましくはスラリーである。この粒子状バインダーは、構成層、又は後述する固体電解質組成物の塗布乾燥層としたときに、無機固体電解質等の固体粒子同士、更には隣接する層(例えば集電体)と固体粒子とを、結着させることができればよく、固体電解質組成物の上記分散状態において、固体粒子同士を必ずしも結着させていなくてもよい。
【0019】
本発明の固体電解質組成物において、分散媒中に無機固体電解質と粒子状バインダーとが共存していると、無機固体電解質を高度かつ安定して分散させることができ、固体電解質組成物の分散性を高めることができる。この固体電解質組成物で全固体二次電池の構成層を形成すると、固体粒子同士、更には固体粒子及び集電体等を、強固に結着させることができる。その理由の詳細は、まだ定かではないが、次のように考えられる。
本発明の固体電解質組成物が含有する粒子状バインダーは、後述するように、ClogP値が4以下で分子量が1000未満の、後述する式(H−1)又は式(H−2)で表わされる特定の結合部を有する構成成分を有するポリマーを含んで形成される。そのため、この構成成分におけるClogP値、分子量及び特定の結合部が互いに相俟って、分散媒中における、無機固体電解質等の固体粒子に対する親和性が向上すると考えられる。その結果、固体粒子を高度かつ安定して分散させることができる。更に、固体粒子に対する親和性を維持しつつ全固体二次電池の構成層を形成できるため、得られる構成層は、固体粒子同士を強固に結着させることができ、また集電体上に構成層を形成する場合には集電体と固体粒子とを強固に結着させることもできる。
一方、粒子状バインダーは、その形態が粒子であるため、非粒子状バインダー(例えば固体電解質組成物中における液状バインダー(溶解性バインダー))に比して、固体粒子の表面を過剰に被覆(付着)することなく、イオン伝導パスを確保できる。そのため、固体粒子に対する親和性が高くても、固体粒子間の界面抵抗を低く抑えることができる。
このように、固体電解質組成物の高度かつ安定な分散性と、固体粒子間等の強固な結着性とを、界面抵抗の上昇を抑えつつも、高い水準で両立(維持)できる。よって、本発明の固体電解質組成物で構成した構成層は、固体粒子同士の接触状態(イオン伝導パスの構築量)及び固体粒子同士等の結着力がバランスよく改善され、イオン伝導パスを構築しつつも、固体粒子同士等が強固な結着性で結着し、しかも固体粒子間の界面抵抗が小さくなると考えられる。このような優れた特性を示す構成層を備えた各シート又は全固体二次電池は、電気抵抗の上昇を抑えて高いイオン伝導度を示し、更にはこの優れた電池性能を、充放電を繰り返したとしても、維持できる。
【0020】
本発明において、固体電解質組成物の分散性が優れるとは、固体粒子を分散媒中に高度かつ安定して分散させた状態をいい、例えば、後述する実施例における「分散性試験」において、評価ランク「5」以上の分散性を示すことをいう。
【0021】
本発明の固体電解質組成物は、分散質として、無機固体電解質に加えて、活物質、必要により導電助剤等を含有する態様も包含する(この態様の組成物を電極層用組成物という。)。
【0022】
本発明の固体電解質組成物は、非水系組成物である。本発明において、非水系組成物とは、水分を含有しない態様に加えて、含水率(水分含有量ともいう。)が50ppm以下である形態をも包含する。非水系組成物において、含水率は、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることが更に好ましい。含水量は、固体電解質組成物中に含有している水の量(固体電解質組成物に対する質量割合)を示す。含水量は、固体電解質組成物を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、カールフィッシャー滴定により求めることができる。
【0023】
以下、本発明の固体電解質組成物が含有する成分及び含有しうる成分について説明する。
【0024】
<無機固体電解質>
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF、LiFSI、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に制限されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
【0025】
本発明において、無機固体電解質は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有する。無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。
例えば、無機固体電解質としては、(i)硫化物系無機固体電解質、(ii)酸化物系無機固体電解質、(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質、及び、(iv)水素化物系固体電解質が挙げられ、高いイオン伝導度と粒子間界面接合の容易さの点で、硫化物系無機固体電解質が好ましい。
本発明の全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池である場合、無機固体電解質はリチウムイオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
【0026】
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
【0027】
硫化物系無機固体電解質としては、例えば、下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性硫化物系無機固体電解質が挙げられる。

a1b1c1d1e1 式(1)

式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。d1は2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
【0028】
各元素の組成比は、下記のように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合比を調整することにより制御できる。
【0029】
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、P及びSを含有するLi−P−S系ガラス、又はLi、P及びSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(LiS)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS、SnS、GeS)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
【0030】
Li−P−S系ガラス及びLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは60:40〜90:10、より好ましくは68:32〜78:22である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
【0031】
具体的な硫化物系無機固体電解質の例として、原料の組み合わせ例を下記に示す。例えば、LiS−P、LiS−P−LiCl、LiS−P−HS、LiS−P−HS−LiCl、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SiS−LiCl、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。ただし、各原料の混合比は問わない。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法、溶液法及び溶融急冷法を挙げられる。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0032】
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
【0033】
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbbbmbnb(MbbはAl、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)、Lixcyccczcnc(MccはC、S、Al、Si、Ga、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0<xc≦5を満たし、ycは0<yc≦1を満たし、zcは0<zc≦1を満たし、ncは0<nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3−2xe)eexeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO−LiSO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0034】
(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質
ハロゲン化物系無機固体電解質は、ハロゲン原子を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
ハロゲン化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiCl、LiBr、LiI、ADVANCED MATERIALS,2018,30,1803075に記載のLiYBr、LiYCl等の化合物が挙げられる。中でも、LiYBr、LiYClを好ましい。
【0035】
(iV)水素化物系無機固体電解質
水素化物系無機固体電解質は、水素原子を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
水素化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiBH、Li(BHI、3LiBH−LiCl等が挙げられる。
【0036】
無機固体電解質は粒子であることが好ましい。この場合、無機固体電解質の平均粒径(体積平均粒子径)は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。無機固体電解質の平均粒径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJIS Z 8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
【0037】
無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機固体電解質の、固体電解質組成物中の含有量は、特に制限されないが、分散性、界面抵抗の低減及び結着性の点で、固形分100質量%において、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99.99質量%以下であることが好ましく、99.95質量%以下であることがより好ましく、99.9質量%以下であることが特に好ましい。ただし、固体電解質組成物が後述する活物質を含有する場合、固体電解質組成物中の無機固体電解質の上記含有量は、無機固体電解質と活物質との合計含有量とする。
本発明において、固形分(固形成分)とは、固体電解質組成物を、1mmHgの気圧下、窒素雰囲気下150℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発若しくは蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
【0038】
<粒子状バインダー>
本発明の固体電解質組成物は、後述するポリマーを含む、平均粒径が5nm〜10μmの粒子状バインダーを含有する。
粒子状バインダーは、固体電解質組成物(分散媒中)において、粒子形状を維持して分散している。本発明の固体電解質組成物は、粒子形状及び平均粒径を維持して粒子状バインダーが分散媒に分散している態様に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で粒子状バインダーの一部が分散媒に溶解している態様を包含する。
粒子状バインダーは、ポリマー粒子からなり、その形状は、粒子状であれば特に制限されず、固体電解質組成物、固体電解質含有シート又は全固体二次電池の構成層中において、球状であっても不定形状であってもよい。
【0039】
粒子状バインダーの平均粒径は、5nm以上10μm以下である。これにより、固体電解質組成物の分散性と固体粒子間等の結着性とイオン伝導性とを改善できる。分散性、結着性及びイオン伝導性を更に改善できる点で、平均粒径は、10nm以上5μm以下が好ましく、15nm以上1μm以下がより好ましく、20nm以上0.5μm以下が更に好ましい。
粒子状バインダーの平均粒径は、無機固体電解質と同様にして測定できる。
なお、全固体二次電池の構成層における粒子状バインダーの平均粒径は、例えば、電池を分解して粒子状バインダーを含有する構成層を剥がした後、その構成層について測定を行い、予め測定していた粒子状バインダー以外の粒子の平均粒径の測定値を排除することにより、測定することができる。
粒子状バインダーの平均粒径は、例えば、粒子状バインダー分散液を調製する際に用いる分散媒の種類、粒子状バインダーを構成するポリマー中の構成成分、例えばマクロモノマーに由来する構成成分の含有量等により、調整できる。
【0040】
粒子状バインダーを構成するポリマーの質量平均分子量は、特に限定されないが、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが特に好ましい。上限としては、1,000,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましい。
【0041】
粒子状バインダーは、後述する構成成分を有するポリマーを含んで構成されるものであれば特に限定されない。粒子状バインダーを構成するポリマーは、後述する構成成分を有すること以外は、全固体二次電池用の固体電解質組成物に通常用いられるポリマーを用いることができる。例えば、後述する構成成分を有するポリマーであって、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂、含フッ素樹脂、炭化水素系熱可塑性樹脂、ポリビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂又は(メタ)アクリル樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0042】
本発明において、ポリマーの主鎖とは、ポリマーを構成する、それ以外のすべての分子鎖が、主鎖に対してペンダントとみなしうる線状分子鎖をいう。ポリマーがマクロモノマーに由来する構成成分を有する場合、マクロモノマーの質量平均分子量にもよるが、典型的には、ポリマーを構成する分子鎖のうち最長鎖が主鎖となる。ただし、ポリマー末端が有する官能基は主鎖に含まない。
また、ポリマーの側鎖とは、主鎖以外の分子鎖をいい、短分子鎖及び長分子鎖を含む。本発明において、ポリマーの側鎖は、架橋構造(他の分子鎖と結合している構造)を形成せず、未架橋の分子鎖(グラフト鎖、ペンダント鎖等)であることが、分散性及び結着性の点で、好ましい。
【0043】
(逐次重合系のポリマー)
粒子状バインダーを構成するポリマーのうち、逐次重合(重縮合、重付加若しくは付加縮合)系のポリマーである場合、その構造は、特に限定されないが、下記式(I)で表される部分構造を(好ましくは主鎖中に)有するポリマーが好ましい。
【0044】
【化6】
【0045】
式(I)中、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0046】
式(I)で表される部分構造を有するポリマーとしては、例えば、アミド結合を有するポリマー(ポリアミド樹脂)、ウレア結合を有するポリマー(ポリウレア樹脂)、イミド結合を有するポリマー(ポリイミド樹脂)、ウレタン結合を有するポリマー(ポリウレタン樹脂)等が挙げられる。
【0047】
Rにおける有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。中でもRは水素原子が好ましい。
【0048】
逐次重合系のポリマーは、下記式(I−1)〜(I−4)のいずれかで表される構成成分を2種以上(好ましくは2〜8種、より好ましくは2〜4種、更に好ましくは3又は4種)組み合わせてなる主鎖、又は下記式(I−5)で表されるカルボン酸二無水物と下記式(I−6)で表される構成成分を導くジアミン化合物とを逐次重合してなる主鎖を有するポリマーが好ましい。各構成成分の組み合わせは、ポリマー種に応じて適宜に選択される。構成成分の組み合わせにおける1種の構成成分とは、下記のいずれか1つの式で表される構成成分の種類数を意味し、1つの下記式で表される構成成分を2種有していても、2種の構成成分とは解釈しない。
【0049】
【化7】
【0050】
式中、RP1及びRP2は、それぞれ分子量又は質量平均分子量が20以上200,000以下の分子鎖を示す。この分子鎖の分子量は、その種類等によるので一義的に決定できないが、例えば、30以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましく、150以上が特に好ましい。上限としては、100,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。分子鎖の分子量は、ポリマーの主鎖に組み込む前の原料化合物について測定する。
P1及びRP2としてとりうる上記分子鎖は、特に制限されないが、炭化水素鎖、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖が好ましく、炭化水素鎖又はポリアルキレンオキシド鎖がより好ましく、炭化水素鎖が更に好ましい。
【0051】
P1及びRP2としてとりうる炭化水素鎖は、炭素原子及び水素原子から構成される炭化水素の鎖を意味し、より具体的には、炭素原子及び水素原子から構成される化合物の少なくとも2つの原子(例えば水素原子)又は基(例えばメチル基)が脱離した構造を意味する。ただし、本発明において、炭化水素鎖は、例えば下記式(M2)で表される炭化水素基のように、鎖中に酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含む基を有する鎖も包含する。炭化水素鎖の末端に有し得る末端基は炭化水素鎖には含まれないものとする。この炭化水素鎖は、炭素−炭素不飽和結合を有していてもよく、脂肪族環及び/又は芳香族環の環構造を有していてもよい。すなわち、炭化水素鎖は、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素から選択される炭化水素で構成される炭化水素鎖であればよい。
【0052】
このような炭化水素鎖としては、上記分子量を満たすものであればよく、低分子量の炭化水素基からなる鎖と、炭化水素ポリマーからなる炭化水素鎖(炭化水素ポリマー鎖ともいう。)との両炭化水素鎖を包含する。
低分子量の炭化水素鎖は、通常の(非重合性の)炭化水素基からなる鎖であり、この炭化水素基としては、例えば、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基が挙げられ、具体的には、アルキレン基(炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい)、アリーレン基(炭素数は6〜22が好ましく、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい)、又はこれらの組み合わせからなる基が好ましい。RP2としてとりうる低分子量の炭化水素鎖を形成する炭化水素基としては、アルキレン基がより好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基が更に好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基が特に好ましい。
【0053】
脂肪族の炭化水素基としては、特に制限されず、例えば、下記式(M2)で表される芳香族の炭化水素基の水素還元体、公知の脂肪族ジイソソアネート化合物が有する部分構造(例えばイソホロンからなる基)等が挙げられる。また、後掲する各例示の構成成分が有する炭化水素基も挙げられる。
芳香族の炭化水素基は、例えば、後掲する各例示の構成成分が有する炭化水素基が挙げられ、フェニレン基又は下記式(M2)で表される炭化水素基が好ましい。
【0054】
【化8】
【0055】
式(M2)中、Xは、単結合、−CH−、−C(CH−、−SO−、−S−、−CO−又は−O−を示し、結着性の観点で、−CH−または−O−が好ましく、−CH−がより好ましい。ここで例示した上記アルキレン基及びアルキレン基は、置換基Z、好ましくはハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)で置換されていてもよい。
M2〜RM5は、それぞれ、水素原子又は置換基を示し、水素原子が好ましい。RM2〜RM5としてとりうる置換基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、−ORM6、―N(RM6、−SRM6(RM6は置換基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示す。)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)が挙げられる。−N(RM6としては、アルキルアミノ基(炭素数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい)又はアリールアミノ基(炭素数は、6〜40が好ましく、6〜20がより好ましい)が挙げられる。
【0056】
炭化水素ポリマー鎖は、重合性の炭化水素が(少なくとも2つ)重合してなるポリマー鎖であって、上述の低分子量の炭化水素鎖よりも炭素原子数が大きい炭化水素ポリマーからなる鎖であれば特に制限されないが、好ましくは30個以上、より好ましくは50個以上の炭素原子から構成される炭化水素ポリマーからなる鎖である。炭化水素ポリマーを構成する炭素原子数の上限は、特に制限されず、例えば3,000個とすることができる。この炭化水素ポリマー鎖は、主鎖が、上記炭素原子数を満たす、脂肪族炭化水素で構成される炭化水素ポリマーからなる鎖が好ましく、脂肪族飽和炭化水素若しくは脂肪族不飽和炭化水素で構成される重合体(好ましくはエラストマー)からなる鎖であることがより好ましい。重合体としては、具体的には、主鎖に二重結合を有するジエン系重合体、及び、主鎖に二重結合を有しない非ジエン系重合体が挙げられる。ジエン系重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレンとイソプレンの共重合体(好ましくはブチルゴム(IIR))、ブタジエン重合体、イソプレン重合体及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合体等が挙げられる。非ジエン系重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体及びスチレン−エチレン−ブチレン共重合体等のオレフィン系重合体、並びに、上記ジエン系重合体の水素還元物が挙げられる。
【0057】
炭化水素鎖となる炭化水素は、その末端に反応性基を有することが好ましく、縮重合可能な末端反応性基を有することがより好ましい。縮重合又は重付加可能な末端反応性基は、縮重合又は重付加することにより、上記各式のRP1又はRP2に結合する基を形成する。このような末端反応性基としては、イソシネート基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基及び酸無水物等が挙げられ、中でもヒドロキシ基が好ましい。
【0058】
ポリアルキレンオキシド鎖(ポリアルキレンオキシ鎖)としては、公知のポリアルキレンオキシ基からなる鎖が挙げられる。ポリアルキレンオキシ鎖中のアルキレンオキシ基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、2又は3であること(ポリエチレンオキシ鎖又はポリプロピレンオキシ鎖)が更に好ましい。ポリアルキレンオキシ鎖は、1種のアルキレンオキシ基からなる鎖でもよく、2種以上のアルキレンオキシ基からなる鎖(例えば、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基からなる鎖)でもよい。
ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖としては、公知のポリカーボネート又はポリエステルからなる鎖が挙げられる。
ポリアルキレンオキシ鎖、ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖は、それぞれ、末端にアルキル基(炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい)を有することが好ましい。
P1及びRP2としてとりうるポリアルキレンオキシ鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖の末端は、RP1及びRP2として上記各式で表される構成成分に組み込み可能な通常の化学構造に適宜に変更することができる。例えば、ポリアルキレンオキシ鎖は末端酸素原子が取り除かれて上記構成成分のRP1又はRP2として組み込まれる。
【0059】
分子鎖が含むアルキル基の内部若しくは末端に、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、カルボニル基(>C=O)、イミノ基(>NR:Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数6〜10のアリール基)を有していてもよい。
上記各式において、RP1及びRP2は2価の分子鎖であるが、少なくとも1つの水素原子が−NH−CO−、−CO−、−O−、−NH−又は−N<で置換されて、3価以上の分子鎖となっていてもよい。
【0060】
P1は、上記分子鎖の中でも、炭化水素鎖であることが好ましく、低分子量の炭化水素鎖であることがより好ましく、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基からなる炭化水素鎖が更に好ましく、芳香族の炭化水素基からなる炭化水素鎖が特に好ましい。
P2は、上記分子鎖の中でも、低分子量の炭化水素鎖(より好ましくは脂肪族の炭化水素基)、又は低分子量の炭化水素鎖以外の分子鎖が好ましい。
【0061】
式(I−5)において、RP3は芳香族若しくは脂肪族の連結基(4価)を示し、下記式(i)〜(iix)のいずれかで表される連結基が好ましい。
【0062】
【化9】
【0063】
式(i)〜(iix)中、Xは単結合又は2価の連結基を示す。2価の連結基としては、炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン)が好ましい。プロピレンとしては、1,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロパンジイルが好ましい。Lは−CH=CH−又は−CH−を示す。R及びRはそれぞれ水素原子又は置換基を表す。各式において、*は式(1−5)中のカルボニル基との結合部位を示す。R及びRとして採りうる置換基としては、特に制限されず、後述する置換基Zが挙げられ、アルキル基(炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい)又はアリール基(炭素数は6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が更に好ましい)が好ましく挙げられる。
【0064】
P1、RP2及びRP3は、それぞれ、置換基を有していてもよい。この置換基としては、特に制限されず、例えば、後述する置換基Zが挙げられ、RM2として採りうる上記置換基が好適に挙げられる。
【0065】
上記各式で表される構成成分の具体例としては、特に制限されないが、後述する、各結合を有するポリマーで挙げた対応する化合物に由来するものが挙げられる。
【0066】
逐次重合系ポリマーが上記式(I−1)〜式(I−6)のいずれかで表される構成成分を有する場合、その含有率は、特に制限されず、後述する構成成分(K)等の含有率を考慮して適宜に設定できる。例えば、式(I−1)、式(I−2)又は式(I−5)で表される構成成分の合計含有率と、式(I−3)、式(I−4)又は式(I−6)で表される構成成分の合計とは、モル比で、40〜60:60〜40の範囲に設定される。ただし、後述する、構成成分(K)、側鎖に炭素数が6以上の基を有する構成成分及びマクロモノマーに由来する構成成分が上記各式で規定する構成成分にも相当する場合、上記合計含有率には、これら構成成分の含有率を算入する。
【0067】
(アミド結合を有するポリマー)
アミド結合を有するポリマーとして、ポリアミドなどが挙げられる。
ポリアミドは、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物とを縮合重合するか、ラクタムを開環重合することによって得ることができる。
ジアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1−メチルエチルジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノヘキシル)メタンなどの脂肪族ジアミン化合物、パラキシリレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。また、ポリプロピレンオキシ鎖を有するジアミンとして、例えば、市販品として、「ジェファーミン」シリーズ(商品名、ハンツマン社製、三井化学ファイン社製)を用いることができる。「ジェファーミン」シリーズの例として、ジェファーミンD−230、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000、ジェファーミンXTJ−510、ジェファーミンXTJ−500、ジェファーミンXTJ−501、ジェファーミンXTJ−502、ジェファーミンHK−511、ジェファーミンEDR−148、ジェファーミンXTJ−512、ジェファーミンXTJ−542、ジェファーミンXTJ−533、ジェファーミンXTJ−536等が挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカジオン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、パラキシリレンジカルボン酸、メタキシリレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
ジアミン化合物及びジカルボン酸化合物は、それぞれ、1種又は2種以上を用いることができる。また、ポリアミドにおいて、ジアミン化合物及びジカルボン酸化合物の組み合わせは特に限定されない。
ラクタムとしては、特に限定されず、ポリアミドを形成する通常のラクタムを特に限定されることなく用いることができる。
【0068】
(ウレア結合を有するポリマー)
ウレア結合を有するポリマーとしてはポリウレアが挙げられる。ジイソシアネート化合物とジアミン化合物とをアミン触媒存在下で縮合重合することによってポリウレアを合成することができる。
ジイソシアネート化合物の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイルジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物;などが挙げられる。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が好ましい。
ジアミン化合物の具体例としては、上述の化合物例等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物及びジアミン化合物は、それぞれ、1種又は2種以上を用いることができる。また、ポリウレアにおいて、ジイソシアネート化合物及びジアミン化合物の組み合わせは特に限定されない。
【0069】
(イミド結合を有するポリマー)
イミド結合を有するポリマーとしては、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを付加反応させてポリアミック酸を形成した後、閉環することで得られる。
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)及びピロメリット酸二無水物(PMDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
テトラカルボン酸成分としては、s−BPDA及びPMDAの少なくとも一方を含むことが好ましく、例えばテトラカルボン酸成分100モル%中にs−BPDAを好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上含む。テトラカルボン酸二無水物は、剛直なベンゼン環を有していることが好ましい。
ジアミン化合物の具体例としては、上述の化合物例等が挙げられる。
ジアミン化合物は、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリカーボネート鎖、又はポリエステル鎖の両末端にアミノ基を有する構造が好ましい。
テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物は、それぞれ、1種又は2種以上を用いることができる。また、ポリイミドにおいて、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物及びジアミン化合物の組み合わせは特に限定されない。
【0070】
(ウレタン結合を有するポリマー)
ウレタン結合を有するポリマーとしては、ポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とをチタン、スズ、ビスマス触媒存在下で縮合重合することで得られる。
ジイソシアネート化合物としては、上述の化合物例が挙げられる。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、平均分子量200、400、600、1000、1500、2000、3000、7500のポリエチレングリコール)、ポリプロピレングリコール(例えば、平均分子量400、700、1000、2000、3000、又は4000のポリプロピレングリコール)、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−ビス−β−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加体などが挙げられる。ジオール化合物は市販品としても入手可能であり、例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、ポリアルキレンジオール化合物、シリコーンジオール化合物が挙げられる。
【0071】
ジオール化合物としては、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖、ポリブタジエン鎖、ポリイソプレン鎖、ポリアルキレン鎖及びシリコーン鎖の少なくとも1種を有していることが好ましい。また、ジオール化合物は、硫化物系無機固体電解質又は活物質との吸着性向上の観点から、炭素−炭素不飽和結合又は極性基(アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、チオール基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基、リン酸基、ニトリル基、アミノ基、双性イオン含有基、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド)を有していることが好ましい。ジオール化合物は、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を用いることができる。炭素−炭素不飽和結合を含有するジオール化合物は、市販品としてブレンマーGLM(日油社製)、特開2007−187836号公報に記載の化合物を好適に用いることができる。
【0072】
ポリウレタンの場合、重合停止剤として、モノアルコール又はモノアミンを用いることができる。重合停止剤は、ポリウレタン主鎖の末端部位に導入される。ソフトセグメントをポリウレタン末端に導入する手法として、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレンモノアルキルエーテルが好ましい)、ポリカーボネートジオールモノアルキルエーテル、ポリエステルジオールモノアルキルエーテル、ポリエステルモノアルコールなどを用いることができる。
また、極性基若しくは炭素−炭素不飽和結合を有するモノアルコール又はモノアミンを用いることで、ポリウレタン主鎖の末端に極性基又は炭素−炭素不飽和結合の導入が可能である。例えば、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシベンジルアルコール、3−メルカプト−1プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1−ヘキサノール、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−シアノエタノール、3−ヒドロキシグルタロニトリル、2−アミノエタノール、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−メタクリレンジアミンなどが挙げられる。
ジイソシアネート化合物、ジオール化合物、重合停止剤等は、それぞれ、1種又は2種以上を用いることができる。
また、ポリウレタンにおいて、ジイソシアネート化合物及びジオール化合物の組み合わせは特に限定されない。
【0073】
本発明においては、逐次重合系ポリマーの繰り返し単位を形成する構成成分(逐次重合する原料化合物)の少なくとも1つとして、後述する式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満の構成成分(以下、構成成分(K)ということがある。)を有している。この構成成分(K)は、ポリマーの主鎖に組み込まれる分子鎖として上記原料化合物が逐次重合してなる分子鎖であること以外は、後述する、付加重合系ポリマーにおける構成成分(K)と同義であるものが好ましい。
このような構成成分(K)を導く原料化合物としては、例えば、後述する式(R−1)における−L21−X21−C(=X23)−X22−L22−R14で表わされる基を有する原料化合物、式(R−2)における−L23−C(X24)−L24)−X25−L25−R18で表わされる基を有する原料化合物等が挙げられる。より具体的には、上記−L21−X21−C(=X23)−X22−L22−R14で表わされる基又は−L23−C(X24)−L24)−X25−L25−R18で表わされる基を有するRP1、RP2若しくはRP3を有する上記式(I−1)〜式(I−6)で表される構成成分を導く化合物、更には後述する、式(R−1)(好ましくは式(R−21))又は式(R−2)(好ましくは式(R−22))で表される構成成分の両末端(結合部)に、−CO−、−NHCO−、−O−又は−NH−を有する構成成分を導く化合物等が挙げられる。例えば、ポリウレタン樹脂である場合、構成成分(K)を導くことのできるイソシアネート化合物若しくはジオール化合物が挙げられ、具体的には後述する実施例で用いるジオール化合物M−18が挙げられる。
逐次重合系のポリマーは、側鎖に炭素数が6以上の基を有する構成成分、及び/又は、マクロモノマーに由来する構成成分を有することが好ましい。このような構成成分は、炭素数が6以上の基を有する原料化合物、高分子鎖を有する原料化合物により、逐次重合系のポリマーに導入できる。側鎖に炭素数が6以上の基を有する構成成分としては、置換基として炭素数が6以上の基を有するRP1、RP2若しくはRP3を有する上記式(I−1)〜式(I−6)で表される構成成分を導く化合物等が挙げられる。なお、炭素数が6以上の基については後述する。逐次重合系のポリマーに用いるマクロモノマーは、後述する付加重合系ポリマーが有するマクロモノマー(由来の構成成分)に逐次重合可能な官能基を導入したもの、更には、重合鎖を有する原料化合物が挙げられ、逐次重合可能な官能基を重合鎖の端部に有する原料化合物が好ましい。このような原料化合物としては、RP1又はRP2として採りうる上述の分子鎖のうち質量平均分子量が1000以上の分子鎖を有する式(I−1)〜式(I−4)及び式(I−6)のいずれかで表される構成成分を導く化合物、例えば末端変性炭化水素ポリマー等が挙げられ、(非)ジエン系エラストマーの末端変性物が好ましく、具体的には後述する実施例で用いるマクロモノマー(MM−4)が挙げられる。
また、逐次重合系のポリマーは上述の各構成成分以外の構成成分を有していてもよい。
逐次重合系のポリマーにおいて、構成成分(K)、側鎖に炭素数が6以上の基を有する構成成分及びマクロモノマーに由来する構成成分の含有率は、それぞれ、特に限定されず、好ましくは後述する(メタ)アクリル樹脂における含有率と同じである。
【0074】
(付加重合系ポリマー)
粒子状バインダーを構成するポリマーがポリビニル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂等の付加重合系ポリマーである場合、その繰り返し単位の1種として後述する構成成分(K)を有する。この構成成分(K)は、ポリマーに組み込まれた際に下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満の構成成分である。
構成成分(K)におけるClogP値は4以下である。後述する特定の結合部を有し、分子量が1000未満であることと相まってClogP値が4以下である構成成分(K)を有するポリマーを含有する粒子状バインダーは、上述のように、固体電解質組成物の分散性と固体粒子同士等の結着性とを改善できる。これらをより高い水準で改善できる点で、構成成分(K)のClogP値は、2.5以下が好ましく、2.4以下がより好ましく、2.3以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、−10以上が実際的であり、−2以上が好ましい。
本発明において、CLogP値とは、1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数LogPを計算によって求めた値である。CLogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知のものを用いることができるが、特に断らない限り、本発明ではPerkinElmer社のChemBioDrawUltra(バージョン13.0)を用いて構造を描画し、算出した値とする。
【0075】
構成成分(K)の分子量は、1000未満である。後述する特定の結合部を有し、ClogP値が4以下であることと相まって分子量が1000未満である低分子量の構成成分(K)を有するポリマーを含有する粒子状バインダーは、固体電解質組成物の分散性と固体粒子同士等の結着性とを改善できる。これらをより高い水準で改善できる点で、構成成分(K)の分子量は、700以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、100以上が好ましく、200以上がより好ましい。本発明において構成成分(K)の分子量は、ポリマーに組み込まれた構成成分(K)を導く化合物(ポリマーから取り出した構成成分(K)、例えば後述する具体例に示した構成成分(K)に対応する化合物)の分子量を意味する。
【0076】
構成成分(K)は、ポリマー中において、下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、好ましくは式(H−1)で表わされる結合部を側鎖に有する。
【化10】
【0077】
式中、波線部は結合位置を示し、いずれの結合位置がポリマーの主鎖側に結合する結合部であってもよい。ポリマーの主鎖側に結合する結合位置は、例えば、式(H−1)においてX11が好ましく、式(H−2)においてX14が結合する炭素原子が好ましい。
【0078】
11、X12、X13及びX15は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示す。X11、X12及びX15としてとりうるイミノ基としては−NR−が挙げられ、X13としてとりうるイミノ基としては=NRが挙げられる。Rは水素原子又は置換基を示す。Rは、−NR−であっても=NRであっても、水素原子が好ましい。Rとしてとりうる置換基としては、特に限定されないが、後述する置換基Tから選択される基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基(好ましくは、ピリジン環基、アゾリジン環基、アゾール環基(窒素を1つ以上含む複素5員環化合物から水素原子を1つ除去してなる環基)、オキソール環基(ジオキソランから水素原子を1つ除去してなる環基)、チオフェン環基、イミダゾール環基、イミダゾリン環基)等が挙げられる。
11、X12、X13及びX15としては、それぞれ、イミノ基、酸素原子、硫黄原子が好ましい。X11及びX12としては、それぞれ、イミノ基又は酸素原子がより好ましく、イミノ基が更に好ましい。X13としては、酸素原子がより好ましい。X15としては、イミノ基又は酸素原子がより好ましく、イミノ基が更に好ましい。
【0079】
14は、アミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示し、ヒドロキシ基又はスルファニル基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。X14としてとりうるアミノ基は、特に限定されないが、後述する置換基Tにおけるアミノ基と同義である。
【0080】
11は、連結基であって、炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数4以下のアルケニレン基を示し、好ましくは炭素数4以下のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2以下のアルキレン基である。炭素数4以下のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、1−若しくは2−メチルプロピレン等が挙げられ、メチレン、エチレン又はブチレンが好ましく、メチレンがより好ましい。炭素数4以下のアルケニレン基としては、ビニレン、プロペニレン、ブテニレン等が挙げられる。
【0081】
上記式(H−1)で表わされる結合部において、X11、X12及びX13の組み合わせは、特に限定されず、X11及びX12がそれぞれイミノ基若しくは酸素原子であり、X13が酸素原子である組み合わせが好ましく、X11及びX12の一方がイミノ基で他方がイミノ基若しくは酸素原子であり、X13が酸素原子である組み合わせがより好ましく、X11がイミノ基でX12がイミノ基若しくは酸素原子であり、X13が酸素原子である組み合わせが更に好ましく、X11及びX12がイミノ基であり、X13が酸素原子である組み合わせが特に好ましい。このような組み合わせで示される結合部としては、具体的には、ウレア結合部、ウレタン結合部又はカーボネート結合部が挙げられ、ウレア結合部又はウレタン結合部が好ましく、ウレア結合部がより好ましい。ウレタン結合部の場合、窒素原子がポリマーの主鎖側に結合する結合位置となることが好ましい。
上記式(H−2)で表わされる結合部において、X14、X15及びL11の組み合わせは、特に限定されず、X15がイミノ基若しくは酸素原子であり、X14がアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基であり、L11が炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数4以下のアルケニレン基である組み合わせが好ましく、X15がイミノ基であり、X14がアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基であり、L11が炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数4以下のアルケニレン基である組み合わせがより好ましい。
【0082】
構成成分(K)は、ポリマーの主鎖に組み込まれる分子鎖を有する。この分子鎖は、構成成分(K)を導く重合性化合物が有する重合性基が重合してなる鎖である。この分子鎖としては、ポリマーの種類に応じて適宜に決定され、付加重合系ポリマーであれば、例えば、炭素鎖、通常エチレン鎖が挙げられ、逐次重合系ポリマーであれば、例えば、ポリオール鎖、ポリアミン鎖が挙げられる。本発明において、構成成分(K)を導く重合性化合物1分子中の重合性基の数は特に限定されないが、1〜4個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0083】
構成成分(K)は、この分子鎖と上記特定の結合部とが直接(連結基を介することなく)結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。本発明においては、分子鎖と上記特定の結合部とが連結基を介して結合する態様が好ましい。
このような連結基としては、特に限定されず、後述する式(R−1)のL21と同義であり、好ましくは、−CO−O−アルキレン基、−CO−N(R)−アルキレン基、−CO−O−アルキレン−O−アルキレン基、−CO−N(R)−アルキレン−O−アルキレン基が挙げられる。Rは上述の通りである。
【0084】
構成成分(K)は、上記特定の結合部に連結する末端基を有する。末端基としては水素原子又は置換基が挙げられ、置換基が好ましい。末端基としてとりうる置換基としては、特に限定されないが、後述する置換基Tから選択される基が挙げられ、好ましくは、後述する式(R−1)中の−L22−R14で表される基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基(好ましくは、ピリジン環基、アゾリジン環基、アゾール環基(窒素を1つ以上含む複素5員環化合物から水素原子を1つ除去してなる環基)、オキソール環基(ジオキソランから水素原子を1つ除去してなる環基)、チオフェン環基、イミダゾール環基、イミダゾリン環基)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アシル基等である。この末端基は、置換基として、後述する置換基Tから選択される基又は官能基群(a)から選択される官能基を更に有していてもよい。
【0085】
構成成分(K)のうち、付加重合系ポリマー、特にポリビニル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂に好適に用いられる構成成分について、具体的かつ詳細に説明する。
ポリビニル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂に用いられる構成成分は、上述した中でも、下記式(R−1)又は式(R−2)で表わされる構成成分が好ましい。
【0086】
【化11】
【0087】
式(R−1)で表わされる構成成分は、分子鎖としてエチレン鎖と、連結基として−L21−と、上記式(H−1)で表される結合部として−X21−C(=X23)−X22−と、末端基として−L22−R14とを有する。
また、式(R−2)で表わされる構成成分は、分子鎖としてエチレン鎖と、連結基としてL23と、上記式(H−2)で表される結合部として−C(X24)−L24−X25−と、末端基として−L25−R18とを有する。
【0088】
上記式(R−1)及び式(R−2)中、X21、X22、X23及びX25は各々独立にイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を示す。X21、X22、X23及びX25は、それぞれ、セレン原子をとらない点以外は、上記式(H−1)及び式(H−2)におけるX11、X12、X13及びX15と同義である。
24はヒドロキシ基又はスルファニル基を示し、アミノ基及びカルボキシ基をとらない点以外は、上記式(H−2)におけるX14と同義である。
24は、炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数4以下のアルケニレン基を示し、上記式(H−2)におけるL11と同義である。
21、X22及びX23の組み合わせは、上述の、X11、X12及びX13の組み合わせと同義であり、X24、L24及びX25の組み合わせは、上述の、X14、L11及びX15の組み合わせと同義である。
【0089】
11〜R13及びR15〜R17は各々独立に水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。R11〜R13及びR15〜R17としてとりうるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。R11〜R13及びR15〜R17としてとりうるアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜24のアルキル基が好ましく、1〜12のアルキル基がより好ましく、1〜6のアルキル基が更に好ましい。
11、R12、R15及びR16は、それぞれ、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。R13及びR17は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチルが更に好ましい。
【0090】
21〜L23及びL25は各々独立に炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数2〜16のアルケニレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ基(−N(R)−)、カルボニル基、リン酸連結基(−O−P(OH)(O)−O−)若しくはホスホン酸連結基(−P(OH)(O)−O−)、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。Rは上述の通りであり、近傍に存在する他の置換基、例えばR18と結合して環を形成していてもよい。
21〜L23及びL25としてとりうるアルキレン基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。L21〜L23及びL25としてとりうるアルケニレン基の炭素数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が更に好ましい。L21〜L23及びL25としてとりうるアリーレン基の炭素数は、6〜12が好ましい。L21〜L23及びL25としてこれらを組み合わせた連結基をとる場合、組み合わされる基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、例えば、2〜100個が好ましく、2〜6個がより好ましい。
【0091】
21〜L23及びL25は、それぞれ、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基が好ましい。
(メタ)アクリル樹脂に用いられる構成成分である場合、L21及びL23は、それぞれ、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数2〜16のアルケニレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、リン酸連結基若しくはホスホン酸連結基からなる群より選択される基若しくは原子を組み合わせた連結基(組み合わされる基の数は上述の通りである。)が好ましく、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基がより好ましく、少なくともカルボニル基と酸素原子とを組み合わせた連結基(エステル結合)又は少なくともカルボニル基とイミノ基とを組み合わせた連結基(アミド結合)が更に好ましく、カルボニル基−酸素原子−炭素数1〜16のアルキレン基からなる連結基又はカルボニル基−イミノ基−炭素数1〜16のアルキレン基からなる連結基が特に好ましい。
【0092】
22及びL25は、それぞれ、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数2〜16のアルケニレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基が好ましい。
22としては、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜24のアリーレン基がより好ましく、炭素数1〜16のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基がより一層好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基が特に好ましい。
25としては、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、カルボニル基、又は、これらを組み合わせた連結基が好ましい。組み合わされる基の数は上述の通りである。
【0093】
14及びR18は各々独立に水素原子又は置換基を示す。R14及びR18としてとりうる置換基としては、それぞれ、特に限定されないが、後述する置換基Tから選択される基又は官能基群(a)から選択される官能基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ヘテロ環基(好ましくは、ピリジン環基、アゾリジン環基、アゾール環基(窒素を1つ以上含む複素5員環化合物から水素原子を1つ除去してなる環基)、オキソール環基(ジオキソランから水素原子を1つ除去してなる環基)、チオフェン環基、イミダゾール環基、イミダゾリン環基)等が挙げられる。
ただし、−L22−R14及び−L25−R18がそれぞれ1種の置換基を示す場合、L22及びL25を置換基から水素原子を1つ除去した残基とし、R14及びR18を水素原子とする。例えば、後述する例示構成成分K−4(−L22−R14がヘキシル基を示す)において、−L22がヘキシレン基を示し、R14が水素原子を示すものとする。
また、−L22−R14及び−L25−R18がそれぞれ2種以上の基からなる場合、R14及び−L25−R18を末端の基とし、水素原子としない。例えば、後述する例示構成成分K−1(−L22−R14がベンジル基を示す)において、−L22−を−CH−C−、R14を水素原子と解釈するのではなく、−L22がメチレン基を示し、R14がフェニル基を示すものと解釈する。
【0094】
構成成分(K)は、下記式(R−21)又は式(R−22)で表わされる構成成分が好ましい。
【0095】
【化12】
【0096】
式(R−21)で表わされる構成成分は、分子鎖としてエチレン鎖と、連結基として−CO−Y11−L31−と、上記式(H−1)で表される結合部として−X31−C(=X33)−X32−と、末端基として−L32−R24とを有する。
また、式(R−22)で表わされる構成成分は、分子鎖としてエチレン鎖と、連結基として−CO−Y12−L33−と、上記式(H−2)で表される結合部として−C(X34)−L34−X35−と、末端基として−L35−R28とを有する。
【0097】
上記式(R−21)及び式(R−22)中、X31、X32及びX35は各々独立にイミノ基(−N(R)−:Rは上述の通り。)又は酸素原子を示す。X31、X32及びX35は、それぞれ、硫黄原子及びセレン原子をとらない点以外は、上記式(H−1)及び式(H−2)におけるX11、X12及びX15と同義である。X33は酸素原子を示す。X34はヒドロキシ基を示し、スルファニル基、アミノ基及びカルボキシ基をとらない点以外は、上記式(H−2)におけるX14と同義である。
34は、連結基であって、炭素数2以下のアルキレン基を示し、炭素数2以下のアルキレン基としては上記式(H−2)におけるL11で説明したものと同じである。
31、X32及びX33の組み合わせは、上述の、X11、X12及びX13の組み合わせと同義であり、X34、L34及びX35の組み合わせは、上述の、X14、L11及びX15の組み合わせと同義である。
【0098】
21〜R23及びR25〜R27は、それぞれ、水素原子、シアノ基又はアルキル基を示し、ハロゲン原子をとらない点以外は上記式(R−1)及び式(R−2)におけるR11〜R13及びR15〜R17と同義である。
【0099】
11及びY12は、それぞれ、イミノ基(−N(R)−:Rは上述の通り。)、酸素原子を示し、酸素原子が好ましい。
31〜L33及びL35は各々独立に炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基若しくはカルボニル基、又はこれらを組み合わせた連結基を示す。L31及びL33としては、炭素数1〜16のアルキレン基又は炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜16のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜8アルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより一層好ましく、1〜4のアルキレン基が特に好ましい。L32としては、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜16のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜8アルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基が特に好ましい。L35としては、炭素数1〜16のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、カルボニル基、又は、これらを組み合わせた連結基が好ましい。組み合わされる基の数は上述のL25と同じである。
【0100】
24及びR28は、それそれ、上記R14又はR18に対応し、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はカルボキシ基を示す。
【0101】
構成成分(K)の具体例をそのClogP値とともに以下に示すが、本発明においてこれらに限定して解釈されるものではない。下記具体例のうちK−18は、上記逐次重合系のポリマーにおける構成成分(K)の具体例である。下記具体例のうちK−18以外の構成成分は、いずれも、(メタ)アクリル樹脂を形成する構成成分であるが、分子鎖(エチレン鎖)及び連結基(−CO−O−アルキレン基)を適宜に変更することにより、上記各種のポリマーの構成成分とすることができる。
【0102】
【化13】
【0103】
ポリマー中の構成成分(K)の含有率は、特に限定されないが、20質量%以上90質量%未満であることが好ましい。これにより、後述する、構成成分(M2)及び/又は構成成分(MM)とのバランスが良化され、固体電解質組成物の分散性と固体粒子間等の結着性とイオン伝導性とを高い水準で発揮できる。構成成分(K)の含有率は、ポリマー中、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0104】
粒子状バインダーを構成するポリマーがポリビニル樹脂又は(メタ)アクリル樹脂等の付加重合系ポリマーである場合、上記構成成分(K)以外の構成成分を有することが好ましい。この構成成分(以下、構成成分(M2)という。)としては、上記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を有さず、分子量が1000未満の構成成分が挙げられる。また、構成成分(M2)として、ポリマーに組み込まれた際の側鎖に炭素数が6以上の基を有する構成成分も挙げられる。中でも、上記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を有さず、分子量が1000未満であって、側鎖に炭素数が6以上の基を有する構成成分が好ましい。構成成分(M2)が側鎖に炭素数6以上の基を有する構成成分であると、上記構成成分(K)、更には後述するマクロモノマーに由来する構成成分(MM)との、ポリマー中でのバランスが良化され、固体電解質組成物の分散性と固体粒子間等の結着性、更にはイオン伝導性を高い水準でバランスよく発揮できる。
炭素数が6以上の基は、分散性、結着性及びイオン伝導性の点で、炭素数6〜30の基が好ましく、炭素数8〜24の基がより好ましく、炭素数8〜16の基が更に好ましい。炭素数が6以上の基はヘテロ原子を含んでいてもよい。炭素数が6以上の基は、構成成分において、末端基であることが好ましい。
この構成成分(M2)のClogP値は特に限定されない。
構成成分(M2)としては、構成成分(K)を導く重合性化合物と共重合可能な重合性化合物(m2)に由来する構成成分が挙げられる。重合性化合物(m2)としては、重合性基(例えばエチレン性不飽和結合を有する基)を有する化合物、例えば各種のビニル化合物及び/又は(メタ)アクリル化合物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましい。更に好ましくは、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、及び(メタ)アクリロニトリル化合物から選ばれる(メタ)アクリル化合物が好ましい。重合性化合物(m2)は、炭素数6以上の基を有することが好ましく、ポリマーに組み込まれた際に、その側鎖に炭素数6以上の基を有する構成成分となる。重合性化合物1分子中の重合性基の数は特に限定されないが、1〜4個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0105】
上記ビニル化合物又は(メタ)アクリル化合物としては、下記式(b−1)で表される化合物が好ましい。
【0106】
【化14】
【0107】
式中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基(炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6が特に好ましい)、アルキニル基(炭素数2〜24が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6が特に好ましい)、又はアリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましい)を表す。中でも水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0108】
は、水素原子又は置換基を示す。Rとして採りうる置換基は、特に限定されないが、アルキル基(炭素数1〜30が好ましく、6〜24がより好ましく、8〜24が特に好ましく、分岐鎖でもよいが直鎖が好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜15がより好ましい)、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、酸素原子を含有する脂肪族複素環基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、又はアミノ基(NRN1:RN1は水素原子又は置換基を示し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基)が挙げられる。中でも、炭素数6以上の基が好ましく、炭素数6以上の、アルキル基、アリール基若しくはアラルキル基が好ましい。炭素数6以上の基は直鎖であることが好ましい。
スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基は例えば炭素数1〜6のアルキル基を伴ってエステル化されていてもよい。酸素原子を含有する脂肪族複素環基は、エポキシ基含有基、オキセタン基含有基、テトラヒドロフリル基含有基などが好ましい。
【0109】
は、連結基であり、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキレン基、炭素数2〜6(好ましくは2〜3)のアルケニレン基、炭素数6〜24(好ましくは6〜10)のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基(−NR−)、カルボニル基、リン酸連結基(−O−P(OH)(O)−O−)、ホスホン酸連結基(−P(OH)(O)−O−)、又はそれらの組み合わせに係る基等が挙げられ、−CO−O−基、−CO−N(R)−基(Rは上述の通り。)が好ましい。上記連結基は任意の置換基を有していてもよい。連結基を構成する原子の数及び連結原子数は後述する通りである。任意の置換基としては、後記置換基Tが挙げられ、例えば、アルキル基又はハロゲン原子などが挙げられる。
【0110】
nは0又は1であり、1が好ましい。ただし、−(L−Rが1種の置換基(例えばアルキル基)を示す場合、nを0とし、Rを置換基(アルキル基)とする。
【0111】
上記(メタ)アクリル化合物としては、上記(b−1)のほか、下記式(b−2)又は(b−3)で表される化合物も好ましい。
【0112】
【化15】
【0113】
、nは上記式(b−1)と同義である。ただし、式(b−2)中のnは1である。
は、Rと同義である。
は、連結基であり、上記Lと同義である。
は、連結基であり、上記Lと同義であるが、炭素数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキレン基が好ましい。
mは1〜200の整数であり、1〜100の整数であることが好ましく、1〜50の整数であることがより好ましい。
【0114】
上記式(b−1)〜(b−3)において、重合性基を形成する炭素原子であってRが結合していない炭素原子は無置換炭素原子(HC=)として表しているが、上述のように、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限されないが、例えば、Rとしてとりうる上記基が挙げられる。
また、式(b−1)〜(b−3)において、アルキル基、アリール基、アルキレン基、アリーレン基など置換基を取ることがある基については、本発明の効果を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば後述する置換基Tが挙げられ、具体的には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルファニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリーロイル基、アリーロイルオキシ基、アミノ基等が挙げられる。上記置換基としては、更に後述する官能基群(a)に含まれる基も挙げられる。
【0115】
上述の重合性化合物(m2)以外の重合性化合物としては、例えば、特開2015−88486号公報に記載の「ビニル系モノマー」が挙げられる。
重合性化合物(m2)の例を下記及び実施例で挙げるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。下記式中のlは1〜1,000,000を表す。
【0116】
【化16】
【0117】
【化17】
【0118】
【化18】
【0119】
ポリマー中の構成成分(M2)の含有率は、特に限定されないが、1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。これにより、上記構成成分(K)及び/又は後記構成成分(MM)とのバランスが良化され、固体電解質組成物の分散性と固体粒子間等の結着性とイオン伝導性とを高い水準で発揮できる。構成成分(M2)の含有率は、ポリマー中、5質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
【0120】
粒子状バインダーを構成するポリマーが付加重合系ポリマーである場合、質量平均分子量が1000以上のマクロモノマーに由来する構成成分(MM)を有することが好ましい。
【0121】
マクロモノマーの質量平均分子量は、2,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましい。上限としては、500,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが特に好ましい。粒子状バインダーを構成するポリマーが上記範囲の質量平均分子量をもつマクロモノマー由来の構成成分(MM)を有することで、より良好に分散媒中に均一に分散できる。
【0122】
マクロモノマーは、質量平均分子量が1000以上のものであれば特に限定されないが、エチレン性不飽和結合を有する基等の重合性基に結合する重合鎖を有するマクロモノマーが好ましい。マクロモノマーが有する重合鎖は、ポリマーの主鎖に対して側鎖(グラフト鎖)を構成する。
【0123】
上記重合鎖は分散媒への分散性を良化する働きを有する。これにより、粒子状バインダーが良好に分散されるので、無機固体電解質等の固体粒子を局部的若しくは全面的に被覆することなく結着させることができる。その結果、固体粒子間の電気的なつながりを遮断せずに密着させることができるため、固体粒子間の界面抵抗の上昇を抑えられると考えられる。更に、粒子状バインダーを構成するポリマーが重合鎖を有することで粒子状バインダーが固体粒子に付着するだけでなく、その重合鎖が絡みつく効果も期待できる。これにより固体粒子間の界面抵抗の抑制と結着性の良化との両立が図られるものと考えられる。なお、構成成分(MM)の質量平均分子量は、粒子状バインダーを構成するポリマーを合成するときに組み込むマクロモノマーの質量平均分子量を測定することで同定することができる。
【0124】
−質量平均分子量の測定−
本発明において粒子状バインダーを構成するポリマー及びマクロモノマーの分子量については、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。その測定法としては、基本として下記条件1又は条件2(優先)の方法により測定した値とする。ただし、ポリマー又はマクロモノマーの種類によっては適宜適切な溶離液を選定して用いればよい。
(条件1)
カラム:TOSOH TSKgel Super AWM−H(商品名、東ソー社製)を2本つなげる。
キャリア:10mMLiBr/N−メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
(条件2)
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H、TOSOH TSKgel Super HZ4000、TOSOH TSKgel Super HZ2000(いずれも商品名、東ソー社製)をつないだカラムを用いる。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
【0125】
構成成分(MM)のSP値は、特に限定されないが、10以下であることが好ましく、9.5以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、5以上であることが実際的である。SP値は有機溶剤に分散する特性を示す指標となる。ここで、構成成分(MM)を特定の分子量以上とし、好ましくは上記SP値以上とすることで、固体粒子との結着性を向上させ、かつ、これにより溶剤との親和性を高め、安定に分散させることができる。
−SP値の定義−
本発明において、SP値は、特に断らない限り、Hoy法によって求める(H.L.Hoy JOURNAL OF PAINT TECHNOLOGY Vol.42,No.541,1970,76−118、及びPOLYMER HANDBOOK 4th、59章、VII 686ページ Table5、Table6及びTable6中の下記式参照)。また、SP値については単位を省略して示しているが、その単位はcal1/2cm−3/2である。なお、構成成分(MM)のSP値は、マクロモノマーのSP値とほぼ変わらず、それにより評価してもよい。
本発明において、ポリマー(重合体)のSP値(SP)は、ポリマーを構成する各繰り返し単位のSP値を、それぞれ、SP、SP・・・、各繰り返し単位の質量分率をW、W・・・とした場合、下記式で算出される値とする。
SP=(SP×W)+(SP×W)+・・・
【0126】
【化19】
【0127】
マクロモノマーが有する重合性基は、特に限定されず、詳細は後述するが、例えば各種のビニル基、(メタ)アクリロイル基を挙げることができ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0128】
マクロモノマーが有する重合鎖は、特に限定されず、通常のポリマー成分を適用することができる。例えば、(メタ)アクリル樹脂の鎖、ポリビニル樹脂の鎖、ポリシロキサン鎖、ポリアルキレンエーテル鎖、炭化水素鎖等が挙げられ、(メタ)アクリル樹脂の鎖又はポリシロキサン鎖が好ましい。
(メタ)アクリル樹脂の鎖は、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及び(メタ)アクリロニトリル化合物から選ばれる(メタ)アクリル化合物に由来する構成成分を含むことが好ましく、2種以上の(メタ)アクリル化合物の重合体であることがより好ましい。ポリシロキサン鎖は、特に限定されないが、アルキル基若しくはアリール基を有するシロキサンの重合体が挙げられる。炭化水素鎖としては、炭化水素系熱可塑性樹脂からなる鎖が挙げられる。
また、上記重合鎖を構成する構成成分は、炭素数6以上の直鎖炭化水素構造単位S(好ましくは炭素数6以上30以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数8以上24以下のアルキレン基)を含むことが好ましい。このように、重合鎖を構成する構成成分が直鎖炭化水素構造単位Sを有することで、分散媒との親和性が高くなり分散安定性が向上する。直鎖炭化水素構造単位Sは、重合性化合物(m2)が有する炭素数6以上の基のうち直鎖のものと同義である。
【0129】
上記マクロモノマーは下記式(b−11)で表される重合性基を有することが好ましい。下記式中、R11はRと同義である。*は結合位置である。
【0130】
【化20】
【0131】
上記マクロモノマーとしては、下記式(b−12a)〜(b−12c)のいずれかで表される重合性部位を有することが好ましい。
【0132】
【化21】
【0133】
b2はRと同義である。*は結合位置である。RN2は後述するRN1と同義である。式(b−12c)のベンゼン環には任意の置換基Tが置換していてもよい。
*の結合位置の先に存在する構造部としては、マクロモノマーとしての分子量を満たせば特に限定されないが、(好ましくは連結基を介して結合する)上記重合鎖が好ましい。このとき、連結基及び重合鎖はそれぞれ置換基Tを有していてもよく、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子)などを有していてもよい。
上記式(b−11)で表される重合性基及び上記式(b−12a)〜(b−12c)のいずれかで表される重合性部位において、重合性基を形成する炭素原子であってR11又はRb2が結合していない炭素原子は無置換炭素原子として表しているが、上述のように、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限されないが、例えば、Rとしてとりうる上記基が挙げられる。
【0134】
上記マクロモノマー(構成成分(MM))は、上記重合性基と上記重合鎖とを連結する連結基を有することが好ましい。この連結基は、通常、マクロモノマーの側鎖に組み込まれる。
連結基は、特に限定されないが、下記式(H−21)又は式(H−22)で表わされる結合部を含むことが好ましい。
【0135】
【化22】
【0136】
式中、X41、X42、X43及びX45は各々独立にイミノ基、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を示し、上述の式(H−1)及び式(H−2)における、X11、X12、X13及びX15と同義であり、好ましいものも同じである。
44はアミノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基又はカルボキシ基を示し、上述の式(H−2)におけるX14と同義であり、好ましいものも同じである。
41は炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数4以下のアルケニレン基を示し、上述の式(H−2)におけるL11と同義であり、好ましいものも同じである。
【0137】
式(H−21)で表される結合部及び式(H−22)で表わされる結合部は、それぞれ、上述の式(H−1)で表される結合部及び式(H−22)で表わされる結合部と同義であり、好ましいものも同じである。
粒子状バインダーを構成するポリマーが構成成分(MM)を有する場合、この構成成分(MM)が有する上記各式で表される結合部は、それぞれ、構成成分(K)が有する結合部と同じであっても異なっていてもよい。
【0138】
重合性基又は重合性部位と重合鎖とを連結する連結基は、上記結合部に加えて他の連結基を含むことが好ましく、上記結合部の両端それぞれに他の連結基を有することがより好ましい。他の連結基としては、重合鎖の重合に用いられる、連鎖移動剤若しくは重合開始剤に由来する基(残基)等を含み、例えば、上述の式(b−1)における連結基Lで説明した基等が挙げられる。具体的には、後述する実施例で用いたマクロモノマーMM−1〜MM−3に含まれる連結基が挙げられる。
【0139】
本発明において、連結基を構成する原子の数は、1〜36であることが好ましく、1〜24であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましく、1〜6であることが特に好ましい。連結基の連結原子数は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。下限としては、1以上である。上記連結原子数とは所定の構造部間を結ぶ最少の原子数をいう。例えば、−CH−C(=O)−O−の場合、連結基を構成する原子の数は6となるが、連結原子数は3となる。
【0140】
上記マクロモノマーは、下記式(b−13a)で表される化合物であることが好ましい。
【0141】
【化23】
【0142】
b2は、Rと同義である。
naは特に限定されないが、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1である。
【0143】
Raは、naが1のときは置換基、naが2以上のときは連結基を表す。
Raとしてとりうる置換基としては、特に限定されないが、上記重合鎖が好ましく、(メタ)アクリル樹脂の鎖又はポリシロキサン鎖がより好ましい。
Raは、式(b−13a)中の酸素原子(−O−)に直接結合していてもよいが、連結基を介して結合していることが好ましい。この連結基としては、特に限定されないが、上述の、重合性基と重合鎖とを連結する連結基が挙げられる。
【0144】
Raが連結基であるとき、その連結基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜30のアルカン連結基、炭素数3〜12のシクロアルカン連結基、炭素数6〜24のアリール連結基、炭素数3〜12のヘテロアリール連結基、エーテル基、スルフィド基、ホスフィニデン基(−PR−:Rは水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基)、シリレン基(−SiRR’−:R、R’は水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基)、カルボニル基、イミノ基(−NRN1−:RN1は水素原子又は置換基を示し、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数6〜10のアリール基)、又はその組み合わせであることが好ましい。Raとして採りうる連結基は、上述の、重合性基と重合鎖とを連結する連結基を含むことが好ましい。
【0145】
上述のマクロモノマー以外のマクロモノマーとしては、例えば、特開2015−88486号公報に記載の「マクロモノマー(X)」が挙げられる。
【0146】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20のヘテロ環基で、より好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5又は6員環のヘテロ環基である。ヘテロ環基には芳香族ヘテロ環基及び脂肪族ヘテロ環基を含む。例えば、テトラヒドロピラン環基、テトラヒドロフラン環基、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(上記ヘテロ環基に−O−基が結合した基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ(−NH)、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ヘキサデカノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル等)、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、オクタノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、ヘテロ環チオ基(上記ヘテロ環基に−S−基が結合した基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素数0〜20のリン酸基、例えば、−OP(=O)(R)、ホスホニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(R)、スルホ基(スルホン酸基)、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。Rは、水素原子又は置換基(好ましくは置換基Tから選択される基)である。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記置換基Tが更に置換していてもよい。
【0147】
化合物、置換基及び連結基等がアルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アルキニル基及び/又はアルキニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよい。
【0148】
ポリマー中の構成成分(MM)の含有率は、特に限定されないが、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。これにより、上記構成成分(K)及び/又は構成成分(M2)とのバランスが良化され、固体電解質組成物の分散性と固体粒子間等の結着性とイオン伝導性とを高い水準で発揮できる。構成成分(MM)の含有率は、ポリマー中、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0149】
上記構成成分(K)を有する特定のポリマーは、下記官能基群(a)から選択される少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。この官能基は、主鎖に含まれていても、側鎖に含まれていてもよいが、側鎖に含まれることが好ましい。官能基が含まれる側鎖は、ポリマーを構成する構成成分のいずれでもよい。側鎖に特定の官能基が含まれることで、無機固体電解質、活物質、集電体の表面に存在していると考えられる水素原子、酸素原子、硫黄原子との相互作用が強くなり、結着性が更に向上し、界面抵抗の上昇を更に抑えることができる。
官能基群(a)
カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、イソシアナート基、オキセタン基、エポキシ基、シリル基
スルホン酸基はそのエステル若しくは塩でもよい。エステルの場合、炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
リン酸基(ホスホ基:−OPO(OH)等)はそのエステル若しくは塩でもよい。エステルの場合、炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
ホスホン酸基(スルホ基:−SOH)はそのエステル若しくは塩でもよい。エステルの場合、炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
シリル基としては、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、アリールシリル基、アリールオキシシリル基等が挙げられ、中でも、アルコキシシリル基が好ましい。シリル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜6である。
【0150】
上記構成成分(K)を有する特定のポリマーは、その側鎖に2環以上の環構造を含む基を有する態様と有さない態様との両態様を包含する。2環以上の環構造を含む基としては、例えば、縮合多環芳香族化合物からなる基、ステロイド骨格を含む基等が挙げられる。
【0151】
上記構成成分(K)を有する特定のポリマーの合成法は、後述する粒子状バインダーの製造方法において併せて説明する。
【0152】
粒子状バインダーは、構成成分(K)を有する上記ポリマーで形成される態様(上記ポリマーからなる態様)に加えて、上記ポリマー以外の成分、例えば他のポリマー、未反応の原料化合物、分解物等を含む態様を包含する。
粒子状バインダーが上記ポリマー以外の成分を含む場合、粒子状バインダーを特定条件の超遠心分離処理によっても沈降しない成分(上澄み中に残留する成分)が特定の割合で含有することが好ましい。すなわち、粒子状バインダーは、粒子状バインダーを分散媒中に分散若しくは溶解した状態で、温度20℃、回転数100000rpmで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する成分と、この遠心分離処理に付しても沈降しない成分とを含む場合、沈降する成分の含有量Xと沈降しない成分の含有量Yが、質量基準で下記式を満たすことが好ましい。
Y/(X+Y)≦0.10
【0153】
粒子状バインダーが、上記質量割合Y/(X+Y)(溶解成分量ともいう。)で沈降しない成分を含有すると、分散性に優れ、固体粒子同士等をより強固に結着させることができ、しかも固体粒子を過度に被覆することなく界面抵抗の上昇を効果的に抑えることができる。
分散性、結着性及び抵抗の点で、上記質量割合Y/(X+Y)は、0.09以下が好ましく、0.08以下が好ましく、0.075以下がより好ましい。質量割合Y/(X+Y)の下限は、理想的には0である(上記ポリマーからなる態様)が好ましいが、0.001以上であることが実際的である。
【0154】
上記沈降する成分は、通常、上述の構成成分(K)を有するポリマーであり、沈降しない成分は、通常、粒子状バインダーの分散液に由来する成分であって、構成成分(K)を有するポリマーの合成に用いた未反応の原料化合物若しくはその副産物(原料化合物の分解物、分散媒に対して溶解性であるか又はこの分散媒中において極小粒径(例えば5nm未満)の微粒子状態にあるポリマー等)等の固形成分が挙げられる。この沈降しない成分には、粒子状バインダー合成時に使用した分散媒若しくは溶媒であって粒子状バインダー中に残存する分散媒若しくは溶媒を含まない。
粒子状バインダー中において、沈降する成分と沈降しない成分は、独立して存在していてもよいし、互いに相互作用(吸着等)した状態で存在していてもよい。沈降しない成分は、固体電解質組成物において、粒子状バインダー中に存在していてもよく、粒子状バインダーから滲出して粒子状バインダーとは独立に存在していてもよい。
【0155】
上記質量割合Y/(X+Y)は、通常、粒子状バインダー分散液を測定対象として、後述する実施例で説明する方法で、測定できる。ここで、測定に用いる分散媒は、本発明の固体電解質組成物に用いる後述する分散媒であるが、通常、CLogP値が0.4以上の分散媒である。また、分散媒の使用量は、特に限定されないが、例えば粒子状バインダー100質量部に対して200質量部とすることができる。このような分散媒、好ましくは上記使用量を満たすのであれば、粒子状バインダー分散液をそのまま測定することができる。なお、沈降しない成分が粒子状バインダーから滲出している場合、固体電解質組成物を測定対象とすることもできる。
【0156】
粒子状バインダーの、固体電解質組成物中の含有量は、無機固体電解質粒子、活物質及び導電助剤等の固体粒子との結着性と、イオン伝導性の両立の点で、固形成分100質量%において、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。上限としては、電池容量の観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
本発明の固体電解質組成物において、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+活物質の質量)/(バインダーの質量)]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率は500〜2がより好ましく、100〜10が更に好ましい。
【0157】
本発明の固体電解質組成物は、粒子状バインダーを1種単独で、又は2種以上、含有していてもよい。
【0158】
粒子状バインダーは、上記構成成分を導く原料化合物を任意に組み合わせて、必要により触媒(重合開始剤、連鎖移動剤等を含む。)の存在下、逐次重合又は付加重合させることで、合成することができる。逐次重合又は付加重合させる方法及び条件は、特に限定されず、公知の方法及び条件を適宜に選択できる。本発明においては、分散媒の選択等により、逐次重合又は付加重合時に、合成されたポリマーを分散媒に粒子状に分散させて、分散液として得ることができる。
【0159】
本発明においては、粒子状バインダーが付加重合系ポリマー、特に(メタ)アクリル樹脂である場合、次のようにして、粒子状バインダーを調製(合成)することが好ましい。下記の製造方法によれば、官能性ポリマーを形成する重合性化合物の重合率、更には高分子反応の反応率が高くなり、未反応で残存する原料化合物量を低減して、上述の質量割合Y/(X+Y)を小さくすることができる。特に、粒子状バインダーを形成するポリマーがマクロモノマーに由来する構成成分を有する態様においては、マクロモノマーを共重合する方法に比べて、未反応物等の残存量を効果的に抑えることができる。そのため、下記方法により製造された粒子状バインダー(分散液)を用いて本発明の固体電解質組成物を調製すると、分散性と、固体粒子同士等の結着性とを更に高めることができ、しかも抵抗をより一層小さくできる。
【0160】
本発明の粒子状バインダーの製造方法は、側鎖(好ましくは側鎖末端)に官能基を有する官能性ポリマーと、この官能基と反応して上記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を形成する反応性基を有する側鎖形成化合物とを反応させる工程を有する。
この工程に用いる側鎖形成化合物としては、上記官能基と反応して構成成分(K)を形成しうる化合物の他に、上記官能基と反応して構成成分(MM)を形成する化合物も挙げられる。
【0161】
上記工程を行うに際して、まず、粒子状バインダーを形成するポリマーの前駆体としての官能性ポリマーを合成する。官能性ポリマーは、官能基を有する重合性化合物と、必要により、構成成分(M2)を導く重合性化合物等とを、公知の方法及び条件で、付加重合させる。官能基を有する重合性化合物は、側鎖形成化合物の反応性基(下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部)の種類等に応じて適宜に選択される。
次いで、得られた官能性ポリマーに対して側鎖形成化合物を高分子反応させて、下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を構築する。これにより、ポリマー中に構成成分(K)を形成する。高分子反応(官能性ポリマーの官能基と側鎖形成化合物の反応性基との反応)は、下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部の種類等に応じた、公知の方法及び条件が選択される。例えば、式(H−1)で表わされる結合部がウレタン結合部又はウレア結合部である場合、官能性基としてイソシアネート基を有する官能性ポリマーと、アルコール化合物又はアミノ化合物との反応により得ることができる。また、式(H−2)で表わされる結合部を形成する場合、官能性基としてエポキシ基又はオキセタン基等の脂肪族環状エーテル化合物と、アルコール化合物、カルボキシ基含有化合物又はアミノ化合物との反応により得ることができる。
構成成分(MM)を形成する場合、構成成分(K)の形成に先立って、構成成分(MM)を形成することが好ましい。官能性ポリマーに対して、構成成分(MM)を形成しうる側鎖形成化合物(重合鎖形成化合物)を高分子反応させて、ポリマー中に構成成分(MM)を形成する。この高分子反応も、上記構成成分(K)を形成する際の高分子反応と同様に行うことができ、その反応方法及び条件も適宜に設定できる。
【0162】
本発明の粒子状バインダーの製造方法においては、高分子反応時に用いる分散媒の選択等により、特に構成成分(K)の形成が進行するにつれて、合成されたポリマーを分散媒に粒子状に分散させて、分散液として得ることができる。このときの粒子状バインダーの平均粒径の調製方法は上記した通りである。
本発明の粒子状バインダーの製造方法の詳細は後述する実施例で説明するが、これに限定されるものではない。
【0163】
<活物質>
本発明の固体電解質組成物は、活物質を含有することもできる。この活物質は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な物質である。このような活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられる。正極活物質としては、金属酸化物(好ましくは遷移金属酸化物)が好ましく、負極活物質としては、炭素質材料、金属酸化物、ケイ素系材料、リチウム単体、リチウム合金、又はリチウムと合金形成可能な金属が好ましい。
本発明において、正極活物質を含有する固体電解質組成物(電極層用組成物)を正極用組成物と、また、負極活物質を含有する固体電解質組成物を負極用組成物ということがある。
【0164】
(正極活物質)
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、又は、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Mのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
【0165】
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn及びLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO及びLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類並びにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩及びLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO及びLiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
【0166】
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。この場合、正極活物質の平均粒径(球換算平均粒子径)は、特に制限されないが、例えば、0.1〜50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機又は分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の平均粒径は、上記無機固体電解質の平均粒径と同様にして測定できる。
【0167】
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0168】
正極活物質の、電極層用組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、50〜85質量が更に好ましく、55〜80質量%が特に好ましい。
【0169】
(負極活物質)
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金形成可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、炭素質材料、金属複合酸化物又はリチウム単体が信頼性の点から好ましく用いられる。
【0170】
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂若しくはフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。更に、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー並びに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素質材料(ハードカーボンともいう。)と黒鉛系炭素質材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載される面間隔又は密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
炭素質材料としては、ハードカーボン又は黒鉛が好ましく用いられ、黒鉛がより好ましく用いられる。
【0171】
負極活物質として適用される金属若しくは半金属元素の酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な酸化物であれば特に制限されず、金属元素の酸化物(金属酸化物)、金属元素の複合酸化物若しくは金属元素と半金属元素との複合酸化物(纏めて金属複合酸化物という。)、半金属元素の酸化物(半金属酸化物)が挙げられる。これらの酸化物としては、非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイドも好ましく挙げられる。本発明において、半金属元素とは、金属元素と非半金属元素との中間の性質を示す元素をいい、通常、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルの6元素を含み、更にはセレン、ポロニウム及びアスタチンの3元素を含む。また、非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°〜70°に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°〜40°に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
【0172】
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物又は上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素(例えば、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBi)から選択される1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる(複合)酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、GeO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Sb、Bi、Bi、GeS、PbS、PbS、Sb又はSbが好ましく挙げられる。
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵及び/又は放出できる炭素質材料、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金化可能な負極活物質が好適に挙げられる。
【0173】
金属若しくは半金属元素の酸化物、とりわけ金属(複合)酸化物及び上記カルコゲナイドは、構成成分として、チタン及びリチウムの少なくとも一方を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。リチウムを含有する金属複合酸化物(リチウム複合金属酸化物)としては、例えば、酸化リチウムと上記金属(複合)酸化物若しくは上記カルコゲナイドとの複合酸化物、より具体的には、LiSnOが挙げられる。
負極活物質、例えば金属酸化物は、チタン元素を含有すること(チタン酸化物)も好ましく挙げられる。具体的には、LiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
【0174】
負極活物質としてのリチウム合金としては、二次電池の負極活物質として通常用いられる合金であれば特に制限されず、例えば、リチウムアルミニウム合金が挙げられる。
【0175】
リチウムと合金形成可能な負極活物質は、二次電池の負極活物質として通常用いられるものであれば特に制限されない。このような活物質は、充放電による膨張収縮が大きくなるため固体粒子の結着性が低下するが、本発明では上記ポリマーを含む粒子状バインダーにより高い結着性を達成できる。このような活物質として、ケイ素元素若しくはスズ元素を有する(負極)活物質(合金)、Al及びIn等の各金属が挙げられ、より高い電池容量を可能とするケイ素元素を有する負極活物質(ケイ素元素含有活物質)が好ましく、ケイ素元素の含有量が全構成元素の50モル%以上のケイ素元素含有活物質がより好ましい。
一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(ケイ素元素含有活物質を含有するSi負極、スズ元素を有する活物質を含有するSn負極等)は、炭素負極(黒鉛及びアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
ケイ素元素含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、ランタン等を含むケイ素含有合金(例えば、LaSi、VSi、La−Si、Gd−Si、Ni−Si)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi/Si)、他にも、SnSiO、SnSiS等のケイ素元素及びスズ元素を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、全固体二次電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な負極活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
スズ元素を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO、SnS、SnS、更には上記ケイ素元素及びスズ元素を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOを挙げることもできる。
【0176】
本発明においては、上述の負極活物質を特に制限されることなく用いることができるが、電池容量の点では、負極活物質として、リチウムと合金化可能な負極活物質が好ましい態様であり、中でも、上記ケイ素材料又はケイ素含有合金(ケイ素元素を含有する合金)がより好ましく、ケイ素(Si)又はケイ素含有合金を含むことが更に好ましい。
【0177】
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の平均粒径は、0.1〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、通常の粉砕機若しくは分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミル若しくは篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては、特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。負極活物質の平均粒径は、上記無機固体電解質の平均粒径と同様にして測定できる。
【0178】
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
【0179】
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
【0180】
負極活物質の、電極層用組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜80質量%であることが好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
【0181】
本発明において、負極活物質層を電池の充電により形成する場合、上記負極活物質に代えて、全固体二次電池内に発生する周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンを用いることができる。このイオンを電子と結合させて金属として析出させることで、負極活物質層を形成できる。
【0182】
(活物質の被覆)
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、Li、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiO、SiO、TiO、ZrO、Al、B等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
【0183】
<導電助剤>
本発明の固体電解質組成物は、導電助剤を含有することもできる。導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いてもよい。
本発明において、活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際に周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン(好ましくはLiイオン)の挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
【0184】
導電助剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
導電助剤の、電極層用組成物中の総含有量は、固形分100質量部に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
【0185】
導電助剤の形状は、特に制限されないが、粒子状が好ましい。導電助剤のメジアン径D50は、特に限定されず、例えば、0.01〜1μmが好ましく、0.02〜0.1μmが好ましい。
【0186】
<分散媒>
本発明の固体電解質組成物は、分散媒を含有する。
分散媒は、本発明の固体電解質組成物に含まれる各成分を分散させるものであればよく、好ましくは、上述の粒子状バインダー(このバインダーを構成するポリマー)を粒子状で分散させるものが選択される。このような分散媒としては、特に制限されないが、粒子状バインダーの分散性の点で、分散媒のCLogP値は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、2.5以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、10以下であることが実際的である。
分散媒のClogP値は、構成成分(K)のClogP値と同様にして算出できる。
【0187】
本発明に用いる分散媒としては、例えば各種の有機溶媒が挙げられ、有機溶媒としては、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物、アミン化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル化合物等の各溶媒が挙げられる。
【0188】
アルコール化合物としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0189】
エーテル化合物としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2−、1,3−及び1,4−の各異性体を含む)等)が挙げられる。
【0190】
アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0191】
アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン(DIBK)などが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
脂肪族化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素化合物等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ペンタン酸ブチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸イソブチル、ピバル酸プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸ブチル、ピバル酸イソブチルなどのカルボン酸エステル等が挙げられる。
非水系分散媒としては、上記芳香族化合物、脂肪族化合物等が挙げられる。
【0192】
好ましい分散媒を、CLogP値とともに以下に示す。
【化24】
【0193】
本発明において、分散媒は、ケトン化合物、エステル化合物、芳香族化合物又は脂肪族化合物が好ましく、ケトン化合物、エステル化合物、芳香族化合物及び脂肪族化合物から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
固体電解質組成物に含有される分散媒は、1種であっても、2種以上であってもよく、2種以上であることが好ましい。
【0194】
分散媒の、固体電解質組成物中の総含有量は、特に限定されず、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%が特に好ましい。
【0195】
<他の添加剤>
本発明の固体電解質組成物は、上記各成分以外の他の成分として、所望により、リチウム塩、イオン液体、増粘剤、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。
本発明において、本発明の固体電解質組成物は、架橋剤及び重合開始剤を含有し、後述する構成層の形成に際して粒子状バインダー(を構成するポリマー)を架橋させる態様と、架橋剤及び重合開始剤を含有せず、構成層の形成に際して粒子状バインダー(を構成するポリマー)を架橋させない態様(粒子状バインダーが架橋ポリマーを含まない態様)との両態様を包含する。
【0196】
[固体電解質組成物の製造方法]
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質、粒子状バインダー、分散媒、必要により他の成分を、例えば通常用いる各種の混合機で混合することにより、好ましくはスラリーとして、調製することができる。
混合方法は特に制限されず、一括して混合してもよく、順次混合してもよい。粒子状バインダーは、通常、粒子状バインダーの分散液として用いるが、これに限定されない。混合する環境は特に制限されないが、乾燥空気下又は不活性ガス下等が挙げられる。
【0197】
[固体電解質含有シート]
本発明の固体電解質含有シートは、全固体二次電池の構成層を形成しうるシート状成形体であって、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう。)、電極、又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。
【0198】
本発明の全固体二次電池用固体電解質シートは、固体電解質層を有するシートであればよく、固体電解質層が基材上に形成されているシートでも、基材を有さず、固体電解質層から形成されているシートであってもよい。全固体二次電池用固体電解質シートは、固体電解質層の他に他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、保護層(剥離シート)、集電体、コート層等が挙げられる。
本発明の全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、基材上に、本発明の固体電解質組成物で構成した層、通常固体電解質層と、必要により保護層とをこの順で有するシートが挙げられる。全固体二次電池用固体電解質シートが有する固体電解質層は、本発明の固体電解質組成物で形成されることが好ましい。この固体電解質層中の各成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の固体電解質組成物の固形分中における各成分の含有量と同義である。固体粒子が密に堆積した(充填された)層であることが好ましく、実施例に記載の方法で求められる空隙率が0.06以下であることが好ましい。この空隙率が0.06以下であると、低抵抗化、高エネルギー密度化という効果が得られる。本発明の固体電解質組成物で形成される固体電解質層は、無機固体電解質と、上記構成成分(K)を有するポリマーを含む粒子状バインダーとを含有しており、上述の小さな空隙率を達成できる。固体電解質層は、後述する全固体二次電池における固体電解質層と同じであり、通常、活物質を含まない。全固体二次電池用固体電解質シートは、全固体二次電池の固体電解質層を構成する材料として好適に用いることができる。
【0199】
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、後述する集電体で説明する材料、有機材料、無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック等が挙げられる。
【0200】
本発明の全固体二次電池用電極シート(単に「本発明の電極シート」ともいう。)は、活物質層を有する電極シートであればよく、活物質層が基材(集電体)上に形成されているシートでも、基材を有さず、活物質層から形成されているシートであってもよい。この電極シートは、通常、集電体及び活物質層を有するシートであるが、集電体、活物質層及び固体電解質層をこの順に有する態様、並びに、集電体、活物質層、固体電解質層及び活物質層をこの順に有する態様も含まれる。本発明の電極シートは上述の他の層を有してもよい。本発明の電極シートを構成する各層の層厚は、後述する全固体二次電池において説明する各層の層厚と同じである。
電極シートの活物質層は、本発明の固体電解質組成物(電極層用組成物)で形成されることが好ましい。電極シートの活物質層中の各成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の固体電解質組成物(電極層用組成物)の固形分中における各成分の含有量と同義である。この電極シートは、全固体二次電池の(負極又は正極)活物質層を構成する材料として好適に用いることができる。
【0201】
[固体電解質含有シートの製造方法]
固体電解質含有シートの製造方法は、特に限定されない。固体電解質含有シートは、本発明の固体電解質組成物を用いて製造することができる。例えば、上述のようにして本発明の固体電解質組成物を調製し、得られた固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい。)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層(塗布乾燥層)を形成する方法が挙げられる。これにより、必要により基材(集電体)と塗布乾燥層とを有する固体電解質含有シートを作製することができる。ここで、塗布乾燥層とは、本発明の固体電解質組成物を塗布し、分散媒を乾燥させることにより形成される層(すなわち、本発明の固体電解質組成物を用いてなり、本発明の固体電解質組成物から分散媒を除去した組成からなる層)をいう。活物質層及び塗布乾燥層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば分散媒が残存していてもよく、残存量としては、例えば、各層中、3質量%以下とすることができる。
上記製造方法において、本発明の固体電解質組成物はスラリーとして用いることが好ましく、所望により、公知の方法で本発明の固体電解質組成物をスラリー化することができる。本発明の固体電解質組成物の塗布、乾燥等の各工程については、下記全固体二次電池の製造方法において説明する。
【0202】
本発明の固体電解質含有シートの製造方法においては、上記のようにして得られた塗布乾燥層を加圧することもできる。加圧条件等については、後述する、全固体二次電池の製造方法において説明する。
また、本発明の固体電解質含有シートの製造方法においては、基材、保護層(特に剥離シート)等を剥離することもできる。
【0203】
[全固体二次電池]
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置された固体電解質層とを有する。正極活物質層は、必要により正極集電体上に形成され、正極を構成する。負極活物質層は、必要により負極集電体上に形成され、負極を構成する。
全固体二次電池の、固体電解質層、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1つの層は、本発明の固体電解質組成物で形成されることが好ましく、全ての層が本発明の固体電解質組成物で形成される態様を含む。正極活物質層は、本発明の固体電解質組成物で形成されない場合、無機固体電解質と活物質と適宜の上記各成分(好ましくは導電助剤)とを含有する。負極活物質層は、本発明の固体電解質組成物で形成されない場合、無機固体電解質と活物質と適宜の上記各成分を含有する層、上記負極活物質として説明した金属若しくは合金からなる層(リチウム金属層等)、更には上記負極活物質として説明した炭素質材料からなる層(シート)等が採用される。金属若しくは合金からなる層とは、例えば、リチウム等の金属若しくは合金の粉末を堆積又は成形してなる層、金属箔若しくは合金箔、及び蒸着膜等を包含する。金属若しくは合金からなる層及び炭素質材料からなる層の厚さは、それぞれ、特に限定されず、例えば、0.01〜100μmとすることができる。固体電解質層は、本発明の固体電解質組成物で形成されない場合、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する固体電解質と適宜の上記各成分とを含有する。
【0204】
(正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層)
本発明の全固体二次電池においては、上述のように、固体電解質組成物又は活物質層は、本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートで形成することができる。形成される固体電解質層及び活物質層は、好ましくは、含有する各成分及びその含有量について、特段の断りがない限り、固体電解質組成物又は固体電解質含有シートの固形分におけるものと同じである。
負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に限定されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。
【0205】
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、固体電解質層とは反対側に集電体を備えていてもよい。
【0206】
(筐体)
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金及びステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
【0207】
以下に、図1を参照して、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0208】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
本発明の固体電解質組成物は、固体電解質層、負極活物質層又は正極活物質層の成形材料として好ましく用いることができる。また、本発明の固体電解質含有シートは、固体電解質層、負極活物質層又は正極活物質層として好適である。
本明細書において、正極活物質層(以下、正極層とも称す。)と負極活物質層(以下、負極層とも称す。)をあわせて電極層又は活物質層と称することがある。
【0209】
図1に示す層構成を有する全固体二次電池を2032型コインケースに入れる場合、この全固体二次電池を全固体二次電池用積層体と称し、この全固体二次電池用積層体を2032型コインケースに入れて作製した電池を全固体二次電池と称して呼び分けることもある。
【0210】
(正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層)
全固体二次電池10においては、固体電解質層及び活物質層のいずれか1つが本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートを用いて形成される。好ましい態様では全ての層が本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートを用いて形成され、好ましい別の態様では、固体電解質層及び正極活物質層が本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートを用いて形成される。負極活物質層は、本発明の固体電解質組成物又は上記電極シートを用いて形成する以外にも、負極活物質としての金属若しくは合金からなる層、負極活物質としての炭素質材料からなる層等を用いて、更には充電時に負極集電体等に周期律表第一族若しくは第二族に属する金属を析出させることにより、形成することもできる。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する各成分は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
【0211】
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
【0212】
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
【0213】
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層や部材等を適宜介在ないし配設してもよい。また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
【0214】
[全固体二次電池の製造方法]
本発明の全固体二次電池は、特に限定されず、本発明の固体電解質組成物の製造方法を介して(含んで)製造することができる。用いる原料に着目すると、本発明の固体電解質組成物を用いて製造することもできる。具体的には、全固体二次電池は、上述のようにして本発明の固体電解質組成物を調製し、得られた固体電解質組成物等を用いて、全固体二次電池の固体電解質層及び/又は活物質層を形成することにより、製造できる。これにより、電池容量の高い全固体二次電池を製造できる。本発明の固体電解質組成物の調製方法は上述の通りであるので省略する。
【0215】
本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質組成物を、基材(例えば、集電体となる金属箔)上に塗布し、塗膜を形成する(製膜する)工程を含む(介する)方法を介して、製造できる。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用組成物として本発明の固体電解質組成物(電極層用組成物)を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための本発明の固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、負極用組成物として本発明の固体電解質組成物(電極層用組成物)を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
【0216】
別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シートを作製する。また、負極集電体である金属箔上に、負極用組成物として本発明の固体電解質組成物を塗布して負極活物質層を形成し、全固体二次電池用負極シートを作製する。次いで、これらシートのいずれか一方の活物質層の上に、上記のようにして、本発明の固体電解質層形成組成物を塗布して固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートの他方を、固体電解質層と活物質層とが接するように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。更に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
【0217】
上記各製造方法は、いずれも、固体電解質層、負極活物質層及び正極活物質層を本発明の固体電解質組成物で形成する方法であるが、本発明の全固体二次電池の製造方法においては、固体電解質層、負極活物質層及び正極活物質層の少なくとも一つを、本発明の固体電解質組成物で形成する。本発明の固体電解質組成物以外の組成物で固体電解質層を形成する場合、その材料としては、通常用いられる固体電解質組成物等、負極活物質層を形成する場合、公知の負極活物質組成物、負極活物質としての金属若しくは合金(金属層)又は負極活物質としての炭素質材料(炭素質材料層)等が挙げられる。また、全固体二次電池の製造時に負極活物質層を形成せずに、後述する初期化若しくは使用時の充電で負極集電体に蓄積した、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンを電子と結合させて、金属として負極集電体等の上に析出させることにより、負極活物質層を形成することもできる。
固体電解質層等は、例えば基板若しくは活物質層上で、固体電解質組成物等を後述する加圧条件下で加圧成形して形成することもできる。
【0218】
<各層の形成(製膜)>
全固体二次電池の製造に用いる組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布が挙げられる。
このとき、組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を除去し、固体状態(塗布乾燥層)にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
【0219】
上記のようにして、本発明の固体電解質組成物を塗布乾燥すると、固体粒子同士等が強固に結着し、更に固体粒子間の界面抵抗が小さな、必要により空隙の少ない密な塗布乾燥層を形成することができる。
【0220】
塗布した組成物、又は、全固体二次電池を作製した後の各層又は全固体二次電池は、加圧することが好ましい。また、各層を積層した状態で加圧することも好ましい。加圧方法としては油圧シリンダープレス機等が挙げられる。加圧力としては、特に限定されず、一般的には、10MPa以上、例えば50〜1500MPaの範囲であることが好ましい。
また、塗布した組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒を予め乾燥させた状態で行ってもよいし、塗布溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布しても良いし、塗布乾燥プレスを同時及び/又は逐次行っても良い。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
【0221】
加圧中の雰囲気としては、特に限定されず、大気下、乾燥空気下(露点−20℃以下)及び不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)などいずれでもよい。無機固体電解質は水分と反応するため、加圧中の雰囲気は、乾燥空気下又は不活性ガス中が好ましい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。固体電解質含有シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
【0222】
<初期化>
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を解放することにより、行うことができる。
【0223】
[全固体二次電池の用途]
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に制限はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【実施例】
【0224】
以下に、実施例に基づき本発明について更に詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0225】
実施例及び比較例に用いるバインダー及び無機固体電解質を以下のようにしてそれぞれ合成した。
【0226】
<合成例1:ポリマーB−1の合成(粒子状バインダーB−1分散液の調製)>
(ポリマーB−1の前駆体Aの合成:官能性ポリマーの合成)
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに酪酸ブチル(和光純薬工業社製)を340質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを30分間導入した後に80℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(構成成分(M2)を導くドデシルアクリレート(和光純薬工業社製)43質量部、官能基を有する重合性化合物として2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート(和光純薬工業社製)100質量部、酪酸ブチル(和光純薬工業社製)165質量部、重合開始剤V−601(商品名、和光純薬工業社製)2.9質量部を混合した液)を2時間かけて滴下し、その後80℃で2時間攪拌した。その後、90℃に昇温し、更に2時間攪拌することで、ポリマーB−1の前駆体Aの溶液を得た。ポリマーB−1の前駆体Aを下記に示す。
【0227】
【化25】
【0228】
(ポリマーB−1の前駆体Bの合成:構成成分(MM−1)の形成)
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、得られた前駆体Aの溶液を370質量部、酪酸ブチル(和光純薬工業社製)を115質量部、下記のようにして得た、マクロモノマーMM−1の側鎖部分(重合鎖)を形成する側鎖形成化合物(重合鎖形成化合物)m−1の溶液を固形分に換算して48質量部、ネオスタンU−600(商品名、日東化成社製)を0.24質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを30分間導入した後に、80℃に昇温して2時間攪拌することで、マクロモノマー構成成分(MM−1)を形成して、ポリマーB−1の前駆体Bの溶液を得た。ポリマーB−1の前駆体Bを下記に示す。
【0229】
【化26】
【0230】
− マクロモノマーMM−1の側鎖形成化合物m−1の合成 −
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコにトルエンを190質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に80℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(下記処方β)を2時間かけて滴下し、80℃で2時間攪拌した。その後、V−601を更に0.2g添加し、95℃で2時間攪拌することで側鎖形成化合物m−1の溶液を得た。固形分濃度は40.5%、側鎖形成化合物m−1の質量平均分子量は15,000であった。得られた側鎖形成化合物m−1を以下に示す。
(処方β)
メタクリル酸ドデシル(和光純薬工業社製) 150質量部
メタクリル酸メチル(和光純薬工業社製) 59質量部
2−スルファニルエタノール(和光純薬社製) 1質量部
V−601(和光純薬工業社製) 1.9質量部
【0231】
【化27】
【0232】
(ポリマーB−1の合成(粒子状バインダーB−1分散液の調製):構成成分(K)の形成)
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに酪酸ブチル(和光純薬工業社製)を185質量部、上記で得られた前駆体Bの溶液を250g加え、流速200mL/minにて窒素ガスを30分間導入した後に30℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(ベンジルアミン(和光純薬工業社製)20質量部と酪酸ブチル(和光純薬工業社製)360質量部とを混合した液)を2時間かけて滴下することで、構成成分K−1を形成した。こうして、下記に示すポリマーB−1を含む粒子状バインダーB−1の分散液を得た。
得られたポリマーB−1はアクリル樹脂であり、その構成成分の含有率(質量%)を表1に示す。ポリマーB−1中の構成成分(MM−1)のSP値は9.2であった。
【0233】
【化28】
【0234】
<合成例2〜14:ポリマーB−2〜B−5及びB−7〜B−15の合成(粒子状バインダー分散液の調製)>
上記ポリマーB−1の合成において、各構成成分を導く化合物として下記表1に記載の構成成分を導く若しくは形成する化合物を同表に記載の含有量となる使用量で用いたこと以外は、上記ポリマーB−1の合成と同様にして、ポリマーB−2〜B−5及びB−7〜B−15(粒子状バインダー分散液)をそれぞれ合成(調製)した。
得られたポリマーB−2〜B−5及びB−7〜B−15はいずれもアクリル樹脂であり、その構成成分の含有率(質量%)を表1に示す。
【0235】
粒子状バインダーB−7分散液等の調製に用いたマクロモノマーMM−3の側鎖部分(重合鎖)を形成する側鎖形成化合物(重合鎖形成化合物)m−3は、片末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(X−22−170DX:商品名、信越化学社製)であり、その化学構造を下記に示す。下記重合鎖形成化合物m−3のSP値は9.0であり、ポリマーB−7等中の構成成分(MM−3)のSP値は9.1であった。
【化29】
【0236】
<合成例15:ポリマーB−6の合成(粒子状バインダーB−6分散液の調製)>
(ポリマーB−6の前駆体Aの合成:官能性ポリマーの合成)
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに下記のようにして得たマクロモノマーMM−2を36質量部、酪酸ブチル(和光純薬工業社製)を340質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを30分間導入した後に80℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(構成成分(M2)を導くドデシルアクリレート(和光純薬工業社製)43質量部、官能基を有する重合性化合物として2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート(和光純薬工業社製)100質量部、酪酸ブチル(和光純薬工業社製)165質量部、重合開始剤V−601(商品名、和光純薬工業社製)2.9質量部を混合した液)を2時間かけて滴下し、その後80℃で2時間攪拌した。その後、90℃に昇温し、更に2時間攪拌することで、ポリマーB−6の前駆体Aの溶液を得た。ポリマーB−6の前駆体Aを下記に示す。
【0237】
【化30】
【0238】
(ポリマーB−6の合成(粒子状バインダーB−6分散液の調製):構成成分(K)の形成)
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに酪酸ブチル(和光純薬工業社製)を185質量部、上記で得られた前駆体Bの溶液を250g加え、流速200mL/minにて窒素ガスを30分間導入した後に30℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(ベンジルアミン(和光純薬工業社製)20質量部と酪酸ブチル(和光純薬工業社製)360質量部とを混合した液)を2時間かけて滴下することで、構成成分K−1を形成した。こうして、下記に示すポリマーB−1を含む粒子状バインダーB−6の分散液を得た。
得られたポリマーB−6はアクリル樹脂であり、その構成成分の含有率(質量%)を表1に示す。ポリマーB−6中の構成成分(MM−2)は、ポリマーB−1の構成成分(MM−1)と同一成分であり、そのSP値は9.2であった。
【0239】
− マクロモノマーMM−2の合成 −
還流冷却管、ガス導入コックを付した1L三口フラスコにトルエンを190質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に80℃に昇温した。これに、別容器にて調製した液(下記処方α)を2時間かけて滴下し、80℃で2時間攪拌した。その後、V−601を更に0.2g添加し、95℃で2時間攪拌した。攪拌後、80℃に保った溶液に、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(東京化成工業社製)を0.025質量部、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート(和光純薬工業社製)を13質量部、ネオスタンU−600(商品名:日東化成社製)を0.5質量部加えて、120℃3時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、メタノールに加えて沈殿させ、上澄みをデカンテーションで除いた後、メタノールで2回洗浄し、酪酸ブチル300部を加えて溶解させた。得られた溶液の一部を減圧留去することでマクロモノマーMM−2の溶液を得た。固形分濃度は42.1%であり、構成成分(MM−2)のSP値は9.2、質量平均分子量は18,000であった。得られたマクロモノマーMM−2を以下に示す。
(処方α)
メタクリル酸ドデシル(和光純薬工業社製) 150質量部
メタクリル酸メチル(和光純薬工業社製) 59質量部
2−スルファニルエタノール(和光純薬社製) 1質量部
V−601(和光純薬工業社製) 1.9質量部
【0240】
【化31】
【0241】
<合成例16:ポリマーB−16の合成(粒子状バインダーB−16分散液の調製)>
(構成成分K−18を導くジオール化合物M−18の合成)
200mL3つ口フラスコに、3−アミノ−1,2−プロパンジオール(東京化成社製)20.0gを加え、0℃で撹拌した。そこにベンジルイソシアネート(東京化成社製)29.2gを1時間かけて滴下した。その後80℃で4時間撹拌することで、ジオール化合物M−18を合成した。得られたジオール化合物M−18を以下に示す。
【0242】
【化32】
【0243】
<ポリマーB−16の合成(粒子状バインダーB−16分散液の調製)>
500mL3つ口フラスコに、ジオール化合物M−18を38g、マクロモノマーMM−4として両末端水酸基水素化ポリブタジエン(NISSO−PB GI−1000:商品名、構成成分(MM−4)のSP値8.5、日本曹達社製)を20g、ジフェニルメタンジイソシアネート(富士フイルム和光社製)を42g加え、MEK(メチルエチルケトン)200gに溶解した。この溶液を80℃で撹拌し、均一に溶解させた。この溶液に、ネオスタンU−600(商品名、日東化成社製)100mgを添加して80℃で4時間攪伴し、白濁した粘性ポリマー溶液を得た。この溶液にメタノール1gを加えてポリマー末端を封止して、重合反応を停止し、MEKで希釈してポリマーB−16の20質量%MEK溶液を得た。
次に、上記で得られたポリマー溶液を500rpmで撹拌しながら、酪酸ブチル1000gを1時間かけて滴下し、ポリマーB−16の乳化液を得た。得られた乳化液を、45℃、40hPaでMEKを除去して、下記に示すポリマーB−16を含む粒子状バインダーB−16の10質量%酪酸ブチル分散液を得た。ポリマーB−16はポリウレタン樹脂であり、その構成成分の含有率(質量%)を表1に示す。
【0244】
【化33】
【0245】
<合成例17〜20:ポリマーBC−1〜BC−4の合成(粒子状バインダー溶液若しくは分散液の調製)>
上記ポリマーB−1の合成において、各構成成分を導く化合物として下記表1に記載の構成成分を導く若しくは形成する化合物を同表に記載の含有量となる使用量で用いたこと以外は、上記ポリマーB−1の合成と同様にして、ポリマーBC−1及びBC−4(粒子状バインダー溶液若しくは分散液)をそれぞれ合成(調製)した。
また、上記ポリマーB−6の合成において、各構成成分を導く化合物として下記表1に記載の構成成分を導く化合物を同表に記載の含有量となる使用量で用いたこと以外は、上記ポリマーB−6の合成と同様にして、ポリマーBC−2及びBC−3(粒子状バインダー分散液)をそれぞれ合成(調製)した。
【0246】
得られた各粒子状バインダー分散液について、粒子状バインダーの平均粒径を、上述の方法により、測定した。その結果を表1に示す。
また、ポリマー等の質量平均分子量は、上述の方法により、測定した。
得られた各粒子状バインダー分散液について、ポリマーの分散状態(粒子状バインダーの形成状態)を目視により、評価して、表1の「形状」欄に示した。ポリマーが分散媒に分散して粒子状バインダーを形成している状態を「粒子」と称する。一方、ポリマーが分散媒に分散せずに沈殿している状態を「沈殿」と称し、ポリマーが分散媒に溶解して粒子状バインダーを形成せず溶液となっている状態を「溶液」と称する。
【0247】
<粒子状バインダーの溶解成分量:Y/(X+Y)の定量>
上記で調製した粒子状バインダー分散液等を固形分濃度10%に調整した。得られた液1.6gをポリプロピレン製チューブ(日立工機社製)内に入れ、チューブシーラー(日立工機社製)で密封した。次いで、このチューブを小型超遠心機(商品名:himac CS−150FNX、日立工機製)のローターにセットし、温度20℃、回転数100000rpmの条件で1時間、超遠心分離処理に付した。この処理により沈降した成分の固形分量(含有量:X)と、沈降せずに上澄み中に残留した成分の固形分量(含有量:Y)から、以下式に従って、溶解成分量を算出した。
溶解成分量=Y/(X+Y)
本試験における溶解成分量は、粒子状バインダー分散液中の酢酸ブチル(ClogP=2.8)に対する値である。
【0248】
【表1】
【0249】
表1において、溶解成分量「Y/(X+Y)」は質量基準であり、構成成分(K)の番号は上記例示構成成分に付した番号を示す。
表中のMM−1〜MM−4は、それぞれ、対応するマクロモノマー由来の構成成分を示すが、質量平均分子量はマクロモノマーの測定値である。
構成成分(K)以外の構成成分を、そのClogP値とともに、以下に示す。
【化34】
【0250】
粒子状バインダーNo.BC−2及びBC−3において、構成成分AA及びMAは、構成成分(M2)に相当するが、便宜上、構成成分(K)欄に記載している。
粒子状バインダーNo.B−16については、便宜上、上記式(I−1)で表される構成成分を導く「MDI」を「構成成分(M2)」欄に、RP2が両末端水酸基水素化ポリブタジエン由来の炭化水素ポリマー鎖である上記式(I−3)で表される構成成分を「MM−4」として「構成成分(MM)」欄に示す。
【0251】
<合成例21:硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラスの合成>
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.HamGa,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235及びA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
【0252】
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。なお、LiS及びPの混合比は、モル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス、LPS)6.20gを得た。イオン伝導度は0.28mS/cmであった。上記測定方法によるLi−P−S系ガラスの平均粒径は15μmであった。
【0253】
実施例1
固体電解質組成物及び固体電解質含有シートをそれぞれ製造して、この固体電解質組成物及び固体電解質含有シートについて下記特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0254】
<固体電解質組成物の調製>
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成例21で合成したLPS4.85g、表2に示す粒子状バインダーの分散液(固形分質量として0.15g)、及び表2に示す分散媒を16.0g投入した。その後に、この容器をフリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にセットし、温度25℃、回転数150rpmで10分間混合を続けて、固体電解質組成物C−1〜C−17及びBC−1〜BC−4をそれぞれ調製した。
【0255】
<固体電解質含有シートの作製>
上記で得られた各固体電解質組成物C−1〜C−17及びCS−1〜CS−4を厚み20μmのアルミニウム箔上に、アプリケーター(商品名:SA−201ベーカー式アプリケーター、テスター産業社製)により塗布し、80℃で2時間加熱し、固体電解質組成物を乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、120℃の温度及び600MPaの圧力で10秒間、乾燥させた固体電解質組成物を加熱及び加圧し、固体電解質含有シートS−1〜S−17及びBS−1〜BS−4をそれぞれ作製した。固体電解質層の膜厚は50μmであった。
【0256】
<評価1:分散性の評価>
固体電解質組成物を、直径10mm、高さ15cmのガラス試験管に高さ10cmまで加え、25℃で2時間静置した後に、分離した上澄みの高さを目視で確認して測定した。固体電解質組成物の全量(高さ10cm)に対する上澄みの高さの比:上澄みの高さ/全量の高さを求めた。この比が下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、固体電解質組成物の分散性(分散安定性)を評価した。上記比を算出するに際し、全量とはガラス試験管に投入した固体電解質組成物の全量(10cm)をいい、上澄みの高さとは固体電解質組成物の固形成分が沈降して生じた(固液分離した)上澄み液の量(cm)をいう。
本試験において、上記比が小さいほど、分散性に優れることを示し、評価ランク「5」以上が合格レベルである。
−評価ランク−
8: 上澄みの高さ/全量の高さ<0.1
7: 0.1≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.2
6: 0.2≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.3
5: 0.3≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.4
4: 0.4≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.5
3: 0.5≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.7
2: 0.7≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.9
1: 0.9≦上澄みの高さ/全量の高さ
【0257】
<評価2:結着性の評価>
固体電解質含有シートを径の異なる棒に巻きつけ、固体電解質層の欠け、割れ若しくはヒビの有無、及び、固体電解質層のアルミニウム箔(集電体)からの剥がれの有無を確認した。これらの欠陥等の異常が発生することなく巻きつけられた棒の最小径が下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、結着性を評価した。
本発明において、棒の最小径が小さいほど、結着性が強固であることを示し、評価ランク「5」以上が合格である。
−結着性の評価ランク−
8: 最少径<2mm
7: 2mm≦最少径<4mm
6: 4mm≦最少径<6mm
5: 6mm≦最少径<10mm
4: 10mm≦最少径<14mm
3: 14mm≦最少径<20mm
2: 20mm≦最少径<32mm
1: 32mm≦
【0258】
<評価3:イオン伝導度の測定>
上記で得られた固体電解質含有シートを直径14.5mmの円板状に切り出し、この固体電解質含有シートを図2に示すコインケース11に入れた。具体的には、直径15mmの円板状に切り出したアルミニウム箔(図2に図示しない)を、固体電解質含有シートの固体電解質層と接触させて全固体二次電池用積層体12(アルミニウム−固体電解質層−アルミニウムからなる積層体)を形成し、スペーサーとワッシャー(ともに図2において図示しない)を組み込んで、ステンレス製の2032型コインケース11に入れた。コインケース11をかしめることで、イオン伝導度測定用の全固体二次電池13を作製した。
【0259】
得られたイオン伝導度測定用の全固体二次電池13を用いて、イオン伝導度を測定した。具体的には、25℃の恒温槽中、SOLARTRON社製 1255B FREQUENCY RESPONSE ANALYZER(商品名)を用いて電圧振幅5mV、周波数1MHz〜1Hzまで交流インピーダンス測定した。これにより試料の膜厚方向の抵抗を求め、下記式(A)により計算して求めた。
イオン伝導度(mS/cm)=
1000×試料膜厚(cm)/{抵抗(Ω)×試料面積(cm)}・・・式(A)
式(A)において、試料膜厚及び試料面積は、全固体二次電池用積層体12を2032型コインケース16に入れる前に測定し、アルミニウム箔の厚みを差し引いた値(すなわち、固体電解質層の膜厚及び面積)である。
【0260】
得られたイオン伝導度が下記評価ランクのいずれに含まれるかを判定した。
本試験におけるイオン伝導度は評価ランク「4」以上が合格である。
−評価ランク−
8: 0.5mS/cm≦イオン伝導度
7: 0.4mS/cm≦イオン伝導度<0.5mS/cm
6: 0.3mS/cm≦イオン伝導度<0.4mS/cm
5: 0.2mS/cm≦イオン伝導度<0.3mS/cm
4: 0.1mS/cm≦イオン伝導度<0.2mS/cm
3: 0.05mS/cm≦イオン伝導度<0.1mS/cm
2: 0.01mS/cm≦イオン伝導度<0.05mS/cm
1: イオン伝導度<0.01mS/cm
【0261】
<評価4:空隙率の評価>
得られた固体電解質含有シートを剃刀で割断し、イオンミリング(日立ハイテクノロジーズ社製:IM4000PLUS(商品名))により、固体電解質含有シートの断面出しを行った。断面を卓上顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製:Miniscope TM3030PLUS(商品名))で観察し、画像処理を行い、画像の明度から空隙部のみ黒くなるように2値化を行い、空隙部の面積の全面積に対する割合を算出することで、空隙率(空隙部の合計面積/観測領域の総面積)を算出した。空隙率を下記評価ランクにより評価した。
本試験において、空隙率が小さいほど、固体粒子が密に堆積した固体電解質層となり、イオン伝導度と、エネルギー密度を向上させる機能を発揮することを示し、評価ランク「3」以上が合格である。
−評価ランク−
8: 0<空隙率≦0.01
7: 0.01<空隙率≦0.02
6: 0.02<空隙率≦0.04
5: 0.04<空隙率≦0.06
4: 0.06<空隙率≦0.08
3: 0.08<空隙率≦0.10
2: 0.10<空隙率≦0.15
1: 0.15<空隙率
【0262】
【表2】
【0263】
表2に示す結果から次のことが分かる。
本発明で規定する式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満である構成成分を有するポリマーを含まない粒子状バインダーを用いた固体電解質組成物BC−1〜BC−4は分散性が十分ではなかった。そのため、これら固体電解質組成物で作製した固体電解質含有シートBS−1〜BS−4は結着性及びイオン伝導度に劣り、固体電解質含有シートBS−2及びBS−3においては固体電解質層の空隙率も大きい。
これに対して、本発明で規定する式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満である構成成分を有するポリマーを含む平均粒径が5nm〜10μmの粒子状バインダーと無機固体電解質と分散媒とを含む本発明の固体電解質組成物C−1〜C−17は、いずれも、優れた分散性を示す。そのため、これら固体電解質組成物を用いて作製した固体電解質含有シートS−1〜S−17は、優れた結着性及びイオン伝導度を両立している。更には、いずれの固体電解質含有シートも、空隙が少なく固体粒子が密に堆積した固体電解質層を有している。
【0264】
実施例2
全固体二次電池を製造して、下記特性を評価した。その結果を表3に示す。
<正極用組成物の調製>
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、合成例21で合成したLPSを2.7g、表3に示す粒子状バインダーの分散液(固形分質量として0.3g)、及び表3に示す分散媒を22g投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、25℃で、回転数300pmで60分間攪拌した。その後、正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NMC)7.0gを投入し、同様にして、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、25℃、回転数100rpmで5分間混合を続け、正極用組成物U−1〜U−17及びV−1〜V−4をそれぞれ調製した。
【0265】
【表3】
【0266】
<表の略号>
NMC:LiNi1/3Co1/3Mn1/3
LPS:合成例21で合成した硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)
THF:テトラヒドロフラン
【0267】
<全固体二次電池用正極シートの作製>
上記で得られた正極用組成物を厚み20μmのアルミニウム箔(正極集電体)上に、ベーカー式アプリケーター(商品名:SA−201、テスター産業社製)により塗布し、80℃で2時間加熱し、正極用組成物を乾燥(分散媒を除去)した。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた正極用組成物を25℃で加圧(10MPa、1分)し、膜厚80μmの正極活物質層を有する全固体二次電池用正極シートPU−1〜PU−17及びPV−1〜PV−4をそれぞれ作製した。
次いで、表4に示す各全固体二次電池用正極シートの正極活物質層上に、上記実施例1で作製した、表4の「固体電解質層」欄に示す固体電解質含有シートを固体電解質層が正極活物質層に接するように重ね、プレス機を用いて25℃で50MPa加圧して転写(積層)した後に、25℃で600MPa加圧することで、膜厚50μmの固体電解質層を備えた全固体二次電池用正極シートPU−1〜PU−17及びPV−1〜PV−4をそれぞれ作製した。
【0268】
<全固体二次電池の製造>
作製した各全固体二次電池用正極シート(固体電解質含有シートのアルミニウム箔は剥離済み)を直径14.5mmの円板状に切り出し、図2に示すように、スペーサーとワッシャー(図2において図示せず)を組み込んだステンレス製の2032型コインケース11に入れて、固体電解質層上にシート形状の黒鉛負極層(負極活物質層:厚さ80μm)を重ねた。その上に更にステンレス鋼箔(負極集電体)を重ねて全固体二次電池用積層体12(アルミニウム−正極活物質層−固体電解質層−黒鉛負極層−ステンレス鋼からなる積層体)を形成した。その後、2032型コインケース11をかしめることで、図2に示す全固体二次電池201〜217及びc21〜c24をそれぞれ製造した。このようにして製造した全固体二次電池13は、図1に示す層構成を有する。
【0269】
<評価1:電池特性1(放電容量維持率)>
全固体二次電池201〜217及びc21〜c24の電池特性として、放電容量維持率を測定して、サイクル特性を評価した。
具体的には、各全固体二次電池の放電容量維持率を、充放電評価装置:TOSCAT−3000(商品名、東洋システム社製)により測定した。充電は、電流密度0.1mA/cmで電池電圧が3.6Vに達するまで行った。放電は、電流密度0.1mA/cmで電池電圧が2.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして3サイクル充放電を繰り返して、全固体二次電池を初期化した。初期化後の充放電1サイクル目の放電容量(初期放電容量)を100%としたときに、放電容量維持率(初期放電容量に対する放電容量)が80%に達した際の充放電サイクル数が、下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、サイクル特性を評価した。
本試験において、放電容量維持率は、評価ランク「5」以上が合格である。
なお、全固体二次電池201〜217の初期放電容量は、いずれも、全固体二次電池として機能するのに十分な値を示した。
−放電容量維持率の評価ランク−
8: 500サイクル以上
7: 300サイクル以上、500サイクル未満
6: 200サイクル以上、300サイクル未満
5: 150サイクル以上、200サイクル未満
4: 80サイクル以上、150サイクル未満
3: 40サイクル以上、80サイクル未満
2: 20サイクル以上、40サイクル未満
1: 20サイクル未満
【0270】
<評価2:電池特性2(抵抗)>
全固体二次電池201〜217及びc21〜c24の電池特性として、その抵抗を測定して、抵抗の高低を評価した。
各全固体二次電池の抵抗を、充放電評価装置:TOSCAT−3000(商品名、東洋システム社製)により評価した。充電は、電流密度0.1mA/cmで電池電圧が4.2Vに達するまで行った。放電は、電流密度0.2mA/cmで電池電圧が2.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして繰り返して3サイクル充放電して、3サイクル目の5mAh/g(活物質質量1g当たりの電気量)放電後の電池電圧を読み取った。この電池電圧が下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、全固体二次電池の抵抗を評価した。電池電圧が高いほど低抵抗であることを示す。本試験において、評価ランク「4」以上が合格である。
−抵抗の評価ランク−
8: 4.1V以上
7: 4.0V以上、4.1V未満
6: 3.9V以上、4.0V未満
5: 3.7V以上、3.9V未満
4: 3.5V以上、3.7V未満
3: 3.2V以上、3.5V未満
2: 2.5V以上、3.2V未満
1: 充放電できず
【0271】
【表4】
【0272】
表4に示す結果から次のことが分かる。
No.c21〜c24の全固体二次電池は、いずれも、下記式(H−1)又は式(H−2)で表わされる結合部を側鎖に有し、ClogP値が4以下であり、分子量が1000未満である構成成分を有するポリマーを含まない粒子状バインダーを用いて作製した、正極用組成物PV−1〜PV−4及び固体電解質含有シートBS−1〜BS−4で、正極活物質層及び固体電解質層を作製した全固体二次電池である。これらの全固体二次電池は、放電容量維持率及び抵抗のいずれも十分ではなく、電池性能に劣るものである。
これに対して、実施例1で調製した本発明の固体電解質組成物C−1〜C−17を用いて作製した、正極用組成物PU−1〜PU−17及び固体電解質含有シートS−1〜S−17で正極活物質層及び固体電解質層を作製した全固体二次電池No.201〜217は、いずれも、放電容量維持率が高く、抵抗上昇を抑え(電池電圧が高く)、優れた電池性能を示す。
【0273】
実施例1の固体電解質組成物の調製C−1〜C−17において、LPSに代えてLi0.33La0.55TiO(LLT)を用いたこと以外は、実施例1の固体電解質組成物の調製と同様にして、固体電解質としてLLTを含有する固体電解質組成物をそれぞれ調製した。これらの固体電解質組成物を用いて、実施例1及び2と同様にして、固体電解質含有シート、全固体二次電池用正極シートを作製し、全固体二次電池をそれぞれ製造し、上記各試験を行った。その結果、LLTを含有する固体電解質組成物、固体電解質含有シート及び全固体二次電池は、いずれも、LPSを含有する固体電解質組成物、これを用いた、固体電解質含有シート及び全固体二次電池と同様に、優れた特性若しくは性能を発揮することを確認した。
【0274】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0275】
本願は、2018年7月25日に日本国で特許出願された特願2018−139152に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0276】
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 2032型コインケース
12 全固体二次電池用積層体
13 全固体二次電池
図1
図2