(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具現化するためのコレット及び半導体装置の製造方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではい。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。また、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」および、それらの用語を含む別の用語)を用いる。これらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、これらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0009】
実施形態に係るコレットは、半導体素子を吸着する端面を先端部に備えている。コレットによって吸着される半導体素子は、上面にパッド電極を備えている。
【0010】
コレットの端面は、単一の面ではなく、同一面上に位置しない少なくとも2つの面で構成されている。詳細には、端面は、半導体素子のパッド電極と対向する位置に配置される第1面と、第1面よりも先端側に突出する第2面と、を備える。第2面と対向する位置にはパッド電極が配置されていない。第1面は、吸着孔の開口部を備えない非吸着面であり、第2面は、吸着孔の開口部を備えた吸着面である。つまり、コレットは、より先端側に突出した面である第2面に吸着孔の開口部を備えている。
【0011】
コレットで半導体素子を吸着する際に、コレットの吸着面である第2面を半導体素子に当接させる。詳細には、半導体素子の上面であって、パッド電極が形成されていない領域にコレットの第2面を当接させる。その際に、パッド電極と対向するコレットの第1面は、最先端である第2面よりも後退した面であるため、パッド電極と当接しない。これにより、パッド電極が変形することを抑制することができる。尚、「パッド電極と対向する位置」は、パッド電極と対向するように配置される予定の位置を含む。
【0012】
コレットは、硬質な材料で構成される。例えば、セラミックス、超硬、硬質樹脂等が挙げられる。コレットのサイズは、半導体素子の大きさ等に応じて適宜変更することができる。また、各実施形態では、コレットの端面の形状は略正方形、略長方形などの四角形であり、それらを用いて吸着する半導体素子の上面視形状は略正方形、略長方形などの四角形である例を示しているが、形状は四角形に限らない。例えば、コレットの端面は六角形等の多角形や、円形などでもよく、半導体素子の上面視形状も六角形等の多角形でもよい。また、コレットの端面形状と半導体素子の上面視形状は、必ずしも同じでなくてもよい。例えば、略正方形の端面を備えたコレットで、上面視が六角形の半導体素子を吸着してもよい。又は、略六角形の端面を備えたコレットで、上面視が四角形の半導体素子を吸着してもよい。つまり、半導体素子の上面視形状にかかわらず、半導体素子の上面のパッド電極の配置に応じて、コレットの端面の第1面及び第2面を配置させることが好ましい。
【0013】
<実施形態1>
実施形態1に係るコレット10を
図1A〜
図1Eに示す。
図2A〜
図2Bは、実施形態1に係るコレット10によって吸着するのに適した半導体素子1Aを示す。コレット10は、
図1Aに示すような外観を示す部材であり、コレット10は、本体部11と、その先端側に備えられ外径が先細り形状となる先端部12と、を有する長尺状の部材である。また、コレット10は、
図1Bに示すような内部構造を備えた部材であり、上端から下端(端面)まで、つまり、本体部11内と先端部12内とを貫通する吸着孔V1を内部に備えた筒状部材である。
【0014】
先端部12の端面121は、半導体素子を吸着するための吸着面を含み、外形が略正方形の面である。
図1C、
図1Dに示すように、端面121は、1つの第1面1211と、その第1面1211を挟み、対向する2つの辺に沿って配置される2つの第2面1212と、を備えている。第2面1212は、第1面1211の右側に位置する第1辺部1212aと、左側に位置する第2辺部1212bと、備える。第1辺部1212aと第2辺部1212bは同一面上に位置しており、それぞれ第1面1211よりも先端側(
図1Eにおいて下側)に突出している。第1面1211及び第2面1212はそれぞれ略長方形であり、これら3つの面を備えた端面を、端面側から見た外形が略正方形である。
【0015】
コレット10の端面121の幅Wc1は、半導体素子1Aの幅Wdと同程度であればよい。例えば、コレット10の端面121の幅Wc1は、半導体素子1Aの幅Wdの±10%程度の大きさとすることができ、好ましくは、±5%程度の大きさである。尚、図面では横方向の幅を示しているが、縦方向の幅(長さ)も同様である。
【0016】
コレット10の第1面1211の幅(
図1Dにおける横方向の幅)Wf1は、2つの第2面1212a、1212b間の距離でもあり、半導体素子1Aのパッド電極2Aの幅Wpよりも大きい。コレット10の第1面1211の幅Wf1は、半導体素子1Aのパッド電極2Aの幅Wpよりも300%〜500%程度大きいことが好ましい。例えば、パッド電極の位置がずれたり、半導体素子をウエハシート上からピックアップする際に、コレットと半導体素子の位置にずれが生じたりした場合、上述のようなクリアランスを有することで、パッド電極とコレットとが当接することを抑制し易くすることができる。コレット10の第2面1212の高さH1(第1面と第2面の距離)は、半導体素子1Aのパッド電極2Aの高さHpよりも高い。コレット10の端面の各部位のサイズを上述のようにすることで、コレット10が半導体素子1Aのパッド電極2Aに接触するのを抑制することができる。第2面の高さH1は、パッド電極の高さHpに対して200%以上高ければよい。ただし、あまり高すぎる場合、すなわち、第1面と第2面との高低差が大きすぎると、第2面を支持する部分の強度が低下し易くなり、折れなどの破損がし易くなる。そのため、例えば、パッド電極に対して200%〜3000%程度の高さとすることができる。
【0017】
第1面1211の右側に位置する第1辺部1212aと、左側に位置する第2辺部1212bとは、それぞれ吸着孔の開口部Vo1を3つずつ備えた吸着面である。つまり、外形が略正方形の端面のうち、実質的に吸着面として機能するのは、長方形である第1辺部1212aと第2辺部1212bである。第1辺部1212a、第2辺部1212bは、共に、コレットの中心軸に対して略垂直な面である。第1面1211は、非吸着面であるため、平面又は曲面などとすることができる。
【0018】
第1辺部1212aと第2辺部1212bとは、それぞれ同じ幅Wg1とすることができる。また、第1辺部1212aと第2辺部1212bは、端面121の右辺及び左辺にそれぞれ沿って配置されることが好ましい。また、
図1Dに示すように、第1辺部1212aと第2辺部1212bは、それぞれ端面121の上辺及び下辺に達する長さとすることが好ましい。また、
図1D等では、第2面1212は右辺と左辺に分かれて2つ配置されているが、上辺又は下辺、あるいは、中央に、2つの第2面を繋ぐ連結部を備えていてもよい。例えば、第1面を囲む枠状の第2面とし、その2つの辺に吸着部を備える第2面としてもよい。
【0019】
吸着孔V1は、先端部12の内部であって、端面121に開口部Vo1を備えた小径部Vn1と、主として本体部11の内部であって、小径部Vn1よりも太い内径の大径部Vw1と、を備える。1つの大径部Vw1と6つの小径部Vn1とは、コレット10の内部で繋がっており、これらがまとめて1つの吸引孔として機能する。大径部Vw1はコレット10の本体部11の上端に開口部を備えており、吸引機器に接続される。大径部Vw1及び小径部Vn1を含む吸着孔V1内を、大径部Vw1側から吸引して減圧することにより、端面121の開口部Vo1において半導体素子を吸着することができる。複数の小径部Vn1を備える場合、それらを同じ内径とすることで、大径部Vw1側から吸引した際に、各小径部にかかる吸引力を均等にすることができ、バランスよく半導体素子を吸着することができる。
【0020】
実施形態1では、吸着孔V1は、本体部11の中心を貫通する1つの大径部Vw1と、端面121に開口部Vo1を備える6つの小径部Vn1と、を備える。各小径部Vn1はそれぞれ同じ内径であり、断面視が円形である。また、第2面1212の第1辺部1212a及び第2辺部1212bに設けられる各開口部Vo1は、それぞれ円形である。大径部Vw1は、断面視が円形である。また、
図1Bに示すように、大径部Vw1と小径部Vn1との間に、中径部Vm1を備えている。中径部Vm1の内径は、大径部Vw1よりも小さく、小径部Vn1の内径よりも大きい。このような中径部は、必ずしも必須ではなく、省略することができる。また、中径部を備える場合は、1又は2以上備えることができる。
【0021】
吸着孔V1の小径部Vn1の開口部Vo1は、端面121において、線対称となる位置に配置されるのが好ましい。例えば、
図1C、
図1Dに示すように、第1辺部1212a及び第2辺部1212bにおいて、それぞれ中央部に1つの開口部Vo1と、中央部から同じ距離だけ上下方向に離間した位置に配置される2つの開口部Vo1と、を備えている。開口部Vo1をこのような配置とすることで、半導体素子の吸着時に、バランスよく吸着することができる。
【0022】
また、各第2面において、複数の開口部Vo1を離間して配置していることで、それら開口部Vo1の間の面を半導体素子の上面と当接させることができる。例えば、
図1Dに示す第2面1212a、1212bでは、開口部Vo1の径よりも、開口部Vo1間の距離を大きくしている。換言すると、開口部Vo1の面積よりも、半導体素子の上面と接する第2面の当接面の面積を大きくすることができる。これにより、吸着時に半導体素子の上面にかかる負荷をその面内で分散させることができ、半導体素子の上面を損傷させにくくすることができる。
【0023】
上述のように、実施形態1に係るコレット10は、非吸着面として第1面1211を備えることで、半導体素子1Aのパッド電極2Aが損傷しにくくすることに加え、開口部Vo1の周辺に開口部よりも広い面積の当接面を備えた吸着面である第2面1212を備えることで、半導体素子1Aの上面1aにかかる負荷の集中を抑制して半導体素子1Aの損傷を抑制することができる。
【0024】
上述のようなコレット10は、
図2Aに示すような上面視が略正方形の半導体素子1Aを吸着するのに適している。また、上面視が六角形などの半導体素子を用いることもできる。
【0025】
図2A、
図2Bに示すように、上面視が略正方形の半導体素子1Aは、その上面1aに、2つのパッド電極2Aが備えられている。2つのパッド電極2Aは、
図2Aに示すように、略正方形の半導体素子1Aの上辺側の中央近傍に1つ、下辺側の中央近傍に1つ、配置されている。コレット10の端面121の第1面1211は、この2つのパッド電極2Aの両方と対向するように、端面121の中央において上辺側から下辺側に連続するような1つの面として設けられている。
【0026】
<実施形態2>
実施形態2は、実施形態1に係るコレットを用いて半導体素子をピックアップする工程を含む半導体装置の製造方法であり、以下の工程を備える。1)半導体素子を準備する工程、2)コレットを準備する工程、3)半導体素子をコレットでピックアップする工程、を少なくとも備える。以下、各工程について詳説する。
【0027】
1)半導体素子を準備する工程
図2Aは、準備された半導体素子1Aの上面であり、
図2Bは、
図2Aに示す半導体素子1Aの2B−2B線における断面図である。半導体素子1Aは、積層構造体4Aと、積層構造体4Aの上面1aに配置されるパッド電極2Aと、を備える。
図2Aに示す例では、さらにパッド電極2Aに接続される補助電極3Aを備えている。半導体素子1Aは、例えば、半導体発光素子や、ツェナーダイオードなどの保護素子、受光素子、トランジスタ等が挙げられる。これら半導体素子の組成や構造は、公知のものを用いることができる。
【0028】
図2Aは、半導体発光素子を例示したものであり、上面視が略正方形の積層構造体4Aは、発光層を含む半導体層と、素子基板と、を備えている。パッド電極2Aは、積層構造体4Aの半導体層と接続されており、n型半導体層に1つ、p型半導体層に1つ、あわせて2つ配置されている。
【0029】
2つのパッド電極2Aは、
図2Aにおいて、略正方形の半導体素子1Aの上辺側の中央近傍に1つ、下辺側の中央近傍に1つ、配置されている。各パッド電極2Aは、上面視が円形又は四角形、更にそれらを面取りした形状など、任意の形状とすることができる。
【0030】
2)コレットを準備する工程
実施形態1に係るコレット10を準備する。準備したコレットは、
図1A〜
図1Eに示すように、先端部12の端面121は、外形が略正方形であり、パッド電極と対向する位置に配置される第1面1211と、第1面1211よりも先端側に突出する第2面1212と、を備えている。第2面1212には吸着孔Vo1を備えている。第2面1212は、第1面1211を挟むように、対向する2つの辺に沿って配置されている。
【0031】
3)半導体素子をコレットでピックアップする工程
図3Aは、コレット10の端面121と、半導体素子1Aの上面とを重ねた状態を示す図であり、薄墨で示す部分が、コレット10の第2面1212と半導体素子1Aとが当接する領域である。
図3Bは、半導体素子1Aの上面1aに、コレット10の先端部12の端面121のうち、第2面1212を当接させた状態を示す図である。コレット10の第1面1211が、半導体素子1Aのパッド電極2Aの上方に配置されている。第1面1211と第2面1212との距離H1は、パッド電極2Aの高さよりも高いため、パッド電極2Aの上面にコレット10の第1面1211は接していない。また、第1面1211の幅Wf1が、パッド電極2Aの幅Wpよりも大きいため、パッド電極2Aの側面も、コレットに接していない。このようなコレットを用いて半導体素子1Aを吸着することで、パッド電極2Aが損傷することを抑制することができる。
【0032】
図2Aに示すような、上面視が正方形であって、パッド電極が正方形の略中央線上に配置され、中央線を挟む両側に、パッド電極が配置されない領域が比較的広い面積を備えた半導体素子の場合、上述のように、吸着面として2つの第2面を備えたコレットを用いることが好ましい。尚、正方形の中央線は、例えば、半導体素子の上面の中心を通るほか、少しずれた位置を通る中央線も含む。さらに、例えば、上辺に垂直な中央線のほか、上辺に対して90度±5度程度傾斜する線上に位置する中央線も含む。
【0033】
<実施形態3>
実施形態3に係るコレット30を
図4A〜
図4Cに示す。コレット30は、実施形態1で示したコレット10の本体部と同様の本体部を備え、先端部の端面の形状が異なる。そのため、主として端面について説明し、他の部分の説明は省略する。
【0034】
図4Aは、実施形態3に係るコレット30の先端部32の斜視図である。
図5A〜
図5Bは、実施形態3に係るコレット30によって吸着するのに適した半導体素子1Bを示す。
図4Bは、コレット30を端面321側から見た図である。
図4Cは、
図4Aの4C−4C線における断面図である。
【0035】
コレット30の端面321は、外形が略正方形の面である。端面321は、1つの第1面3211と、その第1面3211を挟み、対向する2つの角部に配置される2つの第2面3212と、を備える。第2面3212は、
図4Aにおいて第1面3211の右側に位置する第1角部3212aと、第1面3211の左側に位置する第2角部3212bと、を備える。第1角部3212aと第2角部3212bは同一面上に位置しており、それぞれ第1面3211よりも先端側に突出している。第1角部3212a及び第2角部3212bは、それぞれ略三角形であり、それに挟まれた第1面3211は、細長い六角形であり、これら3つの面を備えた端面321を、端面側から見た外形が略正方形となる。第1面3211の幅Wf3は、半導体素子1Bのパッド電極2Bの幅よりも大きい。
【0036】
第1角部3212aと第2角部3212bは、それぞれ吸着孔の小径部Vn3の開口部Vo3を1つずつ備えた吸着面である。このような端面321を備えたコレット30は、
図5Aに示すような、上面視が略正方形の半導体素子1Bであって、対角位置にパッド電極2Bを備えた半導体素子1Bを吸着するのに適している。
【0037】
上述のように、実施形態3に係るコレット30は、非吸着面として第1面3211を備えることで、半導体素子1Bのパッド電極2Bが損傷しにくくすることに加え、開口部Vo3の周辺に開口部よりも広い面積の当接面を備えた吸着面である第2面3212を備えることで、半導体素子1Bの上面1bにかかる負荷の集中を抑制して半導体素子1Bの損傷を抑制することができる。
【0038】
<実施形態4>
実施形態4は、実施形態3に係るコレット30を用いて半導体素子1Bをピックアップする工程を含む半導体装置の製造方法である。実施形態2とは、準備する半導体素子と、準備するコレットが異なる。
【0039】
図5A、
図5Bは、準備された半導体素子1Bを例示したものであり、積層構造体4Bと、その上面1bにパッド電極2Bを備える点は、実施形態2と同様である。実施形態4では、上面視が略正方形の半導体素子1Bの2つのパッド電極2Bが、半導体素子1Bの上面1bの対角線上に配置されている。
【0040】
図6Aは、コレット30の先端部32の端面321と、半導体素子1Bの上面とを重ねた状態を示す図であり、薄墨で示す部分が、コレット30の第2面3212と半導体素子1Bとが当接する領域である。
図6Bは、半導体素子1Bの上面1bに、コレット30の先端部32の端面321のうち、第2面3212を当接させた状態を示す図である。実施形態2と同様に、コレット30と、半導体素子1Bのパッド電極2Bが接していないため、パッド電極2Bが損傷することを抑制することができる。
【0041】
実施形態4では、実施形態2と同様に、吸着面として2つの第2面3212を備えたコレット30を用いている。上面視が略正方形の半導体素子の場合、対向する2つの角部を結ぶ中央線(対角線)上に、2つのパッド電極を備えることができる。このような構造の半導体素子の場合、パッド電極が配置されない2つの角部に、比較的広い面積の領域が配置される。実施形態4では、半導体素子1Bの上面1bのうち、パッド電極2Bが配置されない2つの領域に、コレット30の吸着面である第2面3212を当接させることで、パッド電極2Bが損傷することを抑制することができる。
【0042】
<実施形態5>
実施形態5に係るコレット50を
図7A〜
図7Cに示す。
図8A〜
図8Bは、実施形態5に係るコレット50によって吸着するのに適した半導体素子1Cを示す。コレット50は、実施形態1で示したコレット10の本体部と同様の本体部を備え、先端部の端面の形状が異なる。そのため、主として端面について説明し、他の部分の説明は省略する。
【0043】
図7Aは、実施形態5に係るコレット50の先端部52の斜視図である。
図7Bは、コレット50を端面521側から見た図である。
図7Cは、
図7Aの7C−7C線における断面図である。
【0044】
コレット50の端面521は、外形が略長方形の面である。端面521は、1つの第2面5212と、その第2面5212を挟み、対向する2つの短辺に配置される2つの第1面5211と、を備える。第2面5212は、中央部5212aと、中央部5212aから端面521の角部に向かって延伸する延伸部5212bと、を備えている。中央部5212aは、その中央に1つの貫通孔の開口部Vo5を備える。
【0045】
第2面5212を構成する中央部5212aと延伸部5212bとは、同一面上にあり、半導体素子の上面に当接される面である。延伸部5212bを設けることで、半導体素子の上面にコレットが当接する際にかかる負荷を分散させることができる。これにより、半導体素子が損傷することを抑制することができる。
【0046】
実施形態1、3では、非吸着面である第1面を、吸着面である第2面で挟んでいたのに対し、実施形態5では、吸着面である第2面を、非吸着面である第1面で挟んでいる。また、実施形態1、3に示すコレットは、複数の開口部を備えているのに対し、実施形態5に示すコレット50は、1つの開口部Vo5を備える。そのため、コレット50の内部において吸着孔は分岐することなく、コレット50の中心軸を含む1つの貫通孔として形成されている。つまり、大径部と小径部Vn5とが同じ中心軸を含む1つの貫通孔として形成されている。
【0047】
図7Bに示すように、2つの第1面5211は、端面521の短辺側にそれぞれ位置している。詳細には、上辺及び下辺に配置される延伸部5212bと右辺又は左辺に配置される中央部5212aとによって3方を囲まれた略四角形の領域である。第1面5211の横方向の幅Wf5は、延伸部5212bの横方向の幅Ws5と同じである。また、第1面5211の縦方向の幅(長さ)Lf5は、コレットの端面521の縦方向の長さLc5、すなわち、短辺の長さよりも小さい。第1面5211の縦方向の長さLf5は、その上下に配置される2つの延伸部5212bの間の距離のことでもあり、半導体素子1Cのパッド電極2Cの縦方向の幅よりも大きい。
【0048】
第2面5212は、端面521の中央に位置する中央部5212aと、中央部5212aから端面521の角部に向かって延伸する延伸部5212bと、を備えている。中央部5212aは、中央に1つの開口部Vo5を備えている。
【0049】
中央部5212aの縦方向の長さLg5は、端面521の一方の長辺(上辺)から他方の長辺(下辺)に達する長さであり、換言すると端面521の短辺の長さLc5と同じ長さである。また、中央部5212aは、端面521の左右の短辺からは離間している。
【0050】
第2面5212の延伸部5212bは、中央部5212aから端面の長方形の4つの角部に向けて延伸する部分である。ここでは、4つの延伸部5212bを備えた例を示しており、後述の変形例のように2つの延伸部とすることもできる。
図7A等に示すように、端面521上辺と下辺は、延伸部5212bと中央部5212aと延伸部5212bとで構成される。つまり、端面521の1つの長辺は、第2面5212のみで構成されている。
【0051】
図7Bにおいて、中央部5212aの横方向の幅Wg5は、後述の半導体素子1Cの2つのパッド電極2Cの間の距離よりも小さい。例えば、パッド電極2Cの間の距離よりも、50%〜70%程度小さいことが好ましい。中央部5212aの縦方向の幅(長さ)Lg5は、コレットの端面521の縦方向の長さLc5と同じである。また、中央部5212aに配置される開口部Vo5の横方向の幅Wv5は、中央部5212aの横方向の幅Wg5の40%〜60%程度とすることができる。開口部Vo5の縦方向の長さLv5は、例えば、第1面5211の縦方向の幅(長さ)Lf5と同じ幅とすることができる。
【0052】
延伸部5212bの横方向の幅(端面の長辺に沿った方向の幅)Ws5は、パッド電極2Cの横方向の幅よりも大きい。例えば、延伸部5212bの横方向の幅Ws5は、パッド電極の横方向の幅の200%〜250%程度とすることができる。延伸部5212bの縦方向の長さLs5は、例えば、端面521の縦方向の長さLc5の15%〜20%程度とすることができる。
【0053】
実施形態5に係るコレット50は、非吸着面として第1面5211を設けることで、半導体素子1Cのパッド電極2Cが損傷しにくくすることに加え、開口部を備えた中央部と延伸部とを有する当接面である第2面を備えることで、半導体素子の上面にかかる負荷の集中を抑制して半導体素子の損傷を抑制することができる。
【0054】
上述のようなコレット50は、
図8A、
図8Bに示すような上面視が略長方形の半導体素子1Cを吸着するのに適している。
【0055】
図8Aに示すように、上面視が略長方形の半導体素子1Cは、その上面に、2つのパッド電極2Cが備えられている。2つのパッド電極2Cは、略長方形の半導体素子1Cの右辺側の中央近傍に1つ、左辺側の中央近傍に1つ、配置されている。コレット50の端面521の第1面5211は、この2つのパッド電極2Cとそれぞれ対向するように、端面521の短辺において、第2面の中央部5212a及び延伸部5212bに3方を囲まれた領域に配置されている。
【0056】
<実施形態6>
実施形態6は、実施形態5に係るコレットを用いて半導体素子をピックアップする工程を含む半導体装置の製造方法である。実施形態2、4とは、準備する半導体素子と、準備するコレットが異なる。
【0057】
図8A、
図8Bは、準備された半導体素子1Cを例示したものであり、積層構造体4Cと、その上面1cに配置されるパッド電極2Cを備える点は、実施形態1と同様である。実施形態6では、半導体素子1Cの上面視が長方形であり、パッド電極2Cの位置が、半導体素子1Cの上面の対向する2つ短辺の略中央に位置する。
【0058】
図9は、コレット50の端面521と、半導体素子1Cの上面とを重ねた状態を示す図であり、薄墨で示す部分が、コレット50の第2面と半導体素子1Cとが当接する領域である。他の実施形態と同様に、コレット50と、半導体素子1Cのパッド電極2Cが接していないため、パッド電極2Cが損傷することを抑制することができる。
【0059】
実施形態6では、吸着面として開口部を備えた中央部5212aと、中央部5212aから延伸する延伸部5212bとを備えた第2面5212を備えたコレット50を用いている。半導体素子が小さいサイズの場合、実施形態1等のように、分離する2つの吸着面(第2面)で、半導体素子の上面でパッド電極を避けた位置を吸着することが困難な場合がある。そのため、このような上面視が長方形の小型の半導体素子を、パッド電極と当接しないように吸着するには、半導体素子の中央と吸着面とを当接させることが好ましい。実施形態6では、半導体素子の中央に開口部を備えると共に、延伸部を備える第2面(吸着面)とすることで、パッド電極が損傷することを抑制することができる。
【0060】
<変形例>
図10は半導体素子1Dの上面図、
図11A及び
図11Bは、コレット60、70をそれぞれ端面側から見た図である。
図12A及び
図12Bは、コレット60及びコレット70を、それぞれ半導体素子1Dと重ねた状態を示す図である。半導体素子1Dは、コレット60、70のいずれを用いても吸着することができる。
【0061】
コレット60は、
図7A〜
図7Cに示すコレット50の端面を、縦方向に長くした端面であり、中央部6212a及び4つの延伸部6212bを備えた第2面6212と、2つの第1面6211を備え、中央部6212aに開口部Vo6を備える点はコレット50と同じである。
【0062】
コレット70は、端面721の大きさは、コレット60の端面621の大きさと同じであり、第2面7212の延伸部7212bが2つである点がコレット60と異なる。さらに、右辺に位置する第1面7211aが、第2面7212の延伸部7212bに挟まれており、左辺に位置する第1面7211bがそれらに挟まれていない。そのため、2つの第1面7211a、7211bの縦方向の長さが異なる。また、左側に延伸部を備えていないため、中央部7212aの幅が、コレット60に比して大きくなっている。開口部Vo7は、端面721の中央に位置しているため、中央部7212aの中心と開口部Vo7の中心とは一致していない。延伸部7212bの縦方向の幅も、コレット60の延伸部6212bの縦方向の幅よりも大きくなっている。
【0063】
上述の2種のコレットを、半導体素子1Dと重ねた場合、
図12A、
図12Bに示すように、いずれのコレットもパッド電極2Dに対応する位置に第1面が配置されているため、パッド電極2Dの損傷を抑制することができる。延伸部の数や配置等は、パッド電極の配置や、補助電極の配置等によって適宜選択することができる。
【実施例】
【0064】
各実施形態で示したコレット及び半導体素子について、実施例を示す。
【実施例1】
【0065】
図1C〜
図1Eに示すコレット10の例として、材質が超硬からなり、本体部及び先端部を含めた長さが1.72cm、本体部の外径が3.157mm、大径部の径が1.200μm、小径部の径が80μm、開口部の径が80μmのコレットを用いる。コレットの端面121は、縦の長さが700μm、横の長さWc1が700μmであり、第1面1211の幅は340μm、第2面1212の幅はそれぞれ180μm、第2面の高さH1は50μmである。
【0066】
図2A、
図2Bに示す半導体素子は、窒化ガリウム系半導体層を備えた青色発光素子であり、幅Wdが650μm、厚みが150〜250μmである。パッド電極2Aは、幅Wpが70μm、高さHpが1.6μmである。このような半導体素子を上述のコレットで吸着することで、パッド電極の損傷を低減することができる。
【実施例2】
【0067】
図4A〜
図4Cに示すコレット30の例として、材質が超硬からなり、本体部及び先端部を含めた長さが1.72cm、本体部の外径が3.157mm、大径部の径が1,200μm、小径部の径が120μm、開口部の径が120μmのコレットを用いる。コレットの端面321は、縦の長さが650μm、横の長さが650μmであり、第1面3211の幅は340μm、第2面の高さは50μmである。
【0068】
図5A、
図5Bに示す半導体素子は、窒化ガリウム系半導体層を備えた青色発光素子であり、幅が650μm、厚みが150〜250μmである。パッド電極2Bは、幅が70μm、高さが1.6μmである。このような半導体素子を上述のコレットで吸着することで、パッド電極の損傷を低減することができる。
【実施例3】
【0069】
図7A〜
図7Cに示すコレット50の例として、材質が超硬からなり、本体部及び先端部を含めた長さが1.72cm、本体部の外径が3.157mm、大径部の径が1,200μm、小径部の径が140μm、開口部の横方向の幅Wv5が140μm、開口部の縦方向の幅が200μmのコレットを用いる。コレットの端面521は、縦の長さLc5が340μm、横の長さWc5が540μmであり、第1面5211の幅Wf5は150μm、第2面5212の中央部5212aの幅は240μm、延伸部5212bの幅Ws5は150μm、第1面の縦方向の長さLf5は200μm、第2面の高さは50μmである。
【0070】
図8A、
図8Bに示す半導体素子は、窒化ガリウム系半導体層を備えた青色発光素子であり、横方向の長さが560μm、縦方向の長さが360μm、厚みが200μmである。パッド電極2Cは、幅が70μm、高さが1.6μmである。このような半導体素子を上述のコレットで吸着することで、パッド電極の損傷を低減することができる。
【実施例4】
【0071】
図11Aに示すコレット60の例として、材質が超硬からなり、本体部及び先端部を含めた長さが1.72cm、本体部の外径が3.157mm、大径部の径が1,200μm、小径部の径が150μm、開口部の横方向の幅が150μm、開口部の縦方向の幅が400μmのコレットを用いる。コレットの端面621は、縦の長さが590μm、横の長さが790μmであり、第1面6211の幅は270μm、第2面6212の中央部6212aの幅は250μm、延伸部6212bの幅は270μm、第1面6211の縦方向の長さは400μm、第2面6212の高さは50μmである。
【0072】
図10に示す半導体素子は、窒化ガリウム系半導体層を備えた青色発光素子であり、横方向の長さが850μm、縦方向の長さが650μm、厚みが150〜200μmである。パッド電極2Cは、幅が70μm、高さが1.6μmである。このような半導体素子を上述のコレットで吸着することで、パッド電極の損傷を低減することができる。
【実施例5】
【0073】
図11Bに示すコレット70の例として、材質が超硬からなり、本体部及び先端部を含めた長さが1.72cm、本体部の外径が3.157mm、大径部の径が1,200μm、小径部の径が150μm、開口部の横方向の幅が150μm、開口部の縦方向の幅が400μmのコレットを用いる。コレットの端面721は、縦の長さが590μm、横の長さが790μmであり、第1面7211aの幅は270μm、第1面7211bの幅は170μm、第2面7212の中央部7212aの幅は350μm、延伸部7211aの幅は270μm、第1面7211aの縦方向の長さは300μm、第1面7211bの縦方向の長さは590μm、第2面7212の高さは50μmである。このコレット70は、実施例4に示す半導体素子と同じものを吸着することができ、パッド電極の損傷を低減することができる。