(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0009】
本実施形態の異方性磁性粉末の製造方法は、SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る工程、
前記部分酸化物を、還元剤の存在下、150℃以上400℃以下の第一温度で、20Pa以下の到達真空度になるまで熱処理した後に、450℃以上650℃以下の第二温度で20Pa以下の到達真空度になるまで熱処理し、さらにその後、900℃以上1100℃以下の第三温度で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、および、
前記合金粒子を窒化することにより、異方性磁性粉末を得る工程
を含むことを特徴とする。
【0010】
前処理工程で使用するSmとFeを含む酸化物は、Sm酸化物とFe酸化物を混合することにより得られるが、例えばSmとFeを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、および、前記沈殿物を焼成することにより、SmとFeを含む酸化物を得る工程(酸化工程)によって、製造することができる。
[沈殿工程]
沈殿工程では、強酸性の溶液にSm原料、Fe原料を溶解して、SmとFeを含む溶液を調製する。Sm
2Fe
17N
3を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17以上3.0:17以下が好ましく、2.0:17以上2.5:17以下がより好ましい。La、W、Co、Ti、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luなどの原料を加えても良い。
【0011】
Sm原料、Fe原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されない。例えば、入手のしやすさの点で、Sm原料としてはSmの酸化物が、Fe原料としてはFeSO
4が挙げられる。SmとFeを含む溶液の濃度は、Sm原料とFe原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。酸性溶液としては溶解性の点で硫酸が挙げられる。
【0012】
SmとFeを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、SmとFeを含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、SmとFeを含む溶液は、沈殿剤との反応時にSmとFeを含む溶液となっていればよく、たとえばSmとFeを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合も各原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSmとFeを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア水、苛性ソーダなどが挙げられ、苛性ソーダが好ましい。
【0013】
沈殿反応は、沈殿物の粒子の性状を容易に調整できる点から、SmとFeを含む溶液と、沈殿剤とを、それぞれ水などの溶媒に滴下する方法が好ましい。SmとFeを含む溶液と沈殿剤との供給速度、反応温度、反応液濃度、反応時のpH等を適宜制御することにより、構成元素の分布が均質で、粒度分布のシャープな、粉末形状の整った沈殿物が得られる。このような沈殿物を使用することによって、最終製品である磁性粉末の磁気特性が向上する。反応温度は、0℃以上50℃以下とすることができ、35℃以上45℃以下であることが好ましい。反応液濃度は、金属イオンの総濃度として0.65mol/L以上0.85mol/L以下とすることが好ましく、0.7mol/L以上0.85mol/L以下とすることがより好ましい。反応pHは、5以上9以下とすることが好ましく、6.5以上8以下とすることがより好ましい。
【0014】
沈殿工程で得られた異方性磁性粉末粒子により、最終的に得られる磁性粉末の粉末粒径、粉末形状、粒度分布がおよそ決定される。得られた粒子の粒径をレーザー回折式湿式粒度分布計により測定した場合、全粉末が、0.05以上20μm以下、好ましくは0.1以上10μm以下の範囲にほぼ入るような大きさと分布であることが好ましい。また、平均粒径は、粒度分布における小粒径側からの体積累積50%に相当する粒径として測定され、0.1以上10μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0015】
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したり、粒度分布、粉末径等が変化したりすることを抑制するために、脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70℃以上200℃以下のオーブン中で5時間以上12時間以下乾燥する方法が挙げられる。
【0016】
沈殿工程の後に、得られる沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。洗浄する工程は上澄み溶液の導電率が5mS/m
2以下となるまで適宜行う。沈殿物を分離する工程としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。
【0017】
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、SmとFeとを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
【0018】
酸化工程における熱処理温度(以下、酸化温度)は特に限定されないが、700℃以上1300℃以下が好ましく、900℃以上1200℃以下がより好ましい。700℃未満では酸化が不十分となり、1300℃を超えると、目的とする磁性粉末の形状、平均粒径および粒度分布が得られない傾向にある。熱処理時間も特に限定されないが、1時間以上3時間以下が好ましい。
【0019】
得られる酸化物は、酸化物粒子内において、鉄の微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
【0020】
[前処理工程]
前処理工程とは、SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
【0021】
還元性ガスは水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)等の炭化水素ガスなどから適宜選択されるが、コストの点で水素ガスが好ましく、ガスの流量は、酸化物が飛散しない範囲で適宜調整される。前処理工程における熱処理温度(以下、前処理温度)は、300℃以上950℃以下の範囲とし、好ましくは400℃以上、より好ましくは650℃以上であり、好ましくは900℃未満である。前処理温度が300℃以上であるとSmとFeを含む酸化物の還元が効率的に進行する。また950℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒径を維持することができる。
【0022】
[還元工程]
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下、150℃以上400℃以下の第一温度で、20Pa以下の到達真空度になるまで熱処理した後に、450℃以上650℃以下の第二温度で20Pa以下の到達真空度になるまで熱処理し、さらにその後、900℃以上1100℃以下の第三温度で熱処理することにより、合金粒子を得る工程である。部分酸化物がカルシウム融体と接触することで還元が行われる。
【0023】
合金粒子を得る工程で使用する部分酸化物には、原料のSm
2O
3、Fe
2O
3や、Caなどの還元剤に一旦吸着した水分等の揮発成分が存在する。それぞれの原料に化学的あるいは物理的にも吸着していない単なる残留水分に起因する低揮発成分は、100℃付近の低温において、ある程度除去できる。温度を100℃よりも高くすると、引き続き高揮発成分の脱離が生じるが、これもほとんどが吸着水である。350℃から500℃付近は、さらに強固な結合により結びついた水分を除去することができる。
【0024】
ここで、部分酸化物をいきなり500℃以上に加熱すると、100℃以上の温度で発生した高揮発成分が500℃に昇温した際に、金属Caの粒子表面に付着し、金属Ca粒子表面を酸化して不活性化するため、還元拡散反応は正常に行われなくなることがある。加えて、還元拡散後に残留するため、最終製品の合金粉末の収率を低下させ、保磁力などの磁気特性を低減させ、合金粉末の品質を低下することになる。そこで、本願発明では、特定の温度における三段階の熱処理を行う。
【0025】
第一温度での熱処理温度は150℃以上400℃以下であるが、250℃以上350℃以下が好ましい。150℃未満では、吸着水除去の効果が小さく、結果磁気特性が小さくなり、400℃を超えると、吸着水は除去できるが金属Ca粒子表面に酸化が発生し、還元拡散が上手くいかず特性低下となる傾向がある。また、第一温度での熱処理温度は前述の範囲であれば、一定でなくても良い。到達真空度は20Pa以下であるが、10Pa以下が好ましい。20Paを超える状態で第一温度での熱処理を終えると、吸着水除去の効果が小さく、結果磁気特性が小さくなる。具体的な熱処理時間は特に限定されず、20Pa以下になるまで行えばよいが、60分以上600分以下が好ましく、120分以上300分以下がより好ましい。60分未満では、吸着水除去が不十分になり、特性低下となり、600分を超えると、特性には影響ないが、生産性の低下となる傾向がある。
【0026】
第二温度での熱処理温度は450℃以上600℃以下であるが、500℃以上600℃以下が好ましい。450℃未満では、吸着水除去の効果が小さく、結果磁気特性が小さくなり、600℃を超えると、吸着水は除去できるが金属Ca粒子表面に酸化が発生し、還元拡散が上手くいかず特性低下となる傾向がある。また、第二温度での熱処理温度は前述の範囲であれば、一定でなくても良い。真空到達度は特に限定されないが、10Pa以下が好ましく、5Pa以下がより好ましい。第二温度での熱処理時間は特に限定されないが、5分以上300分以下が好ましく、60分以上240分以下がより好ましい。5分未満では、吸着水除去が不十分になり、特性低下となり、300分を超えると、特性には影響ないが、生産性の低下となる傾向がある。また、第二温度での熱処理行った後は、金属Caの表面酸化および生成した合金粒子の酸化を抑制することができる雰囲気下で行うことが好ましく、例えばアルゴンガス雰囲気下とすることができる。
【0027】
第三温度での熱処理温度は900℃以上1100℃以下であるが、950℃以上1100℃以下が好ましい。900℃未満では、最終得られる磁性粒子が小さくなり、特性の低下となり、1100℃を超えると、最終得られる磁性粒子が焼結し、特性(特に保磁力)の低下となる傾向がある。また、第三温度での熱処理温度は前述の範囲であれば、一定でなくても良い。第三温度での熱処理時間は特に限定されないが、5分以上120分以下が好ましく、30分以上90分以下がより好ましい。5分未満では、最終得られる磁性粒子が小さくなり、特性の低下となり、120分を超えると、最終得られる磁性粒子が焼結し、特性(特に保磁力)の低下となる傾向がある。
【0028】
第一温度から第三温度における熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、各温度での温度範囲より低い熱処理温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。また、第三温度で熱処理した後は、第三温度範囲より低い熱処理温度での熱処理を含むこともできる。第一温度、第二温度および第三温度までの各温度に至るまでの昇温速度は特に制限はされないが、例えば2℃/分以上10℃/分以下とすることができる。第三温度熱処理後の冷却温度は特に制限されないが、例えば2℃/分以上10℃/分以下とすることができる。
【0029】
金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その粒子径は10mm以下が好ましい。これにより還元反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Feが酸化物の形である場合には、これを還元するに必要な分を含む)の1.1倍以上3.0倍以下の量の割合で添加することができ、1.5倍以上2.0倍以下の量が好ましい。
【0030】
還元工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する水洗工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、希土類源として使用される希土類酸化物当り1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上25質量%以下の割合で使用される。
【0031】
[窒化工程]
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。金属同士を溶融させているのではなく、沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いているため、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。
【0032】
合金粒子の窒化処理における熱処理温度(以下、窒化温度)は、好ましくは300℃以上600℃以下、特に好ましくは400℃以上550℃以下の温度とし、この温度範囲で雰囲気を窒素雰囲気に置換することにより行われる。熱処理時間は、合金粒子の窒化が充分に均一に行われる程度に設定されればよい。雰囲気は窒素が経済的に良いが、NH
3やH
2を含んでいても良い。
【0033】
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。そこで、その場合は、この生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)懸濁物として磁性粒子から分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、磁性粒子を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。適宜溶液から分離し乾燥することで異方性の磁性粉末が得られる。
【0034】
以上のようにして得られた異方性磁性粉末は、典型的には下記一般式
Sm
vFe
(100−v―w)N
w(式中、3≦v≦30、5≦w≦15)
で表される。
【0035】
一般式において、vを3以上30以下と規定するのは、3未満では鉄成分の未反応部分(α−Fe相)が分離して窒化物の保磁力が低下し、実用的な磁石ではなくなり、30を超えると、Smの元素が析出し、磁性粉末が大気中で不安定になり、残留磁束密度が低下するからである。また、wを5以上15以下と規定するのは、5未満では、ほとんど保磁力が発現できず、15を超えるとSmの元素や、鉄自体の窒化物が生成するからである。
【0036】
<複合材料>
以下、複合材料およびボンド磁石について説明する。
【0037】
複合材料は、先に説明した異方性磁性粉末と、樹脂より作製される。この異方性磁性粉末を含むことで、高い磁気特性を有する複合材料を構成することができる。
【0038】
複合材料に含まれる樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を挙げることができる。
【0039】
複合材料を得る際の異方性磁性粉末と樹脂の重量比(樹脂/磁性粉末)は、0.10以上0.15以下であることが好ましく、0.11以上0.14以下であることがより好ましい。
【0040】
複合材料は、例えば、混練機を用いて、280℃以上330℃以下で異方性磁性粉末と樹脂とを混合することにより得ることができる。
【0041】
<ボンド磁石>
複合材料を用いることにより、ボンド磁石を製造することができる。具体的には例えば、複合材料を熱処理しながら配向磁場で磁化容易磁区を揃え(配向工程)、次いで着磁磁場でパルス着磁する(着磁工程)ことにより、ボンド磁石を得ることができる。
【0042】
配向工程における熱処理温度は、例えば90℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。配向工程における配向磁場の大きさは、例えば720kA/mとすることができる。また、着磁工程における着磁磁場の大きさは、例えば1500kA/m以上2500kA/m以下とすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例について説明する。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0044】
製造例
純水2.0kgにFeSO
4・7H
2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm
2O
3 0.49kgと70%硫酸0.74kgとを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/l、Sm濃度が0.112mol/lとなるように調整し、Fe−Sm硫酸溶液とした。
【0045】
[沈殿工程]
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、Fe−Sm硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15%アンモニア液を滴下させ、pHを7から8に調整した。これにより、Fe−Sm水酸化物を含むスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
【0046】
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中900℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のFe−Sm酸化物を得た。
【0047】
実施例1から10および比較例1から3
[前処理工程]
製造例で得たFe−Sm酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の700℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得た。
【0048】
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒径約6mmの金属カルシウム15.6gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。表1に示す第一温度と第二温度において、表1に示す保持時間で熱処理を行った後に、第三温度1100℃で、1時間、熱処理することにより、Fe−Sm合金粒子を得た。
【0049】
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、温度を450℃まで上昇させて、そのまま23時間保持して、磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
【0050】
[水洗−表面処理工程]
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを8繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌する。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。
【0051】
得られたスラリーは固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行い、平均粒径3.2μmのSmFeN磁性粉末を得た。得られた磁性粉末はSm9.50Fe76.92N13.58で表された。
【0052】
[評価]
<磁束密度>
各実施例の製造方法によって得られた磁性粒子を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融した後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて残留磁束密度(T)と保磁力(kA/m)を測定した。評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果から、150℃以上400℃以下の第一温度で熱処理をしないと、比較例1から3に示すように、磁束密度と保磁力の小さい磁性粉末しか得られない。一方、150℃以上400℃以下の第一温度で熱処理すると、実施例1から10に示すように、磁束密度と保磁力の大きい磁性粉末が得られる。